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『基礎英語』受講生の動機づけ傾向と変化 - 岡山理科大学紀要

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(1)

『基 基礎 礎英 英語 語』 』受 受講 講生 生の の動 動機 機づ づけ け傾 傾向 向と と変 変化 化

前川 洋子・石田 美佐江・杉山 正二・西川 憲一・藤城 孝輔

*

岡山理科大学教育推進機構基盤教育センター

*岡山理科大学教育学部中等教育学科

1.はじめに

1-1 『基礎英語』の導入

2008

年、中央教育審議会による「学士課程教育の構築に向けて」において、大学は社会 が求める汎用的能力を備えた人材育成を強く求められるようになり、卒業時の学力及び教 育の質保証が大学の大きな使命となった。山田

(2012)

は、この答申について、大学は学生の 入学時学力や学修目的の多様化に対応する教育力が期待されており、高等教育の質保証は 出口管理によって求められていると解釈している。小川

(2012)

は、

1990

年代以降の入学者 選抜の多様化と少子化により、入学者の学力格差が顕著になったことから

2000

年代以降に リメディアル教育が導入され、学力格差への対応及び就職活動の厳しさにも対応できる人 材育成が目指されるようになったと述べている。

本学の英語教育は

2020

年度入学生までは、

1

年次から

3

年間連続で必修英語授業を履修 し、最初の

2

年間はプレースメントテスト結果による習熟度別クラスへ配属されることで、

学力の多様化に対する適切な対応と底上げを図ってきた。新しい基盤教育カリキュラムへ の変更に伴い、

2021

年度入学生からは

1

年生秋学期の基盤英語を中心として学生が個々の 目的に合った英語学習の流れを選択することが可能となったが、英語を苦手とする学生に 対する底上げや支援が困難となる課題も考えられた。そこで、前年度までプレースメントテ ストとして使用した外部試験を入学時に実施し、その結果に従って、特に英語学習の支援が 必要な学生は

1

年生春学期に『基礎英語』を履修し、基礎を振り返りながら教員からのアド バイジングを受けることで底上げを図り、学ぶ意義を認識させながら今後の学びについて 考えさせることとなった。リメディアル教育には、

A

高等学校教育の復習型、

B

大学学習活 動の入門型、

C

入学前教育、

D

大学講義の補修・復習型があるが

(

奥羽・福元

, 2013)

、本学 の『基礎英語』は必修教科である基盤英語履修への学力的・心理的な備えをするという意味 では、

A

B

を兼ね備えた役割を果たすと言えるだろう。奥羽・福元

(2013)

が挙げるよう に、受講者が抱える英語への苦手意識、大学全体として定める学生の英語力の目標、基礎英 語授業内での学力格差、基礎英語教育のカリキュラム上の位置づけについての周知などは 今後も検討していく必要があるだろう。

1-2 英語学習動機づけ

英語教育では、学生の情意面に対する研究が活発である。特に英語習熟度が低いとされる 学生は学習意欲が低いと定義されがちであり、基礎英語でも「英語と日本語との共通点・相 違点に関心を持ち、英語学習に意欲的に取り組むことができる」を達成目標として掲げてい る。学習意欲の低下がある場合、英語に対する苦手意識や授業での不安が原因なのか、英語

(2)

文化に対する意識が原因なのか、あるいは他の要因があるのかを知ることは、英語教員が学 習意欲を高める授業構築にも役立つことがある。リメディアル教育の分野でも学習者の情 意面に対する研究がおこなわれており、清田

(2010)

は学習者の自尊感情に着目し基礎学力の 向上だけでなく「自己表現」「対人関係」を考慮した授業の必要性を述べている。牧野

(2013,

2014)

は英語リメディアル教育における情意面を多角的に研究しており、自己効力感を高め

るための環境づくり、学生を参加させる手法について紹介すると共に自己調整学習の有用 性について述べている。更に、他の研究者と共に学習意欲や授業における楽しさの提供につ いても種々提案している

(

牧野他

, 2013)

外国語教育の研究分野において、動機づけと不安は外国語学習への取り組みに影響を及 ぼす大きな情意要因として長年取り扱われてきた(Gardner, Day, & MacIntyre, 1992;

MacIntyre, 2002; Ryan, 2019)

MacIntyre(2017)

は外国語学習不安が状況依存であり、不 安を起こす要因も英語学習に及ぼす影響も学習者によって異なると述べている。また、日本 の大学生の英語学習不安についての研究では、不安が教室内での沈黙として現れることが 多いという結果も発表されている

(King, 2012; King & Smith, 2017)

学習動機づけは、人がなぜその行動をとるのか、どの程度それをやり続けるのか、どの程 度努力するのかに関係する要因

(Dörnyei, 2006;

八島

, 2019)

とされ、強度

(

かける時間、やる 気の強さ

)

と方向性

(

目的、内容

)

を持つ

(

上渕

, 2004)

と定義されている。

Deci and Ryan (2002)

は、人間は本能的に周囲との相互作用を通して自分の活動を決定づける傾向があるとして おり、心理的

3

欲求である自律性・有能性・関係性が充足されるとその活動が内在化され、

動機づけが高まると定義した自己決定理論を提唱した。自律性は、学習者が活動について指 導者の指示に従うだけではなく自分で選択したいという欲求を指し、有能性は、活動におけ る達成感を味わうなどの欲求を指す。関係性は、活動において共に関わる周囲との良い関係 性を築きたいという欲求を表す。この自己決定理論では、動機づけ傾向を内発的動機づけ、

外発的動機づけ、無動機という自己決定度合いによる動機づけレベルを定めている。内発的 動機づけは、学習者が英語に興味を持ち、楽しいから学習する自己決定度合いが最も高い動 機づけを示す。外発的動機づけは、外的調整、取入れ的調整、同一視的調整、統合的調整の

4

段階に分かれており、外的調整は、自己決定度合いが最も低く、試験の合格のような報酬 や周りからの罰を避けるために学ぶ動機を示す。取入れ的調整は、他者からの承認を得るた めに学習する段階であり、同一視的調整は活動の価値を理解して有用性がある活動と認識 しながら学習に取り組む姿勢を表す。統合的調整は、自己実現やアイデンティティと大きく 関わり、内発的動機づけのように楽しんでいるわけではないが、学習自体が内在化されてい る状態を表す。これら内発的動機づけと

4

段階の外発的動機づけに加えて、学習に価値が ないと考える無動機を加えた

6

段階の中で動機づけの変化プロセスや自己決定度合いを細 分化してみることができるとして、自己決定理論は外国語教育学分野の動機づけにおける 理論的枠組みの一つとして使用されてきた

(e.g., Hayashi, 2009;

前川

, 2019; Maekawa &

Yashima, 2012; Nishida, 2008; Tanaka, 2010)

これまでの動機づけ研究において、基礎英語受講者のように英語が苦手な学生たちのみ に注目した研究は少なく、学生たちの英語学習への取り組みを動機づけの面から検討する ことは、英語が苦手な学生を理解し、今後の英語教育を考える上でも有用だと考えられる。

また、基礎英語の達成目標で学習意欲を掲げていることもあり、基礎英語受講学生の英語学

(3)

習動機づけ傾向変化及び対象学生の英語学習に対する意識や基礎英語受講の効果について 検証することは、本学での今後の授業運営及びアドバイジングへの大きな示唆となるだろ う。

2.調査

2-1 調査目的と研究課題

本調査は、基礎英語受講者の英語学習動機づけ傾向や英語学習に対する不安を知ること、

基礎英語授業を受講することによる学生の動機づけや不安等に関する変化を知ることを目 的とする。そのため、研究課題は、以下のように定めた。1)基礎英語受講生の英語学習動 機づけはどのようなものか、2)基礎英語授業で学生の心理的

3

欲求を満たし動機づけに 変化を与えることができたのか、3)基礎英語受講者は英語学習に対して何に苦手意識を感 じているのか、4)基礎英語授業は学生にどのような影響を与えたのか。

2-2 調査方法

調査は、

2021

年度基礎英語授業開始時

(4

)

及び終了時

(8

)

に、

Google

フォームを用い た質問紙調査を行った。質問紙は第一筆者が作成し、各授業担当者が学生に

URL

を知らせ て回答依頼をする形式をとった。倫理的配慮として、この調査は研究とアドバイジングのみ に使用すること、調査参加は任意であること、成績には一切影響がないことを質問紙に明記 した。

2-3 調査参加者

本学では、入学時に実施した外部英語能力測定テスト

(VELC

テスト

)

の結果から基礎英語 対象者を決定した。表

1

は各学部の基礎英語受講人数及び本研究の調査参加者の内訳を表 している。受講対象者のうち欠席などがない大多数の学生が調査に参加したが、

4

月と

8

月 の両方に解答した者のみを選び、統計処理をするため回答に空欄がある学生を除いた

71

名 が有効回答者となった。

11

基基礎礎英英語語受受講講対対象象者者及及びび調調査査参参加加者者

調査参加者

対象者

4

8

月 有効回答者

理学部

24 21 18 14

工学部

35 32 28 21

総合情報学部

12 12 12 11

生物地球学部

9 9 9 8

教育学部

5 5 4 4

経営学部

19 15 16 13

104 94 87 71

2-4 質問紙

質問紙は

4

セクションで構成されている。
(4)

動動機機づづけけ尺尺度度

((55

段段階階評評価価、、

1155

項項目目、、廣廣森森

22000066))

:廣森

(2006)

は、自己決定理論を第二言 語習得で初めて用いた

Noels (2001)

の質問紙を参考に、日本人学生向けの動機づけ尺度項 目を作成した。

Noels (2001)

は、第二言語習得の場面では、統合的調整は内発的動機づけと の区別化が難しいとして、外発的動機づけを

3

段階で定めている。本調査では、学生の心理 的負担を軽減するため、廣森が作成した動機づけ尺度各

5

項目

(

25

項目

)

のうち、それぞ れ内容の類似性が少ない

3

項目を選択して使用した。動機づけ尺度と質問項目は以下の通 りである。

内発的動機づけ:

英語を勉強するのは楽しいから

英語を勉強して新しい発見があると嬉しい

英語の授業が楽しい 同一視的調整:

将来使えるような英語の技能を身につけたい

自分にとって必要なことだから

外国語を少なくとも一つは話せるようになりたい 取入れ的調整:

英語くらいできるのは普通だと思う

英語を勉強しておかないとあとで後悔すると思う

英語を勉強しなければまずいと思う 外的調整:

周りの大人にうるさく言われるから

良い成績を取りたい

英語を勉強しなければならない社会だから 無動機:

英語の何を勉強しているのかよくわからない

英語を勉強する理由を分かろうとは思わない

英語は勉強しても成績が上がらない気がする

心心理理的的

33

欲欲求求

((55

段段階階評評価価、、

99

項項目目、、廣廣森森

22000066))

:動機づけ尺度同様、廣森が作成した心 理的

3

欲求尺度(自律性、有能性、関係性)について、各

6

項目の中からなるべく反転項目 を含む

3

項目を選び、使用した。各尺度に対する項目は以下の通りである。

自律性:

英語授業の課題内容には選択の自由が与えられている

教師は授業の進め方などを相談してくれる

英語授業ではどんなことが勉強したいのか述べる機会がある 有能性:

英語授業での自分の頑張りに満足している

英語授業では達成感を味わうことができる

英語ができないと思うことがよくある

[

反転

]

関係性:

英語授業には和気あいあいとした雰囲気がないと思う

[

反転

]

(5)

英語授業では友達同士で学びあう雰囲気があると思う

英語授業では友達と協力して勉強できていると思う

英英語語学学習習のの自自己己評評価価

((44

段段階階、、

55

項項目目

))

:基礎英語受講者が自分の英語力についてどのよう な評価をしているのかを知り、基礎英語授業の効果を知るため、基礎英語で主に用いる英語 力として、語彙力(英単語・熟語)、文法、リスニング、英文読解、英会話の

5

項目につい て、

4

月には苦手

(=1)

から得意

(=4)

での

4

段階、

8

月には授業を通して分からない

(=1)

から 理解できた

(=4)

4

段階で自己評価させた。

自自由由記記述述:量的調査では、個別の問題意識や感想が分からないこともあるため、質的なデ ータとして、自由記述の質問を用意した。

4

月には、学生が抱える不安や課題を知ることで 今後のアドバイジングへ生かすという目的もあり、1)あなたが英語学習で最も苦手なこと、

不安なこと、分からないことを詳しく教えてください、2)この授業へのリクエストやコメ ントを自由に書いてくださいの

2

項目、

8

月には、授業を学生がどのように捉えているのか を具体的に理解し、学習不安を解消することができたのかについて検証することで今後の 授業運営に役立てるため、1)基礎英語の授業を受けて良かったと思うことがあれば自由に 記入してください、2)基礎英語の授業について改善してほしいと思うことがあれば自由に 記入してください、3)今後の英語授業について心配や不安なことがあれば自由に記述して くださいの

3

項目について尋ねた。

量的データの分析には

IBM SPSS Statistics 25

を使用し、質的データの分析には、

MAXQDA2020

を使用した。

3.結果

3-1 動機づけ尺度

初めに、動機づけ尺度の各項目について、記述統計を調べ平均値と標準偏差を確認した所、

4

月回答で取入れ的調整の

2

項目

(

英語を勉強しておかないとあとで後悔すると思う

=5.11

、 英語を勉強しなければまずいと思う

=5.05)

及び外的調整の

1

項目

(

良い成績を取りたい

=5.02)

8

月回答で取入れ的調整の

1

項目

(

英語を勉強しておかないとあとで後悔すると思

=5.01)

5

段階評価の最高点を超え天井効果を示した。

各尺度の信頼性

(Cronbach’s

α

)

を測定したところ、取入れ的調整

(4

月 α

=.52

8

月 α

=.71)

、外的調整

(4

月 α

=.31

8

月 α

=.49)

、無動機

(4

月 α

=.16

8

月 α

=.41)

がそれ ぞれ低い値を示した。どの尺度でも

4

月・

8

月共に同じ項目を削除することでαの値が改善 したため、取入れ的調整の「英語くらいできるのは普通だと思う」、外的調整の「周りの大 人にうるさく言われるから」、無動機の「英語を勉強する理由を分かろうとは思わない」の 各項目を削除したデータを使用した。外的調整と無動機のαは削除後も十分に高いとは言 えないが、自己決定度合いのレベルを確認するため、どちらも分析に含めた。

2

は、各動機づけ尺度の

4

月と

8

月の平均値、標準偏差、

Cronbach’s

α及び対応のあ る

t

検定の結果を示している。

t

検定の有意水準は

Bonferroni

の調整により

p < .01 とし た。表2によると、4月も8月も取入れ的調整が最も高い。4月は内発的動機づけの平均値 が最も低いのに対して、8月は無動機が最も低くなっている。更に、t検定の結果から、無 動機が4月から8月にかけて有意な負の変化を示し、内発的動機づけはBonferroniの調整 により有意ではないが正の変化を示した。

(6)

22

動動機機づづけけ尺尺度度のの平平均均値値、、標標準準偏偏差差、、

tt

検検定定結結果果

4

8

M (SD) α M (SD) α t値 p

内発的

2.83

(0.78) .75 3.09

(0.77) .67 -2.32 .023

同一視的

3.83

(0.83) .83 3.74

(0.99) .83 0.69 .490

取入れ的

4.01

(0.98) .82 3.80

(1.10) .85 1.33 .187

外的

3.78

(0.87) .55 3.76

(0.99) .60 0.14 .891

無動機

3.10

(0.90) .41 2.81

(0.83) .47 2.86 .006

3-2 心理的

3

欲求

各項目の記述統計を求めたところ、

4

月時点の有能性の

1

項目

(

英語ができないと思うこ とがよくある[反転]

=5.26)

が天井効果を示した。

各尺度の信頼性は、

4

月の自律性

(

α

=.34)

、関係性

(

α

=.23)

が低い値を示した。データに示 唆された各

1

項目

(

自律性:授業の課題内容には、選択の自由が与えられている、関係性:

授業には、和気あいあいとした雰囲気がないと思う[反転]

)

を削除した所、それぞれ

4

月 も

8

月もαが改善したため、これらの項目を削除した。また、有能性はαの値が

(4

月α

=.30

8

月α

=-26)

低く、削除を示唆された項目も異なった。有能性の欲求は分析上でも重要なた

め、尺度にまとめず各項目を個別に分析することにした。

33

心心理理的的

33

欲欲求求のの平平均均値値、、標標準準偏偏差差、、

tt

検検定定結結果果

4

8

M (SD) α M (SD) α t値 p

自律性

2.84

(0.73) .53 3.37

(0.92) .70 -3.91 .000

関係性

2.90

(0.91) .68 3.06

(1.10) .82 -0.87 .389

有能性

1 2.07

(0.85) - 3.23

(0.90) - -8.52 .000

有能性

2 1.66

(0.93) - 2.20

(1.17) - -3.22 .002

有能性

3 2.79

(0.81) - 3.44

(0.94) - -4.61 .000

(7)

表3は、自律性・関係性尺度及び有能性の各項目に関する平均値、標準偏差、

Cronbach’s

αと

t

検定の結果を示している。

4

月時点は関係性が最も高いが、全体的に低い値だった。

特に有能性

2(

英語ができないと思うことがよくある〔反転〕

)

は著しく低い値を示した。

8

月 時点では、自律性と有能性1及び有能性

2

が有意な正の変化を示し、

Bonferroni

の調整に より有意ではないが、有能性

2

が増加傾向を示した。

3-3 学生の自己評価

4

月時点での学生の英語力自己評価について記述統計を調べると、全項目(単語や熟語

=0.87

、文法

=0.76

、リスニング

=0.93

、英文読解

=0.62

、英会話

=0.65

)と最低得点

1

を大き く下回り床効果が見られた。図

1

4

月の学生の英語力自己評価の度数分布を示している。

どの項目も苦手・やや苦手が

80

%近くを占めているが、リスニングのみ苦手・やや苦手の 合計が

70

%程度となった。しかし、リスニングを得意と自己評価した人数は最も低かった。

また、英文読解と英会話は苦手を選んだ人数が最も多かった。

11

英英語語力力自自己己評評価価

((44

月月

))

8

月は、

4

月に自己評価をした同じ項目について、基礎英語の授業を通して理解できるよ うになったかについて尋ねた。図

2

はその内訳を示している。結果を見ると、英語や熟語、

文法については、

70

%程度が理解できた・やや理解できたと回答しており、リスニングは

60

%近くが理解できた・やや理解できたと回答している。

33 39 33 45 45

24 14

17

14 11

8 10 18 3 8

6 8 3 9 7

0 10 20 30 40 50 60 70 80

単語・熟語 文法 リスニング 英文読解 英会話

苦手 やや苦手 やや得意 得意

(8)

22

基基礎礎英英語語をを通通ししたた学学びびのの自自己己評評価価

((88

月月

))

自由記述の質問に対する学生の回答はコード化及びカテゴリー別に分類し、出現したコ ードを数えて数値化した。表

4

は、各質問に対して出現したカテゴリー、コード及びコード の出現数を表している。

授業開始時の英語学習で最も苦手なこと、不安なこと、分からないことに関する質問では、

具体的な英語力に関する記述が大多数を占め、特に語彙と文法に関する記述が多く見られ た。また、苦手意識や不安について、「英語の全てが苦手」「英語は全くできない」「周りの 人についていけるか不安」といった英語そのものへの苦手意識、「何を勉強していいか分か らない」「どういう風に覚えていけばいいか分からない」のような勉強方法への不安、「文法 を理解できないから苦手である」「単語を覚えても忘れてしまう」といった英語ができない ことへの自分なりの理由付けに関する記述もあった。苦手意識や不安を述べる際に、今まで の学習歴を振り返り、「やりたい気持ちはあるが勉強方法が分からない」「授業で分かっても 実際の試験ではできない」のように分かったつもりであるが実際は違う経験に関する記述、

「今までは覚えようともしなかった」「今まで避けていた」というこれまでのやる気のなさ の告白がなされていた。

一方、授業へのリクエストやコメントには、「これから頑張ります」といった決意表明や

「よろしくお願いします」のような挨拶が書かれていた。具体的な授業の進め方には、「基 礎からお願いします」「丁寧に教えてもらいたいです」のような教え方への要望、「グループ ワークやペアワークを沢山したい」という要望、「説明を聞いてできそうだと思った」のよ うに

1

回目の授業を通して安心感を得たというような感想が書かれていた。ごく一部が「最 終的には海外で意思疎通を取れるようにしたい」「英検

3

級レベルに上達したい」のような 理想像や具体的目標を挙げていた。

3 3 9 8 17

18 18

22 31

34

42 38

31

27

15

8 12 9 5 5

0 10 20 30 40 50 60 70 80

単語や熟語 文法 リスニング 英文読解 英会話

分からない やや分からない やや理解できた 理解できた

(9)

44 44

月月自自由由記記述述ののココーードド及及びびカカテテゴゴリリーー

質問内容 カテゴリー コード(出現数)

4 月

苦手、不安、分 からないこと

英語力 語彙

(35) /

文法

(33) /

読解

(12) /

リスニング

(8) /

英文作成

(6) /

発音

(2)

苦手意識・不安 英語そのものへの苦手意識

(14) /

勉強方法

(5) /

苦手な理由

(3)

学習歴の振り返り わかったつもり

(4) /

やる気のなさ

(4)

授業へのリクエ

スト・コメント

教員へのアピール 決意表明

(9) /

挨拶

(8)

理想の自己像 なりたい自分

(3) /

具体目標

(1)

授業の進め方 基礎から

(3) /

丁寧・やさしさ

(2) /

グループ ワーク

(2) /

分かりそう

(2)

8 月

良かったこと 授業の進め方 基礎から

(20) /

全体の良さ

(3) /

丁寧・やさ しさ

(4) /

面白さ

(1)

英語力向上 文法

(4) /

語彙

(3) /

コミュニケーション

(1) /

英語力全般

(1)

成長 成長の実感

(5) /

英語への興味

(1)

改善してほしい

授業の進め方 オンライン授業の進行

(3) /

指示言語

(1) /

他授業との一貫性

(1)

今後の英語授業 への不安

不安 ついていけるか

(7) /

基盤英語の単位取得

(7) /

自己の努力

(1) /

焦り

(1)

英語力 文法

(2) /

語彙

(2) /

読解

(2) /

リスニング

(1)

/

基礎学力

(2)

:( )

内の数値はコード出現数

8

月の授業終了時、授業の良かったこととして、「高校授業の復習ができた」「基礎が学べ た」「今まで分からなかった基礎を学べた」のように基礎的な内容を評価するコードが多く 出現した。また、「わかりやすかった」「全部良かった」という授業に対する大まかな評価や

「何に気をつければいいか分かりやすく説明してくれる」「優しく教えてくれた」といった 丁寧な指導を評価するコメントが見られた。また、具体的に向上した英語力について「文法 が理解できた」「知らない単語の意味が分かった」「英会話をするにあたっての土台ができた」

のようなコメントがあった。具体的ではないが、「力がついた」「前よりはわかるようになっ た」といった成長を実感しているコメントも見られた。

改善してほしい点としては、「

Zoom

授業の進行が早かった」「マイログでの提出物がやり づらかった」というオンライン授業に対する意見、「英語の指示の隣に日本語もほしい」と いう指示言語についての提案、「他の基礎英語授業と内容を一緒にしてほしい」のように教 員の違いによる授業内容の細かな差異に関するコメントがあった。

今後の英語授業に関する不安や心配としては、秋学期の基盤英語についていけるか、単位 取得ができるかの不安に関するコメントが多く見られ、一名は「自分がついていく努力がで きるかが不安」と述べていた。更に、具体的な英語力についてまだ不安が残るというコメン

(10)

トも見られた。

4.考察

ここでは、最初に設定した研究課題に沿って調査結果を考察する。

4-1 基礎英語受講生の英語学習動機づけはどのようなものか

3-1項の動機づけ尺度について、

4

月時点で天井効果を示した項目を見ると、取入れ的 調整や外的調整の項目で高く点数をつける学生が多く、基礎英語受講生は英語を勉強する 必要性を感じ、良い成績を取りたいという思いを強く持っていたことが分かる。表

1

4

月 時点の動機づけ尺度を見ると、外発的動機づけや特に取入れ的調整が高い様子が見られた。

また、内発的動機づけが低い結果も見られた。取入れ的調整は、他者からの承認を得るため に英語学習に取り組むという側面があるため、基礎英語受講者は英語を学ぶことが社会的 には当然とみられているという認識の元で学んでいるが、楽しみを見出すことは困難な状 態にあると言えるだろう。自由記述への回答において、英語への苦手意識だけでなく、これ までの学習歴について「やる気がなかった」「覚えようともしなかった」という記述もあっ たことも上記結果と一致しており、これまでの英語学習経験において、積極的に取り組む姿 勢があまりなかった学生がいた様子も伺える。これらの結果から、基礎英語受講者は、英語 を好きではないが社会的な承認を得るために必要なことであるとの認識の元、積極的では ないが学習に取り組んできたと考えられる。

4-2 基礎英語授業で学生の心理的

3

欲求を満たし動機づけに変化を与えることができ たのか

3-2項の結果を見ると、心理的

3

欲求は、

4

月から

8

月にかけて自律性と有能性の

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項 目がそれぞれ有意な正の変化を示していた。

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月時点の評価は今まで受けてきた英語授業に 対する全体的な評価であると考えると、学生は基礎英語授業には学修に取り組む自由度が あると捉え、授業を通じて英語をできると感じるようになってきたと考えられる。有能性の 実感については、3-3項における

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月の自己評価で特に単語や熟語・文法についてほと んどの学生が理解できた又はやや理解できたと答えたこと、更に、

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月の自由記述において、

具体的に向上した英語力に関する記述や成長の実感に関する記述があったことにも顕著に 表れているだろう。3-1項の結果からは、無動機が有意に減少し、内発的動機づけも有意 ではないが増加傾向を示した。つまり、基礎英語授業を通して学生は自律性欲求の充足を感 じ、英語をできるという有能性を実感することで、英語学習に意味がないという意識が軽減 され、英語学習への興味が高まりつつあると言えるだろう。

4-3 基礎英語受講者は英語学習に対して何に苦手意識を感じているのか

3-3項における

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月の自己評価において、全項目が床効果を示したことから、学生の 苦手意識の強さを見ることができる。リスニングについて苦手意識を感じる学生が一番少 なく、英文読解や英会話を苦手だと感じる学生が多い。単語・熟語や文法は「やや苦手」と 答える学生が英文読解や英会話よりも多くなっており、英語を使う活動が複雑化するとよ り苦手意識が高まると考えられる。一方で、自由記述のコードにおいては、苦手や不安なこ ととして語彙や文法に関するコードが最も多く現れており、学生は語彙や文法が基本とし
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て大切なものとして捉えていると言えるのではないだろうか。また、英語そのものへの苦手 意識を感じ、勉強方法が分からないという記述も見られたことから、英語学習の何に手をつ ければ良いのかが分からないという学生も多くいるのだろう。学習歴を振り返って、分かっ たつもりだったが現実的には理解できていないという記述、授業へのリクエストとして基 礎から教えてほしい、丁寧にしてほしいなどのコメントがあったことから、これまでの経験 や授業の進め方が学生の苦手意識を更に強めた可能性が考えられる。つまり、基礎英語の学 生は、語彙や文法のような初歩的な所で躓きを感じ、理解していたつもりでテストなどが分 からなかったという経験から、英語を苦手と感じていたと言えるだろう。

4-4 基礎英語授業は学生にどのような影響を与えたのか

4-2項でも述べたように、基礎英語授業を通して学生は自律性や有能性の欲求が充足 され、英語学習を意味あるものとして捉えるようになった様子がうかがえた。更に、3-3 項の自由記述結果を見ると、授業の進め方として基礎から丁寧な指導を良かったと評価し、

英語力向上など成長を実感している様子が伺え、

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名だが英語への興味がわいた学生がいる ことも分かった。オンライン授業の進行や指示言語についてなど改善してほしい点につい ての記述はあったが全体的なコメントは少なかったことから、基礎英語の授業が学生の不 安に寄り添った満足のいくものだったと考えられる。但し、今後の英語授業の単位取得に関 する不安が述べられているため、基礎を見直すことはできたものの、苦手意識や不安を完全 に払拭するには十分ではなかったと考えられる。

5.まとめ

本学の『基礎英語』の講義目的は、「必修科目である基盤英語に向けて学ぶ意義を認識さ せ、多くの演習を通して土台となる英語コミュニケーション能力を培い、失敗をおそれない 態度を身につけさせる。(外国語系科目の到達目標に対する関与程度の「関心・意欲・態度」

に最も強く関与する)」としている。本研究において、基礎英語の受講者は英語を勉強する 必要性を感じながら、一部では積極的に取り組むことができなかったと告白する学生もい たことは、講義目的が対象学生の今後の学修について情意的な支援も行うという意味で適 切なものと言えるだろう。

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学期間の授業を通して、有能性の欲求が充足され、英語学習を 意味あるものとして捉えるようになったこと、成長を実感するコメントが見られたことか ら、本講義の有用性もある程度証明されたのではないだろうか。

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月の調査結果は、各教員 に担当クラス分が配布されたため、授業やアドバイジングにおいても学生の不安や苦手意 識に寄り添うことができた可能性もあり、学生の動機づけを知ることは教員にとっても有 用なのではないだろうか。しかし、

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月のコメントにおいて、学生が今後の英語授業につい て不安を述べていることから、基盤英語(特に初級)においても継続的に学習意義を伝え、

英語学習に関心を持たせる授業構築が求められていると考える。

英語及び外国語教科では、言語だけでなくコミュニケーション、言語の背景にある文化、

思考力、調査力など様々な要素を含む。大学英語教育は、受験英語のように「知識」として 学んできた英語を「道具」として使いこなすための教育と言えるだろう。新基盤カリキュラ ムは始まったばかりであり、このカリキュラムによって学生の英語力及び英語学習意欲に どのような影響を与えるのか、本学の学生を理解していくためには不安やコミュニケーシ

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ョンに対する意欲など他の情意要因を含めた検証が今後必要と思われる。

参考文献

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Daubney, & J.-M. Dewaele (Eds.), New insights into language anxiety: Theory, research and educational implications, Multilingual Matters, pp. 11-30 (2017)

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参照

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