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ゲンジボタルの移入問題

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情報学部コンピュータ科学科 3 年生 J1-07037 金谷 憲一

ゲンジボタルの移入問題

夏に川辺で発光するゲンジボタルは、初夏の風物詩として人気が高く、その発光の強さや飛翔の優雅 さなどから、日本のホタル類の中でも人目を引きやすい。そのため、観光や自然回復をアピールする目的 で、しばしば他地域から人為的に移入されてきた。しかし、近年、移入したゲンジボタルが、在来のゲンジ ボタルの生態を乱すなどの問題が指摘されている。今回は、ゲンジボタルの移入の問題点について考え たい。

1. 概要

ゲンジボタルは 1 種(Luciola cruciata)であるが 1 系統ではなく、遺伝的生態的な地理的変異がある。し たがって在来のゲンジボタルと異なった系統のホタルの移入は避けるべきである。全国ホタル研究会では 安易なホタル移入を制限するために、ホタルの移入に関する指針を定めている。

前述のように、現段階ではゲンジボタルは種より下位の亜種には分けられてない。しかし、種より下位の 分類群の多様性も保護されるべきであることは世界共通の認識となりつつある。実際、1993 年に日本が 締結した生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)第 2 条には、 「生物多様性」の定義として、

種内(within species)多様性も明記されている。この国際条約に基づいて制定された日本の生物多様性 基本法(平成 20 年 6 月 6 日施行)第 2 条も同様である。

2. 松尾峡へのゲンジボタルの移入

現在、移入ゲンジボタルが問題となっている地域の一つに長野県辰野町がある。辰野町松尾峡は昔か ら「ホタルの名所」として知られ、毎年多くの観蛍客が訪れる。2008 年に全国ホタル研究会に寄せられた 全国各地(青森県から宮崎県 67 ヶ所)のゲンジボタル発生状況を見ると、松尾峡の発生数は群を抜いて いる(1 位、松尾峡、16020 匹;2 位、山口市、1155 匹、いずれも 1 日当たり)。つまり松尾峡は、1 日に 2 位山口市の 10 倍も発生したのである。もちろん、これは全国ホタル研究会に連絡があった場所だけの話 であるが、それにしても松尾峡には大量のゲンジボタルが発生する。

松尾峡は 1926 年に長野県天然記念物に指定され、1960 年に再指定された。しかしその後、減少した ゲンジボタルを補うために、観光用に他地域からゲンジボタルの大量移入を繰り返し、それを養殖してき た事実はあまり知られていない。詳しくは、以下の通りである。

1960 年代に、松尾峡のゲンジボタルの数は著しく減少した。原因は、辰野町を流れている天竜川上流 の諏訪湖の水質悪化である。そのため、1961 年と 62 年に、滋賀県守山市の成虫を 4000 匹ずつ購入し、

産卵させ、各々の年に約 40 万匹と 30 万匹の孵化幼虫を放流した。1963 年と 64 年には、東京の椿山荘 から、コケに産み付けられたゲンジボタルの卵を数百万個から数千万個移入した。ちなみに、1963 年の 移入卵の一部は横須賀市自然博物館に送られた。

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3. ゲンジボタルの移入の問題点

前述の経緯から、現在の松尾峡のゲンジボタルは、ほとんどが移入ゲンジボタルに入れ替わってしまい、

元々生息していた天然の松尾峡ゲンジボタルとは進化系統も発光周期も異なることが分かって来た。よっ て、松尾峡ゲンジボタルの発光パターンや遺伝子を研究する際には、上記の移入経緯に十分注意する 必要がある。事実、松尾峡から 3km 上流の岡谷市駒沢には松尾峡とは全く異なる発光パターンを示すゲ ンジボタルが生息する。

前述のように、ゲンジボタルの移入は各地で問題となっているが、辰野町のように地方自治体による移 入ゲンジボタルの大規模養殖は全国的に見ても稀有である。辰野町は天竜川最上流部に位置し、下流 には多くの天然ゲンジボタルの生息地が存在する。その関係から、松尾峡の移入ゲンジボタルが下流地 域の天然ゲンジボタルの生態を乱しているという事実も判明した。2008 年の調査では、下流地域では、松 尾峡からあふれ出した移入ゲンジボタルが在来のゲンジボタルの生存を脅かし、ある地点では既に 9 割 が移入ゲンジボタルとなっていることが判明した。この問題は、松尾峡が大規模なホタル養殖の観光地で あるため、いくつかの主要新聞でも取り上げられた。しかし、これらは地域面であったり夕刊であったりした ために、県外はもとより、県内でも十分には知られていない。

4. 今後の動き

ゲンジボタルの移入に関しては、その影響を研究することも大事だが、まずは安易な放流を中止するこ とが求められている。そのためには、文部科学省や環境省がゲンジボタルの移入の問題点を一般に周知 させるべきだ、という意見も出されている。一部地域では、ゲンジボタルの移入の問題点を指摘された後、

移入ゲンジボタルを排除し、本来生息していたのと同じ系統のゲンジボタルを増やそうという試みが始ま っているという点にも注目したい。

5. 感想

今回、ゲンジボタルの移入問題について調べたが、ゲンジボタルには遺伝的生態的な地理的変異があ り、地域によって進化系統や発光周期が異なるということが分かり、大変勉強になった。

また、移入したゲンジボタルが、在来のゲンジボタルの生態を乱すなどの問題があることも分かった。在 来のゲンジボタルが減少するということは、好ましくないことである。

ゲンジボタルの数を増やすためには、他地域から移入するのではなく、まずは在来のゲンジボタルを保 護することを考えるべきである。

 参考文献

全国ホタル研究会誌,(36):13-14,2003

参照

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