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表面技術の生体医工学応用

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 43-49)

Application of Surface Technology to Biomedical Engineering

橋本 成広,安田 利貴

Shigehiro HASHIMOTO, and Toshitaka YASUDA

Keywords : Micromachining, Biomedical engineering, Cell, Flow

1.緒言

本研究では,細胞の挙動・組織の形成を観察するためのin

vitro 実験システムを構築する.生体医工学研究センター

BERC の成果として得られた細胞培養流路(1)を発展させて,

マイクロ流路内での細胞の挙動を解析する実験システムを 構築する.毛細血管や,臓器,血管分岐などの血液流路を模 した流路システムにおいて細胞の挙動を解析するシステム,

細胞の配向・増殖・分化・組織化などへの力学刺激の影響を 解析するシステムなどの開発を進める.細胞は足場に付着し て増殖する性質を有するため,表面の凹凸・性状(親水性・

疎水性など)の制御技術の開発の成果を,細胞の付着制御の 技術へ応用するなど,他のテーマと連携して,本テーマの研 究の推進を加速する.培養細胞の配向・増殖・分化・組織化 を制御するための力学的刺激の方法がわかれば,再生医療に おける細胞の組織化の加速技術などに寄与することが見込 まれる.マイクロ加工技術によって,細胞培養用のプレート の表面にマイクロメートルオーダーの凹凸パターンを設計 し,また,表面加工技術を確立する.

2.材料と方法 2.1 マイクロ加工足場

細胞を培養するために以下の足場を設計・用意した.光造 形法によって,細胞の浮遊状態での直径を以下の寸法として,

0.01 mm以下の縞模様(2) (Fig. 1)・市松模様のマイクロ凹凸 (Fig. 2) (35)・表面硬度の異なる縞模様(6)(「ポリジメチルシ ロキサン(PDMS)」の帯とより硬い「光硬化性樹脂SU-8」の 帯とを交互に配置した)(Fig. 4)を施した足場を作成した.ま た,背面に微小突起マーカを伴った透明フィルム状足場(7,8) を作成した(Figs. 5&6).電気刺激・計測のための表面電極を 組み込んだ足場(911)を作成した(Figs. 7-10).また,チタン製 マイクロコイルばね(12)を足場に適用した(Fig. 11).

2.2 力学刺激試験

せん断流れ場における細胞等の変形・移動・配向を観察す るために,平行平板間流路および回転円盤を適用したクエッ ト流れ試験機(1315)を作成した(Fig. 12).細胞の培養中に流れ 方向を変化させることができる十字型流路(16)を作成した (Fig. 14).あらかじめ配向させた細胞に流れ刺激を加えるた めに,平行平板間流路の途中の足場に凹凸縞模様(17)を作成 した(Figs. 15-17).光造形法によって,流路中に隙間0.0004 mm~0.020 mmのスリット(1823)を設けた(Figs. 18-22).培養 液中に分散された細胞等をシリンジポンプによって一定の 流量で吸引した.

流路における一様な速度分布を仮定し,流体の粘性係数か ら壁面せん断応力を算出した(最大2 Pa).流路に曝された 細胞等の挙動を光学顕微鏡で観察した.足場に接着した細胞 の変形・配向・移動をタイムラプス撮影によって追跡した。

遠心分離機(最大 100 G)を利用して過重力環境(2426)を 用意した(Fig. 23).超音波振動子を培養皿底面外側に貼り付 けて(27)1 MHzの持続的な振動を加えた(Fig. 24).

2.3 実験に供した細胞等

実 験 で は , マ ウ ス 筋 芽 細 胞 (C2C12), マ ウ ス 癌 細 胞

(Hepa1-6),マウス骨細胞(MC3T3-E1),マウス脂肪前駆細 胞(3T3-L1),マウス線維芽細胞(L929),HUVEC(ヒト臍 帯静脈内皮細胞),および,マウス神経芽細胞(Neuro-2a)

を用いた.これらの細胞を310 K,CO2 5%の環境下で培養し た.また,比較対象として,ブタ赤血球を用いた.

3.結果および考察

マ イ ク ロ 尾 根(Figs. 1,8,9,16)お よ び 市 松 パ タ ー ン(Figs.

2&3)・マイクロコイルばね(Fig. 11)・縞模様(Fig. 4)におい て,足場の表面形状に依存した細胞の配向が観察された.高

さが0.0007 mm以上の表面の凹凸があるとき,凹凸に合わせ

て,細胞が配向した.縞模様の長軸と細胞の長軸方向が一致 する様子が走査電子顕微鏡像において確認された(Fig. 1).市 松凹凸パターンの対角線方向への配向(走査電子顕微鏡塑像

Fig. 2)を利用して,配向・組織化させた位相差顕微鏡像をFig.

3に示す.縞模様パターンにおいて,筋芽細胞のSU-8への 移動(走硬性)を観察することができた(Fig. 4).

背面に微小凹凸マーカの配列を有する透明薄膜の走査電 子顕微鏡像をFig. 5に示す.その薄膜を足場として筋芽細胞 を培養し,電気刺激に伴う筋管の収縮を光学顕微鏡下で測定 できた(Fig. 6).流路の途中に設けた表面電極付近で,加えた パルス電圧に反応して細胞が移動する様子が観察された (Fig. 7).位相差顕微鏡像において,足場上に設けた縞状の凹 凸に応じて配向した細胞が観察された(Figs. 8&9).この配向 が電極間のインピーダンスの差として検出されたと考えら れる(Fig. 10).位相差顕微鏡像において,チタン製スプリン グのコイル間を橋渡しして吸着する筋芽細胞が観察された (Fig. 11).

せん断流れ下(Figs. 12-17)では,せん断応力2 Paを超える と、流れの影響が大きくなり,足場上での細胞の下流への移 動・流れによる剥離が生じた.せん断応力2 Pa以下では,

細胞は,足場上で変形・移動し,筋細胞では流れと垂直の方 向に配向し,走行した(Fig. 13).流路の途中の底面に,流れ に対して角度の異なる縞模様を作成することができたこと が,走査電子顕微鏡像で確認された(Fig. 15).壁面せん断応

力が2 Pa以下の流れ場において,細胞の凹凸縞模様に沿っ

た移動が位相差顕微のタイムラプス画像において確認され た(Figs. 16&17).

マイクロスリットを通過中の細胞の変形・配向が観察され た.調整されたスリット幅によって細胞を振り分けられた.

また,赤血球の捕捉・変形が観察された(Fig. 19-22)50 G程度の過重力刺激 (Fig. 23) 後においては,過重力の 方向への配向,また筋細胞では過重力と垂直な方向への配向 が観察された.超音波振動刺激下(Fig. 24)で細胞の増殖の促 進が観察された.

これらの表面および周辺力学場の影響は,細胞の種類や状 態によって変化すると考えられる.

Fig. 1: SEM image of L929 cultured on ridge-lines for 24 hours.

Fig. 2: SEM image of C2C12 adhered on surface of scaffold with checkered micro-pattern.

Fig. 3: C2C12 cultured on micro checkered pattern for 20 days.

Fig. 4: C2C12 (each contour is traced) cultured on micro pattern for 24 hours. Dimension from left to right is 2.2 mm.

Fig. 5: SEM image of micro protrusions array marker on back-side of scaffold film: dimension from left to right is 0.15 mm.

Fig. 6: Cultured myotubes and rear markers.

Fig. 7: C2C12 (marked in circle) near electrode: flow from right to left: every five seconds: upper left, upper right, lower left, lower right, in sequence.

Fig. 8: C2C12 after 24 hours of culture on micro pattern A near electrode.

Fig. 9: C2C12 after 24 hours of culture on micro pattern B near electrode.

Fig. 10: Orientation of cells on micro pattern A (left) and B (right).

Fig. 11: SEM image of cells on coil spring.

Fig. 12: Couette flow device. Upper disk rotated by motor.

Fig. 13: Migration of ten cells (C2C12) under shear flow (wall shear stress of 1 Pa). Unit: micrometer.

Fig. 14: Design of cross type of flow channel.

Electrode Micro pattern

Cell

Fig. 15: SEM image of micro grooves on glass: angle (θ) between the longitudinal direction of the groove and the flow direction: 0 rad (left), 45 degree (middle) and 90 degree (right).

Fig. 16: Cells on micro-pattern at seeding (left), and at 2 hours without flow after seeding (right). Flow will be applied from left to right.

Fig. 17: Migration of cell on ridges of 45 degree at wall shear stress of 1 Pa (left) and 3 Pa (right).

Fig. 18: Slit between ridges.

Fig. 19: Hepa1-6 flows through slit from right to left (a→d).

Dimension from left to right is 2.4 mm on each figure.

Fig. 20: Scanning electron microscope image of slit between micro pillars.

Fig. 21: C2C12 is captured between micro cylindrical pillars:

diameter of cylinder is 0.025 mm: flow from left to right.

Fig. 22: Hepa1-6 through slit: flow from left to right, bar shows 0.1 mm.

W H

Trac e

x [μm]

x [μm]

Fig. 23: Centrifuge in incubator.

Fig. 24: Vibration in incubator.

4.結言

(1) 間隔の異なる縞状のマイクロ尾根を伴う足場を作成し た.マイクロパターン上での各種細胞の挙動を観察したとこ ろ,マウス筋芽細胞が尾根の長手方向に伸びる傾向が見られ た(Fig. 1).

(2) マイクロ加工技術によって,市松模様の凹凸を有する足 場を作成し,凹凸の形状に応じて,筋芽細胞の配向を制御で きることを見出した(Fig. 2&3).

(3) 表面硬度に応じた細胞の移動が観察された(Fig. 4).

(4) 培養中の筋細胞の収縮を観察するための微小突起マー カを伴った透明フィルム状足場を作成し、電気パルス刺激に 同期した反復収縮変形を計測できた(Figs. 5&6).

(5) マイクロ流路中に設けた表面電極付近での細胞の移動

(誘電泳動)を観察できた(Fig. 7).

(6) マイクロ加工技術によって,表面電極を作成し,電極間 の細胞の配向に応じたインピーダンスの違いを検出するこ とができた(Fig. 8-10)

(7) チタン表面電極付近の細胞の挙動を観察し,チタン製マ イクロコイルばね上での筋芽細胞の培養への応用を試みた (Fig. 11).

(8) 回転円盤を適用したクエット流れ下での細胞培養シス テムを設計製作し,骨細胞が流れ方向に向くのに対して筋芽 細 胞 は 流 れ に 斜 め の 方 向 に 向 く こ と を 見 出 し た (Figs.

12&13)

(9) 細胞の培養中に流れ方向を変化させることができる十 字型流路を作成し,流れ刺激方向の変化に応じて,筋芽細胞 が向きを変化させることを見出した(Fig. 14).

(10) 足場に凹凸縞模様によってあらかじめ配向させた細胞

に流れ刺激を加え,2 Paを超えると,細胞が流れ方向に従っ た変形・移動することがわかった(Figs. 15-17)

(11) マイクロ尾根の組み合わせによって,0.0004 mmまたは

0.010 mmのマイクロスリットを作成し,マウス癌細胞やブ

タ赤血球が変形しながら通過する様子を顕微鏡下で観察で きた(Figs. 18&19).

(12) 新たに作成した「マイクロ円柱間スリット」を用いて,

大きさと変形性に従って細胞の振い分けが可能であること がわかった(Figs. 20&22).

(13) 遠心力を利用した力学場における培養によって,細胞

が配向し,変形することを見出した(Fig. 23).

(14) 1 MHzの機械的振動によって細胞の増殖を促進するこ

とができ,その適度な強度は細胞の種類ごとに異なることを 見出した(Fig. 24).

<参考文献>

(1) S. Hashimoto, F. Sato, H. Hino, H. Fujie, H. Iwata and Y.

Sakatani, Responses of Cells to Flow in Vitro, Journal of Systemics, Cybernetics and Informatics, 11(5) (2013) pp.

20-27.

(2) H. Sugimoto, H. Hino, Y. Takahashi and S. Hashimoto, Effect of Surface Morphology of Scaffold with Lines of Micro Ridges on Deformation of Cells, Proc. 20th World Multi-Conference on Systemics Cybernetics and Informatics, 2 (2016) pp. 135-140.

(3) K. Sugimoto, Y. Takahashi, H. Hino and S. Hashimoto, Effect of Aspect Ratio of Checkered (Ichimatsu) Convexo-concave Micro-pattern on Orientation of Cultured Cells, Proc. 20th World Multi-Conference on Systemics Cybernetics and Informatics, 2 (2016) pp. 141-146.

(4) 高橋優輔,杉本健太,日野 遥,橋本 成広, マイクロ市 松パターンが筋芽細胞の配向に与える影響, 日本機械 学会論文集, 83(854) (2017) pp. 1-10.

(5) K. Sugimoto, Y. Takahashi, S. Hashimoto and H. Hino, Effect of Aspect Ratio of Checkered Convexo-concave Micro-pattern on Orientation of Cultured Single Cell, Proc.

21th World Multi-Conference on Systemics Cybernetics and Informatics, 2 (2017) pp. 221-226.

(6) Y. Takahashi, K. Sugimoto, S. Hashimoto and H. Hino, Effect of Mechanical Property of Scaffold Surface with Micro Hybrid Striped Pattern on Cell Migration, Proc. 21th World Multi-Conference on Systemics Cybernetics and Informatics, 2 (2017) pp. 227-232.

(7) Y. Takahashi, K. Sugimoto, H. Hino, T. Katano and S.

Hashimoto, Design of Scaffold with Array of Micro Projections to Trace Intra- and Inter-cellular Behavior, Proc.

20th World Multi-Conference on Systemics Cybernetics and Informatics, 2 (2016) pp. 159-164.

(8) Y. Takahashi, S. Hashimoto, K. Sugimoto, D. Watanabe and

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 43-49)