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濡れ・付着機能の創成とマイクロマニピュレーションへの応用 Construction of wetting and adhesion function for micro manipulation

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 71-78)

Production of Fluid Function and Their Applications to Thrusters

4.2. 濡れ・付着機能の創成とマイクロマニピュレーションへの応用 Construction of wetting and adhesion function for micro manipulation

見崎 大悟 Daigo MISAKI

Keywords : Micro manipulation, Liquid bridge force ,Controllable adhesives,3D printing

1.諸言

近年,微細加工技術の発展により,電子部品から機構部品 まで様々な部品の小型化が可能となった.特に携帯電話・ス マートフォンの普及により製品の小型化,軽量化,集積化や それに伴う高機能化への要求は高まる一方であり,これを実 現するために積極的な技術開発が行われている.一方でマイ クロパーツを用いた製品の研究開発段階での試作に伴う作 業や製品の組立作業でそのハンドリングを担う装置や技術 の開発や,その普及は十分とはいえないのが現状である.原 因として,大きさが数μm から数百μm の微小物体の操作 において,マイクロマニピュレータのエンドエフェクタや作 業領域の床面と操作対象物との間に凝着力が働き,引力を生 じることが原因で操作対象物の把持・解放が困難であるとい う課題があげられる.また,微小物体の把持・解放方式とし て静電力を用いたものや熱による把持力の制御を行う研究 がされてきたが,操作対象物に電子部品を想定したとき,大 きな静電力や熱を加えないことが望ましいと考えられる.

本研究では,はじめに,液架橋力をもちいたマイクロマニ ピュレーションの操作性の改善に向けて下記の研究を実施 した.液架橋力を利用したマイクロマニピュレーションの操 作性の向上に関する基礎研究として下記の研究をおこなっ た.

(1) 液架橋力をもちいたマイクロマニピュレーションシス テムの開発および検証

(2) マニピュレーションシステムの操作性向上に関する提 案・検証

その後,完成したマニピュレーションシステムに対して,濡 れ・付着機能の創成がどのように応用できるのかを検証おこ なうために,下記の研究をおこなった.

(1) マニピュレーションシステムのコンセプトに適応する 濡れ付着面の創成方法

(2) 動的な液架橋力の制御機構を持つ作業面の提案 2.液架橋力を用いたマイクロマニピュレーション 2.1 液架橋力を用いた主なピックアップとプレース手法

液架橋力を用いたピックアップ方法を Fig.1 に示す.はじ めにキャピラリ先端部から微小な液滴を吐出した状態にし, ピックアップをおこなう微小対象物の真上中心部にキャピ ラリ先端部を位置決めし配置する(Fig.1(a)).次にキャピラ リを徐々に降下させ,液滴を微小物体に接触させる(Fig.1(b)).

最後にキャピラリを上昇させると,マニピュレータと微小対 象物間に液架橋が発生し,発生した液架橋力により微小対象 物のピックアップをおこなうことができる(Fig.1(c)).

Fig. 1 液架橋力によるピックアップ作業のプロセス

次にマイクロパーツを配置する方法をFig.2に示す.まず 床面の配置したい場所にキャピラリを用い,あらかじめ液滴 を少量付着させておき(Fig.2(d)),その場所の上にマイクロ パーツを配置する(Fig.2(e)).次にマイクロパーツを垂直に 降下させ,マイクロパーツを床面の液滴に接触させる.そう すると床面・キャピラリ間に液架橋力が発生する(Fig.2(f)).

この時,キャピラリ・マイクロパーツ間に比べ,床面・マイ クロパーツ間に存在する液滴が多い.液架橋力は液滴の接触 面積に比例する力であるため,床面・キャピラリ間に発生す る液架橋力の方が大きくなるため,キャピラリを上昇させる と床面にマイクロパーツを配置することができる(Fig.2(d)).

Fig. 2 液架橋力をもちいたプレース作業のプロセス

2.2 液架橋力

液架橋力とは Fig.3のように 2つの物体間に付着した液 体に作用する力のことであり,等径粒子間に形成された液架 橋による液架橋力は式(1)で表される.この式は,液架橋内の 負圧による仕事と,気液界面に働く表面張力による仕事から 導出される.マニピュレータとして液架橋力を利用するため には,キャピラリ先端部と微小物体,微小物体とプレース面 間の液架橋力を制御する.所望の作業を精密におこなうため には,R1とR2をどのように制御するのかという点が課題で ある.

𝐹 = −𝜋𝑅22𝛾 (𝑅1

1𝑅1

2) − 2𝜋𝑅2𝛾 (1)

(γ :液体の表面張力)

Fig. 3 等径粒子間に形成された液架橋力の基本モデル

2.3 マイクロマニピュレーションシステム

本研究で使用したマイクロマニピュレーションシステム の基本構造をFig.4に示す,操作者は,100μm前後物体を観 察,操作することで微細物体の操作をおこなうことが可能で ある.操作の対象物の位置決め精度はXYZテーブルの最小

分解能の0.25μmである.このシステムは,PCに接続した

操作入力用のキーボードおよびジョイスティック,操作用の キャピラリを取り付けた微動ステージと,微動ステージに搭

(a)

(d)

(c) (b)

(e) (f) (g)

(a)

(d)

(c) (b)

(e) (f) (g)

ズームレンズカメラ

コントローラ 光源 ディスプレイ

(顕微画像+支援情報)

除振台

ポンプ

3軸ステージ

1軸ステージ CMOSカメラ

キャピラリフォルダ

キャピラリ 作業台 PC

入力装置

載されたモータを駆動するためのモータコントローラ,キャ ピラリから液体を吐出・吸引するための空圧インジェクタ,

微細物や作業スペースを観察するための光源と高倍率レン ズを取り付けたCMOSカメラ,カメラを移動させるための 自動 X 軸位置決めステージにより構成されている.操作入 力装置以外の装置は除振台に固定して,外部の振動の影響を うけないよう設計をしている.

Fig. 4 マイクロマニピュレーションシステムの概要

3.キャピラリの制御による液架橋力の制御

提案するシステムでは,理想的には Fig.1,Fig2 で示すよ うな作業でピックアンドプレース作業をおこなうことが可 能であるが,キャピラリからの流量の制御,顕微鏡の視野の 狭さ,作業面の特性などに関して事前の作業が必要など課題 も多い.そこで,はじめに,キャピラリの操作の自由度を増や すことで,操作性の向上を目指す研究をおこなった.

3.1 液架橋力の測定方法

微小対象物として粒径200μmのソーダ石灰ガラス製の高 精度ユニビーズを用意し,Fig.5に示す精密天秤内にあるス ライドガラス上に設置する.設置された微小対象物はスライ ドガラス上に張ってある両面テープで固定してピックアッ プ作業をおこなっても持ち上がらないようにする精密天秤 に表示されている値を0に合わせて,固定された微小対象物 を液架橋力を用いてピックアップする.この際,精密天秤に表 示されている値を110ms毎に取得する.天秤に表示される値 は液架橋力によってマイナス値まで記録される.事前作業で 0 点合わせをおこなっているので,ここでのマイナスの値は 発生した液架橋力である.これにより液架橋力を測定できる.

Fig. 5 液架橋力の測定方法

3.2 キャピラリの直動動作による液架橋力の制御

基本実験としてキャピラリの引き上げ距離と液架橋力の グラフ(引き上げ速度1μm/s)を計測した結果をFig.6に 示す.キャピラリの先端と微細物間の距離を離すことによっ て,架橋の形状が変化していき架橋力が距離とともに減少し ていき,最終的には物体間での架橋力がなくなる.また,Fig.7 は引き上げ速度を1~25μm/sの間で変化させ,発生する液 架橋力を各5回ずつ測定して,発生した最大液架橋力の平均 からグラフを作成した.液架橋力を精密に制御することがで きれば,微小物のピック&プレースがより簡単になる.しか し,キャピラリの直道動作だけでは,十分に液架橋力を制御 すること簡単でないことがわかる.そのため,キャピラリに関 するいくつかの動作について検討をおこなう.

Fig. 6 液架橋力と変位の関係

Fig. 7 液架橋力と引き上げ速度の関係

3.3 6自由度の回転マニピュレータ

XYZ ステージに固定したキャピラリの直道動作だけでは,

顕微作業のより複雑な立体組み立てが困難であるために,

Fig.8に示す6自由度の回転マニピュレータの機構の設計・

開発をおこなった.機構の全体の構造として,微小物を載せ た作業台を囲むような構造となっている.この構造は各回転 軸が作業台を干渉せずに,各回転軸の回転中心を機構の先端 に合わせるためである.これにより,機構の先端を動かさず 回転させることができる.X,Y軸回りの機構のアクチュエ ー タ は バ イ オ メ タ ル を 使 用 し た . バ イ オ メ タ ル は SMA(Sharp Memory Array:形状記憶合金)で,電流を与え ると収縮する針金のような形状のアクチュエータである.ま たXY軸回りの機構はバイアスを用いており関節を一方か らはバイオメタル,もう一方は引張りバネで反力を与え関節 の角度を変化させる構造である.

Z軸回りの機構は作製した機構の先端部なため,軽量であ る必要がある.そのためアクチュエータはバイオメタルで動 作する軽量のサーボモータスマートサーボ RC-1 を使用し た.

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 71-78)