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パルスビーム加工による材料表面の機能創成と応用

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 37-43)

Functional Creation and Application of Material Surface by Pulse Beam Machining

武沢 英樹 Hideki TAKWZAWA

Keywords : EDM, Micro-bubble, Surface roughness, Permanent Magnet, Surface Magnetic Flux Density 1.緒 言

高硬度材料の精密加工を得意とする放電加工は,絶縁液中 で電極と工作物間にパルス電圧を印可し,微小な放電を繰り 返すことで,材料を溶融除去する加工法である.非接触熱エ ネルギ加工であり,加工反力が小さいため微細加工への応用 が広がっている.加工面は,微小な放電痕の累積で形成され ており,放電条件を一定とすれば,ほぼ同様な除去量の放電 痕形状が重なり合い,表面粗さもそれに従った値に落ちつく.

その一方で,放電面には溶融部が飛散しきれずに残留した溶 融再凝固層が存在する.加工材料にもよるが,鉄鋼材料では 溶融部が急冷されることで加工面には引張り応力が残留し,

クラックの原因ともなっている.

放電加工における絶縁性加工液は,極間の絶縁回復,放電 点の冷却,気化爆発による溶融部の飛散,飛散した溶融部の 工作物表面への再付着防止など様々な作用を担っている.材 料の溶融量は,極間に投入される放電エネルギでほぼ決定さ れ,溶融量のうちどの程度が飛散するかにより加工速度や表 面粗さが変化すると考えられる.この溶融量の飛散状況によ り,形成される放電痕が影響を受け,その連なりで形成させ る加工面の表面性状が変化する.ところで,最近50µm以下 の微細気泡を含有させた微細気泡(マイクロバブル)水によ る洗浄や殺菌効果が注目され始めている.さらに,研削加工 の加工液に微細気泡を含有させることでその研削特性が変 化するなどの報告もある1).上記バブルの生成には大気が用 いられているが,導入気体を窒素やアルゴンなどボンベから 供給することも可能である.この場合,放電加工の加工液に 微細気泡を含有させると,極間にガス成分を含んだ微細気泡 が存在し,放電加工の高温高圧状態により化学反応が進行す るのではないかと考えた.つまり,窒素ガスによる微細気泡 を放電加工液に混入すれば,工作物表面に窒化物を生成でき るのではないかと予測した.さらに,微細気泡を含有させた 加工液中で放電加工を行えば,加工液の気化爆発力が変化す ることも考えられる.特に,放電により生成する気泡に微細 気泡が併合すれば気化爆発力に変化が生じ,バブル混入の有 無により放電加工後の面性状に違いが生じるのでは無いか と推察された2)

Fig.1 Comparison of removal rate and surface roughness

また,難削材加工が得意な放電加工であるが,その中で硬 脆材料である着磁後の永久磁石に対して,穴加工などの形状 加工を行うと,磁石形状の変化に加え放電加工で生じる磁石 内部の温度上昇により磁石表面の磁束密度分布が変化し,多 極磁石のようなパターニング加工が可能なことも見出して きた.通常,粉末冶金法で成形されその後飽和状態にまで着 磁され永久磁石となる.複雑形状の磁石が必要な場合は,着 磁前に,主として研削加工にて形状を成形してから着磁され る.ところが,着磁後の永久磁石を放電加工することで,磁 石形状が変化すること,および熱エネルギ加工による磁石内 部温度の上昇により複雑な磁束密度パターンが得られるこ とがわかり,その制御法を含め検討が続けられてきた.

本報告では,材料表面の機能創成を目的に,マイクロバブ ル混入放電加工の効果と,永久磁石の放電加工特性とパター ニングについて報告する.

2.マイクロバブル混入放電加工

2.1 中荒加工条件におけるマイクロバブル混入の効果 加工は形彫放電加工機(ソディック製:AM3L)を使用し て行った.微細気泡は,超微細気泡発生装置(アスプ製:

MA5S)を用いた.含有気体は大気である.微細気泡を含有 させた加工においては,電極中心(直径1mm)からバブル 混入加工液を噴射して,極間に直接バブル混入加工液を導入 した.電極には直径10mmの銅電極を,被加工物にはS45C を使用した.放電条件は,電流値 20A,パルス幅 200µs,

D.F.50%の中荒加工条件であり,加工時間を15分と設定し

て3回の実験を行った.バブル混入無しでは,加工液噴出は 行っていない.

純水を加工液とした時の,加工速度と加工面粗さ(Ra)

の比較を図1に示す.加工速度(棒グラフ)は,電極極性に よらずバブル混入のほうが若干大きな値を示す.一方,加工 面粗さは,電極極性(+)では大差がないが,電極極性(-)

において,バブル混入のほうが小さい傾向を示した.加工速 度が向上しているにもかかわらず面粗さが良くなった理由

Fig.2 Comparison of removal rate and surface roughness

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Removal rate mg/min i

0 1 2 3 4 5 6 7

Surface roughness Ra mm Pure water Mixed micro-bubble Pure water Mixed micro-bubble

Electrode polarity (+) Electrode polarity (-) in Water

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

Removal rate mg/min i

0 1 2 3 4 5 6 7

Surface roughness Ra mm

Oil Mixed micro-bubble

Oil Mixed micro-bubble

Electrode polarity (+) Electrode polarity (-) in Oil

を確かめるために放電頻度と単発放電痕の観察を行ったと ころ,両極性とも放電頻度はバブル混入のほうが1.6倍程度 上昇していた.これより,単発放電痕除去量は減少している にもかかわらず,放電頻度が上昇したため,面粗さが良好に なったが加工速度が向上したのではないかと推察された.

一方,加工液を放電加工油とした時の,加工速度と加工面 粗さ(Ra)の比較を図2に示す.加工液を放電加工油とす ると,加工速度,面粗さともバブル混入の有無で大きな差異 は見受けられなかった.放電頻度も大差が無かったことから,

中荒加工条件では油加工液に微細気泡を混入しても効果が ほとんど無いことがわかる.

2.2 仕上げ加工条件におけるマイクロバブル混入の効果 前節に示したように,中荒加工条件ではマイクロバブル混 入の効果が,仕上げ面粗さに対して大きく影響が見られなか った.そこで,加工条件を仕上げ条件に変更し,マイクロバ ブル混入の効果を調べた.電極極性をプラスとし,電流値

5A,パルス幅32µs,D.F.50%の条件であり,これまで同様

にバブル混入の場合は直径10mmの銅電極中央部から加工 液を噴出した.工作物をS45Cとして直径10mmの電極が 全面当たりする程度の深さ0.2mmの加工指定で加工を行っ た.加工後の表面粗さを1サンプルにつき5ライン計測し,

2サンプル合計10ラインの最大最小を除いた8ラインの 平均を粗さデータ(JIS’01)とした.

Fig.3 Change in surface roughness Ra

Fig.4 Change in surface roughness Rsk

Fig.5 Change in electrode wear rate

図3には,純水加工,純水噴射加工,3種のマイクロバブル 混入加工液の噴射加工,合計5種類の表面粗さRaの比較を 示す.加工液の噴射がない純水加工よりも,残り4条件にお いて若干Raの数値は良くなる傾向が見られる.ただし,こ の場合も各種ガスのマイクロバブル混入の効果は明確でな く,加工液を電極中央部より噴射した影響が大きいとも考え られる.ただし,表面粗さのパラメータの中で測定面の歪度 を表すRsk(スキューネス)の値に,バブル混入有無の差が 現れた.Rskは,粗さ曲線の高さ方向の偏りを表す指標であ り,0であれば上下の凹凸は均等に分布していることを示す.

Rskが正の値を示すと,粗さ曲線の凸部に対して凹部の割合 が多く,負のときは凹部に対して凸部の割合が多いことを示 す.Rskは,表面の摩耗状態の推察や光沢度と相関があるこ とが知られている.スキューネスRskの比較を図4に示す.

この場合もRaと同様に,加工液を噴出することで若干値が 低減する傾向は確認されたが,バブル混入の効果は明確でな かった.また,図5には各条件における電極消耗率の比較を 示す.加工液を噴出しない純水のみの加工では3%程度と低 い電極消耗率を示すが,加工液を噴出する残り4条件では,

電極消耗率 20%以上を示し,マイクロバブル混入の影響と いうよりも加工液噴出の影響が強いことがわかる.

同様の仕上げ加工条件による加工を,油加工液中で行った.

ただし,用いたポンプではバブルを混入せずに油加工液のみ 噴射することができず,また酸素バブルは安全性の確認がと

Fig.6 Change in surface roughness Ra

Fig.7 Change in surface roughness Rsk

Fig.8 Change in surface roughness Ra 0

0.5 1 1.5 2 2.5

Pure water

Pure water jet

B-Air B-Argon B- Nitrogen Surface roughness Ra µm Work-piece : Steel

0 0.1 0.2 0.3

Pure water

Pure water jet

B-Air B-Argon B- Nitrogen

Skewness Rsk

Work-piece : Steel

0 5 10 15 20 25 30

Pure water

Pure water jet

B-Air B-Argon B- Nitrogen Ekectrode wear rate % Work-piece : Steel

1.5 2 2.5

Oil B-Air B-Nitrogen

Surface roughness Ra mm Work-piece : Steel

-0.25 -0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05

Skewness Rsk

Work-piece : Steel

Oil B-Air B-Nitrogen

0 0.5 1 1.5 2 2.5

Surface roughness Ra mm

Normal Bubble-Air Bubble-Nitrogen Work-piece : Ti

れていないため行わなかった.そのため,純水を用いた場合 に比較して少ない比較となっている.図6に算術平均粗さ Raの比較を示す.純水と同様に大きな違いは観察できなか った.次にスキューネス Rsk の比較を図7に示す.純水加 工では大きな差が確認できなかったが,油加工ではバブル混 入により差が生じた.通常加工油の場合は,マイナス0.2程 度を示すが,バブル混入加工液では,大気の場合でマイナス

0.05,窒素の場合で若干プラスの値を示した.0.2程度の違

いではあるが,その他の粗さパラメータでは3者の値はほぼ 同等であることを考えると Rskの値のみがバブル混入有無 で違いが見られる.通常加工油について,この後数回同様の 加工を繰り返したが,いずれのデータにおいてもマイナス 0.2 より大きな値を示した.これより,電極極性(+),仕 上げ条件によるバブル混入放電加工では,加工面の上下の凹 凸はほぼ均等に分布していることがわかる.

次に,工作物をチタン板に変更し同様の仕上げ条件による バブル混入の効果を確かめた.チタン板を用いた理由の一つ に窒素ガスを微細気泡として極間に導入することで,放電加 工面に窒化物の被膜が形成されないかと考えたためである.

図8に表面粗さRaの3者の比較を,図9にRskの比較結果 を示す.Raはバブル混入加工液で若干減少する傾向にある が大きな差ではない.一方,Rskは通常加工でマイナス0.2 程度,大気や窒素バブルを含有するとマイナス0.4~0.5 程 度を示した.バブル混入の有無で差異が認められたが,この 傾向は鉄鋼材料に対する結果と傾向は逆を示した.この章の

Fig.9 Change in surface roughness Rsk

Fig.10 XRD of EDM with nitrogen micro bubbles mixed in fluid

Fig.11 Change in hardness Vickers(HV)

最後に,チタン材への窒素マイクロバブル混入加工面のX線 回折結果を示す(図10参照).ビッカース硬度計による加 工面硬さの比較では1.5倍程度の値が確認されているが

(図11参照),成分分析ではTiNのような生成物を明確に 把握することはできなかった.

3.永久磁石に対する放電加工

3.1 突き当て放電加工による磁束密度変化

難削材の一つである永久磁石の加工も,非接触熱エネルギ 加工である放電加工であれば,形状加工が可能である.ただ し,形状が変化すれば磁気特性も変化し,特に底付穴加工を 行えば,対抗面の表面磁束密度分布が変化しパターン化する.

形状変化に加えて放電加工による磁石内部の温度上昇も上 記現象には大きく関わっていると推察され,その制御および メカニズムを含めて研究を進めてきた.

加工対象には,磁力が強力なネオジム磁石を用いた.磁性 材料では,形状やその寸法に依存して,内部に反磁場と呼ば れる磁石表面に現れる磁場と反対向きの磁場が発生する2). このため,表面磁束密度は磁石形状に依存し,形状が変化す れば磁束密度も変化する.そのため,着磁後の磁石を放電加 工で形状加工を行えば,形状変化に伴う磁束密度の変化を得 られる.加えて,熱エネルギ加工である放電加工により,磁 石内部温度が上昇すれば,温度上昇に起因する磁力の低下が 生じ,形状変化と合わせた複合的な磁束密度変化を示すと考 えられる.そこで,はじめに突き当て加工により磁石高さが 変化するのみの加工において,放電条件に起因する表面磁束 密度の低下を調べた.

ネオジム磁石は,直径10mm,高さ10mmの市販の磁石 でを用いた.この磁石に対して,直径11mmの銅電極を用 い,磁石N極側から加工深さ指定1mmの突き当て加工を行 った.放電条件は,電極極性を(+)とし,表1に示す2種 類の条件で比較した.No.1の条件は入力エネルギの少ない 低速加工の条件であり,No.2の条件は入力エネルギの大き な高速加工の条件である.加工後の加工面の表面磁束密度を,

テスラメータ(カネテック製TM-601)にて計測した.測定 は,中央部一断面を0.5mmピッチで行った.図12に,加 工前およびNo.1,No.2の条件で加工後,さらに高さ9mm の未加工磁石の表面磁束密度の比較を示す.表面磁束密度は,

全てN極面を測定した.いずれの測定においても,直径 10mmの磁石の両脇は,端部の影響で磁束密度が低下して

Table 1 Discharge conditions

Fig.12 Change of magnetic flux density each conditions Discharge

current (A)

Pulse duration (μs)

Pulse

interval (μs)D.F (%)

No.1 5 32 32 50

No.2 20 128 128 50

150 200 250 300 350 400 450 500

-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5

Measureing Position mm Magnetic Flux Density mT

10mm Non-machining EDM No.1: 5A 1mm machining 9mm Non-machining EDM No.2: 20A 1mm machining -0.6

-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1

Skewness Rsk

Normal Bubble-Air Bubble-Nitrogen Work-piece : Ti

in oil

0 50 100 150 200 250 300 350

Ti base material

Oil B-Air B-

Nitrogen

Hardness vickers HV (100gf)

Work-piece : Ti

4000 3000 2000

1000

0

 cps

20 40 60 80

2 deg

:Ti

:TiC (TiCN) 4000

3000 2000

1000

0

 cps

20 40 60 80

2 deg

:Ti

:TiC (TiCN) With nitrogen micro bubble

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 37-43)