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ナノバイオメカニクスと組織修復への応用 Nano-Biomechanics and its Application to Tissue Repair

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 49-60)

Keywords: Mesenchymal stem cell, Stem cell-based self-assembled tissue (scSAT) Collagen, Extra cellular matrix (ECM), Tissue repair

1. 緒言

生体関節に存在する腱,靱帯,軟骨などの生体軟組織は,

関節の安定性を保つ重要な役割を担っているが,無血管組 織であるために栄養が乏しく,一度損傷すると自己治癒が 困難である.そこで,生体軟組織修復のための新たな再生 医 療 材 料 と し て , 滑 膜 か ら 採 取 し た 間 葉 系 幹 細 胞 (Mesenchymal stem cellsMSCs) を用いて作製される幹細 胞自己生成組織 (Stem cell-based self-assembled tissuescSAT) やコラーゲンシート (CS) との複合体 (scSAT/CS 複合体) の開発に関する研究が行われており,これまでに 軟骨や半月の部分欠損の修復において有効であることが 実証されている1),2).しかし,scSATを用いて修復した軟 骨の力学機能は正常軟骨のレベルまで回復できていない.

この問題を解決する方法として,埋入する修復材料内部 に存在するMSCsの基質生成能を促進し,組織修復材料の 力学特性の向上や,埋入後の早期的な組織形成を促す必要 があると考えられる.そこで,本研究ではコラーゲンの3 次元線維構造とMSCが分泌する細胞外基質 (Extracellular

matrix : ECM) に着目した.組織修復材料はコラーゲンの

3次元線維構造からなる.修復材料内部でのMSCの基質 生成能を促進させるにはコラーゲン3次元構造がMSCの 基質生成に及ぼす影響を明らかにする必要がある.コラー ゲン溶液は中性塩条件で 37℃程度にインキュベートする ことで3次元線維構造を生成する.この線維構造は,架橋 剤などの化学薬品を用いずに構造を変化させることがで きる点に特徴がある.そこで,本研究では異なるコラーゲ ン3次元線維構造内でMSCを培養し,培養初期のコラー ゲン構造がMSCECMの生成に及ぼす影響に関して,

細胞密度,細胞の形態とともに調査した.

2. 実験方法

2.1 コラーゲン 3 次元構造体作製

4℃環境下において,培養皿に5000 cells/cm2MSCsを 含んだ中性コラーゲン溶液1 mLを入れ、24時間37℃に インキュベートすることによってゲル化させた (ゲル:

Fig.1-a).同様に4℃環境下で中性コラーゲン溶液を遠沈管

1 mL入れ,37℃で24時間インキュベートし、コラー

ゲンの線維形成を促した.その後、得られたコラーゲン線 維に対して4000 rpm20分間遠心分離を行い、上清を排 除した後に5000 cells/mLの細胞懸濁液を1 mL添加し,懸 濁することによってコラーゲン培養体 (分散:Fig.1-b) を 作製した.得られたコラーゲン線維分散体を培養皿に入れ た後,プレート遠心機を用いて,2000 rpm5分間,遠 心処理を行うことによって,コラーゲン線維を培養皿底面 に圧縮させたコラーゲン線維圧縮分散体 (圧縮:Fig.1-c). 作製した3つの組織に対してヘマトキシリン・エオジン染 色を行い,デジタルマイクロスコープ (Digital microscope:

DM) を用いて観察を行った.また,走査型電子顕微鏡 (Scanning electron microscope: SEM) を用いて各試料の組 織観察を行った.

2.2 コラーゲン 3 次元構造が MSCs の基質生成に及ぼ す影響の評価

2.1 で作製したコラーゲン構造体に対して,2.0×105 cells/cm2 の細胞を播種した.その後,培養培地 (DMEM ,

Fig.1 コラーゲン構造体作製方法 37 ,24h

4

37

2000 rpm, 5min

ゲル

分散

圧縮 コラーゲン溶液

+ 培養培地

a

b

c

10% FBS,100 U/mL Penicillin,100 µg/mL Streptomycin, 0.2 mM ascorbic acid 2-phosphate) を用いて培養し,以下の検 討を行った.

2.2.1 組織体積測定

作製した各試料に対して一眼レフカメラを用いて,上部 から組織を撮影し,組織の面積を計測した.また,スライ ドグラス上の試験片をカバーガラスで挟み込み,DMを用 いて,スライガラスとカバーガラス間の距離を計測し,そ れを組織の厚さとした.試験片の体積は円柱状を仮定し,

面積と体積を掛け合わせたものとした.

2.2.2 細胞数測定

培養3日後,7日後,14日後の各試料に対して,培養皿 の培地をアスピレータで除去し,試料の乾燥に注意しなが

PBS(-)溶液で3回洗浄した.0.4%コラゲナーゼ溶液を1

mL添加し,37℃で1.5時間から2時間,攪拌しながらイ ンキュベートし,コラーゲン線維を溶解させた.1500 rpm5分間遠心分離を行い,上清を除去したのち再度PBS(-) で洗浄し,血球計算版を用いてセルカウントを行った.

2.2.3 遺伝子解析

培養3日後,7日後,14 日後の各試料に対して,RNA を抽出し,逆転写反応を行い,cDNAを作製した.作製し た cDNA に対して,サーマルサイクラーを用いてリアル タイムPCRを行い,基質生成に関連する遺伝子 (I, III 型コラーゲン,フィブロネクチン) の発現量を解析した.

結果は,内部標準遺伝子 (GAPDH) に対する目的遺伝子 の相対発現量を算出して表した.

2.2.4 蛍光染色

培養3日後,7日後,14日後の各試料に対して,パラホ ルムアルデヒドを用いて組織を固定した.Alexa fluor 546 ファロイジンを用いてアクチン,Ⅰ型コラーゲンプロペプ チ ド 標 識 抗 体 (SP1.D8) を 用 い て プ ロ コ ラ ー ゲ ン ,

anti-collagenⅠ抗体を用いて周囲のコラーゲン線維を特異

的に染色した.染色後,組織の表面,および断面に対して,

共焦点レーザー顕微鏡を用いて撮影した.

3 結果

3.1 ゲル,分散,圧縮のコラーゲン 3 次元構造 3.1.1 培養初期

培養3日後のコラーゲン3次元構造体のSEM観察結果,

および組織断面のHE染色画像を Fig.2 に示す.HE染色

画像から,ゲルは均一なコラーゲン線維の分布が観察され た.分散は,染色の濃淡が不均一で,コラーゲン線維の密 度が偏っている様子が観察された.圧縮は組織内に高密度 のコラーゲン線維が存在している様子が観察された.染色 画像から間隙率を計算した結果,ゲル,分散,圧縮はそれ ぞれ62.6%, 83.1%37.4%であり,圧縮が最も低値を示し た.SEM 画像から,ゲルは,細かな線維構造が均一に存 在し,平坦な表面を有していた.分散は,細かな線維が会 合した10 µmから20 µm程度の太い線維が存在し,多孔 的な組織を有していた.圧縮は,細かなコラーゲン線維の 会合による太いコラーゲン線維が,高密度に存在していた.

3.1.2 経時的変化

試料の表面のSEM観察画像をFig.3に示す.ゲルにお いては微細な線維構造が均一に存在していた.培養日数経 過後,試料表面は平らな細胞に形態に変化した.分散にお いては微細な線維構造が会合して存在し,MSC と複合し ていた.圧縮は微細な線維構造が高密度に存在していた.

また,高倍率のSEM画像から線維径の平均を算出した結 果,いずれの群,培養日数においても0.14 µmから0.18 µm だった.

Fig.3 コラーゲン 3 次元構造体の経時的変化 Fig.2 コラーゲン 3 次元構造体の HE 染色画像と SEM 画像

分散 圧縮

ゲル

100 µm

50 µm

HE染色

SEM

分散 ゲル

圧縮

3day 7day 14day

50 µm

Fig.5 培養 14 日目の組織断面の蛍光染色画像 (scale bar = 1 mm)

Fig.6 培養 14 日目の組織表面,および内部の免疫染色 画像 (scale bar = 50 µm)

3.2 コラーゲン 3 次元構造が MSCs の基質生成に及ぼ す影響

3.2.1 細胞数

細胞数を測定した結果,いずれの群も細胞数は培養日数 の増大に伴い減少する傾向が見られた.圧縮はゲル,分散 と比較して有意に細胞数が多いことがわかった.細胞数と 体積の測定結果から,細胞密度を測定した結果,いずれの 培養日数においてもゲルが最も低く,圧縮が最も高かった (Fig.4)

3.2.2 組織内部の細胞,およびプロコラーゲンの分布 各試料組織断面の免疫蛍光染色結果をFig.5に示す.い ずれの群においても,培養日数の増大とともに試料が収縮 する様子が観察された.また,アクチンの染色結果から,

ゲル,分散は,培養3日目においては試料内部まで均一に

染色されているが,培養日数の増大に伴い,組織内部の細 胞が減少し,試料表面にアクチンのシグナルが検出された.

また,培養14日目において,試料表面で強いプロコラー ゲンのシグナルが検出された (Fig.5).圧縮は,いずれの 培養日数においてもアクチンのシグナルが組織内部で均 一に検出された.

3.2.3 細胞形態,およびプロコラーゲンの生成

各試料組織断面および表面の蛍光染色結果をFig.6に示 す.組織表面の観察画像から,ゲルの組織表面の細胞は,

培養3日目において,長細い形状を有していた.培養 714 日目においては,細胞は平らな形状を有しており,束 化されたアクチン線維が観察された.培養14日目では,

強いプロコラーゲンシグナルが検出された.一方,組織内 部の細胞に関しては,培養3日目において,細長い形状を 有していたが,培養14日目では小さな紡錘型の形状を有 していた.細胞内部にはわずかにプロコラーゲンが検出さ れた.分散の組織表面の細胞は,培養3日目において,平 らな形状を有していた.培養7,14日目においては,細胞 は平らな形状を有しており,束化されたアクチン線維が観 察され,強いプロコラーゲンシグナルが観察された.分散 の組織内部の細胞に関しては培養3日目では,細胞は平ら な形状を有していた.培養7日目,14日目において,細 胞は小さな紡錘型の形態を有していた.また,培養7日目 でプロコラーゲンが検出された.圧縮の組織表面の細胞は,

培養3日目において,平らな形状を有していた.培養 714 日目においては,細胞は平らな形状を有しており,束 化されたアクチン線維が観察された.また,培養7日目で プロコラーゲンが検出され,培養14日目では,強いプロ Fig.4 コラーゲン 3 次元構造中の細胞密度測定結果

3 7 14

0 1 2 3 4 5

細胞密度[ ×

103 cells/mm3

培養日数[日]

Mean±SD

ゲル 分散 圧縮

#P<0.05 ANOVA

#

#

#

#

# #

#

#

#

P<0.05 Bonferroni collection

6 ゲル

分散

圧縮

表面 アクチン 表面プロコラーゲン 内部 アクチン 内部プロコラーゲン

コラーゲン線維 アクチン プロコラーゲン merge

ゲル

分散

圧縮

ドキュメント内 FMS研究成果報告書(30年3月) (ページ 49-60)