ジベレリン処理が金時人参種子の休眠打破に 及ぼす影響X
安.芸 精 山
Effect of gibbere11in on breaking the doImanCy OfKintoki−CarrOt Seedsl米■ Seiichi AKI
(Laboratory of Vegetable Science) (ReceivedJuly2,1960) Ⅰ 緒 最近,多くの学者によって植物の生理作用にI及ぼすGibberellin(以下GBと記す)の顕著な影響が報告され,生長 及び開花促進,発芽促進,結果,結実肥大及び熟期促進,抽苔促進等の効果が知られている.特にGB処理が種子の 休航れ‘破及び朗芽促進効果について−の報告を見るに,GB処理の効果は種子の種類,令,処理方法,発芽条件(光線, 温度)に.よつてその反応が大きく異なることが認められる(1846り012、1814・161鋸銅庖)1・そこで筆者ほ金時人参種子の 発芽不良の対策に関する研究の一濁として,GB処理が収穫迫後の休眠打破に硝酸加重処理よりも有効であるかどうか を明らかにする為,レヤーレ試験と団場試験の2方面から1958年と1959年に鰯処理,水洗,硝酸加盟(0.2%)を比 較対照区として種々の角度から検討し,2,3の結果を得たのでとゝにその概要庭づいて報告する. なお,この報告にあたり御指導と御校閲を賜つた本学教授波辺正一■博士に深く謝意を表する次第である.またGB の提供を受けた武田薬品工業株式会社に御礼申し上げる. Ⅱ 実験材料と方法 実験材料は昭和33,34年の6月に本学の採種圃で採種した金時人参種子で,各実験に10【−20花撤を使用した.供試 GBは武田ジベラで,処理膿皮は5,1q,25,50,100と150ppmを用いた,. 処理方法は実験1を除き,各種漉皮溶液に種子を3時間浅漬した彼,1昼夜室内に.陰乾して発芽試験軋供試した一. シャーレ試版は直径9c偶のシャーレを用い,各区共1皿100粒の3∼4区制で行ない,発芽勢ほ7日間,発芽率は16 日間の発芽数をもつて算出したい圃場試験は25× 30cmの細鉢に士(消毒した土)と川砂(く11一 等 mesh)を入れて発芽床として16日間の発生率を 弟1表 GB処理漉舷と処理時間との関係 発 芽 率(%) 発 芽 勢(%) 調査したい試験期間は7月∼10月に亘る種子の休 理 時間15時間 1時可5時間l5時間 限期間中に.行なった. なお,実験方法についての詳細は各実験項目に. 於て説明する… Ⅲ 実験結果および考察 (Ⅰ)シャーレ試験 実験1.GB処理濃度と処理時間との関係:本 実験はGB処理の最適の方法を見出す為,6月27 日に採種した黄熟種子について行なった‖処理方 法は儲1表に示す如く,各種潰皮溶液に夫々1,
芸…‖……三….……
GB tjppm GB 10pDm GB 25ppm GB 50ppm GBlOOppm GB150ppm 硝酸加里 (02%) 水 洗 触 処 理 59..00 る4.、00 57.00 72.00 る5.るる る455 70uOO 47.00 40.占占4955l51..00‡55155
54..00 .57‖占占 2占.るる 51いるる 58..るる 2d.占占
(註)実験月日 7月6日 3,5時間浸潰した後,1昼夜室内で陰乾して発芽試験を行なった(節1衣卜上表の結果から,各処埋時間を通じ ♯園芸学会昭和34年皮秋季大会に.於て発表74 香川大学農学部学術報告 てGB処理の効果は水洗区に・対して発芽勢,発芽率共にGBの処理濃度の増加に伴って促進の傾向を示し,特に発芽勢 に於て著しいlGBの最適濃度は50∼100ppmで,150ppmでは発芽を低下させた.またGB(50,100ppm)は硝酸加里 区に比較して梢々効果的であった・・次に処理時間による差異は各処理区共,認め難く大体同様の%を示した1.以上か ら,GBの最適浪度は50′、・■100ppmと考えられ,処理時間はいずれを使用するかは困難であるが,渡辺等(21)が硝酸加 望処理で指摘している様に・,実用的には3時間区が便利と考えられた・・そこで,以下の各実験躍.はいずれもこの処理 方法を適用することとした. 実験2∴種子の熟度別及び貯蔵期間とGB処理との関係:本実験はGB処理が熟度別及び貯蔵期間の経過に.伴ってど の様な反応を示すかを知る為,開花後30,35,40日目の桂子紅ついて1司−・試料を7月24日と9月9日に発芽試験を行 なった.なお,種子の熟度については大赦の外輪部の小撒が開花し始めた時を大赦の開花始めとし,大赦を3等分し て30,35,40日目に各部位を収穫して供試した(第2表)。. 第2表 種子の熟度別及び貯蔵期間とGB処理との関係 9月9日 発 芽 勢 % 50日 ト55日140日 50日l55日140日 処理区 \ \ GB 25ppm GB 50ppm GB lOOppm 硝酸加埋(0.2%) 水 洗 無 処 理 種子の熟度別に.対するGB(50∼100ppm)処理の効果は7月24日の結果についてみると,水洗区に対し30>35>・40 日日の順に効米が認められ,40日冒の材料では発芽勢紅のみ効果が表われた叉,G王‡処理は硝酸加盟区常.比較して−, 特に未熟種子に於て効果が著しく,35,40日日の材料では同様の効果を示した・・次に・47[1後の9月9日では水洗区に 対し各処皮共,促進効果は認め稚く,同様の傾向は硝酸加里区忙於ても認められた.この様に・GB処理の効果は休眠 の深浅常.よって異なるものと思われ,未熟種子の如き休航の深いもの程,硝酸加壁処埋よりも効果が大きいものと考 えられる.同傾向はすでに中村(10)はしそ・,秋谷,市原(13)はしそ,CJ〃Sよαの種子で認めている・ 実験3.発芽温度とGB処理との関係:水夫験は発芽温度匿よってGB処理の効果がどの様な反応を示すかを知る 為,発芽湿圧20∼25Cと28∼34Cの条件下で,黄熟種子を用いて比較検討した(第3表)・ 滞5衷 GB処理と発芽温度との関係 注)実験月日 8月8日、()内は水洗区を100とした場合の比数 上表から,GB処理の効果は水洗区に対し発芽温度紅関係なく著しい促進効.果を示し,特に発芽動に於て顕著であ った.また発芽温度による差異は高温区(28∼34C)より低温区(20∼25C)に於て著しい.次紅硝酸加里区と比較 すると高温下では発芽に差異は認め稚いが低温下でほGBの効果が若しかった この様にGB処理が硝酸加盟よりも低温下で効果的であることは発芽に及ぼす作用機構が異なるものと考えられ, GBの大きい特長と言える・この様にGBが不.艮条件下で効果的であることはKaban(7),市原(6)はチ・ジャで,藤村
等(8)はウド芽,中村(10)はなす種子で,また八巻(25)に依るとコニこ/ドゥ,インゲンで示すことが記載されている 実験4..毛除種子に対するGBの効果:本実験は上記の結果からGB処理(50∼100ppm)が種子(植物形態学上の 果実)に効果的であることを認めたが,GBの作用が果皮又は種子自体のいづれに影響するものかを知る為,果皮を 除去したものについて試み.た(第4表) 第4表 毛除種子に対するGB処理の影響 右表から毛何種子に対するGB処理の効果は発 芽勢,発芽率等に認められたが,毛除(果皮除 去)種子に対しては発芽勢のみにしか認められな い.即ち,GBの効果は果皮又ほ種子の両方に.作 用し,特に果皮に対する影響が大きい様に考え.ら れる.ノなお,この傾向は硝酸加盟区に.於ても同様 であった. 実験51光線の有無とGB処理との関係:人参 種子に対する好光性は品種によって異なる.渡辺 (2さ)は金時人参種子で,30C恒湿と24∼31Cの変 注)実験月日8月8日.発芽勢締切日4日発芽率締切日1る日間 湿下で好光性を示すことを認めている.そこで本実験はGB処理と光線との関係を知る為,暗黒下と散光下で,黄熟と 褐熟種子について行なった(第5表) GB処理の効果は水洗区に倒し散光下では発芽 を促進したが,暗黒下では有意義な差は認め難 い‖−・方硝酸加盟区は光線の南無に関係なく促進 効果が認められた..従来GB処理が光照射と類似 の効果があることが報告されている即ちKaban (7)はチレヤ,小河原等(12)はタバコ,市原(6)はグ ロキジニヤ,カランコエ,プリムラ種子で認めて いるが,金時人参種子ではこれとは異なり,山田 く12)はゴボウ,市原(6)はミツバ,ゴボウ種子で報 告しているものと同様の反応を示し,むしろ硝酸 第5東 光線の有無とGB処理との関係 注)実験月lヨ 7月15El.発芽率締切闇 7日日 加埋区が光線の有無に関係しないことを知った. (Ⅱ)圃 場 試 験 本実験は実験室的に如何に多くの試験が行なわれてもその効果が実用的の場面で確実に現われるとは限らない‖ 従 ってその実用を実現する前に甜場試験を行なう必要があるのでGB(50,100ppm)処理種子を土と川砂に播いてその 発生率を検討した∴なお,本試験は1959年にシャーレ試験紅並行して行なったが,いずれの場合でも効果が認め難い のでその1例を示すこととした(第6表). 第る東 田場試験の結果 右表の結果から,各熱度を通じて発生率に.は各 処理区共,有意義な差異は認められなかった.こ の事は恐らく,シャーレ試験とは異って土壌中に 播種した場合,他の色々な要因がこれに作用する 為であろうと考えられる‖ 以上稜々の角度からGB処理が金時人参種子の 休眠打破に硝酸加壁処理よりも効果的であるかど うかについて検討したが,シャーレ試験について 考察するに.,GB処理(50,100ppm)が収穫値後 の金時人参種子の休眠打破に散光下で効果的であ ることは疑いのない所であり,発芽に及ばす促進 注)実験月日 7月1引]. 効果は硝酸加里と同様又はそれ以上であることが明らかとなった.この事からGBは休眠打破剤として新しく加える ことが出来,種子検査上又種子の発芽生理学上有意義であると考えられる特紅GBが硝酸加壁処理区と発芽に及ば
76 香川大学農学部学術報告 す作用の異なる点はGB処理区ほ発芽勢に於て促進効果が著しい、こと,叉収穫直后の種子及び不良条件下(低温)に 於て著しい効果を示すことである.唯,暗黒下に於ては硝酸加盟処理がGB処理よりも効果的であることを知つた. −・方,GBの実用性については第6表に示す如く,促進効果は認め難く,その実用性は少ない様に思われる. Ⅳ 摘 要 本実験はGibbeIellin処理が金時人参種子の休眠打破紅硝酸加望よりも効果的であるかどうかを明らかにする為, 種々の角度から検討したものであるい (1)GB処理の効果は各浸潰時間を通じて処理濃度の増加に伴っで発芽促進を示し,特に発芽勢に於て著㌧かった・て GBの最適の濃皮ほ50,100ppmで,これは硝酸加里処理(0・2%)与り梢々良かっk・浸潰時間紅よる差異は各処理 区共認め難いが,一応3時間浸渋が便利と考える・ (2)GBの効果は種子の熟度潔よって二異なり,特に未熟種子に於ては硝酸加壁処理よりも効果的であったh叉GBの 効果は各熟度共,貯蔵期間の経過に伴って低下した… この様な傾向は敵硝加壁区も同様であった− (3)GBの効果は発芽湿度に関係なく促進効果を示し,特に低温下(20∼25C)で著しい.この様な反応は硝酸加 盟区に於ても認められたが,低温下ではGBの効果が大きかつた. 睦)毛除種子に対するGBの効果は発芽勢のみに認められ,毛付種子の場合より低い様である・ (5)GBの効果は暗黒下より散光下に於て著しいが,硝酸加盟区は光線の有紐に関係なく著しい効果があった. (6)GBの効果は圃場試験の結果では明確でなかった・ 参 考 文 献 (1)安芸精一:園芸学会昭和34年皮秋季大会研究発表 要旨(1959).
(2)CHARIEs G.SKINNER et al:Plant Physiolo,・ gy,33(3),190−194(1958).
(3)藤村良 森 茂樹:園芸学会昭和33年皮春季大
会研究発表要旨(1958)り
(4)HowoRD G.AppLEGA‡E:Bot Gazette,120, 39−43(1958). (5)今津 正,大沢考也:園芸学会雑誌,27(2),108 −110(1958). (6)市原痔吉:農及固,33(10),1551−1552(1958)・ (7)KAHAN Aい,J.AGoss:Seience,125,645− 646(1957)l (8)香川 彰:園芸学会雑誌,28(軋 277−287(19− 59).
(9)LAWRENCE RAPPAPOT:Plant Physiology,32, 440−444(1957). (10)中村俊+・郎:農及薗,34(8),1277−1278(1g− 59ト (川 野口弥富:農及闇,33(9),1315∼13ユ9(ユ958)り (12)日本ジベレリン研究会第一・回研究溝i捌少録(19− 58). (13)日本ジベレリン研究会第2回研究講演抄録(19・ 59). ㈹ 日本汐ベレリソ研究会第3回研究講演抄録(19− 60).. (15)住木諭介:化学,26−34(1953)い ㈹ 塚本洋太郎他2名:農及関,32(11),1645−1647 (1957)。 (17)高橋和彦他3名:農及園,34(肌1579−1580 (1959)′.
(18)PAUL C.MARLTH et al:Bot。Gazette,118(2), 106−112(1956).
(19)WITTWER S”H.etal:Plant Physiology,32 (11),39−41(1957). 但0)岩木議敏:酸酵協会誌,16(4),1−15(1958). ロ1)渡辺正一・,安芸精一・:園芸学会昭和32年皮春季大 会研究発表要旨(1957ト 但功 波辺正一・,他2名:香川農大学術報告,7(1), 27−30(1955). 但3)波辺正一・:未発表 伽 波辺 諭:農及園,34(乱59−60(1959). 鍋 八巻敏雄:農及園,33(8),1165−−1168(1958). S U M M A R Y
These studies were performed un4er various conditionsin order toinvestigate whether the gibberellin (GB)tIeatment C9nbemoIeeffectivethanthe KNO3treatmentin breakingthedo工manCyOfKintoki・CarrOt
(1)..The effect of GB treatment WaS tO prOmOte the.germinationin proportion toincreasing of the con・
\
centration ofits solution,at Vari6us soaking periods,and especia11yitiras remarkableinincreasing of germination power of seeds.The optimum concentrations of GBin breaking the dormancy were found at50
andlOO ppm。Theresult was more effective than that of KNO3treatment.In every treatmentthedifference OWing to thelength of soaking period was not perceptible,but3hol】rS SOakingis thought to be the most
avai1able.
(2).The effect of GB WaS differentin propotion to the degree of matur・ity of seeds,and maximum effect,
especiallyin case ofinmature seeds,WaS mOre Signifidant thanin KNO3 treatment,and this eifect, throughevery stage oftheirmaturity,decreased according to the elapse ofstorage period.Suchinclination WaS Same aSin case of KNO3treatment
(3トTheeffectofGBWaSPeICinedふithoutconcernwithgeminatioritemperatureandit was especially
remarkableunderlower tempeiature(20・250C)..ThisresponsewasobservedinXNO3treatment,tOO,but the former was more effective underlower temperature.(4:).In case of the seeds removed pericarps or hairs,the effect of GB WaSIemarkable onlyinincreasing Of germination power,but not so distinctin case of the seeds with peIicar’pS Or hairs
(5).The effect of GB WaS mOre eVident under the diffusedlight condition thanin the darkness.While, in case of KNO3treatment,the effect was not concerned withlight.