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1. まとめ 1 概要 地域医療計画の進捗管理においては 目標と評価尺度と指標を設定することによって PDCA( 計画 実行 評価 改善 ) サイクルを確立することとなっている しかし その方法に関しては関係者に十分な理解がなされていない また 地域医療計画策定担当者など関係者の間に 難解 困難 と

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PDCA サイクルと指標

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1.まとめ

□1 概要 ・地域医療計画の進捗管理においては、目標と評価尺度と指標を設定することによって、PDCA(計画、 実行、評価、改善)サイクルを確立することとなっている。しかし、その方法に関しては関係者に十 分な理解がなされていない。また、地域医療計画策定担当者など関係者の間に「難解、困難」という 意識が強い。PDCA と指標に関しては、一定の学習を行わなければ、その意味や手法を理解するのは 難しい。しかし、一定の学習を経れば、多様な関係者の間で共通認識が可能となる。現状の課題を抽 出した上で、解決策として次の5 つを推奨する。この実行によって、「個別の施策の実施が、患者・ 現場・地域に意味のある成果の効果的な創出につながること」を目指す。まず、「施策・指標マップ」 (図表1)を共通ツールとすることが有効であり、本ガイドラインの 5 疾病・5 事業・在宅医療の各 ガイドライン部分でも、これを使用した。 □2 推奨施策 推奨施策1 「施策・指標マップ」に基づいた施策効果に関する評価の実施 推奨施策2 PDCA サイクルと指標に関する研修の実施 推奨施策3 「PDCA サイクル向上ツールキット」の提供 推奨施策4 「地域医療計画評価指標データサービス」の提供 推奨施策5 指標の開発、集計、表示に関する国と都道府県等の財源の確保 *推奨施策2、3、4 は、推奨施策「地域医療計画情報支援センター」(「医療計画策定プロセスガイドラ イン」参照)の設置によってカバーされる。 □3 各分野の施策・指標マップ(ひながた) ・5 疾病・5 事業・在宅医療の各章に、それぞれの施策・指標マップを掲載した(施策や指標の内容に ついては、各章を参照)。使い方のコツについては、「7.施策・指標マップ使用のポイント」の「マッ プ活用 10 のポイント」を参照。 図表 1 各疾病・事業分科会が使用した施策・指標マップ 番号 C個別施策 指標 番号 B中間アウトカム 指標 番号 A分野アウトカム 指標 1 2 1 3 1 4 5 2 6 2 7 8 3 9 139

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2.主な用語など

□ PDCA サイクルに関連する基本用語集

・PDCA サイクルと指標に関しては、日常的にあまり一般的ではない、政策立案・政策評価の基本に関 する知識や基本用語を、関係者が共有しておくことが極めて重要である。ここでは、基本的な用語を 集めて解説しておく。「6.導入すべき考え方」「7.施策・指標マップ使用のポイント」も参照のこと。 ◎評価について ・PDCA サイクル:計画(plan)、実施(do)、評価(check)、改善(action)を一連の流れで実施し、 施策や活動やその成果を継続的に高めていくこと ・セオリー(理論)評価:ロジックモデルの質や内容を評価すること ・プロセス(過程)評価:決められた施策や活動が予定どおり実施されているか評価すること ・インパクト(影響)評価:その施策や活動が成果の変化をもたらす効果を生んだか、評価すること ・費用対効果評価:インパクトを費用で割ったもので、効率性を示す ◎因果関係について ・ロジック(論理)モデル:アウトプットとアウトカムの因果関係など、施策や活動の論理的な構造 ・インプット(投入):施策や活動に投入される資源 ・アウトプット(結果):施策や活動の主体側に起こること ・アウトカム(成果):活動の結果として、働きかけた対象側に起こる変化 ◎指標について ・ストラクチャー(構造)指標:医療サービスに投入された資源に関する指標 ・プロセス(過程)指標:医療サービスの内容に関する指標 ・アウトカム(成果)指標:患者の健康状態等に関する指標 図表 2 評価に関する体系図 出典:市民医療協議会、『患者アドボカシーカレッジ 第 3 章 政策立案と評価のときに』(一部、改変) 140

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3.対策の現状と課題

□1 社会保障制度改革国民会議報告書 ・現在の医療改革の方向性を示している『社会保障制度改革国民会議報告書』(2013 年 8 月)では、PDCA サイクルと指標に関連して、「こうした努力は、データに基づく医療システムの制御という可能性を 切り開くものであり、日本の医療の一番の問題であった、制御機構がないままの医療提供体制という 問題の克服に必ずや資するものがある」と、「データに基づく制御」という考え方が示されている。 □2 医政局長通知・指導課長通知 (1)厚生労働省の医政局長通知「医療計画について」(2012 年 3 月)では、PDCA サイクルに関連し て、「個々の施策が数値目標の改善にどれだけの効果をもたらしているか、また目指すべき方向の各 事項に関連づけられた施策群が全体として効果を発揮しているかという観点も踏まえ、個々の施策や 数値目標並びに目指すべき方向への達成状況の評価を行い、その評価結果を踏まえ、必要に応じて医 療計画の見直しを行う仕組みを、政策循環の中に組み込んでいくことが必要となる」(3 ページ)との 記載がある。 (2)同通知には、ストラクチャー(S)、プロセス(P)、アウトカム(O)に分類した指標を用いるこ とも記載されている。 (3)厚生労働省医政局指導課長通知「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(2012 年 3 月)には、5 疾病・5 事業・在宅医療の 11 分野について SPO 指標セットが例示されている。 □3 都道府県の現行の地域医療計画 (1)RH-PAC メンバーにより、47 都道府県の地域医療計画に関し、PDCA サイクルと指標に関する基 本的考え方を、概観した。「アウトカムによって評価をしようとする基本的姿勢」が感じられたのは 半分程度(21 県)であった。具体的に「疾病や事業の目標をアウトカムで設定している」と読み取れ たのは3 分の 1 程度(17 県)であった。「指標を収集・開発する役割や組織」についての言及がある のは数県(6 県)のみであった。 (2)47 都道府県の地域医療計画に関し、PDCA サイクルと指標に関する記載内容を概観した。「指標 セット一覧表」を策定しているところがほとんどであった。しかし厚労省がまとめた必須指標や推奨 指標を掲載していない県も若干数(4 県)あった。必要な指標を開発することに言及し、明記してい ることが確認できたのは1 県(長野県)のみであった。 (3)都道府県の地域医療計画の PDCA サイクルと指標に関する部分を読んで RH-PAC メンバーと議論 し、「多くの指標がアウトプット止まりでアウトカムになっていない」「施策とアウトカムがつながっ ているように見えることは少ない」「客観的に評価を実施する体制についての記載が見当たらない」 「指標の選定に関する考え方が明示されていない」「指標の開発、評価結果を改善に結び付ける体制 が不十分に見える」「あるべき指標や体制をゼロベースで考えなおしていくべき」などのことが見い だされた。 また、施策の数値目標が十分に示されていないところも多く、示している場合であっても、具体的な 目標設定根拠については触れていない場合が多かった。 141

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(4)RH-PAC の 5 疾病・5 事業・在宅医療の 11 分科会によって、都道府県の現行の指標リストがチェ ックされ、下記のようなコメントが導き出された。各章の「2.計画・予算などの対策の現状と課題」 の「都道府県の現行の地域医療計画」パートの記述を参照のこと。 ・「各都道府県において対応状況はさまざまであるが、SPO の 3 つの観点の指標が十分に検討され、定 められている事例は少ないと言わざるを得ない」 ・「目標に向かっての施策と指標の具体性に欠け、実現への論理的連続性が見えない」(急性心筋梗塞) ・「地域の現状・課題に対する認識と取り組むべき施策(あるいは指標)が一致していない」(精神疾患) ・「現状と課題に適切に対応した施策や数値目標を設定できている都道府県は少なく、特に評価指標・ 手法の設定が課題となっている」(周産期医療) □4 「PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会(厚労省)」関連資料から ○資料『医療計画の推進に係る都道府県調査結果』から ・「分析する指標はどのように決めましたか」の設問に対して、「国が示した指標すべて」が36.2%、「都 道府県で独自に検討」が48.9%であった(複数回答可)。 ・「国から配布した分析ツールは活用しましたか」の設問に対して、「活用していない」が19.1%あった。 ○資料『指標の活用状況について』から ・47 都道府県が採用した資料が一覧できる資料となっている。国の必須指標が必ずしも採用されている わけではない。都道府県が独自に設定した資料のリストも付いている。 □5 好事例(候補)の現状 ●地域医療計画における記載から ・都道府県のうち、PDCA サイクル、評価、指標の全体を体系的に整備していることがうかがえるとこ ろはなかった。部分的な取り組みは散見された。以下に、いくつかの事例をあげる。 ○例1 青森県 ・施策が目指すあるべき方向を意識しており、疾病・事業別に評価をする組織を明示(青森県地域医療 計画4~5 ページ)。 ○例2 群馬県 ・指標によって把握したい概念を県民に伝わる言葉で分かりやすく説明している(群馬県地域医療計画 305~306 ページ)。 ○例3 栃木県 ・評価を分担する組織が設置されている。栃木県保健福祉協議会などを活用しながら毎年進捗を確認と 記載(栃木県地域医療計画292 ページ)。 ○例4 長野県 ・疾病・事業ごとに1 ページの図によって目指す姿と施策と指標をまとめて図示(例:「高血圧(脳卒 中)対策」については長野県地域医療計画382 ページ)。 ○例5 高知県 ・現状把握指標を一覧表にする際、疾病・事業ごとのSPO 別×病期別の表に整理しており、全体像を 把握しやすくしている(高知県地域医療計画287 ページから)。 142

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○例6 富山県 ・指標設定にあたり、県政モニターアンケートを実施。各疾病・事業で積極的に県独自指標を採用して いる(415 ページなど) ・その他、指標セットの表示に関して、独自指標を掲載しているところ、SPO 指標の区分を表示してい るところ、施策と指標と数値目標をまとめて表示しているところ、2 次医療圏別に現状値を表示して 解説を加えているところなど、工夫をしている県が散見された。 ●国のがん対策における取り組み(「がん対策推進基本計画」の中間評価手法)から ・第2 期がん対策推進基本計画(2012 年~16 年)の中間評価のために、約 100 項目の指標を策定。ア ウトカム指標も含まれている。各種統計などからデータを集めると同時に、各都道府県2 カ所程度の がん診療連携拠点病院などを対象に患者調査を実施。患者・家族にとって重要なアウトカムについて の評価を聞く設問が含まれている。 ●がん対策における都道府県の取り組み例から ・奈良県 奈良県がん対策推進計画の進捗管理において、分野別の目標を最終アウトカム、中間アウトカム、個 別施策のアウトプットに整理し、それに対応して指標を配置している。また、評価指標のために患者 調査を実施。

4.都道府県アンケート結果等

□1 H-PAC/RH-PAC の都道府県アンケート結果 ○「PDCA サイクルと指標」に関する回答の概要 ・医療計画策定プロセスを10 ステップに分解し、現行の地域医療計画の策定時にどの程度十分に対応 できたかを尋ねた。「不十分であった(『やや不十分であった』と『不十分であった』の合計)」の率 がもっとも高かったのが、「データの収集と分析」(33%)と「評価指標の作成」(31%)であった。 いずれもPDCA サイクルと指標に関連する部分であり、都道府県行政にとって、この領域が困難と自 覚されていることが分かった。 ○「データの収集と分析」「評価指標の作成」に関連する自由記載欄から ・ビジョンや医療計画の策定・施行は、必ずしも都道府県に十分な人員、予算、時間が確保された中で 行われるものではない ・人材の確保が必要 ・評価・分析をいかに効率的に行うか ・医療計画は多岐にわたる目標や施策が盛り込まれているため、PDCA サイクルの確立が課題である。 サイクルを自動的に回せる「全国共通医療計画評価システム」のようなものが構築されれば、評価の 客観性が担保され、省力化にもつながると思う ・指標の設定及び調査・収集・分析・解釈はどの程度すべきなのか ・協議の場で話し合うにはレセプト情報などを基にした客観的な基準が必要になる ・調査を行うためのシステム構築などの財源をどうするのか 143

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・データ収集と分析が不十分で数値目標が十分に作れなかった ・随時捕捉できるデータが不足しており、目標の達成度合いを示す指標の設定が困難 ・達成目標としての数値目標の設定が困難である ・現在、市町村単位のデータは比較的入手しやすいが、事業効果の検証のためにはさらに地域を細分化 したデータの入手が可能になれば、より精度の高い評価がしやすくなるのではないか ・厚労省のデータブックが不十分であった □2 がん領域での都道府県アンケート結果から ○「都道府県がん計画策定状況および技術支援に関するアンケート」(がん政策情報センター実施)か らPDCA サイクル、評価、指標などに関連して下記のようなコメントが見られる。主に、アウトカム 指標の設定に困難が自覚されている。また、評価から施策の改善に結びつける困難も指摘されている。 ・「(PDCA サイクルの)C から A の段階でスムーズに対応できず、課題が積み残しになる施策が多い」 ・「施策のアウトカム指標として、適切なものがない場合がある」 ・「医療やサービスの質の評価に関する指標等の設定(が難しい)」 ・「現状把握を行うことが困難(大規模な実態調査が必要)」

5.あるべき姿

□1 『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』から ・「データを十分に活用し、現状と課題を把握し、患者の受療動向を踏まえて、医療提供体制のあるべ き姿を念頭において目標を立て、関係者による議論で合意形成を得ながら計画を実行し、適切な指標 を用いて進捗評価を行い、医療計画を見直すというPDCA サイクルを有効に機能させることが必要不 可欠である」(2 ページ)と、PDCA サイクルとデータ(指標)の活用に関する基本認識を示してい る。 ・「設定された目標が抽出された課題に合致していなければ、個別の目標の達成状況が良好であっても 効果がないため、課題に対応した目標の妥当性を常に意識して進めることが重要である」(3 ページ) と、個別目標のアウトプットに着目するのではなく、最終アウトカム/中間アウトカム指標と照らし 合わせることの重要性を指摘している。 ・「進捗評価に当たっては、基準を設けて、項目ごとに自己評価し、更に外部評価を受けるなどのプロ セスを検討すべきである」(3 ページ)と、外部評価の必要性を指摘している。 ・「現在の指標例以外にも有効と考えられる指標や不足している指標がないかについても検討すべきで ある」(5 ページ)と、指標の開発の重要性を指摘している。 □2 RH-PAC 内の意見から 〔体制の整備など〕 ・「問題は、分析能力があるかどうか」 ・「分析や課題抽出を、多くの識者で行う」 ・「PDCA サイクルの C(評価)と A(改善)を支援する仕組みが必要」 144

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・「C(評価)をだれがどのようにやるのか、やり方と手順を明確に」 ・「事業・活動の当事者がセルフチェック(自己評価)できる仕組みを作る」 ・「できるだけ業務負担を増やさずに継続性を担保する」 〔目標と指標の関係など〕 ・「ある指標を集めるのではなく、取るべき指標を取る」 ・「検証・裏付けるべきデータが何かを洗い出し、定量データ・定性データを収集する」 ・「医療をどうするかを明確にした上で、定義に沿った有効なデータを収集・分析する」 ・「より適切な指標のもとにデータを集める」 〔データ収集・提供体制など〕 ・「行政がリーダーシップを発揮し、医療機関や住民も協力して、継続してデータ収集・調査・分析 を実施する」 ・「国のデータブックを整備、充実させる。それができるようにインフラ(基盤)を整備」 ・「PDCA 管理のためのツールを、初期段階で各ステークホルダー(関係者)に提供する」 ・「データ集をツール化し、各ステークホルダーが活用できるようにする」 ・「情報共有を工夫する」 ・「PDCA サイクルについて住民への広報を行う」 〔データの内容など〕 ・「行政の持つデータと医療機関が持つデータを組み合わせて医療圏単位に課題を抽出」 ・「DPC データやレセプトデータなどを活用し、現状を可視化する。アウトカム分析が可能となる情 報を集める」 ・「国保のレセプトデータを活用する」 〔患者・住民ニーズと患者調査〕 ・「エビデンスに加え、受療者の倫理や感性も重視して人間的暮らしを高める手法を作る」 ・「技術的な側面だけでなく、精神的な面も含めた患者満足度調査を行う」 ・「住民ニーズに沿ったデータ収集・分析とする」 ・「患者・住民の患者(満足度)調査を実施する」 □3 課題の整理 ・地域医療計画でPDCA サイクルを回していくことは緒に就いたばかりで、体制構築、基本方針、支援 体制、データ整備、普及活動などを体系的に行う必要がある。 ・PDCA サイクルと指標に関して、必ずしも正しい理解がされておらず、行政担当者の中にも「難しい」 という意識も高い。 ・地域医療計画に取り組む多様な立場いずれもが「PDCA サイクルと指標」に関する基本的理解と一定 レベルの策定スキルを得ることが重要となる。 ・「施策・指標マップ」を共有し、アウトカム目標に合った指標を設定し、アウトカム指標によって施 策の効果を吟味することを浸透させる必要がある。 ・データは、存在するデータを集めるのではなく、必要なデータを資源をかけても集めることが重要で ある。 ・指標の開発、収集、集計、分析、提供などに関しては、各都道府県が創意工夫することも重要だが、 145

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共通的なことは全国共同のセンター的組織が行うことが重要である。 ・アウトカムデータの収集が重要な点となる。客観的なデータの整備が必要であると同時に患者調査な ども欠かせない。患者調査は患者視線で患者の価値観なども汲み上げられる内容とすべきである。

6.導入すべき考え方

・PDCA サイクルと指標の領域においては、下記の 7 つの考え方が重要である。RH-PAC ガイドライン では、各疾病・事業・在宅分野において、適性に応じつつ、基本的にできるだけその考えを採り入れ る。また、各都道府県の地域医療計画のPDCA 管理において同様の考えを採用することを推奨する。 □1 施策・指標マップの使用 ・「施策・指標マップ」(本章の2 ページ目の図表 1 参照)を使用する。計画・施策の企画、提案、説明、 議論、評価などの際に「施策・指標マップ」を使うことで、アウトカム志向の強化、施策の改善、建 設的な議論の場の醸成などが期待される。 □2 コア指標の考え方 ・すべての指標のうち、特に重要な指標として厳選した指標として「コア指標」の考えを採り入れる。 コア指標は、分野アウトカム指標と中間アウトカム指標のこととする。数は疾病・事業別に数個程度 となる。コア指標は、数年間はモニターし続ける。 一方、個別施策の指標については、事業や活動を行う際には、アウトプット指標の計測は必須(対応 する初期アウトカム指標の計測も推奨)という考え。個別施策は年によって変化しうる。 コア指標の考えにより、「指標が多すぎる」という意見に対応する。 □3 アウトプットとアウトカムのつながり ・アウトプット指標、初期アウトカム指標、中間アウトカム指標、分野アウトカム指標のつながりを見 て評価することを重視する。そのためには、施策とアウトプットがどの中間アウトカムの向上につな がるかを施策・指標マップ上で矢印などによってつないでおくことが重要である。 □4 患者視線包括指標の考え方 ・各分野の分野アウトカム、中間アウトカムに関して、積極的に「患者視線包括指標」を設定する。患 者視線包括指標とは、その分野が全体として患者にとって改善しているかどうか、を示すものという 位置づけ。情報源は、下記に触れる共通患者調査を想定する。 分野アウトカム、中間アウトカムの指標として、患者視線包括指標を積極的に採用することを、それ が適切な疾病や事業において進める。 ・指標例・設問例: 「どこでどのような医療を受ければいいか、分かりやすかったですか」 「全体として、受けた医療に納得・満足していますか」 など 146

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□5 共通患者調査 ・5 疾病・5 事業・在宅医療(ただし、へき地医療、災害医療を除く)において、共通患者調査を提案 する。 ・実施者:「地域医療計画情報支援センター(仮称。「医療計画策定プロセスガイドライン」の章を参照。 以下、情報センター)」の「評価指標データサービス」の業務の一つと位置付ける。 ・設問:各疾病・事業に関して、全国共通設問、都道府県固有設問を設ける。全国共通設問(調査票) は、患者視線包括指標関係(分野アウトカム、中間アウトカム関係)を数問程度、個別施策関係数問 程度。都道府県固有設問(調査票)は、必要に応じて患者視線包括指標関係を若干数程度、個別施策 関係を若干数程度。各分野の設問は合計10 問程度(ただし、がん領域は現在 30~40 個程度が想定さ れている)。全国共通設問調査票は、情報センターが作成する。都道府県固有設問は、都道府県が作 成する。同封され、情報センターが発送、回収、集計する。 ・対象(患者サンプル):各疾病・事業に関して、患者(家族)、47 都道府県×200 人=約 1 万人程度。 当面は、各都道府県で主要医療機関2 施設にて 100 人ずつ対象に調査。対象と経路に関しては、検討・ 改善していく。 ・頻度:年に1 度。 ・指標例・設問例(再掲): 「どこでどのような医療を受ければいいか、分かりやすかったですか」 「全体として、受けた医療に納得・満足していますか」 など □6 医療の質を示す指標 ・現在、医療等サービスの質の内容や結果を示す指標(プロセス指標、アウトカム指標)が少ない。分 野アウトカム指標、中間アウトカム指標として、積極的に治療成績、臨床指標(QI)、標準治療順守 率などの測定を提案する。 □7 医療従事者調査 ・医療の質を示す指標に関して、前項のような客観調査の整備には一定の時間がかかることが想定され る。そこで、中間アウトカム指標として、過渡的に医療従事者意識調査を積極的に実施する。 ・実施者:「情報センター」の「評価指標データサービス」の業務の一つと位置付ける。 ・設問:各疾病・事業に関して、全国共通設問、都道府県固有設問を設ける。全国共通設問(調査票) は、アウトカム指標関係数問程度、個別施策関係数問程度。都道府県固有設問(調査票)は、必要に 応じてアウトカム指標、個別施策指標を若干数程度。各分野の設問は合計 10 問程度。全国共通設問 調査票は、情報センターが作成する。都道府県固有設問は、都道府県が作成する。同封され、情報セ ンターが発送、回収、集計する。 ・対象(医療提供者サンプル):各疾病・事業に関して、多職種の医療従事者、47 都道府県×100 人= 約5000 人程度。対象の抽出方法は要検討。 ・頻度:年に一度。 ・設問例: 「医療提供体制の整備が進んできたと思いますか」 「必要な医療従事者の適正配置が進んできたと思いますか」 147

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□その他 ○1 ビッグデータの活用やデータマイニング手法などによる、施策・指標マップ外の施策への対応 ・施策・指標マップでは、想定した因果関係、既存の政策、既知の知見を検証することが中心となる。 一方で、想定しない因果によって効果のある施策、未提案・未実施の施策、新たな知見に基づく新施 策などについても念頭に置き、必要に応じての導入が重要。そのために、さまざまな情報源のデータ を集積した大規模データを分析するビッグデータ、大規模データベースを新しい手法で分析するデー タマイニングなど、未知の知見を発見する手法を整備することも必要となる。 ○2 政策研究と政策研修の実施 ・医療対策の「PDCA サイクルと指標」に関する知見はまだ限られている。施策の効果に関するエビデ ンス(科学的根拠)の計測、効率的な政策形成、妥当な合意形成の方法とプロセスなど、さまざまな 観点からの政策研究が望まれる。また、政策立案関係者・参画者および住民に向けて、政策に関する 研究の普及啓発を進めていく必要がある。

7.施策・指標マップ使用のポイント

□1 「アウトプット」と「アウトカム」の区別 ・施策のアウトプットとアウトカムを区別することが、PDCA サイクルと指標を議論する基本となる。 このため、例示によって、その理解を確認しておくことが重要である。ここでは、下記に、緩和ケア分 野と相談支援分野の2 つの例を挙げる。 図表 3 例 1 緩和ケアでの説明例 148

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図表 4 例 2 相談支援での説明例 □2 「PDCA もどき」と「真の PDCA」の区別 ・PDCA は、アウトプットとアウトカムの関係について主にインパクト評価を考察、実施することであ り、単にアウトプットの推移を計測することはPDCA とは異なることを、共通理解しておくことが重 要である。上記2 例と、下記の全体図において、前者を「真の PDCA」、後者を「PDCA もどき」と して図示する。この点を、地域の政策立案に関与するマルチステークホルダー(多様な立場の関係者) が当初から理解しておくことが重要である。 図表 5 「PDCA もどき」と「新の PDCA」 149

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□3 施策・指標マップを使用する際の10 のポイント ・施策・指標マップを使いこなすためには急所となる点が存在する。ここでは10 ポイントを列挙する と同時に、「施策・指標マップ」と関連付けた図を示す。 1)まず、あるべき姿や分野アウトカムから考える。 2)それに結びつく中間アウトカムを考える。 3)中間アウトカム指標は既存のものが少ないが、あるべきアウトカム指標を書く。 4)中間アウトカム指標を高めそうな施策を考える。 5)施策候補のうち、中間アウトカムをもたらす大きさと可能性により施策を優先づける。 6)分野アウトカム、中間アウトカム、指標を線で結び、つながりを確認する。 7)全体を何度か見直し、中間アウトカムや施策を入れ替えて、完成させる。 8)存在しない必要な指標データは、その開発、計測、代理指標の発見を考慮する。 9)客観調査と意識調査、患者調査と医療提供者調査など、“複眼”での現状捕捉に努める。患者視 線の患者調査も活用する。 10)数値目標はできるだけ設定するが、根拠をもって決められないときは無理に決めず、現状値や 数値の推移が明確になってから、施策の効果を考慮して決めることでも構わない。 図表 6 施策・指標マップを使用する際の10 のポイント 150

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8.推奨施策

□ 推奨施策 下記の5 つの施策の実施を推奨する。推奨施策 2、3、4 は、推奨施策「『地域医療計画情報支援セン ター』の設置」(「医療計画策定プロセスガイドライン」参照)によってカバーされる。 ○推奨施策1 「施策・指標マップ」に基づいた施策効果に関する評価の実施(医療計画プロセスガイ ドライン推奨施策3 の再掲) ・施策の策定時のみならず評価の際にも、「施策・指標マップ」を用いて、施策がアウトカム指標にど のような効果をもたらしたかの観点から評価を実施する。 ○推奨施策2 PDCA サイクルと指標に関する研修の実施 ・医療計画のPDCA サイクルと指標および施策策定方法の基礎に関する研修を実施する。「地域医療計 画策定人材養成講座」「地域医療計画策定支援センター」および「地域医療計画サミット」(「医療計 画策定プロセスガイドライン」の推奨施策1-1、1-2、1-3)においても、この研修を実施。 ○推奨施策3 「PDCA サイクル向上ツールキット」の提供 ・地域医療計画の策定等に関わる審議会等の委員や地方自治体職員は、「施策・指標マップ」などを含 む「PDCA サイクル向上ツールキット」を活用して施策の作成や、合意形成のプロセスを進める。「地 域医療計画策定人材養成講座」に、このツールキットの使い方の講義を含める。 ○推奨施策4 「評価指標データサービス」の提供(「医療計画プロセスガイドライン」推奨施策 4 の 再掲) ・各都道府県や2 次医療圏などの SPO 指標、各地の施策と目標設定、施策の好事例候補、各地で実施 されている調査票と結果などを全国から収集し、比較可能、検索可能とする。また、指標の開発、指 標のデータベース化、データの収集と提供、ベンチマーキング(比較)、公表と普及などにより、地 域医療計画の策定に関わる人を支援する。分析の方法やツールも提供し、指標を使った評価と施策の 改善の支援も行う。 ○推奨施策5 指標の開発、集計、表示に関する国と都道府県等の財源の確保 ・国と都道府県がPDCA サイクルの確立と指標の整備を行い、上記の推奨施策 1~4 を実施するための 財源を確保する。地域医療体制再構築のための基金の活用も可能とする。 ○推奨施策 「地域医療計画情報支援センター」の設置(再掲) (「医療計画策定プロセスガイドライン」の図と説明を参照) 151

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9.参考資料

・厚生労働省医政局長通知、『医療計画について』、2012 年 3 月 30 日 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_ keikaku.pdf (2014 年 10 月 4 日閲覧) ・厚生労働省医政局指導課長通知、『疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について』、2012 年 3 月 30 日 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_t aisei1.pdf (2014 年 10 月 4 日閲覧) ・同別表(現状把握のための指標例) http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_t aisei2.pdf (2014 年 10 月 4 日閲覧) ・各都道府県の地域医療計画 ・PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=127275 (2014 年 10 月 4 日閲覧) ・『PDCA サイクルを通じた医療計画の実効性の向上のための研究会報告書』 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000043204.pdf (2014 年 10 月 4 日閲覧) ・がん政策情報センター、『都道府県がん計画策定状況および技術支援ニーズに関するアンケート回答 集』 http://153.122.7.157/handout/enquete_print_-00011130_370435.pdf (2014 年 10 月 4 日閲覧) ・日本医療政策機構 市民医療協議会、『患者アドボカシーカレッジ 第3 章 政策立案と評価のとき に』 http://www.advocacy-college.net/ ・竜慶昭、佐々木亮『「政策評価」の理論と技法』(多賀出版) 152

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取組の方向  安全・安心な教育環境を整備する 重点施策  学校改築・リフレッシュ改修の実施 推進計画

当初申請時において計画されている(又は基準年度より後の年度において既に実施さ

○池本委員 事業計画について教えていただきたいのですが、12 ページの表 4-3 を見ます と、破砕処理施設は既存施設が 1 時間当たり 60t に対して、新施設は

廃棄物の再生利用の促進︑処理施設の整備等の総合的施策を推進することにより︑廃棄物としての要最終処分械の減少等を図るととも

先ほどの事前の御意見のところでもいろいろな施策の要求、施策が必要で、それに対して財