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2. 調査内容 3. 臨床検査 4. 統計処理 SPSS.J Mann-Whitney t χ Spearman ns categorical principal component analysis nonlinear principal component analysis principal

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(1)

 糖尿病においては,インスリン作用不足による高血糖 状態が長期持続することにより,慢性合併症のリスクが 高まる。そのほとんどは血管合併症であり,これはさら に,腎症や網膜症などの細小血管合併症と大血管合併症 に分けられる。細小血管合併症は糖尿病に特徴的な合併 症であり,その予防には,血糖管理の意義が非常に大き い。さらに,大血管合併症は動脈硬化性病変であり,高 血圧・喫煙・脂質異常症など,糖尿病以外の危険因子の 関与も大きいものの,適切な血糖管理は基本である。近 年,食後高血糖と心血管疾患進行との関連が報告されて おり1 3),慢性合併症予防のためには,食後血糖の管理 が重要である。食後高血糖はトリグリセリド合成促進・ 脂質異常症を介する機序からも,心血管疾患のリスクと なる。実際,高トリグリセリド血症患者においては,炭 水化物由来エネルギーを総摂取エネルギーの 50%以下 にし,単糖類・二糖類摂取を制限することが推奨される。 またインスリン治療患者においては,血糖を上昇させや すい食品・料理を正しく理解し,食事からの炭水化物摂 取量に見合ったインスリンを注射することは,食後血糖 の管理を改善するであろう。  わが国において,糖尿病患者の大半を占める 2 型糖尿 病の治療において,食事療法はすべての治療の基礎であ る。管理栄養士や医師が患者に対して指導を行ったとし ても,食事療法を実践するのは患者自身であり,したがっ て患者が食事療法に対する適切な知識を持つことは必須 である。その内容として,適切な体重を維持する食事量 を理解しているだけではなく,血糖を上げやすい食品や 料理を正しく把握していることも重要である。  言うまでもなく,血糖値を最も上げやすい栄養素は炭 水化物であるが,糖尿病患者がこの点をどのように理解 しているのかに関して,血糖値に影響する食品や料理に 関するアンケート調査を行い,結果をカテゴリカル主成 分分析(詳細は後述)にて解析した。 対 象 と 方 法 1. 対   象  京都大学医学部附属病院の外来栄養指導を受けた糖尿 病 患 者 224 名(男 性 125 名, 女 性 99 名) を 対 象 に,

カテゴリカル主成分分析を用いた,糖尿病患者における

血糖値に影響する食品および料理の認識に関する検討

藤 井 彩 乃

1

,幣  憲 一 郎

2

,永 口 美 晴

2

,和 田 啓 子

2

北 浦 鏡 子

1

,水 本 香 菜

1

,桑 原 晶 子

3

稲 垣 暢 也

4

,田  中   清

*,1 (2012 年 9 月 26 日受付;2012 年 11 月 7 日受理) 要旨:糖尿病患者が適正体重を保つ食事量に加え,血糖値を上げやすい食品・料理を認識していることも重 要だが,この点に関する既報は乏しい。そこで糖尿病患者に血糖値を上げやすい栄養素・食品・料理の認識 に関する調査を行い,カテゴリカル主成分分析(CATPCA)により解析した。栄養素として炭水化物が血糖 値を上げやすいと答えた 224 名中 136 名(61%)(C 認識良好群)は,食品・料理レベルでも,高炭水化物 のものを正しく選択していたが,炭水化物以外を回答した群(C 認識不良群)は,血糖値を上げるものとし て,高脂質の食品・料理を高頻度で選んでいた。CATPCA で得られた「高炭水化物食品」因子と「高炭水 化物料理」因子は,C 認識良好群では有意の相関を示した。しかし,C 認識不良群では相関せず,栄養素レ ベルの判断が誤っているのみならず,食品・料理レベルの認識においてもずれが生じており,栄養指導の際 に留意すべきと考えられた。 キーワード: 糖尿病,食事療法,血糖値,炭水化物,カテゴリカル主成分分析 *連絡者・別刷請求先(E-mail: tanakak@kyoto-wu.ac.jp) 1 京都女子大学家政学部食物栄養学科(605 8501 京都府京都市東山区今熊野北日吉町 35) 2 京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部栄養管理室(606 8507 京都府京都市左京区聖護院川原町 54) 3 大阪樟蔭女子大学学芸学部健康栄養学科(577 8550 東大阪市菱屋西 4 2 26) 4 京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科(606 8507 京都府京都市左京区聖護院川原町 54)

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2011 年 6∼9 月の期間に,アンケートを実施した。なお, 本研究は京都女子大学の倫理審査委員会の承認を得て行 われた。 2. 調 査 内 容  アンケート内容は表 1 に示す通りであり,血糖値を上 げやすい栄養素・食品・料理について選択式アンケート にて質問した。各項目の選定基準は,食品に関しては, 「糖尿病食事療法のための食品交換表」4)を基に,各表 から 3 つずつ順に炭水化物含有量が多く,かつ日常的に 食べる食品を採用し,炭水化物含有量は「日本食品成分 表」5)に記載されている数値を参考にした。それぞれの 食品について基準となる量を設定し,写真によるパネル にて対象者が確認できるようにした。料理については, 1 問につき,3 品を高炭水化物料理,6 品を低炭水化物 料理(主に脂質の多い料理を 3 品,たんぱく質の多い料 理を 3 品ずつ)とした。1 食あたりの炭水化物含有量は 成書を参考とした6) 3. 臨 床 検 査  臨床検査値は,患者が外来栄養指導を受けた時,もし くは最も近い日の検査値を用いた。 4. 統 計 処 理  統計処理は,SPSS19.0J を用いた。独立した 2 群間の 差の検定には Mann-Whitney 検定または t 検定,表の形 のデータの分析には χ2検定を用い,独立した 2 変数間 の相関関係には Spearman の順位相関係数を用いて行っ た。各検定における統計学的有意水準は 5%未満とし, 有意差のない指標については ns で示した。  またデータの要約は,カテゴリカル主成分分析(cate-gorical principal component analysisあ る い は nonlinear principal component analysis)を用いて処理した。主成 分分析(principal component analysis;PCA)においては, 元データの分散すなわち情報量をできるだけ保ちつつ, 少数のサマリー(主成分)に要約されるが,アンケート 調査データに関しては,方法論上大きな問題がある。デー タは大きく,数値データとカテゴリーデータに分けられ る。カテゴリーデータは,男性・女性のような属性を表 す名義尺度と,順序を持つが,各段階間の等間隔性は成 り立たない順序尺度からなる。名義尺度に対して分散は 存在しないので,PCA を行うことは望ましくない。分 散が存在しない名義データに対して一定のアルゴリズム 表1 血糖値を上げやすい栄養素,食品,料理に対するアンケート内容 選択方法 質問項目 栄養素レベル 4 項目のうち,1 つ選択。 エネルギー,炭水化物,脂質,たんぱく質 食品レベル (6 食品× 3 問) 6 食品のうち,3 つ選択。 表 1(スパゲティ,ごはん,食パン) 表 2(バナナ,ぶどう,りんご) 表 3(納豆,牛肉,あゆ) 表 4(ヨーグルト,加工乳,普通牛乳) 表 5(アーモンド,落花生,ドレッシング) 表 6(かぼちゃ,とうもろこし,にんじん)* 料理レベル (9 品× 2 問) 9 品のうち,3 つ選択。 高炭水化物料理(うなぎ丼,ちらし寿司,オムライス,そ うめん,きつねうどん,お好み焼き) 低炭水化物料理(天ぷら,からあげ,ハンバーグ,クリー ムコロッケ,ヒレカツ,魚のフライ,オムレツ,鯛の煮付け, ビーフシチュー,マーボー豆腐,八宝菜,レバニラ炒め) *表 6 については,かぼちゃやとうもろこしなど炭水化物含有量の多い野菜も含め,一般的に野菜と考えられてい るものから決定した。 食品レベルの質問例 (例) あなたが血糖値を上げやすいと思う食品を上位 3 つ選んで,【 】に○を書いて下さい。 ※ 1 食当たり(目安 量は別紙を参考にして下さい。) 1.  【  】アーモンド   【  】バナナ     【  】かぼちゃ 【  】納豆      【  】スパゲティ   【  】ヨーグルト(脱脂加糖) 料理レベルの質問例 (例)あなたが血糖値を上げやすいと思う料理を上位 3 つ選んで,【 】に○を書いて下さい。 ※ 1 食当たり 1.  【  】そうめん    【  】てんぷら      【  】オムレツ 【  】ハンバーグ   【  】ちらし寿司     【  】からあげ 【  】鯛の煮つけ   【  】ビーフシチュー   【  】うなぎ丼

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に則って数値化した上で PCA を行うのが,カテゴリカ ル主成分分析であり,本稿では CATPCA と略す。  重回帰分析については,強制投入法を用いて処理した。 結     果 1. 対象者の特性  表 2 に対象者の特性を示す。対象者 224 名のうち,血 糖値を上げやすい栄養素として,炭水化物を選択したの は 136 名(60.7%),炭水化物以外を選択したのは,88 名(39.3%)であり,以後これらを,炭水化物認識良好 群(C 認識良好群),炭水化物認識不良群(C 認識不良群) とする。  C 認識良好群は有意に若く,栄養指導歴も有意に短か かった。性別,BMI,臨床検査値については,有意差は 認められなかった。全対象者の平均 BMI は 25.2±4.5 kg/m2と,肥満傾向であった。 2. 両群間における食品と料理の選択  両群における,食品および料理の選択結果をそれぞれ 図 1,2 に示す。  食品については,血糖値を上げやすい食品として,C 認識良好群はごはん・食パン・とうもろこし・かぼちゃ・ ぶどうを,C 認識不良群はアーモンド・牛肉・加工乳・ あゆを,有意に高い割合で選択していた。またごはん・ 食パン・スパゲティ等の主食は,両群ともに 7 割以上が 血糖値を上げやすい食品として選択していた。  料理については,血糖値を上げやすい料理として,C 認識良好群は,オムライス・ちらしずし・きつねうどん・ そうめんを,C 認識不良群は,からあげ・ヒレカツ・天 ぷら・レバニラ炒めを,有意に高い割合で選択していた。 クリームコロッケ・うなぎ丼・からあげ・お好み焼きは, 両群ともに半数以上が血糖値を上げやすい料理として選 択していた。 表2 患者背景 項   目 全 体n=224 n=136(60.7%)C認識良好群 nC=88(39.3%)認識不良群 p値 性別(男/女) 125/99 72/64 53/35 nsa 年齢(歳) 62.0±12.4 60.3±12.4 64.8±12.1 <0.01b 体重(kg) 62.7 62.9 62.4 nsc 〔中央値〕(25 75%) (55.1 73.3) (55.2 76.5) (54.2 69.9) BMI (kg/m2 25.2±4.5 25.6±4.8 24.7±3.9 nsb HbA1c (%,JDS 値) 6.9±1.1 6.9±1.2 6.8±1.0 nsb LDL-C (mg/dL) 110.4±32.4 109.7±34.9 111.4±28.7 nsb HDL-C (mg/dL) 50.5±13.4 51.5±13.6 49.8±13.3 nsb TG (mg/dL) 115 100.4 112 nsc 〔中央値〕(25 75%) (84.0 163.0) (83.0 145.0) (89.5 176.0) 栄養指導歴(ヶ月) 43 38 50.5 <0.05c 〔中央値〕(25 75%) (16.3 78.7) (14.0 74.5) (26.3 97.0) 栄養指導回数(回) 21 19 24 nsc 〔中央値〕(25 75%) (9.0 37.0) (8.0 35.8) (11.0 40.8) 経口血糖降下薬者(名) 120 72 48 nsa インスリン治療者(名) 45 25 20 nsa SMBG使用者(名) 43 24 19 nsa データは平均値± SD,中央値(25 75%タイル値),または人数で示す。 p値は,a χ2検定,b t検定,c Mann-Whitney検定の結果を示し,ns は有意差なしを表す。1 血糖値に影響のある食品選択の比較 両群間の比較には χ2検定を用い,p<0.05,**p<0.01, ***p<0.001 を示す。2 血糖値に影響のある料理選択の比較 両群間の比較には χ2検定を用い,p<0.05,**p<0.01, ***p<0.001 を示す。

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3. 食品の認識と栄養素の群との関係  次に全体としての傾向を見るために,食品 18 項目, 料理 18 項目それぞれ個別に,CATPCA によるデータの 要約を行った。  食品に関する結果を表 3 に示す。食品における第 1 次 元は,にんじん・りんご・ぶどう・かぼちゃなどが正, あゆ・牛肉・ドレッシング・アーモンドなどが負の大き な値を示し,正から負の値へ向け,高炭水化物食品から 低炭水化物高脂質食品になっていることから,第 1 次元 を「高炭水化物食品」因子と命名した。第 2 次元は,に んじん・加工乳・納豆・牛乳などが正の大きい値を示す ことより,第 2 次元を「牛乳・乳製品」因子と命名した。  C 認識良好群と C 認識不良群を結ぶ栄養素の直線を 加えた CATPCA の結果を図 3 に示す。それぞれ炭水化 物を多く含む食品,脂質を多く含む食品は近接してプ ロットされており,類縁の食品として認識されていた。 また栄養素 2 群を示す直線とこれらの食品を表す直線 は,ほぼ平行していた。すなわち,C 認識良好群の周囲 には炭水化物を多く含む食品がプロットされており,C 認識不良群の周囲には脂質を多く含む食品がプロットさ れており,栄養素に対する認識と食品に対する認識は一 致していた。  一方スパゲティ・落花生・牛乳・ヨーグルト・納豆・ 加工乳等の食品の直線は,栄養素の直線と概ね直交して いた。 4. 料理の認識と栄養素の群との関係  料理に関する結果を表 4 に示すが,料理における第 1 次元は,そうめん・きつねうどん・ちらしずし・鯛の煮 付けなどが正の,魚のフライ・からあげ・ヒレカツ・天 ぷらなどが負の大きい値を示した。すなわち,正から負 の値へ向け,高炭水化物料理から,低炭水化物高脂質料 理となっており,第 1 次元を「高炭水化物料理」因子と 命名した。第 2 次元は,八宝菜・レバニラ炒め・マーボー 豆腐・鯛の煮付けなどが正の大きい値を示し,第 2 次元 を「低脂質料理」因子と命名した。  C 認識良好群と C 認識不良群を結ぶ栄養素の直線を 加えた CATPCA の結果を図 4 に示す。それぞれ炭水化 物を多く含む料理,揚げ物料理,肉料理は,近接してプ ロットされており,類縁の料理として認識されていた。 そして,栄養素 2 群を示す直線とこれらの料理を表す直 線は,栄養素 2 群と食品を表す直線ほどに平行ではな かったが,おおよそ平行していた。すなわち,C 認識良 好群の周囲には炭水化物を多く含む料理がプロットされ ており,C 認識不良群の周囲には脂質を多く含む揚げ物 料理や肉料理がプロットされていた。また,揚げ物の中 でもクリームコロッケや魚のフライは,栄養素 2 群の直 線とほぼ直交していた。  したがって,栄養素に対する認識と食品に対する認 識は,ほぼ一致していた。しかし,料理に対する CAT-PCAは,食品に対する CATPCA と比較して,栄養素と 表 4 料理選択におけるカテゴリカル主成分分析(CAT-PCA)結果 料 理 名 第 1 次元 第 2 次元 そうめん  1.382 −0.439 きつねうどん  1.248 −0.321 ちらしずし  1.164 −0.521 鯛の煮付け  0.636  0.655 オムライス  0.624 −0.382 オムレツ  0.605  0.401 お好み焼き  0.316  0.306 うなぎ丼  0.306 −0.064 八宝菜  0.244  1.618 マーボー豆腐 −0.025  1.024 ハンバーグ −0.227  0.361 ビーフシチュー −0.268  0.284 レバニラ炒め −0.336  1.066 クリームコロッケ −0.362 −0.304 天ぷら −0.482 −0.139 ヒレカツ −0.491 −0.122 からあげ −0.550 −0.074 魚のフライ −0.726 −0.607 累積寄与率 18.32 27.16 固有値 3.30 1.59 CATPCAにより,データは 2 つの主成分(第 1 次元・ 第 2 次元)に要約され,それぞれの値は,各料理に 対する,CATPCA により得られたベクトル座標を示す。 表 3 食品選択におけるカテゴリカル主成分分析(CAT-PCA)結果 食 品 名 第 1 次元 第 2 次元 にんじん  1.630  1.523 りんご  0.632  0.189 ぶどう  0.475  0.000 かぼちゃ  0.377 −0.322 バナナ  0.245 −0.017 ごはん  0.185 −0.037 食パン  0.180 −0.091 とうもろこし  0.096 −0.373 スパゲティ −0.009 −0.153 牛乳 −0.129  0.595 落花生 −0.195 −0.273 ヨーグルト −0.204  0.990 納豆 −0.297  1.311 加工乳 −0.435  1.375 アーモンド −0.450 −0.107 ドレッシング −0.489 −0.075 牛肉 −0.517 −0.093 あゆ −1.184  0.030 累積寄与率 15.64 27.90 固有値 2.82 2.21 CATPCAにより,データは 2 つの主成分(第 1 次元・ 第 2 次元)に要約され,それぞれの値は,各食品に 対する,CATPCA により得られたベクトル座標を示す。

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3 食品におけるカテゴリカル主成分分析(CATPCA)結果の 2 次元配置 黄色は高炭水化物食品,オレンジ色は低炭水化物食品(肉,魚,ナッツ類等),緑色は牛乳・乳製品,ピンク色は血 糖値を上げやすい栄養素の選択を表す。血糖値を上げやすい食品として選択した例のベクトル座標を○,血糖値を 上げやすい食品として選択しなかった例のベクトル座標を×で表現している。各カテゴリは 2 次元プロット上に, 類似の構造を有しているカテゴリが近接するように配置される。 図4 料理におけるカテゴリカル主成分分析(CATPCA)結果の 2 次元配置 黄色は高炭水化物料理,オレンジ色は揚げ物料理,緑色はその他の料理,ピンク色は血糖値を上げやすい栄養素の 選択を表す。血糖値を上げやすい料理として選択した例のベクトル座標を○,血糖値を上げやすい料理として選択 しなかった例のベクトル座標を×で表現している。各カテゴリは 2 次元プロット上に,類似の構造を有しているカ テゴリが近接するように配置される。

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料理のプロットされた点がそれぞれ離れており,料理 の選択性にばらつきがあったと考えられる。  CATPCA にて得られた因子間の相関関係を見たとこ ろ,C 認識良好群において「高炭水化物食品」因子と「高 炭水化物料理」因子間に有意な正相関が認められたが(r =0.333,p<0.001),C 認識不良群においては,関連は 示されなかった。 5. 高炭水化物食品および料理の正しい認識の要因の 検討  血糖値を上げやすい食品および料理選択の要因を検討 するため,「高炭水化物食品」因子並びに「高炭水化物 料理」因子を従属変数,性別・年齢・BMI・HbA1c・イ ンスリン治療の有無・血糖自己測定(SMBG)の有無・ 栄養指導歴・栄養素 2 群を独立変数として重回帰分析を 行った。「高炭水化物食品」因子に対する有意な寄与因 子は栄養素 2 群のみであった(表 5)。高炭水化物料理 に関しては,栄養素 2 群・SMBG の有無が有意の寄与 を示した(表 6)。 考     察  栄養素レベルで,血糖上昇に最も影響のある栄養素が 炭水化物であると,正しく認識できている例,すなわち C認識良好群は 60.7%であった。血糖上昇に影響する栄 養素が炭水化物であることは,最も基本的知識であり, 対象が,外来栄養指導を受けている糖尿病患者であるこ とを考えると,この数字は低いと言わざるを得ない。C 認識不良群の多くは,血糖上昇に影響する栄養素として, 脂質またはエネルギーを選択していた。続いて,これら 2 群に属する患者が,食品・料理レベルで,どのような 認識をしているのか検討した。  食品レベルでは,主食については,群を問わず,7 割 以上が正しく認識できていた。C 認識良好群は,血糖値 を上げやすい食品として高炭水化物食品を選び,おおむ ね正しく認識していたが,C 認識不良群では高脂質食品 を選択していた。料理でも同様に,全体としては,C 認 識良好群は高炭水化物料理,C 認識不良群は,揚げ物料 理を高い割合で選択していた。しかし C 認識良好群に おける高炭水化物料理に対する選択率を詳細に見ると, 高脂質高炭水化物料理で特に高く,低脂質高炭水化物料 理では非常に低い結果であり,また揚げ物料理も多く選 択されていた。すなわち C 認識良好群は,栄養素・食 品レベルでは正しく理解していても,料理レベルになる と知識が混乱して,高脂質料理を選んでいることがうか がわれた。 表5 「高炭水化物食品」因子を従属変数とした重回帰分析(強制投入法) 独 立 変 数 標準化係数 β 性別(1;男性,2;女性)  0.060 年齢 −0.050 BMI −0.009 HbA1c −0.092 インスリン治療の有無(0;無し,1;有り)  0.045 SMBGの有無(0;無し,1;有り)  0.073 栄養指導歴  0.068 栄養素 2 群(0;C 認識不良群,1;C 認識良好群) 0.333*** R2値    0.128** 強制投入法による,「高炭水化物食品」因子を従属変数とした重回帰分析結 果を示す。**は,p<0.01,***は,p<0.001 を示す。6 「高炭水化物料理」因子を従属変数とした重回帰分析(強制投入法) 独 立 変 数 標準化係数 β 性別(1;男性,2;女性) −0.036 年齢  0.050 BMI −0.082 HbA1c  0.074 インスリン治療有無(0;無し,1;有り) −0.285 SMBGの有無(0;無し,1;有り) 0.312* 栄養指導歴 −0.022 栄養素 2 群(0;C 認識不良群,1;C 認識良好群) 0.349*** R2値    0.141*** 強制投入法による,「高炭水化物料理」因子を従属変数とした重回帰分析結 果を示す。*は p<0.05,***は,p<0.001 を示す。

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 以上のような結果が得られた理由は,現時点では不明 であるが,本調査の対象者の平均 BMI は 25.2 kg/m2と, 肥満傾向であったことが関係している可能性は考えられ る。肥満 2 型糖尿病患者においては,肥満解消,適正体 重維持による,インスリン抵抗性の改善は,非常に重要 である。長期的な減量においては,肉や油脂等の脂質摂 取を減らし,野菜や果物などの摂取量を増やすことは, 結果的にエネルギー摂取量を抑え,またより多くの食品 重量を摂取できるため満腹感を感じやすいという利点が ある7)8)。したがって,肥満 2 型糖尿病患者に対して, 減量によるインスリン抵抗性の改善を目的に,体重管理 や食品バランスを主とした栄養指導を行った場合,仮に 指導側が血糖管理を目指していたとしても,患者側は, 体重に直接に影響する脂質やエネルギーによる体重管理 と,血糖管理を混同してしまうことが予想される。但し この点に関しては,背景因子との関連を,今後さらに詳 細に,調査する必要がある。  一方 C 認識不良群において,高脂質高炭水化物料理 は多く選択されていたが,肉料理の選択率が低かったの で,C 認識不良群においては,血糖上昇に最も影響があ るのは,低炭水化物料理の中でも特に,肉ではなく,油 を使用した高脂質料理であると理解していることが示唆 された。  次に,どのような食品どうし,あるいはどのような料 理どうしが近い関係にあると,患者に認識されているの か,相互関係を検討するために,CATPCA を行った。 本研究で用いたような,多数の名義尺度の項目からなる アンケート調査の結果から,意味のある結論を得るため には,データの要約・サマリー化が必要であるが,PCA を行うことはできないので,CATPCA を用いて解析を 行った。  CATPCA の結果,食品に関して,C 認識良好群の周 囲には高炭水化物食品,C 認識不良群の周囲には高脂質 食品がプロットされており,血糖値を上げやすい栄養素 に対する認識が正しい例は,食品に関しても正しく認識 できていた。  料理に関して,C 認識良好群の周囲には高炭水化物料 理,C 認識不良群の周囲には高脂質料理がプロットされ, 食品の認識と同様に,栄養素において正しい認識ができ ている例は,料理に関しても正しく理解できていた。  さらに CATPCA の結果得られた,「高炭水化物食品」 因子と,「高炭水化物料理」因子の間には,C 認識良好 群においては正の相関が見られたが,C 認識不良群では 関連が認められなかった。すなわち C 認識良好群は, 栄養素レベルで,血糖を最も上昇させやすいのが炭水化 物であると,正しく認識できており,食品・料理レベル でも,おおむね的確な判断ができていたのに対し,C 認 識不良群は,栄養素レベルでの判断が誤っているだけで はなく,食品・料理レベルにおいて,認識のずれが生じ ている可能性が示唆された。  最後に重回帰分析を行ったところ,「高炭水化物食品」 因子に対しては,栄養素 2 群,「高炭水化物料理」因子 に対しては,栄養素 2 群・SMBG の有無が有意な寄与 因子であった。栄養素 2 群については,本稿でここまで 述べてきた通りだが,さらに料理に関する正しい認識は, SMBG使用者で高かった。SMBG の実施により,どの ような料理を食べた際に,血糖値が上がるのかを経験的 に理解することができるためという可能性も考えられる が,その理由はさらに検討を要する。  以上のように,C 認識良好群と C 認識不良群の別は 意義を有するものと考えられたが,残念ながら本研究で は,これら 2 群の特性は十分明らかにはできなかった。 両群の背景因子を比較したところ,C 認識不良群におい て,有意に年齢が高く,栄養指導歴が長かった。C 認識 不良群において,栄養指導歴が長いことは一見逆説的で あるが,より年齢が高く,加齢により,理解度の差が生 じた可能性は考えられるものの,これらの点について断 定はできない。さらに,栄養指導の間隔についても調査 したが,両群間に差は認められなかった。また両群間で, HbA1c に差は認められなかった。このことについても, その理由は明らかではないが,本研究は,外来栄養指導 を受けている患者を幅広く対象としたものであり,実際 に食事療法が遵守できているかに関する情報は得られて おらず,また知識の有無とは無関係に,薬物療法が影響 した可能性も考えられる。C 認識良好群と C 認識不良 群の特性については,患者背景を揃えた調査等が必要と 思われる。  糖尿病患者を対象に,血糖値を上昇させやすい食品・ 料理に対する認識を調査した報告はきわめて乏しい。矢 神らは,10 点満点の VAS(Visual Analog Scale)を用い て,「血糖はカロリーの影響を強く受けていると思いま すか?」,「血糖は炭水化物の影響を強く受けていると思 いますか?」というアンケート調査の結果,食品交換表 継続群(平均がそれぞれ 6.9,6.6)に比べて,カーボカ ウント上乗せ群では,8.0,7.6 と高かったと述べてい る9)。しかしカーボカウント上乗せ群においては,炭水 化物だけではなくカロリーも,高いスコアを示しており, カーボカウント指導の結果,血糖上昇に対する影響は, 炭水化物が大きいことをよく認識するようになったとは 言えない。また血糖上昇に関して,エネルギーあるいは 各栄養素に対する患者の認識の詳細は明らかにされてい ない。我々の検索した範囲で,このテーマに関する研究 は他になく,患者教育に関する,コクランライブラリー の広範なレビューにおいても,この点は取り上げられて いなかった10)  本論文は二つの特色を持つものと考えている。一つは 上に述べたように,臨床的に重要であるにもかかわらず, 意外に盲点になっているテーマを取り上げたことであ り,もう一点は解析に CATPCA を用いたことである。 患者の持つ意識や知識の把握は,適切な栄養指導に欠か

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せないので,患者に対するアンケート調査の実施は,管 理栄養士による栄養指導の実践に対して,きわめて有用 な情報を提供するものである。上に述べたように,意味 のある結論を得るためには,PCA による,結果の要約・ サマリー化が必須であるが,名義尺度のデータについて はそれが困難である。CATPCA は,心理学や社会学分 野では,ごく普通の分析手法であるにもかかわらず,従 来臨床栄養学分野ではほとんど用いられていない。本法 は,患者の意識調査などを中心に,臨床栄養学領域にお ける広い応用が期待される。  以上,糖尿病患者において,血糖を上昇させやすい栄 養素が炭水化物であることを認識している例は約 60% に留まり,また食品レベルでは理解できていても,加工・ 調理・料理レベルになると,高脂質料理を血糖上昇に影 響のある料理として認識してしまい,見た目があっさり している低脂質高炭水化物料理に対する認識が低いなど の問題点が見られた。栄養指導の際には,これらの点に 留意しながら行うことが必要であると考えられる。最近 は,炭水化物に関する知識を問う質問表も発表されてお り11),今後この点に関してさらなる研究や,啓発が必要 であろう。 文     献

1)DECODE Study Group, the European Diabetes Epi-demiology Group (2001) Glucose tolerance and car-diovascular mortality. Comparison of fasting and 2 -hour diagnostic criteria. Arch Intern Med 161: 397 405.

2)Tominaga M, Eguchi H, Manaka H, Igarashi K, Kato T, Sekikawa A (1999) Impaired lucose tolerance is a risk factor for cardiovascular disease, but not im-paired fasting glucose. The Funagata Diabetes Study. Diabetes Care 22: 920 4.

3)Rodriguez BL, Abbott RD, Fujimoto W, Waitzfelder B, Chen R, Masaki K, Schatz I, Petrovitch H, Ross W,

Yano K, Blanchette P, Curb JD (2002) The American Diabetes Association and World Health Organization classifications for diabetes: their impact on diabetes prevalence and total and cardiovascular disease mor-tality in elderly Japanese-American men. Diabetes Care 25: 951 5. 4)日本糖尿病学会編(2002)糖尿病食事療法のための 食品交換表第 6 版.文光堂,東京. 5)医歯薬出版(編)(2011)最新日本食品成分表 日本 食品標準成分表 2010・アミノ酸成分表 2010・五訂 増補脂肪酸成分表 完全収載.医歯薬出版,東京. 6)大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学教室, 大阪市立大学医学部附属病院栄養部編(2011)糖尿 病のあなたへ かんたんカーボカウント∼豊かな食 生活のために∼改訂版.医薬ジャーナル社,大阪. 7)Ello-Martin JA, Roe LS, Ledikwe JH, Beach AM, Rolls

BJ (2007) Dietary energy density in the treatment of obesity: a year-long trial comparing 2 weight-loss di-ets. Am J Clin Nutr 85: 1465 77.

8)Ledikwe JH, Blanck HM, Kettel Khan L, Serdula MK, Seymour JD, Tohill BC, Rolls BJ (2006) Dietary en-ergy density is associated with enen-ergy intake and weight status in US adults. Am J Clin Nutr 83: 1362 8. 9)矢神真奈美,加藤大也,林安津美,脇阪涼子,小林 憲司,鷲野香織,山本絢子,立石早祐美,澤井喜邦, 稲垣一道,金山 均,片田直幸,伊藤光泰(2011) 2 型糖尿病患者にカーボカウント基礎編を導入した 効果.糖尿病学会誌 54: 430 5.

10)Duke SA, Colagiuri S, Colagiuri R (2009) Individual patient education for people with type 2 diabetes mel-litus. Cochrane Database Syst Rev 21: CD005268. 11)Koontz MB, Cuttler L, Palmert MR, O Riordan M,

Borawski EA, McConnell J, Kern EO (2010) Devel-opment and validation of a questionnaire to assess carbohydrate and insulin-dosing knowledge in youth with type 1 diabetes. Diabetes Care 33: 457 62.

(9)

J Jpn Soc Nutr Food Sci 66: 77 85(2013)

Original Paper

Perception of the Relative Potency of Various Foods and Meals for

Increasing the Blood Glucose Level in Patients with Diabetes Mellitus: A

Study Based on Categorical Principal Component Analysis

Ayano Fujii,

1

Kenichiro Shide,

2

Miharu Eguchi,

2

Keiko Wada,

2

Kyoko Kitaura,

1

Kana Mizumoto,

1

Akiko Kuwabara,

3

Nobuya Inagaki,

4

and Kiyoshi Tanaka

*,1

(Received September 26, 2012; Accepted November 7, 2012)

Summary: For diabetic patients, it is essential to have an accurate awareness of food intake in order to main-tain an adequate body weight, and the relative potency of various foods and meals for increasing the level of blood glucose (BG). The latter, however, has been little studied. In the present investigation using a question-naire, we examined whether diabetic patients had some perception of the BG-raising potency of various nutri-ents, foods and meals, and analyzed the results by categorical principal component analysis (CATPCA). Among the 224 subjects, 136 correctly selected carbohydrate as the main BG-raising nutrient (C-group). C-group sub-jects selected carbohydrate-rich foods and meals, whereas non-C subsub-jects selected lipid-rich foods and meals. CATPCA revealed a significant correlation between the carbohydrate-rich foods component , and carbohy-drate-rich meals component in the C-group, but not in the non-C-group. Thus, non-C subjects, who had a mis-conception about BG-raising nutrients, were also inconsistent in their recognition of BG-raising foods and meals. In summary, knowledge of BG-raising nutrients, foods, and meals was unsatisfactory in a substantial percentage of the diabetic patients, a fact which must be borne in mind by dietitians.

Key words: diabetes mellitus, medical nutritional therapy, blood glucose, carbohydrate, categorical principal component analysis

Corresponding author (E-mail: tanakak@kyoto-wu.ac.jp)

1 Department of Food and Nutrition, Kyoto Women s University, 35 Imakumano-kitahiyoshicho, Higashiyama 605 8501, Japan

2 Department of Metabolism and Clinical Nutrition, 54 Shogoin-kawaharacho, Sakyo 606 8507, Japan

3 Department of Health and Nutrition, Osaka Shoin Women s University, 4 2 26 Hishiya-nishi, Higashiosaka 577 8550, Japan

図 3 食品におけるカテゴリカル主成分分析(CATPCA)結果の 2 次元配置 黄色は高炭水化物食品,オレンジ色は低炭水化物食品(肉,魚,ナッツ類等),緑色は牛乳・乳製品,ピンク色は血 糖値を上げやすい栄養素の選択を表す。血糖値を上げやすい食品として選択した例のベクトル座標を○,血糖値を 上げやすい食品として選択しなかった例のベクトル座標を×で表現している。各カテゴリは 2 次元プロット上に, 類似の構造を有しているカテゴリが近接するように配置される。 図 4 料理におけるカテゴリカル主成分分析(CATPC

参照

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