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地下水学会提出資料

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Academic year: 2021

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福岡市における節水型都市づくり

古賀文博(福岡市役所技術士会長) はじめに 福岡市は、1978 年、1994 年と二度も大きな渇水を経験したこと から、市民と共に日本一の節水型都市を構築しており、水を有効 利用することなどで、以前自前の水源だけでは 100 万人程度が限 度といわれていた人口も、今では約 147 万人に達している。 今後、地球温暖化や人口増加などにより、世界の水事情が逼迫 していく中、福岡市が歩んできた節水型都市づくりの経験と教訓 を、広く世界に伝えていく責務があると考えている。このため、 福岡市役所技術士会では、これから数回に分けて特集記事を紹介 していく予定だが、まず初回は節水型都市づくりの概要について 述べたい。 1,世界の水事情 21世紀は、まさに水の世紀と言われており、世界各国で、あらゆる手段を講じて水を確保する 努力が行われている。世界の人口は、最近 70 億人(内アジアが 42 億人)を突破したが、今後、2050 年には 90 億人を超え、アジアの都市人口も2倍に膨れ上がると予測されることから、必然的に水 も食料も不足することになる。また、国際連合では、「2025 年までに 30 億人の人々が清潔な水が 手に入らない状況になる」と予測し、安全な飲料水を利用できない人口の割合を 2015 年までに 1990 年の半分にすることを提唱している。 2,日本の水事情 日本の年間降水量は、世界の平均降水量 810mmの約2倍の 1690mmであるが、これに国土面 積を乗じて全人口で除した一人当たりの年間降水量に換算すると、世界平均のおよそ3分の1とな る。 さらに、河川が急こう配で延長も短いため、せっかく降った雨が有効に活用されないまま海 に流れてしまう状況にある。 このように日本は決して水が豊富ではないものの、節水技術などにより、効率的な水利用を実 現しており、今後アジアの国々が直面するであろう課題を先取りして経験している。なお、日本 の水は蛇口から直接飲める水質であり、また水道事業や下水道事業は多くの自治体が直接運営を 行ってきている。 3,福岡市の地理的条件等 福岡市は、古くから、日本とアジアを結ぶ交流拠点として 成長してきており、人口約 147 万人の日本を代表する都市 の一つである。(福岡市の年間降水量は 1632mm) 福岡市は、市域面積約 339km2、北は玄界灘に臨み、東西 の半島が抱く博多湾に面し、背後は山々が囲む半月型の福岡 平野の中心に位置している(図-2)。市内を流れる河川は、 いずれも中小河川ばかりで、水源に恵まれていない。 図-1 節水シンボルマーク 図-1 節水シンボルマーク

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4,福岡市水道の歩み 1923 年、福岡市の総人口 143,000 人のうち 35,000 人への給水から始まった水道事業(計画給水 人口 12 万人、施設能力 1 日最大 15,000m3)だったが、その後の市町村合併や経済成長に伴い都市 化による人口の集中が進み、水需要は増加の一途をたどった。そのため福岡市は、新たな水資源確 保のための拡張工事を続け、特に 度重なる8つのダム建設、流域外である筑後川からの導水、日 本で最大規模の海水淡水化センターの建設などを行った。(図-3) 2010 年度末実績は、行政区域内人口 1,469,069 人、給水人口 1,458,000 人、施設能力 1 日最大 764,500m3、1 日平均給水量 403,102 m3/日、1 人 1 日平均給水量 276 L である。また一世帯1月当 たりの平均水道料金は 12.4 m3で約 2,110 円である。 -100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 800,000 900,000 1923 1928 1933 1938 1943 1948 1953 1958 1963 1968 1973 1978 1983 1988 1993 1998 2003 施設能力(m3/日) 0 300,000 600,000 900,000 1,200,000 1,500,000 行政区域内人口(人) 2 5, 節水型都市づくり 5,1 日本で最大級の 1978 年渇水 前年からの少雨が続いたことにより、1978 年 5 月 20 日か ら 1979 年 3 月 24 日までの 287 日もの間、福岡市は給水制 限を余儀なくされた。給水制限延べ時間は 4,054 時間(1 日 平均 14 時間断水)、延べ 13,433 台の給水車が出動。特に夏 場には一日のうち夕方の5、6時間しか給水できず、また約 45,000 世帯が完全断水となる時期もあり、とにかく、生活 に不可欠な水がないということで、「福岡砂漠」、「渇水疎開」 などの言葉が生まれるほど、市民生活は混乱し、都市機能も マヒしかねない状況だった。 乳幼児がいる家庭や夏休みの小学生は渇水疎開を行い、水 を多く使う商売では、メニュー制限や営業時間短縮により、 減収となった。 断水世帯への運搬給水では、特にアパート等で、バケツの 水を持って階段を上るのに苦労されたし、水洗トイレは、バ ケツの水がなければ使用できなかった。 特に貯水槽利用による断水時間帯の水使用などについて 「公平給水」に関する苦情が多かった。(図-4,5) 図-4 湖底をさらけ出しているダム 図-5 バケツに給水を受ける市民 図-3 福岡市の人口と施設能力の推移 施設能力 行政区域内人口 平成 6 年渇水 (H 6.8.4~H 7.5.31) 給水制限:295 日間 大正 12 年 水道創設 昭和 53 年渇水 昭和 58 年 11 月 筑後川受水開始 (S53.5.3~S54.3.24) 給水制限:287 日間

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5.2 節水施策 長期間に及ぶ給水制限は、市民と行政に対して水の貴重さと水事情の厳しさを再認識させるもの であり、福岡市はこの大渇水を教訓として、1979 年に「福岡市節水型水利用等に関する措置要綱」 を制定した。この要綱により、市と市民及び事業所が一体となり、水の安定供給を図るための水源 開発、水の有効利用、節水施策を推進してきた。さらに、節水要綱を制定してから 25 年が経過し ことから、2003 年に日本で初の「福岡市節水推進条例」を制定し、より一層の推進を図っている。 ①水資源開発(前述のとおり) ②水の有効利用の推進 ○漏水の防止 漏水は、水の有効利用を阻害する無駄な水であり、漏水量を減少させれば、取水、導水、浄水等 の造水コストも節約できる。このため、市内全域の給・配水管について、漏水調査(図-6)を実施 し、速やかに修理を行うとともに、1956 年からは計画的な漏水防止事業に取り組み、1955 年度 38.4% だった漏水率は 2010 年度には日本でトップクラスの 2.6%まで減少した(図-7)。 2.6% 3.5% 10.3% 38.4% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 30 35 40 45 50 55 60 2 7 12 17 22年度 漏水率 昭和53年渇水→ 平成 6年渇水→ 図-6 漏水調査 図-7 漏水率の推移 ○ 配水調整システム(水管理センター) 日本では始めて、1981 年から市内全域の流量や水圧 を 24 時間体制でコンピュターの集中制御を行う配水調 整システム(図-8)を導入し「水管理センター」で運用 している。これにより、水圧の減圧調整が可能となり、 配水管からの漏水量及び蛇口からの吐出量が減少する とともに、配水管異常時の早期対応などが可能となり、 効率的な水運用に役立っている。 図-8 システム概要 ○下水処理水等の有効利用 節水型都市づくりの一環として、下水処理水を再生して、 水洗トイレなどに再利用する雑用水道の普及を図っている。 雑用水道には、建物内で下水を処理し再利用する個別循環 型(296 件)、市内2カ所の下水処理場から供給されている再 生 水 を 利 用 す る 広 域 循 環 型 ( 376 件 ) 及 び 、 そ の 他 福 岡 Yahoo!JAPAN ドーム(図-9)など 140 施設でトイレの洗浄用水 などに雨水を利用する非循環型がある。

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特に、広域循環型雑用水道(再生水利用下水道事業)は 1980 年に日本で始めて供給開始したもの で、下水処理水をさらに再生処理した後、市内中心部やウォーターフロント地区など(供給区域面 積 1,414ha)の大型ビル等のトイレ洗浄水や公園、街路等の樹木への散水用水に利用されている。 2010 年度は 1 日平均約 5,400m3/日を供給し、供給箇所数は 376 カ所で日本一である。(図-10,11) 図-10 中部再生水処理施設 図-11 再生水供給区域 ③節水施策の推進 ○節水意識の高揚を図る広報活動 1978 年の渇水は、大きな災害であったと同時に“水の大切さ”を改めて感じる機会となった。そ こで福岡市はこの体験を風化させないために、1979 年に「節水の日(6 月 1 日)」と、水循環をデザ インした「節水シンボルマーク」を制定した(図-1)。 毎年 6 月 1 日の「節水の日」を皮切りに、水を多く使う 6 月から 8 月まで「水をたいせつにキャ ンペーン」を展開するほか、広報誌の全世帯配布、小学生用社会科副読本の発行など年間を通した 広報活動に取り組んでいる。これらの結果、福岡市が毎年調査を実施している「節水を意識してい る市民の割合」は 2003 年度以降 90%前後を保っており、日本全体の約 72%を上回っている。 ○ 節水機器の普及 節水コマ 普通のコマ 節水コマ 水の無駄を少なくする節水機器の普及に努めている。台所や洗 面所など水を頻繁に使う蛇口に取り付けることで、使用水量を 抑える節水コマ(単価約 90 円)の普及促進に 1978 年渇水以降 努めており、現在の普及率は95%を超えている。(図-12) その他、1 回の洗浄水量を 10L 以下に抑えた節水型便器の使用 も奨励している。 図-12 節水コマ 5.3 節水施策の効果 二度の大渇水を経験した福岡市では、特に市民の節水意識の高まりや雑用水道の拡大、節水機器 の普及などにより、1 人 1 日平均給水量は 1977 年の 363L から徐々に減少し、2010 年度には 276L となっており、大都市平均の 340L より約 2 割も少なくなっている。 また、漏水防止や配水管整備、配水調整システムの構築などにより、有効率(1 年間に給水された 水道水量に対し、有効に使用された水道水量の割合)は年々向上し、2010 年度には 97.2%とこちら も大都市平均 94.8%と比較して高い水準に達している。 4

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なお、二度目の 1994 年渇水では、年間降水量 が観測史上最も少なく厳しい気象状況で、給水制 限日数こそ 295 日間と 1978 年渇水を上回ったが、 給水制限延べ時間は少なく、給水車の出動もなか った(表-1)。 表-1 1978 年と 1994 年渇水時の状況比較 さらに、2005 年渇水では、降水量 1020mm が観 測史上 3 番目の少なさにもかかわらず、給水制限 に至ることはなかった。 これらは、たゆまない水資源開発と節水型都市 づくりの推進による効果と言える。 しかしながら、こうした福岡方式の取り組みは、 固有の地理的条件の下、1978 年の大渇水を経て、長い道のりの中で構築したものであり、どこの 渇水年 昭 都市にもすぐに適用できる方式ではないことを付記しておきたい。 おわりに 次回からは、福岡市が世界に誇れる技術、施設を順次詳しく紹介していく予定であるが、今回の 特集記事をきっかけに、世界中から、一人でも多くの技術者が、これら実際に稼働している施設や 技術を見に来ていただけるよう心から願っている。 <福岡市が世界に誇れる技術、施設> ☆再生水利用下水道事業 (1980 年より稼働、下水処理水を再生し、ビルのトイレ用水等として 5,300m3 /日を給水、供給箇所数 376 カ所は日本一) ☆配水調整システム (1981年より稼働、市内の水道管の流量・水圧を集中制御し漏水を防止、漏水 率は 2.6%で日本のトップクラス) ☆節水推進条例 (2003 年の日本初の節水施策に関する条例、1 人 1 日平均給水量 276 L は、 日本の大都市平均より約2割低い) ☆海水淡水化 (2005 年より稼働、福岡地区水道企業団が運営、日本最大規模 5万 m3/日 図-13) ※(参考)福岡市役所技術士会 本会は、「技術士法」に基づく国家資格を有する職 員とOBで構成する組織で、大渇水が発生した 1978 年に福岡市の技術行政に寄与することを目的に発足。 会員数は 82 人(現役 55 人、OB27 人)で、上下水道 部門の技術士が半数を占めている。現在、活動の一環 として、「節水型都市ふくおか」の経験や教訓を海外 に情報発信する取り組みを行っている。 図-13 海の中道奈多海水淡水化センター 和53年 平成6年 給水人口 1,028千人 1,250千人 下水道普及率 37.3% 96.3% 施設能力 478,000m3/日 704,800m3/日 年降水量 1,138mm 891mm 給水制限日数 287日 295日 給水制限延べ時間 4,054時間 2,452時間 1日平均給水制限時間 14時間 8時間 弁操作動員人数 32,434人 14,157人 給水車出動台数 13,433台 0台 苦情・問合せ 47,902件 9,515件 1978 年 1994 年

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