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妊娠期における酸化ストレス度と抗酸化力の変化

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日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 28, No. 1, 51-59, 2014

名古屋市立大学大学院看護学研究科(Nagoya City University Graduate School of Nursing)

2012年8月21日受付 2013年12月24日採用

資  料

妊娠期における酸化ストレス度と抗酸化力の変化

Changes in oxidative stress and antioxidative potency

during pregnancy period

田 中 泉 香(Izuka TANAKA)

北 川 眞理子(Mariko KITAGAWA)

* 抄  録 目 的  酸化ストレスとは,「生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ,前者に傾き,生体にとって好 ましくない状態」と定義されている。現在,酸化ストレスに関する研究は数多くなされており,周産期 においても,妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病との関連などの報告がされている。しかし,妊娠期におけ る酸化ストレス度・抗酸化力の程度がどのような推移を示しているのかが,未だに明らかにされていな い。本研究では,妊娠期の2時点における酸化ストレス度・抗酸化力を縦断的に解明し,妊娠期におけ る酸化ストレス度・抗酸化力を明らかにすることを目的とした。 対象と方法  分析対象は,A県にある産婦人科施設に受診した妊婦に対して研究の説明・同意を得たのち,途中辞 退をした1名を除く44名であった。試料の採取は,妊婦健康診査によって行われる採血により,妊娠 16∼18週(以下妊娠期第1回)と妊娠27∼29週(以下妊娠期第2回)の計2回実施した。また,同時に妊 娠経過の調査を実施した。採取した試料は,Diacron製F.R.E.E.(Free Radical Elective Evaluator)を用い て酸化ストレス度(Reactive Oxygen Metabolites, d-ROMs)と抗酸化力(Biological Antioxidant Potential, BAP)を測定した。 結 果  妊娠期における酸化ストレス度・抗酸化力は,妊娠期第1回(妊娠16週0日∼18週4日):d-ROMs平 均521.2 100.6U.CARR,BAP平均2004.0 342.0μM,妊娠期第2回(妊娠27週1日∼29週6日):d-ROMs 平均539.1 114.9U.CARR,BAP平均1775.6 310.7μMであった。妊娠期における酸化ストレス度は501U. CARRを超えており,かなり強度の酸化ストレス状態にあった。抗酸化力は,妊娠期第1回はボーダー ラインであったが,妊娠期第2回に有意に抗酸化力が不足レベルに下がった(p=0.003)。 結 論  本研究結果から,妊娠期における酸化ストレス度はかなり強度の酸化ストレス度,抗酸化力は不足に 推移することが明らかとなった。また,一般的に喫煙群,経口避妊薬使用群,肥満群は酸化ストレス度 が高く,抗酸化力が低いと言われているが,それらの群と比較しても,妊娠期の酸化ストレス度は高く, 抗酸化力は低いことが明らかになった。

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Abstract Purpose

Oxidative stress is defined as "the breakdown of balance between oxidative and antioxidant processes in the body". There are many studies on oxidative stress, and also reports on pregnancy-induced hypertension and gesta-tional diabetes mellitus during the perinatal period. However, the changes in oxidative stress and antioxidants dur-ing the pregnancy period remain unclear. The aim of this study was to elucidate the relationship between changes in oxidative stress and antioxidative potency at 2 points during the pregnancy period, and to rank the oxidative stress and antioxidative potency during the pregnancy period.

Methods

The test group consisted of 44 women who were examined in a hospital in one prefecture, from whom consent was obtained after the study was explained. Blood samples were obtained twice, during the 16th to 18th weeks of

pregnancy (as the 1st stage in the pregnancy period) and during the 27th to 29th weeks of pregnancy (as the 2nd stage

in the pregnancy period). At the same time, we researched their pregnancy. The blood samples were assayed for reactive oxygen metabolites (d-ROMs) and biological antioxidant potential (BAP) by F.R.E.E. (Free Radical Elective Evaluator).

Results

Oxidative stress and antioxidative potency at the 1st stage during the pregnancy period were 521.2±100.6 U.CARR on the d-ROMs test and 2004.0±342.0 μM on the BAP test. In the 2nd stage in the pregnancy period, the re-sults were 539.1±114.9 U.CARR on the d-ROMs test and 1775.6±310.7 μM on the BAP test. Oxidative stress during the pregnancy period was over 501 U.CARR, indicating quite strong oxidative stress. Antioxidative potency during the pregnancy period was borderline at the 1st stage, but dropped to a significantly low level (p=0.003) at the 2nd stage.

Conclusion

We found that oxidative stress was high and antioxidative potency was low during the pregnancy period. Oxida-tive stress was higher and antioxidaOxida-tive potency was lower in pregnant women than in groups of smokers, people taking oral contraceptive, and obese people.

Keywords: oxidative stress, antioxidative potency, blood, pregnancy period

Ⅰ.緒   言

 酸化ストレスとは,「生体の酸化反応と抗酸化反応 のバランスが崩れ,前者に傾き,生体にとって好まし くない状態」と定義されている。現在,この酸化スト レスに関する研究は数多くされており,酸化ストレス の発生・増悪は放射線や紫外線,老化,虚血再還流, 化学物質・薬剤,炎症,代謝,激しい運動,アルコー ル摂取,喫煙などに関連していると言われている(錦 織,2010;Sakano, Wang, Takahashi, et al., 2009;吉川, 2008)。また,臨床においても,高血圧と酸化ストレ スパラメーターとの相関を示していること(Rodrigo, Prat, Passalacqua, et al., 2007)や,健常者に比べて糖 尿病患者は有意に酸化ストレス度が高いという報告が されている(高松・中山・古屋他,2004)。その他,癌, メタボリックシンドローム,呼吸器疾患などとの関 連についても研究がされている(森田・渭原・橋詰他, 2009;吉川,2008)。  一方,周産期においては,酸化ストレスマーカーで あるチオバルビタール酸反応種(TBARS)とプロテイ ンカルボニルの数値が妊娠高血圧腎症で高値を示すこ と(Fabiana, Francieli, Thaize, et al., 2008)や,他の酸 化ストレスマーカーである尿中バイオピリン値が,非 妊娠女性に比べて妊婦は有意に高いという報告がされ ている(松崎・春名・大田他,2006)。また,分娩期で は尿中バイオピリン値が,分娩により有意に上昇する という報告もされている(鈴木・礒西・落合,2010)。  このように,周産期の分野においても酸化ストレス の研究が数多くされているにもかかわらず,妊娠期に おける酸化ストレス度と抗酸化力の強さがどのような 推移を示しているかが,未だ明らかにされていないの が現状である。妊娠期は,一般に正常に経過するもの であるが,身体的・心理的にも大きく変化の起こる時 期でもある。また,胎児の代謝が加わることや妊娠に よる白血球数の増加などにより,酸化ストレスが発生 ・増悪しやすい状態に常にさらされていると考えられ

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妊娠期における酸化ストレス度と抗酸化力の変化 る。しかし,「妊娠」という状態によって,胎児のみな らず胎盤が存在することで,生体の恒常性の維持によ って抗酸化力が高まることも考えられる。  上述したように,先行研究ではあらゆる酸化スト レスマーカーにより,妊娠期における酸化ストレス 度の測定をされていたが,Diacron社製F.R.E.E. (Free Radical Elective Evaluator)を用いて酸化ストレス度 (Reactive Oxygen Metabolites, d-ROMs)と 抗 酸 化 力 (Biological Antioxidant Potential, BAP)を同時に測定 しているものはなかった。そのため,本研究では妊娠 期における酸化ストレス度と抗酸化力を測定し,妊娠 期における生理的変化の基礎資料としたい。

Ⅱ.研 究 目 的

 本研究では,妊娠16∼18週(以下妊娠期第1回)と 妊娠27∼29週(以下妊娠期第2回)における酸化スト レス度と抗酸化力の値と,その推移について明らかに することを目的とした。

Ⅲ.研 究 方 法

1.被験者  A県にある産婦人科施設に受診した妊娠12∼15週 の妊婦45名。なお,妊娠による合併症(妊娠高血圧症 候群,妊娠糖尿病など)を有しておらず,妊娠経過に 異常のない妊婦を対象とした。 2.調査期間  2009年1月から2009年12月まで。 3.酸化ストレス度・抗酸化力の測定方法 1 ) 試料採取方法  妊娠期に計2回(妊娠期第1回:妊娠16∼18週,妊 娠期第2回:妊娠27∼29週),真空採血管(テルモ  ベノジェクトⅡ真空採血管)を用いて3mlの血液を採 取した。使用する医療器具は,消毒綿は単包化された もの,採血針・真空管ホルダーはディスポーサブル用 品を使用し,各個人・各回使い捨てとした。 2 ) 試料測定方法  ⅰ 酸化ストレス度と抗酸化力の測定は,採血した 検体を研究協力施設の検査室において遠心分離し,取 り出した血清をエッペンドルフに入れ,研究協力施 設にて一時的に4℃で冷所保存した。保存した血清は, 採血後3日以内に保冷バックを用いて名古屋市立大 学看護学部まで搬送した。測定機器は,Diacron社製 F.R.E.E.を用いた。測定キットは,酸化ストレス度の 測定としてd-ROMsテスト(Diacron社製),抗酸化力 の測定としてBAPテスト(Diacron社製)を使用した。  ⅱ d-ROMsテストは,pH4.8の酢酸緩衝液キュベ ットを37℃まで加温し,保温したキュベットに血清 20μlを入れる。更に呈色液クロモゲン(N,Nジエチ エルパラフェニレンジアミン)を20μl入れ,混合し, 光度計に入れて測定した。  ⅲ BAPテストは,チオシアン酸塩誘導体を含む 試薬入りのキュベットを37℃まで加温し,三価鉄塩 を含む試薬を50μl滴下,混合し赤く呈色させ,光度計 で三価鉄イオン濃度を測定した。その後,三価鉄イオ ンが呈色している試薬に血清を10μl入れて混合し,再 び光度計に入れて測定した。

 ⅳ 測定結果は, Oxidative stress/Antioxidant po-tential Software for oxidative stress management酸化 ストレス解析ソフト(発行元:WISMERLL)により解 析した。なお,d-ROMsテストで得られる酸化スト レス度は,正常:250∼300U.CARR,ボーダーライ ン:301∼320U.CARR,軽度の酸化ストレス321∼340 U.CARR,中程度の酸化ストレス:341∼400 U.CARR, 強度の酸化ストレス401∼500 U.CARR,かなり強度 の酸化ストレス:501 U.CARR以上である(U.CARRは 開発者名からとった任意単位:1 U.CARR=0.08mg/ 100mlH2O2)。BAP テストで得られる抗酸化力は,適 値:2200μM(正常域:2200∼4000μM),ボーダーラ イン:2200∼2000μM,抗酸化力がやや不足:2000∼ 1800μM,抗酸化力が不足:1800∼1600μM,抗酸化 力がかなり不足:1600∼1400μM,抗酸化力が大幅に 不足:1400μM以下である。 4.調査内容 1 ) 被験者の基礎データ  基礎データとして,年齢,妊娠歴,身長,非妊娠時 の体重を妊娠初期にカルテから情報収集した。 2 ) 妊娠期における調査項目  妊娠経過においては,試料を採取する時期の妊婦健 康診査受診時の妊娠週数とともに,母体の体重につい ての情報収集を行った。また,妊婦健康診査受診時に 行われた採血結果より白血球数,赤血球数,ヘマトク リット値,ヘモグロビン値,血小板数のデータをカル テから情報収集した。

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行った。また,その変化の差においては,Wilcoxon の符号付順位検定を行った。初経産別,年齢層別,非 妊娠時BMI別の検討として,Mann-WhitneyのU検定, 相関関係にはSpearmanの順位相関係数を行った。統 計ソフトはSPSS Statistics 19を用いた。なお,年齢層 別解析においては,出産年齢の二極化を考慮し,20歳 代前半・後半,30歳代前半・後半と4年齢層で比較す べきではあったが,分析データの事例数を考慮したた め,2年齢層での解析を行った。 6.研究の倫理的配慮  研究の説明には,研究参加が被験者の自由意思であ ること,参加を拒否しても何ら不利益を被らないこと, データは匿名で収集し,研究が終了した時点で破棄 すること,検査結果の個人データは被験者各自へ示し ていくことなどを明記し,書面と口頭にて同意を得た。 また,妊娠期に計2回の試料採取を行うが,試料の採 取は妊婦健康診査受診時に必要な採血と同時に行い, 毎回,研究協力を辞退出来る旨を説明し,同意を得た うえで試料の採取を行った。なお,名古屋市立大学看 護学部研究倫理委員会とともに研究協力施設での倫理 審査委員会より承認を得て実施した(承認番号08015)。

Ⅳ.結   果

 被験者45名に研究の説明・同意を得て,調査と試 料の採取を行った。分析対象は,途中辞退の1名を除 外した44名とした。 1.被験者の基本属性  被験者44名の平均年齢は29.6 4.0歳であった。妊娠 歴は,初産婦が26名(59.1%),経産婦が18名(40.9%) であった。被験者のうち,20歳代が20名(45.5%),30 歳代が24名(54.5%)であった。年齢層の分布は,20 ∼24歳 が4名(9.1%),25∼29歳 が16名(36.4%),30 ∼34歳が21名(6.8%)であった。被験者の非妊娠時 BMI(Body Mass Index)は,やせであるBMI18.5kg/ m2未満が7名(15.9%)であり,平均BMI17.9 0.6 kg/

m2,普通であるBMI18.5以上25.0 kg/m2未満が34名

(77.3%)であり,平均BMI20.8 1.5 kg/m2,肥満であ

るBMI25.0 kg/m2以上が3名(6.8%)であり,平均27.5

3.4 kg/m2であった(表1)。

数16.5 0.7週):d-ROMs平均521.2 100.6U.CARR, BAP 平均2004.0 342.0μM,妊娠期第2回(妊娠27週1日∼29 週6日:平均妊娠週数28.3 0.6週):d-ROMs平均539.1 114.9U.CARR,BAP平均1775.6 310.7μMであった。  酸化ストレス度は,どちらの時期も501 U.CARRを 超えており,かなり強度の酸化ストレス状態であった。 妊娠期第1回から妊娠期第2回にかけて,酸化ストレ ス度は強くなっていったが,有意な差は認められなか った。  抗酸化力は,妊娠期第1回ではボーダーラインであ ったが,妊娠期第2回では抗酸化力が不足となり,有 意に抗酸化力が低下したことが認められた(U=550.0, p=0.003)。  白血球数・血小板数は,妊娠期第1回から妊娠期第 2回にかけて有意な差は認められなかったが,赤血球 数(U=383.0, p=0.000), ヘ マ ト ク リ ッ ト 値(U=514.0, p=0.000),ヘモグロビン値(U=452.5, p=0.000)で有意 な差が認められた(表2)。 3.年齢層別の比較  年齢層を20歳代,30歳代に分類して比較した。各々 の試料採取時期の妊娠週数に有意な差は認められなか った。  妊娠期第1回の酸化ストレス度は,20歳代では強度 の酸化ストレスであり,30歳代ではかなり強度の酸化 ストレスであった。妊娠期第1回の抗酸化力は,20歳 代・30歳代ともに抗酸化力がやや不足であった。 表1 被験者の基本属性 項  目 人(%) mean±SD 年齢(歳)  初産婦  経産婦 44(100) 26(59.1) 18(40.9) 29.6 4.0 28.7 4.1 30.8 3.5 年齢層  20歳代(歳)  30歳代(歳) 2024(45.5)(54.5) 26.1 2.532.4 2.4 年齢層の分布  20∼24歳  25∼29歳  30∼34歳  35∼39歳 4( 9.1) 16(36.4) 21(47.7) 3( 6.8) 非妊時BMI(kg/m2  18.5未満  18.5以上25.0未満  25.0以上 7(15.9) 34(77.3) 3( 6.8) 17.9 0.6 20.8 1.5 27.5 3.4

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妊娠期における酸化ストレス度と抗酸化力の変化  妊娠期第2回の酸化ストレス度は,20歳代・30歳代 ともにかなり強度の酸化ストレスであった。妊娠期第 2回の抗酸化力は,20歳代では抗酸化力がやや不足で あり,30歳代では抗酸化力が不足となった。  年齢層別での酸化ストレス度・抗酸化力の比較では, 妊娠期第1回における酸化ストレス度において,20歳 代の酸化ストレス度が有意に低いことが認められた (U=150.0, p=0.034)。抗酸化力においては,いずれの 時期も年齢層別による有意な差は認められなかった。 また,白血球数,赤血球数,ヘマトクリット値,ヘモ グロビン値,血小板数における有意な差は認められな かった(表3)。 4.初経産別の比較  出産経験を初経産別に分類して比較した。各々の試 料採取時期の妊娠週数に有意な差は認められなかった。  酸化ストレス度は,どちらの時期でも各群かなり強 度の酸化ストレスであった。抗酸化力は,妊娠期第1 回においては,初産婦では抗酸化力がやや不足,経産 婦ではボーダーラインであった。妊娠期第2回におい ては,各群とも抗酸化力が不足であった。  初経産別における酸化ストレス度・抗酸化力では, 各回とも有意な差は認められなかった。しかし,妊 娠期第2回におけるヘマトクリット値においては,初 産婦のほうが有意に高いことが認められた(U=140.5, p=0.026)(表4)。 表2 調査項目における血液データの平均値の推移 試料採取時期 (mean±SD)妊娠期第1回 (mean±SD)妊娠期第2回 U p d-ROMs (U.CARR) BAP (μM) WBC (mm) RBC ( 104/mm3) Ht (%) Hb (g/dl) Plt ( 104/μl) 521.2 100.6 2004.0 342.0 8452.3 1891.3 398.9 26.9 35.1 2.3 11.8 0.8 22.6 4.8 539.1 114.9 1775.6 310.7 8704.6 1853.7 370.3 24.6 33.0 2.3 11.0 0.9 22.8 5.3 817.0 550.0 915.5 383.0 514.0 452.5 952.5 ns 0.003 ns 0.000 0.000 0.000 ns Wilcoxnの符号付順位検定 表3 年齢層別の比較 試料採取時期 妊娠期第1回 U p 妊娠期第2回 U p 年齢層 20歳代(n=20) 30歳代(n=24) 20歳代(n=20) 30歳代(n=24) 妊娠週数 d-ROMs (U.CARR) BAP (μM) WBC (mm) RBC ( 104/mm3) Ht (%) Hb (g/dl) Plt ( 104/μl) 16.5 0.7 484.0 84.3 2042.6 329.7 8520.0 1382.4 403.3 22.6 35.0 2.1 11.8 0.8 22.2 3.4 16.6 0.7 552.2 104.1 1971.9 355.6 8395.8 2258.6 395.2 30.0 35.2 2.5 11.8 0.9 22.9 5.8 209.0 150.0 216.0 219.5 213.5 233.5 237.5 203.5 ns 0.034 ns ns ns ns ns ns 28.3 0.6 521.3 121.9 1842.1 281.1 8480.0 1528.2 373.4 23.8 33.0 2.7 11.0 1.0 22.4 3.7 28.4 0.6 554.0 109.1 1720.2 328.9 8891.7 2101.1 367.6 25.4 33.0 2.0 11.0 0.7 23.1 6.4 223.5 191.5 181.0 220.0 203.5 233.5 236.5 228.0 ns ns ns ns ns ns ns ns Mann-WhitneyのU検定 mean SD 表4 初経産別の比較 試料採取時期 妊娠期第1回 U p 妊娠期第2回 U p 年齢層 20歳代(n=20) 30歳代(n=24) 20歳代(n=20) 30歳代(n=24) 妊娠週数 d-ROMs (U.CARR) BAP (μM) WBC (mm) RBC ( 104/mm3) Ht (%) Hb (g/dl) Plt ( 104/μl) 16.4 0.6 517.9 88.3 1998.5 343.2 8719.2 1971.8 400.9 26.4 35.5 2.3 11.9 0.8 22.8 4.6 16.7 0.8 525.9 118.7 2026.4 349.0 8066.7 1750.3 396.0 28.1 34.5 2.2 11.7 0.9 22.3 5.2 196.5 209.0 214.0 189.0 214.5 180.5 191.0 228.0 ns ns ns ns ns ns ns ns 28.4 0.6 550.2 128.8 1757.9 368.4 8942.3 2135.4 374.9 26.9 33.7 2.5 11.2 0.9 23.8 5.8 28.3 0.5 523.1 92.4 1720.2 208.5 8891.7 1332.0 367.6 19.7 33.0 1.7 11.0 0.7 23.1 4.2 204.0 211.0 207.0 195.0 173.0 140.5 154.5 184.0 ns ns ns ns ns 0.026 ns ns Mann-WhitneyのU検定 mean SD

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普通群(BMI 18.5kg/m2以上25.0未満),肥満群(BMI 25.0kg/m2以上)に分類した。  酸化ストレス度は,どちらの時期も全群において 501U.CARR以上であり,かなり強度の酸化ストレス 度であった。  妊娠期第1回における各群との比較では,普通群の 酸化ストレス度が肥満群に比べて有意に低いことが認 められた(U=14.0, p=0.040)。また,妊娠期第2回にお ける各群との比較では,やせ群の酸化ストレス度が 肥満群に比べて有意に低いことが認められた(U=1.0, p=0.030)。抗酸化力においては,いずれも有意な差は 認められなかった(表5)。 6.血液検査データとの相関関係  酸化ストレス度・抗酸化力と血液検査データ(白血 球数・赤血球数・ヘマトクリット値・ヘモグロビン値 ・血小板数)との相関関係を検討した。  妊娠期第1回における酸化ストレス度と血小板数の 関係は,r=0.320(p=0.034)であり,有意な相関関係が 認められた。その他には有意な相関関係は認められな かった(表6)。 1.妊娠期における酸化ストレス度・抗酸化力  本研究の結果から,妊娠期第1回としている妊娠16 週0日∼18週4日の「妊娠中期」から妊娠期第2回とし ている妊娠27週1日∼29週6日の「妊娠中期のおわり から妊娠末期のはじめ」にかけて,酸化ストレス度は 強くなることが認められたが,有意な数値の変化は認 められなかった。また,抗酸化力においては,「妊娠 中期」から「妊娠中期のおわりから妊娠末期のはじめ」 にかけて,有意に不足することを明らかにした。  酸化ストレス度と抗酸化力を,同じ定量法で測定さ れた健常者群,喫煙群,経口避妊薬使用群,肥満群 などの平均値と比較分析した。先行研究から,健常 者群のd-ROMsの基準値は284.6 17.5 U.CARR,BAP の 基 準 値 は2137.1 228.3 μM(永 田・ 長 谷 川・ 広 門 他,2008),喫煙群のd-ROMsの平均値は346.7 58.5 U.CARR,BAPの 平 均 値 は2209.7 152.8 μM(畑 山・ 長 野・ 大 貫,2008), 肥 満 群 のd-ROMsの 平 均 値 は 380U.CARR,BAPの平均値は2250 μM(永田・長谷川 ・広門他,2008)であった。また,経口避妊薬使用群 の 日 本 で のd-ROMsの 平 均 値 は502.7 122.8 U.CARR (Komatsu, Kagawa, Sakuma, et al., 2006),イタリアで

表5 非妊娠時BMI別の比較 人(%) 妊娠期第1回 U p U p 妊娠期第2回 U p U p d-ROMs  非妊娠時BMI   やせ   ふつう   肥満 7(15.9) 34(77.3) 3( 6.8) 501.4 63.8 516.6 106.4 619.0 49.5 103.0 14.0 0.040ns 2.0 0.053 503.7 76.9 535.0 117.0 668.7 102.0 85.5 18.0 nsns 1.0 0.030 BAP  非妊娠時BMI   やせ   ふつう   肥満 7(15.9) 34(77.3) 3( 6.8) 1886.1 390.5 2052.9 314.0 1725.3 473.8 78.0 31.0 nsns 9.00 ns 1796.3 481.4 1788.5 278.1 1581.6 208.5 110.0 27.0 nsns 7.0 ns Mann-WhitneyのU検定     mean SD 表6 血液検査データとの相関関係 d-ROMs BAP 妊娠期第1回 妊娠期第2回 妊娠期第1回 妊娠期第2回 r p r p r p r p WBC RBC Ht Hb Plt 0.228 ­0.121 0.137 0.085 0.320 ns ns ns ns 0.034 0.124 0.119 0.235 0.203 0.199 ns ns ns ns ns ­0.042 ­0.051 0.030 0.113 ­0.115 ns ns ns ns ns 0.094 0.108 ­0.035 ­0.057 ­0.115 ns ns ns ns ns Spearmanの順位相関係数

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妊娠期における酸化ストレス度と抗酸化力の変化

のd-ROMsの平均値は440 34.0 U.CARR(Cornelli, U., Cornelli, M., Terranova, et al., 2000)であった。経口避 妊薬使用群における研究では,どちらもBAPの平均 値は明らかにされていなかった。これらの値と比較す ると,妊娠期にある女性はどの期間においても喫煙群 や経口避妊薬使用群,肥満群よりもかなり強度の酸化 ストレス度,抗酸化力は不足の状態であることが明ら かになった。 2.試料採取時期別における酸化ストレス度・抗酸化 力  本研究における妊娠期第1回から妊娠期第2回にか けては,妊婦自身の心拍出量,循環血液量などが増加 をする時期であり,また,胎児による代謝増加分によ り基礎代謝率においても15∼30%増加すると言われ ている時期でもある(坂元・水野・武谷,2005)。正常 妊婦や健常者における心拍出量や循環血液量と酸化ス トレス度・抗酸化力との基礎的研究は未だされておら ず,関係性は不明確である。しかし,妊娠に伴い血液 ガス交換に関わる心拍出量・循環血液量が増加するこ とで,酸化ストレスの発生の要因である酸素の消費量 も増加するため,酸化ストレスの発生に関係があるこ とが示唆される。また,基礎代謝量と体重の間には高 い相関関係があることや(茆原・朝倉・鴨井他,2007), 肥満と酸化ストレス度においても関連が認められてい る(Suzuki, Ito, Ochiai, et al., 2003)ことから,妊娠期 においては基礎代謝量の増加も酸化ストレスに影響を 及ぼしていることが考えられる。  抗酸化力においては,妊娠期第1回から妊娠期第2 回にかけて,有意に低下するという結果が得られた。 同時に,血液検査データでは,赤血球数・ヘマトクリ ット値・ヘモグロビン値に有意な差が認められた。こ の結果により,酸素運搬能力は抗酸化力に対して,影 響を及ぼす可能性が考えられる。しかし,各々には有 意な相関を認めてはおらず,単に妊娠性貧血が認めら れないことが抗酸化力を維持するとは限らない。その ため,血液検査データのみが抗酸化力に強く影響する とは言えない。先行研究によると,ラットを用いた試 験ではあるが,胎盤は酸化ストレスから防御をすると いう報告(Jones, Mark, Lewis, et al., 2010)がされてい る。一般的に,抗酸化機能は酸化ストレスの発生を予 防,補足,修復させる機構が働くことで,機能的な障 害が生じないように働くと言われている(野口,2003)。 胎盤は妊娠経過に伴い,胎児とともに増大する。増大 していく胎盤は,妊娠経過によって発生する酸化スト レスの発生を予防,補足,修復に働くことが考えられ, 結果として抗酸化力は低下していくことが考えられる。 ヒトの胎盤によってこれを明らかにするには,胎盤が 形成される前後の母体の血液中酸化ストレス度と抗酸 化力の測定をすることにより得られることが考えられ る。 3.妊娠期の酸化ストレス度・抗酸化力の特徴  本研究では,妊娠期の女性の酸化ストレス度と抗酸 化力の標準偏差は大きいという結果も得られた。酸化 ストレス度は,一見健常に見える人々でさえも,それ ぞれ特有の基礎値あるいは基準値を持っており,多少 のばらつきがあることや,その分布は単蜂性のガウス 分布に似ている(関,2009)と言われている。妊娠によ り身体的にも精神的にも大きな変化を迎えている女性 において,酸化ストレス度・抗酸化力にばらつきが生 じること自体が,妊娠期の酸化ストレス度と抗酸化力 の特徴であると考えられる。  先行研究では,60歳未満の健常者における酸化スト レスマーカーに,年齢関連の変化は認められなかった (Victor, Mendoza-Núñez, Mirna, et al., 2007)との報告 がある。本研究においても,20歳代と30歳代での比較 を行ったが,年齢による影響を裏付けるまでの結果は 得られなかった。年齢による差と同様に,出産経験の 有無による酸化ストレス度と抗酸化力の差も認められ なかった。先行研究からも妊娠期における酸化ストレ スマーカーは出産経験の有無による差は認められてお らず(松崎・春名・大田他,2006),同様の結果を得る こととなり,出産経験の有無は,妊娠期における酸化 ストレス度と抗酸化力に影響を与えないことが考えら れる。 また,一般的に肥満と酸化ストレス度は正の相関を 示す(Suzuki, Ito, Ochiai, et al., 2003)との報告がある。 周産期の合併症は非妊時のBMIと関連があるとされ ていることより,本研究でも非妊時BMIとの関連を 分析した。妊娠期第1回目においては,「ふつう」と「肥 満」,「やせ」と「肥満」に有意な差が得られており,肥 満は酸化ストレス度との関連性があることが妊娠期で も明らかとなった。また,妊娠期第2回では有意な差 が認められなかったが,妊娠末期には非妊時の体重以 上に,妊娠経過に伴う体重増加や循環器系,呼吸器系 などの生理的変化の影響が強く表れることが考えられ る。

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体的な変化が,酸化ストレス度や抗酸化力にも深く関 わることが考えられる。そのため,酸化ストレス度が 一般健常者に比べて高値であることや抗酸化力が低い ことは,妊娠期の生理的な変化の特徴の一つであるこ とが示唆される。

Ⅵ.本研究の限界と今後の課題

 本研究では,妊娠期の酸化ストレス度と抗酸化力を 縦断的に解明することに独創的な視点があったが,分 析対象の事例数が少ないため,解釈の限界があった。 また,倫理的配慮の点から試料の採取時期が平均して 妊娠16週以降であったため,胎盤が完成される前後 での酸化ストレス度・抗酸化力の違いについて明らか にすることはできなかった。胎盤による影響も明らか にするためには,妊娠初期の女性の酸化ストレス度と 抗酸化力の測定値の把握も必要である。今後,事例数 を増やして妊娠期の女性の酸化ストレス度と抗酸化力 の正常値・基準値を確立させ,妊娠期の健康管理につ いて検討する必要がある。

Ⅶ.結   語

 本研究では,妊娠による合併症や妊娠経過に異常の ない妊婦を対象に妊娠中期と妊娠中期から末期にかけ ての酸化ストレス度と抗酸化力を測定し,その推移 を分析した。妊娠期における酸化ストレス度は,妊 娠中期と妊娠中期から末期にかけての2点間の比較で は,高くなる傾向(平均521.2 1100.6U.CARRから平 均539.1 114.9U.CARR)を示し,抗酸化力は,有意に 低くなる結果(平均2004.0 342.0 μMから平均1775.6 310.7 μM)が得られた。以上のことから,妊娠期の酸 化ストレス度と抗酸化力の基準値・正常値を理解する ことは,妊娠中の健康状態の指標の一つとなり,保健 指導や妊婦自身の健康管理として重要になることが考 えられる。 謝 辞  本研究をおこなうにあたり,研究実施にご協力いた だきました病院の助産師・医師・検査技師の皆様へ心 からお礼を申し上げます。また,試料提供にご協力を いただきました多くの妊婦様へも深く感謝いたします。 助産学会学術集会において,成果の一部を発表した。 引用文献 茆原弘光,朝倉禎史,鴨井青龍,竹下俊行(2007).妊婦 の基礎代謝,栄養評価と治療,24(1),26-31.

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