The /aPanese JeUt
・
nat σノAsychonomic Scie” ‘e1991
,
VoL 3.
No.
1,
21−
294
枚
カ ー
ド
問 題
に
お
け る
課 題 素 材 効
果
と
視 点 教
示
の
効果
1)小 谷津 孝明
・伊
東
昌 子
・松
田真 幸
2)慶 応義塾 大 学
The
Effects
ofThe
皿atic
Materials
and
ofViewpoint
in
the
Wason
’s
Four
Card
Problem
.
Takaaki
KoYAzu
,
Masako
ITQH
andMasayuki
MATsuDA
Keio
6
堀耀 7s卿
Four
experiments were performed on the so・
calledWason
,sfour
card selection task.
In
tlle
nrst
experiment,
effects offollowing
four variables upon selection performances wereinvestjgated:marks of cards (letters of alphabet and number
,
or pictures of person (boy orgirl>aDd
his
/her
cap ),
sides (top andbottom
or upper−half
andlower−half
),
with or with−
out context,
and types of instruct孟on (a 伍 rmative or negative ).
The results of ANOVAshowed that fa皿 iliar task situations (fa皿 iliar cardS and fa皿
iliar
context )1
)rought about high solving performance.
In
the second experiment,
types of questioning were atissue.
Saying
,
which card (s)shouldbe
turned over (a)to see whether each card follows therule
,
for
example 一ト
Odd
number is printed on the bottom of vowel alphabet”
?(b)to see whether the rt1王eis
correct or notP
The performance was better under (a)than (b>ques・
tioning.
BQth of above experiments were perfor皿 ed with undergrad 岨 te students as sub・
jects
,
wllereas the third and thelast
experi 皿 ents weredone
with only elementary schoolchildren which aimed to examine whether they could solve the task if it was constructed
from some ordinary and
famillar
events,
The effect of viewpoint instruction was also tested.
It was observed that lower grade children had di缶 culties in understanding the task itself
and that the viewpoint jnstruction did not make any improvement in performance
.
Keywords :reasoning
,
selection task,
the 皿 atic−
materlals effect,
domain
specificity,
viewpoint,
information deficiency
,
associationde
丘ciency,
人 聞の演繹的 推論を扱っ た 研究に 4枚カ
ー
ド閙題があ る (Wason,
1968;Wason
&Johnson−
Laird,1970
).
これは
“
ifpthenq”
とい う形 式 論 理 構 造 を もつ 問 題 解 決 事 態で,
例え ば毎 音,
子 音,
偶 数,
奇 数 (A ,
D,
4,
7)の書かれた 4枚の カー
ドを 呈示し,
“
これ らの カー
ド はすべて一
方の面に は アル ファ ベ ッ ト,
他方の面に は数 字が書い て あり ます.
今,
“ もしカー
ドの一
方の面が母 1) 本 研 究は 昭 和56 年 度 科 学 研 究費補 助 金 (一
般 研究 B,
課 題 番 号545018
)の 助 成を受 けた研 究の一
部であ る,
2) 本研 究の 実験 3・4
の遂行にあ た り御 協 力 頂いた,
慶応義塾幼稚舎な ら びに田辺 則 彦 氏 同舎教 諭に深 く感 謝い た し ます.
音な ら ば,
他方の面は奇 数であ る” とい う命 題が 正 しい か どうか調べたい とする と,
どの カー
ドをめ くっ てみ な け ればな らない で しょう.
” とい う質 問 を 与 える.
正 答は p とq
の カー
ドを選ぶ こ とであるが,
大 学 生で も 3.
9% (128 名中5 名) 程 度の正答率で,
P とqない しは Pのみの選 択 が多く,q
の 選 択は極め て少な か っ た とい う (Johnson
・
Laird
&Wason ,1977
>.
一
方,Was
。n &Shapiro
(1971
)やJohnson
−Laird
et aL (
1972
)は, 論 理 構 造はその ま ま で も課 題 内 容を具 体 的にすると正 答 率 が 飛 躍 的に高 くなるこ とを 見い出
し た
,
これは課 題 素 材 効 果と呼ばれて い るが,一
口 に課題 内容の具 体 性とい っ て も
,
課 題 項 目が具 体 的であるこ22 基 礎 心 理 学 研 究 第 3 巻 第 1号
が 具体 的であるこ と (例
,一
へ 行 くと ぎに は・
…
に乗っ てい く)と は区 別され ね ば な ら ない
,
Bracewell &Hidi (
1974
)は 具体的関 係が,
Gilhooly
& Falcone「(
1974
>は具体的 項 目がよ り課 題 素 材 効 果を も た らすという
,
その 後
Johnson
−
Laird &Wason
(1977
)は,
課 題 と 被 験 者の過 去経験との相 互 作 用 を 重 要 視し た.
っ まり , 課 題がその被験者に とっ て身 近 な 文 脈の中で構 成 されて いれぽ被 験者 は そ れ を 自己の経 験 領 域に容 易に位置づけ る こと がで き,
結果と し て十 分に解 決の た め の推 論 能 力 を発揮 するこ とができると考 える.
こ の よ うな考え方は異 文 化 間の 比 較 研 究な どで注目 さ れて い る領 域 固 有 性の問題と関わ る、
す な わち,一
般に は こ の種の論理課題で 未 開 人は文 明人よ りか な り低い成 績 を示 すが,
そ れ は 推論 能 力の差とい うよ り も その課 題 の領 域 が 未 開 人に 固有 な生 活 経験領域に対 応しな い た め,
課題 その もの の 理解 と課 題を解く ため の動 機 が もた らされ ない か ら)とい う (cf.
Cole & Scribner,1974
).
一
方,
課題解決を容 易にする の は視 点の投 入である と 考える ものがある。
例 えぽ佐 伯 (1980)は,
Johnson
−
Laird et al.
(1972)が“
郵便局 員に なっ たつ もりで”
と い う教示 を与え るこ とに よっ て高い成績を得たこ とを 引 用し,“
形 式 的問題を解く鍵は,
被 験 者が視点 を う ま く もて る か否か にか か っ てい る.
視 点 を もつ とい うこ と は,
問題 場 面に 関わ りのある人 物の 身に なっ て,
その立 場 か ら眺め ること だ ” と述べ,
さらに‘
‘
具 体 的状 況 を 設 定 し,
その中の人 物の合目的 的な活 動 を 想 定さぜ るこ と が で きれ ば,
小 学 生で も演 繹 的 推 論 課 題を容 易に解くこと が できる”
とい う,
し か し な が ら,
そこ で は被 験 者が関 わ りのある人 物の身に なっ て み ているとい う意 味で視 点 を もっ た とい う保 証が必ずしも ない.
むし ろ,
“ 開 題 領 域を被 験者の経 験 領 域に位 置づ けること が できれば,
小 学 生で も推 論 課 題が解けるこ とを 示 した” とい っ た方 が よい か と思わ れ る.一
方,
大 学 生を被 験者と して直 接 視 点の効 果 を 調べ た一
ヒ野 (1982
)は,
課 題 場 面を具 体 的に して も,
視 点 教示 を与える群 と与え ない群で は 正答 率が 大き く異な る ことか ら“
命 題の身 近さや 具 体 性は,
そ れ だ けで は 妥 当な論理的推 論を生み出 すの に何 ら力 を もっ て い ない”
とみ なし,
視 点をもつ こ との重 要 性 を 主 張し た,
そ こ で本 論 文で は実 験 1・
2 におい て,
大 学生で も 解くこ と が困 難であっ たWason
(1968)o)課 題 状 況と 小 学 生で も解けた とい う佐伯 (1980
)の そ れ との相違点 を 明 示 し,
そ れ らの成 績 向 上に対 する有 効 偉を大 学生に つ い て調べ ると ともに,
教 示 表 現の仕方に よ る影響の大 きさ (Manktelow & Evans,1979
)を予 想し,
その吟 昧 検 討 を行 な う.
次に実 験 3・
4 で は,
問 題を経 験 領 域に位 置づけ や す くする よ う な課 題 状 況 を設 定 す れぽ, 真に 小 学生 で も論 理的推論課題が解ける かど うかを 調べ,
さ らに小学生に とっ て視 点をもたせ ることが有効であるか どうかを 検 討 する.
実 験 1 Wason (1968)と 佐 伯 (1980
)の 課題 状 況は以 下の 4 つ の相 違 点をもっ,
1.
絮 材 の 内 容的 側面: 記 号一
絵“
if p then q”
のP
とq
に相 当 する項 目が 抽 象 的 な 記 号である か具体的な絵である か (cf.
Gilhooly
& Fai−
coner,
1974).
2.
素 材の形 式 的 側 面: 表裏一
上下 pPqq がカー
ドの 衰 裏Icあら わ されて い る か 上下にあら わ さ れ て い る か (cf
.
Wason &Johnson−
Laird,
1970
).
3.
課 題 場 面 設 定の有無 課 題だけが与え ら れて い る か命 題 (ルー
ル)の出 現が 自然に なるよ うな 具体的場面が設定さ れ てい る か,
4.
課 題 遂 行 教 示: 肯定 形一
否 定 形調べ るべ き 内容 を 「命 題が正しい か否か」と肯定 的に 表 現し たもの と 「先 生の言いつ け を守っ て こな かっ た 子 がいる か も し れま せ ん」 と否 定 的に表 現したもの
,
これ らの相 違 点の うち前の2
つは課題索 材に 関 係し, 後の2
つは課 題 教 示に 関 係 する.
本 実験で は
,
上記の相違 点 を 成 績に影 響 す る 要 因 と考 え,
4
要 因2水 準の組 合せ に よっ てできる16
条件の うち, 教 示 文 が不自然 となる4
条件を除い て以下に述べ る12
条 件を吟 味する (Table
1.
a−
1).
Table 1
.
Percent correct responses under various conditionsiII
Experiment
1.
表 肯定 形 裏 否 定 形 上 肯 定 形 下 否定形 記 号 場 面 設 定 なし 場面 設 定 あり 絵 場 面 設 定 な し 場 面 設定あ り a (
3L8
) c (50.
0) 9 (55.
0) 1 (81.
8)d
(38.
5) 」 (81.
3) b (34.
5
)−
e (47.
1
) f (63.
2)h
(55.
2
)−
k
(88.
9
)1
(81.0
)小 谷 津
・
伊東・
松田 :4
枚カー
ド間題に おける課 題 素 材 効 果と視 点 教 示の効 果 23 方 法 被 験 者; こ の 種の問題に 接した経 験の ない 大 学 生 延べ275
名.
」:記の 各条件に対し17〜32
名が割 り当て ら れ た.
刺 激:課 題 素 材に関 わる前 述の要 因1 ・
2 を 考 慮し て Fig.
1 に示 す4組の刺 激カー
ドを 作 製した.
教示:各 組の刺激カー
ドに対して前 述の要 因3 ・4
を 考 慮し て作られた全12条 件の教 示 文を以 下に示 す.
条 件 別の 指 定 記 号はTable
1
を参 照.
条 件 a (b
): 「こ こに あ るカー
ド は み な,
表 (条 件 b で は下)に は ア ル フ ァ ベ ッ ト,
裏 (上)に は数 字 が 書かれてい るものとし ま す.
今,
上の 4枚の カー
ドに つ い て 『母音の カー
ドの 裏は奇 数である』とい う命題 が正 しいか 否 か を 調べ たい とす る と,
どの カー
ドをめ く ら な け れ ばな ら ない で し ょ う」 条 件 e (c): 「あ る 日,
表 (下の 段)に アル フ ァ ベ ッ トが 書い て あるカー
ドを何 種 類か渡し,
裏(上の 段) に数 字を書い て も らい まし た.
その 時,
『母音の カー
ドの裏 (上の段 )に は 必ず 奇 数を書い て きて く だ さい』 と言い ま し た.
この 4枚は提 出された カー
ドの中か ら 持っ て きた も の です.
この 4枚の カー
ドの う ちで,
そ の 言い っ けを ち ゃ ん と守っ て い る か ど う か を調べ るた め に はどの カー
ドを調べ れ ばよいで し ょ う」 条 件 d (f): 条件 c (e)の教 示文で 「こ の 4枚の カー
ド・
・
…・
」の一
文のみ次の よ うに な る.
「この4
枚の カー
ド の うち で, その 需いっ けを守っ て こ な かっ た ものがある か も知 れ ま せん.
どの カー
ドだ と 思い ますか.
」 条 件 9 (h
): 「予 供た ち は み な,
赤い幄 子か青い帽 子を か ぶ っ て きて いま す,
カー
ドの表 (下の段)に は 子 供,
裹 (.
ヒの段)に はその 子のか ぶ っ て きて い る帽 子 が書い て あ ります,
今 『女の 子は 赤い帽 子 をか ぶ っ て きて い る 』 とい う命 題 が 正 しいか 否 か を 調ぺ て み た い と し ます.
その た めに は どの カー
ドを 調べ な くては な ら な い で しょ う」 条 件i
(k
):「こ の 学校の 生 徒は み な,
赤い帽 于か 青い帽 子 をか ぶ っ て きて い ます.
こ の カー
ドの表 (下) に は子供,
裏 (上)に は か ぶ っ て きて い る帽子 が書い てある もの と し ます.
さ て,
こ の学校の先 生が 『遠足 の 日 に は 女 の 子 は 必ず赤い帽 fを か ぶ っ て き な さ い』 と言い ま し た,
遠足の当 日 こ の4人の うち で先 生の言 い つ けを ち ゃ ん と守っ て い る か ど うか を 調べ るた めに は どの 子を調べれば よい で し ょ う」 素 材 内 容 形 式 記号 絵 錣(
1
) 上 ド(2
) 艱 (3
) 上 ド(4 )
刺 激 力 ド圍回固固
冒冒
鬥巴
薗
驪
冒
晦
團
冨
Fig
.
1.
Stimulus cards used in presentexperiments
.
条 件j
(1
): 条 件 i (k )の教示文で 「遠足 の 当日…
」以 下の一
文のみ 次の よ うにな る.
「遠 足の 当日,
こ の4
人の うちで 先 生の 言い っ けを守 っ て こなか っ た子 がい る か もしれ ませ ん,
どの子 だ と 思い ますか」 ま た,
全 教示文の最 後に共 通し て 「め くる枚 数は何 枚で もか まいま せ んが, 自分で最 低 限これは (これ ら)は必要と思う ものを選ん で下さい.
」 とい う一
文 を 加 えた.
以 上の教示文に よ る と各 組の刺 激カー
ドは,
p・
P ・
q・
q
を】.
枚 ずつ 含 むこ とに なる.
例 えぽ Fig.1
(1)で いえ ば,
左か ら順に p・P ・q ・
q となる.
手 続:実 験は個 別 ないし集 団で行 なっ た.
被 験 者は刺 激カー
ドと教 示 文が書かれた問 題 用 紙 を 与 え ら れた の ち,
「問 題を よく読ん で解 答 する よ うに」 と教 示された.
さ らに解 答を終え た時に,
「なぜ その (そ れらの)カー
ド を 選んだの か, その理[h
を 記入する よ うに」 と求め られ た,
反応に対 する制 限 時 間は特に指 定し なか っ たが,
約10〜15
分で終了 し た.
結果と考察 条 件別の 正答率をTable
1
に示す.
これに よ れば4
つ の 要 因の うち素 材 を 具 体 的に し たり,
課 題 場 面 を 設 定 し た りす るこ と は 成 績の向上に対 して効 果 を もっ てい る ようであるが, そ れ 以 外に は は っ き り した傾 向がみ られ ない.
これを確認 する た め に分 散 分 析 を 行 なっ た.
本 実 験で は 4要 因 16条 件の うち4条 件 を行 なわ なか っ た の で,
3要 因ずつ 2回に分 けて分 析 を行 なっ た.
まず,
素 材の 内 容,
素 材の 形 式,
課 題 場 面 設 定の 3要 囚をとりあ げた分 析で は,
主効 果 として素材の内 容と課24
基 礎 心 理 学 研 究 第3
巻 第1
号 題場面 設定に有意 差が み ら れた が (各々, F (1,
169)=
16・
53,P
く0.
1
;F(1,
169)=
9.
98,
P
<0.
1),
素 材の形 式に よ る 差 は なか っ た (∬(1,
169)=
O.
07,
p
>0.
50).
ま た, すぺ ての交互作用に有 意 差は みられ なかっ た (索 材 内容×素 材形式,
F (1,
169)=
O.
58;素 材 内 容×場 面 設 定,
F (1,
169)= 1.
05;素 材形式X場面設 定,
F(1,
169);
O.
OO;3
次の交互作 用, F (1,
169)=
O.
19,
いず れ もP
>.
50),
次に素 材の内 容,
素 材の形 式,
課 題 遂 行 教 示の 3要 因を と りあげた分 析で は,
素 材 内 容の主効 果の みが 有 意であ り (F(1,
169
)=
・
24.
32,P
〈.
Ol
),
そ れ 以 外の主 効 果とすべ て の交 互作用に は有 意 差がなか っ た (素 材形 式, F (1,
169>= 1.
11;課 題 遂 行教示, F(1,
169)= O・
02; 素 材 内 容X 素 材 形 式, F (1,
169)二
〇.
29;素 材 内 容×課 題 遂行教示,F
(1,
169
)=0.
23
; 素 材形式×課題 遂 行 教示、
F
(1,
169
)=0.
54,3
次の交互作用,F
(1,
169
)=1.
66
, い ず れ もP
>0.
50
),
これ らの分析から も 成 績の向上 をも た らすの は,
素 材を具 体 的にするこ と と課 題 場面 を設定 する ことの 二 点である といえ る.
素材の形式 的 側面に有意 差が認め ら れ ない とい うこ と は, pr
コ qq の位畳を カー
ドの片 而に限 定し て 素 材の 認 知 負 荷を減 少さ せ てもそれ が成績の向上にはつ な が らな い こと を示し て い る.
また,
課 題 遂行 教示の仕 方に つ い て は, 従来の研究で は反 証 例 (q) を 選 択 する者が極め て少ない こ と か ら反 証例 を考 慮の対 象にする ことが 困難である と考えられて来た (
Johnson
−Laird
&Wason 、
1977).一
方,
否定的な表現に よ る教示 は そ れ を容 易に し,
成 績を高め る可 能 性があるが,
本 実 験で は肯 定的 な 表 現に よ る教 示 との有 意 差は みら れ なか っ た.
これは今 回 用いた否 定 的 教 示 文で はq
を 考 慮の対 象にさせ る こと がで きな かっ た た め なの か, た と え被験者 がq
を考慮し て もそ れ を 正 反応に結びつ け る推 論が できな かっ た た め なの か 明らか でない.
次に誤 答の タ イプを 分 析し た.
正しい カー
ドの一
方 (P
あ るい はq
)を含めて選 択し た者の比率を Table 2 に示 す.
こ こで は有意差が検 出さ れ なか っ た素 材 形 式と 課題遂行教示の 要 因は区 別せず,
素材 内 容 と課 題 場 面 設Tabte
2.
Contents
of wrong selection inExperiment 1(relative frequencies )
場 面 設 定 なし 場 面 設 定 あ り p
q
pq
定の 2要 因に含めて集 計し た.
なおすべ て の カー
ドを選 んだ者は,
論 理 的 思考に よる 反 応の 枠 外と して こ の分 析 から除 外した,
素 材.
が絵で場 面 設 定 あ りの 条 件を除く3
条 件で は,
ルー
ル の反 証 例q
を 選 択 する比 率は立 証 例P の そ れより極めて低 くなっ てお り, 従 来の研 究と一
致する傾 向に あ る (
Johnson
−
Laird & Wason11977 ),
これに反し て
,
素 材が絵で場 面 設 定 ありの条 件で は両 者の関 係が逆 転し,q
を選 択 する比率が高く なっ て いる.
これ より素材の具 体 性 と教 示に よ る課 題 場 面 設 定 が反 証 的 解 答を思いつ か せ る とい う意 味に お い て枢め て効 果 的であ るこ と が わ か る.
誤 答に お ける ヵ一
ド選 択理 由は, (1)教示内容の解釈 に基づ く もの, 例:「こ の命 題は 『奇 数の表が 母音 で あ る 』 を含んで いない.
した がっ て母 音の裏を確認 する だ けで よい,
」(2) 教 示 内 容 以 外の知 識に基づくもの,
例: 「問題が簡単なので間違え る人はい ない (条件f
)」.
(3) 上記以外の もの , 例 :「な ん と な く」に分類で き た.
(1
> の場合は さ らに“
ifpthenq”
とい うルー
ルの解釈の あ り方 とカー
ド事 例i,
c対 する 言及の程 度に よっ て以 下の よ うに区 別 でぎる.
P とq ,
あるい は4
枚 すぺ ての カー
ドを選 択し た場合に は,
「逆 も真で ある」と い っ た ルー
ル 琶)誤 解 釈を示 す 理 由が 多 くみ られた.
正 答の一
方 (P あるいはq
)の みを 選 択し た場 合は,
上 述の ような誤 解 釈を含ん で は いないが,
ルー
ル の字義 的 解 釈に と ど まっ た た め か,
自分の選んだカー
ド に言 及して い るだけであ る.
P とq
を 正し く選んだ上に他の カー
ドも加 えた場 合 には,
ルー
ル の 正 しい解 釈に加えて 「ルー
ル にあっ てい るこ と を確 認する た め」と い う理由が述べ ら れ てい る,
こ のこ とか らルー
ル の正し い解 釈の他に 自分の解 釈を確 認 する プ P セス の存 在が示 唆される.
(2)と (3)の理由 は論 理 的 思 考の枠 外の もの で,
こ れは課 題 を題 意:こそっ て と ら え るこ と が できず,
思考方 向 が定ま ら な かっ た 結 果と思 わ れる.
ところで,
本実験で は教示表現が,
場 面 設 定な しの条 件で はルー
ル の 真偽を問 う形であるのに,
場 面 設 定 あり の条件で はカー
ド事例 がルー
ル に従っ てい る か ど うかを 間 うような形になっ てい る,
そのた め, 成績の差が場 面 設 定の要 因に よ るものか,
教 示 表 現の要 因に よ るものか 定かでない.
こ の点を次の 実 験で検 討 する.
記 号.
88
.
21
n=
22,
50
.
21 n = 42 絵.
91
.
18
n =22
.
38
.
56
n = 16 実 験2
ルー
ル の真 偽を問う形の教 示 文とカー
ド事例がルー
ル に従っ てい る か ど う か を聞う形の教 示 文 を と りあげ,
両 者の 差を以下の よ う な方法で 検討 する.
小 谷津
・
伊東・
松田 :4 枚カー
ド闇題に おける課 題素材効果 と視点教示の効 果 25 方 法 被 験 者 ; こ の種の問 題に接し た経 験の ない大 学 生 延べ 44 名,
2つ の条 件に 各々 21 名,
23 名が割り当て ら れた.
刺激 :Fig.
1 に 示 さ れ た刺 激カー
ドの組 (1
)と 〔4
),
教示 :場 面 設定なしの 条件で カー
ド事例がルー
ルに従 っ てい る か どうか を問 う形の 教示文は, 前 記条 件a の 下 線 部を次の ように変更するこ と で作 成し た,
「今,
『母 音の カー
ドの裏に は必 ず 奇数 が あ る』 とい う 命 題 が あ ります.
上 の4
枚の カー
ドがこ の 命 題に従 っ て い る か どう かを 調べ るために は どの カー
ド をめ くっ
て み なげればな らない で し ょ う」 また, 場 面 設 定 あ りの条 件でルー
ル の真 偽を闇 う形の 教 示 文は,
箭 記 条 件kの教 示 文 を 基に して 次の よ うな も の と し た,
「こ の学校の生 徒はだ れで も2
っ の帽r
一
をもっ て い ま す,
ひ とつ は赤い帽 子で,
も P)ひ とつ は青い 帽 子です.
今日 は遠 足で み んな帽子 をか ぶっ て きて い ま す.
あ る 先生 が 『今日,
女 の子は赤い 帽子を か ぶ っ て きて い る』といい ま し た.
こ の先生の言 葉が 正しい か ど うか を調べ る た めに は どの 子を 調べ れば よ い で し ょ う」Table 3
.
Percent correct responses undervurbus collditions in Experimcllt 2
.
ルー
ル の 真偽 カー
ドの 正誤 を 間 う教示 を 問 う教示 記 号 場 面設 定なし 場面 設定あり 絵 場 面 設 定 なし 場 面 設 定 あり 31.
8† 55.
2†61.9
39,
150.
0† 88,
9† 上記の2
つ の教示文の 最後に共 通して 「め くる枚 数は 何枚で もか まい ま せ ん が,
自分で最低限これは (これ ら は)必要と思 う ものを選ん で ください」 とい う一
文 を 加 えた.
手 続:集団で実 験を行っ た 以外は前 実験 と 同 じ.
結 果と考 察 ルー
ル の真 偽を問う教 示 条 件とカー
ド事 例がルー
ル に 従っ てい る か どう かを 問う教 示 条 件の正 答 率 を TabLe 3 に 示す.
課 題 場 面 設 定の 条 件 別に z2 検 定を行なっ た結 果,
い ずれの 場 合も二 つ の教 示 条 件の 問に有 意 差がみ ら れ なか っ た (場 面 設定な し ブ;.
27,
P
>.
50
;場 面 設 定 あり Z2霈
2.
42,
p
>.
10
).
した がっ て実 験1
で み ら れ た 課 題 場面設 定の効果を教示表 現の仕方に よ る もの とする こ とは できない,
逆に教示条 件 別に場 面設定の有無の効 果を 正答 率か らみ て み ると,
素 材が記 号の場合で 31.
8 % †Results of Experiment1.
か ら50.
0%へ,
絵の場合で 55.
2
%か ら88.
9
% へ とか なり高 くなっ て お り,
場 面 設定の効果は 明 ら かである.
し か し場 面 設 定 ありの 条 件で は,
カー
ド事例がルー
ル に 従っ てい る か ど うか を 問 う教示条 件の正答は ルー
ル の 真 偽を 間 う教 示 条 件よ り もかな り高く なっ て お り,
サ ン プ ル数が少ないこ と を考 慮し て有 意水準を 25% に とる と 両 者の差ぽ有 意 となる.
こ の こと か ら教示表現の重要性 も 否 定 し 難い ところ が あ る よ うに思わ れる.
そこ で,
教 示 表 現の効 果をカー
ド選択理由か ら検 討す る.
まず 正 答 者の選 択理由は次の 二 つ に分 類できる.
(1)ルー
ル に直接関係し て いる事 柄につ い て述べ た もの,
例:「女の 子は 赤い帽 子 をか ぶ っ て くる 必要 が あ る がY 男の 子は 赤であろ うと 肖’
で あ ろ う と か ま わ ない,
だ か ら女の 子の カー
ド と青い帽子 を 調べ れば よ い」 (2
)各カー
ドに つ い て選択・
非 選択の 理 由を述べ た もの.
例:「(赤い帽 子のカー
ド〉 男で も女 で もい い か らめ くら な くて よい.
(男の子の カー
ド)どち らの色の帽子 をか ぶ っ て もい い か ら あ くら な くて よい.
(女の子のカ
ー
ド)赤い 帽 子でな くて はい けな い か らめ くる,
(青 い帽 子の カー
t
ド)女 の 「i
だ と いけないか らめ く る 」 上 記 理 由の 頻 度 を 条 件 別に Table 41こま と め た.
場 面設 定の有無に か か わ らず,
ルー
ル の真 偽を 間 う 教 示 条 件の下では (D
の 理 由 が 大 部 分である の に対し て, カー
ド事 例がルー
ルに従っ てい る かを 問 う教 示 条 件の下では (2>の 理由が多くなっ て い る.
これ よ り, 教示 表現は 課 題 解 決のため の思考を方向づける傾 向 が ある と考 え ら れTable 4
.
Number of cases classified with regard to reasonsfor
correct responses in Experil皿ent2.
ル
ー
ル の真 偽を問 う教示 カー
ドの正誤を間う教示 ルー
ル に直 接 関 係 各カー
ドの選 択・
ある事柄のみ報 告 非 選 択 理 由を報 告 ルー
ルに直 接 関係 各カー
ド の選 択・
ある事柄の み報 告非 選 択理 由 を報 告 場面設定な し
7
/7 0/74
/9
5/9 場 面 設 定 あ り 10/132
/13
5
/33
28
/33
26 る
.
実 験 3 基 礎 心 理 学 研 究 第3
巻 第1
号 前 述の よ うに,
素材を具 体 的にする ことや課 題 場 面を 設 定 するこ とは課 題 解 決に とっ て有効で あ る とい う結 論 が得られた.
そのため,
た と え解答 者 (被 験 者 )がまだ 形式 論理的 操 作 能 力を十 分に は発達させ て い ない小 学 生 であっ ても課 題を具 体 的に し た り,
課 題場面を設定する こ とに よっ て正 答でぎる可 能 性が 予想さ れ る.
方 法 実 験1の条 件 k・
1 とほぼ同じ課 題で実験を行な う.
被 験 者: こ の 種の問題に接し た経 験のない慶 応 幼 稚 舎 の2
年 生20
名,
6年生 20名.
刺激:Fig.
1 (4) ,Fig.2
に示す2
組の カー
ドを 用い た.
手続:女の子 も男の子 も赤と青の帽 子を持っ てい るこ とを 教 示し た後,
色 違い の帽 子を かぶ っ てい る男の子二 人の カー
ドを見せ,
「男の子は青い (赤い )帽 子」 とい っ た ら ど ち らか 正し い かを尋ね ることに よっ て, 被 験 者が 質 問 を 理 解して い るこ と を確か め る準備実験を 行 な っ た.
その 後以 下の教示 を行なっ た,
「こ の学校の先生が こ ういい ま し た.
『み な さん,
あ した 女の 子は赤い1[f9子 をか ぶ っ てきて くだ さい』」Fig.
1
(1
)をみ せ な が ら,
「こ の絵の 子 供た ち も次の 日囎 子 をかぶ っ て き まし た.
(子 供を指し な が ら) 男の子 と 女 の子は 帽子 がか くれて い ます,
だか らか ぶ っ てい る帽 子の色が 赤なの か青 なのか わ か らない の,
(帽’
f’
を指 し な が ら)帽子 だけみえて い る子は 顔がか くれて い て 男の子か女の子か わ か らない の」 その後は課題遂行教示 の種 類に よっ て分か れる.
課 題 遂 行 教 示が肯 定 形の場 合: 赤 青 青 勇Fig
.
2.
Sti
皿 ulus cards used in Experiment3
and
Experiment
4.
「先 生の 『女の 子 は赤い帽f
をか ぶ っ て ぎて くだ さ い』 とい うiiい っ けを,
み ん な が守っ て い る か どう か 調べ る ため 菅こは,
どの 子を調べれば よい で し ょ う」 課 題 遂 行 教示 が否 定 形の場 合: 「こ の 4人の 中で 先 生の 『女の 子 は 赤い帽 子 をか ぶ つ て きて く だ さい』 とい う言いっ けを守っ て こな か っ て子がい る か もし れ ま せ ん ね.
そ うい う ア がい る とし た ら誰だ と 思いますか」被験者がカ
ー
ドを選んだ後,
その 理由を尋ねる,
最後 に Fig,
2 をみせ て,
「こ の中で 先 生の 『女のf−
ex赤い帽 子 をか ぶ っ て き て くだ さい』 とい う 言いつ けを守っ てい ない 子は誰で すか 」,
こ の教示 は被験者が先 生の 言い つ けの意 味を正し く理 解し てい るか どうか を確 認 する た めの もの で あ る,
実 験 中の言 語 反 応はすべ てテ
ー
プに収録した,
また実 験ぽ すべ て個別に行ない,
所 要 時 間は一
名あ た り約10分 であっ た,
結 果と考 察 課 題 遂 行 教 示につ い て は,
肯 定 形と否 定 形の間で結 果 に差が み ら れ な かっ たの で 両者を ま とめ て分 析し た.
この 課題で は, 女の子と青い 帽 子 (p とq
)の選 択 が 正 答 と なるが,
正答率は2
年・6
年とも ]5,
0% (20 名 中3
名)と な り,
両学 年で差は なか っ た.
カ
ー
ド選択理由は実験1
と同 様,
(1
) 論 理 型・
教示内 容にそっ た もの,
例: 「先 生は 赤い 帽 子といっ たか ら青 い帽 子を調べ る」,
「男は どっ ちでもい い か ら女の子だけ 調べ る」,
(2) 非 論理型・
教示内容 以 外の 知 識の基づく もの,
例: 「顔 が 反 抗 的だか ら男の子を調べ る」,
「男は だ いたい忘れ物をする から」, (3) その他,
例:「なん と な く」,
「と くに理由な く右か ら選ん だ」に分 類で きた.
正 答 者の理 内は低 学年・
高学年に か か わ らず,
すべ て上 記の (1
)と み なすこと がで ぎた が,
誤 答 者の理由は両 学 年で異な る傾 向を示し た.
低学年で は (2)や (3
)の理由 を述ぺ た者が17名 中1・
1名と極め て多い.
逆に高 学年で は (1
)の理 由を述べた者が 17名 中12名 と大 半 を 占め,
さ らにそのほ と ん ど が 不適切なカー
ドを排 除し て正 答の一
方の み を選 択して いる (12名 中 IO名 ).
次に, 本 実 験で佼っ た教 示 中の 「誰」ない し 「どの子」 とい う問い方は選択 すべ きカー
ドの数 が一
枚であること を暗 示 する可 能 性がある.
カー
ドー
枚の み を選択し た者 は2
年で17
名中10
名,6
年で17
名 中16
名であること か ら,
こ の教示の あ り方が反 応に大 きな影 響 を 与 えて い る と 思 わ れ る.
小 谷 津
・
伊東・
松田 :4
枚カー
ド問 題における課 題 素 材効果 と視点 教示の効 果27
Table 5
,
Types of explanation expressedby
subjects of Iow and
high
gradesin
Ex −
periment
3,
2年 6年L
男の 子は関 係 なし, 女の子が 赤い 帽子 であれ ばよ い.
2,
女の子は赤い 帽 子, 男の子は 青い 帽 子 が 正しい.
3.
赤い帽 子は女の 子だけが 正 しい.
4.
赤い帽 于だ け が 正 しい,
5 16 青 青 竚 赤9
鰯
調
1311
繍
卿
9
400また 課 題の理 解と 具体的反 応の間に介 在 する解決的思 考に は
,Table
5に示すよ うな4つ の タイ プ が あ る.
低 学 年で多い のは 「女の 子は赤い帽 子,
男の子は青い 帽子 が 正しい」 とい うもの で,
これは 「女の子が赤だっ た ら 男の子は青だ 」 とい う常 套 的 思 考の機 械 的 適 用とい え,
こ の段 階で既に誤 りを犯してい る ことがわ か る.
これに 対し高学 年で は 「男の子は関係な し,
女の子 が 赤い帽 子 であれ ば よい」 と 正 しく結 論を出し て いる者が多い.
し か し こ れが 反 応の上で正 答と な る ため に は,
さ ら に一
歩 進め て,
「女の 子と青い帽 子の両 カー
ドを調べ る 」 とい うことに結びつ けなくて はな ら ない.
: の意 味で,
「托答 の一
方し か選 択しなかっ た者は, 反 応に 導く思 考が 浅 い,
もし くは不十 分であっ た とい うべ きで あ ろ う.
な お 本 実験の完全 正答 率は低学年・
高学年と もに低い こ とが 気にな る.
これ は前述の よ うに,
おそ ら く問題解決の た め の患考だ けで な く,
課 題その もの の理 解が困難であっ たこ とに起 因 するもの と 思 わ れ る.
そt で実 験4で は課 題 内容の理 解 が 容 易になる ようあら か じ め配慮し た実験 を 行 な う,
Fig
.
3.
Stimu
】us cards used ill Experiment 4.
実 験 4
閙題解 決の 成 功
・
不成 功は,
教示 を含め て課 題の理解 の程度に依 存 することが 実 験 3より示唆さ れ た.
課題や 教示の理解が 不十 分だ と,
単に問題解決のための 思 考 が 円滑に行な われ ないばか りか, 閇 題解決へ の 意 欲やモー
ティベ イシ ョ ン を低 下 させ かね ない.
そこで, 本実験で は課 題 及び數示の表 現 を 低 学 年の小学生で も容 易に理解 できる よ うに修正・
変 更し た.
ま ず 課 題の表現は 否 定形 と し,
教示につ い て は,
何 枚の カー
ドを選 択して も よい こと を 明 言 し た (手続の 項,
下 線 部 参 照 ).
さらに視 点の 効 果(佐伯,1980
;上 野,
1982>を検 討 する ため に特に誤 答・
無 答の場 合に 「先 生だっ た ら 」 とい う教 尓 を 追 加し た.
方 法 被 験 者:慶 応 幼 稚 舎の 2年 生と6
年生各 20 名.
た だ し,
実 験3には参 加し てい ない,
刺激:Fig
.
1
〔’
i),
Fig.
2
とFig・
3 に示 す3組の カー
ド.
手 続;教示及び その他の 手 続 きは,
以 下の点 を 除い て 実 験 3と同 様であ る.
まず 準備 実験のか わ りにFig.3
を 見せ て 「(子 供 を 指しな が ら)こ の 女の }は赤い帽r一
をか ぶ っ て い るけ ど,
こ の 子は 青で し ょ.
こ の 男の 子 は 青 い帽子 で,
こ っ ちの男の ∫は赤で し ょ.
こ ん なふ うに 普 通の 日 に は 好 き な 方 をか ぶっ て くれ ばい い のね 」 と 言う.
次に,
先生 の 言いつ けは 『明日 は遠 足で す ね,
み ん な 忘 れず に帽子を か ぶ っ て き なさい.
た だ し,
女 の于 は 必 ず 赤 い 帽チを かぶ っ て い らっ しゃ い』とする (この時 先 生 の 言い つ けのみ を書い た カー
ドも あ わせ て皇 示 し た).
「こ の4
人のお友だち の中で 誰を 調べ た らい い で し ょ う」の後に 「ひ と りか もしれ ない し,
ひ とりだ け じゃ ない か も しれ ないわ よ」を 加 え る.
こ の 問い に対 する反 応 が 誤 答 (無 答を含む)であっ た者に対し て は,
「先 生 だっ た ら 」 とい うよ うに 先生 の視 点に た たせ る 教 示 を与えた上で 再び誰を 調べ た ら いい か を尋ね る.
結果と考 察本 実 験で は
,
「先 生だっ た ら 」 とい う 視 点教示を与え る以 前に正 答で ぎた 者は 2 年生には お らず,
6 年生で は 20名 中9名 (45.
0%)であっ た.一
方,
こ の視 点 教 示の 追 加 後正答した者は2
年生で 20 名 中1
名,6
年生 で11
名 中 1名であっ た.
ま た,
誤答の タ イプも視 点 教示の前 後で大きな変化は み ら れ な かっ た.L
た がっ て, 小学生 の場 合に は視 点 教示 が,
問題解決におい て直 接 的な効 果 を もっ て い る とは い い難い.
次に誤 答 者の カー
ド選 択 理 由を実 験3
と同様に論理型 と非 論理型 (その他を含も)に分け,
視 点 教 示の 追 加に.
よ る変化を Table 6 に示した.
2年 生では12
名中 6 名 が非論 理 型か ら論理型に移 行して い るが,
6年 生では ほ とん ど変 化が み ら れ ていない.
し た がっ て,
低学年で も 視 点 教示に よっ て 正 しい思 考に導ぴ かれることが多い と 考 え られる.
最 後に,
誤 答・
無 答であっ た者で もFig・
2 に対し て28 基 礎 心 理 学 研 究 第
3
巻ig
1
号Table 6
.
The effect of viewpointinstruction
upon subjec ゼs giving explanation
for
his
/
her
respOI ユ$e,
2 年 視 点 視 点 なし あり 点 り 年 視 あ6
占…
し 視 な 論 理 型 非 論理型 [li8 くてず・12 1・梺
・ ・ ア 8ヌ
7 3一
丁う
4 合 計 20 20 11 ー1 は 2年 生 1名 を 除 く全 被 験 者 が 青い帽子を か ぶ っ た女の 子を正しく選 択し て い るこ とか ら,
教 示を 正し く理解し そ れにそっ て解 決し よ う と してい るこ と が わか る,
総 合 討 論 実 験 1の 結 果に お い て み ら れ たよ うに,
問 題解 決に と っ て課 題 状 況の具 体性 は非常に有効で あ る.
従 来の研 究 で は,
課 題 状 況 を 具 体 的にする要因と して課題項目の具 体 性と課 題 項目 間の 関 係の 自 然 さ が 重要と さ れ て きた (Bracewell & 11idi,1974
;Gijhooly & Falconer,
1974
).
本研究で は新たに具体的な課 題 場而設 定の有 無をとりあ げて検討し た訳だ が
,
課題 項 目 が記 号で項 目間の関 係が 人 為的で あ っ ても, 課 題 場 面が設 定されて い る場 合に は 成 績の 向上 がみ られた,
し たがっ て,
成 績の向上に とっ て文脈性の強い 課 題 場面 を設 定 する こ と がよ り重 要であ る とい え よ う,
抽 象 的な課 題 状 況で成 績の悪い理由の一
つ に,
被験者 が 課 題 を 自己の経 験 領 域に 位 置づける こと が 困難なた め,
問 題 解 決に対す る意欲・
モー
テ ィベ イシ ョ ン が高ま ら ない とい うこと が考え ら れ る.
事 実, 抽 象 的 な 課 題 状 況で は 「とにか くE と5をめ く ればよい」 とか 「全 部め くればわか る だ ろ う」 とい っ た’
‘
なげや り”
な思考を思 わ せ る選 択理由を述べ る者が多かっ た.
他 方, 具 体 的 な 課題 状況で は,
課 題を自己の経 験 領 域に位 置づける こと が容 易になる た め,
課 題に対し て積 極 的に関わ りを もつ こと がで きる よ うになる の で あろ う.
ま た課題を自己の経 験領域に位 置づけるこ とがで きれ ば,
Wason &Shapiro
(1971
)も指摘する ように課 題 教 示の意 味 内 容 が 体 制 化さ れ た形で把握される ように なる た め, 課 題の 理 解・
認 識が促 進 されるもの と 思われる.
次に課題 内容の 認 識と そ れに基づ く解 決の た め の思 考1 につい て考察 する
.
本 実 験の課 題で正 答 を 得 る た めに は,“if
p then q”
のP
とq を排 除し,
p とq
を選 択 しな け れ ば ならない,
論 理 的 思 考 力の発 達し た大 学 生被 験 者は,
抽 象 者 な 課 題 状 況でも 「p は考慮す る 必要な し」 と認 識し, p を 排 除 する傾 向はある が,
q につ い て は 「ルー
ル が 止し い こ と を確認するた め 」 とい う理 由で 選 択し て し ま う者が多い.
これは課題の本 旨にそっ たも の以外に ま で思考が 及ん で し まい,
かつ その ことが 課 題 と して要 求さ れ てい ない こ と を 十分 認 識し て いない結果 で ある と思わ れる.
この よ う なこ とは, 課 題に 具 体 性 を もたせ るこ とで, 課 題の過不足 ない理 解を得さ せ れば回 避 する こと がで きるもの と思わ れ る.
p と qに 関し て は抽象的な課題 状混で もrp
にq
が随 伴して い て は いけ ない (例 えぽ,
母 音 (P >の裏に 偶数 (q)があっ て は い けない )」と 正 しく認 識 するこ とは容 易であるが,
逆にrq
にpが随伴し てい てはいけ ない」 と認 識 するこ とは必 ずしも容易でない.
結 果とし てq
の 選 択は少な く な る.
ところ が, 具 体 的 な課題 状 況で は次 に述ぺ る連 想の進 展に よっ てq
を考慮の 対象にする 可能 性が高ま る と考え ら れる.
一
般に,
口常の経 験 領 域に お いて は様々 な事 象が時 間 的,
意 味 的,
エ ピ ソts
ド的連鎖をもっ て い る.
ある事象 がこ の経 験 領 域 内に位 置つげら れ る と, そ れに結びつい た事 象が次々 に連 想され,
課 題解 決のため に必 要な知 識 清報が利 用されるこ とになる,
逆に,
事象 が 経験領 域内 に うまく位 置づけら れ ない 場合に は,
事 象の連 想が滞っ て し ま う と考え ら れ る.
問 題解 決に とっ て 重 要な こ と は,
まず経 験領域におい て与 え られた課 題か らの連 想が 円滑に進展し てゆ くこ となの であろ う.
こ の連 想とい う観 点か ら実験 2で論じた解決の ため の 思 考に対 する教 示 表 現の 影 響を検討し たい.
まずルー
ル の真偽を問 う教示で は思考が 抽象 的に なりやす く,
事象 の具 体 的枠組 (スキー』
?)が発 動 され 難 くな り,
結 果と し て連 想は進 展し難 くな るのであろ う.
他 方,
カー
ド事 例 がルー
ル に 従っ てい る か ど うかを聞 う教示では,一
枚一
枚のカー
ドを試 行 錯 誤 的に検 討 する傾 向が生じ, 必 然 的に P・
qの み な らずq ・P
も思 考の対象と な り, 結 果 的に正答に達する 可能 性が高ま るもの と思 わ れる,
次に,
視 点を持つ こ と が 課 題解 決に どの よ うに関 連 す る の であろ う か,
佐 伯 (1980
)の ように,
視 点 を 持つ こ とに よっ て 「活動主体に対 する共感が生まれる 」と考え る よ り も,
む し ろ 特 定の人物の視点 を持つ こ と に よ っ て, その人 物の社 会 的 役 割 や 立 場 及び行 為の ス キー
マ が 生 ま れ る と考え るべ きか もしれ ない.
Johnson
−Laird
et al・
(1972>に おける 「郵 便 局 員」も上 野 (1980
)にお ける 「売 場 主 任」もこ の ような意 味で 違 反を調べ る 人 物 である こ とを 被 験 者に認 識さ せる上で有効であっ た もの と考 え られる.
ところ が実験4
に お け るよ うに被 験 者が 子 供の場 合には, 子 供は経 験 が 少 な く,
特 定の人物の役小谷 津
・
伊東・
松田 :4枚カー
ド問 題に おける課 題 素 材 効 果 と視 点 教 示の効 果 29 割の 認 識が十 分では ない.
さ らに , た と え その認 識があ る程 度 十 分であっ て も, そこか ら課題解決に役立つ よう な連 想を進展させ るこ と がで きる程に十 分である とは隈 らない.一
般に,
小 学 生,
特に低 学年の場 合には 経験的 知 識の不足 (infQrmatiDn
deficjency
)と連 想の 未熟さ (assocjation deficiency)と が あ い まっ て課 題 解 決 を 困 難}こし, 視点の効巣をもた ら さ な かっ たもの と考えるこ と も可能であろ う.
本研 究で は こ の 二 つ を分 離し て検 証 するこ と はで き なか っ た.
最 後に,
p とq
の カー
ドは命 題の真 偽 を 決 定 する情 報 をもた らすが,
P
と q の カー
ドは問 題を解 決 するための 情 報を何 ら もた らさなか っ た か の よ うに見える,
しか し そ うであろ うか.
例 えぽ,
被験 審は男の 子の カー
ド (P) を 見て 「こ の 男の 子 は赤い帽 子 をかぶっ てい る か もしれ ない」 とい った推 論をしたとすると,
その男の子の カー
ドを調べ るこ とに よっ て,
自己の判 断の正当性 を 立 証・
確 認 するこ とがで きる.
特に子 供の場 合,
与え られた課 題 を 自分の納 得で ぎる方 法で解こ うとする者 が 多い よ う に見受けられること を考え合わせ ると,
P
や qの カー
ド も彼らに とっ て は重 要な情 報を含ん で い るもの と考 え な け ればな らない.
こ の ように,
人 間の問 題 解 決 行 動に関 わ る思考は,
論 理 的に解 くた め の思・
考だけでな く,
解 決 を確 認・
納得する た め の情 報を 入手 するこ と を 目的と し た思 考も包含し てい る こ と を見逃し て は な ら ないであろ う.
要 約4
枚カー
ド問 題につ い て,
4
つ の 実験 が行な わ れ た.
実 験1
では, 大 学 生 を 被 験 者 とし て課 題 項 目 (カー
ド) の内 容 (記 号・
具 体 的 な絵 ), 課 題 項 目の表 示 形 式 (表 裏・
上 下 ),
課 題 場 面設 定の有 無,
課 題 教示の タ イプ(肯 定 形・
否 定 形 )の要 因 分 析 が 行 なわれた.
その結 果,
課 題 項 口を具 体 的にするこ と と 自然 な 課 題 場 面を設 定 するこ と が 成績の 向上に とっ て有効であ るこ と が 明 らか と なっ た.
実 験2
で は, 教 示 文がルー
ルの真 偽 を 問 う形か カー
ド事 例の正誤を問 う形か に よっ て成績が影 響される こと が示された.
実 験 3・
4で は前二実 験の結 果 をふ まえ,
課 題 項 目が 具 体 的 な 絵で,
自然 な 課 題 場 面 が 設 定 された 課題 状況で あれ ば,
小学生で も論 理 的 推 論 課 題が解け る か どうか を調べ, 同時に視 点 教 示の有 効 性 を 検 討し た.
低 学 年の生 徒は課 題 その もの の理 解が困 難で あ り,
高 学 年の生徒で も単に視 点 教示 を与え ら れ ただ けでは成 績が 向 上しない.
問 題 解 決に おい ては形 式 論 理 的 操 作 能 力 だ け で な く,
課題 内容の内的 表 象 を連 想 的に進 展 さ せ る能 力 が 重 要であ り,
また 特 定 人 物の視 点に立つ こ とが真に 有 効となる た め に は,
その人 物の役 割が具 休 的に認 識さ れる必要がある,
引 用文 献Bracewe11
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