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武 道 学 研 究 48(1): 1727, 2015 Ⅰ 諸 言 全 日 本 柔 道 選 手 権 大 会 ( 以 下, 全 日 本 選 手 権 )は, 柔 道 の 体 重 無 差 別 日 本 一 を 決 める 大 会 であり, 国 内 最 高 峰 の 競 技 力 のみならず, 見 本 となるような

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(1)

国際柔道連盟試合審判規定 2014–2016 が全日本柔道選手権大会の

競技内容に及ぼす影響:ダイナミック柔道の観点から

三 宅 恵 介

1)

佐 藤 武 尊

2)

  横 山 喬 之

3)

Effects of the International Judo Federation Refereeing Rules 2014–2016

on competition contents in the All-Japan Judo Championships:

From the viewpoint of dynamic judo

Keisuke MIYAKE1),

Takeru SATO2), Takayuki YOKOYAMA3)

Abstract

This research aimed to clarify whether the International Judo Federation Refereeing Rules 2014–2016 (New-IJF Rules) facilitated dynamic judo in the All-Japan Judo Championships (AJJC). Therefore, Kodokan Judo Refer-eeing Rules’ tournaments (KDK Rules’ tournaments), International Judo Federation ReferRefer-eeing Rules’ tournaments (IJF Rules’ tournaments), and New-IJF Rules’ tournaments were compared. The following results were obtained.

Regarding winning contents, in the New-IJF Rules’ tournaments wins by ippon significantly increased whereas wins by superior performance significantly decreased when compared to KDK Rules’ tournaments. Fur-thermore, for winning methods, points from techniques significantly increased but judges’ decisions significantly decreased in the New-IJF Rules’ tournaments when compared to KDK Rules’ tournaments. However, concerning total points, the results did not show significant differences.

As a result, this research confirmed that the New-IJF Rules increased the wins by ippon and points from techniques in relation to winning methods, and decreased the superior performance and judges’ decisions in the AJJC. These findings suggest that the New-IJF Rules facilitated dynamic judo in the AJJC.

Key words : All-Japan Judo Championships, International Judo Federation Refereeing Rules 2014–2016, Dynamic judo キーワード:全日本柔道選手権大会,国際柔道連盟試合審判規定 2014-2016,ダイナミック柔道 1)中京大学 〒 470-0393 愛知県豊田市貝津町床立 101 TEL/FAX: 0565-46-6587 E-mail: [email protected] 2)皇學館大学 3)摂南大学 1) Chukyo University

101, Tokodachi, Kaizu-cho, Toyota-shi, Aichi 470-0393, Japan

2) Kogakkan University 3) Setsunan University

(2)

Ⅰ 諸言  全日本柔道選手権大会(以下,全日本選手権)は, 柔道の体重無差別日本一を決める大会であり,国 内最高峰の競技力のみならず,見本となるような 競技態度が求められることから2)3)15),オリンピッ ク大会柔道競技(以下,オリンピック)や世界柔 道選手権大会(以下,世界選手権)などの世界最 高水準の競技大会と同等の,あるいはそれ以上の 価値があるとされる32)34)。したがって,全日本選 手権について論じることは,日本柔道の発展,並 びにその競技としての方向性を定めるための指針 になるはずである。  これまで全日本選手権に関しては,多くの研究 が行われている7)8)9)10)16)29)30)33)。松井ら7)は,1980 年から 1989 年までの 10 年間の全日本選手権にお いて,身長差や体重差が勝敗に及ぼす影響につい て検討した結果,身長差は勝敗を決定する要因で はなく,体重差が 40 kg 以下の対戦では,優勢者 と劣勢者の勝ち数に有意差がなかったことから, 軽量者にも十分に勝機があり,無差別大会の存在 意義を示したと報告している。また,身長差や体 重差と決まり技との関係について検討した結果, 身長差が 6 cm 以上に広がると「大外刈」や「払腰」 は長身者にとって有利な技であり,体重差がある 場合は「足技」「抑込技」など全ての技で重体重 者が軽体重者よりも有利な技であったと報告して いる8)。生田30)は,大学柔道選手(男子)を対象 とした意識調査と,全日本選手権に出場したこと のある指導者を対象にインタビュー調査を行い, 日本の柔道家は全日本選手権という体重無差別の 試合方式に価値や意義を見出していることを報告 している。このように,全日本選手権に関する研 究では,全日本選手権の試合方式が体重無差別で 行われていることに焦点を当てるものが多い。  全日本選手権は,1951 年より伝統的に講道館 柔道試合審判規定(以下,講道館規定)で行われ てきたが,国際化の影響を受けて 2011 年に国際 柔道連盟試合審判規定(以下,国際規定)が初め て導入された。国際規定は,国際柔道連盟(以 下,IJF)が階級別の試合において,積極的な試 合展開を促すために施行したものであり31),「旗 判定」や罰則によらず「投技」「固技」の技術に よって勝敗が決着する「ダイナミック柔道」の促 進を目指して構成されている28)。IJF は,組合わ ない,偽装攻撃,防御姿勢などを主とした柔道ス タイルである「ネガティブ柔道」の流行が,柔 道人気を下げる要因であると認識した上で,「一 般大衆がみてわかりやすくするためにどうすべき か」をコンセプトに,選手同士が組み手を取り 合って積極的に攻撃しあう「ダイナミック柔道」 を推進した14)。この「ダイナミック柔道」の実 現に向けて,IJF は国際規定の改正を幾度となく 行っている。その国際規定が,体重無差別で行わ れる全日本選手権に導入されたことで「旗判定」 と「待て」の時間は有意に減少し「ダイナミッ ク柔道」の一部促進が示唆された10)。2014 年に は国際規定の改正によって,国際柔道連盟試合 審判規定 2014–2016(以下,新国際規定)が適用 され注1),積極的な試合が展開させるよう「組む, 攻める,場外に出ない」をポイントとした罰則の 厳格化25),「技による得点」と「罰則による得点」 の区別化などが行われた(表 1)。また,「抑え込み」 時間も短縮されたことで,全日本選手権の競技内 容は「ダイナミック柔道」として,さらに促進し たことが推測される。しかしながら,新国際規定 が全日本選手権の競技内容に,どのような影響を 及ぼしたのか明らかにされていない。また,体重 無差別で行われる全日本選手権に,国際規定を適 用し続けることを検討する上で,全日本選手権の 競技内容の分析は,継続的に行っていく必要があ るとされる10)  そこで本研究では,新国際規定が全日本選手権 の「ダイナミック柔道」の促進に寄与したかどう かを明らかにすることを目的とし,講道館規定で 実施された 2008 年から 2010 年までの 3 大会,国 際規定で行われた 2011 年から 2013 年までの 3 大 会,新国際規定で実施された 2014 年大会の 1 大 会における競技内容を分析し,大会群を比較検討 した。

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Ⅱ 方法 1.対象  全日本選手権の講道館規定で行われた 3 大会 (2008 年から 2010 年)の 110 試合,国際規定で 行われた 3 大会(2011 年から 2013 年)の 111 試 合と新国際規定で行われた 1 大会(2014 年)の 41 試合を合わせた全 262 試合を対象とした。試 合数の内訳は,2008 年大会 37 試合,2009 年大会 37 試合,2010 年大会 36 試合,2011 年大会 39 試合, 2012 年大会 36 試合 2013 年大会 36 試合,2014 年 大会 41 試合である。  なお,講道館が発行している機関誌『柔道』に 掲載された「全日本柔道選手権大会記18)」と「全 日本柔道選手権大会柔道19)20)21)22)23)24)」の報告, 及び全日本柔道連盟強化委員会科学研究部が撮影 した試合映像を参考に分析項目の集計を行った。 2.分析項目 (1)勝利内容  勝利を収めた内容を「一本勝ち」及び「優勢勝 ち」に分類した。「一本勝ち」には「合せ技」「総 合勝ち注2)」「反則勝ち」を含めた。それ以外の方 法(「棄権勝ち」「不戦勝ち」は省く)によって勝 利を収めた場合を「優勢勝ち」とした。三宅ら10) の研究では「一本勝ち」に「反則勝ち」は含まれ ていないが,本研究で対象とした大会に「反則勝 ち」が確認されたことから「一本勝ち」に「反則 勝ち」を含めた。 (2)勝利方法  勝利を収めた方法を「技による得点」「罰則に よる得点」及び「旗判定」に分類した。「一本」「技 あり」「有効」は「技による得点」,並びに「反則 負け」「警告」「指導 3」「注意」「指導 2」は「罰 則による得点」とした。なお,「合せ技」及び「総 合勝ち」に該当した「技あり」「指導 3」「警告」 に関しては,二つ目の得点を対象とした。「旗判 定」とは,講道館規定では「有効」または「注意」 以上の得点差がなかった場合,国際規定では「有 効」または「指導 2」以上の得点差がなかった場合, 新国際規定では「指導」が共に同等の場合及び「指 導」差が 1 の場合に行われる旗による「判定」で 勝敗を決定する方法である。三宅ら10)の研究では, これを「僅差判定」としているが,本研究では「旗 判定」とした。全日本選手権における新国際規定 では,試合終了時点で技による得点が同等で,「指 導」差が 2 以上あった場合に少ない選手を「僅差」 による「優勢勝ち」としている。このことから「僅 差」という文言の混乱を避けるため,本研究では 「旗判定」という文言を用いた。 (3)全得点  審判員によって宣告された全ての得点(取り消 しされた得点は含まない)を,「技による得点」 及び「罰則による得点」に分類した。「一本」「技 あり」「有効」は「技による得点」,並びに「反則 負け」「警告」「指導 3」「注意」「指導 2」「指導」 「教育的指導」は「罰則による得点」とした。三 宅ら10)の研究では,分析項目を(1)勝利内容(2) 勝利方法(3)得点獲得技(4)「待て」の時間の 4 項目としているが,本研究は(1)勝利内容(2) 勝利方法(3)全得点の 3 項目とした。本研究では, 獲得した得点に焦点をあてたため,得点獲得技と 「待て」の時間を省き,新たに全得点を分析項目 に加えた。勝利内容に絡む得点のみならず,全得 点の数や割合は「ダイナミック柔道」の指標にな り得ると考え分析項目に定めた。 3.分析方法  2008 年から 2010 年までの 110 試合を講道館規 定大会,2011 年から 2013 年までの 111 試合を国 際規定大会,2014 年大会の 41 試合を新国際規定 大会と定めた。そして,各分析項目の数及び割合 を講道館規定大会と新国際規定大会,並びに国際 規定大会と新国際規定大会で比較し,その差につ いて検討した。 4.統計処理  分析項目の勝利内容,勝利方法及び全得点につ いては,クロス表を用いてχ 2 検定を行い,5% 水準の有意差が認められた場合は,期待値と実際 の頻度の差を検討する残差分析を行った。

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Ⅲ 結果  表 2 は各大会における勝利内容の数及び割合を 示したものである。講道館規定大会の「一本勝ち」 は 43 試合(39.1%),「優勢勝ち」は 67 試合(60.9%), 国際規定大会の「一本勝ち」は 55 試合(49.5%), 「優勢勝ち」は 56 試合(50.5%),新国際規定大会 の「一本勝ち」は 26 試合(63.4%),「優勢勝ち」 は 15 試合(36.6%)であった。講道館規定大会と 新国際規定大会の比較に有意な差が認められ,講 道館規定大会と比べて新国際規定大会では「一本 勝ち」は増加,「優勢勝ち」は減少していること が確認された(図 1,P < 0.05)。また,国際規 定大会と新国際規定大会の比較に,有意な差は認 められなかった(図 2)。  表 3 には各大会における勝利方法の数及び割合 を示した。講道館規定大会の「技による得点」は 59 試合(53.6%),「罰則による得点」は 17 試合 (15.5%),「旗判定」は 34 試合(30.9%),国際規 定大会の「技による得点」は 67 試合(60.4%),「罰 則による得点」は 26 試合(23.4%),「旗判定」は 表 2 各大会における勝利内容の数と割合 図 1 講道館規定大会と新国際規定大会における勝利内容の比較 図 2 国際規定大会と新国際規定大会における勝利内容の比較

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18 試合(16.2%),新国際規定大会の「技による 得点」は 31 試合(75.6%),「罰則による得点」は 7 試合(17.1%),「旗判定」は 3 試合(7.3%)で あった。講道館規定大会と新国際規定大会の比較 に有意な差が認められ,講道館規定大会と比べて 新国際規定大会では「技による得点」は増加,「旗 判定」は減少していることが確認された(図 3, P < 0.05)。また,国際規定大会と新国際規定大 会の比較に,有意な差は認められなかった(図 4)。  各大会における全得点の数及び割合を表 4 に示 した。講道館規定大会の「技による得点」は 88 個(28.9%),「罰則による得点」は 216 個(71.1%), 国際規定大会の「技による得点」は 97 個(37.7%), 「罰則による得点」は 160 個(62.3%),新国際規 定大会の「技による得点」は 46 個(31.5%),「罰 則による得点」は 100 個(68.5%)であった。い 図 4 国際規定大会と新国際規定大会における勝利方法の比較 図 3 講道館規定大会と新国際規定大会における勝利方法の比較 表 3 各大会における勝利方法の数と割合

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ずれの比較においても,有意な差は認められな かった(図 5,図 6)。 Ⅳ 考察  60 年以上の歴史と伝統を誇る全日本選手権は, 1951 年より講道館規定で実施されてきたが,国 際化の影響を受けて 2011 年より国際規定が導入 された。国際規定が導入されたことで,「旗判定」 及び「待て」の時間は有意に減少し,全日本選手 権における「ダイナミック柔道」の一部促進が三 宅ら10)によって報告されている。しかしながら, この研究では全日本選手権の「ダイナミック柔 道」が明らかに促進したことを示すには至ってい ない。なぜなら「ダイナミック柔道」の指標とさ れる「一本勝ち」や「技による得点」の有意な増 加が確認されていないからである。新国際規定は, 積極的な試合が展開させるように「組む,攻め る,場外に出ない」をポイントに罰則が厳格化さ れ25),「技による得点」と「罰則による得点」の 区別化などが行われた(表 1)。そのため,2014 図 6 国際規定大会と新国際規定大会における全得点の比較 図 5 講道館規定大会と新国際規定大会における全得点の比較 表 4 各大会における全得点の数と割合

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年の全日本選手権の競技内容は「ダイナミック柔 道」として,より促進していることが推測される。 しかしながら,それを明らかにした研究は行われ ていない。また,体重無差別で行われる全日本選 手権に,国際規定を適用し続けることを検討する 上で,全日本選手権の競技内容の分析は継続的に 行っていく必要があるとされる10)。そこで本研究 では,新国際規定が全日本選手権の「ダイナミッ ク柔道」の促進に寄与したかどうかを明らかにす ることを目的として,講道館規定大会と新国際規 定大会,並びに国際規定大会と新国際規定大会に 分けて比較し,「ダイナミック柔道」の観点から 検討した結果,次のような知見が得られた。  勝利内容では,講道館規定大会と比べて新国際 規定大会の「一本勝ち」は有意に増加し,「優勢 勝ち」は有意に減少していた(図 1,P < 0.05)。 「一本勝ち」の割合は「ダイナミック柔道」の指 標とされ,その「一本勝ち」に有意な増加が認め られたことから,勝利内容において「ダイナミッ ク柔道」の促進が確認されたといえる。新国際規 定大会における「一本勝ち」の割合は 63.4% で あったが,これは「一本勝ち」のピークといわれ た 2001 年の世界選手権(男子)の 65.0%(「合せ 技」「総合勝ち」を含めない)13),「ダイナミック 柔道」の完成形として称賛されたアテネオリン ピック(男子)の 60.5%(「合せ技」「総合勝ち」 を含めない)11)12)14)と比べても遜色ない割合であ り,近年の全日本選手権においては特に高値とい える。この「一本勝ち」の増加の要因は,新国際 規定による罰則の厳格化の影響,また「寝技」の 進展の申し合わせの影響,「抑え込み」時間の短 縮にあると考える。新国際規定には「両手を使っ て相手に組ませないようにする行為36)」や「両手 を使って相手の組み手を切る36)」など,これまで にはなかった罰則が追加され,少しでも逃げたり 守ったりすると厳格に「指導」が与えられるよう になった25)。実際,講道館規定大会と国際規定大 会では認められなかった「指導 4」による「反則 負け」が,新国際規定大会では 3 試合確認された ことからも,新国際規定における罰則の厳格化の 影響は大きいといえる。また,新国際規定では審 判員に対する申し合わせとして「主審は,もう少 し進展すれば『抑え込み』になるか,『絞技』や 『関節技』が決まる可能性がある場合には通常よ り長く状況を見ることが大切である。『待て』が 早すぎる傾向にあるので注意すること38)」と「寝 技」の進展について言及している。さらには,得 点獲得に至るまでの「抑え込み」時間が,講道館 規定と比べて各 10 秒,国際規定と比べて各 5 秒 短縮されている(表 1)。本研究より確認された「固 技」の決着による試合数は,講道館規定大会及び 国際規定大会では 1 大会あたり 3.7 試合であった のに対して,新国際規定大会は 11 試合に及んだ。 新国際規定の申し合わせによって審判員が「寝技」 を長く見るようになり,さらには「抑え込み」時 間が短縮されたことが,「固技」による決着の増 加に影響したと考えられる。このような新国際規 定の影響を受けて「一本勝ち」は増加し,相対的 に「優勢勝ち」は減少したものと推察される。  勝利方法では,講道館規定大会と比べて新国際 規定大会の「技による得点」は有意に増加し,「旗 判定」は有意に減少していた(図 2,P < 0.05)。「技 による得点」の増加や「旗判定」の減少は「ダイ ナミック柔道」の指標とされることから,勝利方 法において「ダイナミック柔道」の促進が確認さ れたといえる。「技による得点」の増加の要因は, 新国際規定の影響にあると考える。IJF は罰則を 上手に扱うことで「技による得点」による決着, いわゆる「ダイナミック柔道」を促進しようとし ている。新国際規定では「組む,攻める,場外に 出ない」ことをポイントとし25),ネガティブな行 為に対して厳格に罰則が与えられるようになっ た39)。そのため,反対に「罰則による得点」の増 加が危惧されたが1)25),増加が確認されたのは「罰 則による得点」ではなく「技による得点」であった。 罰則を厳格に与えた影響が「技による得点」の増 加に寄与したものと推察される。また,「旗判定」 の減少の要因は,先行研究10)においても指摘さ れているように,審判規定の違いによる「教育的 指導注3)」の有無にあると考える。さらには,新 国際規定による罰則の厳格化の影響に加え「罰則 は安易に双方に与えるのではなく片方に与える見

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極めが必要38)」とされた審判方針の影響も考えら れる。いずれにせよ,勝利方法において「罰則に よる得点」に変化はなく「旗判定」が有意に減少 し「技による得点」が有意に増加した結果は,新 国際規定が IJF の狙い通りに,つまり「ダイナミッ ク柔道」が促進されたことを示唆するものである。  全得点では,講道館規定大会と新国際規定大会, 並びに国際規定大会と新国際規定大会の間に有意 な差は認められなかった(図 5,6)。しかし,割 合ではなく数に焦点を当てると,新国際規定の影 響が見受けられる(表 3)。講道館規定大会及び 国際規定大会は 3 大会をまとめたものであるのに 対して,新国際規定大会は 2014 年の 1 大会のみ である。仮に新国際規定大会の「技による得点」 「罰則による得点」の数をそれぞれ 3 倍した場合, 講道館規定大会及び国際規定大会の「技による得 点」「罰則による得点」を上回る数値となる。割 合に変化は見られないが,数に関しては明らかな 増加がうかがえ,2014 年大会では「技による得点」 「罰則による得点」の両者の数は増加したといえ る。勝利方法のみならず,全得点における「技に よる得点」も「ダイナミック柔道」の指標と考え られ,その「技による得点」の数が増加している ことからも「ダイナミック柔道」の促進がうかが える。さらには,全得点における「技による得点」 「罰則による得点」の数が増加したにも関わらず, 勝利方法の「罰則による得点」に変化はなく「技 による得点」のみが有意に増加していた。この結 果は,全日本選手権の競技内容が「ダイナミック 柔道」として促進したことを示唆している。  本研究より,講道館規定大会と新国際規定大会 の比較において「一本勝ち」及び勝利方法におけ る「技による得点」の有意な増加,「優勢勝ち」 及び「旗判定」の有意な減少が確認された。また, 国際規定大会と新国際規定大会との比較に有意な 差は認められなかったものの同様の傾向が示され た。これらの結果は,全日本選手権の競技内容が 「ダイナミック柔道」として促進したことを示唆 するものである。したがって,IJF によって改正 された審判規定を適用することで,全日本選手権 の競技内容は「ダイナミック柔道」として,より 促進していく可能性がある。しかしながら,冒頭 で述べたように,階級別の試合を想定して施行し た国際規定を,体重無差別で行われる全日本選手 権で適用し続けるには,十分に検討する必要があ るだろう。新国際規定は,体格の劣る選手にとっ て非常に厳しい審判規定であることが,多くの専 門家によって指摘されている4)5)26)27)35)。日本の柔 道家は,全日本選手権の醍醐味を体重無差別の試 合方式に感じているため30),その醍醐味が失われ ることがないよう,適用するべき審判規定につい て追及していかなければならない。予てより懸念 されていた過度な審判規定の改正と柔道の伝統性 との衝突が起きないよう14)17),今後も継続して全 日本選手権の競技内容を分析し,全日本選手権と いう大会の位置づけを明確にしていく必要があ る。  本研究は,全日本選手権における講道館規定大 会(2008 年から 2010 年の 3 大会)及び国際規定 大会(2011 年から 2013 年の 3 大会),新国際規 定大会(2014 年の 1 大会)を比較検討したもの である。本来であれば,講道館規定大会及び国際 規定大会と同様に,新国際規定大会においても 2015 年と 2016 年の大会を分析し,3 大会まとめ て比較するべきであるが,現時点ではまだ大会が 行われていないため不可能である。したがって, 今後は 2015 年と 2016 年の大会の競技内容を分析 し,本研究に加えて検証する必要がある。本研究 によって,新国際規定は全日本選手権の競技内容 を「ダイナミック柔道」として促進させたことが 確認できたため,2015 年と 2016 年の大会におい ても同様の傾向を示す可能性は高いだろう。本研 究が日本柔道の更なる普及・発展のための一資料 になれば幸いである。 Ⅴ まとめ  本研究では,全日本選手権の競技内容の分析を 行い,新国際規定が「ダイナミック柔道」の促進 に寄与したかどうかを明らかにすることを目的 とした。そして,講道館規定大会(2008 年から 2010 年)と国際規定大会(2011 年から 2013 年), 並びに新国際規定大会(2014 年)の比較を行い,

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その差について検討した。主な結果は以下の通り である。  勝利内容では,講道館規定大会よりも新国際規 定大会において「一本勝ち」が有意に増加し「優 勢勝ち」が有意に減少していた。勝利方法におい ては,講道館規定大会よりも新国際規定大会にお いて「技による得点」が有意に増加し「旗判定」 が有意に減少していた。全得点では,有意な差は 認められなかったが数の増加がうかがえた。ま た,有意な差は認められなかったが,国際規定大 会と新国際規定大会の間にも同様の傾向が確認さ れた。  以上の結果から,新国際規定が全日本選手権に おける「一本勝ち」と勝利方法の「技による得点」 を増加させ,「優勢勝ち」と「旗判定」を減少さ せたことが確認された。これらの結果は,新国際 規定が全日本選手権における「ダイナミック柔道」 の促進に寄与したことを示唆するものである。 1)2014 年の全日本選手権は新国際規定を適用 したが,審判員の人数は従来通り 3 人であるこ と,「指導」差が 2 以上あった場合に少ない選 手を「僅差」による優勢勝ちとしたこと,ポイ ント,「指導」共に同等の場合及び,「指導」差 が 1 の場合は,旗による「判定」で勝敗を決定 し,延長戦は行わないこと,試合時間は 6 分間 であることなど,全日本選手権独自の審判規定 が用いられた39) 2)「総合勝ち」とは,試合者の一方が「技あり」 を取っていて,その後に相手が「指導」を 3 回 受けたときか,試合者の一方が,既に「指導」 を 3 回受けていて,その後に相手の試合者が「技 あり」を取ったときに与えられる37).しかしな がら,新国際規定大会では「技による得点」と「罰 則による得点」が区別化されたため「総合勝ち」 はなくなった. 3)「教育的指導」とは「積極的戦意に欠け,攻 撃しないこと(約 30 秒間)」に対する罰則に対 して最初に与えられるものである6).「教育的 指導」は,国際規定及び新国際規定には存在し ない. 引用文献 1)遠藤純男:全日本柔道選手権大会への期待, 柔道,85(5),29-31,2014. 2)藤猪省太:全日本柔道選手権大会への期待, 柔道,82(5),26,2011. 3)古賀稔彦:全日本柔道選手権大会への期待, 柔道,85(5),33-34,2014. 4)金野潤:平成 26 年全日本柔道選手権大会予 想座談会,柔道,85(5),16-28,2014. 5)増地克之:全日本柔道選手権大会熱戦を振り 返って,柔道,85(6),35-36,2014. 6)松井勲:講道館柔道試合審判規定,詳解柔 道のルールと審判法 2004 年度版,大修館書店, 30-108,初版,2004. 7)松井紳一郎・青木豊次・高田十志和:体格差 が勝敗に及ぼす影響―全日本柔道選手権大会昭 和 55 年から平成元年までの試合結果の分析―, 武道学研究,23(3),55-62,1991. 8)松井紳一郎・尾形和男・橋本年一・高田十志和: 体格差が勝敗に及ぼす影響(2)―一流選手の 形態差と試合内容の関係―,武道学研究,25(1), 66-74,1992. 9)松本芳三・竹内善徳・中村良三:全日本柔道 全主権大会における競技内容の分析,講道館柔 道科学研究会紀要,5,75-82,1978. 10)三宅恵介・松井崇・佐藤武尊・横山喬之・竹 澤稔裕・川端健司・秋本啓之:全日本柔道選手 権大会における国際柔道連盟試合審判規定の 導入が競技内容に及ぼす影響:ダイナミック 柔道の観点から,武道学研究,47(1),19-27, 2014. 11)中村勇:データで読むロンドン五輪,近代柔 道,34(11),42-45,2012. 12)中村勇:データで読む北京五輪,近代柔道, 30(11),48-51,2008. 13)中村勇:データで読むリオデジャネイロ世界 選手権,近代柔道,29(11),48-51,2007. 14)中村勇:国際柔道の現在,ジュニア選手育

(11)

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参照

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