• 検索結果がありません。

新世代環境改善ディーゼル燃料技術に関する研究開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "新世代環境改善ディーゼル燃料技術に関する研究開発"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

[M.4.1.2] 新世代環境改善ディーゼル燃

料技術に関する研究開発

(新世代軽油グループ)   〇玉之内光男 小谷 泰弘 辻本 幸一 仙北屋茂夫 池澤  広 高橋 信行 小澤 義久 加賀見正行 三角 明裕 黒河 敦夫 足立 和秀 小川 和夫 金子  弘 藤巻  篤 原  浩昭 山平 茂美 原  幹夫 御園 勝博 木本 英治 面田 内記 小島 道夫 近間 謙一 赤祖父謙一 鈴木  繁 甲田  勉 藤井 隆人 高田 智至 及川 真史 末冨 俊彦 三田 哲生 新津 耕一 鈴木 昭悟 服部  明

1. 研究開発の目的

 大気環境改善のために自動車排出ガス規制は順次強化されてきたものの、大都市部での 大気環境は依然として改善されていない。ちなみに、平成 12 年 1 月の尼崎公害訴訟判決 や東京都のディーゼル車ノー作戦等、ディーゼル車に対する一層の排出ガス低減の必要性 が高まっている。そのため、平成 12 年 11 月の中央環境審議会の第四次答申において、新 長期規制の前倒し(2007 年から 2005 年へ)や連続再生式 DPF 及び NOx 還元触媒の技術 導入を促進するために、2004 年末までの 50ppm 硫黄軽油の供給等が提言された。  このような社会状況の変化に対応し、大気環境改善のための適正な軽油品質性状を明ら かにする目的で、軽油品質が排出ガスに及ぼす影響等に関するデータを蓄積した。

2. 研究開発の内容

 上述の目的を達成するために、新型ディーゼル車に対する燃料性状影響検討、後処理技 術による排ガス改善効果と燃料性状の影響検討、未規制有害物質の分析法検討及び低硫黄 化に伴う品質課題検討等を実施した。  新型ディーゼル車に対する燃料性状影響検討では、世界初の DPF 装着ディーゼル車 (EuroⅢ規制適合)の排ガス性能、DPF 再生挙動、燃料性状影響等を評価した。また、 長期規制適合車への燃料性状影響も検討した。さらに、燃料性状の噴霧や噴射率等への影 響検討を実施した。  後処理技術による検討においては、既販車に DPF を装着し、DPF 前後の燃料性状(硫 黄分、T90、芳香族分、多環芳香族分)の影響を検討すると共に、大型車両を対象に連続 再生式 DPF の PM 低減効果とフリート試験による DPF の再生に関する検討を実施した。 さらに DPF の再生温度低下に効果があるとされる助燃剤の評価検討も実施した。  未規制有害物質の分析法検討では、DPF 装着時における PM 組成の分析精度向上検討、 PM 粒子径測定法検討、ニトロ多環芳香族分析法検討、ディーゼル個別炭化水素類分析法 検討等を実施した。この他、排ガス中のダイオキシン量に関するデータ蓄積を行った。

2002M4.1.2

(2)

 低硫黄化に伴う品質課題検討では、低温時燃料フィルタ閉塞性や色相の排出ガスへの影 響等の検討を実施した。

3.研究開発の結果

3.1 新型ディーゼル車に対する燃料性状影響検討 3.1.1 最新 DPF 装着ディーゼル車による検討  世界初の DPF 装着ディーゼル車(欧州 EuroⅢ規制適合)が平成 12 年 5 月に欧州で発 売された。同車にはコモンレール高圧噴射ポンプ、酸化触媒、炭化珪素材 DPF 及び助燃 剤(セリウム系)が採用されており、これらの組合せにより DPF の再生が可能である。 表 3.1-1 に諸元を図 3.1-1 に同車の再生システムを示す。  表 3.1-1 DPF 装着ディーゼル車諸元 排気量 2.2L 圧縮比 18.0 最高出力 98kW/4000rpm 最大トルク 314Nm/2000rpm 燃料噴射方式 コモンレール高圧噴射 給気方式 ターボインタークーラ 酸化触媒 有 EGR 有 排出ガスレベル EuroⅢ規制適合 図 3.1-1 DPF 再生システム  本 DPF 装着ディーゼル車(EuroⅢ規制適合)の DPF 再生システムは、コモンレール高 圧噴射ポンプによるポストインジェクション及び酸化触媒により排出ガス温度を上昇させ、 また助燃剤により PM 燃焼温度を低下させることにより DPF の連続再生を達成している。  初期排出ガスを表 3.1-2(EU モード試験)と表 3.1-3(10・15 モード試験)に示す。供 試車の排出ガスレベルは EuroⅢ規制値を満足するとともに、PM 排出量は EuroⅣ規制値 の 10 分の 1 程度と非常に低い値を示した。 表 3.1-2 EU モード試験測定値 (g/km) 走行距離 km 供試車 0.28 0.06 0.40 0.46 0.003 500 EuroⅢ規制 0.64 - 0.50 0.56 0.05 -EuroⅣ規制 0.50 - 0.25 0.30 0.025 -THC+NOx PM ECE+EUDCモード CO THC NOx  日本の 10・15 モード試験結果では、長期規制及び新短期規制値と比較し PM、CO 及び THC は満足しているものの、NOx は高い値となっている。  DPF 再生時の挙動について、シャシ上での長距離走行試験結果例を図 3.1-2 に示す。再 生前と再生時の各部の温度プロファイルから、再生時は通常時に比べ、酸化触媒入口温度 が約 230℃に対し 400℃と 170℃上昇し、DPF 入口温度が約 270℃に対し 600℃と 330℃

(3)

上昇した。この様に、メーカの技術資料通りに排出ガス温度が上昇し、DPF が再生された ことを確認した。この他、DPF 再生は 10・15 モード試験や路上走行においても確認され、 再生の間隔は約 500∼700km 毎であった。 表 3.1-3 10・15 モード試験測定値 (g/km) 走行距離 km 供試車 0.01 0.004 0.76 - 0.002 240 長期規制 2.10 0.40 0.40 - 0.08 -新短期規制 0.63 0.12 0.28 - 0.05 -PM CO THC NOx THC+NOx 10・15モード 再生時(5020km) 0 100 200 300 400 500 600 700 温 度(℃) 0 100 200 300 車速 (k m /h) CAT入口温 DPF入口温 DPF出口温 車速 再生直前(5000km) 0 100 200 300 400 500 600 700 温度 ( ℃ ) 0 100 200 300 車速 (k m /h) CAT入口温 DPF入口温 DPF出口温 車速 再生時の温度 ・CAT入口温度:    約230℃→400℃(170℃上昇) ・DPF入口温度:  約270℃→600℃(330℃上昇) 図 3.1-2 DPF 再生前と再生中の排気温度(シャシ長距離走行試験)  燃料性状(硫黄分、T90、芳香族分)が排出ガスに及ぼす影響を検討し、HC、CO、PM、 NOx排出量に影響しないことを確認した。これは、酸化触媒と DPF によりこれらの排出 が殆ど低減されことによるものである。一例として、10・15 モード試験における燃料性状 の PM への影響結果を図 3.1-3 に示す。PM は何れも 0.02g/km 未満と低く、燃料性状の影 響については、測定値のバラツキの範囲であることから、顕著な影響はないことが明かと なった。 PM(10.15 mode) 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08

SH SL T90H T90L TAH TAL PAH3

試験燃料 PM( g/k m ) 新長期想定レベル 長期規制値 図 3.1-3 燃料性状の PM への影響(10・15 モード試験)

(4)

3.2 後処理技術による排ガス改善効果と燃料性状の影響検討 3.2.1 既販車における DPF 前後の排出ガスに及ぼす燃料性状影響検討  既販車の黒煙、PM の大幅低減を図るため各種 DPF の装着が検討されているが、本研究 では既販車に DPF を装着した場合の DPF 前後の燃料性状影響の検討を行なった。対象と して元年規制、短期規制適合の既販車・エンジンにバッチ再生式 DPF あるいは連続再生 式 DPF を装着し、PM 低減効果と燃料性状の影響を検討した。また、連続再生式 DPF に ついてはタンクローリ2台によるフリート試験を実施し、路上走行時の排気温度、DPF 前 後の差圧等データを収集した。表 3.2-1 に既販車対応 DPF 試験マトリックスを示す。 表 3.2-1 既販車対応 DPF 試験マトリックス バッチ式DPF 連続再生式DPF 車両A: TC,IDI 元年規制適合乗用車 車両B: NA,IDI 短期規制適合トラック 車両C: NA,IDI 短期規制適合小型トラック エンジンG: NA,IDI 短期規制適合トラック エンジンH: NA,IDI 平成6年規制適合トラック 車両I: NA,IDI 平成4年規制適合トラック 車両J: NA,IDI 平成8年規制適合トラック 車 両 試 験 エ ン ジ ン 試 験 試験車/エンジン フ リー ト 試 験 - 〇 〇 - 〇 - 〇 - 〇 - - 〇 - 〇 試験燃料 ・硫黄分 ・T90 ・芳香族分 ・多環芳香族分 下記に示す燃料性状の 影響を検討 市販軽油使用 (硫黄分500ppm以下)  燃料性状(硫黄分、T90、全芳香族分、多環芳香族分)の影響を把握するために、表 3.2-2 に示す9種類の燃料を調製した。 表 3.2-2 供試燃料性状(既販車 DPF 試験)

SH SL T90H T90L TAH TAL PAH1 PAH2 PAH3 密度 @15℃, g/cm3 0.8314 0.8321 0.8314 0.8004 0.8352 0.8277 0.8339 0.8416 0.8421 硫黄分 mass ppm 430 46 430 461 472 425 517 504 528 蒸留 T90 ℃ 333.5 334.0 333.5 279.5 341.5 336.5 332.5 333.5 331.0 芳香族分 @HPLC vol% 全芳香族 17.4 17.4 17.4 17.1 23.8 10.4 21.5 22.7 23.5 1環芳香族 15.9 16.0 15.9 16.6 20.8 9.1 20.3 16.3 15.5 2環芳香族 1.5 1.4 1.5 0.5 2.5 1.3 1.2 6.4 5.3 3環芳香族+ 0 0 0 0 0.5 0 0 0 2.7 全芳香族分 多環芳香族分 燃料因子 燃料コード 硫黄分 T90 一例として、車両 A、車両 C における DPF 前の燃料性状による PM への影響結果を図 3.2-1 に示す。PM は T90 の低下により最大で 30%近く減少すると共に、全芳香族分を 10% 程度減少させることで 20%近く減少している。ただし、車両・エンジンによりその程度は 異なり、必ずしも一定の効果を生じない結果となった。

(5)

 車両 A:元年規制適合乗用車   車両 C:短期規制適合トラック -30 -20 -10 0 10 430→46 S 334→280 T90 20.3→9.1 1R 6.4→1.2 2R 2.7→0.0 3R PM変化率、%   -30 -20 -10 0 10 430→46 S 334→280 T90 20.3→9.1 1R 6.4→1.2 2R 2.7→0.0 3R PM 変化率、% 図 3.2-1 DPF 前の燃料性状による PM への影響  燃料性状の影響が大きい車両 A の DPF 装着後の PM 低減効果と燃料性状の影響を図 3.2-2 に示す。DPF 前後の PM は 90%以上低減し、燃料性状の影響を殆ど受けない結果と なっている。他の車両・エンジンにおいても同様の結果となっている。PM 低減には DPF 装着が効果的で、燃料性状の改善に比べ高い効果を示すことが確認できた。 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 S500 SH S50 SL T335 T90H T280 T90L Base TAH A10 TAL 1R PAH1 2R PAH2 3R PAH3 PM ,g/km W/O DPF W/ DPF 図 3.2-2 DPF 装着による PM 低減効果(車両 A の結果) 3.2.2 酸化触媒担持 DPF と助燃剤による DPF 再生効果の検討  DPF 実用化のためには、排気温度の低 い市街地走行でもその再生が可能である ことが必要である。本研究では、酸化触 媒担持 DPF や助燃剤による DPF 再生効 果を小型ディーゼルエンジンを用いて検 討した。  試験に供した DPF は、基材が炭化珪 素(SiC)、担体は SiO2及び TiO2、担持 貴金属が Pt のもの、助燃剤は既に海外 で実績のあるセリウム系、鉄系、鉄/ス トロンチウム系を試験に供した。  定 常 試 験 に お け る 結 果 を 図 3.2-3 (DPF のみ)、図 3.2-4(酸化触媒担持 DPF)及び図 3.2-5(酸化触媒担持 DPF+助燃剤)に示す。 0 100 200 300 400 500 600 0 200 400 600 800 時間 sec 排ガス温度 ℃ 0 5 10 15 20 25 30 35 DPF 差圧  kPa DPF入口 ℃ DPF出口 ℃ エンジンOUT ℃ DPF差圧 kPa エンジンOUT DPF入口&出口 DPF差圧 50 60 80 100 車速 km/h 図 3.2-3 排ガス温度と DPF 差圧 (DPF のみ)

(6)

 DPF のみの場合、各運転条件とも DPF 差圧が上昇しているが、酸化触媒担持 DPF の 場合は 100km/h 走行条件で低下した。さらに、助燃剤を添加した場合には、100km/h で の DPF 差圧低下が顕著になるとともに、80km/h での DPF 差圧増加は認められず、組合 せによる効果を確認した。 3.2.3 NOx 触媒での検討  エンジン技術と触媒及び燃料品質との組合わせが重要になっていることから、本研究で は NOx 触媒と軽油品質との適正化を行うために、NOx 浄化性能や燃費などの基礎的なデ ータの蓄積を図った。アクティブ NOx 触媒と吸蔵 NOx 触媒を用いて検討を行ったが、本 報告ではアクティブ NOx 触媒の結果について報告する。  実験には長期規制適合の 2t クラストラック用エンジンの中から、最も汎用性の高いと考 えられる4L、直噴ディーゼルエンジンを用いた。アクティブ NOx 触媒は触媒メーカから 調達し、触媒サイズや触媒種はメーカ推奨の仕様のものを用いた。なお、供試触媒の活性 温度は 350∼550℃のため、D13 モード中のこれに該当する運転条件で評価を行った。還 元剤は供試燃料と同一のものを用いた。 図 3.2-6 THC/NOx 比の NOx 浄化率への影響 0 100 200 300 400 500 600 0 200 400 600 800 車速 km/h 排ガス 温 度  ℃ 0 5 10 15 20 25 30 35 DP F 差圧   kP a DPF入口 ℃ DPF出口温度 ℃ エンジンOUT ℃ DPF差圧 kPa DPF差圧 エンジンOUT DPF入口&出口    50       60       80      100   0 100 200 300 400 500 600 0 200 400 600 800 車速 km/h 排ガ ス 温 度  ℃ 0 5 10 15 20 25 30 35 DP F 差圧   kP a DPF入口 ℃ DPF出口 ℃ エンジンOUT ℃ DPF差圧 kPa 50 60 80 100 エンジンOUT DPF入口&出口 DPF差圧 図 3.2-4 排ガス温度と DPF 差圧     図 3.2-5 排ガス温度と DPF 差圧    (酸化触媒担持 DPF)      (酸化触媒担持 DPF+助燃剤) 0 10 20 30 40 50 5 7.5 10 THC /N OX比 NO X浄化 率 % ステップNo8 ステップNo9 ステップNo10 ステップNo11 ステップNo12 0 10 20 30 40 50 8 9 10 11 12 D13モード・StepNo D13モード・StepNo D13モード・StepNo D13モード・StepNo NO X 浄化 率  %

(7)

 還元剤供給量は、THC/NOx 比で 5、7.5、10 の3水準で行った。その結果、NOx 浄化率 は THC/NOx 比を増加させるにしたがって、ほぼ直線的に増加し、最大で約 42%の浄化率 が得られた。  しかし、還元剤供給量の増加に伴い図 3.2-7 に示すように燃費は悪化した。なお、THC/NOx 比5の場合で、D13 モード試験における NOx 排出量と燃費悪化を推算すると、NOx 排出量は 5.12g/kWh から 4.0g/kWh(約 22%)まで低減 されること、燃費は 2.8%悪化することが分かっ た。従って、アクティブ NOx 触媒の使用にあ たっては、NOx 浄化率と燃費のトレードオフを 考慮する必要がある。 3.3 未規制有害物質の分析法検討  ディーゼル排出ガス中の未規制物質については、健康影響の観点から将来規制に結びつ くことも考えられるため、分析法の検討及びデータ蓄積を図る必要がある。本研究では低 濃度 PM の測定精度向上検討、多環芳香族分析精度向上、ニトロ多環芳香族分析精度向上 検討、PM 粒子径測定法検討、個別炭化水素類の分析法検討等を行なった。本報では、低 濃度 PM の測定精度向上検討と PM 粒子径測定法検討について述べる。 3.3.1 低濃度 PM 組成の測定精度向上検討  DPF 装着時に PM 組成分析を行なった。SOOT の算出は PM 重量から SOF 重量、サル フェート重量及び水分量を差し引いて計算によって求められるが、SOOT が負の値になる 現象が生じた。そこで、その原因解明を試みた。その結果、SOF 抽出時にろ紙自身が平均 で約 90μg(ろ紙基準で 0.047wt%)減量するため、SOF 量を過分に見積もってしまうこ と、さらに連続再生式 DPF 装着時では、従来の水分量の計算法(サルフェート量の 1.3 倍)では実際の水分量よりも過分に見積もってしまうことが分かった(図 3.3-1 参照)。 y ≒1.3x y = 0.356x R2 = 0.93 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 サルフェート量(μg) 水分量( μg ) DPF DPFDPF DPFなしなしなしなし 連続再生式 連続再生式 連続再生式 連続再生式DPFDPFDPF装着時DPF装着時装着時装着時       図 3.3-1 サルフェート量と水分量の関係 0 2 4 6 8 10 12 14 8 9 10 11 12 D13モード・Step No 燃費増加率  %

 THC/NOX:5  THC/NOX:7.5  THC/NOX:10

(8)

 これらの知見に基づいて、下記のように水分量の計算に用いる係数の見直しの提案を行った。          [水分量]= 0.356×[サルフェート量]      注)連続再生式 DPF のみで実施  その結果、SOF 抽出時のろ紙減量による SOF 量の過分な見積もり補正と水分量計算の 係数見直しをすることにより、ほぼ PM 組成の収支が合うように改善された(表 3.3-1 参 照)。 表 3.3-1 補正・再計算結果(連続再生式 DPF) 長期規制エンジン,D-13モード,硫黄分500ppm燃料     PM組成比率(%)        各計測値(μg)

SOF SO4 H2O SOOT PM SOF SO4 H2O SOOT

補正前 47.1 41.5 54.0 -42.7 4801 2263 1994 2592 -2048 47.6 41.0 53.2 -41.8 4927 2344 2018 2623 -2058 補正後 47.1 41.5 14.8 1.8 4801 2013201320132013 1994 710710710710 84 47.6 41.0 14.6 2.0 4927 2091209120912091 2018 718718718718 100 注1)太字;補正SOF量太字;補正SOF量太字;補正SOF量太字;補正SOF量 注2)斜字太字;再計算した水分量斜字太字;再計算した水分量斜字太字;再計算した水分量斜字太字;再計算した水分量 3.3.2 PM 粒子径測定法検討

 ELPI(Electrical Low Pressure Impactor)と SMPS(Scanning Mobility Particle Sizer) 装置を用いてディーゼル排出ガス中の PM 粒子径測定法を検討した。前者は 30nm∼10μ m の粒径測定範囲と過渡モード試験に対応できる特徴を有している。後者は数 nm∼1μm の粒径測定範囲で ELPI より微細な粒径を測 定できるものの過渡モード運転には対応でき ない特徴を有している。  ELPI による D13 モード試験での PM 粒子 径分布の一例を図 3.3-2 に示す。ELPI は 12 の段から構成され、各段で PM 粒子を分級し、 小さい番号の段はより小さな PM 粒子径の濃 度を測定している。図から、3 番目の段(110 ∼170nm)に粒子個数濃度の中央値があり、 運転条件により濃度は様々であることが分か った。しかし、T90 が低く、芳香族分の少な い燃料では若干中央値は小さい粒径の方にあ ることも分かった。  次に、SMPS による D13 モード試験測定 結果を図 3.3-3 に示す。運転条件毎に粒子径 の中央値(約 80nm)及びその粒子濃度は様々 であり、中央値は ELPI より若干小さい粒子 径側にあった。運転条件による排出挙動の特 徴を良く表現できることが確認された。 0 10000000 20000000 30000000 40000000 50000000 60000000 70000000 80000000 90000000 1段 2段 3段 4段 5段 6段 段7 8段 9段 10段 11段 12段 dN / dl o gD p 1モード 2モード 3モード 4モード 5モード 6モード 7モード 8モード 9モード 10モード 11モード 12モード 13モード 図 3.3-2 ELPI による PM 粒子径測定 0.0E+0 5.0E+6 1.0E+7 1.5E+7 2.0E+7 2.5E+7 10 100 1000 Particle Diameter (nm) P a rt ic le C o nc en tr at io n (d N /d lo g D p )/ c m 3 1(idle) 2(40,20) 3(40,40) 4(idle 5(60,20) 6(60,40) 7(80,40) 8(80,60) 9(60,60) 10(60,80) 11(60,95) 12(80,80) 13(60,5) 45sec-scan D13mode 図 3.3-3 SMPS による PM 粒子径測定

(9)

3.4 低硫黄化に伴う品質課題検討  低硫黄化に伴う品質課題検討の中の低温時燃料フィルタ閉塞性検討について報告する。 試験に用いた低硫黄軽油は3種類で、車両は作動限界温度が高い D 車(ハニカムフィルタ 採用)を用いて評価した。表 3.4-1 に現行軽油と低硫黄軽油の比較を示すが、現行軽油は 試験温度−6℃が作動限界温度であった。低硫黄軽油は−7∼−9℃の作動限界温度を示し、 現行軽油より低い作動限界温度であった。また、ヒータ装着した場合には作動限界温度が −10℃(3℃の向上)、フィルタをハニカムからスパイラルに変更した場合に、−8℃(2℃ の向上)となり、自動車技術の改善による効果が大きいことを確認した。 表 3.4-1 低温時燃料フィルタ閉塞性試験結果一覧 車両 燃料 フィルタ ヒータ 試験温度、℃ 判定 作動限界温度、℃ I 現行軽油 スパイラル なし -10 パス -11℃ I 現行軽油 スパイラル なし -12 フェイル D 現行軽油 ハニカム なし -6 パス -6℃で、基準車I D 現行軽油 ハニカム なし -7 フェイル より作動限界温度 D 現行軽油 ハニカム なし -8 フェイル が5℃高い。 D 燃料A ハニカム なし -6 パス -8℃で現行軽油 D 燃料A ハニカム なし -8 パス より2℃性能が良好 D 燃料C ハニカム なし -6 パス -7℃で現行軽油 D 燃料C ハニカム なし -8 フェイル よ若干性能が良好 D 燃料D ハニカム なし -8 パス -9℃で現行軽油 D 燃料D ハニカム なし -10 フェイル より3℃性能が良好 D 現行軽油 スパイラル なし -8 パス 2℃の効果 D 燃料C ハニカム あり -10 パス -10℃で、現行軽油 D 燃料C ハニカム あり -12 フェイル より3℃性能が良好

4.まとめ

 平成 10 年度から平成 13 年度の 4 年間における研究開発成果を以下に示す。 4.1 新型ディーゼル車に対する燃料性状影響検討 4.1.1 最新 DPF 装着ディーゼル車による検討 (1)世界初の DPF 装着ディーゼル車(欧州 EuroⅢ規制適合)の排出ガス性能、DPF 再 生挙動、燃料性状の影響等を検討した。その結果、CO、HC、PM の排出が非常に低 いこと、燃料性状の影響が殆どないことを確認した。 (2)DPF 再生挙動については、走行モードによらず 500∼700km 毎に再生が行われ、そ の際に排気温度が 500℃以上になることや、一時的に HC や CO が増加し、再生終了 後はすぐに排出ガス量が低くなることを確認した。 4.1.2 長期規制適合車による検討 (1)平成 10 年規制適合の車両とエンジンを用いて燃料性状(硫黄分、T90、芳香族分) 排出ガスへの影響を検討した。車両、エンジンにより影響度合いは異なるが、T90 の軽質化と芳香族分の低減により PM と未規制物質の低減が得られた。 4.1.3 燃料噴霧に関する検討 (1)分配型噴射ポンプでは燃料性状の軽質化により噴射開始時期の遅延や噴射期間の間 延び等に影響を与えたが、コモンレール式噴射ポンプでは燃料性状の影響は殆ど認め られなかった。

(10)

4.2 後処理技術による排ガス改善効果と燃料性状の影響検討 4.2.1 既販車における DPF 前後の排出ガスに及ぼす燃料性状影響検討 (1)既販車に DPF を装着した場合、PM は車両によるが約 90%以上低減された。 (2)既販車に対する燃料性状の影響は車両により異なるが、T90 の低下で PM が低減す る傾向が見られた。 (3)連続再生式 DPF を装着した場合、硫黄分 50ppm 燃料では PM が約 90%低減したが、 硫黄分 500ppm 燃料ではサルフェート生成によりむしろ PM は増加する結果となっ た。このことから、このタイプの DPF の使用に際しては硫黄分の低い燃料が必要で ある。 4.2.2 酸化触媒担持 DPF と助燃剤による DPF 再生効果の検討 (1)3種類の金属系助燃剤の DPF 再生補助効果を確認した。 (2)酸化触媒担持 DPF の触媒種の違いによる再生効果を検討し、その効果を確認した。 (3)酸化触媒担持 DPF と助燃剤を組合せて、DPF 再生効果を検討した。定常運転にお いて明確に効果を確認するとともに、実走行モード運転において 200∼250℃の低排 出ガス温度でも DPF 再生の可能性があることが分かった。 4.2.3 NOx 触媒での検討 (1)アクティブ NOx 触媒の検討では、還元剤供給量やエンジン運転条件によるが 20∼ 40%の浄化率が得られた。また、D13 モード試験においては約 22%の浄化率が得ら れた。 (2)吸蔵 NOx 触媒の検討では、触媒 2 種類(Na 系触媒と Ba 系触媒)、燃料2種類(硫 黄分 50ppm と 10ppm)による 125 時間の劣化試験を行った。その結果、硫黄分 10ppm 燃料のほうが 50ppm 燃料よりも NOx 浄化率の低下は小さいこと、Ba 系触媒のほう が Na 系触媒よりも浄化率の低下が小さいことなどが分かった。今回の結果から、現 吸蔵 NOx 触媒の使用に際しては、硫黄分の低いほうが好ましいことが分かった。今 後、耐硫黄性向上のための触媒技術開発が期待される。 4.3 未規制有害物質の分析法検討 4.3.1 低濃度 PM 組成の測定精度向上検討 (1)低濃度 PM 組成測定上の課題を抽出し、SOF 抽出時のろ紙減量や水分量計算に用い る従来の係数が適用できないことを明かにし、その対策を提案した。 4.3.2 PM 粒子径測定法検討 (1)ELPI や SMPS を用いてディーゼル排出ガス中の PM 粒子径測定法を検討した。そ の結果、サンプリング方法やエンジン運転条件等が測定精度に影響することが分かる ともに、SMPS では PM 粒子径の中央値は 80∼100nm にあることが分かった。 4.3.3 ディーゼル排ガス中のダイオキシン濃度に関する検討 (1)環境省にインベントリデータを提供するとともに、極低濃度の分析であり、サンプ ルの採取方法、分析データの解析には細心の注意を払う必要がある等のノウハウの蓄 積ができた。 4.4 低硫黄化に伴う品質課題検討 (1)低硫黄軽油の低温時燃料フィルタ閉塞性を評価し、現行軽油と同等ないしは優れてい ることが分かった。

(11)

(2)低硫黄軽油の色相が排出ガスに影響するかどうか検討し、影響しないことを確認した。  第四次答申では、ディーゼル新長期排出ガス規制の 2005 年(当初 2007 年予定)への前 倒しの提案や規制に対応した自動車技術開発では後処理装置の導入が不可欠で、その技術 導入促進のために 50ppm 低硫黄軽油の供給が必要であると記載された。  さらに、平成 14 年 3 月に提案された第五次答申では、更なる規制値の強化、排出ガス 試験法の見直し、NMHC 規制の導入が示された他、更なる硫黄分低減のための技術開発 促進等も記載された。  このように、排出ガス規制の強化及び達成時期の見直しにより、ディーゼル排出ガス低 減技術開発は緊急を要しているが、その技術開発の方向は依然混沌としている。今後ます ます重要な排出ガス低減技術となってくる後処理装置を含む新エンジン技術及び低硫黄軽 油を早急に入手して、本研究開発で得られた技術力を基礎として、これらの性能評価と燃 料性状の影響度合いを検討していく必要がある。

図 3.1-3 燃料性状の PM への影響(10・15 モード試験)
図 3.2-7 還元剤供給量の燃費への影響

参照

関連したドキュメント

近年の食品産業の発展に伴い、食品の製造加工技術の多様化、流通の広域化が進む中、乳製品等に

添付資料 4.1.1 使用済燃料貯蔵プールの水位低下と遮へい水位に関する評価について 添付資料 4.1.2 「水遮へい厚に対する貯蔵中の使用済燃料からの線量率」の算出について

添付資料 4.1.1 使用済燃料貯蔵プールの水位低下と遮へい水位に関する評価について 添付資料 4.1.2 「水遮へい厚に対する貯蔵中の使用済燃料からの線量率」の算出について

なお、具体的な事項などにつきましては、技術検討会において引き続き検討してまいりま

2 号機の RCIC の直流電源喪失時の挙動に関する課題、 2 号機-1 及び 2 号機-2 について検討を実施した。 (添付資料 2-4 参照). その結果、

添付資料 4.1.1 使用済燃料プールの水位低下と遮蔽水位に関する評価について 添付資料 4.1.2 「水遮蔽厚に対する貯蔵中の使用済燃料からの線量率」の算出について

改善策を検討・実施する。また、改善策を社内マニュアルに反映する 実施済

格納容器内温度 毎時 6時間 65℃以下. 原⼦炉への注⽔量 毎時