第 549 号 平成二十五年九月一日発行(毎月一回一日発行)五四九号(第四十七巻九号)
第
549
号
平成 25 年 9 月1日発行(毎月1回発行) ISSN 1343−6074マグロ 漁船から世界の食卓まで
-世界的視野でみる製品・貿易流通・市場経済-
三 宅 眞
農学博士
特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構
◇ … 政 府 は 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 に つ い て 検 討 を 始 め て い る。 安 倍 政 権 の 悲 願 で も あ り、 何 と か ま と め た い と い う 強 い 意 思 が あ る。 し か し、 実 現 す る に は 大 き な 壁 が あ り、 簡 単 に は い か な い。 一 つ は 憲 法 解 釈 の 変 更 に 慎 重 な 内 閣 法 制 局 の 説 得 で あ る。 二 つ は 与 党 公 明 党 の 意 向 で あ る。 平 和 の 党 を 売 り 物 に し て い る だ け に 解 釈 変 更 に は 抵 抗 感 が 強 い。 三 つ 目 は 周 辺 諸 国 が な ん と い う か。 中 国 や 韓 国 は こ う し た 動 き を 「右傾化」だとみている。 ◇ … よ く 話 題 に な る 個 別 的 自 衛 権 と は 自 国 が 他 国 か ら 攻 撃 を 受 け た 場 合、 そ れ と 対 峙 し 排 除 す る こ と を 指 す。 集 団 的 自 衛 権 と は、 た と え ば A 国 が B 国 か ら 武 力 攻 撃 を 仕 掛 け ら れ た 場 合、 C 国 が A 国 の た め に 武 力 行 使 し、 B 国 の 軍 隊 を 排 除 す る こ と だ。 こ の 二 つ の 権 利 は 国 家 が 持 つ 当 然 の 権 利 で あ る。 し か し、 政 府 は 集 団 的 自 衛 権 に つ い て「 国 際 法 上 は 持 っ て い る が、 憲 法 上 は 行 使 で き な い 」 と い う 見 解。 憲 法 九 条 の 制 約 か ら 自 衛 権 の 行 使 は 必 要 最 小 限 度 の 範 囲 に と ど ま る べ き で あ る と 解 し、 集 団 的 自 衛 権 はその範囲を超えると解している。 ◇ … た と え ば、 護 衛 艦 か ら 給 油 中 の 米 軍 艦 が 敵 の 砲 撃 を 受 け た 場 合、 護 衛 艦 は 米 軍 艦 を 見 捨 て て 退 避 し な く て は い け な い。 軍 事 同 盟 国 と し て 現 実 的 に 許 さ れ る こ と だ ろ う か。 周 辺 事 態 に 対 し て 自 衛 隊 が 米 軍 に 物 質 供 与 な ど 後 方 支 援 を 行 う。 こ れ も 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 と い う 見 方 も あ る。 そ れ 故、 物 資 か ら 武 器、 弾 薬 を 除 き、 辻 褄 を 合 わ せ 知 恵 を し ぼ る。 湾 岸 戦 争 が 終 っ た と き、 ク エ ー ト 政 府 は ワ シ ン ト ン ポ ス ト 紙 に「 米 国 と 世 界 の 国 々 に あ り が と う 」 と 題 す 全 面 広 告 を 出 し た。 こ の リ ス ト か ら 日 本 は 外 さ れ て い た。 P K O 協 力 法 で 海 外 に 派 遣 さ れ て も 武 器 使 用 の 制 限 で 威 嚇 射撃も出来ない始末だった。 ◇ … 防 衛 白 書 で 主 要 国 の 国 防 費 を み る と 米 国、 英 国 に 次 ぐ 第 三 位。 金 額 だ け 見 れ ば 軍 事 大 国 で あ る。 し か し、 現 在 の 憲 法 解 釈 で は 武 力 攻 撃 が な け れ ば 自 衛 権 は 行 使 で き な い。 た と え ば 偽 装 漁 民 に よ る 離 島 占 拠、 戦 乱 の 中 の 在 外 法 人 の 救 出 な ど ど う す る か。 抱え込む問題は多い。 (K) マ グ ロ ほ ど 広 範 囲 に 回 遊 す る 魚 種 は 少 な い。 ま た 各 国 が 漁 獲 の 対 象 と し て い る 魚 種 だ け に 国 際 性 は 高 い。 そ れ だ け に 資 源 へ の 影 響 が 大 き く、 最 近 で は 種 類 に よ っ て は、 過 去 最 低 の 資 源 水 準 だ と い わ れ る。 漁 獲 規 制 を 強 め よ う と い う 動 き が 進 ん で い る。 中 西 部 太 平 洋 ま ぐ ろ 類 委 員 会 で も 漁 獲 量 を 十 五 % 削 減 す る こ と で 大 筋 合 意 を 得 て い る。 も ち ろ ん 最 大 の 消 費 国 は 日 本 で、 マ グ ロ 漁 獲 規 制 は 日 本 の 食 卓 を 脅 か す こ と に な る。 詳 細 な 資 料 に 基 づ く 執 筆 で 筆 者 に 心 か ら 感 謝 申 し 上 げ ま す 。 「水産振興」 第五四九号 平成二十五年九月一日発行 (非 売 品) 井 上 恒 夫 編集兼 発行人 発行所 〒 東京都中央区豊海町五番一号 豊海センタービル七階 一般財団法人 東京水産振興会 印刷所 ㈱連合印刷センター 電 話 ( 03) 三 五 三 三 ︱ 八 一 一 一 F A X ( 03) 三 五 三 三 ︱ 八 一 一 六 (本稿記事の無断転載を禁じます) ご意見・ご感想をホームページよりお寄せ下さい。 URL http://www.suisan-shinkou.or.jp/ 「水産振興」発刊の趣旨 日 本 漁 業 は、 沿 岸、 沖 合、 そ し て 遠 洋 の 漁 業 と い わ れ る が、 わ れ わ れ は、 そ れ ぞ れ が 調 和 の と れ た 振 興 が あ る こ と を 期 待 し て お る の で、 そ の 為 に は、 そ れ ぞ れ の 個 別 的 分 析、 乃 至 振 興 施 策 の 必 要 性 を、 痛 感 す る も の で あ る。 坊 間 に は、 あ ま り に も そ れ ぞ れ を 代 表 す る、 い わ ゆ る 利 益 代 表 的 見 解 が 横 行 し す ぎ る 嫌 い が あ る の で あ る。 わ れ わ れ は、 わ が 国 民 経 済 の な か に お け る 日 本 漁 業 を、 近 代 産 業 と し て、 よ り 発 展 振 興 さ せ る こ と が 要 請 さ れ て い る と 信 ず るものである。 こ こ に、 わ れ わ れ は、 日 本 水 産 業 の 個 別 的 分 析 の 徹 底 に つ と め る と と も に そ の 総 合 的 視 点 か ら の 研 究、 さ ら に、 世 界 経 済 と と も に 発 展 振 興 す る 方 策 の 樹 立 に 一 層 精 進 を 加 え る こ と を 考 え た ものである。 こ の 様 な 努 力 目 標 に む か っ て わ れ わ れ の 調 査 研 究 事 業 を 発 足 さ せ た 次 第 で 冊 子 の 生 れ た 処 以、 ま た こ れ へ の 奉 仕 の、ささやかな表われである。 昭和四十二年七月 財団法人 東京水産振興会 ( 題 字 は 井 野 碩 哉 元 会 長 ) 目 次 マ グ ロ 漁 船 か ら 世 界 の 食 卓 ま で ― 世 界 的 視 野 で み る 製 品 ・ 貿 易 流 通 ・ 市 場 経 済 ― 第五四九号 一 はじめに……… 1 二 各種定義とデータソース……… 2 三 基礎資料の推定法……… 5 四 マグロ漁業の概観……… 12 五 世界のマグロ消費の概観……… 15 六 マグロ生鮮魚(刺身・調理用)の 生産・貿易・流通・消費……… 20 七 マグロ缶詰生産・流通/市場……… 48 八 生鮮・缶詰以外の製品……… 73 九 結び……… 75 一〇 データ出所……… 76 一一 参考文献……… 77 時 事 余 聞 編 集 後 記 104-0055
時事余聞
三
み宅
やけ眞
まこと 略 歴 ▽ 農 学 博 士 一 九 三 三 年 東 京 都出身 一 九 五 七 年 東 京 大 学 農 学 部 卒 業。 一 九 六 〇 ― 六 一 年 フ ル ブ ラ イ ト 留 学 生 と し て、 シ ア ト ル の ワ シ ン ト ン 大 学 大 学 院 留 学( 資 源 学 )。 一 九 六 七 年 東 大 農 学 博 士 号 取 得。 一 九 五 七 ― 一 九 八 〇 年 農 林 水 産 省( 最 終 水 産 庁 参 事 官 )。 北 太 平 洋 漁 業 国 際 委 員 会 事 務 局( I N P F C) 、全米熱帯マグロ委員会 (I A T T C 科 学 者 ス タ ッ フ )、 大 西 洋 マ グ ロ 類 保 存 国 際 委 員 会 ( I C C A T 次 長 )。 退 職 後 は 日 本 鰹 鮪 漁 業 協 同 組 合 顧 問 ド ク タ ー、 独 法 水 産 研 究 セ ン タ ー国際水産研究所客員科学者。 業 績・ 生 物 統 計 の 世 界 基 準 確 立、 各 種 資 源 調 査 / 資 源 評 価 の 国 際 コ ー デ ィ ネ ー シ ョ ン、 違 反 船 の 撲 滅、 統 計 証 明 の 導 入、 貿 易 規 制 の 導 入、 混 獲 生 物 の 調 査 な ど を 担 当。 最 近 は F A O の マ グ ロ 蓄 養 問 題、 漁 獲 能 力、 漁 獲 の 割 り 当 て 基 準、 漁 獲 統 計 等 の 作 業 部 会 に、 専 門家として参加。 研 究 報 告 多 数。 産 経 新 聞 そ の 他 多 く の 連 載 コ ラ ム 執 筆。 そ れ 以 外 に 著 書 と し て は『 ス ペ イ ン と 私 』( 三 月 書 房 )、 『 世 界 の魚食文化考』 (中公新書) 、「ス ペ イ ン の 食 卓( 魚 料 理 の 部 )」 (柴田書店編)等がある。一
は
じ
め
に
日 本 も グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と か で 、世 界 に 目 を 向 け る よ う に な っ た と い う の だ が 、 実 際 に は ま だ ま だ 井 の 中 の 蛙 で 、 日 本 に い て 世 界 的 視 野 に 立 つ こ と は 至 難 で あ る 。 現 在 多 く の 水 産 物 は 国 際 流 通 ・ 市 場 を 持 っ て い る が 、 歴 史 的 に も 規 模 で も 、 マ グ ロ ほ ど 大 き な 地 球 規 模 の 漁 業 ・ 流 通 ・ 市 場 を 持 つ 水 産 物 は 他 に 見 当 た ら な い 。 そ の 原 動 力 は 勿 論 世 界 の 強 い マ グ ロ に 対 す る 需 要 で あ る が 、 マ グ ロ が 高 度 回 遊 性 魚 類 で あ る こ と 、 漁 場 が 世 界 に ま た が っ て 多 漁 具 ・ 多 魚 種 漁 業 で あ る こ と 、 公 海 を 含 め て 広 い 海 域 で 国特
定
非
営
利
活
動
法
人
水
産
業
・
漁
村
活
性
化
推
進
機
構
三
宅
眞
農
学
博
士
マ
グ
ロ
漁
船
か
ら
世
界
の
食
卓
ま
で
―世界的視野でみる製品
・貿易流通
・市場経済―
生 物 学 と 社 会 経 済 分 野 の 間 の 垣 根 を 取 り 除 い て、 マ グ ロ 産 業 全 体 を 世 界 的 に 見 る こ と に よ っ て、 今 後 マ グ ロ の 資 源・ 管 理 問 題 を 考 え る 場 合 の 最 低 限 の 情 報 を 提 供 す る こ と を 目 的 に こ の 小 冊子を書いた 際 漁 業 が お こ な わ れ て 居 る こ と 等 の 特 性 の 他 に 、 消 費 者 の 健 康 志 向 、 そ し て 資 源 量 が 大 き く 、 漁 獲 圧 力 に 対 し て 打 た れ 強 い 資 源 で あ る 事 等 が あ げ ら れ る 。 一 方 マ グ ロ の 資 源 、 漁 業 、 そ の 資 源 管 理 ・ 漁 業 規 制 等 を 論 じ る 際 、 従 来 は と か く 生 物 ・ 資 源 学 の 立 場 か ら の み 考 え ら れ 、 最 大 持 続 生 産 量 ( M S Y ) を 管 理 目 標 に 全 て が 動 い て 来 た 。 し か し 漁 業 は 経 済 活 動 で あ り 、 需 要 に よ っ て 起 動 さ れ 、 市 場 に 支 配 さ れ る 。 従 っ て 、 世 界 の 社 会 経 済 要 因 を 除 外 し て マ グ ロ の 資 源 管 理 を 論 じ る こ と は 不 可 能 で あ る 。 限 ら れ た 紙 面 で は と て も そ の 全 て は 伝 え ら れ な い が 、 生 物 学 と 社 会 経 済 分 野 の 間 の 垣 根 を 取 り 除 い て 、 マ グ ロ 産 業 全 体 を 世 界 的 に 見 る こ と に よ っ て 、 今 後 マ グ ロ の 資 源 ・ 管 理 問 題 を 考 え る 場 合 の 最 低 限 の 情 報 を 提 供 す る こ と を 目 的 に こ の 小 冊 子 を 書 い た 。 内 容 は 各 専 門 分 野 の 方 に は 物 足 り な い 点 が あ る と 思 う が 、 な る べ く 専 門 的 に な ら ず 、 判 り 易 く す る こ と を 心 掛 け た 。
二
各
種
定
義
と
デ
ー
タ
ソ
ー
ス
二
・
一
用
語
定
義
本 書 で 使 っ た 用 語 に つ い て の 定 義 は 左 記 の と お り で あ る 。 • 「 マ グ ロ 」 に は 世 界 的 に 商 業 種 と し て 認 め ら れ て い る 次 の 7魚 種 を 含 め た ― ビ ン ナ ガ 、 メ バ チ 、 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ 、 大 西 洋 ク ロ マ グ ロ 、 ミ ナ ミ マ グ ロ 、 カ ツ オ 、 キ ハ ダ 。 マ グ ロ 管 理 機 構 で 扱 っ て い る そ の 他 の 魚 種 、 例 え ば カ ジ キ 類 、 コ シ ナ ガ マ グ ロ 、 タ イ セ イ ヨ ウ マ グ ロ 、 ハ ガ ツ オ 、 ソ ー ダ ガ ツ オ 、 サ ワ ラ な ど は 含 ま な い 。 日 本 で は カ ツ オ は マ グ ロ と 考 え ら れ て い な い が 、 世 界 的 に は skipjack tuna で あ り 、 マ グ ロ 類 の 最 重 要 種 の 一 つ で あ る 。 • 「 ク ロ マ グ ロ 類 」 と は 、 此 処 で は 前 記 七 魚 種 中 の 太 平 洋 ク ロ マ グ ロ 、 大 西 洋 ク ロ マ グ ロ 、 ミ ナ ミ マ グ ロ の 総 称 と し て 用 い た 。 • 「( 生 ) 鮮 魚 」 と は 、 そ の 後 の 用 途 は 問 わ ず に 、 小 売 時 に 加 熱 加 工 さ れ て 居 な い 魚 を 指 す 。 冷 凍 品 で も 、 加 熱 処 理 せ ず に 売 ら れ た 場 合 は 生 鮮 魚 に 含 め た 。 • 「 原 魚 重 量 」 と は ラ ウ ン ド 重 量 を 指 し 、 魚 が 漁 獲 さ れ た 時 の 形 で の 重 量 を さ す 。 も と も と ラ ウ ン ド と し て 報 告 さ れ て い る 場 合 も あ る が 、 各 種 加 工 品 に 換 算 率 を か け て 推 定 し た 重 量 で あ る 場 合 も 多 い 。 • 「 製 品 重 量 」 は 、 そ れ が 手 を 加 え て 加 工 さ れ た 後 の 重 量 を 指 す 。 従 っ て 、 製 品 重 量 に は 鰓 腹 抜 き の 鮮 魚 か ら 、 缶 詰 の ネ ッ ト 重 量 ま で 各 種 形 態 の 製 品 の 重 量 が 含 ま れ て い る 。 • 「 缶 詰 ネ ッ ト 重 量 」 は 国 際 定 義 “ 缶 詰 全 重 量 ( 缶 込 み ) か ら ( 缶 を 空 け て 液 状 ・ 固 形 状 の 内 容 物 を 全 部 出 し た 後 の ) 缶 の 重 量 を 差 し 引 い た 重 量 ” を 用 い た 。こ の 章 で は、 本 書 で 用 い た 各 種 の 基 礎 デ ー タ、 鮮 魚 の ラ ウ ン ド 重 量、 缶 詰 の 原 魚 推 定 量、 消 費 量、 水 揚 げ 価 格、 単 価 等 の 推 定 方法についてまとめて述べる 本 書 で 用 い た 統 計 は、 漁 獲 に つ い て は R F M O 及 び I S C( 北 太 平 洋 科 学 会 議 ) の 公 式 年 間 漁 獲量統計を用いた • 「 蓄 養 」 は 養 殖 と 区 別 し て 、 マ グ ロ を 短 期 間 飼 育 し て 体 脂 肪 成 分 を 増 や し て 商 品 価 値 を 高 め る 行 程 を 指 し た 。 • R F M O 各 海 域 の マ グ ロ 資 源 管 理 委 員 会 ( 五 機 関 ) を 指 す 。
二
・
二
デ
ー
タ
ソ
ー
ス
本 書 で 用 い た 統 計 は 、 漁 獲 に つ い て は R F M O 及 び I S C ( 北 太 平 洋 科 学 会 議 ) の 公 式 年 間 漁 獲 量 統 計 を 用 い た 。デ ー タ は 一 九 五 〇 ― 二 〇 一 一 年 の 期 間 の 物 が 使 え る が 、 初 期 の 精 度 は 比 較 的 低 い 。 又 二 〇 一 一 年 の 統 計 は 暫 定 値 で 、 今 後 修 正 さ れ る 可 能 性 が 強 い 。 一 般 に 広 く 使 わ れ て い る F A O の 漁 獲 統 計 と は 最 大 一 〇 % 程 度 の 差 が あ る が 、 そ の 理 由 は R F M O 統 計 は 各 国 政 府 の 漁 業 関 係 局 が 公 式 提 出 し た 統 計 を 学 者 が 吟 味 修 正 し た 値 で 、 F A O ( 国 連 食 料 農 業 機 構 ) の 統 計 は 各 国 の 内 閣 統 計 事 務 所 が 提 出 し た 公 式 統 計 で あ る た め で 、 R F M O の 統 計 は 漁 具 別 に 報 告 さ れ 、 更 に F A O 統 計 で は 魚 種 不 明 に な っ て い る 物 を 種 別 に 仕 分 け た 数 値 や 、 違 反 船 の 科 学 者 に よ る 推 定 漁 獲 量 な ど も 含 ま れ て い る 。 従 っ て 、 よ り 現 実 的 で あ る と 信 じ ら れ る 。 貿 易 統 計 に つ い て は F A O の 水 産 物 製 品 統 計 ( F A O と 記 載 ) を 用 い た 。 現 在 ( 二 〇 一 三 年 二 月 現 在 ) 公 表 さ れ て い る の は 二 〇 〇 九 年 が 最 終 年 で あ る 。 日 本 の 輸 入 ・ 市 場 に つ い て は 、 財 務 省 貿 易 統 計 、 東 京 中 央 卸 売 市 場 統 計 を 用 い た 。 米 合 衆 国 ・ ヨ ー ロ ッ パ の 流 通 関 係 は 、 US NMFS 統 計 、 EUROSTAT 等 を 利 用 し て い る 。 こ れ ら デ ー タ ソ ー ス は 章 末 に ま と め て 示 し た 。三
基
礎
資
料
の
推
定
法
こ の 章 で は 、 本 書 で 用 い た 各 種 の 基 礎 デ ー タ 、 鮮 魚 の ラ ウ ン ド 重 量 、 缶 詰 の 原 魚 推 定 量 、 消 費 量 、 水 揚 げ 価 格 、 単 価 等 の 推 定 方 法 に つ い て ま と め て 述 べ る 。 こ う し た デ ー タ は 局 地 的 ( 例 え ば 日 本 ) に は 比 較 的 細 か い 直 接 統 計 が あ る が 、 世 界 的 に ま と め た 統 計 は な い 。 結 局 世 界 の 大 局 を 見 る た め に 極 め て ラ フ な 推 定 方 法 を 用 い ざ る を 得 な い 。 こ こ に 述 べ た 推 定 方 法 以 外 の 統 計 を 用 い た 場 合 は 、 説 明 を 加 え た 。三
・
一
生
鮮
魚
消
費
量
の
推
定
世 界 の 生 鮮 魚 消 費 を 推 定 す る に は い く つ か の 方 式 が 考 え ら れ る が 、 本 書 で は 、 基 本 と し て 漁 具 ・ 魚 種 別 に 経 験 か ら 鮮 魚 と そ れ 以 外 の 比 率 ( 表 1 ) を 決 め て そ れ を 漁 獲 量 に 乗 じ た 値 を 推 定 値 と し た 。 世 界 全 体 の 推 定 に 使 っ た 比 率 と 、 日 本 の 鮮 魚 量 を 推 定 し た 比 率 は 多 少 異 な る 点 に ご 留 意 頂 き た い 。 こ の 方 法 の 問 題 点 は 、 経 験 値 の 推 定 で あ る缶 詰 重 量 は ネ ッ ト 重 量 で 示 さ れ、 ネ ッ ト 重 量 に は 内 容 物 に 色 々 混 ぜ 物 を し た 場 合 の 目 方 も 入 っ て い る の で、 使 用 さ れ た マ グ ロ の 原 材 料 の 重 量 を 換 算 す る 事 は、 全 体 を 論 じ る 上 で は 不 可 能である こ と 、 年 代 、 国 の 間 で 比 率 が 大 き く 変 化 す る 値 を 一 律 に 扱 っ た こ と で あ る 。 例 え ば 、 は え 縄 の ビ ン ナ ガ 漁 獲 は か つ て は 全 て 缶 詰 用 で あ っ た が 、 現 在 は か な り の 部 分 が 生 食 用 で あ り 、 そ れ も 国 に よ っ て 比 率 に 大 き な 違 い が あ る 。 し か し 、 比 率 を 年 代 別 に 変 化 さ せ る 場 合 、 恣 意 的 に 行 う 以 外 な く 、 よ り 多 く の 不 確 実 性 要 素 を 加 え る こ と に な る の で 、 敢 え て 一 律 の 率 を 用 い た 。 こ の 操 作 で は 、 製 品 重 量 か ら の 換 算 と 言 う 大 き な 不 確 定 要 素 が 入 ら な い 点 、 現 実 的 で あ る 。 た だ 、 こ れ は 飽 く 迄 も 傾 向 を 知 る た め の 手 段 で あ る 。 一 応 大 き な 誤 り が 無 い か 、 他 の 推 定 手 段 に よ る 値 と の 比 較 検 討 も 行 っ た ( 六 ・ 二 節 )。
三
・
二
缶
詰
生
産
量
の
推
定
缶 詰 重 量 は ネ ッ ト 重 量 で 示 さ れ て い る 。 ネ ッ ト 重 量 に は 内 容 物 に 色 々 混 ぜ 物( 野 菜 、 増 量 材 、 液 体 部 分 も 含 め た ) を し た 場 合 の 目 方 も 入 っ て い る の で 、 ネ ッ ト の 重 量 か ら 、 そ れ に 使 用 さ れ た マ グ ロ の 原 材 料 の 重 量 を 換 算 す る 事 は 、 個 々 の 製 造 会 社 の 品 目 別 に は 出 来 て も ( も っ と も 殆 ど の 場 合 、 そ の 換 算 率 は 企 業 秘 密 で あ る が )、 缶 詰 の 全 体 を 論 じ る 上 で は 不 可 能 で あ る 。 F A O の 缶 詰 一 般 に 対 す る 公 式 換 算 率 は 一 ・ 九 二 ( 原 魚 * 〇 ・ 五 二 = ネ ッ ト ) で あ る 。 し か し こ の 換 算 率 を 用 い る と 世 界 の 漁 獲 の 殆 ど が 缶 詰 原 魚 と い う 事 に な っ て し ま う 。 本 書 で は 、 一 般 慣 例 と し て 用 い ら れ て い る 原 魚 重 量 の 表 1 鮮魚推定に用いた換算率表。世 界 的 に 各 種 の 製 品 全 体 像 を 描 い た 文 献 は 極 め て 少 な く、 仮 に あ っ て も、 多 く の 不 確 実 性 を 含 んでいる 世 界 的 に は 直 接 消 費 量 を 調 整 し た 統 計 が な い の で、 F A O は そ の 代 わ り に バ ラ ン ス シ ー ト を 提 供 六 〇 % 前 後 が ネ ッ ト 重 量 に 当 た る( ネ ッ ト か ら ラ ウ ン ド へ の 変 換 係 数 は そ の 逆 数 の 一 ・ 六 七 ) と し て 推 定 し た 。