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歯周病

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Academic year: 2021

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緒  言

重度歯周炎患者は歯の動揺,病的移動などにより咬 合のバランスが崩壊し,歯周組織破壊を生じる。すな わち,重度の歯周炎では,臼歯部の動揺や近心傾斜を 生じ,臼歯部咬合高径が低下した結果,下顎前歯が上 顎前歯を突き上げフレアアウトが発症するとされる。 このような症例では歯周治療,矯正治療,補綴治療な どを含めた包括的な治療が必要となる。今回,重度の 歯周炎に伴うフレアアウトを認め,歯周治療とともに 咬合の再構成を含めた包括的治療を行い,良好な結果 が得られた症例を報告する。

症  例

患者は 52 歳の男性で, 部の疼痛を主訴 に,2001 年 6 月 5 日東京歯科大学付属千葉病院保存科 に来院した。現病歴として,数年前より全顎的に歯肉 腫脹,疼痛,歯牙動揺を自覚していたが放置してい た。その後, 部の疼痛が増強し,近医受診 するも多数歯の抜歯による治療計画の提示したが受け 5 7 8   7 6 5 7 8   7 6

Abstract:We report advanced chronic periodontitis with fleare out in maxillary anterior teeth in a 52―year― old man. During initial periodontal therapy, we conducted bite raising, orthodontic treatment, and tooth autotransplantation. We then conducted periodontal surgiery using enamel matrix derivative(EMD)com-bined with an autogenous bone graft. Occlusal therapy was used in interdisciplinary dentofacial treatment.  We were able to substantially improve periodontal tissue and to stabilize occlusion. Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi(J Jpn Soc Periodontol)48:218―224, 2006.

Key words:advanced chronic periodontitis, fleare out, regenerative therapy

要旨:本症例は重度の歯周炎に伴いフレアアウトを発症した 52 歳男性に対して,初期治療中に咬合挙上,部 分矯正,自家歯牙移植を行った。そして,歯周外科処置時にフラップ手術とともに EMD(Emdogain Gel; Biora AB社)の応用,また一部自家骨の併用を行った後,全顎的な咬合回復処置を行った。その結果,歯周組 織と咬合の安定を確立した症例である。 キーワード:重度慢性歯周炎,フレアアウト,再生療法 連絡先:片山明彦 〒 261―8502 千葉市美浜区真砂 1―2―2 東京歯科大学歯周病学講座 Akihiko Katayama

Department of Periodontology, Tokyo Dental College 1―2―2 Masago, Mihama―ku, Chiba 261―8502, Japan

フレアアウトを伴う重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った 1 症例

東京歯科大学歯周病学講座

A Case Report of Comprehensive Treatment for Advanced Chronic Periodontitis

with Fleare Out

Akihiko Katayama, Masatake Tsunoda and Satoru Yamada

Department of Periodontology, Tokyo Dental College

山 田  了

角 田 正 健

片 山 明 彦

―専門医最優秀ポスター賞受賞―

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入れられず,本大学付属病院に来院した。全身既往歴 および家族歴に特記事項はなく喫煙歴もなかった。 1. 現  症 1) 口腔内所見 図 1 に初診時の口腔内写真を示す。初診時 O’ Leary のプラークコントロールレコード(PCR)は 87%,歯 周ポケットは全顎的に 5 mm 以上存在し,多数歯にお いてプロービング時の出血(BOP),動揺が存在し, 部 で は 排 膿 が 認 め ら れ た。咬 合 は Angle ClassⅡ division1 であり,上顎前歯部で著しいフレア アウトの状態を呈し,口唇閉鎖が難しい状態であっ た。 2) X 線所見(図 2) 全顎的に歯根の 1/2 から 1/3 に及ぶ水平性骨吸収と ともに, 近心部においては垂直性骨吸収が認めら れた。また,多くの歯に歯肉縁下歯石の存在を認め た。 2. 診断および治療方針 以上の診査結果より重度慢性歯周炎と診断した。 5 7 8   7 6 7  本症例は,歯周組織を安定させ,機能的な咬合関係 を付与することを目的とした。そこで,患者の歯科治 療に対する不信感もあり,可及的な歯牙の保存を希望 しており,まず患者とのラポールの形成を行い,歯周 治療に対するモチベーションを高めたうえで十分なプ ラークコントロールが必要と判断した。そのうえで, 歯周外科処置に移行し,終了後,臼歯部の咬合挙上, 上顎前歯部の部分矯正を行い,最終補綴処置に移行す ることとした。

治療経過

1) 歯周基本治療(平成 13 年 6 月―) 初診時の歯周組織検査を図 3 に示す。口腔衛生指導 (TBI)とともに全顎のスケーリング・ルートプレー ニング(SRP)を行った。併せて,動揺歯の暫間固定 はエナメルボンドシステム(スーパーボンド)にて 行い,早期接触や側方運動についての咬合調整を行っ た。途中,患者は早期のフレアアウトの改善を希望さ フレアアウトを伴う重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った 1 症例 219 図 1 初診時口腔内写真 図 2 初診時 X 線写真

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れた。そのため,動揺歯の固定と咬合の安定を目的に 咬合挙上板を装着し,MTM を行うこととした。咬合 器上で中心咬合位にて約 3 mm の挙上を行い,接着性 の咬合面形態を付与した金属製のオーバーレイタイプ の補綴物を作製し , に装着した(図 4)。そして, の部分的再 評価を行い,歯肉の炎症程度の改善も認められたこと から部分矯正(MTM)を開始した(図 5)。上顎の臼 歯部は咬合挙上板にて固定しているため強い固定源と なり, にブラケットを装着し最も弱い力 でのレベリングを行った後,圧下と歯体移動を兼ねレ クタンギュラーワイヤーに交換した。その後,適正な ④ ⑤ 6 ⑦   7 − 4  7 6 5 4 4 5 6 7  1 2 3   3 2 1 1 2 3   3 2 1 歯軸に改善されたことを確認し,矯正装置を除去し, 根 管 治 療,暫 間 被 覆 冠 の 装 着 を 行 っ た。併 せて に暫間被覆冠を装着しアンテリアガイダ ンスを確立した。しかし, は急性症状を繰り返し たため抜歯を予定し,今後の補綴処置では歯牙移植を 希望され, をドナー歯として抜歯時に歯牙移植を 行った(図 6)。 , , については抜歯を行った。 2) 再評価 PCRは 18%,歯肉の炎症程度が著しく改善され良 好な治療結果を得た。しかし,歯周ポケット 5 mm 以 上の残存部位も多く歯周外科処置に移行した。 1 2 3   3 2 1 7  8  8  8  8  図 3 初診時歯周組織検査 図 4 咬合挙上

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3) 歯周外科処置(平成 14 年 8 月―平成 15 年 5 月) (1) 下顎左側臼歯部,上顎左側臼歯部,下顎左側臼 歯部,上顎左側臼歯部(図 7・8) それぞれの部位にフラップ手術を行い, 部, 部, 部, 部に対して EMD(Emdogain Gel;Biora AB 社)と自家骨の併用応用を行った。自 家骨の採取については各々の部位の臼後部,結節部よ り,トレフィンバー,破骨鉗子を用いて採取し,オス テオクラッシャーにて粉砕した。EDTA にて根面処 理後,根面に少量の EMD を塗布し,EMD と自家骨を 混和したものを骨欠損部に応用した。 (2) 下顎前歯部(図 9) 同部フラップ手術を行い, 近心部の 3 壁性骨欠 損部に対して,EDTA による根面処理後 EMD を応用 した。 (3) 上顎前歯部(図 9) 同部フラップ手術を行い,歯槽骨整形を行った。 4) 再評価 PCRは 8%,歯周ポケット 1―3 mm であり,歯肉の 炎症も消失しており,最終補綴処置に移行した。 5) 最終補綴処置(平成 15 年 6 月―平成 16 年 1 月) 再度プロビジョナルレストレーションの作製と装着 を行った。約 3 カ月間の経過を観察し最終補綴物を作 製した。咬合様式は , 側方ガイドとし,上 顎は ・ を 連 結 冠, ブ

リッジとし 間に Key & Key way を設定した。

下 顎は , , の 連 結 冠 と し た。補綴物の保護とブラキシズムに対してナイトガー ドを装着した。 6) メインテナンス(平成 16 年 1 月―現在まで) メインテナンス移行時の口腔内写真(図 10)と X 線写真(図 11),歯周組織検査(図 12)を示す。これ らの資料から認められるように炎症のない歯周組織と 安定した咬合が確立された。メインテナンスに入り 2 年以上が経過しているが,2 カ月ごとのリコールを行 い歯周組織の安定が維持されている。リコール時には  7 6  7 6 6 7   4 5 1  4   4  3 3   7 6 5 4  3 2 1 1 2 3  ④ ⑤ 6 ⑦  3 4   4 3  7 6 5  4 3 2 1 1 2 3 4  5 6 7 PMTCを主体とした SPT を行い,必要に応じた咬合 調整を行っている。

考  察

本症例は患者の口腔清掃の低下により歯周炎が進行 し,加えて咬合性因子により著しい歯周組織破壊を生 じたケースである。患者は口腔清掃に対してのモチ ベーションが低下しており,治療を進めていく上で患 者とのラポールを形成し,歯科治療に対するモチベー ションを高めたことにより,炎症のコントロールが可 能となったと考えられ,歯科治療に対するコンプライ アンスを高めることは歯周治療上重要であるとされ る1)ことを再認識した。 また,重度に進行した歯周炎は,支持歯槽骨の減 少,それに伴う歯の動揺,病的移動が生じ,健全歯で は正常な咬合力でも外傷性に作用し,歯周組織の破壊 をさらに加速させる。したがって,このような症例で は歯周組織の炎症除去とともに咬合の安定を確立させ フレアアウトを伴う重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った 1 症例 221 図 5 部分矯正(MTM) 図 6  部歯牙移植7 

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図 7  7 6 部 EMD と自家骨の併用

図 8  6 7 部, 7 6 部, 4 5 部 EMD と自家骨の併用

図 9  EMD 応用(左),上顎前歯部歯槽骨整形(右)1 

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る必要があり,歯周治療,補綴治療,矯正治療を含め た包括的治療が必要とされる2―4)。今回,歯周基本治 療中に上顎前歯部のフレアアウトの改善を患者が強く 希望され,同部の部分的再評価を行い,歯肉の炎症改 善がみられたため上顎前歯部の部分矯正を行った。歯 周治療中の矯正治療については,患者自身の口腔清掃 が確立し,歯周組織の炎症が改善していることが開始 条件の前提となるが,歯周ポケットの存在する状態で 矯正治療と歯周外科治療のいずれかを先行させるか は,意 見 が 分 か れ,一 致 し た 結 論 が 得 ら れ て い な い5―7)。しかし,今回の症例では早期の審美性の改善 により,患者のコンプライアンスを高める結果とな り,矯正治療中を含め安定した歯肉状態が保たれた。 しかし,矯正時期については状況に応じた選択が必要 となるであろう。 抜歯後の 部の欠損補綴は,可撤性の義歯を 避けたいとのことであった。インプラント治療の選択 7   6 7 もあったが,最終補綴形態からもクロスアーチでの補 綴を行う方が のブリッジの支台となり,動 揺歯の固定を行えるなどの利点が多いと判断し 部 への歯牙移植を行った。正しい術式の選択を行えば歯 牙移植においても長期の予知性が示されており7―10) 移植歯の歯根膜による骨誘導能もあり11) 近心部 の根尖まで及ぶ垂直性骨吸収が歯牙移植によって改善 されたことは大変有益であったと考える。 EMDはエナメルタンパク(アメロジェニン)が歯 根 膜 組 織 に 作 用 し,生 物 学 的 改 変(root surface biomdification)で 歯 周 組 織 再 生 を 促 す と さ れ12) Heden13)らによると骨内欠損に EMD を応用した場 合,臨床的アタッチメントゲインは 4∼4.5 mm 認め ら れ,骨 内 欠 損 部 に 骨 添 加 が 生 じ た た と さ れ る。 EMD単独応用において,3 壁性骨欠損では良好な予 後が期待できるが,1・2 壁性の条件の悪い骨欠損で は EMD 単独よりも自家骨と併用した方が効果的であ ④ ⑤ 6 ⑦  7  7  フレアアウトを伴う重度慢性歯周炎患者に包括的治療を行った 1 症例 223 図 11 メインテナンス移行時 X 線写真 図 12 メインテナンス時歯周組織検査

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る14,15)。今 回,1∼2 壁 性 の 骨 欠 損 部 に お い て は, EMDと自家骨を併用し,3 壁性の骨欠損部で EMD の 単独応用を行い,良好な結果が得られた。 本症例の治療を通して,患者の歯科治療に対するコ ンプライアンスを高めたことが大きな成功要因である と考えられる。今後,口腔清掃の維持と咬合関係に留 意したメインテナンスの維持が重要である。 本論文の要旨は第 48 回秋季日本歯周病学会学術大会 (平成 17 年 9 月 23 日)において発表した。

文  献

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図 10 メインテナンス移行時口腔内写真

参照

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