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税 務 事 例 研 究 /148 目 次 法 人 税 < 事 例 > みなし 配 当 の 適 用 に 関 するいくつかの 問 題 吉 村 政 穂 1 Ⅰ 問 題 の 所 在 1 Ⅱ 事 例 の 検 討 1 はじめに 3 2 事 例 1の 検 討 (みなし 配 当 の 計 算 の 基 礎 となる 額

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Academic year: 2021

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(1)

ISSN 2187-1329

税務事例研究

Vol.

148

2015/11

〔法人税〕

みなし配当の適用に関するいくつかの問題

···吉村政穂

〔所得税〕

必要経費判定における債務の確定の意義

···田中 治

〔資産税〕

重婚的内縁関係をめぐる相続税法上の課税関係

···高野幸大

公益財団法人

日本税務研究センター

(2)

法 人 税

所 得 税

税務事例研究/148

■目次

<事例> みなし配当の適用に関するいくつかの問題

··· ···

吉村 政穂・

Ⅰ 問題の所在

··· ··· ···1

Ⅱ 事例の検討

1 はじめに ··· ··· ···3 2 事例1の検討(みなし配当の計算の基礎となる額) ···4 3 事例2の検討(混合配当の取扱い) ··· ···7 4 事例3の検討(外国法人による資本の払戻し)···9

Ⅲ 結語

··· ··· ···10

<事例> 必要経費判定における債務の確定の意義

··· ···

田中 治・

14

(3)

目 次

資 産 税

Ⅰ はじめに

···15

Ⅱ 債務の確定の意義と役割-概論

···17 1 関連法規と通達 ···17 2 企業会計の考え方と債務確定基準との関係 ···19 3 経費控除に係る所得税と法人税 ···22

Ⅲ 原価と債務確定基準-事例(1)の検討

···23 1 概論 ···23 2 類似判決の検討 ···24 3 事例1の検討 ···27

Ⅳ 債務確定の判断基準-事例(2)の検討

···28 1 概論 ···28 2 類似判決の検討 ···29 3 事例2の検討 ···32

Ⅴ 事業主の死亡と債務確定-事例(3)の検討

···33 1 概論 ···33 2 類似判決の検討 ···34 3 事例3の検討 ···40

Ⅵ おわりに

···40

<事例> 重婚的内縁関係をめぐる相続税法上の課税関係

··· ···

高野 幸大・44

はじめに

··· ··· ···46

Ⅰ 重婚的内縁関係と財産分与

··· ···47

(4)

目 次

Ⅱ 重婚的内縁関係と婚姻費用分担の義務と程度

···50

Ⅲ 遺留分減殺請求と遺産分割との関係

··· ···52

Ⅳ 遺留分減殺請求と納税義務の承継

··· ···53

Ⅴ 事例の検討

··· ··· ···55 〔設問1〕 ··· ··· ···55 〔設問2〕 ··· ··· ···57 〔設問3〕 ··· ··· ···59 〔設問4〕 ··· ··· ···60

おわりに

··· ··· ···62

(5)

「租税法事例研究会」研究員等 <平成 27 年 11 月 1 日現在> 部 会 研 究 員 等 所 属 法 人 税 部 会 △成 道 秀 雄 教 授 成蹊大学経済学部 山 本 守 之 税理士 日本税務会計学会顧問 平 川 忠 雄 税理士 日本税務会計学会顧問 野 田 秀 三 教 授 桜美林大学経済・経営学系 上 松 公 雄 税理士 東京税理士会 吉 村 政 穂 准教授 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 所 得 税 部 会 ○金 子 宏 名誉教授 東京大学 田 中 治 教 授 同志社大学法学部 牛 嶋 勉 弁護士 第一東京弁護士会 岩 﨑 政 明 教 授 横浜国立大学国際社会科学研究院 佐 藤 英 明 教 授 慶應義塾大学大学院法務研究科 渡 辺 徹 也 教 授 早稲田大学法学学術院 武 田 涼 子 弁護士 第一東京弁護士会 資 産 税 部 会 △首 藤 重 幸 教 授 早稲田大学法学学術院 岩 下 忠 吾 税理士 東京税理士会 小 田 修 司 弁護士 第一東京弁護士会 高 野 幸 大 教 授 東洋大学法学部 渋 谷 雅 弘 教 授 東北大学大学院法学研究科 小 池 正 明 税理士 東京税理士会 (注) ○印は部会長 △印は部会長代理

(6)

法 人 税

み な し 配 当 の 適 用 に 関 す る い く つ か の 問 題

一 橋 大 学 准 教 授

吉 村

政 穂

1 A 社 は 、債 務 超 過 に 陥 っ た 同 社 従 業 員 持 株 会 の 救 済 を 目 的 と し て 、時 価 を 大 き く 超 え る 取 引 価 格 で 当 該 従 業 員 持 株 会 が 保 有 す る 株 式 を 取 得 し た 。 こ の 場 合 、 発 行 法 人 A 社 に よ る 自 己 株 式 の 取 得 に 伴 う み な し 配 当 の 計 算 上 、 支 払 っ た 対 価 の 全 額 が 交 付 を 受 け た 「 金 銭 そ の 他 の 資 産 」 と し て 扱 わ れ る こ と に な る か 。 2 B 社 は 、子 会 社 か ら 利 益 剰 余 金 お よ び 資 本 剰 余 金 を そ れ ぞ れ 原 資 と す る 剰 余 金 の 配 当 を 受 け た 。 こ の 場 合 、 た と え 別 々 の 議 案 に 基 づ い て こ れ ら の 剰 余 金 の 配 当 が 行 わ れ た 場 合 で あ っ て も 、 そ の 全 額 が 資 本 の 払 戻 し と し て 扱 わ れ る こ と に な る か 。 3 C 社 は 、外 国 法 人 で あ る 子 会 社 か ら 資 本 剰 余 金 を 減 資 と す る 配 当 を 受 け た 。 こ の 場 合 、 当 該 配 当 に つ い て み な し 配 当 の 計 算 は ど の よ う に 行 え ば よ い の か 。

問 題 の 所 在

会 社 法 制 定 に 伴 う 平 成 1 8 年 度 税 制 改 正 に よ っ て 、み な し 配 当 課 税 を 含 め た 資 本 取 引 等 に 関 す る 法 人 税 法 上 の ル ー ル は 、 会 社 の 払 出 手 続 で は な く そ の 原 資 に 注 目 す る 仕 組 み へ と 転 換 し 、 大 い に 自 己 完 結 性 を 高 め る こ と と な っ た 。 事 例

(7)

法 人 税 法 人 税 法 独 自 の 数 額 と し て ( 会 社 法 上 の 資 本 金 に 一 定 の 調 整 を 加 え た ) 「 資 本 金 等 の 額 」 を 設 定 す る な ど し て 、 会 社 段 階 に お け る 資 本 の 部 の 計 算 と 株 主 段 階 の 課 税 上 の 取 扱 い ( み な し 配 当 の 額 の 計 算 ) を 結 び 付 け る 精 緻 な 体 系 が 構 築 さ れ て い る 。 そ れ は 、会 社 か ら 株 主 に 対 す る 払 出 の 局 面 を 包 括 的 に 規 律 す る 体 系 と し て 、 法 人 税 法 ま た は 所 得 税 法 の 適 用 上 、 大 き な 存 在 感 を 示 し て い る 。 本 稿 で は 、 そ の 現 れ と 評 価 で き る 事 例 を 3 つ 取 り 上 げ 、 資 本 取 引 に 関 す る 課 税 ル ー ル が 守 備 範 囲 の 広 い も の と 理 解 さ れ て い る こ と を 確 認 し た い 。 事 例 1 は 、大 阪 高 判 平 成 2 4 年 2 月 1 6 日 訟 月 5 8 巻 1 1 号 3 8 7 6 頁( 第 一 審 : 大 阪 地 判 平 成 2 3 年 3 月 1 7 日 訟 月 5 8 巻 1 1 号 3 8 9 2 頁 )の 事 案 を 参 考 と し て い る 。 同 判 決 で は 、 対 価 性 の 有 無 に 基 づ く 区 分 を 斥 け 、 み な し 配 当 計 算 の 適 用 範 囲 を 拡 張 的 に 捉 え る 裁 判 所 の 姿 勢 を 窺 い 知 る こ と が で き る 。 他 の 領 域 、 例 え ば 譲 渡 所 得 課 税 の 文 脈 と は 異 な る 姿 勢 は 、 何 に よ っ て 基 礎 付 け ら れ る の だ ろ う か 。 事 例 2 は 、国 税 不 服 審 判 所 平 成 2 4 年 8 月 1 5 日 裁 決 ・ 裁 決 事 例 集 № 8 8 の 事 案 を 参 考 と し て い る 。 テ ク ニ カ ル な 論 点 な が ら 、 分 配 規 制 の 一 般 的 枠 組 の 下 で 資 本 剰 余 金 お よ び 利 益 剰 余 金 の 区 別 が 相 対 化 さ れ た 会 社 法 と 、 依 然 と し て 資 本 と 利 益 の 区 別 が 異 な る 課 税 上 の 結 果 を 招 来 す る 法 人 税 法 の 乖 離 が 浮 か び 上 が っ て く る 。 最 後 に 、 精 緻 に 作 ら れ た ル ー ル は 、 み な し 配 当 の 基 因 と な る 株 式 を 発 行 す る ( 内 国 ) 法 人 に よ っ て 法 人 税 法 上 の 資 本 の 部 が 管 理 さ れ る こ と を 前 提 と し て い る 。 つ ま り 、 外 国 法 人 が 資 本 等 取 引 の 主 体 で あ る 場 合 に は 、 前 提 と な る 資 本 の 部 の 計 算 が 異 な っ た も の に な っ て く る 。 こ の 場 合 、 み な し 配 当 の 適 用 は ど の よ う に 考 え れ ば よ い の か ( 事 例 3 ) 。 上 記 の 通 り 、 資 本 の 部 に 関 す る 計 算 規 定 を 整 備 し 、 精 緻 な 制 度 と し て 作 ら れ て い る 一 方 で 、 外 国 法 人 が 発 行 法 人 で あ っ た 場 合 を 想 定 し た 法 令 の 規 定 は 存 在 し て い な い こ と の 問 題 点 を 改 め て 確 認 す る 。

(8)

法 人 税

事 例 の 検 討

1 は じ め に 平 成 1 3 年 度 税 制 改 正 は 、「 株 主 等 が 拠 出 し た 部 分 の 金 額 と 法 人 が 稼 得 し た 部 分 の 金 額 と を 峻 別 し 、 両 者 を 混 同 し な い と い う 考 え 方 」( 1 )に 基 づ い て 、 資 本 の 部 の 金 額 の 取 扱 い に 関 す る 整 備 が 行 わ れ た 。こ れ は 、法 人 税 法 、商 法( 会 社 法 ) お よ び 企 業 会 計 そ れ ぞ れ が 固 有 の 目 的 ・ 機 能 を 有 す る こ と を 正 面 か ら 認 め 、 法 人 税 法 固 有 の 目 的 ・ 機 能 に 基 づ い た 資 本 の 部 お よ び み な し 配 当 制 度 が 確 立 さ れ た こ と を 意 味 し て い た ( 例 え ば 、 法 人 株 主 に つ い て は 帳 簿 価 額 基 準 に よ っ て み な し 配 当 の 額 が 計 算 さ れ て い た が 、 上 記 考 え 方 に 基 づ い て 廃 止 さ れ た ) 。 さ ら に 、会 社 法 制 定 に 伴 う 平 成 1 8 年 度 税 制 改 正 で は 、み な し 配 当 の 基 因 と な る 事 由 の 見 直 し が 進 め ら れ 、 上 記 考 え 方 が 一 層 貫 徹 さ れ る こ と に な っ た( 2 ) 平 成 1 8 年 度 改 正 前 は 、依 然 と し て 払 戻 手 続 に 注 目 し た 規 律 が 維 持 さ れ て い た が ( 具 体 例 と し て 資 本 準 備 金 の 取 崩 し に 起 因 し た 配 当 の 取 扱 い( 3 )) 、 同 改 正 後 は 、 払 戻 手 続 で は な く 払 戻 原 資 に 応 じ た 規 律 と す る こ と が 明 ら か に さ れ た( 4 ) こ の 結 果 、 利 益 剰 余 金 の み を 原 資 と す る 払 戻 を 利 益 部 分 の 払 戻 と し て 捉 え 、 原 資 に 資 本 剰 余 金 が 含 ま れ て い る ( 「 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 う も の 」 ) 場 合 に は 、 税 法 上 の 「 剰 余 金 の 配 当 」 か ら 除 外 し ( 法 税 2 3 条 1 項 1 号 等 ) 、 み な し 配 当 の 基 因 と な る 事 由 ( 「 資 本 の 払 戻 し 」 ) に 振 り 分 け る と い う 基 準 が 示 さ れ て い る 。 こ う し て 、 株 主 等 の 拠 出 部 分 と 法 人 稼 得 利 益 と の 峻 別 と い う 法 人 税 法 固 有 の 考 え 方 を 貫 徹 し て 整 備 さ れ て き た み な し 配 当 課 税 制 度 は 、 法 人 か ら 株 主 へ の 利 益 移 転 を 規 律 す る 基 本 的 な 構 成 要 素 と し て 位 置 付 け ら れ て い る 。 そ の た め か 、 他 の 問 題 領 域 と は 異 な る 解 釈 論 上 の ア プ ロ ー チ が 採 用 さ れ て い る よ う に も 見 え る 。

(9)

法 人 税 2 事 例 1 の 検 討 ( み な し 配 当 の 計 算 の 基 礎 と な る 額 ) 大 阪 高 判 平 成 2 4 年 2 月 1 6 日 訟 月 5 8 巻 1 1 号 3 8 7 6 頁 で 争 わ れ た 事 案 は 、お お よ そ 次 の よ う な も の で あ る 。 内 国 法 人 X ( 原 告 、 控 訴 人 ) が 、 当 該 従 業 員 持 株 会 に 対 す る 貸 付 に つ い て 、 そ の 弁 済 に 代 え 、 当 該 従 業 員 持 株 会 が 所 有 す る X の 株 式 の 所 有 権 の 移 転 を 受 け る 旨 ( 代 物 弁 済 ) を 合 意 し た 。 こ れ は 、 当 該 従 業 員 持 株 会 の 救 済 を 目 的 と し て 行 わ れ た も の で あ り 、 上 記 代 物 弁 済 に よ っ て 消 滅 す る 債 務 の 額 ( 3 2 1 億 2 9 7 3 万 5 4 0 0 円 ) と ( 当 該 従 業 員 持 株 会 の 唯 一 の 資 産 で あ っ た ) X 株 式 の 時 価 額 ( 類 似 業 種 比 準 価 額 で あ る 1 株 当 た り 6 3 0 円 で 算 定 し た 4 9 億 9 7 9 5 万 8 8 4 0 円 ) と は 大 き く 均 衡 を 失 し て い た 。 以 下 、 本 稿 の テ ー マ と 関 係 す る 争 点 の み を 取 り 上 げ る 。 第 1 に 、 み な し 配 当 の 額 の 計 算 に 関 し て 、債 務 の 消 滅 と い う 経 済 的 利 益 で あ っ て も 所 得 税 法 2 5 条 1 項 5 号 ( 現 4 号 ) を 前 提 と し た 「 金 銭 そ の 他 資 産 の 交 付 」( 同 項 柱 書 き ) が 存 在 し た と い え る か に つ い て 、 裁 判 所 は こ う 述 べ た 。 「 所 得 税 法 2 5 条 1 項 の 趣 旨 は 、形 式 的 に は 法 人 の 利 益 配 当 で は な い が 、資 本 の 払 戻 し 、 法 人 の 解 散 に よ る 残 余 財 産 の 分 配 等 の 方 法 で 、 実 質 的 に 利 益 配 当 に 相 当 す る 法 人 利 益 の 株 主 等 へ の 帰 属 が 認 め ら れ る 行 為 が 行 わ れ た と き に 、 そ の 経 済 的 実 質 に 着 目 し て 、 こ れ を 配 当 と み な し て 株 主 等 に 課 税 す る と こ ろ に あ る 。 上 記 趣 旨 に 鑑 み る と 、 同 柱 書 き に い う 「 金 銭 そ の 他 の 資 産 の 交 付 を 受 け た 場 合 」 と は 、 金 銭 そ の 他 の 資 産 が 実 際 に 交 付 さ れ た 場 合 だ け で な く 、 同 様 の 経 済 的 利 益 を も た ら す 債 務 の 消 滅 等 が あ っ た 場 合 も 含 む も の と 解 さ れ る 。 」 ( 傍 線 筆 者 ) 判 決 は 、 み な し 配 当 制 度 の 趣 旨 が 「 実 質 的 に 利 益 配 当 に 相 当 す る 法 人 利 益 の 株 主 等 へ の 帰 属 が 認 め ら れ る 行 為 」 を 起 因 と す る 払 戻 の 経 済 的 実 質 に 注 目 し た も の で あ る 点 を 強 調 す る こ と に よ っ て 、 「 資 産 の 交 付 」 と い う 文 言 を 空 文 化 し た と も 評 価 で き る( 5 )。 条 文 と い う 形 で 具 現 化 さ れ た 後 に お い て も 、 経 済 的 実 質 に 注 目 し た 考 え 方 が 制 度 化 さ れ て い る 点 を 優 先 し た 判 断 を 下 し た こ と に な る 。

(10)

法 人 税 対 照 的 な 判 示 を し て い る 。 X は 、 本 件 代 物 弁 済 に お い て 消 滅 し た 本 件 借 入 金 債 務 の 金 額 に は 、 本 件 株 式 を 取 得 す る た め の 正 当 な 対 価 に 充 て ら れ た 部 分 の ほ か に 福 利 厚 生 費 に 充 て ら れ た 部 分( 損 益 取 引 )が 混 在 し て い る と 見 た 上 で 、 本 件 株 式 の 時 価 を 上 回 る 部 分 に つ い て は 、 み な し 配 当 は な か っ た こ と に な る と 主 張 し て い た 。言 い 換 え れ ば 、所 得 税 法 2 5 条 1 項 柱 書 き は「 次 に 掲 げ る 事 由 に よ り 金 銭 そ の 他 の 資 産 の 交 付 を 受 け た 場 合 」 ( 傍 線 筆 者 ) と 定 め る が 、 各 号 所 掲 の 事 由 と 交 付 と の 条 件 関 係 は 当 然 と し て 、 両 者 が 対 価 関 係 に 立 つ こ と ま で 要 求 し て い る と 解 す べ き か と い う 問 題 で あ っ た 。 「 所 得 税 法 2 5 条 1 項 柱 書 き 及 び 同 項 5 号 は 、〔 1 〕当 該 法 人 の 株 主 が 交 付 を 受 け た 「 金 銭 の 額 及 び 金 銭 以 外 の 資 産 の 価 額 の 合 計 額 」 と 、 〔 2 〕 「 当 該 法 人 の … 資 本 金 等 の う ち そ の 交 付 の 基 因 と な っ た 当 該 法 人 の 株 式 又 は 出 資 に 対 応 す る 部 分 の 金 額 」 を 比 較 す る こ と に よ り 、 「 配 当 の 額 と み な す 金 額 」 を 決 定 す る 旨 規 定 し て お り 、 飽 く ま で 自 己 株 式 の 対 価 と し て 現 実 に 交 付 さ れ た 「 金 銭 等 の 額 」 に 基 づ い て 、 み な し 配 当 の 額 を 計 算 す る こ と を 予 定 し て い る と い う べ き で あ る 。 こ れ に 対 し 、同 法 2 5 条 1 項 柱 書 き に は 、「 配 当 の 額 と み な す 金 額 」を 算 定 す る に 当 た り 、 取 得 の 対 象 と さ れ た 自 己 株 式 の う ち 、 会 社 の 利 益 積 立 金 又 は 商 法 上 の 利 益 剰 余 金 に 対 応 す る 額 ( 株 式 の 時 価 相 当 額 ) に 限 定 さ れ る こ と を 窺 わ せ る 文 言 は な い か ら 、控 訴 人 の 上 記 主 張 に は 理 由 が な い 。」( 傍 線 筆 者 ) こ の よ う に 、 東 京 高 裁 は 、 一 転 し て 文 理 を 強 調 し( 6 )、 対 価 性 を 有 す る 部 分 と そ の 他 の 部 分 に 区 分 す る こ と を 認 め な か っ た 。 す な わ ち 、 た と え 交 付 さ れ た 金 銭 等 の 額 が 株 式 の 時 価 と 乖 離 し て い る 場 合 で あ っ て も 、 現 実 に 交 付 さ れ た 金 銭 等 の 額 を 用 い て 、 み な し 配 当 の 額 を 計 算 す べ き こ と が 示 さ れ た( 7 ) 上 記 の 通 り 、裁 判 所 自 身 が 、所 得 税 法 2 5 条 1 項 が「 実 質 的 に 利 益 配 当 に 相 当 す る 法 人 利 益 の 株 主 等 へ の 帰 属 が 認 め ら れ る 行 為 が 行 わ れ た と き 」 を 想 定 し た 規 定 で あ る 旨 を 明 示 し て い た 以 上 、 X の 主 張 に 対 し て 実 質 的 な 根 拠 を も

(11)

法 人 税 仮 に こ の 争 点 を 、 所 得 の 性 格 を い か に 把 握 す る か と い う 問 題 と し て 抽 象 的 に 捉 え る と 、 ( 解 釈 論 に よ っ て ) 取 引 分 解 の 可 能 性 を 認 め た 裁 判 例 と の 均 衡 が 問 題 視 さ れ よ う 。 例 え ば 、 譲 渡 所 得 の 計 算 ( 対 価 性 ) が 問 題 と な っ た 事 案 に お い て 、 裁 判 所 は 次 の よ う な 議 論 を 展 開 し て い る ( 東 京 高 判 平 成 2 6 年 5 月 1 9 日 裁 判 所 H P ) 。 「 個 人 が そ の 有 す る 資 産 を 法 人 に 対 し 有 償 譲 渡 し た 場 合 に お い て 、 譲 渡 所 得 課 税 ( 「 資 産 の 譲 渡 … に よ る 所 得 」 ) の 対 象 は 、 当 該 資 産 の 譲 渡 の 「 対 価 」 た る 性 格 を 有 す る 金 額 で あ る と 解 す る の が 相 当 で あ り 、 当 該 譲 渡 価 額 中 に 当 該 資 産 の 譲 渡 の 「 対 価 」 た る 性 格 を 有 し て お ら ず 、 法 人 か ら 贈 与 さ れ た 金 品 と し て の 性 格 を 有 す る 部 分 が あ る と 認 め ら れ る と き は 、 当 該 部 分 の 金 額 は 、同 法 3 4 条 1 項 の 一 時 所 得 に 係 る 収 入 金 額 と し て 課 税 さ れ る べ き で あ る 。 」 「 所 得 税 法 は 、 譲 渡 所 得 に 対 す る 課 税 に つ き 、 資 産 の 値 上 が り に よ り そ の 資 産 の 所 有 者 に 帰 属 す る 増 加 益 を 所 得 と し 、 そ の 資 産 が 他 に 移 転 す る の を 機 会 に 清 算 し て 課 税 す る 趣 旨 で あ り 、 譲 渡 に よ っ て 資 産 の 移 転 が 対 価 の 受 入 れ を 伴 う 場 合 に は 、 対 価 の う ち に 増 加 益 が 具 体 化 さ れ る こ と か ら 、 こ れ を 課 税 対 象 と し て 捉 え た も の と 解 さ れ る 。 そ し て 、 … 当 該 資 産 の す べ て が 譲 渡 の 対 価 た る 性 格 を 有 す る と は い え な い と き に 、 そ の 部 分 は 増 加 益 が 具 体 化 し た も の と は い え な い か ら 、 譲 渡 所 得 の 対 象 と な ら な い の は 、 事 柄 の 性 質 上 、 当 然 で あ る 。 当 事 者 が 私 法 上 の 法 律 関 係 に お い て 、 当 該 法 律 行 為 に ど の よ う な 法 律 効 果 を 生 じ さ せ よ う と し た か と い う 問 題 と 、 当 該 法 律 行 為 に よ り 移 転 さ れ る 資 産 の 譲 渡 中 に 対 価 た る 性 格 を 有 す る 部 分 と そ う で な い 部 分 と が あ り 得 る と い う 問 題 と は 、 事 柄 の 性 質 上 、 別 個 の 問 題 で あ る 。 」 ( 傍 線 筆 者 ) こ う し た 二 重 利 得 法( 8 )的 な 発 想 を 認 め る 裁 判 例 は 、 譲 渡 所 得 の 分 野 に 限 っ た も の で は な く 、資 本 取 引 に つ い て も 観 察 さ れ る( 9 )。こ れ ら の 事 案 と 異 な り 、 み な し 配 当 の 額 の 計 算 に あ た っ て は 分 解 の 余 地 が な い と 判 示 し た の は な ぜ だ

(12)

法 人 税 戻 を 広 く ( み な し ) 配 当 課 税 に よ っ て 規 律 す べ く 、 つ ま り み な し 配 当 課 税 制 度 を 重 要 な 要 素 と す る 払 戻 課 税 の 枠 組 に よ る 規 律 を 強 化 す べ く 、 同 制 度 の 適 用 を 拡 張 的 に 捉 え る モ メ ン ト が あ る の で は な い か と い う 仮 説 を 提 示 す る に と ど め る 。 3 事 例 2 の 検 討 ( 混 合 配 当 の 取 扱 い ) 国 税 不 服 審 判 所 平 成 2 4 年 8 月 1 5 日 裁 決・裁 決 事 例 集 № 8 8 で 争 わ れ た 事 案 は 、 次 の よ う な も の で あ っ た 。 B 社 は 、 普 通 株 式 の ほ か 種 類 株 式 と し て 議 決 権 の あ る A 種 株 式 お よ び 議 決 権 の な い B 種 株 式 を 発 行 し て い た と こ ろ 、 B 種 株 式 に つ い て は 、 B 社 の 定 款 規 定 に よ り 一 定 の 期 日 ま で の 間 は 利 益 剰 余 金 か ら の 配 当 は 行 わ な い こ と と し て い た 。 B 社 は 、 利 益 剰 余 金 お よ び 資 本 準 備 金 の 配 当 に つ い て 別 々 の 議 案 と し て 決 議 し ( B 種 株 式 に 対 し て 利 益 剰 余 金 の 配 当 は 行 わ れ な い )、 株 主 X ( 請 求 人 ) に 対 す る 分 配 を 行 っ た 。 X は 、 上 記 配 当 が そ れ ぞ れ 会 社 法 上 は 別 々 の 法 律 行 為 と し て 成 立 し て い た( 1 0 ) と 請 求 人 ( 納 税 者 ) は 主 張 し 、 両 者 を 一 体 視 し た 上 で み な し 配 当 の 適 用 を 求 め る 課 税 庁 と 対 立 し て い た 。 審 判 所 は 、 前 提 と な る 法 令 解 釈 と し て 、 次 の よ う に 判 示 し た 。 「 改 正 後 の 剰 余 金 の 配 当 に つ い て 、法 人 税 法 第 2 3 条 第 1 項 第 1 号 は「 剰 余 金 の 配 当 (〔 中 略 〕資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 う も の〔 中 略 〕 を 除 く 。)」と 規 定 し 、同 法 第 2 4 条 第 1 項 第 3 号 は「 資 本 の 払 戻 し( 剰 余 金 の 配 当( 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 う も の に 限 る 。) の う ち 、〔 中 略 〕)」 と 規 定 し て い る と こ ろ 、 剰 余 金 の 配 当 の 原 資 に 資 本 剰 余 金 の 額 が 含 ま れ て い る 場 合 に は 、 当 該 剰 余 金 の 配 当 は 、「 資 本 余 剰 金 の 額 の 減 少 に 伴 う も の 」と し て 同 号 に 規 定 す る 資 本 の 払 戻 し に 該 当 す る も の と 解 さ れ 、 資 本 剰 余 金 と 利 益 剰 余 金 の 双 方 を 同 時 に 減 少 さ せ て 剰 余 金 の 配 当 を 行 っ た 場 合 も ま た 、 当 該 剰 余 金 の 配 当 に 係 る 全 額 が 同 号 に 規 定 す る 資 本 の 払 戻 し に よ る も の に 該 当 す る と 解 す る の が 相 当 で あ る 。」

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法 人 税 余 金 の 減 額 処 理 を し た 日 が 同 日 で あ る こ と を 指 摘 し 、「 X は 、同 日 に 資 本 剰 余 金 と 利 益 剰 余 金 の 双 方 を 同 時 に 減 少 し て 剰 余 金 の 配 当 を 行 っ た と い う こ と が で き 、 当 該 剰 余 金 の 配 当 の 原 資 に は 資 本 剰 余 金 の 額 が 含 ま れ て い る こ と と な る か ら 、こ の 場 合 、本 件 配 当 は 、そ の 全 額 が 法 人 税 法 第 2 4 条 第 1 項 第 3 号 に 規 定 す る 資 本 の 払 戻 し に よ る も の に 該 当 す る と 認 め る の が 相 当 で あ る 」 と 結 論 付 け た 。両 配 当 の 同 時 性 を 強 調 し 、「 当 該 剰 余 金 の 配 当 の 原 資 に は 資 本 剰 余 金 の 額 が 含 ま れ て い る こ と と な る 」 と 判 断 す る 点 か ら は 、 両 者 を 一 体 と し て 評 価 す る 姿 勢 が う か が え る( 1 1 ) 法 2 4 条 1 項 3 号 は 、 減 資 に 資 本 剰 余 金 が 含 ま れ る 場 合 に は 、( 利 益 剰 余 金 を 原 資 と す る 部 分 を 含 め て 一 体 的 に 扱 い ) み な し 配 当 と し て 交 付 原 資 額 基 準 に よ る 計 算 を 行 う こ と と し て い る 。 た だ し 重 要 な の は 、 み な し 配 当 計 算 に お け る 純 資 産 減 少 割 合 の 内 容 が 、( 資 本 剰 余 金 減 少 額 / 簿 価 資 産 価 額 )と し て 定 め ら れ て い る こ と で あ る ( 法 税 令 2 3 条 1 項 3 号 )( 1 2 )。 こ う し た 一 体 的 処 理 の 背 景 に は 、 計 算 の 順 序 に よ り 純 資 産 減 少 割 合 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 を 考 慮 し た 上 で の 整 理 を 果 た す 目 的 が あ っ た 。 「 資 本 剰 余 金 と 利 益 剰 余 金 の 双 方 を 同 時 に 減 少 し て 剰 余 金 の 配 当 を 行 っ た 行 為 を 「 資 本 の 払 戻 し 」 で は な く 、 そ れ ぞ れ 別 の 行 為 が 行 わ れ た も の と し て 処 理 す る 場 合 に は 、 資 本 剰 余 金 を 原 資 と す る 剰 余 金 の 配 当 と 利 益 剰 余 金 を 原 資 と す る 剰 余 金 の 配 当 の い ず れ が 先 に 行 わ れ た か が 問 題 と な り ま す 。 つ ま り 、 資 本 剰 余 金 を 原 資 と す る 剰 余 金 の 配 当 が 行 わ れ た 場 合 に は 資 本 金 等 の 額 と 利 益 積 立 金 額 と が 比 例 的 減 少 す る こ と と な り ま す が 、 利 益 剰 余 金 を 原 資 と す る 剰 余 金 の 配 当 が 行 わ れ た 場 合 に は 利 益 積 立 金 額 の み が 減 少 す る こ と と な る た め で す 。」 「 そ う す る と 、 こ れ ら の 行 為 に つ い て 税 制 が 統 一 的 な 取 扱 い を 定 め な い と す れ ば 、 事 後 の 調 査 等 で こ の 後 先 に つ い て 問 題 が 生 じ る こ と が 想 定 さ れ た た め 、 税 制 は 資 本 剰 余 金 と 利 益 剰 余 金 の 双 方 を 同 時 に 減 少 し て 剰 余 金 の 配 当 を 行 っ た 行 為 を 「 資 本 の 払 戻 し 」 と 整 理 し 、 計 算 も 原 資 に 基 づ い て 資 本

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法 人 税 っ た も の で す 。」( 1 3 ) こ う し た 整 序 を 重 視 す れ ば 、 先 後 関 係 に 関 す る 疑 義 が 生 じ る 同 時 処 理 に つ い て は 、 上 掲 ル ー ル に 取 り 込 む べ き と い う 実 質 的 な 判 断 が 背 後 に あ る と 評 価 で き る( 1 4 )。私 法 上 の 法 律 関 係 を 無 視 す る も の と い う 批 判 が あ り 得 る こ と が 認 識 さ れ つ つ も 、「 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 う も の 」 と い う 文 言 ( 課 税 要 件 ) の 解 釈 と し て 、 上 記 趣 旨 か ら 、 配 当 の 効 力 発 生 日 が 同 日 で あ る 複 数 配 当 を 包 含 す る こ と を 肯 定 す る も の で あ り 、 私 法 上 の 法 律 関 係 の 否 認 ( 引 き 直 し ) に は 当 た ら な い と し て 、 こ れ を 擁 護 す る 見 解 も 見 受 け ら れ る( 1 5 ) 上 記 裁 決 に 従 え ば 、 混 合 配 当 が 行 わ れ た 場 合 、 結 局 は 、 ① 資 本 剰 余 金 の 減 少 部 分 は 資 本 金 等 の 額 と 利 益 積 立 金 額 と の 比 例 的 減 少 、 ② 含 み 益 部 分 は 利 益 積 立 金 額 の 減 少 と い う 結 果 が も た ら さ れ る こ と に な る( 1 6 ) 4 事 例 3 の 検 討 ( 外 国 法 人 に よ る 資 本 の 払 戻 し ) 外 国 法 人 か ら 資 本 剰 余 金 を 原 資 と す る 配 当 を 受 領 し た 場 合 で あ っ て も 、 み な し 配 当 制 度 の 適 用 は あ り ( 東 京 地 判 平 成 2 1 年 1 1 月 1 2 日 判 タ 1 3 2 4 号 1 3 4 頁 )( 1 7 )、受 領 し た 株 主 は 当 該 配 当 に つ い て み な し 配 当 制 度 の 適 用 を 前 提 と し た 課 税 関 係 を 考 え る 必 要 が あ る 。 し か し な が ら 、 株 式 の 発 行 法 人 が 内 国 法 人 で あ る 場 合 は 、 み な し 配 当 の 起 因 と な る 事 由 が 発 生 し た と き 、 み な し 配 当 の 額 の 計 算 は 当 該 内 国 法 人 の 資 本 の 部 の 構 成 に 依 拠 し て 決 定 さ れ る こ と に な る か ら 、 そ の 支 払 に あ た っ て 株 主 に 通 知 を な す こ と が 義 務 付 け ら れ て い る( 所 税 2 2 5 条 1 項 2 号 )の に 対 し て 、 発 行 法 人 が 外 国 法 人 で あ る 場 合 に は 、 日 本 の 法 人 税 法 に 対 応 す る 資 本 の 部 の 計 算 は 行 わ れ て い な い の が 通 常 で あ る 。 実 務 上 は 、 「 外 国 の 制 度 に 基 づ く 当 該 分 配 の 会 計 上 ・ 税 務 上 の カ テ ゴ リ ー 分 類 や 金 額 計 算 方 法 を 考 慮 す る こ と な く 、 我 が 国 独 自 の 制 度 に 基 づ く 資 本 金 等 の 額 及 び 簿 価 純 資 産 価 額 の 再 計 算 を 行 う 必 要 が あ る 」と 考 え ら れ て い る( 1 8 )。た し か に 親 子 会 社 の よ う に 株 式 の 継 続 保 有 を 前 提 と し た 場 合 、 受 領 法 人 の み な し 配 当 課 税 に 連 動 し て 発 行 法 人 の

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法 人 税 お そ れ が あ る 。 こ の よ う に 考 え た 際 の 問 題 は 、 外 国 法 人 の ( 貸 借 対 照 表 記 載 の 水 準 を 超 え る ) 計 数 情 報 を い か に 把 握 す る か が 課 題 と な る 。 す な わ ち 、 こ れ ら の 情 報 の 資 料 収 集 と 証 明 に 関 す る 困 難 で あ る( 1 9 )。当 該 外 国 法 人 に 対 す る 支 配 関 係 、か つ 継 続 的 な 保 有 関 係 を 伴 わ な い 場 合 に は 、 資 料 収 集 す ら 難 し い 。 参 考 に な る の は 、 法 人 税 法 基 本 通 達 1 - 5 - 7 が 、 外 国 法 人 の 積 立 金 の 額 の う ち 「 令 第 8 条 第 1 項 《 資 本 金 等 の 額 》 の 規 定 に よ る 資 本 金 以 外 の 資 本 金 等 の 額 に 類 す る も の は 、 法 の 適 用 上 同 項 の 規 定 に よ る 資 本 金 以 外 の 資 本 金 等 の 額 に 該 当 す る も の と す る 」 と 定 め て い る こ と で あ る 。 ( こ れ 自 体 は 「 税 務 上 の 再 評 価 積 立 金 等 の カ テ ゴ リ ー に 係 る 判 定 に つ い て は 現 地 法 令 の 取 扱 い を 勘 案 す る と 述 べ て い る だ け 」と い う 評 価( 2 0 )も あ る も の の )ま ず 類 似 性 が 認 め ら れ る か 否 か を 検 証 し 、 そ れ が 肯 定 さ れ る 場 合 に 、 そ の 類 似 性 を 根 拠 と し て 法 人 税 法 上 の 資 本 金 等 の 額 と し て 用 い る こ と を 認 め る と い う 発 想 は 、 外 国 法 準 拠 の 法 律 行 為 に 関 す る 日 本 の 租 税 法 上 の 認 識 を 決 定 す る た め の 議 論 の 蓄 積 か ら も 基 礎 付 け ら れ る 可 能 性 が あ る( 2 1 ) そ の た め 、 実 務 上 原 則 と 考 え ら れ て い る 上 記 方 法 に 加 え 、 「 現 地 会 社 法 上 ( 会 計 上 ) の 資 本 金 プ ラ ス 資 本 剰 余 金 及 び 利 益 剰 余 金 の 金 額 を 、 本 邦 の 税 務 上 の 資 本 金 等 の 額 及 び 利 益 積 立 金 の 金 額 と み な し て 計 算 を し て い る ケ ー ス 」 で あ っ て も 、 当 該 現 地 会 社 法 上 の 概 念 が わ が 国 の そ れ と 類 似 し て い る の で あ れ ば 、 か か る 例 外 的 な 計 算 方 法 も 許 容 さ れ る と 考 え る べ き で は な い か ( 法 基 通 1 - 5 - 7 後 段 参 照 ) 。 も っ と も 、 そ う 考 え た と し て も 、 当 該 現 地 会 社 法 上 の 概 念 が わ が 国 の 概 念 と 乖 離 し て い る 場 合 に は 、 こ う し た 例 外 的 な 計 算 方 法 を 認 め る 理 論 的 根 拠 は 容 易 に 見 出 し が た い 。す で に 先 行 業 績 で 指 摘 さ れ て い る よ う に( 2 2 )、立 法 的 対 応 を 含 め た 具 体 的 指 針 の 策 定 が 求 め ら れ る 。

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法 人 税 以 上 の 通 り 、 会 社 法 や 企 業 会 計 と 区 別 さ れ た 法 人 税 法 固 有 の 目 的 ・ 機 能 に 基 づ く 考 え 方 が 、 み な し 配 当 課 税 制 度 の 整 備 を 推 し 進 め て て き た 。 そ れ は 当 然 の 帰 結 と し て 、 会 社 法 上 は 複 数 行 為 の 先 後 が 生 じ 得 る 場 合 に も 、 税 制 上 統 一 的 な 取 扱 い を 提 供 す る こ と を 意 図 し て 規 定 を 定 め て い る 。 そ の た め 、 事 案 の 解 決 に あ た っ て も 、 整 序 の 規 律 を 重 視 し た 解 釈 論 に 妥 当 性 が 認 め ら れ る こ と に な る ( 事 例 2 ) 。 ま た 、 み な し 配 当 課 税 制 度 を 含 め た 払 戻 課 税 の 枠 組 み が 、 法 人 ・ 株 主 間 の 利 益 移 転 を 広 く カ バ ー す る よ う な 方 向 で 解 釈 論 が 展 開 さ れ て い る よ う に も 思 わ れ る ( 事 例 1 ) 。 し か し な が ら 、 そ の 一 方 で 、 発 行 法 人 に よ る 資 本 の 部 の 計 算 を 前 提 に 精 緻 に 作 ら れ た 制 度 は 、 外 国 法 人 か ら の 払 戻 を 規 律 す る に は 執 行 上 の 問 題 を 抱 え る こ と に な る ( 事 例 3 ) 。 立 法 論 を 含 め 、 さ ら な る 検 討 が 必 要 な 場 面 で あ ろ う 。

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法 人 税 ( 1 ) 中 尾 睦 ほ か『 改 正 税 法 の す べ て ・ 平 成 1 3 年 版 』( 大 蔵 財 務 協 会 、 2 0 0 1 年 ) 1 3 4 頁 。 ( 2 ) そ の 顕 著 な 例 は 、 会 社 法 の 制 定 を 契 機 に 、 「 資 本 金 等 の 額 」 と し て 「 法 人 が 株 主 等 か ら 出 資 を 受 け た 金 額 」 、 ま た 「 利 益 積 立 金 額 」 と し て 「 法 人 の 所 得 の 金 額 で 留 保 し て い る 金 額 」 と す る 定 義 規 定 に よ っ て 、 そ れ ぞ れ の 概 念 の 明 確 化 が 図 ら れ た こ と ( 法 税 2 条 1 6 号 お よ び 1 8 号 ) で あ ろ う 。 青 木 孝 徳 ほ か 『 改 正 税 法 の す べ て ・ 平 成 1 8 年 版 』( 大 蔵 財 務 協 会 、 2 0 0 6 年 ) 2 4 2 - 2 4 3 頁 。 ( 3 ) 旧 法 人 税 基 本 通 達 3 - 1 - 7 の 5 。 ( 4 ) 青 木 ほ か ・ 前 掲 注 ( 2 ) 2 6 2 頁 。 ( 5 ) 長 戸 貴 之 「 判 批 」 ジ ュ リ 1 4 6 1 号 1 2 9 頁 ( 2 0 1 3 年 ) 。 ( 6 ) 品 川 芳 宣 「 判 批 」 税 研 1 5 8 号 7 7 頁 ( 2 0 1 1 年 ) 。 ( 7 ) 価 値 の 均 衡 が 要 求 さ れ な い と い う 代 物 弁 済 の 法 的 性 格 に も 特 段 言 及 は な か っ た 。 長 戸 ・ 前 掲 注 ( 5 ) 1 2 9 頁 参 照 。 ( 8 ) 金 子 宏 「 譲 渡 所 得 の 意 義 と 範 囲―二 重 利 得 法 の 提 案 も 含 め て ― 」 『 課 税 単 位 及 び 譲 渡 所 得 の 研 究 』 ( 有 斐 閣 、 1 9 9 6 年 ) 1 1 3 頁 。 ( 9 ) 品 川 ・ 前 掲 注( 6 )7 7 頁 は 、 本 判 決 に 対 す る 批 判 の 論 拠 と し て 、 増 資 に つ い て 、 取 得 し た 株 式 の 時 価 相 当 額 を 上 回 る 部 分 の 増 資 払 込 額 を 寄 附 金 と 認 定 し た 裁 判 例( 福 井 地 裁 平 成 1 3 年 1 月 1 7 日 判 決( 税 資 2 5 0 号 順 号 8 8 1 5 )、 名 古 屋 高 裁 平 成 1 4 年 5 月 1 5 日 判 決( 税 資 2 5 2 号 順 号 9 1 2 1 )、 東 京 地 裁 平 成 1 2 年 1 1 月 3 0 日 判 決 ( 税 資 2 4 9 号 8 8 4 頁 ) 等 ) を 挙 げ る 。 ( 1 0 ) B 社 は 、 取 締 役 会 に お い て 、 利 益 剰 余 金 を 原 資 と す る 配 当 に つ い て は 、 普 通 株 式 お よ び A 種 株 式 に 割 り 当 て る こ と 、 資 本 剰 余 金 の 配 当 に つ い て は 、 普 通 株 式 、 A 種 株 式 お よ び B 種 株 式 に 割 り 当 て る こ と を 別 々 の 議 案 と し て 決 議 し て お り 、 会 社 法 上 、 そ れ ぞ れ 別 々 の 法 律 行 為 と し て 成 立 し て い る 旨 を 主 張 し て い た 。 ( 1 1 ) こ の 結 論 に 賛 成 す る も の と し て 、 大 島 恒 彦 「 資 本 と 利 益 の 同 時 、 混 合 配 当 に 関 す る 裁 決 事 例 ( 平 成 2 4 年 8 月 1 5 日 審 判 所 裁 決 ) の 争 点 と そ の 問 題 点 」 租 税 研 究 7 7 1 号 2 7 8 頁 ( 2 0 1 4 年 ) 。 ( 1 2 ) な お 、 青 木 ・ 前 掲 注 ( 4 ) 2 5 6 頁 に よ る 解 説 は 次 の 通 り 。 「 資 本 剰 余 金 と 利 益 剰 余 金 の 双 方 を 同 時 に 減 少 し て 剰 余 金 の 配 当 を 行 っ た 場 合 に は 、 全 体 が 資 本 の 払 戻 し と な る も の の 、 上 記 算 式 の 分 数 の 分 子 が 「 交 付 し た 金 銭 の 額 及 び 金 銭 以 外 の 資 産 の 価 額 」 で は な く 「 減 少 し た 資 本 剰 余 金 の 額 」 と さ れ て い る た め 、 資 本 剰 余 金 の 減 少 額 の 範 囲 内 で ま ず 資 本 金 等 の 額 が 減 少 し 、 交 付 し た 金 銭 の 額 及 び 金 銭 以 外 の 資 産 の 価 額 の 合 計 額 の う ち そ の 減 少 資 本 金 等 の 額 を 超 え る 部 分 の 金 額 が 利 益 積 立 金 額 の 減 少 額 ( 株 主 に と っ て は み な し 配 当 の 額 ) と な り ま す 。 つ ま り 、 資 本 剰 余 金 原 資 部 分 は 資 本 金 等 の 額 と 利 益 積 立 金 額 と の 比 例 的 減 少 と 、 利 益 剰 余 金 部 分 は 利 益 積 立 金 額 の 減 少 と な る と い う こ と で す 。 」 ( 1 3 ) 長 井 伸 仁 「 大 規 模 法 人 に 対 す る 審 理 上 の 留 意 事 項 ( そ の 2 . 連 結 納 税 制 度 を 中 心 に ) 」 租 税 研 究 7 3 8 号 9 9 - 1 0 0 頁 ( 2 0 1 1 年 ) 。 ( 1 4 ) 長 井 ・ 同 上 1 0 0 頁 は 、「 資 本 の 払 戻 し に つ い て 、 法 人 税 法 第 2 4 条 第 1 項 第 3 号 は 、 「 資 本 の 払 戻 し ( 剰 余 金 の 配 当 〈 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 う も の に 限 る 。 〉 の う ち 、 … ) 」 と 規 定 し て い る の み で あ っ て 、 1 つ の 決 議 に よ る 場 合 と 2 つ の 決 議 に よ る 場 合 と で そ の 取 扱 い を 区 分 し て い る も の で は あ り ま せ ん 。 し た が っ て 、 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 を 伴 う 剰 余 金 の 配 当

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法 人 税 で あ れ ば 「 資 本 の 払 戻 し 」 に 該 当 す る こ と と な り ま す 。 」 ( 1 5 ) 太 田 洋 = 伊 藤 剛 志 『 企 業 取 引 と 税 務 否 認 の 実 務 』 ( 大 蔵 財 務 協 会 、 2 0 1 5 年 ) 5 3 9 - 5 4 0 頁 〔 伊 藤 剛 志 執 筆 担 当 部 分 〕 。 ( 1 6 ) な お 、 利 益 積 立 金 額 が マ イ ナ ス と な っ て い る 場 合 を 除 き 、 法 人 税 法 2 3 条 1 項 1 号 お よ び 同 項 3 号 そ れ ぞ れ の 適 用 の 先 後 関 係 は 課 税 関 係 に 影 響 を 生 じ な い 点 に 注 意 が 必 要 で あ る 。 太 田 = 伊 藤 ・ 同 上 5 5 2 頁 。 ( 1 7 ) 先 駆 的 な 研 究 と し て 、 増 井 良 啓 「 外 国 会 社 か ら の 現 物 分 配 と 所 得 税 ― 国 税 不 服 審 判 所 平 成 1 5 年 4 月 9 日 裁 決 を 素 材 と し て 」税 務 事 例 研 究 8 4 号 4 1 頁 ( 2 0 0 5 年 ) 。 ( 1 8 ) 例 え ば 、 日 本 公 認 会 計 士 協 会 「 国 外 に お け る 組 織 再 編 等 に 係 る 国 内 税 法 の 適 用 関 係 に つ い て ( 中 間 報 告 ) 」 1 2 頁 ( 2 0 0 9 年 ) 、 諸 星 健 司 『 み な し 配 当 を め ぐ る 法 人 税 実 務 』 ( 税 務 研 究 会 出 版 局 、 2 0 1 2 年 ) 1 7 9 頁 。 ( 1 9 ) 増 井 良 啓 「 外 国 会 社 か ら の 現 物 分 配 と 所 得 税 ― 再 論 」 税 務 事 例 研 究 1 2 6 号 6 5 頁 ( 2 0 1 2 年 ) 。 ( 2 0 ) 日 本 公 認 会 計 士 協 会 ・ 前 掲 注 ( 1 8 ) 1 2 頁 注 1 0 。 ( 2 1 ) 最 判 平 成 最 高 裁 平 成 2 7 年 7 月 1 7 日 は 、 わ が 国 に お け る 概 念 を 基 準 と し つ つ も 、 そ れ に 相 当 し た 概 念 が 外 国 法 に あ る こ と を 前 提 と し た 判 断 枠 組 を 提 示 し て い る 。 同 判 決 を い か に 咀 嚼 す る か は 今 後 の 議 論 に 委 ね ら れ て い る が 、 こ こ で 取 り 上 げ た 問 題 に も 応 用 可 能 な 視 点 が 存 在 し て い る よ う に 思 わ れ る 。 ( 2 2 ) 日 本 公 認 会 計 士 協 会 ・ 前 掲 注( 1 8 )1 3 頁 、 増 井 ・ 前 掲 注( 1 9 )6 0 ペ ー ジ 。

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所 得 税

必 要 経 費 判 定 に お け る 債 務 の 確 定 の 意 義

同 志 社 大 学 教 授

田 中

( 1 )個 人 で 採 石 業 を 営 む P は 、山 林 を 借 り 受 け て 石 を 採 取 し て い る と こ ろ 、 当 該 山 林 所 有 者 と の 間 で 、 採 取 後 は 採 石 跡 地 を 元 通 り に 埋 め 戻 し た 上 、 植 林 を し て 返 還 す る 旨 を 約 定 し て い る 。こ の よ う な 採 石 跡 地 の 埋 戻 し や 植 林 に 要 す る 費 用( 以 下 「 自 然 環 境 回 復 費 」と い う )は 、P の 事 業 所 得 の 計 算 上 、 い つ 、 ど の よ う に 処 理 さ れ る べ き か 。 採 石 の 対 象 と な る 山 林 が P の 自 己 所 有 の 土 地 上 に あ る 場 合 は ど の よ う に 取 り 扱 わ れ る べ き か 。 ( 2 ) 個 人 で 自 動 車 販 売 業 を 営 む Q は 、 本 年 1 0 月 1 日 か ら 1 2 月 2 0 日 ま で の 間 に 行 っ た 増 販 コ ン テ ス ト に お い て 優 秀 な 成 績 を 修 め た 従 業 員 を 翌 年 1 月 末 に オ ー ス ト ラ リ ア 旅 行 に 招 待 す る こ と と し 、従 業 員 に 対 し て そ の 旨 お よ び 達 成 す べ き 販 売 額 基 準 を 周 知 し た と こ ろ 、1 2 月 2 0 日 時 点 に お い て 、こ の 販 売 額 基 準 を 超 え た 従 業 員 が 1 0 人 い る こ と が 判 明 し た 。 Q は 、 旅 行 会 社 と 相 談 し 、 本 件 旅 行 費 用 は 一 人 当 た り 2 0 万 円 と の 見 積 り の 下 、1 2 月 2 5 日 に 2 0 0 万 円 の 旅 行 ギ フ ト 券 を 購 入 し 、そ の 代 金 を 当 該 旅 行 会 社 に 支 払 っ た 。翌 年 に な り 、上 記 の 販 売 額 基 準 を 満 た し た 従 業 員 が 更 に 2 人 い る こ と が 判 明 し た が 、他 方 で 入 賞 者 の 中 か ら 1 名 の 辞 退 者 が 出 た た め 、 実 際 の 旅 行 は 1 1 名 を 招 待 す る 結 果 と な っ た 。 上 記 の 旅 行 ギ フ ト 券 の 代 金 と し て 支 払 っ た 2 0 0 万 円 は 、Q の 事 業 所 得 の 計 算 上 、 当 該 年 分 の 必 要 経 費 に 算 入 す る こ と が で き る か 。 事 例

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所 得 税 ( 3 ) 医 師 R は 、 病 院 ス タ ッ フ を 8 人 雇 用 し て 個 人 で 病 院 を 経 営 し て い る 。 長 年 に わ た っ て 青 色 申 告 を し て き た 。従 業 員 の 中 に は 、生 計 を 一 に す る 妻 で 薬 剤 師 と し て 勤 務 し 、 青 色 事 業 専 従 者 で あ る 者 ( S ) お よ び 生 計 を 別 に す る 子 で 医 師 免 許 を 持 つ 者 ( T ) が 含 ま れ る 。 事 業 主 で あ る R が 本 年 1 1 月 3 0 日 に 急 死 し た た め 、 病 院 事 業 は T が 承 継 す る こ と と し た 。 T が 新 た に 病 院 開 設 の 許 可 を 得 る と と も に 、S は い っ た ん 退 職 届 を 出 し た 後 、 引 き 続 き 、 同 病 院 に 薬 剤 師 と し て 勤 務 を 継 続 す る こ と と し た 。 当 該 病 院 の 就 業 規 則 に お い て は 、6 月 1 日 お よ び 1 2 月 1 日 に 在 職 す る 者 に 対 し て そ れ ぞ れ 所 定 の 賞 与 を 支 給 す る 旨 の 賞 与 規 程 、な ら び に 、満 6 0 歳 時 の 退 職 、従 業 員 の 死 亡 等 に よ る 退 職 、自 己 都 合 に よ る 退 職 等 に 関 す る 退 職 金 規 程 が 定 め ら れ て い た 。 R に 係 る 準 確 定 申 告 に お い て 、 S が 本 年 1 2 月 に お い て 受 け る べ き 賞 与 に つ い て 、R の 事 業 所 得 の 計 算 上 必 要 経 費 に 算 入 す る こ と が で き る か 。 ま た 、 相 続 の 開 始 後 、 T が 自 ら に 対 し て 、 R の 雇 用 契 約 下 に お い て 支 払 わ れ る べ き 退 職 金 を 支 給 し た 場 合 、 R の 事 業 所 得 の 計 算 上 必 要 経 費 に 算 入 す る こ と が で き る か 。

は じ め に

本 稿 は 、 所 得 税 法 ( 以 下 「 法 」 と い う こ と が あ る ) 3 7 条 に 定 め る 「 債 務 の 確 定 」を め ぐ る 紛 争 例 の い く つ か を 素 材 に 、債 務 の 確 定( 以 下 「 債 務 確 定 」と い う こ と も あ る ) の 判 断 基 準 に 関 す る 解 釈 論 上 の 争 点 と 問 題 点 を 検 討 す る も の で あ る 。 法 3 7 条 1 項 は 、 必 要 経 費 の う ち 「 そ の 年 に お け る 販 売 費 、 一 般 管 理 費 そ の 他 こ れ ら の 所 得 を 生 ず べ き 業 務 に つ い て 生 じ た 費 用 」 に 係 る 括 弧 書 き の 中 で 、「 償 却 費 以 外 の 費 用 で そ の 年 に お い て 債 務 の 確 定 し な い も の を 除 く 」と 定 め 、 販 売 費 、 一 般 管 理 費 等 ( 以 下 「 販 管 費 等 」 と い う ) に つ い て は 、 「 そ の 年

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所 得 税 に お い て 債 務 の 確 定 し な い も の を 除 く 」 旨 を 明 示 し て い る 。 こ れ が 一 般 に 債 務 確 定 基 準 と 呼 ば れ て い る も の で あ る 。 と は い え 、実 定 法 上「 債 務 」や 「 債 務 の 確 定 」に 関 す る 定 義 規 定 は な い 。こ の よ う な 状 況 の 下 で 、 債 務 確 定 の 意 味 、 範 囲 、 趣 旨 に つ い て 必 ず し も 共 通 の 理 解 は な く 、 見 解 の 対 立 や 紛 争 が 生 じ て い る 。 第 一 に 、 必 要 経 費 該 当 性 を 判 断 す る 際 に 、 広 く 「 債 務 確 定 主 義 」 と い う 一 般 的 な 基 準 が 存 在 す る と 考 え る べ き か ど う か と い う 問 題 が あ る 。 こ れ に つ い て は 、 文 言 を 見 る 限 り 、 債 務 確 定 の 規 定 は 、 販 管 費 等 の 「 費 用 」 に 関 す る も の で あ っ て 、 「 原 価 」 に 関 し て は こ の 規 定 は 及 ば な い と す る 見 解 と 、 債 務 の 確 定 は 必 要 経 費 全 般 を 規 律 す る 一 般 的 基 準 で あ っ て 、 「 原 価 」 に つ い て も 当 然 に こ の 規 定 が 及 ぶ と す る 見 解 と が 対 立 す る 。 こ の よ う に し て 、 債 務 確 定 の 要 件 が 原 価 に 関 し て も 及 ぶ か ど う か 、 ま た 、 原 価 に 関 す る 費 用 収 益 対 応 の 原 則 と 債 務 確 定 の 要 件 と が ど の よ う な 関 係 に あ る の か 、 な ど が 問 わ れ る こ と に な る ( 事 例 1 ) 。 第 二 に 、 販 管 費 等 に 関 し て 債 務 確 定 要 件 を 当 て は め る 場 合 、 債 務 が 確 定 す る と は 具 体 的 に ど の よ う な こ と か 、 こ れ を ど の よ う な 基 準 で 判 断 す べ き か が 問 題 と な る 。 そ の 判 断 に つ い て は 、 課 税 実 務 は 、 所 得 税 基 本 通 達 3 7 - 2 に 基 づ き 、 費 用 に 係 る 債 務 の 成 立 、 給 付 原 因 と な る 事 実 の 発 生 、 金 額 の 合 理 的 算 定 の 可 能 性 と い う 3 要 件 の 全 て を 充 足 す る こ と を 求 め て い る が 、 こ れ ら の 要 件 は 通 達 上 の も の で あ り 、 法 的 な 拘 束 力 は な い 。 ま た 、 課 税 実 務 上 の こ れ ら の 判 断 基 準 が そ れ な り の 合 理 性 が あ る と し て も 、 そ の 意 味 内 容 は 一 義 的 で は な く 、 事 案 に よ っ て は そ の 範 囲 、 内 容 に 関 し て 見 解 が 対 立 す る 。 こ の よ う に 、 販 管 費 等 に 関 す る 明 確 で 一 義 的 な 債 務 確 定 の 判 断 基 準 を 得 る の は 容 易 で は な い 。 債 務 確 定 を 判 断 す る 際 の 合 理 的 で 適 正 な 処 理 は ど う あ る べ き か が 問 わ れ る 。 そ の 際 に は 、 債 務 の 確 定 は な ぜ 求 め ら れ る の か 、 そ の こ と に よ っ て 守 る べ き 法 益 は 何 か 、 と い う 考 慮 を 併 せ て 個 別 に 検 討 す る こ と が 求 め ら れ る で あ ろ う ( 事 例 2 ) 。 第 三 に 、 債 務 確 定 の 要 件 は 、 同 じ く 法 人 税 法 の 規 定 に も あ り ( 法 税 2 2 条

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所 得 税 3 項 2 号 ) 、 こ の 点 で 法 人 税 に お け る そ れ と 共 通 す る 問 題 状 況 に あ る と い え る が 、 他 方 で は 、 所 得 税 の 場 面 で 必 要 経 費 該 当 性 の 判 断 を す る 際 に 、 法 人 税 と は 違 う 考 慮 要 素 が あ る の か ど う か 、 が 問 題 と な る 。 例 え ば 、 事 業 主 の 死 亡 に よ り 雇 用 関 係 に 変 動 が 生 じ た 場 合 ま た は そ の 後 に 支 給 さ れ る 退 職 金 や 賞 与 に つ い て 、 こ れ ら の 金 員 が 当 該 事 業 主 の 必 要 経 費 に 該 当 す る か ど う か は 、 法 人 税 と 対 比 す る な ら ば 、 必 ず し も 単 純 な 問 題 で は な い 。 そ の 理 由 の 一 つ と し て 、 個 人 事 業 に つ い て は 、 法 人 の そ れ と は 異 な り 、 使 用 者 の 死 亡 に よ り 事 業 の 継 続 が 維 持 で き な い 場 合 、 従 前 の 雇 用 契 約 関 係 が い わ ば 強 制 的 に 絶 た れ る 場 合 等 が あ り 、 こ の よ う な 個 別 的 事 情 を 考 慮 す べ き 必 要 が あ る か ら で あ る 。 事 案 に よ っ て は 、 事 業 主 の 死 亡 に よ っ て 、 そ も そ も 賞 与 や 退 職 金 支 給 の 債 務 が 確 定 し た か ど う か に つ い て 、 関 連 す る 法 規 等 と の 関 係 を 含 め て 、 見 解 が 分 か れ 対 立 す る 場 合 が あ る 。 事 例 3 は そ の よ う な 例 を 取 り 扱 う も の で あ る 。

債 務 の 確 定 の 意 義 と 役 割 - 概 論

1 関 連 法 規 と 通 達 法 3 7 条 は 、必 要 経 費 に 算 入 す べ き 金 額 は 、別 段 の 定 め が あ る も の を 除 き 、 こ れ ら の 所 得 の 総 収 入 金 額 に 係 る 「 売 上 原 価 そ の 他 当 該 総 収 入 金 額 を 得 る た め 直 接 に 要 し た 費 用 の 額 及 び そ の 年 に お け る 販 売 費 、 一 般 管 理 費 そ の 他 こ れ ら の 所 得 を 生 ず べ き 業 務 に つ い て 生 じ た 費 用 ( 償 却 費 以 外 の 費 用 で そ の 年 に お い て 債 務 の 確 定 し な い も の を 除 く 。 ) の 額 と す る 」 と 定 め る 。 こ れ ら の 文 言 は 、 法 人 税 法 上 損 金 に 算 入 す べ き 金 額 と し て 掲 げ ら れ て い る 「 原 価 の 額 」 ( 法 税 2 2 条 3 項 1 号 ) お よ び 「 販 売 費 、 一 般 管 理 費 そ の 他 の 費 用 ( 償 却 費 以 外 の 費 用 で 当 該 事 業 年 度 終 了 の 日 ま で に 債 務 の 確 定 し な い も の を 除 く 。 ) の 額 」( 同 2 号 ) に 対 応 し 、か つ こ れ と 基 本 的 に 同 一 の 表 現 を と る も の で あ っ て 、 そ の 意 味 内 容 は 同 じ と 考 え て よ い で あ ろ う 。 す な わ ち 、 費 用 の う ち 、 売 上 原 価 の よ う に 特 定 の 収 益 と の 対 応 関 係 を 明 ら

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所 得 税 か に で き る も の は 、 当 該 収 益 と 同 じ 年 度 に 費 用 と し て 計 上 す べ き で あ る 。 企 業 会 計 上 の 費 用 収 益 対 応 の 原 則 は 、 期 間 損 益 を 正 確 に 把 握 す る た め に 、 収 益 と そ れ を 生 み 出 す の に 要 し た 費 用 と は 同 一 の 会 計 年 度 に 計 上 す べ き こ と を 求 め る も の ( 個 別 対 応 ) で あ り 、 こ の 費 用 収 益 対 応 の 原 則 は 法 人 お よ び 個 人 の 課 税 所 得 計 算 に つ い て も 妥 当 す る と い う べ き で あ ろ う( 1 )。他 方 、販 管 費 等 の よ う に そ の 対 応 を 明 ら か に で き な い も の は 、 原 則 と し て そ れ が 発 生 し た 年 度 の 費 用 と し て 計 上 す べ き で あ る ( 期 間 対 応 ) が 、 こ れ に つ い て は 、 実 定 税 法 に よ っ て 、 債 務 確 定 基 準 を 満 た し た も の に 限 っ て 費 用 計 上 を 認 め る と い う 制 約 を 課 し て い る と い う こ と が で き る 。 問 題 は 、 実 定 税 法 が 定 め る 「 債 務 の 確 定 」 の 意 味 と そ の 効 力 範 囲 ( 原 価 に 及 ぶ か 否 か 、 な ど ) で あ る 。 こ の 点 に 関 し て 、 法 3 7 条 関 係 の 通 達 に は 次 の よ う な 定 め が あ る 。 第 一 に 、 売 上 原 価 そ の 他 の 直 接 費 用 に つ い て も 、 「 そ の 年 に お い て 債 務 の 確 定 し た も の に 限 る 」と し て い る ( 所 基 通 3 7 - 1 )。こ れ は 、別 段 の 定 め が あ る も の を 除 き 、 売 上 原 価 等 に つ い て 、 債 務 が そ の 年 中 で 確 定 し て い る こ と を 要 す る と い う 債 務 確 定 主 義 の 適 用 が あ る こ と を 明 ら か に し た も の で あ る と 説 明 さ れ る( 2 )。な お 、法 人 税 法 に お け る 同 種 の 通 達 は 、昭 和 5 5 年 ま で は 上 記 と 同 様 の 定 め で あ っ た が 、 同 年 に こ れ を 改 め 、 売 上 原 価 等 と な る べ き 費 用 の 額 が 事 業 年 度 終 了 の 日 ま で に 確 定 し て い な い 場 合 に は 、 「 同 日 の 現 況 に よ り そ の 金 額 を 適 正 に 見 積 も る も の と す る 」(法 基 通 2 - 2 - 1 )と 定 め て お り( 3 ) こ の 点 で は 、 通 達 相 互 の 定 め に 違 い が 見 ら れ る 。 お そ ら く 、 文 理 上 、 債 務 確 定 を 要 す る と す る 規 定 は 販 管 費 等 に 限 っ て 定 め ら れ て い る と 解 す る の が 自 然 で あ ろ う 。 ま た 、 所 得 税 法 に い う 原 価 と 法 人 税 法 に い う 原 価 と を 別 異 に 解 す べ き 理 由 が な い と す る な ら ば 、 所 得 税 基 本 通 達 の こ の 解 釈 は 、 法 の 規 定 の 範 囲 を 超 え て 、 原 価 に 関 し て 債 務 確 定 の 要 件 を 課 す も の と い う べ き で あ ろ う 。 そ の 法 的 根 拠 と 意 味 、 お よ び そ の 妥 当 性 が 問 わ れ る べ き こ と に な る 。 第 二 に 、 基 本 通 達 は 、 債 務 の 確 定 の 意 義 に 関 し 、 ① 債 務 の 成 立 、 ② 具 体 的 給 付 原 因 の 発 生 、 ③ 金 額 の 合 理 的 算 定 の 可 能 性 の 3 つ の 要 件 を 全 て 満 た し た

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所 得 税 場 合 に 、 債 務 の 確 定 が あ っ た も の と し て い る 。 と は い え 、 そ れ ぞ れ の 要 件 の 意 味 は そ れ ほ ど 明 確 で は な い 。 課 税 実 務 は 、 ① に つ い て は 、 費 用 の 額 が 確 定 し て い て も 、 誰 が そ れ を 負 担 す る か が 決 め ら れ て い な い 場 合 に は 債 務 の 確 定 は な い 、 ② に つ い て は 、 故 障 が あ っ た ら 無 償 で 修 理 す る 旨 の 契 約 が あ っ た と し て も 、 現 実 に 修 理 が 行 わ れ て い な い 限 り 見 積 費 用 の 計 上 は で き な い 、 ③ に つ い て は 、 交 渉 中 の 損 害 賠 償 金 に 関 し 、 金 額 の 確 定 が で き な い も の は 原 則 と し て 必 要 経 費 に 算 入 で き な い 、 な ど と そ れ ぞ れ 説 明 す る( 4 ) 債 務 確 定 の 意 義 や 範 囲 は 、 上 記 の 基 本 通 達 の 定 め に よ っ て も 必 ず し も は っ き り し な い 。 そ う す る と 、 そ も そ も 、 債 務 確 定 の 要 件 は な ぜ 必 要 か 、 ど こ ま で の 範 囲 に 及 ぶ べ き か と い う 論 点 に 立 ち 返 っ て 改 め て 検 討 す る こ と が 必 要 に な る で あ ろ う 。 と は い え 、 こ の 点 に つ い て も 、 こ れ ま で 必 ず し も 十 分 な 議 論 が あ る と は い え な い で あ ろ う 。 こ の 債 務 確 定 基 準 の 規 定 に つ い て は 、 こ れ ま で 伝 統 的 に は 、 実 定 税 法 が 明 文 で 認 め た 引 当 金 を 除 き 、引 当 金 に よ る 見 越 ( 見 積 )計 上 を 認 め な い 趣 旨 で あ る と 理 解 さ れ て き た( 5 )。他 方 、こ れ に 対 し て は 、債 務 の 確 定 を 上 記 の よ う に 狭 く 解 す べ き で は な く 、 債 務 の 確 定 が 確 実 で あ り 、 か つ そ の 金 額 を 正 確 に 確 認 で き る 限 り 、費 用 の 見 越 は 許 さ れ る と す る 批 判( 6 )が あ る 。私 は 、 後 に 述 べ る よ う に 、 こ の 批 判 に は よ り 大 き な 合 理 性 と 説 得 力 が あ る と 考 え る も の で あ る 。 2 企 業 会 計 の 考 え 方 と 債 務 確 定 基 準 と の 関 係 課 税 所 得 の 意 義 や 範 囲 を 考 え る 際 、 税 法 と 企 業 会 計 と の 関 係 を ど の よ う に 考 え る か 。 税 法 自 体 に 別 段 の 定 め が な い 限 り 、 課 税 所 得 の 算 定 は 、 「 一 般 に 公 正 妥 当 と 認 め ら れ る 会 計 処 理 の 基 準 」 ( 法 税 2 2 条 4 項 ) に 従 っ て 処 理 さ れ る 。 こ の よ う に 課 税 所 得 計 算 は 、 合 理 的 な 企 業 会 計 の 基 礎 の 上 に 立 っ て い る と い う こ と が で き る 。 も っ と も 、 何 が 一 般 に 公 正 妥 当 な 会 計 処 理 の 基 準 で あ る か は 必 ず し も 明 確 で は な く 、 ま た 、 租 税 法 律 主 義 の 原 則 と の 関 係 に お い て は 企 業 会

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所 得 税 計 の 処 理 基 準 や 慣 行 の 全 て に 税 法 が 当 然 に 従 う と い う こ と に は な ら な い で あ ろ う が 、 合 理 的 な 企 業 会 計 の 考 え 方 や 基 準 は 、 税 法 の 法 解 釈 に お い て も 、 適 切 に 尊 重 さ れ る べ き で あ ろ う 。 企 業 会 計 は 、 特 定 さ れ た 将 来 の 支 出 に つ き 、 こ れ を 見 越 ( 見 積 ) 計 上 す る こ と を 求 め る こ と が あ る 。 す な わ ち 、 そ の 発 生 が 当 期 以 前 の 事 象 に 起 因 し 、 発 生 の 可 能 性 が 高 く 、 か つ そ の 金 額 を 合 理 的 に 見 積 も る こ と が で き る 場 合 に お い て 、 当 該 金 額 を 引 当 金 に 繰 り 入 れ る こ と が 求 め ら れ る ( 企 業 会 計 原 則 注 解 ・ 注 1 8 ) 。 お そ ら く 、 こ の よ う な 見 越 計 上 は 、 基 本 的 に 、 企 業 会 計 上 の 保 守 主 義 の 原 則( 企 業 会 計 原 則 第 一 の 六 )か ら 導 か れ る も の と 思 わ れ る( 7 )。一 般 原 則 の 第 六 と し て 、 保 守 主 義 の 原 則 は 、 「 企 業 の 財 政 に 不 利 な 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る 場 合 に は 、 こ れ に 備 え て 適 当 に 健 全 な 会 計 処 理 を し な け れ ば な ら な い 」 と す る 。保 守 主 義 の 原 則 は 、安 全 性 の 原 則 あ る い は 慎 重 性 の 原 則 と も い わ れ 、 将 来 の 不 確 実 性 に 対 処 し て 企 業 の 存 続 を 図 る べ く 、 費 用 や 損 失 を 予 想 し て 早 期 に 計 上 す る と と も に 、 収 益 の 計 上 は そ れ が 確 実 に な る ま で 待 て ば よ い 、 と す る 考 え 方 と 説 明 さ れ る( 8 )。も っ と も 、こ の 保 守 主 義 が 過 度 に 行 わ れ る 場 合 は 、 企 業 の 経 済 的 事 実 を 反 映 し な く な り 、 も う 一 つ の 一 般 原 則 で あ る 真 実 性 の 原 則 に 反 す る こ と に な る た め 、 過 度 の 保 守 主 義 は 認 め ら れ な い ( 企 業 会 計 原 則 注 解 ・ 注 4 ) 。 さ ら に 、 企 業 会 計 上 の 対 応 原 則 の 存 在 が あ る 。 こ れ は 、 経 済 活 動 の 成 果 を 表 す 収 益 と そ れ を 得 る た め に 費 や さ れ た 犠 牲 と し て の 費 用 を 厳 密 に 対 応 付 け る こ と を 通 じ て 、 各 会 計 期 間 の 経 営 成 績 を い っ そ う 適 切 に 測 定 す る こ と を 求 め る 原 則 だ と さ れ る( 9 )。収 益 と 費 用 の 対 応 関 係 を 認 識 す る 方 法 と し て 、厳 密 な 対 応 付 け の 方 式 で あ る 、 特 定 の 財 貨 を 媒 介 と し て 収 益 と 費 用 と の 対 応 関 係 を 直 接 的 に 認 識 す る 方 式 ( 個 別 的 対 応 )と 、財 貨 を 媒 介 と し た 対 応 関 係 を 識 別 す る の が 困 難 な 場 合 に お け る 、 会 計 期 間 を 媒 介 と し た 対 応 関 係 を 認 識 す る 方 法( 期 間 的 対 応 )が あ る と さ れ る 。 企 業 会 計 原 則 は 、「 費 用 及 び 収 益 は 、 そ の 発 生 源 泉 に 従 っ て 明 瞭 に 分 類 し 、 各 収 益 項 目 と そ れ に 関 連 す る 費 用 項 目 と を

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所 得 税 損 益 計 算 書 に 対 応 表 示 し な け れ ば な ら な い 」 ( 第 二 の 一 C ) と す る 。 な お 、 こ の 対 応 原 則 の 定 め は 、 費 用 と 収 益 と の 質 的 、 数 量 的 相 関 関 係 を 求 め る も の で あ る が 、そ の よ う な 対 応 関 係 は 稀 で あ っ て 、現 実 的 に は 、 投 下 資 本 の 回 収 の 論 拠 と な っ て い る に す ぎ な い と も い わ れ る( 1 0 ) こ の よ う に 、 見 越 計 上 の 基 礎 に あ る 保 守 主 義 の 原 則 と い う 考 え 方 は 、 真 実 主 義 の 原 則 と い う 別 の 一 般 原 則 に よ っ て 制 約 を 受 け る 。 ま た 、 合 理 的 な 対 応 関 係 を 求 め る 企 業 会 計 上 の 費 用 収 益 対 応 関 係 の 原 則 か ら の 制 約 も あ る 。 加 え て 、 一 般 に 、 課 税 の 観 点 か ら は 、 可 能 な 限 り 、 早 期 か つ 確 実 に 税 収 を 確 保 す る と い う 要 請 や 企 業 の 恣 意 性 を 排 除 し 、 課 税 の 公 平 を 確 保 す る と い う 要 請 と 衝 突 し 、 一 定 の 制 約 を 受 け る こ と に な る 。 こ の よ う に し て 、 所 得 税 法 3 7 条 1 項 は 、 そ の 基 本 的 な 組 立 て と し て は 、 企 業 会 計 の 考 え 方 を 受 け 入 れ 、 か つ 前 提 と す る も の と い え る 。 各 年 分 の 課 税 所 得 の 正 確 な 算 定 と い う 要 請 か ら 、 当 該 規 定 は 、 費 用 収 益 対 応 の 原 則 に よ っ て 必 要 経 費 を 計 上 す る 時 期 に 関 連 し て 、 必 要 経 費 に つ き 、 売 上 原 価 の よ う に 収 入 に 直 接 対 応 さ せ る 費 用 ( 個 別 対 応 ) と 販 管 費 の よ う に そ の 年 分 の 費 用 ( 期 間 対 応 ) と す る も の か ら 成 っ て い る 、 と 説 明 さ れ る( 1 1 ) 他 方 で 、 所 得 税 法 3 7 条 1 項 の 販 管 費 等 に つ い て は 、 企 業 会 計 上 の 文 言 に は 存 在 し な い 債 務 確 定 基 準 が 明 文 で 定 め ら れ て い る 。 税 法 に よ っ て 定 め ら れ た 債 務 確 定 基 準 が 、 企 業 会 計 上 の 保 守 主 義 等 に 基 づ く 見 越 計 上 の 何 を 、 ど れ だ け 制 約 し た の か 、 そ の 制 約 の 趣 旨 や 範 囲 を ど う 考 え る か に つ い て は 、 種 々 の 見 解 が あ り 、 一 致 を 見 て い な い 。 そ の 論 点 の 一 つ に 、 債 務 確 定 基 準 は 、 見 越 計 上 の う ち 、 過 剰 で 不 合 理 な 見 越 計 上 を 排 除 し つ つ 、 合 理 的 な 見 越 計 上 は 当 然 に 認 め る と い う 趣 旨 な の か 、 そ れ と も 、企 業 会 計 の 基 準 と は 全 く 別 個 の 法 的 な 「 債 務 」基 準 を 用 い て 、費 用 計 上 の 当 否 を 別 個 に 判 断 す る と い う 趣 旨 な の か 、 が あ る 。 こ れ に つ い て は 、 税 法 は リ ー ガ ル ・ テ ス ト に よ る べ き こ と を 表 現 し た も の で あ っ て 、 見 越 費 用 項 目 は 税 法 上 の 定 め の あ る も の を 除 き 一 切 認 め ら れ な い こ と を 明 示 し て い る ( 1 2 )と す る も の も あ れ ば 、 当 該 規 定 は 、 費 用 計 算 に お い て 発 生 主 義 と 一 線

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所 得 税 を 画 す る と い う も の で は な く 、 よ り 厳 格 な 立 場 か ら 主 と し て 引 当 金 の 法 的 規 制 を 考 え た に す ぎ な い( 1 3 )と す る も の も あ る 。 二 つ 目 の 論 点 は 、税 法 が 定 め る 「 債 務 」 と は 何 か 、債 務 が「 確 定 す る 」と は 何 か で あ る 。 こ れ に つ い て も 、 見 解 は 必 ず し も 一 致 し な い 。 例 え ば 、 そ こ で い う 債 務 の 確 定 と は 一 種 の 私 法 上 の 法 的 テ ス ト を い う( 1 4 )と す る も の が あ る が 、 そ の 具 体 的 な 意 味 は 定 か で は な く 、 こ の 考 え 方 と 現 実 的 で 合 理 的 な 会 計 処 理 方 法 と が 整 合 す る か ど う か も 不 明 で あ る 。 こ の よ う に 種 々 の 考 え 方 が あ り う る が 、 今 の と こ ろ 、 企 業 会 計 と 法 的 基 準 を い た ず ら に 対 立 的 に 考 え る の は 相 当 で は な く 、 税 法 は 、 合 理 的 な 企 業 会 計 を 前 提 に し て い る と い う と こ ろ か ら 出 発 す べ き で あ る と 考 え る も の で あ る 。 す な わ ち 、 税 法 が 定 め る 債 務 確 定 基 準 は 、 合 理 的 な 企 業 会 計 の 保 守 主 義 の 表 れ と し て の 見 越 計 上 で あ る 限 り 、 こ れ を 基 本 的 に 承 認 し て い る と い う べ き で あ ろ う 。 そ の 意 味 で は 、 税 法 の 定 め る 債 務 確 定 基 準 は 、 費 用 計 上 の 一 般 原 則 で あ る 発 生 主 義 の 考 え 方 に 接 合 し 、 こ れ と 地 続 き の 同 一 平 面 上 に あ る 、 と い う こ と が 可 能 で は な い か と 考 え る 。 こ の よ う に 、 当 該 規 定 は 、 不 合 理 で 過 剰 な 見 越 計 上 を 厳 格 に 排 除 す る 規 定 で あ る に と ど ま り 、 企 業 会 計 の 考 え 方 に 代 置 す る 新 た な 基 準 を 定 め た も の と ま で い う こ と は で き な い で あ ろ う 。 な お 、 こ の よ う に 考 え う る と す れ ば 、 他 面 に お い て 、 事 業 所 得 に 係 る 総 収 入 金 額 あ る い は 法 人 の 益 金 に つ い て も 、 そ れ を 規 律 す る 基 本 的 な 考 え 方 は 、 形 式 的 で 狭 い 理 解 に 基 づ く 権 利 確 定 主 義 で は な く 、 合 理 的 な 企 業 会 計 に い う 実 現 主 義 の 考 え 方 で あ る と い う こ と が で き る で あ ろ う 。 3 経 費 控 除 に 係 る 所 得 税 と 法 人 税 昭 和 3 8 年 の 整 備 答 申 の 考 え 方 を 踏 ま え て 、 現 在 で は 、 所 得 税 法 の 必 要 経 費 と 法 人 税 法 の 損 金 に 関 す る 通 則 法 的 規 定 が 統 一 的 に 定 め ら れ て い る と い う こ と が で き る 。 古 く は 、 必 要 経 費 は 、 「 所 得 を 得 る に 必 要 な 経 費 」 と し て 限 定 的 に 解 さ れ て き た が 、 第 二 次 大 戦 後 、 純 資 産 増 加 説 ( ま た は 包 括 的 所 得 概 念 ) を 採 用 し た 後 は 、少 な く と も「 事 業 」に 係 る 所 得 に 関 す る 限 り 、必 要 経 費

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所 得 税 概 念 を で き る だ け 、 法 人 税 の 損 金 概 念 に 近 づ け る 努 力 が な さ れ て き た と い う こ と が で き る で あ ろ う( 1 5 ) 昭 和 5 4 年 に 、 土 地 が 業 務 上 の 使 用 と 認 め ら れ る 限 り 、 当 該 資 産 に 係 る 固 定 資 産 税 等 を 必 要 経 費 と み る べ き で あ る と し て 、 所 得 税 の 課 税 処 分 取 消 訴 訟 が 提 起 さ れ た 例( 1 6 )が あ る 。 こ れ に 対 し 、 課 税 庁 側 は 、「 所 得 税 法 と 法 人 税 法 は 、 所 得 を 前 者 が 発 生 源 泉 別 に 捉 え よ う と す る の に 対 し 、 後 者 が 包 括 的 に 捉 え よ う と す る 把 握 方 法 の 違 い に 由 来 す る も の で あ り 、 事 業 所 得 に 関 す る 限 り 両 者 に 本 質 的 な 差 異 は な い 」 と 明 言 し つ つ 、 た だ 、 家 事 費 を 必 要 経 費 の 範 囲 外 と し て い る 所 得 税 法 の 規 定 に 照 ら せ ば 、 一 定 の 支 出 が 事 業 と 何 ら か の 関 係 が あ る と い う だ け で は 足 り ず 、 事 業 の 遂 行 上 余 儀 な い 支 出 で あ る こ と が 必 要 で あ る 、 な ど と 主 張 し て い る( 1 7 )

原 価 と 債 務 確 定 基 準 - 事 例 ( 1 ) の 検 討

1 概 論 所 得 税 お よ び 法 人 税 の 課 税 所 得 計 算 に お い て 、 売 上 原 価 等 の 原 価 に 関 し て 債 務 確 定 基 準 が 及 ぶ か ど う か に つ い て は 、 学 説 お よ び 判 例 に お い て 見 解 が 分 か れ て い る( 1 8 ) と は い え 、 第 一 に 、 法 人 税 法 2 2 条 の 条 文 の 作 り 方 か ら 見 て 、 債 務 確 定 基 準 は そ の 3 項 2 号 の 販 管 費 そ の 他 の 費 用 に つ い て 括 弧 書 き で 定 め ら れ て い る に す ぎ ず 、 こ れ が 当 然 に 3 項 1 号 に 掲 げ る 原 価 に 及 ぶ と 解 す る の は 解 釈 上 は 相 当 の 困 難 を 伴 う 。 第 二 に 、 企 業 会 計 の 論 理 か ら は 、 債 務 確 定 基 準 を 採 用 し 、 こ れ に 従 う こ と を 基 本 と す べ き 論 理 必 然 性 は な い 。 む し ろ 、 個 別 的 に 収 益 と 対 応 し て い る 場 合 は 、 費 用 収 益 対 応 の 原 則 か ら す れ ば 、 当 該 収 益 に 対 応 す る 原 価 を 当 該 事 業 年 度 に 計 上 し 、 適 正 な 期 間 計 算 を す る こ と が 基 本 と な る 。 こ の よ う な 対 応 概 念 は 、 企 業 業 績 ( 正 味 成 果 ) と し て の 利 益 を 計 算 す る た め に は 重 要 で あ る と さ

参照

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