(藤村啓教授退職記念号)
著者
坂本 恵三
雑誌名
白山法学 : Toyo law review
号
11
ページ
165-176
発行年
2015-03-20
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006987/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja債 権 者 代 位 訴 訟 に お け る 被 保 全 債 権 の 調 査 に つ い て
債権者代位訴訟における被保全債権の調査について
’ 坂 本 恵 一一一 一 は じ め に 訴訟要件の調査に必要な資料収集原則については、それぞれの訴訟要件 が担う公益性の強弱に応じて、職権探知主義に従うべきものと弁論主義の 適用を認めるものとに分類するという通説の見解に対し、訴訟要件には多 種多様なものがあり資料収集面も多様に規律すべきであるという見解が示 されている。もっともそれぞれの訴訟要件についてどの資料収集方法を認 め る べ き か に つ い て の 検 討 が 、 十 分 で な い こ と も あ わ せ て 指 摘 さ れ て い る。 本槁では、そのような問題意識とも関連して、債権者代位訴訟における 原告適格を理由付ける事実である被保全債権についての資料収集原則をど のように考えるべきかを検討する。当事者適格一般について通説は弁論主 義の適用を認めるが、債権者代位訴訟の原告適格についても弁論主義の適 用を認めることには問題があることを明らかにしたい。 以下では、問題を検討する前提として、まず訴訟要件の調査についての 我国の学説の状況と我国学説に影響を及ぼしたドイツの学説を概観する。 二 訴 訟 要 件 の 調 査 に つ い て の 我 国 の 学 説 の 状 況 1 調 査 開 始 の イ ニ シ ア テ ィ ブ と 調 査 に お け る 資 料 収 集 原 則 訴訟要件の調査については、当事者からの指摘・申立てを必要とするか 否かという調査開始のイニシアティブの局面と調査に必要な資料をどのよ う収集するかという資料収集原則の局面の二つに分けて検討するのが、− 2 般的である。 1 6 5-(1)調査開始のイニシアティブ 当事者の申立てをまたずに裁判所が職権で調査を開始しなければならな い事項を職権調査事項というが、基本的に公益性を有する訴訟要件は、積 極的訴訟要件を中心としてそのほとんどが職権調査事項である。例外とな るのは、仲裁契約や不起訴の合意等多くの消極的訴訟要件や訴訟費用の担 保提供などであり、これらは、抗弁事項とよばれる。抗弁事項に該当する 訴訟要件については、被告の主張がなければ調査を開始することができな い○ (2)調査に必要な資料収集原則 通説によれば、訴訟要件の調査に必要な事実と証拠の収集方法について は基本的に、それぞれの訴訟要件の担う公益性の強さの程度に応じて、職 権探知主義か弁論主義のいずれかの原則が適用される。すなわち、法律上 の争訟や、專属管轄、当事者の実在、当事者能力、判決に対世効のある場 合の当事者適格など公益性が強いとされる訴訟要件については、職権探知 主義が適用され、任意管轄や、訴えの利益、判決に対世効のない場合の当 事者適格など公益性が弱いものについては、弁論主義が適用される。 公益性の強弱を基準とすることについては、正当にもその基準の暖昧さ が指摘されている。そのような立場を採りながらも結論において同様の振 り分けをする理由として挙げられるのが、本案の審理すなわち訴訟物と なっている権利義務との密接な関連性である。本稿で扱う当事者適格の問 題 に つ い て は 、 次 の よ う に 説 明 す る こ と が で き る 。 す な わ ち 通 説 に よ れ ば、当事者適格は、訴訟物となっている権利義務の(管理処分権の)帰属 主体に認められることから、当事者適格が認められるか否かの判断は、訴 訟物となっている権利義務の判断と密接に関連し、訴訟物となっている権 利義務の調査に必要な資料の収集については、基本的に弁論主義が適用さ れることとの平灰を合わせるために、訴訟要件である当事者適格について 5 も弁論主義の適用を認めるというものである。訴訟要件の調査に必要な資 料収集原則を検討する際の視点として、訴訟要件が担っている公益性の強 1 6 6
-債 権 者 代 位 訴 訟 に お け る 被 保 全 -債 権 の 調 査 に つ い て 弱 だ け で な く 、 本 案 で あ る 訴 訟 物 と な っ て い る 権 利 の 審 理 と 密 接 に 関 連 す る訴訟要件について、これを判断基準に加えることは、訴訟要件ごとに資 料収集の点でも多様な規律をするという観点からは適切なものであると考 えられる。 訴えの利益についても、基本的に同様の考慮が働くと考えられる。また 発生原因として訴訟物との関連性が密接であることが多く、当事者の任意 の処分行為による応訴管轄が認められる任意管轄については、訴訟物と なっている権利義務との密接な関連性の他に当事者の自由な処分が認めら れるという私的自治の原則を背景にする点に、調査に必要な資料収集の方 法として弁論主義の適用を認める根拠を見出すことができる。 2 職 権 審 査 と い う 考 え 基本的にそれぞれの訴訟要件の担う公益性の強弱を基準として、調査に 必要な資料の収集原則として職権探知主義と弁論主義のいずれかを適用す るという通説の見解に疑問を呈し、資料収集原則の第三の類型として職権 6 審査という方式の導入を提唱する見解がある。 この見解によれば、訴訟要件の調査に必要な資料の収集については、弁 論主義が適用される場合と同様に当事者が提出した資料だけを利用するこ とができるが、職権探知主義の適用がある場合と同様に、擬制自白及び自 白の拘束力は認めないという弁論主義と職権探知主義の折衷的な扱いがさ れることになる。 この見解は、基本的にドイツの訴訟要件についての審理原則であるdie Pr(ifungvonAmtswegenという原則に従ったものと考えられる。その詳 細については、すでに松本博之教授等によって紹介されてはいるが、現在 のドイツの代表的な民事訴訟法の教科書に基づいて、その内容を示すこと にする。松本論文が公表されてから既に四半世紀が経過した現在の状況を 確認しておくことに意味があると考えるからである。 1 6 7
-二二 1 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 8 解 ドイツにおける職権調査(diePrUfungvonAmtswegen)の理 1 職 権 調 査 の 適 用 領 域 ドイツ民事訴訟法は、一定の「事項」または事情を職権で顧慮しなけれ ばならないことを定めている(139条2項、335条1項1号)。すなわち当 事者能力、訴訟能力、法定代理人の資格および訴訟遂行に必要な授権の欠 訣(56条1項)と弁護士が訴訟代理人でない場合の訴訟代理権の欠訣(88 条2項)である。またドイツ民事訴訟法は、故障の申立て、上訴、再審の 訴えが、「そもそも許されるか否かそして法定の方式で法定の期間内に」 提起されたか否かを職権で調査しなければならないことを定めている。訴 訟要件も職権で調査されなければならない。すなわちドイツでは、本案判 決を下すための要件である訴訟要件や上訴の適法要件、個々の訴訟行為の 9 適法要件が、常に職権調査の対象である。 2 意 義 職権調査は、職権探知主義(Untersuchungsmaxime)の適用を意味す ’O るものではない。 (1)調査に必要な事実は、弁論主義に従い当事者によって提出されなけ ればならない。当事者の提出から疑義が生じた場合には、裁判所はその点 を指摘し、訴訟要件が充足しているか欠訣するかを正式な責問がなくて も、調査しなければならない。 裁判所はまず第一に、必要とされる証明を当事者に促さなければならな い(335条1項1号参照)。しかしドイツの実務では我国と同様、訴訟要件 には自由な証明の適用を認めるので、裁判所は、申立てがなくても問題と 11 なる証拠をすべて職権で証拠調べすることができる。 (2)しかしその適法要件を遵守することについての公益性の程度に従っ て、認定の必要性および認定に及ぼす当事者の行態の影響は異なる。たと −168−
債権者代位訴訟における被保全債権の調査について え ば 財 産 法 上 の 訴 え に お け る 管 轄 の 調 査 に つ い て は 、 管 轄 を 生 じ さ せ る 主 張をすれば十分であり、被告が争わなかったり欠席した場合には、自白し たものとみなすことができるし、自白することもできる。なぜならば裁判 所は当事者の合意によって管轄裁判所となりうるからである(38条)。 これに対して56条において列挙された項目(前出、当事者能力や訴訟能 力など)、さらに訴訟追行権と故障の申立て、上訴、再審の訴えの適法要 件には、当事者の行態は影響を及ぼさない(581条2項を参照)。すなわち 裁判所の疑念を、当事者の処分行為(当事者の合意や争わないとか自白) 12 によって排除することはできない。 (3)職権調査において注意しなければならない点は、裁判所は、通説に よれば証拠手続についての民事訴訟法の規定に拘束されず、明文で定めら れた証拠方法の制限を受けないということである。職権調査においては、 13 刑事訴訟の領域で展開された自由な証明が、許されると言われている。 3 訴 訟 要 件 の 職 権 調 査 ドイツでは、訴訟要件と抗弁事項である訴訟障害(Prozesshindernis) を区別するのが一般的である。 訴訟要件の存在を裁判所は、職権で顧盧しなければならない。それゆえ 疑義は、職権で解明される。しかも、訴訟要件の存在の職権顧盧は、訴訟 のいかなる段階においても行われる。すなわちたとえば原因判決(304 条)が訴訟要件の存在について問題としなかった場合には、数額をめく、る 14 手続においてもなお行われるし、上告審においてさえ行われる。 しかし職権探知が適用されるのではなく、裁判所は、訴訟要件の存在に ついて証明責任を負う当事者にたとえば必要な証明を求める(139条2 項)・訴訟要件の存在について証明責任を負うのは、通常は原告である が、306条(請求の放棄についての規定)、330条(原告に対する欠席判決 の規定)の場合に被告が本案判決を申し立てる場合には、被告がその証明 責任を負う。当事者双方の同意があっても、裁判所は、調査を免除されな −169− ||
い 。 い ず れ の 当 事 者 も 暇 疵 を 責 問 す る こ と が で き る が 、 訴 訟 要 件 の 場 合 に は、責問権を有効に放棄することはできない。有効に責問権が行使された 場合には、事実に関する要件は、自由な証明の方法で認定される。それゆ え裁判所は、顧盧されるすべての証拠方法を職権で証拠調べすることがで l5 きる。 4 訴 訟 障 害 の 調 査 訴訟障害は、被告が訴訟障害を明示的に責問し、かっこの責問が維持さ れ、かつ責問が争われた場合には責問の要件が証明された場合に限って、 顧盧される。被告は、この責問権を放棄することができる(296条3項参 照)。しかし被告は、適時に責問権を提出しないことによっても、この責 16 問権を喪失する。 以上が、ドイツの支配的な見解であると思われる。すなわち本稿でテー マとする当事者適格の調査については、我国で紹介されている職権審査と いう原則が妥当する。 四 債 権 者 代 位 訴 訟 に お け る 当 事 者 ( 原 告 ) 適 格 の 調 査 に 必 要 な 資 料 収 集 原 則 1通説(弁論主義) いずれにせよ我国の通説は、当事者適格の調査に必要な資料収集原則と して、弁論主義の適用を認める。例外とされるのは、判決に対世効がある 場合である。債権者代位訴訟は、通説によれば訴訟担当であり、したがっ て115条1項2号によって、代位される債務者への判決効の拡張は認めら れるが、この訴訟で下される判決が対世効を有することはない。すなわち 通説の基準によれば、債権者代位訴訟における原告適格を理由付ける事実 である被保全債権の存在については、その資料収集原則として弁論主義が 17 適用されることになる。 1 7 0
-債 権 者 代 位 訴 訟 に お け る 被 保 全 -債 権 の 調 査 に つ い て 2 通 説 に 対 す る 疑 問 (1)訴訟物となっている権利の審理との密接な関連性 当事者適格という訴訟要件の調査に必要な資料収集の原則が、弁論主義 であるとされる根拠は、当事者適格という訴訟要件の担う公益性の強弱を どのように評価するかは別としても、訴訟物となっている権利義務の(管 理処分権)の帰属主体に当事者適格が認められるという通説の立場では、 当事者適格の判断が、訴訟物の判断と密接に関係するという点に見出すこ とができる。これは、一般論としては正当なものである。 ところが、債権者代位訴訟の原告である代位債権者の原告適格は、訴訟 物となっている権利義務とは本来関係のない代位債権者の債務者に対する 債権の存在によって理由付けられる。すなわち、本案である訴訟物となっ ている権利義務の審理との密接な関連という当事者適格の調査に必要な資 料収集原則として弁論主義を適用する根拠が、欠けるのである。債権者代 位訴訟における原告適格の調査に必要な資料収集原則も弁論主義であると l8 しながら、この点について詳細な理由を示したものはあまりない。 (2)被保全債権が独立した訴訟物となりうることの意味 当事者適格に関する審理のあり方についての一般論は、訴訟物たる権利 が原告に帰属すると主張する通常の場合を想定しているため、当事者適格 の審理と訴訟物の審理とが密接に関連していることから弁論主義が妥当す ると説かれているが、債権者代位訴訟においては訴訟物が他人問の権利関 係であるために、訴訟要件についての審理と訴訟物についての審理との間 には一体性や密接関連性が認められず、通説の説く原則論が直ちには妥当 しないことを認めた上で、債権者代位訴訟の原告適格を基礎付ける要素 が、本来は独立の訴訟物たりうる私法上の権利であることをこの問題につ l9 いて弁論主義が適用される根拠であるとする見解がある。この見解は、債 権者代位訴訟における原告適格の特殊性を正当に認識するものと評価する ことができる。しかし、独立した訴訟物とすることができるということの 意味は必ずしも明確ではなく、債権者代位訴訟の原告適格を基礎付ける要 1 7 1
-素 が 、 本 来 は 独 立 の 訴 訟 物 た り う る 私 法 上 の 権 利 で あ る こ と が 、 果 た し て 債権者代位訴訟における原告適格の調査に必要な資料収集方法として弁論 主義の適用を認めることを正当化することができるかは、疑問である。ま ず第一に、被保全債権を誰と誰の間での訴訟の訴訟物とすることができる かが、問題である。 確かに代位債権者の債務者に対する債権、いわゆる被保全債権を、独立 した訴訟物とすることはできる。しかし被保全債権を独立の訴訟物とする ことができるのは、代位債権者が、債務者の無資力を覚悟の上で、債務者 を 被 告 と し て 給 付 の 訴 え を 提 起 す る 場 合 ( そ の 反 対 形 象 と し て 、 債 務 者 が 債権者を被告として被保全債権について債務不存在確認の訴えを提起する 場合も同様である)と債権者代位訴訟を提起された債務者が、代位債権者 の被保全債権の不存在確認を求めながら、独立当事者参加をする場合に限 られるものと思われる。後者の場合については、債務者が、債権者代位訴 訟が提起されている状況下で、第三債務者に自己の債権の履行を訴求する 場合に、自己の訴えが原告適格または二重起訴の禁止を理由として不適法 とされないために必要なものである。 しかしこれは、債権者代位訴訟における当事者間で被保全債権を訴訟物 とするケースではない。なるほど、債権者代位訴訟における被告である第 三債務者が、原告である代位債権者の原告適格を理由づける事実である被 保全債権の存在を争って、債務不存在確認の反訴を提起することも理論的 には、考えられる。しかしこの反訴が適法であるかといえば、疑問であ る。被告である第三債務者は、原告である代位債権者が提起した債権者代 位訴訟において、被保全債権の不存在を理由として、代位債権者の原告適 格を争い訴え却下の訴訟判決を申し立てて、勝訴判決を得ることができれ ば、代位債権者に原告適格がないことについて既判力を有する判決を得る ことができるからである。すなわち、被告である第三債務者が、上記の被 保全債権不存在確認の反訴を提起しても、訴えの利益がないことになる。 債権者代位訴訟における原告である代位債権者と被告である第三債務者と 1 7 2
-債 権 者 代 位 訴 訟 に お け る 被 保 全 -債 権 の 調 査 に つ い て の間で訴訟物とすることができなければ、弁論主義の適用の前提となる当 事者の自由な処分は認められないのである。 また仮に訴訟物にすることができるということを、請求原因であるから 20 ということで考えているのであれば、それは、債権者代位訴訟において被 保全債権の存在が請求原因とされていることが、一般の請求原因とは異な る点が見過ごされている。請求原因とは、訴訟物となっている権利を理由 付ける事実と理解されているところ、債権者代位訴訟では、請求原因とし て被保全債権の存在が記載されるとはいえ、これは訴訟物を理由付ける事 実ではなく、代位債権者の原告適格を理由づける事実なのである。 被保全債権を独立した訴訟物とすることができるということからは、債 権者代位訴訟における被保全債権の調査に必要な資料収集の方法として、 弁論主義が適用されるという結論を導くことはできない。 (3)その他の疑問 債権者代位訴訟における被保全債権の調査に弁論主義の適用を認めるこ とには、これ以外の観点からも疑問がある。 訴訟要件の調査に必要な資料の収集について弁論主義の適用を認める立 場でも、自白の拘束力(弁論主義第2テーゼ)を認めるかについては見解 が分かれている。債権者代位訴訟における被保全債権の存在について自白 の拘束力を認める立場に対しては、そもそも弁論主義を根拠とする自白の 前提として、自白の対象には当事者の自由な処分が認められなければなら ないはずであるが、債権者代位訴訟における被保全債権については、被告 21 である第三債務者の自由な処分が認められるとは考えにくい。また自白の 拘束力を認めないというのであれば、これは、もはや弁論主義とは異なる 22 原則である。 本案である訴訟物となっている権利の調査と密接に関連する当事者適格 を理由付ける事実について弁論主義の適用を認めることは正当であるが、 そのような密接な関連性が認められない債権者代位訴訟における被保全債 権の調査にまで弁論主義の適用を認めることは、妥当ではない。 1 7 3
-五 お わ り に 以上の考察によって、債権者代位訴訟における被保全債権の調査に弁論 主義を適用することは適切ではないことを明らかにした。すでに指摘した ように、訴訟物となっている権利義務の帰属主体に当事者適格を認めると いう通説の見解を前提とすれば、一般論として当事者適格の調査に必要な 資料の収集に弁論主義の適用を認めることは適切であるとしても、債権者 代位訴訟における原告適格を理由づける被保全債権の調査に、弁論主義を 適用することは、妥当ではない。これが、本稿の結論である。この結論 は、同様に訴訟物となっている権利についての審理との密接な関係が認め られない他の第三者による訴訟担当における原告適格を理由付ける事実の 調査についてもあてはまるものと考えている。この点についてどのような 資料収集原則が適切かが、次に問題となる。基本的に職権審査という方式 が適切であると考えているが、この点については、今後の課題としたい。 註 l高橋宏志『重点講義民事訴訟法下』第2版補訂版(平成26年、有斐閣)8頁。小 島武司『民事訴訟法』(平成25年、有斐閣)221頁。 2高橋宏志・前掲7頁以下。伊藤眞「民事訴訟法』第4版補訂版(平成26年、有斐 閣)302頁。三木浩一・笠井正俊・垣内秀介・菱田雄郷「民事訴訟法』(平成25年、 有斐閣)180頁以下。小島武司・前掲220頁。 3 高 橋 ・ 前 掲 5 頁 4新堂幸司『新民事訴訟法』第5版(平成23年、弘文堂)237頁、490頁。 5高島義郎「訴訟要件の類型化と審理方法」「講座民事訴訟2j105頁以下(117 頁)、上田徹一郎「民事訴訟法』第7版(平成23年、法学書院)204頁。 6鈴木正裕「<演習〉民事訴訟法l」法学教室1号(昭和55年)94頁、高島義郎・ 前掲、染野義信=森勇「職権調査」「演習民事訴訟法」(昭和62年、青林書院)399 頁以下。松本博之「訴訟要件に関する職権調査と裁判上の自白」「民事自白法」(平 成6年、弘文堂)115頁以下。 7松本博之・前掲。初出は、大阪市立大学法学雑誌38巻3.4号(平成元年)716 1 7 4
-債権者代位訴訟における被保全債権の調査について 頁以下。 8基本的に、Rosenberg/Schwab/Gottwald,Zivilprozessrecht,17.Aufl.,C.HBeck 2010の記述に従って紹介する。 9Rosenberg/Schwab/Gottwald.上掲書§77,Rd44 lORosenberg/Schwab/Gottwald.上掲書§77,Rd46.,Krtiger/Rauscher.M(inchner KommertarzurZirilprozessordnung,Bd.1,4.Aufl.G.H.Beck2013,EinleitungRd. 328 llRosenberg/Schwab/Gottwald.上掲書§77,Rd45 12Rosenberg/Schwab/Gottwald.上掲書§77,Rd46 13しかしGottwaldは、この見解には以下の理由で疑義があるとする。すなわち、 判決を下すための訴訟上の要件の重要性は、判決を下すための実体法上の要件と比 べて劣るものではなく、それゆえこの確認については、同じ手続原則が適用されな ければならないのである。Rosenberg/Schwab/Gottwald・上掲書§77,Rd47.もっ とも、ドイツでは法的紛争の解決を容易にし促進するために、284条2文が、当事 者双方が同意した場合には裁判所が適切であると判断する方式で、すなわち自由な 証明の方法ですべての証拠調べをする可能性を、裁判所に認めている。具体的に考 えられているのは、たとえば証人または鑑定人について電話またはeメールでの補 充質問である.当事者双方の同意が、これ以外の場合には強行規定であることから の乖離を正当化する。この同意は、証拠調べ全体に関するものである必要はなく、 個々の証拠調べに限定することができる.Rosenberg/Schwab/Gottwald.上掲書 §109Rd.9を参照。 14Rosenberg/Schwab/Gottwald・上掲書§93,Rd34.,Krdger/Rauscher.上掲書Vor §253ff.Rd.15(Becker-Eberhard執筆)も参照。 15Rosenberg/Schwab/Gottwald.上掲書§93,Rd35 16Rosenberg/Schwab/Gottwald.上掲害§93,Rd36 17池田辰夫「債権者代位訴訟の構造」(平成7年、信山社)188頁。同「債権者代位 訴訟」『演習民事訴訟法j(昭和62年、青林書院)628頁。 18訴訟要件を基礎づける事実についての自白の成立が認められるかという問題とし て検討するものとして、松本博之教授の論文がある。松本博之・前掲136頁以下 19藤田広美『解析民事訴訟法』第2版(平成25年、東京大学出版会)234頁。 20債権者代位訴訟における被保全債権の存在は、代位債権者の当事者(原告)適格 という訴訟要件を理由づける事実であり、債権者代位訴訟の請求原因とされる。 1 7 5
-21松本博之・前掲136頁以下を参照。 22弁論主義の三つのテーゼのうち第1テーゼと第2テーゼが、第3テーゼと比べて 絶対的なものであることについては、高橋宏志「重点講義民事訴訟法上』第2版補 訂版(平成25年、有斐閣)404頁以下を参照。また、たとえば、自白の拘束力を否 定するオーストリアの学説における通説は、資料収集原則として「緩やかな職権探 知(derabgeschwachteUntersuchungsgrundsatz)」という表現を使用している。 Rechberger/Simotta/Grundrissdes6sterreichischenZirilprozessrechts,8.Aufl. Manz2010Rd.403. [後記]本稿は、この三月に定年を迎えられる藤村啓先生の退職記念号に掲載する予 定で準備したものであるが、雑駁で内容の乏しいものとなってしまった。藤村啓先生 には、在職中に先生から賜ったご指導に対する筆者の感謝の気持ちだけをお汲み取り いただければ、幸いである。 − 1 7 6 −