主要な研究成果
背 景
コンクリートキャスクは、金属キャスクに比べて、経済性に優れた使用済燃料の中間貯蔵方式として注目さ
れている。コンクリートキャスクでは、キャスク内を熱の浮力により自然に空気が流れることで除熱する自然
冷却方式が採用されている。冷却流量は、使用済燃料の発熱とキャスク流路の圧力損失の微妙なバランスで決
定されるため、通常時ならびに事故時のキャスク各部の正確な温度情報を得るためには、実物大の試験体を用
いた試験の実施が必要となる。
目 的
鉄筋コンクリート(RC)製キャスクおよびコンクリート充填鋼板(CFS)製キャスクの 2 種類の実物大コ
ンクリートキャスク(図 1)を用いて、除熱性能試験を実施し、各部の温度および冷却流量データを取得する
ことにより、コンクリートキャスクの通常時・事故時の健全性を評価・検証する。
主な成果
本研究では、通常の貯蔵状態を模擬した試験、事故時の状態を模擬した試験を実施し、以下の成果が得られた。
1.通常時(貯蔵初期の使用済燃料の発熱量は22.6kWに相当し、貯蔵末期の発熱量は10kWに相当する。)
1)RC 製キャスク:貯蔵初期を模擬した試験で、コンクリートの最高温度は、コンクリート本体胴部で
91 ℃になり、長時間の温度制限値: 90 ℃を超えることが分かった(図 2)。これは、今回用いたキャスク
の流路が冷却空気の流れにくい設計となっているためであり、流路形状の変更等を行う必要があると考
えられる。また、キャスクの除熱量の配分は、空気で運ばれる熱量が全体の 80 %であり、床からの放熱
量はほとんど無いことなど、定量的に明らかとなった(図 3)。このことは、実設計への有用な情報となる。
2)CFS製キャスク:貯蔵初期を模擬した試験において、コンクリートの最高温度は温度制限値以下であった。
また、両キャスクともに、貯蔵末期を模擬した試験を行った結果、キャニスタ表面に錆による金属の
損傷(応力腐食割れ)の要因となる 100 ℃を下回る(水分付着の可能性がある)領域が発生することが
分かった。
2.事故時(貯蔵初期において給気口が50%閉塞した条件を想定)
事故時条件として、異物が給気口を塞ぐことを想定し、四つある給気口のうち、二つを塞いだ条件
(50 %閉塞)で試験を行った結果、両コンクリートキャスクともコンクリート内に、短時間(24 時間以内)
の温度制限値: 175 ℃を超える部位は生じなかった(表 1)。コンクリート胴部の温度上昇量は RC 製キャス
ク、CFS 製キャスクで、それぞれ最大 5 ℃、10 ℃であった。また、冷却空気流量の減少率は、RC 製キャス
ク、CFS 製キャスクで、それぞれ 4%、23%であった。図 4 に示すように、両者において、流路構造が違うこ
とから、給気口閉塞時の除熱特性が異なるものの給気口が二つ塞がった場合でも、閉塞されていない二つの
給気口から十分な空気が供給されるため、キャスク各部の温度上昇量は小さいことが分かった。
本研究は、経済産業省 原子力安全・保安院からの受託研究として実施したものである。
今後の展開
貯蔵末期において、キャニスタ底部に付着する塩分による金属の腐食(応力腐食割れ)現象・対策を検討する。
主担当者 地球工学研究所 バックエンド研究センター 上席研究員 竹田 浩文
主任研究員 亘 真澄
関連報告書 「コンクリートキャスクの実用化研究─通常時の除熱試験─」電力中央研究所報告:
N04029(2005 年 6 月)
「コンクリートキャスクの実用化研究─事故時の除熱試験─」電力中央研究所報告:
N04030(2005 年 7 月)
44
実物大コンクリートキャスクを用いて除熱健全性を評価
C.エネルギーと環境の調和
45
図2 コンクリート製貯蔵容器
断面温度分布(初期貯蔵時)
通常時 50%閉塞 通常時 50%閉塞
給気温度(℃) 33 33 33 33
コンクリート胴部最高温度(℃) 91(90*) 96(175**) 83(90*) 93(175**)
キャニスタ表面最高温度(℃) 209 214 192 200
ガイドチューブ(セル) 温度(℃) 301 306 228 235
空気温度上昇(℃) 65 70 52 66
空気流量(kg/s) 0.335 0.321 0.363 0.280
RC製キャスク CFS製キャスク
65
65
0
1000
2000
3000
4000
5000
3 5
3 6
3 7
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4 0
4 1
4 2
4 3
4 4
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4 6
4 7
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4 9
5 0
5 1
5 2
5 3
5 4
5 5
5 6
5 7
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6 0
6 1
6 2
6 3
6 4
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6 6
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7 0
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65
0
1 00 0
2 00 0
3 00 0
4 00 0
5 00 0
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2 5
2 6
2 7
2 8
2 9
3 0
3 1
3 2
3 3
3 4
3 5
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4 1
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8 1
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8 7
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8 9
9 0
CFS
65
65
0
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3000
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9 0
65
65
0 500 1000
0
1000
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0
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2 00 0
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4 00 0
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9 0
CFS
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0 500
0
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4 00 0
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3 9
4 0
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4 9
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6 0
6 1
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9 0
℃
℃
mm
mm
RC製キャスク CFS製キャスク
こ
の
部
分
の
温
度
が
、
制
限
値
を
超
え
た
。
図3 除熱量の配分
RC製キャスクにおいて、初期貯蔵時(22.6kWの発熱量
に相当)の除熱量の配分を求めた。その結果、80%の熱
が空気で運ばれることが分かった。また、床面からの放
熱は、ほとんど無いことが分かった。なお、図中の矢印
は、熱の流れを示している。
RC製キャスク試験体
CFS製キャスク試験体
図1 実物大コンクリートキャスク試験体
試験に用いた二種類のキャスク。なお、使用済燃
料から発生する崩壊熱は電気ヒータで模擬した。
*:長時間の温度制限値:90℃
**:短時間(24時間以内)の温
度制限値:175℃
(社)日本機械学会「コンクリー
トキャスク、キャニスタ詰替装置
およびキャニスタ輸送キャスク
構造規格」、JSME S FA 1-2004,
2003.12
表1 通常時および給気口50%閉塞時の各部温度および空気流量(貯蔵初期)[試験結果を給気温度33℃換算]
RC製キャスク CFS製キャスク
図4 給気口50%閉塞時の冷却空気の流れ方
今回の試験に用いたRC製キャスクでは、給気空気
が一旦キャスク底部中央に集まるのに対して、CFS
製キャスクでは、各給気口から直接、垂直流路に流
れるなど、流路構造が異なる。図中×印は、給気口
の閉塞箇所を表す。
今回の試験に用いたRC製キャスクでは、空気が流
れにくい構造であることから、排気口内側に温度
制限値を超える領域が現れた。