阿波踊りの組織論―徳島と東京高円寺の阿波踊りを比較して―

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阿波踊りの組織論 ー徳島と東京高円寺の阿波踊りを比較してー 教科・領域教育専攻 社会系コース 福永 悠貴 阿波踊りは、周知の通り徳島が誇る伝統芸能 であり、江戸時代から約400 年続く歴史ある祝 祭である。阿波踊りには、自由に大きく踊るダ イナミックな動きが特徴的な男踊りや、上品に しなやかな動きが特徴で、すり足で前進をして いく女踊りなどがあり、この他にも鉦や笛、三 味線、大太鼓など阿波踊りの旋律を奏でる鳴り 物も合わさって阿波踊りが踊られる。また、阿 波踊りの団体である「連」が織りなす1策々なパ フオーマンスが阿波おどり(1酒題胡味であり、特 に有名連が披露する卓越した技量によるパフオ ーマンスは多くの観客を魅了している。 しかし、2018 年度の徳島市阿波踊りはこれま での徳島市観光協会運営の赤字が重なり、運営 主体が徳島市観光協会から徳島市に移行したも のの、徳島市阿波踊りの目玉でもある「総おど り」の中止を行うことで混乱を招くなど、阿波 おどりの運営を巡り様々な問題が生じてしまっ た。そして、今年度は民間委託して赤字脱却を 図る運営方法を目指したものの、新たなホーム ページ開設などの初期投資の微増や、前年まで 市職員らが担っていた業務を担当するスタッフ の人件費の増加などが重なり、またしても赤字 に陥るという状況が生じてしまった。 一方、今年で63 回目を迎える東京高円寺阿 波おどりは、徳島市から派生した阿波おどりで あるが、i恵島市よりも早々に組織の民営化を行 い、NP0 法人として地域の人々と協力しなが ら東京高円寺阿波おどりの振興・発展に努めて 指導教員 山本 準 いる現状にある。本稿では、同じ阿波踊りと冠 した伝統芸能であっても、徳島市と東京高円寺 では経済面や踊りの運営方法など数多くの違い があることが見て取れることから、なぜこのよ うな違いが見られるのかということを問題の所 在とする。そして、主に徳島市阿波踊りと東京 高円寺阿波おどりの組織に焦点を当て比較・検 討を試みることで、現状の徳島市阿波踊りが抱 えている問題を解決する糸口を掴むことができ、 ひいては将来の阿波踊りの発展を追究すること ができるのではないかと考えている。 研究の方法としては、徳島市阿波踊り、東京 高円寺阿波おどりのそれぞれについて、阿波踊 り関する書籍・論文、新聞記事、報告書等を参 考にして歴史面・組織面について特徴的なこと を述べる。そして、筆者が行った阿波踊りの組 織に関する質間紙調査、実地調査で得た資料等 を踏まえた上で、両者の組識運営についての比 較・検討を行う。 第1章では、問題の所在、研究の意義、研究 方法と対象について提示した。 第2 章では、徳島市阿波踊りについて、歴史 面・組織面からその特徴及び問題点を提示した。 歴史面では阿波踊りの起源を述べ、明治期以降 の阿波踊りについて現状の組織に繋がるl闇數を 見た。組織面では徳島市観光協会主催の公営と しての阿波踊り、徳島市主催の市営としての阿 波踊りの問題点を述べ、それぞれの運営組織が 失敗に至った要因について検討した - 207 -

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第3 章では、東京高円寺阿波おどりについて、 歴史面・組織面からその特徴を提示した。歴史 面では、誕生・成長・革新の3 つの時期に分け て概観し、組織面では、NP0 法人化、地域ボラ ンティアの協力、観客を考慮した運営という3 つの特徴的な内容を見ていくことで、東京高円 寺阿波おどりの運営組織が安定的に成功を収め ている要因について検討した。 第4 章では、徳島市阿波踊りと東京高円寺阿 波おどりの雌交・検討について、第2 章・第3 章の内容を踏まえた上で、歴史面・踊り面・組 織面の3 つの側面から比較・検討を行った。 歴史面から見た比較・検討では、踊りが誕生 した背景、経済的危機を迎えた時の対応の仕方 の2 つのキーワードからアプローチした。 踊り面から見た比較・検討では、踊りルート の構成、演舞場の構成という2 つのキーワード からアプローチした。なお、ここでは筆者が実 地調査で得た写真・資料や、筆者が行った質問 紙調査の内容も比較・検討を行う上での手掛か りとした。 組織面から見た比較・検討では、連参加費徴 収の是非、観客と踊り手との距離間、地域一体 となった組織運営という3 つのキーワードから アプローチした。なお、ここでも筆者が実地調 査で得た写真・資半状コ、筆者が行った質間紙調 査の内容を比較‘検討を行う上での手掛かりと した。 第4 章を通して、徳島市阿波踊りは、経済面・ 利益面に傾注し、連や観客への配慮が不十分で ある組織運営を行っている傾向が強い一方で、 東京高円寺阿波おどりは、組織をNP0 法人化 することで、踊り手や観客、土峨の人々に配慮 し、地域一体となった組織運営を行っているこ とが見えてきた。 第5 章では、第4 章の徳島市阿波踊りと東京 高円寺阿波おどりの比較・検討を行う中で見て きた、阿灘甬りの理想とすべき組結腫営の在り 方についての考察を踏まえた上で、坦或の伝統 芸能を運営していく上で本当に必要とするべき 組織の要素について、田中重好の見解を基に理 論的に考察した。田中の見解から都市祭礼が持 つ基本的な3 要素として、儀礼性・瞠目性・発 散性を挙げられ、それぞれが何らかの形でバラ ンスが取れていることが都市祭礼を考える上で 重要であることが分かった。 そして、本稿で述べてきたこと及び田中の見 解を踏まえた上で、筆者は地域の伝統芸能とし ての阿波踊りを運営していくためには、田中が 唱える3 要素にプラスして「一例勤 という要 素を満たす必要陛があることを提示した。この 一綱生の要素を常に意識した上で、祭りの運営 主体である組織が独自の利得を追求する運営手 法を講じるのではなく、祭りを為す地或の人々 が一体となって祭りが持つメリットを最大限に 享受することのできる還営手法を講じることが 重要である。 徳島市阿波踊りは、歴史面や踊りのパフオー マンス性から見て、徳島が世界に誇るべき伝統 芸能として十分に魅力的な要素を満たしたもの である。だからこそ、赤字・黒字といった見か けの利益に傾注した糸購腫営に奔走するのでは なく、地域の伝統芸能として観客や踊り手、地 元の商店街に配慮し、地域の人々と一体となっ て阿波踊りを盛り上げていく組織運営を講じる ことが、今後も阿波踊りが徳島の伝統芸能とし てあらゆる人々から愛される兆しを回復するた めの鍵となるのではないだろうカC -208 一

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