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P-67

地震の初期破壊過程の複雑性

〇佐藤和彦・James Mori 1.背景 最近 10 年ほどの間に地震の初期破壊過程の研 究 が 多 く な さ れ る よ う に な っ て き た 。Iio [1992,1995]は P 波の立ち上がり部分に見られる ゆっくりとしたフェイズに注目し、その継続時間 が最終的な地震規模と相関を持つことを指摘し た。Ellsworth and Beroza [1995]は同様に P 波の はじまりに見られるフェイズに注目し、その地震 波を放射する間に開放された地震モーメントの 大きさが最終的な地震規模(地震モーメント)と 相関を持つことを示した。

しかし一方でMori and Kanamori [1996]のよ うに、P 波立ち上がり部分のゆっくりとしたフェ イズは地震波伝播経路での減衰の影響であり、震 源において規模依存性を示すような破壊過程を 必ずしも必要とはしない、と指摘している。 2.震源モデル このような相反する観測事実を説明するため、 Sato and Kanamori [1999]は円形クラックモデ ルを用い、震源近傍の特性の違いによってゆっく りとした立ち上がりが存在する場合、しない場合 の両者が生じうる震源モデルを構築した。Sato [2002]や Hiramatsu et al. [2002]ではこのモデル を用いて微小地震から大規模地震までの観測デ ータを解析し、それらの地震において高速破壊が 始まる際の震源サイズ(初期クラックサイズ)を 推定した。その結果、Hiramatsu et al. [2002]が 解析した微小地震では初期クラックサイズと最 終的な震源サイズの間に相関が見られたものの、 Sato [2002]が解析したより大きな地震において は見られないことがわかった。 ところでこのような規模依存性に関しては、従 来より室内実験で高速破壊に先行する準静的破 壊 が 存 在 す る こ と を 指 摘 さ れ て き て お り 、 Shibazaki and Matsu’ura [1998]による動力学的 震源モデルからも規模依存性を示す準静的破壊 の 存 在 が 示 唆 さ れ て い る 。 し た が っ て 、Sato [2002]のような結果が得られてはいるものの、 我々がすぐにそのような破壊過程を否定するわ けではない。 3.初期破壊過程の複雑性 これまでの震源モデルでは、円形クラックのよ うな単純な破壊過程を考えてきたが、実際の地震 の破壊過程はより複雑であることがわかってお り、大きなすべりの生じた領域と破壊開始点が大 きく離れていることも珍しくない。そのため、従 来構築されてきた単純な震源モデルのみで議論 することは現実的ではないのかもしれない。 むしろ同じように始まった地震が最終的にど のような規模の地震になっているか、そしてその 頻度分布がどうなっているのか、という点に注目 すべきだと考えられる。そこで本研究では、小∼ 中規模地震について、まず破壊過程の複雑性を調 べる。ある程度大きな地震についてはその破壊過 程が詳細に調べられるが、今回はより小さな地震 についても調べるため、地震波形記録の複雑さを 評価している。このとき一観測点でのみ複雑な波 形を示していても、観測点近傍の影響によるもの である可能性があるため、震源距離の比較的小さ な(-20km 以内程度)複数の観測点で見られた場合 のみ破壊過程が複雑であったと考える。 さらにこれらの地震について、その初期クラッ クサイズをSato and Kanamori [1999]モデルに 基づいて求め、最終規模との関係を調べる。これ らの解析は Hi-net 観測網で収録した地震(M3 以 上の140 イベント)について行う。

参照

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