• 検索結果がありません。

東南アジアの低湿地林1 : マングローブ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "東南アジアの低湿地林1 : マングローブ"

Copied!
26
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

東 南 ア ジア研 究 21巻2号 1983年9月

資 料 ・研究 ノー ト

東 南 ア ジ ア の 低 湿 地 林

1

. マ ン グ ロ ー ブ

勇*

Lowland SwampForestsillSoutlleaStAsia l. M angrove

lsamuY AMADA

*

Mangrove,peatswamp fわrest,andfreshwater swamparethemajorswampfわrestsillSoutheast Asia. Ofthese,mangrove hasbeen the most intensivelystudiedbecauseofitspeculiarmorphoト ogyandphysiognomy.Thisforestoccursincoastal areasand large riverestuaries throughoutthe troplCSandsubtroplCS. ComparedwitIIAmerican andAfricanmangrove,SoutheastAsianmangrove

Ⅰ ま え が き 本 論 は,東 南 ア ジア に分布 す るマ ング ロ-ブ につ いて,文献 を もとに概 説 した もので あ る。マ ング ローブの研 究 の歴 史 は古 く,す で に紀 元前300年 代 に記録 がみ られ, それ以 後 現 代 にい た るまで綿 々 と研 究 が 引 きつがれ て きて い る。 か くも長 期 間 にわ た って各 国 の研 究 者 の関心 を引 いて きた理 由 は, お そ ら くそ の生育環境 と外 部 形態 の特異性 に よ るのだ ろ *農林水産省 関東林木育種場 ;KantoForestTree BreedingInstitute,MAFF,978Kasahara-cho,

Mito-shi,Ibaraki-ken310,Japan

islargestincommunityandindividualsize. Spe -ciesdiversltylSalsothegreatestintheworldinthis area,Withsixtyspeciesormangrovefわundhere. Thispaperreviewsthereferencesonmangrovein SoutheastAsia, Thedistributionpatter nsofman-grovevegetationaredescribedandthefactorsof zonation,ecology,morphologicalcharacteristics andutilizationarediscussed.

う 。 ふつ う陸上 に安 定 して定着す る植物 が,陸 と海 との境界 に分布 して い る。 しか も,砂 丘 植物 のよ うに 小 さな もので はな く, 樹 高 30 m を こす, 単一樹種 によ る 大 きな群落 で あ る。 そ して,海寄 りか ら内陸側 へ うつ るにつ れ て,群 落 を構成す る樹種 がかわ って い く。 さ らによ く観察す れ ば, それ ぞれ の樹種 が奇 妙 な形態 を した支柱 根 ,呼 吸根 ,気 根 ,板根 を もって い る。 樹 上 に た れ下 が る特 殊 な果 莱, さま ざまな花 , それ にむ らが る鳥,蛾 , 昆 虫類 。地上 をみれ ば無 数 に生 息す るカニ, エ ビ, トビ-ゼ, ム ツゴ ロウの仲 間。 大 きな 動物 で はヘ ビ, トカゲ, ワニ, トラ と多数 の 鳥 な ど。

(2)

東南 アジア研究 21巻2号 海 が交通 の要路 で あ った ころ に は, これ ら のマ ング ローブの景 観 は と りわ け印象 の深 い もので あ った に ちが いない こ とは, さま ざま な過去 の記録 が示 して い る。 Theophrastus [305B.C.] の ペル シ ャ湾周辺 の マ ング ロー ブの記載 か らは じま り,Linne [1753]の時 代 に はす で にい くつ か の種 が記載 で きるほ ど の情 報 が あっ ま って いたO 科 学 的 な 方 法 で マ ング ローブ が と りあ げ られ た の は, 前 世 紀 の おわ りか ら今 世 紀 の は じめ にか け て で あ る。 Schimper[1891], Karsten [1891] な ど か らは じま り, Mead l1912LReckingetal.[1922],Luytjesl1923], Watson[1928],de Haan [1931] な どの研 究 が 各地 で展 開 した。 それ以後 もさま ざまな 分野 か らの調 査研 究 が進 め られ,1950年代 の おわ りごろか ら,DingHou [1958],Macnae [1968]な どの よ くま とま った仕 事 が 発 表 さ れ た。1970年 代 に は Chapman [1976;1977] の集 大成 が な され る と ともに,世界各 地 でマ ング ローブ に関す る シンポ ジ ウ ム が 開 催 さ れ, マ ング ロ-ブ研 究 はひ とつ の ピー クに達 した とい って よ い。 これ は熱帯 諸 国が沿岸 開 発 を お こな うにあた って,漁 業 ,農業 ,林 業 の三 大一 次産 業 が か らみ あ うマ ング ローブを 重 視 した結果 で もあ り, 当分 は基礎 的 な研 究 を含 ん だ応 用面 で の仕事 が継 続 す る と思わ れ る。 現 実 的 な問題 と して, マ ング ローブ の減 少 が各地 で と りあげ られて い る。 かつ て は熱帯 低 湿地 と して 誰 も近 寄 らなか っ た こ の 地 域 に, 開発 の最後 の手 が の ぴて きて い る。湿 地 を お お う原 生林 が大量 に伐 採 され,跡 地 が農 地 や魚 油,集 落 な どに変化 して い く例 は,東 南 ア ジアを旅す れ ば, ど こで もみ られ る風景 とな った。 かつ て温 帯 圏 か らきた植 物 学者 を 驚 喜 させ, 数 々の研 究 を生 ん だ豊 か なマ ング ローブ は, い まや風 前 の灯 とな り,無 味乾燥 で,無 秩序 な開拓地 に変化 しつつ あ る。 マ ング ロ-ブの 中-入 る と, さわが しい周 辺部 か らは想像 もで きないよ うな静寂 が支配 して い る。す べ て の昔 が泥 と水 と樹体 に吸収 され, 時折 き こえ る烏 の声 や羽音 が ア クセ ン トとな って,現代 で は忘 れ き られ た よ うな世 界 が展 開 す る。 そ こに は豊 かで安 定 した生 物 の生 活 が あ る。 人 間以 外 の生物 が 中心 の世 界 へ入 って い く 時 に は, なか なか大変 で あ る。 た いて い の場 令 , ア プ ローチ は海 か らで あ る.満潮 の時 を ね らって, タイダル ・ク リー クに沿 って小 舟 で入 る。 舟 か らお りて林 内を歩 く時 は,場 所 によ って条件 は異 な るが,胸 まで沈 む ところ もあれ ば,意外 と楽 に歩 け る ところ もあ る。 や っか いなの は蚊 で あ る。 マ ング ローブ にマ ラ リア蚊 はい ない とい うの は嘘 で あ る。蚊 柱 のたつ くらい にか まれて, マ ラ リア にかか る 人 は多 い。 それ で もな おマ ング ローブ に出か けるの は, や は りそれ だ け魅力 が あ るか らだ ろ う。 マ ング ローブ は世 界 の熱帯 ,亜 熱帯 にみ ら れ る。 そ の 中で の 中心 は東 南 ア ジアで あ る。 種 数,構成樹種 の多様性 ,個 体 の大 き さ, 群 落 の規模 な ど, どれ を とって も群 をぬ いて い る。 初 期 の研 究 者 の報 告 も圧 倒 的 に東 南 ア ジ アが多 い。 マ ング ローブを諭 ず るた め には, まず東 南 ア ジアを あっ か わ な けれ ばな らな い ので あ る。 東 南 ア ジアのマ ング ローブ の位 置づ げを種 の分布 を もとにお こ な い, 帯 状 分 布 の ま と め,帯 状分布 の成 因,形態 ,利用 な どにつ い て,過去 の文献 を もとに整理 して みた。 マ ン グ ローブの文献 は7,000近 くあ る といわれ る が,参照 で きた もの は, そ のほん の一 部 にす ぎな

い。

代 表 的 な著 作 を 中心 に,東 南 ア ジア のマ ング ローブ の実態 を把 握 す るのを 目的 と した。 これ は東 南 ア ジア の低 湿地林 シ リーズ の第 1報 で あ り,淡 水湿 地林 ,泥炭 湿 地林 と と もに比較 して読 ん で いただ けれ ば幸 いで あ

(3)

山田 :末南 ア ジアの低湿地林 (1) る。 ⅠⅠ マ ング ロー ブの分布 1. 分布 を支配す る要 因 マ ングローブの分布 を支酉己す る もの と して, Walsh [1974]は 5要 因 , Chapman [1976] は7要 因を あげて い る。 これ らを筆者 な りに 整 理 してみ る と,つ ぎのよ うにな る。 (∋ 大分布 を規 定す る もの 地史 的要因,温 度,海 流 ⑧ 小 分布 を規 定す る もの 陸側 の条件 :大河川 の流 出,浅 い泥基 質海岸,海 か らの強風,波 か らの保 護地 形 海側 の条件 :塩水,潮 位 の幅 (む 帯状構造 を決 定す る もの 潮 の動 き,土壌型 ,塩 分含量,光 ,種 の特性 マ ング ローブ は地球上 の 熱 帯 , 亜 熱 帯 の 海岸地帯 に分布 し, も っ と も種 類 数 の 多 い の は東南 ア ジア を 中心 に した 地 域 で あ る。 この周辺 の分布 の北限 は南九州 の北緯35度 の Kandeliacandelで あ り, 南 限 は オ ース トラ リアのメル ボル ン近 くの南緯38度 の Avt'cen -nia marinaで あ る. 東 西方 向 には,太平洋 諸 島の一部を除 いて, ほぼ全世界 に分布 す る とみて よい。 基本 的 に植 物 の分布 を決定す るのは温度 で あ る。地球上 で の分布 を調べ てみ ると, マ ン グ ローブ の北 限 は 1月 の 気温 が 16oC の等 温線 と一致 し,大西洋 とイ ン ド洋 にお ける南 限 は7月 の気 温 が 16oC の等 温 線 に一 致 す る [Chapman 1975]。 また別 の見 方 をす れ ば, 最寒月 の平均気温 が 20oC 以 上 で, 季節 的な気温較差 が 5oC を こえない地域 に み られ る。む ろん例 外 もあ り,束 ア フ リカで は較 差

1

0

o

C

以上 の ところに も マ ン グ ロー ブ は生育 す る。 しか し, もっとも旺盛 な生育 を示 す の は, ほぼ上 にのべ た範 囲内で あ る。 植物分布 を決 定す る もうひ とつ の重要因子で あ る雨量 は,マ ングローブの分布 自体 にはそ れ ほ ど問題 で な く,湿潤熱帯 か ら乾燥熱帯 に まで広 くみ られ る。 海流 が,海辺 に生育す る マ ン グ ロ ーブ に とって大分布 の手だて とな る ことは,容易 に 推察 で き る。寒流 と暖流 の差 によ って, それ ぞれ の大陸周辺 の分布状況 が あ る程 度決定 さ れ る。 そ の際 には,単 な る平均気温 によ る分 布 とは異 な った分布 限界 を示す だろ う。 た と えば,北へ向か う海流 に沿 う海岸 で は, よ り 南 に生育 す る可能性 は残 され る。 また実際 に 実生 が どの くらい海流 によ って移動 しうるか の具体的 な実証例 はないが,今 後広域 的 に検 証 すべ き重 要 なテーマで あ る。 一般 に,岩礁 や砂海岸 にはマ ング ローブ は み られな い。陸側 の条件 として は, まず大河 川 の流 出す るきわ めて平坦 な地形で あ る。長 時間か けて運 ばれた堆積物 が さ らに傾斜 をゆ る くしてい るよ うな ところは, 大量 の泥が海 を浅 くして い く。 この条件 に入 江 や ラ グ ー ン,湾,砂州,島,狭 い海峡 な ど,海 か らの波 風 が あた らない地形 が加われ ば,マ ング ロー ブの生育 に最適 な条件 がで きあが る。 海側 か らの条件 は潮 汐 と塩水 で あ る。潮 汐 の大 きさによ り, また河川 の淡水 によ り,塩 分濃度 はさま ざまに変化 し, それぞれ に対 応 した植生 がみ られ る。 潮 の干 満 が 大 き い ほ ど,ゆ るやかな河川 の上流 域 までマ ング ロー ブが分布す る。 パ プア ・ニ ューギニアの フ ラ イ川 で は300km まで,南 スマ トラで は約100 km 上 流 のパ レンバ ンまでマ ング ローブが生 育 して い る。 強 い風 や波 の常襲地 で は育 ちに くい。 以上 のよ うな条件 が そろえば,大面 積 のマ ング ローブ 林 が展 開す る。 もっ と もマ ン グ ローブ樹種 は必ず しも真 性 塩 生 植 物 で は な く, ボ ゴ-ル植物 園や イ ン ド, ヨーロ ッパ の

(4)

東南 アジア研究 21巻2号 植物 園で は淡 水 で育 てて い る。 しか し, 自然 状態 で は一般 に塩 水 か ら汽水域 に分布 す る と 理 解 して よい。土壌条件 も,砂 や泥炭 ,珊瑚 礁 な どに生 育 す る こと もあ るが, 大群 落 に は な りえ な い。 最 近 で は,分布 を決 定 す る要 因 に,人 間 の 活動 が加 え られ る。 た とえば, イ ン ドで は放 牧 や農 地化 によ り, フ ィ リピンや ジ ャワで は 魚 池 によ り,分 布域 が減少 して い る。逆 に, ハ ワイのよ うに人 間 によ って マ ング ローブが もち こまれ た例 もあ る。 分 布 を決 定す るに は以上 のべ た よ うな要 因 が働 くと思 わ れ るが,群 落 を形 成す る樹 種 は, 一般 に帯 状構造 を な して,海側 か ら内陸 にか けて順次樹 種 が変化 して い く。 マ ング ローブ の分布 の特徴 とみ な され るが, この こ とにつ いて はの ちに詳 し くのべ たい。

2.

分布 の起源 現 在地球上 の太平 洋 の一部 を除 いて, ほ ぼ 大 部 分 の熱帯 ,亜 熱帯 の海岸 に分布 す るマ ン グ ローブ は, いつ ごろか ら, どの よ うな形 で い まみ られ るよ うな分布 を示 す よ うにな った のか。Chapman[ibid.] は大 陸移動説 を基礎 に, つ ぎのよ うな推論 を お こな って い る。 大陸 移動説 で は2億 年 前 の二畳 紀 に原 陸塊 パ ンゲ アが存 在 した。 これ は中生代 の間 に分 裂 を は じめ, 北 の大陸 で あ る ロー レシア は商 の ゴ ン ドワナ大陸 と分離 し, テチ ス海 が ジブ ラル タル まで広 が った。7,500万年 前 ,つ ま り白亜紀 のおわ りか ら新生 代 の は じめ にか け て, イ ン ドを運 ぶ プ レー トはマ ダ ガス カルを 中心 に して ア フ リカ と対 称 の位 置を 占めて い た。 この ころに被 子植物 の多様 化 が進 み, マ ング ローブ の Rhizophoraと Avicenniaも塩 分 環境 に適 応 して進化 を は じめた と仮 定 しよ う。 1,000万年 前 に はイ ン ド洋 とテチ ス海 は 図 1にみ られ るよ うにな る。 マ ング ローブの 現 在 の分布 か らみて, 図 中 の M 地 点が マ ン グ ローブの起 源 地 と考 え られ, 移動 を は じめ た。 マ ング ローブの移動 は図 か らみて も, ロー レシ了 の南岸沿 い にい く しか な い。 そ の 時 に地 中海 - の人 口が 開 い て い た と した ら, Rhizophora と Avl'cenniaの先祖 は地 中海 -まず 入 り, そ こか らア フ リカの西岸 へ, また 北 - はスペ イ ン- い き, さ らに比較 的狭 い海 を わ た って北 ア メ リカに達 し, フ ロ リダ方 向 へ南下 した と考 え られ る。後 世 にな って冬 の 気 温 の低下 によ り,両属 は地 中海 と北東 ア メ 図1 1,000万年前のイン下津 とテチス海,M はマングローブの 起源地,矢印はマングローブの分布方向を示す [Chapman 1977] リカ合衆 国か らは消滅 した。 その 当時 の太平 洋諸 島の状況 は明 らか で はないが, ロー レシアか ら実生 が東 方 向へ わ た って い くには,港 が広 す ぎて無理 で あ った と考 え ら れ る。 イ ン ド洋 につ いて は,3,500万 年 前 に は イ ン ド と ロー レシア は ま だ つ な が って い な か った の で lMcKenzie&Sclater 1973],i の 間 の 狭 い 海 を Rhizophora, Avicennia と 同 じ く,Bruguiera,

Ceriops,Xylocarpus,Lumnitzera

(5)

山 m :東南 ア ジアの低湿地林 (1) 考 え られ る。 テチ ス海 か ら地 中海 へ の人 口は そ の ころに は完 全 に閉鎖 され て いた ので, こ れ らの属 はそ こを通 過 す る こ とはで きず , イ ン ド洋 のモルデ ィブ, マ ス カ レン, チ ャゴ ス な どの島 々に定着 し, さ らに東 ア フ リカの海 岸 に沿 って南下 した。 当時 の イ ン ド洋 一帯 は 温 暖 で, マ ング ローブ の生 育 に は好適 で あ っ た 。

Rhizophora と Avicennia が地 中海 を通 ら な い と した ら,喜 望 峰 を まわ る こ とにな る。 これ は当時 の寒 冷 な気候 か ら無 理 な推論 で あ る。 また,万 が一 まわれ た と して も, それ で はなぜ Bruguieraが まわれ なか ったか の説 明 がつ か な い。 傍 証 と して ,Nypaの花 粉 が上 部 始 新世 の ロ ン ドン粘 土層 や ブ ラジル [DoliaTliti1955] か ら出て い る こ と,Avicenniaの花 粉 とAcr o-stichum の葉体 が英 国 の第 三紀層 か ら報告 さ れ て い る こ と [Montrord 1970],上 部 白亜 紀 か ら上 部 始新世 にか けて, 西 ア フ リカで も Nypaの花 粉 の堆積 が み られ る こ と [Mu11er l970]な どか ら,気候 はマ ング ロー・ブが育 つ に十分温 暖 で あ った こ とが示 され る。 南 米 の太平 洋岸 のRhi20PhoraとAvicennl'a につ いて は, スペ イ ン, モ ロ ッ コ付近 か ら西 方 向- の移動 が起 こ り, パ ナマ地 峡 が閉鎖 さ れ る以前 に太平 洋岸 に出て南下 した と考 え ら れ る。 また太 平洋諸 島 につ いて は, オ ース ト ラ リアが ア ジア に接近 す るまで 移動 は起 こ り えず ,北半 球 につ いて はア メ リカ と太平 洋諸 島 との距離 はあ ま りに大 き く, とうて いマ ン グ ローブ は移動 しえなか った。 以上 の よ うな論 旨によ り, マ ング ローブの 先 祖 の Rhizophora と Avicenniaは西 まわ り によ って分化 した とい うのが Chapman説 で あ る。 これ に対 し,van Steenis [1962]や DingHou[1960]は,Rhizophora,Avicennia,

Xylocarpus,Lumnitzera,Lagunculariaはイ ン ドー マ レー シア地 区が起 源 で西 方 向 に東 7 7 リカへ,LaguncularT'aを除 く4属 は東 方 向 に ア メ リカの太 平洋 岸 -広 が った と して い る。 そ して, カ リビア海 に到達 した の は,上 部 白 亜紀 か ら下 部 中新世 の間 のパ ナマ地 峡 が 開 い て いた時 期で あ る と し,東 ア メ リカの海岸 に 克 着後 ,海 流 にの った実生 が海 をわ た って西 ア フ リカに届 いた と考 えて い る。Ding Hou [ibl'd.]は太平 洋諸 島 に は マ ング ローブ の適 地 が な い とい って い るが ,Chapmanは必 ず しもそ うはいい きれ ない と して い る。 これ らの議 論 を さ らに お し進 め る た め に は, マ ング ローブ構 成樹 種 群 の系統 学 的研 究 を は じめ,地 中海 にお け る白亜紀 以後 の堆積 物 内 のマ ング ローブ の花 粉 の研 究 や,実坐 の 浮 遊能 力 な どの実証 的 な研 究 が必 要 で あ り, 地 質学 的 な研 究 の発 展 と と もに, マ ング ロー ブ の起 源諭 が さ らににつ ま る こ とが期待 で き る。

3.

種 の分布 地 球上 に 分布 す る マ ング ローブを Chap-man [1975]はイ ン ド- 太平洋 型 と新 世界一 西 ア フ リカ型 のふ たつ にわ けて考 えて い る。 イ ン ド-太 平 洋 型 は東 ア フ リカか ら紅海 , イ ン ド,東 南 ア ジア, 中国,南 日本 , フ ィ リ ピン, オ ース トラ リア, ニ ュー ジー ラン ド, サ モ ア まで の 太 平 洋 諸 島を含 む (図2)。 新 世 界一 西 ア フ リカ型 はア フ リカ とア メ リカの 大西洋岸 , メ キ シ コ湾 ,熱帯 ア メ リカの太平 洋 岸 , ガ ラパ ゴス諸 島 ま で を 含 ん で い る。 現 在 ハ ワイに 生育 す る Rhizophoramangle,

Brugul'era sexangula, Sonneratia caseolaris, Conocarpuserectusな どはす べ て導 入 され た もので あ り, - ワイに は土 着 のマ ング ローブ は存 在 しな い。 この分類 に したが って,世 界 のマ ング ロー ブの属 数 の分布 を表 1に示 した。 イ ン ドー 太 平 洋 型 を ま とめて イ ン ド- 太 平 洋 ,東 ア フ リ カ と して示 し, 新 世界一 西 ア フ リカ型 は太 平 213

(6)

東 南 アジア研究 21巻2号

30 丁 ノ 45 60 75 90 lO5 ・ & l35 ヽ 鑑 三pBlCo(rnongrIOGEOGRAPHINDO-WEST-P】sloswiL,OVoeShfhweeQYiH-d\ ACIClyevLiTREGITou川nedleLrOn9rniopedFItOfONCOVeS

○ktLfld .ヽ ,./i.Ry昌一 y5,. I3 - 1 RABIA N D IA H〇●OH一ヽ○l 一cinon T一.チdiM)r1 .I -、F 、ノ ∼ O I.clldiv'Oec.,..n +-∫IIヽ.I■○Iqー・..S.○○堅亡■l 驚 qll+dqd l左 Ohip.SC'qobiI1○NEW GUINEAl50 l65 l5 -∼Q .蛋 l一一■〇一_slyCtl●tk.∼ Ch gos IIl〇〇〇 I.、1JLJP iQF■bl●巾bqO i.II_ -Aふ T'i,b伽.AVA ・C-.野 _.,考節A_,.:/ Ip .Oorl +良/ _ ㌔.tR:kヽmOn ち ○ JZI 書 I I37○JL9 .8._C167'ヽー ヽJ一〇一SrthLVL_H4b-▼tt.や.叫●dip Nt*▼ Fijii 30 hh4Cq .Sヾ○hclyrk AUSTRALJA ーi.bLt一.. Onll) 図2 アフ リカか ら太平洋にかけてのマ ングローブの分布 [Macnae1968] 表1世界のマ ングローブの属 ごとの種数の分布[Chapman 1976] (数地域 に重複す るものあ り) 属 太東アフ リカイン平 洋

- 太 平 洋アメリカ 大 西 洋アメリカ 西アフ リカ 計 Rhizophoy7a 5 32 3 31 7 Bruguie71a 6 6 Cen'of)S 2 2 Kandelhl I 1 ALJicennhZ 6 3 ll Xylocarpt岱 ?82 ? 2 1 ?10 IJagunCukZrhZ 1 1 1 1 Conocarpus Lumnitzem 91 71 41 21 CamPtostemon 2 2 Aeg由litis 2 2 Nyfw 1 1 Osbornia 1 1 Sonne71atkZ 5 5 5kyphipho71a 1 1 AeglCeraS 2 2 そ の 他 19 35 汁 ?63 ?16 17 ll ?90 ギ ダ マ シ科 ),Melia -ceae(セ ン ダ ン科 ), Sonneratiaceae(ハ マ ザ ク ロ科 ),Combreta -ceae(シ タ ン シ科 ), Bombacaceae(キ ワタ 料 ),Plumbaginaceae (イ ソマ ツ科 ),Palm ae (ヤ シ 科 ),Myrsina -ceae(ヤ ブ コウ ジ科)吃 どで あ る。 この うち最 高 の種 数 を示 す もの は Rhizophoraceaeの4属 16種 で あ り, そ の うち 14種 が イ ン ドー マ レー シア地 区 にみ られ る。 全90種 の うち63種 が こ の地 区 に 出現 す る こ と は, こ こが 分布 の 中心 で あ る こ とを十 分 に立 証 す る もの で あ る。 そ 洋 ア メ リカ, 大 西洋 ア メ リカお よ び西 ア ア リ れ に くらべ る と新 世 界 系 は貧 弱 で あ り, もっ カの3地 域 にわ けて示 した。主 な科 はRhizO- と も多 い大 西洋 側 ア メ リカで も17種 にす ぎな

(7)

山田 :東南 ア ジアの低湿地林 (1)

義之

マ ング ロー ブ を 代 表 す る50種 の分 布[Chapman 1975] ダ ガ ス

W

7

Tt

i

ヵ イ ロ

i

P

J

L

t

FT

E

T

;

T;

目 上 宮

.

章 回

り冊

-

-

_

-_

.

∴ HhiZ(Jf)how (JPicukZta jf. 1nuCr()naゎ Je. tdvl()Sα Jt harrlSOnlZ' jI. mangle Brugl/l'eYa(PVlindrica B. exarisおお B. gl′mnOrrhlZa B. fvm,lJlora lZ. 、LIL,ZJI.i!IIIL/ Ceri()I)skzgal C. decandTla KandL7/iacandel Sl)nnt,71lItia(1lba S. 1,1♪e由kl S. (・aJg()klrlLS S. grlj7itJuI S. ()I)akl S. 推 q X_vl()carPtLt:gTlanatum X m()luccensiS X mekongensis IJILmnitzem littorea L. 71aCemOSa Aeg2'cc71aSC(JrnicukZlum A. H()ridum Auict,nnlaalba A. marma A. resimjTeTla A. 〔)jklna lis A. klnah2 A. bzcolor A. g(,rminans A. africa na Aegtalitisr()lundlfolkl A. annuhfa S(・_vf・hif)hornhydroL)hyllacea ll.lL/人 JI… 小 ・III/Ll I,aguncuklridracemoLW C()n()corpusi,reCtu:tl Pellicierarhzzof)hoTlae N_vfwfrulicans AL・anthusill/・lfolius AC・r(75′ichum aureum A. sp

e

ciusum Camf,fo_deml)nPhllippineがis C. schulfzlli Heritieylamin()r H. lltinralilhl Flrc()i,(・anaagallocha 「

-r

? 「 -1 - --1 1 ? ? 9 9

(8)

東 南 ア ジア研 究 21巻2号 さ らに 代表 的 な50種 につ いて 表2で み る と, 東 ア フ リカに 9種 , イ ン ドに 28種, マ レー シア に28種 , ボル ネオ に31種 , オ ース ト ラ l)ア に25種 が分布 して お り, マ レー半 島 か らボル ネオ にか けて の熱帯 多雨林 地帯 が分布 の 中心 とな る こ とが うかが え る。

4.

帯状 構造 マ ング ローブ は海 寄 りか ら内陸 にか けて, 種 が順 次変化 して, それ ぞれ の種 は海岸 に平 行 に帯 状 構造 を な して い るのが基本 で あ る。

Ma

c

na

e [

1

9

6

8

]

は東 ア フ リカか ら オ ース ト ラ リア に分布 す るマ ング ローブ の帯状 構造 を 一般 化 して, 内陸 か ら海側 にか けて, つ ぎの 6型 が基本 にな る と した。 (∋ 内陸側 周 縁林 ④ Ceriopsかん木杯 @ Bruguiera# # @ Rhizophora# # ① 外 洋面 Avl'cennia帯 @ Sonneratia# (シル ト) Son ne71atle alba ±Cer

i

o

ps hzgaI

Rhizophwa m ucronahZ

B

y喝.uiera

g

ymnorrhiza

hZgal ±Acrostichum Lu

m

nlitze,a ra C

e

m OSa

Z

:l,:luu::a,aa また

,Cha

pma

n[

1

9

7

6

]

はマ レー シア地 区 のみ につ いて, つ ぎの9型 を あげた。

(9 Avicenniaパ イオ ニア群集 ④ Sonneratiaalbaパ イオ ニア群集

(む Rhizophora mucronata パ イオ ニア 群

@ Rhizophoraapiculata## ⑤ Brugul'eracyll'ndrica(Berus)型

@ Bruguieraparviflor

a(

Le

ng

ga

da

i)型 (う Brugul'eragymnorrhiza(Tumu)輿

㊥ Ceriopstagal低木林 @ Lumnitzeralitfoyea マ レー シアで の遷 移 は図3の よ うに ま とめ られ る。 しか し, かれ 自身 もい うよ うに,こ れ らの関係 は決 して これ のみで な く, ひ とつ ひ とつ の事 例 を完全 に図化 す る こ とは不可 能 で あ る。

Ma

c

na

e

Chapma

n

の分類 で はい まひ と つ もの た りな い ので,筆 者 の考 えを表3に示 した。 これ は群 集 を単位 と して, イ ン ドー マ レ ー シ ア 地 区 に出 現 す る主 要 な ものを 13あ げ, それ らを四つ の (クリーク・湾,ラグーン) 生態 環 境 に区分 した RhizoPhora もので あ る。 は じめ TRC.raOpTcZhhl の 海 水 域 先 駆 型 に

/

R.apicuklhZ ±Bruguiey7aSpp. Xylocarpusgranatum Sonne71ath caseoklYis NyLxZfruticans Hen'tiey;alitto712lis 図3 マ レー シ ア の

9

種 の遷 移 関 係

[

Ch

a

p

ma

n

1976] は,外洋面 また は海 寄 りに先 駆 種 と して 群 落 を構 成 す る4群 集 が あげ られ る。 2 番 目の中間型 にはマ ング ロ-ブ の 中心 を な す 4群 集 が 含 ま れ, これ らは海 に面 す る こ とはな い。こ れ か らさ らに内陸 -入 る と,3番 目の 内 陸 移行 型 とな る。種 名 を あげた群集 と し て はふ たつ だが,雑

(9)

山口]:東南アジアの低湿地林 (1)

表3 東南 アジアを中心 に分布す るマ ングローブ主要群集の類型 と,その生育地の特徴 (Watson[1928],

Macnae[1968],Chapman[1976]を参 考 に して作 成)

Ff三態 区 分 群 集 名

Ⅰ海水域先駆型

ⅠIⅣⅠl 中Ⅰ内陸 移汽水域 先駆型 A乙間行 型型 ,icenniaalba先駆群集 AL,icennianwrt-na先駆群男 S()nner{l/iaalba先駆群集 Rhiz()I)h()ramzLCYOnata先馬 Rhizof)h()raapl'Cuklta群集 BruguierlaCylindri

c

a群集

Bruguie71aParl)ill()yla群集 BruguieJlagymn()rrhiZa群二 Ce7,iopLS.tagal低 木 群 集 Lumnitzeralittwea#% 混交林Nypafruticans群集 SonnerTIfiaca.∼.e()larl:S群 集 多 な 移 行 種 が生 育 す る混 交 林 が 含 まれ る。 こ れ は地 域 に よ る変 異 が も っ と も大 き い と こ ろ で あ る。

4

番 目の汽 水 域 先 駆 型 は, 淡 水 の 優 占す る川 す じに 目だ つ 二 大 群 集 を あ げ た。 こ の 区 分 に よ って , そ れ ぞ れ の群 集 の 立地 環 境 と性 格 が よ り明 確 に な る の で は ないか と思 わ れ る。 これ らの群 集 の イ ン ドか ら太 平 洋 地 域 の分 布 を 示 した の が表 4で あ る. 周 辺 の一 部 を 除 い て , ほ ぼ全 域 に均 一 に分 布 して い る こ とが よ くわ か る。 Chapman[1977] は よ り 多 くの マ ング ロ ー ブ群 集 の分 布 を 論 じて い る が , 基 本 的 に重 要 な もの と して , これ らを把 握 し, そ れ に付 随 して , そ の ほ か の よ り小 さ な群 集 を 認 識 す る方 が 理 解 しや す い O 巨な基質,生育地形など 大小の入江端壬,砂や シル トが ま じる泥地 外洋面,比較的かたい基質,後方にB.C_vll■nd

r

z

l

c

a

が くる 川 に寄 りシル トの堆積す るひ じょうに深 くやわ ら かい基質 小 さな入江や クリークの土手のかた く深い泥,塩 分濃 度20‰ 以上 を好む 暗色の肥沃を腐植 と細砂の ま じる基質,かな り乾 いたtで も年商

AL,ZIcenniaとB.par∼)i.'Ho7Taの うしろのかたい枯-1二, 回 目付近,浅い有機物層,運河のない ところ オポチュニス トとよはれ,Hhiz()I,A()rTTの前後にLltJ. 入 りする.B.C_V/Z'77dric〟と似た 17_地 またはより湿 地に出現 乾いた通気の よい t二壊,内陸側 に出る,マ ングロ ーブの最終段階の種 マ ングローブの内陸端 に出現,時に Brugllit,7:lIや Rhl'zof)hC)raの F層に,樹高1-6m

川の土手近 く,壌土に出現,Scyphif)hoITahydr() -I)hyllaceaが随伴す る

Atdon由 sch()lan'S,Intsiabljluga,Fllcusretu:tlaなど

内陸種が混交,森林 につづ く場合 (年間雨量2,000 mm以上)と,サバナ,草原,砂i莫につづ く場合(500 -I,500mmが あ る) もっとも高い春の潮で浸水す る地区にみ られ る, 川や クリー クの土手に生育 川の上手に沿 う,望富な淡水によって塩分が うす め られた ところ ⅠⅠⅠ 帯 状 構 造 を決 定 す る要 因 マ ング ロ ー ブ を 構 成 す る樹 種 が , 基 本 的 に は帯 状 構 造 を な して 分 布 す る こ と は, 客 地 の 例 が 明 らか に して い る。 そ れ で は, どの よ う な 要 因 に よ って , この帯 状 構 造 が で き あ が る の か 。 この 間 題 に対 して , 実 証 的 回 答 は ま だ え られ て い な い が , 要 因 の検 討 は Walter

Steiner [1936],Macnae [1968],Baltzer [1969

]

,Chapman [1976

]

,Snedaker[1982]

な ど にみ られ る。 この 中 で Macnae[1968] は, 帯 状 構 造 を 支 配 す る もの と して , ① 潮 汐 に よ る浸 水 頻 度 ,(む塩 分 耐 忍 度 , (釘土 壌 の 浮 水 度 を あ げ, これ らの要 因 に強 く影 響 す る も の と して , マ ング ロ ー ブ 内部 お よ び周 辺 部 の 217

(10)

東 南 ア ジア研究 21巻2号

蓑 4 マ ング ローブの13群 集 の イ ン ドか ら太平 洋 にか けて の分 布 (Chapman [1977] を も とに作 成)

生 態 区 分 群 集 名 イ ン ド ビルマ マ レ-シ ア パプ ア .ニュー ギニア フ ィ リピ ン 太平洋諸 島 Ⅰ 海水域 先駆 型lAl'icennhtalba先駆 群集

+

+

+

+

+

+

Ⅰ1 中 間 型

1Ⅳ 汽 水域 先駆 型1Ⅰ内陸 移行 型 Auicennklmarina先駆群 集

+

+

+

+

+

+

Sonneyatiaalba先駆群 集

+

+

+

+

+

+

Rhizo♪hwamucronata先駆群集

+

+

+

+

+

+

RhizophoylaaPicuklta群 集

+

+

+

+

+

+

+

Bnquieyacylind'rica群 集

+

+

+

+

Bruguie71a fxlrUljlwa群 集

+

+

+

+

Bnquie71agymnOrrhiza群 集

+

+

+

+

Cerioz)sh2gal低 木群 集

+

+

+

+

+

+

+

Lumnitzeylalitt()rea群 集

+

+

+

混 交 林

+

+

+

+

+

N,vtwfruticanLb.群集

+

+

+

+

+

+

水 路 とマ ング ロ-ブ海岸 の浸 食 を重 視 して い る。 Chapman[1976] は帯 状 構 造 そ の もの よ り もマ ング ローブ の生態 的条 件 と して ,① 潮 汐 要 因 ,④ 塩 分 ,@ 土 壌 構 造 ,@ 地 下 水 位 と排 水,(亘通 気 ,㊥ 塩 化 ナ トリウム以 外 の土 壌 中の 化 学 的性 質 ,⑦ 気 候 ,⑧ 生 物 相 を と りあ げ, そ れ ぞれ の特 色 を示 して い る。 最 近 ,Snedaker [1982]は, い ままで の帯 状 構 造 の 成 因 に 関 す る諸 説 を,(∋遷 移 ,檀)地 形 学 ,③ 生 理 生態 学 ,(彰個 体 群動 態 の4分 野 にわ けて ,歴 史 を さか の ぼ って議 論 し,将 来 的 に は地 形 学 と生 表5 Watsonと deHaan,Macnaeの マ ング ローブ区分 の 比較 [Macnae 1968]

Watson[1928】 deHaan【1931】 DomiusedinanMacnae【ntplantands19ys68】tem

1. Onlandfloodedatall hightides

2. Areasfloodedby"mediunl hightides"

3. Areasfloodedbynormal hightides 4. Areasfloodedbyspring tidesonly 5. Areasnoodedbyexce p-tionalhightides A. Brackishtosaltwate r-salinltyathightidel0 -30

r

o

o

Al. Areasfloodedonceor twicedailyoneachof 20dayspermonth

A2. AreasnoodedlO119times permonth

A3. Areasflooded9timesper month

A4. Areasfloodedononlya LTew daysineachmonth B. Freshtobrackishwater

- salinity0-10

r

o

o

Bl.Areasmoreorlessunder

theinfluenceofthetide B2. Areasseasonallyflooded

eitherbyfreshorbrac k-ishwater

SeawardfringeofSonneratia albaorgrL#thL'i

ZoneofAvt'cenniamart'na Zoneorrhizophorafわrest Zoneofbruguieraforests Forestsofthelandwardfringe

Xylocarpusgranatumor Lumnitzeralitforeaor BrLLguierasexangulaor Samphireassociat10nOr Barringtoniaassociation

(11)

山田 :東南 ア ジアの低湿 地林 (1) 理 生態 学 の研 究 が マ ング ローブ の帯 状 構 造 と 遷 移 の解 明 に寄与 す るで あ ろ う と推諭 した。 帯 状構 造 は, マ ング ローブ の分布様 式 と し て,誰 もが気 にす る基本 事 項 で あ る。 しか し, そ のわ りに は具体 的 なデ ー タを もとに した論 考 は少 な い。 とい うよ り もデ ー タの と りに く い要 因が多す ぎ る。 ここで は基本 的 な事 項 を 整理 してみ た い。 帯 状構 造 を決定す る要 因 は, ふ たつ の側面 か ら考 え られ る。 種 が生 育 す る立 地条 件 と, そ こに生 育 す る種 の特 性 で あ る。 まず,立 地 条件 で あ るが, マ ング ローブの生 育 地 に は大 き くふ たつ の 自然 的要 因 が作用 して い る。 潮 汐作 用 と,河 川 によ る土 砂 の 堆 積 作 用 で あ る。 潮 汐 に関 して はす で に Watson [1928] や deHaan[1931] によ って基本 的 な分類 が な され て いて (表 5), 潮 汐 の頻 度 】. 水 の深 さ, お よび奥 行 きが帯 状 分布 に関連 す る。 海 側 か らの潮 汐 と陸側 か らの河川 によ る土砂 の 堆積 が相和 して,帯 状 構 造 をつ くるべ き下 地 が で きあが る。 よ り具体 的 にいえ ば,塩 分 濃 皮 ,水 深 ,基 質 の条件 が重 要 で あ る。 塩 分 濃度 の測 定例 はか な り幅 の大 きい もの で あ るが,種 ご との耐塩性 はほぼわか って い る。 す なわ ち, もっ と も高塩分 に耐 え るの は

AvicenniamarinaとLumnitzeraracemosaで , 900/OOの濃 度 に も生 育 す る。 つ いで Cer1-ops

tagalが600/oo,Rhizophora mucronataと R・ stylosa が55rooで あ る。Rhizophoraapiculata, Bruguieragymnorrhl'za,B.parv

I

Jloraは10-30 rooで,最 後種 は20yooが最 適 で あ る。Xylocar -pusとNypaはト30roo,Bruguiera sexangula

はト10roo,Sonneratia属 は通常 の海水程度 の 塩 分 だが ,S.Caseolarisだ けは10700以下 とな る。マ ング ローブが条件 的塩生 植 物 で あ って, 淡水 で人 工 的 に生 育 して い る例 は多 いが, 自 然条 件下 で は最 適条 件下 に生 育 す るので あ る か ら, これ らの耐塩特性 が,塩 分環 境 傾斜 に 沿 って帯 状 構造 に寄与 して い る こ とはま ちが い な い。 つ ぎに,潮 汐 によ る浸 水 の深 さ と頻 度 につ いて は ,Watsonや deHaanによ る潮 汐 の 区分 けに示 され るよ うに,帯 状 構 造 に影 響 す る こ とはほぼ確 実 で あ ろ う。 さ らに重 要 な こ とは ,Macnae[1968] が のべ て い る,潮 汐 によ る水平面 の形 成 とい う地形 的 な要因 で あ る。 これ は,潮 汐 の レベル の差 によ って, 数 段 階 の水平面 が造成 され, そ こで の動物 相 , 植物 相 は独 立 して い る と い う も の で あ る。 D avis[1940]の地形 と マ ング ローブ の関係 よ りも,一歩 進 ん だ地 形 の具体 的 な例証 と し て, この水平 面 の成 因,構 造,生 物 相 が よ り 明 らか になれ ば, さ らに帯 状構 造 の解 明へ の 手 が か りがつ か め る ことにな るだ ろ う。 最 後 に問題 とな るの は基 質 の条件 で あ り, 塩 分濃度 よ り も重 要 で あ る とす る意 見 も多 い。 マ ング ローブ の土 壌 はひ じ ょうに細 か い 粒 子 か らな り, しば しば半 液体 状 で あ り, か た ま りに くい。腐 植層 は幹 ,枝 , 根 な どか ら な り, カニの糞 も重要 な要 素 で あ る。 酸 素濃 度 は低 く,硫 化水 素 が豊富 に存 在 す る。 サ ラ ワ クのマ ング ローブで はAvlcennia帯 の粘 土 の平 均 電導 率 は5,000-8,000FLモ ウ,pH は 7以上 ,灼熱損量 は5-15%で あ り, この値 は Rhizophora 林 で もあま りかわ らな い。 しか し,Nypa帯 の黒泥土 で は電導率 は011,000fL モ ウ と低 くな り,pH 値 は泥炭 地 の酸 性 値 に 近 くな り,灼熱 損 量 は80-90% とな り,泥炭湿 地 で は95%以 上 にな る [Macnae 1968]。 土 砂 の性 質 は上 流域 の基岩 に左 右 され る。 珪岩 ,古 い花 尚岩 ,石 灰 岩 な どの地域 を流 れ て きた川 によ って もた らされ る土 壌 は貧 弱 で あ るが,新 しい火 山灰 の もの は東 ジ ャワな ど にみ られ るよ うに高 品質 の土 壌 を生 む こ とに な る。マ ラッカ海 峡で は さ らに,更 新世 の間 に 川 の はん らん原 にた ま った海 中の沈 澱 物 が, 潮 汐 の動 きによ って浸 食 され, マ ングローブ の基質 に加 わ って い る といわれ る。 219

(12)

東南 アジア研究 21巻2号

表6 マ レー半島 におけるマ ングローブ樹種 の浸水 クラス と生育条件 (Watson[1928] と

Watsonに よる種 名 Chapmanに よる種 名 浸水クラス

Acanthuseb,Ⅵcteatus Acanth〟seby;acteatusVahl. 4,5

A. ilicZfolius A. iliclfoliw L. 4,5

Acrostichum auyleum Acrostichum au71eumL. 3,4,5

Aegice7tZSmajW AegiceyalscornicukZtum(L)Blanco 3,4

Auicenniaalba AvicennklalbaBlume 2

A. intermedkl A. num'na(Forsk.)Vierh. 2,3 A. kznata A. h7nahtRid1. 2,3 A. ojTicinalis A. ojWcinalisL. 3,4 BroLt,nlowhlkznceohZk7 な し 4 B. Riedelii な し 5 BruguleYlaCa7yOPhylloides BruguieTTaCylindrica(L.)Bl. 4

B. enlopeh2kl B. semnguhZ(Lour.)Poir. 3,4

E gymnorhiza B. gymnorrhiza(L.)Lamk. 3,4,5

B. zkZruljloya B. 如ruljloy;a(Roxb.)W.& A.exGriff. 3,4

CaTt2∠お moluccensis Xylocarpusmoluccensis(Lamx.)Roem 4,5

C

.

obouahz

X

. gy;anatum Koenig 3,4,5 CerbeyakzchZlht CerbeTlamanghas 4,5

C

Odolhzm

C

.

odolh2m Gaertn. 5 CerioPs(滋ndolleana CerioPshZgal(Perr.)C.B.Rob. 3,4 CycasRumphii な し 5 DaemonwoZ)sleptopw な し 5 Derrisulliinosa Lkryisheterophylkz(Willd.)Back. 4,5

ErcoecarkzAgallocha LkcoecarhZagallochaL. 4,5

Heriiie7lalittoTt2lis Hen'tieyTalittoralisDrynandexh.Ait. 5

HibiscustilkZCeuS な し 5

IntshZretuSa Ints由 bljuga(Colebr.)0.Ktze. 5

KandelhtRheedii KandelklCandel(L.)Druce 4

Lumnitzeracoccinea Lumnitzeyialitiorea(Jack)Voigt 4, 5 i. racemosa L. yacemosaVar.yleCemOSaVanSt. 4,5

Nipa/rutl'CanS NypafnLtica7WWurmb. 3,4,5

Oncospermajh2mentOSa OncoszwmajklmentOSum Blume 5

Plucheaindica な し 5

PodocarPusPolyshZChyus な し 5

RhizoPhoTlaCOnj柳 hz RhizoL)ho7laaPicukltaBlume 3,4

R. mucroyaahz R. mucrona由 Lamk. 2, 3

軸 hipho712hydrophylhzcea 鋤 hiPhoTlahydylOL)hylklCeaGaertn. 3,4

Sonnemtklalba SonneyatiklOVah2Backer 3,4

S

.

acidz S. caseo由yis(L.)Engler 4,5

(13)

山田 :東南 アジアの低湿地林 (1) Chapman

[

1

9

7

5

]よ り作成) 生 育 地 の 土 壌 , 地 形 ■条 件 川 の 土 手 また は伐 開地 の ロー ム また は粘 土

/

光 さえ あ れ ば, どこ にで も生 息 海 か らあ ま り遠 くな い川 の 土 手 の ロー ム 川 の 影 響 下 に あ る探 い泥 海 に面 したか た い泥 海 よ り遠 くな い砂状 の 泥 , シ ンガ ポ ー ル と東 海 岸 に 出 る 川 の 土 手 の か た い土 川 の 土手 と疎 開地 川 の 土 手 の砂状 土 海 に面 した新 しい粘 土 の 堆 積 地 ロー ム, しば しばBr.cy.やBr.如 .と随 伴,ふ つ う 散 在 ロー ム また は砂 状 泥 , よ り乾 い た ところ に豊 富 排 水 さえ よけれ ば, どこ に で も生 育 潮 の 限 界 付近 の ロー ム 砂 状 の 泥 と川 の 土 手 潮 の 限 界 に近 い川 の 土手 砂状 の 海 岸 河 口付近 の ロー ム 海 岸 と内 陸 に も出 る (東 海 岸 の み ) マ ン グ ロ ーブ よ り高 い とこ ろの川 の 土手 川 の 土 手 の ロー ム 半占土 , しば しばBr.cy.の う しろ 砂 質 ロー ム, 川 の 土 手 とマ ン グ ロー ブ の 内 陸側 端 ロー ム, 内陸 の川 の 土 手 潮 の 限 界線 よ り上 の ロー ム 川 の 土 手,Perakに は な い, 散 在 ロー ム, マ ン グ ロー ブ の 内陸端 , 時 に海近 く 粘 土 , 時 にBr.cy.の後 方 真 水 の 影 響 の あ る川 の 土 手 潮 の 限 界 よ り上 の 粘 土 また は ロー ム, 内陸 に もあ り マ ン グロ ーブ の 後 方 の伐 開地 マ ン グロ ー ブ後 方 の砂 状 の泥 また は高 い土 手 の上 , 東 海 岸 の み ロー ム状 の 泥 な ら どこ にで も生 育, が 海 に面 せ ず 川 の 影 響 下 の深 い泥 , 海 に面せ ず 川 の 土手 の ロー ム また は砂 状 の 泥 地 また は疎 開地 ロー ム, しば しは.川の 土手か らい くぶんはなれ た ところ ロ ーム, 川 の 水 の 影 響 の あ る範 囲 海 に面 した 豊 か な泥 また は川 の 土手 , よ くR.muc -ronataと随 伴 砂 海 岸 これ らの比較 的未熟 なマ ング ロ-ブ土壌 に,貝類 を起 源 とす る石 灰 物質 が加 わ る。貝 類 をつ くる蛋 白質 で あ る コンキオ リンが, 無 酸素土 中で硫 黄 バ クテ リア によ って分解 され, こわ れやす くな って土 砂 と混 合 して い く。 これ らの基 質 が高等 植 物 に利用 され るため に は, さ らに有機 物 , バ クテ リア, 藍 藻 植 物,珪 藻類 ,緑 藻植 物 な どが関与 し, そ の 中で も硝化 細 菌 と硫 酸 塩 還 元細 菌 の役 割 が 重 要 で あ る と さ れ て い る [Schuster

1

9

5

2]

基 質 の栄養条 件 とと もに,土 壌 の水 分条 件 も重 要 で あ る。 これ にはマ ング ローブ 内 部 や周 辺 の水 路 が 影 響 して くる が, 排 水 の よい土 を好 む も の と して, Xylocarpus, Lumnitzera,Avicennl'a marinaな どが あげ られ る。 水 び た しの土 壌 を好 む の は Nypa で あ る。 以上 の塩 分濃度 ,潮 汐, 基 質 に対 して, 各樹 種 が それ ぞれ の耐性 の幅 です みわ け る 現 象が帯 状 構造 とな って あ らわ れ る。樹 種 ご との生 育 地 の条 件 は,吉 良

[1

9

6

7

]

が わ か りや す くま とめて い るが, よ り詳 しい も のを表6に示 した。 樹 種 の特 性 は基 質 に対 す る ものだ けで な く,光 条 件 に対 して も異 なっている。Macnae

[

1

9

6

8

]は, マ ング ローブの完 全 陽生 樹 種 と して Acanlhuslliclfolius,Avicenniaalba,A. marina,Sonneratia alba, S.apetala,S. grl#thiiを, 基本 的 に陽生 で あ るが 少 しの

日陰 な ら生 育 す る もの に Aegialltis annu -lata,Aegicerascorniculatum,Gerlopsdec an-dra,Lumnitzeraracemosa,Rhizophorast y-losa,R.mucronata,R.apl.Culataを あげて

い る。 これ ら以 外 の もの は 陰 樹 で あ り, Bruguieragymnorrhlzaが代 表 的 な もので あ る。潮 汐 と河川 の堆積 の相 互作用 によ っ て で きた裸地 に,は じめに侵 入す るの は,こ れ らの陽生 樹 種 で あ る。活着 に成功 して生 221

(14)

東南 ア ジア研究 21巻2号 育 す るにつ れ, そ れ 自身 の生 育条 件 もかわ り,徐 々に 帯 状 構造 が発 達 す る。 そ の最 終段 階 がByugul'er agym-norrhizaの 出現 と され, これ を もっ て マ ング ローブ帯 は内陸性 の森林 に 移行 して い く。 ま と め て み る と,潮 汐 と河 川 に よ る土砂 ,石 灰 基 質 , リク ー, 糞 な どによ って マ ング ローブ の生 育 す べ き基 質 がで きあが り, そ こにまず 完 Op○ I :'iTi;.ilよ;;.i,;.te.rrd,.oThn S○0 I.tu -.:... 'J v;C'..nn'.o '...pJtc?Q....:.:..I...I.:. ■ -3rj 弓.,F.毛.a. 9 -1.:. &ざ 9.讃 鴬A..,:...:-,:!.:.I,::Iノ●●.■■ ∫ ・=;t=;:,_育 : hItOPhorq,.:Gt 粥 :::.:. tf =}+-⊂● ?.豊 子■●∴■●.●が uler〟 .fPlIIZOh〟 I:...::-㌔:. 弘● 72 I ,',:.':.亀.:,1 ・=..∴qb `⊃ ;::? yIDCOrPUSgrrE硝.L3h品&.lZ::;O:;::;:::;::;.=..d::.:::;:.;I,.i 良二・..:I./..=.-1:a.ll)Pf:.き…誤rai: 一.7'、.警屯;妄●■;●:■:●:‥■●;●a●■; i XI.':.i lI'lpJl. Io'erpragusIyT7m0ljl7u0''=lc.;i.:chI/e'ji' ・謂 rPUSgrOnOrUm Ch■b◆l◆●-to '●■■Imi◆●I●.●●I'.Q●●●+●■●d一●.-■ ?星Oc,Oox○}i: 斡占I-′▼4'.ーlEI.utc■c- Qtig:.'塔.H..'I:.'. 図4 マ レーシアにみられるマングローブの帯状構造 (Watson[1928]の一部) 全 陽生樹 種 が定 着 す る。 群 落 の発達 に と もな って生 育地 の環 境 条 件 が変化 し,変 化 した条件 に適 した別 の種 が生 育 す る。 この くりか え しが基 本 的 な帯 状 構 造 を形 成 す る。帯 状 構造 とい うか らに は, 均 質 な 条 件 が あ る幅 を も って 分 布 して い る こ とが必 須 条 件 とな る。 ゆ るや か な海 岸 低 地 は, この条 件 を もっ と もよ く満 た して い る。 これ らの条 件 は, しか し,水 路 や ク リー ク, 波 ,風 ,海 流 ,人 為 的伐採 な どによ って, た やす く変化 して い く。 比較 的 と との った帯状 構造 が大河 の流 出のな い海 岸 線 にみ られ るの は,これ らの障書 が少 な いた めで あ る。 逆 に, 大河 河 口の周辺 部 は複雑 な要 因 がか らみ あ っ て, よ り短 く帯 状 構造 が分 断 され た形 で,種 の分布 が み られ る (図 4)0 ア メ リカ の マ ン グ ロ ー ブ で Rabinobitz

[

1

9

7

8

]

は散 布 器 官 を もちいた実 験 の結 果 , ① 外 洋面 の低 い部 分 を 占め るマ ング ローブ属 の散布 器 官 は大 き くて重 く, 内陸側 の それ は 小 さい,(勤実生 の死 亡率 は散布 器 官 の重 さ と 逆 相 関す る,④ 実生 は成樹 の下 で はよ く育 た な いな どの結 論 を示 して い る。 この個 体群 動 態 的研 究 を直 接 に帯 状 構造 の成 因 と結 びつ け るの は,Snedaker

[

1

9

8

2

] もい うよ う に無 理 が あ るが, よ り′詳 しい追跡 がで き るな らば, 散布 器 官 の形態 ,浮 遊能 力 ,寿 命 ,定着性 , 基 質 の好 み な どによ って,分布 様 式 が あ る程 度 お さえ られ る可 能性 はあ るだ ろ う。 帯 状構 造 の もつ 意 味 に つ い て Lugoetal.

[

1

9

7

5

]

は,南 フ ロ リダ のマ ング ローブで物 質 代 謝 の研 究 を お こな った。 そ の結 果 , あ る帯 状 構 造 に優 占す る種 の物 質代 謝 は, その優 占 群 落 内で もっ と も効率 よ く機 能 し, 随伴種 の それ は効率 が わ る くな る とのべ て い る。 これ は,優 占種 の もつ特 性 が最 適条 件下 に最 大 に 生 か され て い る ことを実証 す る もの と して興 味深 い。 これ らの研 究 は東 南 ア ジアのマ ング ローブで はまだ な され て いな い。

(15)

山田 :東南 ア ジアの低湿地林 (1) 今 後 の ひ とつ の方 向 と して, マ ング ローブ を構 成 す る 同 種 内 の家 系 間 分 析 が 考 え られ る。 種 数が 限 られ, しか も分布 が広 く, かつ 低 地林 ほ ど巨大木 とな らな いので,調査 は比 較 的簡 単 で あ り,広 域 分布 と帯 状 構 造 の解 明 - の糸 口を与 え るか も しれ な い。 ⅠⅤ 現 存 量 マ ング ローブ に関す る記載 中心 の報 告 は数 多 くみ られ るが,量 的 にあつ か った もの は少 な い。 まず ,胸 高断面 積 合計 につ いてみ る と (表 7),南 スマ トラで はか な り密 な Rhizophora apiculata と Avicennia alba の混交林 の 25 m2/haが最 高値 で あ って, それ 以 外 はす べ て か な り小 さな値 とな って い る。 もっ と も内 陸 寄 りとみ られ る Rhlzophora apiculafa と Brugul.era gymnOrrhiza の混交 す る林 で は, わず か に 13m2/haにす ぎな い。 これ はlba の調 査 地 の集計 で あ って,局 所 的 にはむ ろん か な りの量 を示 す と こ ろ も少 な く.な い が, Nypa や ク リー ク部 分 な どが必 ず あ って,辛 均 す れ ば ど こで もこれ くらい の値 で あ ろ う。 立 木密度 も190本 か ら596本 と, それ ほ ど多 い // パナマ 南フロリダ もので もない。新 大陸 のマ ング ローブで はパ ナマで 13.6m2/ha,フ ロ リダで20.3m2/haで あ り, それ ほ どかわ らな い。新 大陸 の調 査 は 密 な林 分部 分 を小面 積 で測 定 して い るた め, 個 体 が小 さい に もかか わ らず ,東 南 ア ジア の もの に近 い値 とな って い る と考 え られ る。 現 存量 の測 定例 は さ らに少 な く,東 南 ア ジ アで はわず か に タイの例 が あ るにす ぎな い。 南 タイの Rhizophoraapiculalaの例 で は,支 柱 根 を含 めた 地上 部乾物 重 量 は 159 トン/ha で あ る。また, タイ湾 の植 栽 したRhizophora apiculata の年 齢 ご との 現 存 量 は,

3

年 目の 20,8 トン/haが 14年 目 に は 188トン/haとな る (表8)。 新 大陸 で は最 高 がパ ナマ の279トン/haで あ るが, そ の ほか の値 はか な り小 さ く63-174 トン/haの間 にあ る。 これ らの値 を ほか の森林 型 と くらべ て み る と,熱帯 多雨林 や熱帯 常緑 季 節林 の値 よ りは か な り小 さ く, タイのサバ ナ林 とモ ンス ー ン 林 の間 に位 置 して い る。 日本 の39年生 の カ ラ マ ツが207トン/ha, 芦生 の天 然 生 ブ ナ 林 が 354トン/ha [Shidei

&

Kira 1977]で あ る か ら, マ ング ローブ の現 存量 はそれ ほ ど大 き くな い とい え る。Woodwell&Pecan[1973] 表7 各地のマングローブの胸高断面積合計と立木密度 1立木 密 度D≧10ノ′ha 積 合 計胸 高断 面m2/h「a 文 献 386 21.2 Sukardjo

&

Kartawinata[1978]

4

452

2

6

112.5.95 i 〟

/

I

366 596 14.5 // 25.0 【 山 田 とSoekardjo[1979] 190 13.0

/

712 13.6 Golleyetal.[1975] 主三 要 樹 種 Rhizophwa.apicuklla, A乙,icennuISpp. け

EA Hhizof'hora.apicuhZta・ AuicennuZalba Rhizof)h()れワaf)icuhZta, Bruguieytzgymnorrjiu'za Rhizophoyabreuistyhz, Laguncukzrk171aCemOLWI RhizophoTlamangle,

(16)

東南 アジア研究 21巻2号 表S 各 地 の マ ング ローブ と熱帯 林 の現 存皇 (単位 :乾物 重 トン/ha) 地 域 主 要樹種 ,森林 型 調 査面積 , 本数 幹 垂 枝 重 支柱根 重 菓垂 南 タ イ RhizophwaaPicuklta 25m2 74.4 15.8 61.2 7.4 タ イ 湾 3年 生 RhizophoTlaaPicuh7hZ lm X lm植,30本 4.7 3.7 6.2 6.2

/

/

6年 生

/

/

17.3 10.9 10.8 ll.0

/

/

9年 生

41.1 17.9 17.8 16.3 11年 生 〝 /′ 59.4 19.8 18.7 18.4 12年 生

/

/

86.3 22.5 20.7 19.8

13年 生

/

/

103.8 23.1 20.3 20.2 〟 14年 生

/

/

135.9 15.1 22.9 14.0 パ ナ マ Rhizopho7TabreuistykZほか 625m2, 2カ所 159.3 116.4 3.6

プ エ ル トリコ Rhizopho71a〝∽ngle 25m2, 2カ所 28.0 12.7 14.4 7.8

フ ロ リ ダ LnguncuhZrklYlaCemOSa 25m2 4.0 3.2 0.7

/

/

Rhizopho71amangle

/

/

70.4 52.0 7.3

/

/

//

/

/

70.5 41.9 6.9

/′ R.〝∽ngle,L.ylaCemOSa // 41.0 17.0 22.3 5.9 // /′ ,

/ ′/ 65.2 19.1 27.2 5.8

// /′ ,

/

/

/

/

110.0 18.6 17.2 7.0

// R.mangle,Auicennh7germinans ′/ 62.9 16.8 14.6 3.8

// /′ ,

/

/

/

/

133.7 27.7 3.1 9.5 マ レ ー シ ア 熱 帯 多雨林 0.10ha 528 126 - 8.8 南 タ イ 熱 帯 常緑 季 節林 0.32ha 230 93 - 7.8 タ イ モ ンスー ン林 0.16ha 209 53 3.8 によ る地球上 の大生 態 系 群 の 平 均 現 存 量 で は,亜 寒帯林 の値 が200トン/ha とな って い る.熱帯 にあ るとはい って も, マ ング ローブ の蓄積量 は,せ いぜ い この くらい の レベル で あ る ことと認識 して おいてよいだ ろ う。 Ⅴ マ ング ロー ブ植物 の形態 1. 根系 マ ング ローブの 中で もっ とも目だつ の は異 形 根で あ る。支 柱根,`坂根,気根,呼 吸根 が 地下部 か ら突 出 し,地上部 か らたれ下 が り,一 種 独特 の雰囲気 をか も し出 してい る。 また, マ ング ローブの根 の もつ負 の屈地性 も重要 で あ る。 この形態 的特徴 が多 くの研 究者 を引 き つ けた とい って も過言 で はない。根 に関す る 研 究 は Troll良 Dragendorff[1931],小倉

[1940

]

,Scholanderetal.[1955LvanSteenis

[1958],Macnae[1968]な どにま とめ られ て い る。 マ ング ローブ樹 種 は大 部 分,直 根 や 深 い 根 を もたず,浅 く広 い 根 系 を 示 して い る。 Rhizophoraceaeは長 い幼根 を もって いて, それ は直根 と して生長す るよ うに思 え るが, 実 は活着後 は 生長 しない。 Rhizophora の場 合 に は支柱根 の 根端 か ら 30cm ほ どの深 さ に根 が入 り, これが寄 りあっ ま って樹体 を支 えてい る。 この支柱 根 は もともとは腫 軸か ら 発 した もので あ り, の ちには幹 か ら斜 めにた れ下 が って適 当 に分 岐 して地上 に遷 して根 を はる。正常 な根 は分 岐 しないが,熱,乾燥 , 虫害 な どによ って先端 が枯死 し, その少 し上 側 か ら二次 的 な不定根 が発生 す る といわれ て い る。 これが くりかえ され る と,仮軸分枝 の

(17)

山 田 :東南 ア ジアの低湿地林 (1) 花 . 果 実重 地 上部垂 文 献 0.0.0.30202 159.1 Christensen [1978] 20.8 Aksornkoae [1975] 50.0

/

/

93.1 // 116.3 // 149.3

/

/

167.4 187.9 279.3 Golleyeta

/

//

l.[1975] 62.9 Golleyetal.[1962]

7.9 Lugo

&

Snedaker[1975]

129.7

/

/

0.2 119.6

/

/

0.03 86.2 〟 0.0.0.211 1152.917.8.592

/

/

0.0004 174.0 〟 663 小 川 [1974] 331

図5 南 ス マ ト ラ の Rhizophoraapl'culata (樹高 25.5m, 胸 高直径29cm)の支柱根 [山田 と Soekardjo 1979] よ うな形 とな る (図5)0 Brugul'era属 で は, 水平 にのびた ケ ーブル 根 が膝型 また は肘 型 に地上 部 -突 出 して, 呼 吸根 の役 目を して い る。突 出部 分 に は皮.目が み ら れ る。 Ceriops属 も同様 な 根 を もつ 。 Kandelia属 は幹 基部 が 太 くな り, 板根 と呼 吸根 を そなえて い る。

Sonneratia,Avicennia

,

Xylocarpusの各属 は, どの段 階 で も直根 がみ られず,表面下20 -50cm の層 に ひ じ ょうに 広 い面 積 にわ た っ て ケ ーブル根 を の ばす 。前 二極 の場 合 はそ の ケ ーブル根 か ら下 方 - ア ンカー根 を の ば し, 上 方- は気 根 また は呼 吸根 を 出す。 そ して最 上 部 の泥層 に ひ じ ょうに細 か い養分 吸収 根 網 を広 げ る。 シル トが た ま って い くと,新 しい 吸収 根 が古 い ものの上 にで き, 吸収 は継 続 さ れ る。 この層 は大変 肥沃 で,穴 を は って生 息 す る動物 の活 動 によ っ て 酸 素 も含 ま れ て い る。 また, そ こにす む二枚貝 は, そ の水管 を 表 面 まで のは し,海 水 を外套 腔 に循環 させ て い る。 この活 動 はその周 辺 の泥 に酸 素を補 給 す るた め,淡 色化 が起 こ って い る [ibl'd.]。 Avicennia属 とLumnitzeraracemosaの呼 吸根 は細 く,鉛 筆状 で あ るが,Sonneratia属 とXylocarpusmoluccensisで は太 く, コブ状 とな る。 Xylocarpusgranatum が無 酸 素土 に 生 育 す る場 合 は,根 の 突 綾 部 が 上 方 - 突 出 し, それ に沿 って ケ ーブル根 が表面 のす ぐ下 にみ られ る。

scholanderetal.[1955]は フ ロ リダ の

Avicennl.anl'tt'daと Rhl'zophoramangleで, 根 の通気 毛 細管 系 は呼 吸根 か支 柱根 の皮 目 と つ なが って い る こ とを示 した。 Avicenniaの 場 合,気 根 の皮 目に潮 がか ぶ る と,根 中の圧 力 が お ちは じめ,潮 が引 きは じめ るまで そ の ままの状態 で, それ か ら空 気 が急速 に吸収 さ れ る。 低 い潮 で は酸 素濃度 は10-18%で,水 に も ぐる と酸 素量 はお ち, 引 き潮 にな って皮 目が完全 に空 気 中に 出 る と もとの レベル に も ど る。皮 目を グ リースで と じる と,根 の酸 素 量 が お ち, 1-2日で 1%また はそ れ 以 下 に な る。 これ は呼 吸根 が嫌気性 泥 中 の根 系 のベ ンチ レー ターの役 目を して い る こ とを証 明 し 225

(18)

東 南 ア ジア研究 21巻2号 て い る。 Rhl'zophora の場合 は,支柱根 の皮 目が その役 目を し,地下部 の根 の酸 素濃度 は Avicetmia と同等 の変異 を示 してい る. 2.胎生 種 子 異形根 とともに,胎生種子 の発達 もマ ング ローブの特徴 の ひ とつ で あ る。 Rhizophor a-ceaeで もっと も著 しいが,ほか の科 で もみ ら れ る。種 子がほ とん ど休 眠 しないで,果 実が まだ枝 につ いて い る間 に発芽 して長 い肱 軸 と 幼根 を 出す ので あ るが,この場合,内乳 は短 期 間役 にたつ だ けで, ま もな く痕跡 にな って し ま う。 種 ご との胎生種子 の発達状況 は,van Steenis[1958]がつ ぎのよ うにまとめてい る。 Aegicerascorniculatum で は涯 が種皮 をや ぶ り,果皮 を うめつ くして しま う。 それか ら 肱 の生長 とつ りあいを とって大 き くな り,大 き くな った果 実 が落下 した あ と,膝 は果皮 を 突 きぬ く。Avicennia も同様 の発達 をす るが , 果実が まだ樹上 にあ る うちに,肱 が果皮 を突 きぬ く場 合 と, そ うで ない場 合が あ る。 Brugul'era で は肱 軸 の先端 が果 実 の先端 を つ らぬ き, 旺 軸 はそ こか ら葉 巻 状 に生 長 す る。 そ して,付着 した まま一緒 に落下す る。 Bruguiera parvljfora で は果 実基部 は生長 し て きた幼芽 によ ってつ らぬかれ,果 皮 は実生 の まわ りに永存 す る。Bruguiera で は子葉 は ただ基部 に合着す るだ けだが, その腺状 の表 皮組織 によ って果皮 か ら養分を吸収 し,腫 軸 に養分 を与 え る。 Rhizophora の胎生 は, 肱 軸 が か な りの長 さに達 す るまで発達 し,熱 す る と落下 す る。 幼芽 は,一端 が太 くな った こん棒状 の子葉体 の 中に囲 まれ七 い る。 この子葉体 は合着 した 子葉 か らな って お り,肱 軸 の生長 のために果 皮 か ら養分 を吸収 して い る。 この部分は果 実 か ら突 き出て, 関節 によ って腔 軸 と区分 され る こ とが 多 い。 成 熟 す る とこの 関 節 は破 裂 し,幼芽 を冠 した腫 軸 は膝 軸 を含 まない果 実 図6 マングローブの胎生種の実生 1. BruguleragymnOrrhiza; 2. Rhizophoramucronata; 3. Brugul'eraparvIJlora;

4.Avicenniamarina (a)発芽時,

(b)腫芽 の伸長 ;

5.Aeglcerascorniculatum (a)果実群,

(b)若い果実, (C)発芽 した果実

lMacnae 1968]

部分 か らはなれて落 下 す る。 Ceriops もはな

れ て落下 す るが,Kandeliaは Bruguieraと同 じ く果 実全体 が落下す る (図6)。

胎生 につ いて は, マ ング ローブ樹種 の適応 で あ るといわれ る こと もあ るが, 同 じマ ング ローブで も Sonneratia に はみ られず, また 類似 した環境 に生 育す るBarringtonia群集 の 樹種 群 や,淡水湿地,泥炭 湿地林 の樹 種 に も 全 くみ られ ない ことか ら,VanSteenis[ibid.] は適 応 とは認 め て いない。 胎 生 の有 利 な 点 は,落下 して活着す るまでの時間が短 い こと のみで あ る。適応 とい うよ りも樹種 の特性 と み るべ きだ ろ う。 落下 した肱 軸が直接泥 に突 きささって生長 をつづ ける と説 明 され る ことが多 いが,実 際 に突 きささる陳間をみ た人 はほ とん どいない だ ろ う。 直接突 き ささるた め には,下 が適度

(19)

山田 :東南 アジアの低湿地林 (1) にやわ らか い泥 で な けれ ばな らない。 か た い 基 質 や水 で あれ ば突 き さ さる見込 み はな く, や わ らか い泥 に一 旦 さ さ って も横倒 しにな る 可 能性 も大 きい。 お そ ら く,落下 した大部分 の腫 軸 は,水 に水平 に浮 遊 す る。 まれ に直立 して浮 いて い る もの もある。小 板 が先端 に出, 引 き潮 の時 に泥上 に水 平 に付 着 し,活 着 す る と肝 軸 が徐 々 に上 方 向 に向 いて, やが て直立 姿 勢 にな る[Egler 1948;Lawrence 1949]。 春 の小潮 の時 が, 活 着 す るの に最 適 な条 件 で あ る。

マ ング ローブ の 実 生 や 果 実 は 数 ヵ月 間, 浮 遊 して も活 力 を 失 わ な い といわ れ て い る [Guppy 1906]が, マ レー シアで は Rhl'zoI phora,Brugul'era,Cerllopsな どの実生 は, 揺

とん どがす ぐ近 くの母樹 か らの もので あ る。 SonneratiaとAvicennl-aはか な りの距離 を浮 遊 した種 子 によ って更 新 が お こなわれ る。 浮 遊 生 活 の意 味づ け は今 後 の課 題 で あ る。 Chapman[1940]は実生 が活着す るに は, ひ じ ょうに浅 い海 で小 さな潮 の上 昇 しか な い か, あ るい はか な りの潮 の上下 が あ って, そ のた め に 日中何 時間 か 日に さ らされ るか の条 件 が心要 で あ る とのべ て い る。 これ は,小 さ な軸部分 が水 か ら出て いな けれ ば,椎 樹 はす ぐに死 ぬか らで あ る。 したが って,腔 軸 の長 さが重要 な役 割 を果 た し,Rht'zophoramucr o-〃αJαの よ うに60-90cm に もな る もの は, か な り深 い水 の 中で も生長 で き る。 ⅤⅠ マ ング ロー ブの利用 熱 帯 で は第 一 次産 物 を人 間生 活 の各所 に利 用 す る。 マ ング ローブ もそ の例 に もれず , そ の用 途 はきわ めて広 い。これ らの利 用 は,す で に Heyne[1950]や Burkill[1966]な どの大 著 に詳 し くのべ られ て お り,Watsonもそれ ら の情 報 を ま とめて い るので, ここで は簡 単 に 表 で重要 な もの のみ を簡 略化 して示 した。表

9は,Watsonが Heyneを基礎 にま とめた も のを,種 名 を改 め,利 用 方法 別 に示 して い る。 基本 的 な用 途 は材 と そ れ 以 外 に わ け て よ く,材 の用 途 と して は用 材 ,燃 材 ,炭 材 が あ る。 現 在 で もマ ング ローブ に入 る と必 ず, 炭 ガマ の ひ とつ や ふたつ に 出 くわす 。熱帯 の炭 の大部分 はマ ング ローブ によ って い る とい っ て よ い。炭 と と もに燃 材 と して も重要 で,義 10には比重 を基準 に した各樹種 の評価 を あげ た。用 材 と して の利 用 方法 も多 岐 にわ た り, Geriopstagal

,

Lumnitzera littorea

,

Scyphl' -phorahydrophyllacea,Xylocarpusmoluccensis

な どの よ うにか た くて耐久性 にす ぐれ,優 良 家 具 を生 産 す る ものか ら,ヤ シのOncosperma jilamentosum の よ うに きわ め て 用 途 の広 い もの,Rhizophoraの よ うに柱 にな る もの まで, さま ざまな ものがみ られ る。 材 以 外 の用 途 の もっと も特 徴 とな るの は, 樹 皮 に含 まれ る タ ンニ ンの利 用 で あ る。表11 に樹 種 ご との タ ンニ ン含 量 を示 した。 これ ら の タ ンニ ンは イ ン ドで は Acaciaの タ ンニ ン に とってかわ られて い るが, マ レー シア地 域 で は皮 な め し,漁網 や布 の染料 な どに広 く利 用 され て い る。AbdulRazaketal.[1981]は マ レー半 島の植物 の 中で タ ンニ ンを含 む主 な もの50種 を調査 してい るが, その中で もマ ン グ ローブ のRhizophora mucronata,R.apICu -lata,Bruguieragymnorrhizaは上 位 を 占めて

い る。 マ ング ローブ よ りもタ ンニ ン含量 の多 い もの は ,Codiaeum variegatum(Euphor.),

Calophylum inophyllum (Gut.), マ メ科 の Acacl'aauriculaeformis(外来種),Cassiajistula, C.suratensis(外来 種) くらいの もので あ る。 Watson の時代 に もす で にマ レー半 島で は タ ンニ ン用 の樹 皮 はスマ トラか ら移入 され, ペ ナ ン- は タイか ら入 っ て い た。一 般 に は

Rhizophoramucronataの樹 皮 が使 われ る。 皮

なめ しに使 われ る樹 皮 は乾 燥 して はな らず , た えず 水を や って しめ らし,細 か く くだ いて

(20)

東南 アジア研究 21巻2号 表9 マ ング ローブ の利 用 (Watson[1928]よ り作成 ,種名 は 種 名 主 な 利 材 燃 料, 炭 飲 食 AcanthtLSiliclfolius AcylOStichum auyleum Ayかennhzalba, 低 質材,心材 の よい 低 質燃 材

,

ゴム 若 い幼 根 をゆでて 野菜 とす る A. kz桝わ, の はか し材 に似 る, や 魚の

くん

煙 A. 〝∽乃タ∽, 米 臼,キ ャ ビネ ッ ト, A. obh '〃dLw 水道 燃 材 Bruguie71aCylindn'ca 材,柱 , た る き B. gymnoryhiza, 材 ,耐性 あ り,か た く 燃 材, 炭材燃 材,炭燃燃燃 材材材 幼根 は食用,果 実 を B_ semngukl 重 く乾換 わ る し )かむ種子 よ り食用油

B.C.CerbenZmanodol如yhghzvm2ajslwa, 柱, 耐性 あ り材,鉱 山用材鉱 山用,ポー トの肘,良質材, キネ

CerioPsh2gal か くをかむ CycasnLmPhii LhemonoroPsleptopw 上おm -SheterophylkZ Iacoecarhzagallocha Hen'tieraliitoylalis 種 子 と髄 か らデ ンプ若 美 を食す果実 が保 存 食.樹 碑はサ トウ. アル コ-ン Hibiscz応tilkzcew 荷車 の車輪 Intshzbljuga KandelhlCandel Lumnitzeylalitto7m, L物 fnLticansracemosα }柱 ,梶,蘇, 梁漁用梶良質材 だが稀 産艶材,柱,等,秤L:護琵 畠華 Oncoskrmajhmentosum ′サ ラ ダ, ピ ックル スキ ャベ ツ状 の若芽 がレ Plucheaindica

Rhizophwaa♪icukzhZ 野菜 と して食す, 莱果実液 よ り軽 い ワイ果実 は食 用 にな らずには茶 の代 用ン

R. mucronah2 材,柱 燃 材,炭燃燃燃 材材材 鋤 hiPhwahydrophylhTCea 柱材 か た く,道 具の柄, Sonney;aぬ alba 柱,船 材材 と して不 良か たいが塩 を含 む,,樵

S

.

caseok77.由 果 実 が食用

S

.

ova血 材 と して不 良 果実 が食用 Thespes由♪o♪ulnea 材質 よ し

(21)

山 田 :東 南 ア ジア の低 湿 地林 (1) Cbapman[1976]によ り改変) 用 方 法 果 実 をくだいて血 を清 め た り, お で きの 手 あてに,種 子 は虫下 し 葉 は リューマチに, 果 実 また は皮 の 湿布 が解毒 に 種 子 か らつくった軟 膏 は はれ ものや 天 然痘 の治療に,樹 液 は堕 胎剤 果 実 が た だ れ 目に, 呼 吸 根 よ り香水 , 皮 か ら香 辛 料 )! 果 実 で さす る と リューマ チが楽 に な ,種 子 油 が か いせ ん に, 樹 皮 と樹 が 下 剤 とエ イ に さ さ れ た傷 にき 皮 が タ ンニ ン と染 料 , 抽 出液 は産科 用止 血 剤 種 子 か ら吹 出物軟 膏 弱 い魚毒 (幹 と根 ) 皮価病 , 樹 液 と材 が 下剤 ,樹 液 が 魚 毒, 歯 痛 止 め 種 子 をつ ぶ して下飼 止 め 葉 は毛 生 え薬 ,去壌 剤, 催 尿 剤 樹 皮 は赤 色 の媒 染剤 , 糖 尿病 薬 うが い薬 ほか 用途 多 し, ア ス トリン ゼ ン ト軟 膏 タ ンニ ン タ ンニ ン, 皮の 煎 じ汁 が 血 尿症 に 湿布がネ ンザ にき く,醗 酵 ジ ュー ス は止血 心材が肋膜とコレラに, 果 実 の軟 膏 がしらみ出しに, 葉汁が頭痛 とか い せん に 皮の蒸留 水が コレラとセ キ リに 屋 ・r わ き し き の ふ 皮 ン .ゼ に に ン し い り め 沈 ト な 布 ス 皮 が ア や 種 子 油 が灯 油 に 連 結 用 香 木 靭 皮繊 維 よ り縄 葉 は屋 根 ふ きに, 若 葉 は タバ コ巻 き 小舟 の いか り 小舟 の いか り 呼吸 根 を漁の浮 き, コル クに 靭 皮繊 維 よ り縄 灯 油, 髪 油 (種 子 よ り) 表 10 マ レーシア地区のマ ングローブ樹種の比重 を 基 準 と した 燃 材 の評 価 (Cox[1911], Beckingetal.[1922]を Walsh[1977] が

まとめた もの) クラス 評 価 比 重 樹 種 Ⅰ ⅠⅠ ⅠⅠ1 Ⅳ 優 良極 上良並 0.>0.7590 RhizophoylaSpp., BnquierlaSpP., Ceriof)Lb.Spp.. Hen'tieralittorla

l

i

s

i Cynometyla71am≠flo71a Lumnitzeyuspp., -0.90 0.60 Sonneylath7alba, 乃thecolobium umbel -kltum Xylocarpusspp., -0.75 Aeg7Ce7lB COmkukltum 0.45 Dolichandronelon

gw--0.60 SZTna Ⅴ 劣 0.30 AuicennklSpp., -0.45 So nneya thZCaSeOkzris, Excoeca rhlagallocha. バ ッ トの水 の 中 につ け, そ こへ な め し用 の皮 を 入 れ る。 新 鮮 な樹 皮 は,そ の重 さの125% 分 の皮 を な めす こ とが で き る。 樹 皮 は大 木 の厚 手 の もの が よ く, くだ けて い て はい け な い。 裂 溝 が 黄 色 味 が か って い るの か よ い。 樹 皮 の 割 合 は表12にみ られ るよ うに, 樹 種 と直径 の 大 き さに よ って か な り差 が み られ る。 地 域 に よ って はCeriopStagalが 重 宝 され , 漁 網 , 縄 , 帆布 , 布 な どを 染 め る こ とに よ っ て3倍 以 上 長 もち させ る。 これ が な い と こ ろ

で は Xylocarpusgranatumが 求 め られ る。 こ の タ ンニ ンの質 と含 有 量 は最 高 に近 いが ,棉 皮 が うす い。 そ の ほ か 飲 食 用 と して の利 用 や 薬 用 と して 服 用 され る例 はか な り多 いが , これ らの 多 目 的利 用 は マ ン グ ロ ーブ に限 らず , 熱 帯 の ど の森 林 型 で もみ られ る通 例 で あ る。 前 述 の Heyneや Burkillの大 著 が で きあ が るゆ え ん で もあ る。 細 か い利 用 を のべ て い て は き り が な い の で , こ こで は この く らい に と どめ た い。 最 近 の文献 と して W alsh[1977] が , マ ング ロー ブ の利 用 につ いて 新 しい報 告 を書 い て い る。 229

表 3 東南 アジアを中心 に分布す るマ ングローブ主要群集の類型 と,その生育地の特徴 ( Wa t s on[ 1 9 2 8 ], Ma c na e[ 1 9 6 8 ] , Cha pma n[ 1 9 7 6 ]を参 考 に して作 成)
表 5 Wa t s on と deHaan,Ma cna e の マ ング ローブ区分 の 比較 [ Ma cnae 1 968 ] Wat s on[ 1 928 】 deHaan【 1 931 】 Domi na ntpl antands ys t e m
表 6 マ レー半島 におけるマ ングローブ樹種 の浸水 クラス と生育条件 ( Wa t s on[1 9 28 ] と
表 1 1 マ ングローブ樹種の乾燥樹皮内のタンニン含有率 ( Be c ki ng e t a l . [ 1 9 2 2 ] ,Ho we s [1 96 2] を Cha p ma n [1 976 ]が ま とめ た もの よ り作 成 , 単 位 :乾 重 % )

参照

関連したドキュメント

ブルジョアジー及び 大地主の諸党派くカ デツト・ブルジョア 的民族主義者・その.. 南東部地方

Akio KODAMA Kanazawa University e-mail: [email protected] 1.は... 除湿 ロー

大気に関わるものでは樹木や雪氷・氷床堆積物 の代替記録からそれなりに分解能の高い資料

しかしマレーシア第2の都市ジョージタウンでの比率 は大きく異なる。ペナン州全体の統計でもマレー系 40%、華人系

Vondrák の

Comando o entorno Comando que controla el nombre o rótulo theindex (entorno) \indexname proof (entorno) \proofname.

Para el análisis de datos de proporción o conteos en presencia de sobredis- persión, bajo el supuesto que los modelos beta binomial o binomial negativo son adecuados para el ajuste,

[r]