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平成30年7月豪雨災害を踏まえた超過洪水時のダム治水操作手法の検討 A Study on Reservoir Operation for Flood Control under Large-scale Flood Events

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Academic year: 2021

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A10

平成 30 年 7 月豪雨災害を踏まえた超過洪水時のダム治水操作手法の検討

A Study on Reservoir Operation for Flood Control under Large-scale Flood Events

〇野原大督・竹門康弘・角 哲也

〇Daisuke NOHARA, Yasuhiro TAKEMON, Tetsuya SUMI

In July in 2018, a strong frontal rain system caused prolonged and torrential rainfall in the broad areas in the western Japan. While many reservoirs contributed to mitigate flood impacts by controlling flood water in the rivers, some reservoirs lost their flood control volumes to regulate river flow in the downstream by the overwhelming amount of inflow in the middle of the flood event. Those reservoirs therefore had to release the same amount of water as inflow after that, and resulted in severe inundation in the downstream in some river basins. Considering lessons learnt from this flood event, a robust reservoir operation method is discussed for flood control under large-scale flood events in this report.

1.はじめに 平成 30 年 7 月豪雨災害では、ダム洪水調節能力 を超えるような規模の降雨により、全国の 8 基の ダム貯水池で洪水調節操作中に洪水調節容量が満 杯となり、洪水中に流入量と同量の放流を行う異 常洪水時防災操作が実施され、洪水後期において その治水機能が失われる事態となった。ダム洪水 調節機能が洪水途中で失われたことにより、流域 によっては下流において甚大な被害が生じ、愛媛 県の肱川流域では、野村ダム下流において 5 名、 鹿野川ダム直下流において 4 名の人的被害が生じ た。ダム貯水池の洪水調節能力を超えるような規 模の出水が生じた場合、洪水調節によるダム空き 容量の枯渇に伴い、やむを得ず洪水調節の最中に 放流量を大きく引き上げる操作が行われる可能性 が高くなる。特に下流河川の疎通能力が小さい場 合に下流における氾濫の可能性が非常に高まるこ とから、こうしたダム防災操作の実施にあたって は細心の注意を払う必要がある。本稿では、平成 30 年 7 月豪雨災害にて顕在化したダム洪水調節操 作に関わる課題を踏まえながら、特に超過洪水時 のより安全なダム治水操作手法の検討を行う。 2.平成 30 年 7 月豪雨でのダム治水操作の状況 国土交通省の取りまとめによれば、国土交通省 所管の 558 ダムのうち、西日本を中心とした全国 の 213 ダムで洪水調節を実施し、下流洪水被害の 軽減・防止に効果を発揮した一方、そのうち 8 つ のダムでは、洪水期間中に洪水調節容量を使い切 る見込みとなり、異常洪水時防災操作が実施され た 1)。同操作に至った要因の一つは降雨・流出の 規模であるが、流出波形に着目すると、肱川流域 の 2 ダム(野村、鹿野川)では、後期集中型の一 山タイプであるのに対し、その他の 6 ダムでは、 複数のピークを持った長い出水タイプであった。 一方、異常洪水時防災操作への移行のタイミン グで見ると、5 ダム(岩屋、一庫、日吉、引原、 河本)では、流入量の減少局面であったのに対し て(図 1)、野村、鹿野川、野呂川の 3 ダムでは、 流入量の増加局面で同操作が開始された(図 2)。 その結果、後者では、洪水調節中の流入量と放流 量が大きく乖離している状態から、増加する流入 量に放流量をすり付けるため、放流量の増分割合 はさらに大きくなり、結果として特に直下流での 河川流量は急激に増加する結果となった。このよ うに、流入量がピークへ向けて鋭く立ち上がる段 階での異常洪水時防災操作の実施は、これまであ まり想定されてこなかったが、こうしたタイミン グでの急激な放流の増加は、ダム下流での河川に おける急激な水位上昇・氾濫、そして氾濫範囲と 浸水深の急激な拡大へとつながりかねず、場合に よっては沿川住民の避難の必要性の認知から氾濫 到達までの避難等に利用できる時間を縮めてしま う可能性があり、課題があると考えられる。 他方、流入量の減少局面で異常洪水時防災操作 に移行したダムでも、淀川流域の日吉ダムなどの ように最後の流入ピークにおいて十分な洪水調節 効果が発揮できていないケースがあり、長期間に

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およぶ複数のピークから構成される降雨で総流出 量が大きくなる場合に、いかに後期の流入ピーク に備えられるかが、全体の洪水調節効果を高める 上で重要となってくると考えられる。 3.超過洪水時のダム治水操作手法 ここで言う超過洪水とは、ダムの治水容量と洪 水調節操作ルールから見た場合の、ダムが持つ現 有治水能力を超過する規模の洪水を指す。ここで は特に、これまであまり注目されてこなかった、 流入量の増加局面で洪水調節容量の不足が見込ま れる場合のダム治水操作手法について着目する。 暫定操作を行っているなどの理由で、流入量が 増大しているのに放流量を少ない量で維持してい る場合、貯水量の増加が早くなる。残りの貯水量 が少なくなったタイミングで、降雨のピークによ る流入量の著しい増加があると、短い時間で異常 洪水時防災操作に移行、すりつけ操作を行わなけ ればならなくなり、放流量をさらに著しい割合で 増加させなければならなくなる。この結果、下流 河川ではこれからピークを迎えるタイミングで自 然状態よりも速い水位増加が生じることになる。 これを軽減するためには、洪水調節容量の残り が少なくなった段階で、放流量と流入量の差を大 きく取らないことが重要である。流入量がどこま で増加するのかが実時間では正確に分からない以 上、安全側を考えれば、空き容量がある程度少な くなれば、それに応じて洪水調節量(流入量と放 流量の差分)を小さくし、貯水量の増加を抑える ようにして、今後の流入量の著しい増加の可能性 に備える必要があると考えられるからである。 こうした操作方式として、VR 方式2)などが提案 されているが、流入波形の事前の想定が必要とな る上に、通常は流入量の減少局面での検討事例が 多い。そこで、一例として、一定量放流方式のダ ムを対象として、以下のような計算式に基づいて 放流量を算出するケースを検討した結果を示す。

(

F e

)

F ( )t 1 V V t( ) V α = − − (1)

[

]

( )t max ( )t c, 0 γ = α − (2)

[

F

]

F ( ) ( ) ( ) R ttQ tQ +Q (3) ここに、α(t)は洪水調節可能容量 VFに対する時刻 t までの洪水調節による貯留量(治水容量使用率)、 Ve(t)は空き容量、c は一定量放流操作から放流増 加への移行を開始する治水容量使用率、γ(t)は洪水 調節制限率、R(t), Q(t)はそれぞれ放流量と流入量、 QFは一定量放流操作での放流量である。図 3 に、 平成 30 年 7 月豪雨における野村ダムを対象として、 c=0.2 の条件でこの操作方式による操作計算結果 の一例を示す。ピーク放流量の低減が見られるほ か、1 時間あたりの放流量の最大増加量も実績で の 1124 m3/s(時間データをもとに算出)から 579 m3/s と、流入量の 1 時間あたりの最大増加量(519 m3/s)に近づいている。規模の小さい洪水で治水 容量を十分に使い切れない可能性があるという課 題があるものの、超過洪水時の治水操作手法とし て一考の余地がある。その他の検討事例について は、発表当日に紹介する。 参考文献 1) 異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能 に関する検討会:異常豪雨の頻発化に備えたダ ムの洪水調節機能と情報の充実に向けて(提言 概要), http://www.mlit.go.jp/river/shinngi kai_blog/chousetsu_kentoukai/index.html. 2) 三石真也・角哲也・尾関敏久・松木浩志:VR 方 式によるダム洪水調節の適用性に関する検討, ダム工学, 20(2), pp.105-115, 2010 0 200 400 600 0 20 40 60 7/3 7/4 7/5 7/6 7/7 7/8 7/9 累積雨量 (mm) 時間雨量 (mm) 時間雨量(上流域平均)累積雨量(上流域平均) 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 0.0E+00 1.0E+07 2.0E+07 3.0E+07 4.0E+07 5.0E+07 6.0E+07 7.0E+07 7/3 7/4 7/5 7/6 7/7 7/8 7/9 流量 (m 3/s ) 貯水量 (m 3) 貯水量 有効貯水容量 流入量 放流量 7月6日 4:05am 異常洪水時防災操作開始 図1 淀川流域日吉ダムの洪水調節操作実績(国土交通 省水文・水質データベースの時間データを用いて作図) 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 0.0E+00 2.0E+06 4.0E+06 6.0E+06 8.0E+06 1.0E+07 1.2E+07 1.4E+07 1.6E+07 7/6 7/7 7/8 7/9 流量 (m 3/s) 貯水量 (m 3) 貯水量 有効貯水容量 流入量 放流量 7月7日 6:20am 異常洪水時防災操作開始 0 200 400 600 0 20 40 60 7/6 7/7 7/8 7/9 累積雨量 (mm) 時間雨量 (mm) 時間雨量(上流域平均) 累積雨量(上流域平均) 図2 肱川流域野村ダムの洪水調節操作実績(同上) 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 0.0E+00 2.0E+06 4.0E+06 6.0E+06 8.0E+06 1.0E+07 1.2E+07 1.4E+07 1.6E+07 7/6 7/7 7/8 7/9 流量 (m 3/s ) 貯水量 (m 3) 貯水量 有効貯水容量 流入量 放流量 図 3 空き容量に応じて洪水調節割合を変化させた場 合の野村ダムの治水操作シミュレーション結果

参照

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