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治療経過からみた, 神経性無食欲症の中・長期経過に関する臨床精神病理学的考察

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Academic year: 2021

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Title

治療経過からみた, 神経性無食欲症の中・長期経過に関する

臨床精神病理学的考察( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

柴田, 明彦

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(医学)乙 第1382号

Issue Date

2003-09-10

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/14890

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 柴 田 明 彦(愛知県) 博 士(医学) 乙第 1382 号 平成15 年 9 月10 日 学位規則第4条第2項該当 治療経過からみた,神経性無食欲症の中・長期経過に関する 臨床精神病理学的考察 (主査)教授 小 出 浩 之 (副査)教授 近 藤 直 美 教授 犬 塚 論文内容の要旨 Ⅰ.研究の目的 神経性無食欲症の理解と治療的対応を研究するために,症例ごとの臨床的特徴と治療経過の分析に重点を置い た,神経性無食欲症の臨床精神病理学的検討を行った。 Ⅱ,対象と方法 筆者が直接主治医として1年以上治療に関わり,かつDSM-Ⅳの307.1神経性無食欲症の診断基準に該当した 14症例を研究の対象とした。まず,14例を,寛解群(治療と共にDSM-Ⅳの診断基準に該当しなくなり,か っ治療が終結したもの6症例),改善群(治療と共にDSM-Ⅳの診断基準に該当しなくなったが,何らかの理由 により治療を継続しているもの4症例),不変・悪化群(DSM-Ⅳの診断基準を経過中に満たし続けたもの4症 例)に分類した。次に,各群問における,性別・年齢・病型とやせ率・家族歴と病前性格・発症状況と臨床症状・ 経過と治療について比較し,そこから回復に働く要因(寛解群に認められ不変・悪化群には認められない傾向を 示すもの)と増悪に働く要因(不変・悪化群に認められ寛解群には認められない傾向を示すもの)を抽出した。 最後に,それぞれの要因について,臨床精神病理学的考察を加えた。 Ⅲ.結果 各群を比較検討した結果,回復に働く要因と増悪に働く要因には,次のようなものが認められた。 i)回復に働く要因・・・①前青年期発症例であること ②受診までの期間が短いこと ③不食が主症状であ ること ④経過において,家族との関係改善,身体疾患の合併,底突き体験がみられること′ 邑)増悪に働く要因・・・①受診までの期間が長いこと ②過食・嘔吐が主症状であること ③境界性人格障 害の諸症状を伴うこと ④経過において,家族との関係が悪化したままであること,治療者が巻き込まれ ること Ⅳ.考察 回復に働く要因を検討した結果は次のようであった。不食は,一方で自らの主張を貫く姿勢を表明する症状で ありながら,他方で周囲に対して救済を求めるメッセージを含んでいる。患者の食行動や精神症状,行動の悪化 には家族との関係が深く関わっており,回復過程において家族が救済のメッセージを理解し,家族との関係が改 善することによって,病状は改善することが認められた。家族との関係改善が容易に得られない場合は,身体疾 患の合併や底突き体験が症状改善の転機になった。これらは,患者,家族,治療者の間で,病態理解と治療方針 の一致を得る好機となった。以上より,臨床症状が改善した症例では,いずれも患者の対人関係が改善している

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という特徴がみられた。 増悪に働く要因を検討した結果は次のようであった。過食・嘔吐は,不食という防衛の破綻である。そのため, 患者は剃那的で自暴自棄的な態度を伴っており,治療関係を築くことが容易ではなか_つた。元来,神経性無食欲 症の患者には,「やせたボディーイメージ」を追求する心性が存在すると考えられる。発病から一定期間を経た 患者は,自己の内的世界に閉じこもり,ひたすら「やせたボディーイメージ」を追求することで,かろうじて自 己を保たせる病態に変化している(不食が主症状の場合はもちろんであるが,過食が主症状であっても,自己誘 発性嘔吐や下剤・利尿剤の乱用によってやせを保とうとする)。身体状態を改善させる治療は,患者の「やせた ボディーイメージ」の保持を阻害し,自己存続の危機に繋がる行為となる。そのため患者には,「やせたボディー イメージ」を保持しようとして,治療の拒否,治療者の価値下げ,治療者や家族を振り回す言動などが出現し, 「やせたボディーイメージ」の保持が困難になった時には,小精神病,自傷行為・自殺企図などの症状が出現す る。これらは,境界性人格障害と共通する症状であった。その結果,治療経過を通して家族との関係は悪化した/ ままとなる傾向を示した。またt 体重の増減だけに目を奪われた場合には,治療者が患者の症状に巻き込まれる 状態が続いた。これらの症状はいずれも,患者の対人関係が悪化するように作用していた。 以上より,対人関係の変化を中心に,神経性無食欲症の精神病理と治療について考察した。神経性無食欲症仕 「やせたボディーイメージ」を追求し,それを巡って諸症状が出現する病態であると考えられる。治療経過にお いて,「やせたボディーイメージ」への執着は,紆余曲折の後に,患者が心を許して甘えられる関係を持てるよ うになったことで軽減している。つまり,「やせたボディーイメージ」へのこだわりの裏には,気心を許した, 甘えられる対人関係への希求が存在した。患者がこうした関係を素直に求められない背景には,治療経過から, 他者に対する拭いがたい不信感が存在していることが推察された。各症例の成育歴からは,他者に対する不信感 の素地に,Eriksonのいうパーソナリティーの成長段階の最初期(生後約1年)における,基本的信頼感が獲得 されていないことが考えられた。したがって,神経性無食欲症の病態が改善するためには,治療を通じて,患者 が家族や治療者との基本的な信頼感を獲得して行くことが重要であると結論された。 論文書査の結果の要旨 申請者 柴田明彦は,神経性無食欲症は患者が「やせたボディーイメージ」を追求し,それを巡って諸症状が 出現する病態であることを明らかにした。そして,「やせたボディーイメージ」に執着する根底には対人不信感 が存在していることを示し,神経性無食欲症の病態が改善するためには,患者が基本的な信頼感を獲得すること が重要であると結論した。 本研究は,神経性無食欲症の精神病理ならびに精神医学の発展に寄与するところ大であると認める。 [主論文公表誌] 治療経過からみた,神経性無食欲症の中・長期経過に関する臨床精神病理学的考察 精神神経学雑誌.104,656∼689(2002).

参照

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