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Jpn J Rehabil Med 2014 ; : MRI SPECT 1 1, Characteristics of Statistical Imaging Analysis in Morphological and Functional Brain Imaging

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(1)

《短 報》《原 著》

《原 著》

2014 年 2 月 11 日受付,2014 年 7 月 22 日受理

*1 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座/〒 105.8461 東京都港区西新橋 3.25.8

Department of Rehabilitation Medicine, The Jikei University School of Medicine

*2 国立成育医療研究センターリハビリテーション科/〒 157.8535 東京都世田谷区大蔵 2.10.1

Division of Rehabilitation, National Research Institute for Child Health and Development

*3 東京慈恵会医科大学精神医学講座/〒 105.8461 東京都港区西新橋 3.25.8

Department of Psychiatry, The Jikei University School of Medicine E-mail : uruma-jk@jikei.ac.jp

「精神障害(うつ)」と「高次脳機能障害」の

脳形態画像・機能画像所見を比較する試み

−MRI・SPECT を用いた頭部外傷後の症例における検討−

粳 間  剛

*1

  上 出 杏 里

*1,*2

  互  健 二

*3

  安 保 雅 博

*1

Characteristics of Statistical Imaging Analysis in Morphological and

Functional Brain Imaging of Neuropsychological Impairments and

Nonorganic Mental Disorder after Traumatic Head Injury

Go URUMA,*1Anri KAMIDE,*1,*2Kenji TAGAI,*3Masahiro ABO*1

Abstract  Objective : The objective of the present study was to clarify the differences in statisti-cal imaging analysis of functional and morphologic imaging between neuropsychologistatisti-cal impair-ments (NPI) and nonorganic mental disorder (MD) after traumatic head injury. Methods : Six depressive patients after head injury without abnormal findings on conventional MRI (MD group), six nondepressive patients with NPI after diffuse axonal injury (NPI group), and six healthy subjects with a history of head injury (control group) were enrolled in this study. For all subjects, 99mTc-ethylcysteinate dimmer (Tc-ECD) SPECT and MRI 3D volumetry were

per-formed. Imaging data were analyzed using statistical parametric mapping, and then, the analyzed data were compared among the three groups (2 sample t test, uncorrected p<0.01). Results : Compared to the Control group, significant low Tc-ECD uptake and regional grey matter volume reduction were noticed bilaterally in the anterior medial brain aspects such as the anterior cingulate cortex in both the MD group and the NPI group. These findings were significantly greater in the NPI group than in the MD group. Moreover, these functional and morphologic ab-normalities were also spread to more medial and deep aspects such as the posterior limbic and the brain stem in the NPI group. Conversely, in the MD group without morphologic abnormali-ties, only functional abnormalities spread above the common lesions to the dorsolateral brain as-pects such as the superior frontal lobe. Conclusion : Our results revealed some characteristics of statistical imaging analysis in functional and morphologic imaging of MD and NPI patients after head injury. These findings seem to be novel and can serve as useful information for future inves-tigation of neural correlates with both NPI and MD after head injury. ( Jpn J Rehabil Med

2014;51:662.672 )

要 旨  目的:頭部外傷後の器質性の高次脳機能障害と非器質性の精神障害の統計画像解析

所見の特徴を明らかにすることを試みる.方法:頭部外傷後の,うつ群 6 例,高次脳機能障害 群 6 例, そ し て, 健 常 対 照 群 6 例 を 対 象 と し て, 全 症 例 に Tc-ECD SPECT と MRI 3D volumetry を施行し,結果を統計画像解析した上で,3 群間で Statistical Parametric Mapping (SPM)比較した(2 sample t test, uncorrected p<0.01).結果:対照群と比し,うつ群と高次 脳機能障害群で共通して,前部帯状回などの内側前方領域に,有意な Tc-ECD 低集積と灰白質

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統計画像解析による高次脳機能障害と非器質性精神障害の鑑別 は じ め に 器質性精神障害である「高次脳機能障害」と,うつ 病や外傷性ストレス障害(PTSD)などに代表される 「非器質性精神障害」は,時に臨床的な鑑別が困難で ある1).特に頭部外傷後の場合,外傷という背景の特 質上,心理社会的問題を伴いやすい2 ∼ 4).交通事故な どにおいて,第三者行為であればなおさらであろう. よって,器質性の「高次脳機能障害」と「非器質性精 神障害」は,どちらも頭部外傷には合併しやすいとい える.そのため,頭部外傷の際,両者の鑑別はしばし ば求められる5) 2004 年に定められた高次脳機能障害診断基準6) は画像診断による器質的病変の確認が必須とされ,器 質性の「高次脳機能障害」と「非器質性精神障害」の 鑑別に画像診断が推奨されている.一方で,従来の画 像診断法では,脳外傷は過小評価される7).例えば,

びまん性軸索損傷(Diffuse Axonal Injury:DAI)の 本態は「広範な白質の病理組織学的病変」であり,こ の病理学的変化を直接的に脳画像診断することは極め て困難である7).よって,従来の脳画像診断では,白 質損傷に伴う微小出血や浮腫を検出することで DAI の傍証を得ることができたに過ぎず,結果として, DAI の重篤な臨床症状と乖離し,器質病変としては局 所性ないし散在性の小病変を認めるにすぎなかっ た7).そして,そのわずかな傍証ですら,器質病変を 検出できない DAI 症例も時に見られる1,8).以上のよ うな背景から,頭部外傷の場合,確かに,画像評価に よる器質的病変の確認は高次脳機能障害である有力な 証拠といえるが,器質的病変が確認できないというだ けでは非器質性精神障害であると判断できる根拠にな りえないことは自明である. しかし,一般臨床においては,頭部外傷後の器質的 病変が確認できない場合,除外診断的に,「非器質性 精神障害」と見なされてきたことが多いと思われる. 特に,自賠責保険の診断書などでは頭部外傷後遺症を 器質性の「高次脳機能障害」であるか「非器質性精神 障害」であるかのいずれかに決めて記載するように求 められる5).ここに,両者を明確に鑑別することが求 められる最大の理由の 1 つがあると思う.しかし,こ れは人為的な単純化であり,医学的な意味で正確に鑑 別することはできない5).にもかかわらず,高次脳機 能障害は「脳の病気」,非器質性精神障害は「こころ の病」,のように全く別のものとして一般常識と考え られてしまっているふしさえある9).そもそも,「非 器質性精神障害」も「脳の病気」であるというのが昨 今の生物学的精神医学の前提であり,高次脳機能障害 と同様に,神経基盤の機能異常によって引き起こされ ている9)ことには疑いの余地はない.よって,頭部 外傷後の患者の症状の原因として,ある非器質性精神 障害を想定するならば,本来は,その非器質性精神障 害と関連する神経基盤の機能異常を証明することが求 められるべきだといえる.無論,器質性の高次脳機能 障害に関しても,ある症状とある神経基盤の機能異常 の対応が reasonable であるか? といったように,関 係性を評価されるべきである. 脳外傷後の微細な神経基盤の機能異常の検出には, Single Photon Emission Computed Tomography(SPECT) や Positron Emission Tomography(PET)などの脳機 能 画 像, お よ び, そ の 結 果 を Statistical Parametric Mapping(SPM)や Eazy Z-score Imaging System (eZIS)などの統計画像解析ソフトを用いて読影する 方法が有用である1,10).特に本邦では統計画像解析ソ フトの開発が盛んであり,eZIS などの機能画像を解 析処理するソフトのみならず,形態画像を処理し局所 脳萎縮を評価するためのソフトも開発されている(VS-RAD シリーズ)10).これらの統計画像解析ソフトは本 邦ではすでに広く臨床応用されている10).これら画像 解析技術の発展により,「頭部外傷後の高次脳機能障 害を積極的に示唆する脳機能画像/形態画像上の統計 要 旨  目的:頭部外傷後の器質性の高次脳機能障害と非器質性の精神障害の統計画像解析 所見の特徴を明らかにすることを試みる.方法:頭部外傷後の,うつ群 6 例,高次脳機能障害 群 6 例, そ し て, 健 常 対 照 群 6 例 を 対 象 と し て, 全 症 例 に Tc-ECD SPECT と MRI 3 D volumetry を施行し,結果を統計画像解析した上で,3 群間で Statistical Parametric Mapping (SPM)比較した(2 sample t-test, uncorrected p<0.01).結果:対照群と比し,うつ群と高次 脳機能障害群で共通して,前部帯状回などの内側前方領域に,有意な Tc-ECD 低集積と灰白質 容積減少を認めた.この所見は,うつ群より高次脳機能障害群に有意に強かった.高次脳機能 障害群では,これら機能異常所見と形態異常所見の両者が,より深部の領域に広がったが,う つ群では,機能異常所見のみが背外側領域に向かい広がりを見せた.結論:本研究により,頭 部外傷後の高次脳機能障害と非器質性の精神障害の形態・機能画像所見上の新たな特徴が示唆 され,今後の研究的・臨床的アプローチ開発の新たな作業仮説が示された.

Key words : 頭部外傷(traumatic head injury),高次脳機能障害(neuropsychological impairments), 非 器 質 性 精 神 障 害(nonorganic mental disorder), 統 計 画 像 解 析(statistical imaging analysis)

(3)

画 像 解 析 所 見 」 に 関 す る 知 見 は 蓄 積 さ れ つ つ あ る1,11 ∼ 13) 大うつ病・統合失調症・不安障害(PTSD 含む)な どの非器質性精神障害においても,脳機能画像におけ る特徴的な循環代謝異常が示されることが知られてい る14 ∼ 17).また,脳形態画像所見において,不安障害・ PTSD に特徴的な局所脳容積低下を指摘した研究成果 も論じられている16,18).よって,画像診断を器質性の 高次脳機能障害と非器質性精神障害の鑑別に応用する には,単に結果上の異常の有無を判断するだけでは不 十分であり,器質性の高次脳機能障害を積極的に示唆 する画像所見と,非器質性精神障害を積極的に示唆す る画像所見の,両者を明確にすることが必要である. 以上より,本研究は,「脳外傷後の器質的な高次脳機 能障害」と,「外傷に関連した非器質性精神障害の代 表であるうつ状態」を統計画像解析で直接比較するこ とで,その所見上の相違点を見出すことを目的とし た.本研究の結果を,本邦で最も用いられている統計 画像解析である eZIS/VSRAD シリーズ10)に応用でき るように,解析に用いる画像は,99mTc-ethylcysteinate dimmer(Tc-ECD)SPECT に お け る「 脳 機 能 画 像 」 および Magnetic Resonance Imaging(MRI)の三次元 ボリューム画像(以下,3D-volumetry)における「脳 形態画像」とし,SPM を用いた統計画像解析による 比較を行った. 対象と方法 1.対象 患者群の対象は,2009 年 4 月 1 日から 2013 年 3 月 31 日までに頭部外傷と生活労務能力の低下(Glasgow Coma Scale(GCS)における moderate disability 以下 に相当)のために当講座専門外来を受診し,後述の同 一条件で SPECT および MRI が行われた連続 64 症例 から,表 1 に示した選出基準を持って以下の 2 群の対 表 1 各群対象の選出基準 ①うつ群選出基準(Depression criteria:Dep-C)  Dep-C1:MRI T2 強調画像において年齢不相応な異常高信号域を認めない.  Dep-C2:Gennarelli のびまん性軸索損傷診断基準(coma≧6 h)を満たさない19)  Dep-C3: 生活労務能力低下が,注意・記憶・遂行機能能力低下を原因としない(例:仕事中に突然泣き出すため仕事 ができない,など).  Dep-C4: 頭部外傷受傷後も「生活労務能力の低下がなく受傷前と全く同じ生活ができた時期」があり,その後,生活 労務能力低下を来たすようになった.  Dep-C5:DSM-Ⅳの大うつ病エピソード A の基準を満たす20) .

②高次脳機能障害群選出基準(Neuropsychological Impairment Criteria:NPI-C)  NPI-C1:MRI T2 強調画像において年齢不相応な異常高信号域を認めない.  NPI-C2:Gennarelli のびまん性軸索損傷診断基準(coma≧6 h)を満たす19) .  NPI-C3:生活労務能力低下が,注意・記憶・遂行機能の能力低下を原因とする1) .  NPI-C4:頭部外傷受傷後に生活労務能力の低下が一貫して存在し,「受傷前と全く同じ生活ができた時期」がない.  NPI-C5:受傷前後において精神疾患の罹患・既往がない. ③健常群選出基準(Healthy-Criteria:Healthy-C)  Healthy-C1:MRI T2 強調画像において年齢不相応な異常高信号域を認めない.  Healthy-C2:後遺症はないが,脳震盪(受傷時の意識消失が 30 分以内)の既往がある2) .  Healthy-C3:生活労務能力低下がなく,社会的に自立している.  Healthy-C4:脳震盪前後においても一貫して,生活労務能力低下がない.  Healthy-C5:精神疾患の罹患・既往がない. 高次脳機能障害群選出基準(NPI-C)の 1 から 5 の基準を満たす 10 例のうち,年齢,外傷からの期間がうつ群とマッチ しない 4 例を除した 6 名を高次脳機能障害群の対象とした.意識障害の程度(選出基準 2)と,頭部外傷受傷後も「受 傷前と全く同じ生活ができた時期」があるかどうか(選出基準 4)を,非器質性精神障害と高次脳機能障害の鑑別基準 の最たるものとした.また,conventional CT/MRI での外傷所見の有無で,非器質性精神障害と高次脳機能障害を単純 に鑑別しないようにするため,全群とも T2 強調画像は正常な症例のみが抽出されている(基準 1)1).また,2 群の分類 に神経心理学的検査結果は考慮していない.なお,非器質性精神障害と思われる症例でも,「仕事に集中できない」など が生活労務能力低下の主たる原因の症例は,高次脳機能障害と鑑別不能ないし合併が疑われるため除外されるようにし た.また,びまん性軸索損傷(DAI)診断基準19) を満たす症例であっても,「突然怒り出す」などが生活労務能力低下 の主たる原因の症例は,非器質性精神障害と鑑別不能ないし合併が疑われるため除外されるようにした.また,対照群 の基準を満たす 7 例のボランティアのうち,年齢,外傷からの期間がうつ群とマッチしない 1 例を除した.

(4)

統計画像解析による高次脳機能障害と非器質性精神障害の鑑別 象を抽出し,年齢・外傷からの期間を一致させた〔① うつ状態を呈した頭部外傷後非器質性精神障害群(う つ群)6 例:男性 2 名,女性 4 名,年齢:26 ∼ 46 歳, 受傷からの期間:11 ∼ 75 カ月,受傷時の GCS:13 ∼ 15,②頭部外傷後高次脳機能障害群(高次脳機能障害 群 )6 例: 男 性 5 名, 女 性 1 名, 年 齢:26 ∼ 43 歳, 受傷からの期間:13 ∼ 75 カ月,受傷時の GCS:4 ∼ 7〕 (表 2)19 ∼ 21).また,この患者群のコントロール群とし て,表 1 の基準を満たす頭部外傷歴のある健常ボラン ティアから,患者群に年齢・外傷からの期間が一致し た例を抽出した(③対照群 6 例:男性 4 名,女性 2 名, 年 齢:24 ∼ 46 歳, 受 傷 か ら の 期 間:11 ∼ 75 カ 月, 受傷時の GCS:13 ∼ 15)(表 2). なお,本研究で用いられた解析プロトコールは,当 大学の倫理委員会で承認されている.データ解析に先 立って,患者もしくはその家族に本検査の内容と主旨 を,個人情報保護に基づいたデータの使用を含め,イ ンフォームドコンセントとして説明し,同意を全員か ら得た. 2.Tc-ECD SPECT による脳機能画像評価1) 各対象に対し,安静閉眼下で,トレーサーとして Tc-ECD 約 600 MBq を静脈内注射し,撮像を行いデー タを得た.SPECT 装置および撮像条件は下記の通り である1) SPECT 装置は g カメラ(シーメンス旭メディテッ ク 社 製,SIEMENS MULTI SPECT 3) を 使 用 し, デ ー タ 処 理 装 置 は ICON, ト レ ー サ ー は Tc-ECD (600 MBq), コ リ メ ー タ ー は FANBEAM, エ ネ ル ギーウィンドウは 138 keV±20 %,マトリックスは 128×128,収集拡大率は 1.45 倍,収集方式は step & shoot,サンプリング角度は 3°とし,収集時間 20 分, ピクセルサイズ 2.45 mm で撮像した.再構成は前処 理フィルターに ButterWorth,再構成フィルターに Ramp(Order 5.0 Cut off 0.3)を用いて,散乱線補正 なし,吸収補正に Chang 法を用いて行った.血流の 正規化は全脳参照(global brain:GLB)を用いた.

3.MRI 3D-volumetry による脳形態画像評価22)

各対象に対して,安静閉眼下で,撮像を行い,3D-volumetry データを得た.MRI 装置は 1.5 テスラ MRI

表 2 対象のプロフィールと神経心理学的検査結果 プロフィール 神経心理学的検査 症 例 性 別 年齢 (年) 受傷時の 意識障害 (GCS) 受傷から の期間 (月) 外傷機転 MMSE

WAIS -Ⅲ IQ,*WAIS -R IQ,**Kohs IQ RBMT TMT(秒)

BADS FAB VIQ PIQ FIQ VC PO WM PS SS PS part A part B

うつ群 1 F 44 15 11 落下物  −  96*  94* 95* × × × × − − − − − − 2 F 37 13 51 交通事故 16 55 48 47 59 52 <50 <50 3 6 − − − 13 3 F 46 15 75 落下物  29 119 113 118  124 112  88  89 10 21 101 96 117 17 4 M 41 15 31 交通事故 24 84 75 78 93 87  67  72 5 16 98 140 102 16 5 M 40 15 39 交通事故 29 110 102 107  99 101 119 110 10 22 74 88 108 18 6 F 26 13 70 交通事故 30 114 115 116  124 123  81  97 12 24 53 82 108 18 高次脳機能障害群 7 M 43 7 53 交通事故 28 × × 124** × × × × 9 20 102 107 17 8 M 26 7 15 転落   29 86 110 96 82 119 92  75 8 20 89 107 124 17 9 M 35 4 61 交通事故 21 × × 64** × × × × − − 293 454 8 10 M 33 7 75 交通事故 26 80 72 74 82 83 67  57 3 11 188 244 − 14 11 M 36 4 13 交通事故 16 67 48 55 73 50 56  50 0 1 − − − 7 12 F 35 7 40 交通事故 30 100 115 107  84 116 126 107 12 24 81 83 113 18 F: 女 性,M: 男 性.GCS:Glasgow Coma Scale,MMSE:mini-mental state examination( 全 般 的 知 能 ),WAIS-Ⅲ: Wechsler adult intelligence scale Ⅲ(全般的知能),VIQ:verbal IQ(言語性 IQ),PIQ:performance IQ(動作性 IQ), FIQ:full scale IQ(全検査 IQ),VC:Verbal Comprehension Index(言語理解),PO:Perceptual Organization Index(知 覚 統 合 ),WM:Working Memory Index( 作 動 記 憶 ),PS:Processing Speed Index( 処 理 速 度 ),WAIS-R:Wechsler adult intelligence scale Revised( 全 般 的 知 能 ),RBMT:Rivermead behavioral memory test( 記 憶 機 能 ),TMT:trail making test(part A: 注 意 機 能,part B: 遂 行 機 能 )( 秒 ),BADS:Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syn-drome(遂行機能)(年齢補正標準点),FAB:frontal assessment battery(全般的前頭葉認知機能),−:評価が行われ なかった項目(疲労や拒否などのため),×:算出不可能であった項目(WAIS-R が実施されていた場合の処理速度など).

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(MAGNETOM Avanto, Siemens Medical Systems, Er-langen Germany) を 使 用 し,T 1-weighted gradient echo sequence で撮像した.撮像条件は 544/2.2/1(TR/ TE/excitation),gapless,thin sagittal,256×256 ma-trix,1.0-mm thickness,23-cm field of view,flip angle 15°である. 4.SPM による統計画像解析1,22) 得 ら れ た 各 対 象 の Tc-ECD SPECT デ ー タ は, SPM 8 により線形および非線形変換がなされ,標準 脳 に 合 致 す る よ う に 変 形 さ れ た( 以 下 computed SPECT image)1) 得 ら れ た 各 対 象 の MRI 3D-volumetry デ ー タ は, SPM 8 により DICOM データから NIfTI フォーマット に変換され,voxel 等大化,線形変換,トリミング, 高信号値抑制の後,次いで,灰白質・白質・脳脊髄液 が 抽 出 さ れ た. 抽 出 し た 各 画 像 は,Diffeomorphic Anatomic Registration Through Exponentiated Lie Al-gebra(DARTEL)(Wellcome Department of Imaging Neuroscience)を用いて,解剖学的に標準化された templete へと空間的に形態変換された.続けて DAR-TEL を用いて,Jacobian determinants を用いた標準 化,8-mm FWHM Gaussian kernel による平滑化が行 われ,信号強度と容積が一致するように変換された (以下 computed MRI-volumetry image).以上の解析 は VSRAD® advance のプロトコールを用いて行われ

た22)

各群における対象の computed SPECT image,com-puted MRI-volumetry image を,SPM 8 の 2-sample t test を 用 い て 群 間 比 較 し た(uncorrected p<0.01, minimum cluster size 100 voxels).

結   果

結果で示す図は,全て SPM8 の 2-sample t test を用 い て 群 間 比 較 さ れ た 結 果 で あ る(uncorrected p< 0.01,minimum cluster size 100 voxels).

1. Tc-ECD SPECT 結果のうつ群・高次脳機能障 害群の各々における対照群との比較

Computed SPECT image を対照群と比較することに よって得た,うつ群・高次脳機能障害群のそれぞれの 群において有意に Tc-ECD 集積が低下していた領域を 図 1(A)に示す.うつ群において最も顕著な Tc-ECD 低集積が見られた領域は,両側の前頭葉背外側領域で あり(図 1(A1)の黄色矢印部分),内側領域前方(特 に前頭葉内側)にも Tc-ECD 低集積を示す領域が両側 性に見られた(図 1(A1)の白色矢印部分).高次脳機 能障害群において最も顕著な Tc-ECD 低集積が見られ た領域は,両側の内側領域であり,視床・脳梁・帯状 回・前頭葉内側に渡る領域であった (図 1(A2)の白 色矢印部分).また脳幹にも Tc-ECD 低集積を示す領 域が両側性に見られた.うつ群と異なり,高次脳機能 障害群においては両側の前頭葉背外側領域の Tc-ECD 低集積は見られなかった(図 1(A2)の黄色矢印部 分). 2. MRI 3D-volumetry 結果のうつ群・高次脳機能 障害群の各々における対照群との比較

Computed MRI-volumetry image を対照群と比較す ることによって得た,うつ群・高次脳機能障害群のそ れぞれの群において有意に灰白質容積が小さかった領 域を図 1(B)に示す.うつ群において最も顕著に灰白 質容積が小さかった領域は,両側の前頭葉内側領 域.前部帯状回であり(図 1(B1)の白色矢印部分), 一部の前頭葉背外側領域・側頭葉にも灰白質容積減少 を示す小領域が両側性に見られた.高次脳機能障害群 において最も最も顕著に灰白質容積が小さかった領域 は,うつ群と同様に,両側の前頭葉内側領域.前部帯 状回であったが,うつ群よりもより広範であった(図 1 (B2)の白色矢印部分).また,視床・脳幹の一部に も灰白質容積減少を示す小領域が両側性に見られた. 同領域の異常は,図 1(A2)においても Tc-ECD の低 集積が見られた(図 1(A2)および図 1(B2)の内側面 像・白色矢印部分). 3. Tc-ECD SPECT 結果のうつ群と高次脳機能障 害群の直接比較 高次脳機能障害群と比し,うつ群において有意に Tc-ECD 集積が低下していた領域を図 2(A1)に,う つ群と比し,高次脳機能障害群において有意に Tc-ECD 集積が低下していた領域を図 2(A2)に示した. 高次脳機能障害群と比し,うつ群において有意な Tc-ECD 低集積が見られた主な領域は,両側の前頭葉・ 頭頂葉の背外側領域から内側領域にかけた領域で,特 に背外側領域で顕著であった(図 2(A1)の黄色矢印 部分).特に前頭葉背外側領域の所見においては,図 1 (A1)の結果とほぼ一致していた(図 1(A1)および 図 2(A1)の正面像・黄色矢印部分).うつ群と比し, 高次脳機能障害群において有意な Tc-ECD 低集積が見 られた主な領域は,両側の内側領域であり,視床・脳

(6)

統計画像解析による高次脳機能障害と非器質性精神障害の鑑別

A1:対照群よりうつ群で低下していた領域

B1:対照群よりうつ群で減少していた領域 B2:対照群より高次脳機能障害群で減少していた領域 A2:対照群より高次脳機能障害群で低下していた領域

図 1 対照群と,うつ群・高次脳機能障害の結果比較

(A)対照群と比して,うつ群・高次脳機能障害の各々に有意な*Tc-ECD 低集積を認めた領域.A1:対照群よりうつ群で低

下していた領域,A2:対照群より高次脳機能障害群で低下していた領域.(B)対照群と比して,うつ群・高次脳機能障害 群の各々に有意な*

灰白質容積減少を認めた領域.B1:対照群よりうつ群で減少していた領域,B2:対照群より高次脳機 能障害群で減少していた領域.*

(7)

図 2 うつ群と高次脳機能障害群の結果の直接比較 (A)うつ群と高次脳機能障害群の直接比較において,Tc-ECD 集積の有意差*を認めた領域.A1:高次脳機能障害群より うつ群で低下していた領域,A2:うつ群より高次脳機能障害群で低下していた領域.(B)うつ群と高次脳機能障害群の直 接比較において,灰白質容積の有意差* を認めた領域.B1:高次脳機能障害群よりうつ群で減少していた領域,B2:うつ 群より高次脳機能障害群で減少していた領域.*

SPM 8 2-sample t test, uncorrected, p<0.01

A1:高次脳機能障害群よりうつ群で低下していた領域 A2:うつ群より高次脳機能障害群で低下していた領域

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統計画像解析による高次脳機能障害と非器質性精神障害の鑑別 梁・帯状回・前頭葉内側に渡る領域であった(図 2 (A2)の白色矢印部分).この所見は図 1(A2)の結果 とほとんど一致していた(図 1(A2)および図 2(A2) の内側面像・白色矢印部分).脳幹にも Tc-ECD 低集 積を示す領域が両側性に見られ,この所見も図 1(A2) の結果と一致していた.また,一部小脳にも低集積所 見が見られた. 4. MRI 3D-volumetry 結果のうつ群と高次脳機能 障害群の直接比較 高次脳機能障害群と比し,うつ群において有意に灰 白質容積が小さかった領域を図 2(B1)に,うつ群と 比し,高次脳機能障害群において有意に灰白質容積が 小さかった領域を図 2(B2)に示した.高次脳機能障 害群と比し,うつ群において有意に灰白質容積が小さ かった領域は,両側の後頭葉・左側頭葉・右頭頂葉な どであった.うつ群と比し,高次脳機能障害群におい て有意に灰白質容積が小さかった主な領域は,両側の 内側領域であり,視床・脳梁・帯状回・前頭葉内側に 渡る領域であった(図 2(B2)の白色矢印部分).この 所見は図 2(A2)において示されたうつ群よりも脳外 傷群に目立つ Tc-ECD 低集積を示す範囲に含まれてい た(図 2(A2)および図 2(B2)の内側面像・白色矢印 部分).同時に,図 1(B2)の結果とも概ね一致してい た(図 1(B2)および図 2(B2)の内側面像・白色矢印 部分). 考   察 Nakayamaら13)は,FDG-PET を用いた検討におい て,意識障害が重篤になるほど,FDG 低集積を示す 領域が,帯状回・視床を含めた脳梁周辺・脳幹などの 内側領域において広がると述べている.Bendlinら23) は,SPM を用いた 3D-Volumetry による経時的な外傷 性脳萎縮を評価した検討で,脳幹から脳梁周辺の辺縁 系などの内側領域における白質の経時的容積減少を示 している.軽症脳外傷における Zhouら24)の経時的脳 萎縮を評価した検討では,前部帯状回における局所脳 容積減少を示している.以上の如く,前部帯状回から 内側前頭前野にかけた領域において,何らかの循環代 謝異常および容積減少が見られることは脳外傷による 高次脳機能障害における脳機能画像/形態画像の統計 画像解析所見上の特徴の 1 つと思われる1,13,23,24).本 研究における高次脳機能障害群でも同様の異常が示さ れている. 一方で,前部帯状回から内側前頭前野にかけた領域 における循環代謝異常・脳萎縮という特徴は,本研究 のうつ群においても見られていた.Azumaら25)は, うつ病患者の記憶障害の程度と,安静時の右前部帯状 回および左前頭葉運動前野における局所脳血流との関 連性を示している.また,PTSD においては機能画像 上の扁桃体の高活性が不安感や恐怖感の起源を示唆す るとされるが16),同時に前部帯状回から内側前頭前野 にかけた領域の低活性所見17)も特徴の 1 つであり, この低活性のために不安や恐怖を抑制できないことも 病態の特徴であるとしている16).また形態的変化とい う点においても,内側前頭前野・海馬・扁桃体の容積 減 少17,18)が PTSD の 画 像 所 見 上 の 特 徴 と さ れ て い る16).Gilbertsonら18)は,PTSD 患者においてこれら 領域が低容積であることは,PTSD に罹患したことに よる変化ではなく,受傷前から持っている PTSD を 発症しやすくなる risk factor であると述べているが, 本研究のような横断的検討はもちろん,日常臨床にお いても頭部外傷受傷前から低容積であったかどうか確 認することは困難であり,一定の見解を得ない16).こ のような事実がある以上,脳機能画像・形態画像のい ずれにおいても,前部帯状回から内側前頭前野にかけ た領域の異常の有無のみに注目したのでは,「高次脳 機能障害」と「非器質性精神障害」を鑑別することは 困難であると思える.これに対する方策として,本研 究結果から我々が提案する鑑別方法は,異常領域の分 布に注目するアプローチである.本研究結果におい て,高次脳機能障害群における病変は,SPECT/MRI 結果のいずれにおいても,内側前方領域のみならず, 脳梁周辺領域から脳幹にかけた領域に広がりを見せ, この広がりはうつ群におけるそれと異なっていた.こ れは上述した過去の研究結果にも矛盾せず1,13,23),脳 梁後部における拡散テンソル上の白質損傷所見と知能 指数の関連性を示した報告もある26).この特徴は我々 の知りうる限り過去の非器質性精神障害における報告 には見られない.本研究における高次脳機能障害群に は明らかな失調症・脳神経所見を呈した症例が含まれ ていたことが関連しているかもしれない.また,うつ 群において Tc-ECD 低集積を示した領域は,対照群・ 高次脳機能障害群のいずれと比しても,前部帯状回か ら内側前頭前野にかけた領域から,より前方・外側の 前頭前野側に広がりを見せている.これは上述した過 去の報告にも矛盾しない4,12,14)

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しかし,Okamoto らの報告8)では,前頭前野背外 側領域は DAI における eZIS 上の異常が最も見られや すい領域の 1 つであるとしており,とすると,前頭前 野背外側領域に Tc-ECD 低集積を示す群が DAI にも 多く含まれていることになる.また,脳外傷後の神経 基盤の機能異常と症状の関連性を検討した報告におい ても,前頭前野背外側領域は責任領域として挙げられ ている27).Fontaineら27)は重症脳外傷に対して FDG-PET による局所脳循環代謝評価を行い,記憶・遂行 機能と内側・背側前頭前皮質・帯状回が,行動障害と 内側前頭前皮質・帯状回が関連していると報告してい る.du Boisgueheneucら28)も,左上前頭回の切除と ワーキングメモリー低下の関連性を報告しているよう に,そもそも前頭前野背外側領域が高次脳機能の神経 基 盤 の 1 つ で あ る こ と は 疑 い よ う が な い. ま た, Azumaら25)が,うつ病患者の記憶障害の程度と,安 静時の右前部帯状回および左前頭葉運動前野における 局所脳血流との関連性を報告しており,Galynkerら14) は SPECT を用いた大うつ病の検討において,陰性症 状の重症度と左前頭前野背外側領域・左側頭葉前部に おける局所脳血流量低下の相関を示している.このよ うに,高次脳機能障害と同様の症状を呈する「非器質 性精神障害」においては,高次脳機能障害同様の神経 基盤の機能異常が示されることも報告されている.こ れら,症状と神経基盤の異常の関連性に関する検討結 果からも,「高次脳機能障害」と「非器質性精神障害」 は,前頭前野および帯状回などの神経基盤の機能異常 によって,記憶・注意・遂行機能などの認知機能異常 をきたす点において,本質的に両者を区別することは できないといえるのかもしれない.本研究において も,前部帯状回・前頭前野内側領域は両群における共 通病変であり,異常を示す神経基盤がいくらか共通す ることを示唆している.特に,灰白質容積減少に注目 する限り,確かに高次脳機能障害群のほうが程度は強 いのだが,対照群に比して異常を示す領域分布そのも のは両群で部分的に overlap していた.うつ群におい ては,より前頭前野背外側領域への Tc-ECD 低集積領 域が広がる病変分布が特徴と思われたが,これら過去 の報告と照らし合わせて考えると,前頭前野背外側領 域に Tc-ECD 低集積が顕著に示されたからといって も,脳外傷においても同様の異常は見られうるため, それだけで単純に「非器質性精神障害の可能性が高い ということはできない」所見であろう.しかし,本研 究結果におけるうつ群の前頭葉背外側領域に見られた ように,「形態異常の程度と不釣り合いな循環代謝異 常が前頭前野背外側領域に広がる」という条件付きの 病変分布で考えると,これが非器質性精神障害を積極 的に示唆する脳機能画像/形態画像上の統計画像所見 の特徴である可能性は十分残ると思われる.というの も,器質的異常を伴わない神経基盤の機能異常こそが 「非器質性精神障害」を考えるそもそもの前提であり, うつ群において前頭葉背外側皮質の形態異常の程度と 不釣り合いな循環代謝異常を示唆した結果は,この前 提条件に矛盾しないからである.これに比して,「器 質的異常を伴う神経基盤の機能異常」を示すべき高次 脳機能障害群における病変は,本研究では,MRI 結 果・SPECT 結果のいずれにおいても,内側前方から 脳梁周辺領域・脳幹・小脳にかけた領域に広がりを見 せており,前提条件に矛盾していない.ここに挙げた 2 つの特徴が,頭部外傷後の「非器質性精神障害」と 「高次脳機能障害」のそれぞれを積極的に示唆する所 見として,我々が提案するものである. 次いで,本研究の問題点を示す.まず,本研究の頭 部外傷後非器質性精神障害群(うつ群)の選出基準で は,対象の根本的病因が,うつ病でなく,不安障害 (PTSD を含む)・適応障害などであったとしても,同 様の症状があれば一様にうつ群に含まれてしまうこと が挙げられる21).しかし,そもそも DSM-Ⅳにおける 操作的診断が必要とされた理由は,いまだ病因が明ら かでない精神疾患の診断に,便宜的な見解統一をもた らすためである21).本研究において,DSM-Ⅳにおけ る大うつ病性エピソードの基準20,21)をあえて用いた 理由は,本来 heterogenic な病因であるはずの非器質 性精神障害をある程度包括して抽出するためであり, この選考基準によって,少ない対象数での検討を可能 にするためである.加えて,本研究においては,非器 質性障害単独例と高次脳機能障害単独例を選出するた めに,両群の合併例が除外されるようにしている.頭 部外傷後の高次脳機能障害による生活・労務能力低下 は,生活上・職業上の問題をもたらすため,当然,こ こに心理社会的問題が伴われやすい4,21).実際に臨床 場面において我々が出会う症例は,高次脳機能障害に 心理社会的問題が伴われた症例が多く4,21),本研究対 象に含まれなかった高次脳機能障害もほとんどがこの ような症例であり,純粋に高次脳機能障害だけを伴っ ていると断じうる脳外傷例は非常に少ない.ここから

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統計画像解析による高次脳機能障害と非器質性精神障害の鑑別 も,非器質性障害単独例と高次脳機能障害単独例を選 んで検討していくこと自体,臨床的立場から見ると, 大変不自然なのではないかという疑問も持ちあがる. また,ここで説明したような選出基準を用いた結果と して,本研究における症例数は,母数が 64 例である にもかかわらず,解析に用いることができた症例数が 各群 6 例と非常に少なくなっている.よって,厳密な SPM 統計解析を用いて異常領域の焦点座標を同定す るには不十分であり,本研究結果が示唆した画像所見 上の病変分布の特徴は最終結論とは言い難い.しか し,本研究結果が示した病変の分布は,過去の研究報 告と矛盾のないものであり,かつ,新たな鑑別の特徴 を示唆したものであったため,あくまで作業仮説とし て提案するために本研究を報告した. 最後に,本研究のまとめを示す.本研究結果から, Tc-ECD SPECT・MRI volumetry における統計画像解 析を用いることで,頭部外傷後の「器質性精神障害 (=高次脳機能障害)」と「非器質性精神障害」のそれ ぞれを積極的に支持する所見,両群において共通の異 常となりうる所見が,ともに得られうることが示唆さ れた.特に,形態異常・機能異常の両方を示す領域と して,前部帯状回・内側前頭前野が両群に共通して示 され,両疾患群が本質的に同様の神経基盤の形態異 常・機能異常を背景として持ちうることがわかった. 一方で,高次脳機能障害群においては,形態異常と機 能異常の両者がより脳梁周辺領域・脳幹・小脳にかけ た領域に向かって広がりを見せたのに比し,非器質性 精神障害群においては形態異常を伴わずに機能異常の みを示す領域が前頭前野背外側皮質などの領域に向 かって広がりを見せた点において,対照的であった. 以上の結果は,過去の報告と比較しても矛盾はなかっ た.本研究は本邦の臨床上最も普及している脳機能画 像/形態画像上の統計画像解析を用いて,頭部外傷後 の非器質性精神障害と高次脳機能障害においてみられ る神経基盤の異常を直接比較した初めての検討であ り,今後の臨床的・研究的アプローチ開発を行う上で の作業仮説となりうる大変意義深い結果が示されたと 思われる. 本研究は,日本損害保険協会の研究助成金を受けて行わ れました.多大なるご助成を賜りました,日本損害保険協 会に厚く御礼申し上げます. 文  献

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表 2 対象のプロフィールと神経心理学的検査結果 プロフィール 神経心理学的検査 症 例 性別 年齢 (年) 受傷時の意識障害 (GCS) 受傷からの期間(月) 外傷機転 MMSE
図 1 対照群と,うつ群・高次脳機能障害の結果比較
図 2 うつ群と高次脳機能障害群の結果の直接比較

参照

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