『
正
法
眼
蔵
抄
』口
語
訳
の
試
み
仏
性
σψ
伊
藤
秀
室 ,w
・、 第 卜 一 段 ( 1 … : 〔3
黄蘖
在 二南
泉
茶
堂内
一 坐 。南
泉
問
二 黄 蘗 → 「定
慧
等
学 、明
見 仏 性 、此
理 如何
。 」 黄蘗
云 、 「十
二 時中
不依
倚 一 物始
得
。 」( 3 ) … … 1 ) 南
泉
云 、 「莫
便 是長
老
見 処 麼 。 」黄
蘗 日 、 「 不 敢 。 」南
泉
云 、 【 漿水
銭 且 致 、草
鞋 銭教
ゴ什
麼
人 還 ご 黄蘗
便
休
。 い は ゆ る 定 慧等
学 の 宗 旨 は 、定
学
の 慧学
を さ へ ざ れ ば 、 等 学 す る と こ ろ に 明 見仏
性 の あ る に は あ ら ず。 明見
仏
性
のる り ら ね ロ ホ と こ ろ に 、 定 慧 等 学 の 学 あ る な り 。 此 理 如
何
と 道 取 す る な り 。 た と へ ば 、 明 見仏
性
は た れ が 所作
な る ぞ と道
取
せ む ロ ア と き け ホ も を な じ か る べ し 。 仏 性 等 学 、明
見 仏性
、 此 理 如 何 と道
取 せ む も 道 得 な り。黄
蘗
い は く、 十 二 時 中 不 依倚
一物
と い ふ宗
旨
は 、 十 二時
中
た と ひ 十 二時
中
に処
在
せ り と も 不 依倚
な り 。不
依
倚
一む ホ 物 、 こ れ 十 二
時
中 な る ゆ へ に仏
性
明 見 な り 。 こ の 十 二時
中 、 い つ れ の時
節 到 来 な り と か せ む、 い つ れ の 国土
な り と ホ か せ む 。 い ま い ふ 十 二 時 は 、 人間
の 十 二時
な る べ き か 、 他 那 裏 に 十 二時
の あ る か 、 白 銀 世界
の 十 二 時 の し ば ら く きハ け た れ る か 。 た と ひ 此 界 な り と も、 た と ひ
他
界 な り と も 不 依 倚 な り 。 す で に 十 二時
中
な り 、 不 依 倚 な る べ し 。 セリ 南泉
い は く 、莫
便
是 長 老見
処麼
と い ふ は 、 こ れ を 見 処 と は い ふ ま じ や と い ふ が ご と し 。長
老
見処
麼
と 道 取 す と も 、 自 己 な る べ し と 回 頭 す べ か ら ず。 自 己 に 的 当 な り と も黄
蘗 に あ ら ず 、黄
蘗 か な ら ず し も 自 己 の み あ ら ず。長
老
見 処 か ソ は 露 回 回 な る が ゆ へ に 。ら む ヰ
黄
蘗
い は く 、 不 敢 。 こ の言
は 、宋
土 に お の れ に あ る能
を問
取 ら せ る る に は 、能
を能
と い は む と て も 不敢
と い ふ なハ め り り 。 し か あ れ ば 、 不 敢 の
道
は不
敢
に あ ら ず 。 こ の 道 得 は こ の 道 取 な る こ と 、 は か る べ き に あ ら ず 。 長 老 見 処 た と ひ 駒 澤 大 學 佛 教 學 部 論 集 第 二 十 號 平 成 元 年 十 月 = 二 五Komazawa University 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 一 三 六 長 老 な り と も 、 長
老
見 処 た と ひ黄
蘗 な り と も 、道
取 す る に は 不敢
な る べ し 、 一 頭 水 枯牛
出来
道 吽 吽 な る べ し 。 か く ヨ の ご と く な る 道取
は 道 取 な り。 道取
す る 宗 旨 、 さ ら に 又 道取
な る 道 取 、 こ こ ろ み て 道取
し て み る べ し 。( 17 ) ( 18 ) 〔 19) ( 2D) 〔 21〕
南
泉 い は く 、漿
水
銭 且 致 、 草鞋
銭
教
什
麼 人還
。 い は ゆ る、 こ む つ の あ た ひ は し ば ら く を く 、 草 鞋 の あ た ひ は た れ を ホ し て か か へ さ し め む と な り 。 こ の道
取
の 意旨
、 ひ さ し く生
生 を つ く し て参
究 す べ し 。漿
水銭
い か な れ ば か し ば ら く 不 管 な る 。 留 心勤
学 す べ し 。草
鞋
銭
な に と し て か 管 得 す る 。行
脚
の年
月
に 、 い く ば く の草
鞋
を か踏
破 し き た れ る と( 22 〕 ( 磐 な り 。 い ま い ふ べ し 、 若 不 レ
還
レ銭
、 未 レ著
二草
鞋 幻 ま た い ふ べ し 、 両 三 鞆 。 こ の 道 得 な る べ し 、 こ の宗
旨
な る べ し。黄
蘗便
休
。 こ れ は 休 す る な り 。不
肯
せ ら れ て 休 し 、 不 肯 に て 休 す る に あ ら ず 。本
色衲
子 し か あ ら ず 。 し る べ し 、 休 裏有
道
は 笑裏
有 刀 の ご と く な り 。 こ れ 仏 性 明 見 の 粥 足 飯 足 な り 。 ( 1 … … ( 24 ) こ の因
縁
を挙
し て 、 瀉 山 、仰
山 に と ふ て い は く 、 「莫
下 是黄
蘗構
‘ 他 南泉
一 不 吉 得麼
。 」 仰 山 い は く 、 「 不 レ 然 、須
レ 知 、・ 1 )
黄
蘗有
二 陥 虎 之機
ご 濾 山 云 、 「 子 見 処 、得
二恁
麼 長 → 」ヨ ソ 大
潟
の道
は 、 そ の み黄
蘗 は 南泉
を構
不 得 な り や と い ふ 。 仰 山 い は く 、黄
蘗 は 陥 虎 の機
あ り 。 す で に 陥虎
す る こ と あ ら ば 、 埒虎
頭
な る べ し 。 陥虎
将
虎
、 異類
中行
。 明 見 仏性
也
、 開 一隻
眼。 仏性
明 見 也 、 失 一 隻 眼 。 速 道速
道 。仏
性
見 処 、 得恁
麼
長 な り 。 こ の ゆ へ に 、半
物 全 物 こ れ 不 依 倚 な り 。 百 千 物 不 依 倚 な り。 百 千時
不 依倚
な り 。 こ の ゆ へ に い ( 25) は く 、蘿
籠 一 枚、 時中
十 二 、依
倚
不
依 倚 、 如 葛 藤 倚 樹 。 天中
及 全 天 、後
頭未
有 語 な り 。 Kom 三1z三1w三1 Umversrtyズ ア ク ワ ノ 南 泉 ハ 馬 祖 下 也 、 号 二 普 願 禅 師一 、 黄 蘗 ハ 馬 祖 孫 、 百 丈 大 智 禅 師 弟 子 、 号 ゴ ( 一 九 七 a ) タ ン サ イ 断 際 禅 師→ 右 ノ 詞 ヲ 被 レ 釈 二 、 イ ハ ユ ル 定 慧 等 学 ノ 宗 旨
エ ハ 、 定 学 ノ 慧 学 ヲ サ ヘ サ レ ハ 、 等 覚 ス ル 所 二 明 見 仏 性 ノ ア ル ニ ハ ア ラ ス、 明 見 仏 性 ノ 所 二 、 定 慧 等 覚 ノ 学 ア ル 也 、 此 理 如 何 卜 道 取 ス
南
泉
は馬
祖 〔道
一 〕 下 で あ る。 普願
禅
師 と号
す 。 丈 〔懐
海 〕 大 智禅
師
の弟
子、断
際
禅 師 と 号 す 。黄
蘗
〔希
運 〕 は馬
祖
の 孫 、 百と 右 の 〔 南 泉 と 黄
蘗
の 〕 こ と ば を釈
か れ る に 、 「 い は ゆ る定
慧 等 学 の宗
旨
は 、定
学 の 慧 学 を さ へ ざ れ ば 、等
学
す る と こ ろ に 明 見 仏 性 の あ る に は あ ら ず 。 明 見 仏性
の と こ ろ に 、 定 慧等
学 の 学 あ る な り 。 此 理 如 何 と 道取
す る な り 」 と あ る 。 『 涅槃
経 』 に 、 、 二乗
は 定多
慧 少 な る故
に 、 仏性
を見
る こ と蛍
火 の 如 し 。菩
薩
は 慧 多定
ル ナ リ 云. 五、 涅 槃 経 二 二 乗 ハ 定 多 慧 小 ナ ル 故 、 ア ケ イ エ 見 二 仏 性・ 事 如二 螢 火 → 菩 薩 ハ 慧 多 定 小 ナ ル 故 、 キ ン 見 二 仏 性 一 事 如 二 星 宿 → 如 来 ハ 定 慧 均 等 ニ シ テ ヒ ト ン 見 二 仏 性一 ト ア リ 、 是 ハ イ カ ニ モ 定 慧 相 対 シ テ 仏 性 ヲ 能 見 所 ( 一 九 七
b
) 見 こ 成 テ 見 不 見 ヲ 立 ダ リ 、 今 ノ 所 談 爾 ニ ハ ア ラ サ ル ヘ シ、 其 故 ハ 定 モ 慧 モ 学 モ 仏 性 ノ 外 ナ ル 物 ト 不 レ 可 兜 心 得 ハ 定 慧 ノ 仏 性 ナ ル 故 、 定 学 ノ 慧 学 ヲ サ ヘ サ レ ハ 、 等 覚 ス ル 所 二 明 見 仏 性 ノ ア ル ニ ハ 非 ス 、 明 見 仏 性 ノ 所 二 、 定 慧 等 学 ノ 学 ア ル ナ リ ト ハ 被 レ 釈 也、 打 任 ハ 定 慧 等 覚 シ テ 仏 性 ヲ 見 ム ス ル 様 二 心 得 タ リ、 是 ハ 定 慧 等 覚 力 明 見 仏 性 ナ ル 間、 明 見 仏 性 ノ 道 理 カ ヤ カ テ 定 慧 等 覚 ナ ル 所 ヲ 、 明 見 仏 性 ノ 所 二 ( 一 九 八 a ) 定 慧 等 覚 ノ 学 有 也 ト ハ 被 レ 云 也 、 此 理 如 何 ノ 事、 祖 門 云 也 、 常 詞 也、 是 モ 所 詮 理 ノ ア マ タ ア ル ヲ 、 是 等 之 理 イ ツ レ ソ ト 尋 タ ル ヤ ウ ニ 聞 ユ 、 是 ハ 定 モ 仏 性、 慧 モ 仏 性 、 学 モ 仏 性、 明 見 導 師 モ 仏 性 ナ ル 道 理 力、 此 理 如 何 ト ハ 云 ハ ル ル ナ リ、 如 何 力 仏 ト 云 モ、 什 麼 物 恁 麼 来 ノ 詞 モ 、 説 似 一 物 ノ 詞、 皆 如 何 ノ 同 タ ケ ノ 詞 ナ リ 、 如 レ 此 談 翫 ル 所 ニ コ ソ、 詞 二 或 乱 セ ラ レ ス、 仏 法 ノ 導 理 モ 無 二 辺 際→ 解 脱 ノ 理 モ カ ク レ ナ ケ レ 、 又 明 見 ( 一 九 八b
) 仏 性 ハ 誰 ヵ 所 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ( 26〕 少 な る故
に 、 仏 性 を 見 る こ と 星 宿 の如
し 。 如 来 は 定 慧 均等
に し て 仏性
を 見 る L と あ る 。 こ れ は 、 た し か に 定 と 慧 と が相
対
し て お り、 仏 性 を見
る も の と見
ら れ る も の と に し て 、 〔 仏 性 を 〕 見 る 〔 者 〕見
な い 〔 者 〕 を は っ き り さ せ て い る 。 こ こ で 説 く と こ ろ は そ う で は な い は ず で あ る 。 そ の 理 由 は 、 定 も 慧 も学
も仏
性
以外
の 物 と 理解
す ぺ き で は な い 、定
慧 が 仏 性 で あ る か ら 。 「定
学
の慧
学 を さ へ ざ れ ば 、 等学
す る と こ ろ に 明 見 仏性
の あ る に は あ らず
。 明 見 仏性
の と こ ろ に 、定
慧
等 学 の 学 あ る な り 」 と 釈 か れ る の で あ る。 普通
一般
に は 、定
と 慧 を等
し く学
ん で 仏 性 を見
よ う と す る よ う に 理 解 し て い る 。 こ れ は 、 「 定 慧等
学 」 が . 明見
仏性
」 で あ る ゆ え 、 「 明 見 仏 性 」 の 道 理 が ま さ に 「 定 慧 等 学 」 で あ る と こ ろ を 、 「 明見
仏
性
の と こ ろ に 、定
慧等
学
の 学 あ る な り 」 と 言 わ れ る の で あ る 。 「 此 理如
何
」 ( 此 の 理 如 何 ) と い う こ と は 、祖
門 で 言 う の で あ る。 い つ も の こ と ば で あ る 。 こ れ も結
局
、 理 が多
く あ る の を 、 こ れ ら の 理 の ど れ か と 尋 ね て い る よ う に 思 わ れ る 。 こ れ は 、 定 も 仏性
、 慧 も 仏性
、 学 も 仏 性 、 明 見 導 師 も 仏性
で あ る道
理 が 、 「此
理 如何
」 と 言 わ れ る の で あ る 。 「如
何仏
」 と 言 う の も 、 「 什麼
物 恁麼
来
」 の こ と ば も 、 「 説 似 一 物 ( 27 ) 〔 即不
中
〕 」 の こ と ば も、皆
「 如何
」 の よ う に 同 じ 程度
の こ と ば で あ る 。 こ の よ う に説
く と き 、 こ と ば に 惑 乱 せ ら れ ず、 仏法
の 道 理 も 辺 際 な く、 解脱
の 理 も か く れ な い 。 ま た 、 「 明 見 仏性
は た れ が 所作
な る ぞ と 道取
せ む も を な じ か る べ し 」 と言
う の も、 「明
見 仏性
」 の 道 理 が こ の よ う に言
わ れ る の で あ る。 人 を お い て 誰 の 所作
か ( た れ の 所 作 な る ぞ ) と 言 う の で は な い 。 仏性
の道
理 が 「此
理 如何
」 と 言 わ れ た よ う に 、 誰 の 所 作 か と言
わ れ る の で あ る 。 た だ 結局
、 仏 性 で は な い 一 物 が な い の で あ る か ら 、 こ の よ う に言
わ れ る の で あ る と 理解
す べ き で あ る。 こ の 道 理 の お も む く と こ ろ が 、 す な わ ち 、 仏 性 等 学 、明
見
仏性
、此
理 如 何 と 道 取 せ む も 道得
な 二 二 七Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 作 ナ ル ソ ト 道 取 セ ム ト 同 カ ル ヘ シ ト 云 モ、 明 見 仏 性 ノ 道 理 カ ク イ ハ ル ル ナ リ 、 人 ヲ 置 テ 誰 ヵ 所 作 ソ ト イ フ ニ ァ ラ ス 、 仏 性 ノ 道 理 力 此 理 如 何 ノ 様 二 、 誰 ヵ 所 作 ソ ト 云 ハ ル ル 也 、 只 所 詮 仏 性 ナ ラ ヌ 一 物 ナ キ 故 、 如 レ 此 イ ハ ル ル 也 ト 可 二 心 得 ハ 此 道 理 ノ 行 所 力、 則 仏 性 等 覚 、 明 見 仏 性 、 此 理 如 何 卜 道 取 セ ム モ 道 得 也 ト ハ 被 レ 釈 ナ リ、 な エ イ 次 黄 蘗 日 十 二 時 中 不 依 倚 一 物 云 云、 此 答 大 ニ ヨ リ 不 レ 被 二 心 得 → 是 ハ 何 事 ソ ト 覚 タ リ、 但 是 モ 能 能 ( 一 九 九 a ) 心 得 レ ハ 、 尤
有
一 其 謂 → 国 土 山 河 日 月 星 辰 已 下 皆 是 仏 性 ノ ヒ バ 、 此 十 二 時 力 仏 性 ノ 外 ノ 物 ト 難 二 心 得→ 此 十一 、 時 中 則 仏 性 ナ リ 、 仏 性 又 物 ヲ 置 テ 依 倚 不 依 倚 ヲ 非 レ 可 レ 論 、 只 仏 性 ノ 道 理 ハ 不 依 倚 ナ リ、 只 汝 欲 見 仏 性 、 先 須 除 我 慢 ノ 道 理、 又 山 河 大 地 皆 依 建 立、 三 イ ス 昧 六 通 由 茲 発 現 等 ノ 道 理 二 不 レ 可 レ 違 、 仏 性 ナ ル 故 不 依 倚 也 、 不 依 倚 ノ 故 仏 性 也 ト イ ハ ム カ 如 シ、 十 二 時 ハ タ ト ヘ ハ 人 間 界 ノ 十 二 時 ニ テ モ ア レ、 三 世 九 世 尽 十 万 ( 一 九 九b
) 界 皆 不 依 倚 ノ 道 理 ナ ル ヘ シ、 又 十 二 時 中 ナ ル 故 仏 性 明 見 ナ リ 云 云、 明 見 仏 性 ト 云 ヘ ハ 、 猶 イ カ ニ モ 能 見 所 見 ニ モ マ キ レ ヌ ヘ シ 、 仏 性 ノ 明 見 ト 云 時 ハ、 只 仏 性 力 明 見 ナ ル 道 理 ア キ ラ カ ニ シ り L と 釈 か れ る の で あ る 。 = 二 八 へ 次 に 「 黄 蘗 い は く 、 十 二時
中 不 レ依
二倚
一 物一 ( 十 二 時 中 一 物 に 依 倚 せ ず ) 」 と あ る 。 こ の答
え は 、 甚 だ 理解
で き な い 。 こ れ は ど の よ う な こ と か と思
わ れ た 。 た だ し、 こ れ も 十 分 理 解 す れ ば 、 特 に そ の 理 由 が あ る 。 山河
国 土 ・ 日月
星 辰 以 下 皆仏
性 で あ る か ら に は 、 こ の 「 十 二時
」 が 仏性
以 外 の物
と は 理解
し難
い 。 こ の 「 十 二 時 中 」 が す な わ ち 仏 性 で あ る。 仏性
は 、 ま た 物 を 置 い て 、 依倚
( よ り か か る ) ・ 不 依 倚 ( よ り か か ら な い ) を 論 じ る べ き で は な い 。 た だ 仏 性 の道
理 は 「 不 依倚
」 で あ る 。 た だ 〔第
七 段 の 〕 「汝
欲 見 仏性
、 先 須除
我 慢 」 の道
理 で あ る 。 ま た 、 〔 第 三 段 の 〕 「 山 河 大地
、 皆 依建
立 、 三昧
六 通、 由 茲 発 現 」等
の道
理 に 違 う は ず が な い 。 仏 性 で あ る か ら 「 不依
倚
」 で あ る 。 「 不 依 倚 」 で あ る か ら 仏 性 で あ る と言
う よ う な も の で あ る 。 「十
二 時 」 は 、 例 え ば 人 間 界 の 十 二時
で も あ る 。 三 世 ・ 九世
・尽
十 方 界 、 皆 「 不 依 倚 」 の 道 理 で あ る は ず で あ る 。 ま た 、 「十
二 時 中 な る 〔 が 〕 ゆ へ に 仏性
明 見 な り 」 と あ る 。 「 明 見 仏 性 」 と 言 え ば 、 ま だ や は り ど う し て も 見 る も の と見
ら れ る も の に よ っ て 〔 十 二時
中 が 仏 性 で あ る こ と が 〕 は っ き り し な く な る で あ ろ う 。 仏 性 の 明 見 ( 仏 性 明 見 ) と 言 う と き は 、 た だ 仏 性 が 明 見 で あ る道
理リ ア 、 見 不 見 ニ カ カ ハ ラ ヌ 道 理 ア キ ラ カ ナ ル ナ な 又 此 十 二 時 中、 イ ツ レ ノ 時 節 到 来 ナ リ ト カ セ ム 、 イ ツ レ ノ 国 土 也 ト カ セ ム ト テ 、 人 間 十 ニ コ ン 時、 他 那 裏 ノ 十 二 時 、 乃 至 白 銀 世 界 ノ 十 二 時 マ テ 被 レ 挙 レ 之、 是 ハ 所 詮 右 二 所 レ 被 レ 挙 ( 二 〇 〇 a ) 何 ノ 十 二 時 ナ リ ト モ、 皆 仏 性 ナ リ ト 云 タ ト ヒ 心 地 也 、 故 縦 此 界 ナ リ ト モ、 タ ト ヒ 他 界 ナ リ イ ト モ 不 依 倚 也 ト 被 レ 決 レ 之 、 不 依 倚 ノ 道 理 仏 性 ナ ル カ ユ ヘ ニ 、 な ス ナ ハ チ ヤ 南 泉 云 、 莫 便 是 長 老 見 処 麼 云 云 、 此 詞 ハ ス テ ニ 十 二 時 中 不 依 倚 ト 被 レ 仰 黄 蘗 ハ 、 サ テ 十 二 時 ヲ ハ 不 レ 見 ヤ ト 云 ト 被 二 心 得・ ヌ ヘ シ、 長 老 ト ハ 鏨 指 二 黄 蘗 一 歟、 此 黄 蘗 ノ 当 躰 三 世 諸 仏 諸 代 ノ 祖 師 ノ 皮 肉 卜 也 、
無
差
別 → 仍 長 老 見 処 歴 卜 云 ハ 、 是 ヲ 見 ( 二 〇 〇b
) 処 ト ハ 云 マ シ ヤ ト イ フ カ 如 シ、 長 老 見 処 麼 ト 道 取 ス ト モ、 自 ク ワ イ ト ウ テ キ 己 ナ ル ヘ シ ト 回 頭 ス ヘ カ ラ ス、 自 己 二 的 当 ナ リ ト モ 黄 蘗 ニ ア ラ ス、 黄 蘗 必 シ モ 自 己 ノ ミ ロ ウ イ ウ イ ニ 非 ス 、 長 老 見 処 ハ 露 回 回 ナ ル カ 故 二 云 云 、 ア ラ ハ ル 是 ハ 所 詮 見 処 ス ト 云 道 理 モ ア リ ヌ ヘ シ、 黄 蘗 仏 性 見 所 一 物 ナ ル ユ ヘ ニ、 是 ヲ 見 処 ト イ フ ヘ シ 、 又 見 処 セ ス ト 云 道 理 モ ア リ ヌ ヘ シ 、 黄 蘗 モ 仏 性 、 見 所 モ 仏 性 、 十 二 時 モ 仏 性 ナ ル ユ へ 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) が 明 ら か で あ っ て 、 見 る 、 見 な い に係
わ ら な い道
理 が 明 ら か で あ る の で あ る 。 へ ま た、 「 こ の 十 二 時中
、 い つ れ の時
節 到 来 な り と か せ む 、 い つ れ の国
土 な り と か せ む 」 と言
っ て 、 「 人 間 の 十 二時
」 、 「 他 那裏
」 の 「 十 二 時 」、 或 い は 「 白 銀 世 界 の 十 二時
」 ま で あ げ ら れ た。 こ れ は 結局
、 右 に 挙 げ ら れ た と こ ろ は何
の 十 二時
で あ っ て も、皆
仏
性 で あ る と い う意
味 あ い で あ る 。 だ か ら 、 「 た と ひ 此界
な り と も 、 た と い他
界 な り と も 不 依倚
な り 」 と 決 定 さ れ る の で あ る 。 「 不 依 倚 」 の 道 理 が 仏性
で あ る か ら 。 へ 「 南 泉 い は く 、莫
二 便 是長
老
見 処一 麼 ( 便 ち 是 れ 長 老 の 見 処 な る こ と な し や ) 」 と あ る 。 こ の こ と ば は 、 既 に 「 十 二時
中 不 依倚
」 と お っ し ゃ ら れ た黄
蘗 は 、 と こ ろ で十
二 時 を 見 な い の か と 〔南
泉
が 〕 言 う の だ と 理解
さ れ よ う 。 「長
老 」 と は 、 仮 に黄
蘗 を指
す の か。 こ の黄
蘗
の 当体
は 、 三 世 諸 仏 ・諸
代
の 祖 師 の皮
肉 と い う こ と で あ る 。相
違 は な い 。 な お 「 長 老 見 処 麼 と い ふ は 、 こ れ を見
処 と は い ふ ま じ や と い ふ が ご と し 。長
老 見 処 麼 と 道 取 す と も 、自
己 な る べ し と 回 頭 す べ か ら ず 。 自 己 に 的 当 な り と も黄
蘗 に あ らず
、 黄蘗
か な ら ず し も 自 己 の み に あ ら ず 。長
老見
処 は 露 回 回 な る が ゆ へ に 」 と あ る 。 こ れ は 結 局 「 見 処 す 」 と言
う 道 理 も あ る に ち が い な い 。黄
蘗
・ 仏性
・ 見 処 は 一 物 で あ る か ら 、 こ れ を 「 見 処 」 と 言 う べ き で あ る 。 ま た 「 見処
せ ず 」 と い う道
理 も あ は ず で あ る 。黄
蘗 も 仏性
、 見 処 も 仏性
、 十 二 時 も仏
性
で 〔 あ っ て、 仏性
で は な い も の は な い の で 〕 あ る か ら 、 何 物 が何
を見
る べ き か と い う意
味
あ い で あ る 。見
・ 不 見、会
・ 不会
く ら い の道
理 で あ る 。 ま た 、 「長
= 二 九Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) 二 、 何 物 力 何 ヲ 可 レ 見 ソ ト 云 心 地 ナ リ、 見 不 見、 会 不 会 程 ノ ( 二 〇 一 a ) 道 理 ナ リ 、 又 長 ク ワ イ 老 見 処 麼 卜 道 取 ス ト モ 、 自 己 ナ ル ヘ ト シ 回 ト ウ 頭 ス ヘ カ ラ ス ト ハ 、 長 老 ト 云 ト モ 黄 蘗 「 人 ニ タ ル ヲ カ キ ル ヘ カ ラ ス、 尽 ・ 法 界 一 黄 蘗 ナ ル ヘ シ、 故 テ キ 自 己 二 的 当 ナ リ ト モ 黄 蘗 二 非 ス ト 被 レ 決 、 黄 蘗 ノ 皮 肉 必 シ モ 自 己 ノ ミ ニ ア ラ ス ト 被 レ 釈、 所 詮 長 老 ト モ 云 へ 、 黄 蘗 ト モ 云 へ 、 皆 尽一一 法 界一 皮 肉 ナ リ 、 又 仏 性 ナ リ、 故 自 己 ノ ミ ニ ア カ ン ラ ス ト ハ 云 ナ リ 、 又 黄 蘗 日 不 敢 、 是 ハ 如 レ 文 、 是 モ 不 敢 ト 云 ヘ ハ ト テ 、 我 不 レ 知 ナ ム ト 被 レ 仰 タ ル ト ハ 不 レ 可 二 心 得→ 実 ニ モ 世 間 ニ モ ( 二 〇 ケ イ ノ ウ ヲ キ モ 一
b
) 芸 能 ア ル 物 モ 、 人 二 被 レ 尋 レ 能 之 時 モ 魂 カ ン ニ 我 不 敢 物 也 ト 云 常 事 也 、 今 ハ 只 仏 性 ノ 道 理 ノ 至 極 ス ル 所 ヲ 不 敢 卜 被 レ 仰 ト 心 得 ヘ シ、 故 長 老 見 処 タ ト ヒ 長 老 也 ト モ 、 長 老 見 処 タ ト ヒ カ ン 黄 蘗 ナ リ ト モ 、 道 取 ス ル ニ ハ 不 敢 ナ ル ヘ シ ト 云 云 、 長 老 見 所 、 三 世 諸 仏 諸 代 祖 師 ナ リ ト モ 、 タ ト ヒ 黄 蘗 ナ リ ト モ 道 取 ス ル ニ ハ 不 敢 也 ト 云 ハ 、 長 老 見 処 黄 蘗 皆 仏 性 ナ ル ユ へ 二 、 不 敢 ト ニ イ ハ ル ル 道 理 也、 是 ハ 非 二 世 間 ノ 不 敢 ノ 詞 → 此 不 敢 ノ 詞 ハ 仏 性 ナ ル ( 二 〇 二 a ) ヘ シ ト 云 ト イ ウ ウ ム ウ ム モ 可 二 心 得→ 又 一 頭 水 粘 牛 出 来 道 吽 吽 ナ ル ヘ シ ト 云 ハ 、 是 ハ 無・ 別 子 細→ 只 長 老 見 処 、 黄 蘗 不 一 四 〇 老 見 処 麼 と道
取
す と も 、 自 己 な る べ し と 回頭
す べ か ら ず L と は 、 「 長 老 」 と い っ て も 黄 蘗 } 人 に 限 る べ き で は な い 。法
界 を 尽 く し た 黄 蘗 で あ る は ず で あ る。 だ か ら 「自
己
に 的 当 な り と も黄
蘗 に あ ら ず 」 と 決 定 さ れ る 。 「黄
蘗
」 の皮
肉
「 か な ら ず し も自
己 の み に あ ら ず 」 と 釈 か れ る。 結局
、 コ 長老
L と も い い 、 「黄
蘗 」 と も い い 、皆
法
界
を 尽 く す 皮肉
で あ る 。 ま た 仏 性 で あ る 。 だ か ら 「自
己 の み に あ ら ず 」 と 言 う の で あ る 。 「 黄蘗
い は く 、 不 敢 」 。 こ れ は 文 の 如 く で あ る 。 こ れ も、 「 不 敢 」 ( ど う い た し ま し て ) と い う か ら と い っ て 、 私 は 知 ら な い と お っ し ゃ ら れ た と は 理解
す べ き で は な い 。 ま こ と に 、 世間
で も 、芸
と能
の あ る 者 も 、人
に 能 力 を 尋 ね ら れ た と き も 、 「本
当 に 私 は 不敢
物 で あ る ( そ の よ う な 能 力 は あ り ま せ ん ) 」 と 〔 謙遜
し て 〕 言 う の は 常 の こ と で あ る 。 こ こ で は た だ 仏 性 の道
理 が ゆ き つく
と こ ろ を 「不
敢 」 と お っ し ゃ ら れ た と 理 解 す べ き で あ る 。 だ か ら 、 「 長老
見
処 た と ひ 長老
な り と も 、 長 老見
処 た と ひ黄
蘗 な り と も、 道 取 す る に は 不 敢 な る べ し 」 と あ る 。 「 長 者 見 処 」 が 三 世 諸 仏 ・諸
代
祖 師 で あ っ た と し て も 、 「 た と ひ黄
蘗 な り と も 、 道 取 す る に は不
敢
な り 」 と い う の は 、 「長
老 見 処 」 も 「黄
蘗
」 も 皆 仏性
で あ る か ら 、 「 不 敢 」 と い わ れ る 道 理 で あ る 。 こ れ は世
間
で使
う 「 不 敢 」 の こ と ば で は な い 。 こ の 「 不 敢 」 の こ と ば は 仏 性 で あ る は ず で あ る と言
う と も 理解
す べ き で あ る 。 ま た 、 「 一頭
水枯
牛 出 来 道吽
吽
( 一 頭 の 水 枯 牛 出 で 来 た り て 吽 吽 と 道 う ) な る べ し 」 と い う の は 、 こ れ は 特 に と り た て て い う ほ ど の こ と で は な い 。 た だ 「 長老
見 処 」 「黄
蘗 不 敢 」等
の こ と ば は 、 た だ 牛 が吽
吽 ( モ ー モ ー ) と 鳴 い て い る く ら い の こ と で あ る。 も し牛
が 、 馬 が 嘶 く よ う に鳴
き 、 虫 が鳴
く よ う に鳴
くな
ら ば 、違
う は ず で あ る。 牛 が モ ー モ ー と鳴
く く ら い の道
理 に よ っ て 、 た だ右
に挙
げ る と こ ろ の こ と ば 等 が 一 物 で あ る道
理、 〔 即 ち 〕 仏性
が 仏性
を 唱 え て い る道
理 〔 を表
し て い るウ ム ウ ム 敢 等 ノ 詞 ハ 、 只 牛 ノ 吽 吽 ト ホ エ タ ル 程 ノ 事 也 、 牛 力 馬 ノ イ ナ ナ ク 様 ニ モ ホ エ 、 虫 ノ 鳴 様 タ カ ウ ニ モ ナ カ バ 可 レ 違、 牛 カ ム ム ト ホ ユ ル 程 ノ 道 理 二 、 只 右 二 所 レ 挙 ノ 詞 等 ] 物 ナ ル 道 理、 仏 性 力 仏 性 ヲ 唱 タ ル 道 理 、 牛 力 牛 ヲ ホ ユ ル 同 事 也 ト 云 心 地 ナ リ 、 又 道 取 ノ 詞 多 ク カ サ ナ リ タ ル ヤ ウ ニ キ コ ユ レ ト モ 、 只 所 詮 倉 卒 ナ ラ ス、 返 返 能 能 此 宗 旨 ヲ 可 二 参 学 一 ト 云 ( 二 〇 二
b
) コ コ ロ ナ リ 、 ( 29 ) ( 頭 註 v 両 三 裲 ト ハ 、 ナ ニ ト モ 云 ハ レ ヌ ヘ シ ト 云 心 也、 な シ ヤ ウ シ ハ ラ ク ヲ ク 南 泉 日 、 漿 水 銭 且 致、 草 鞋 銭 教 什 麼 人 還 コ ン ツ ト 云 、 此 詞 大 二 被 レ 驚 ヌ ヘ シ 、 只 法 性 ソ、 実 相 ソ、 仏 性 ソ ナ ム ト 云 ヘ ハ 、 是 ハ 仏 法 ト 覚 ケ ン コ ユ 、 今 ノ 漿 水 銭 草 鞋 銭 ナ ム ト キ ケ ハ 、 堅 固 コ ン ツ 世 間 ノ 調 度 ナ ニ ト モ ナ キ 徒 事 ノ 様 二 聞 ユ 、 シ タ カ テ 随 祖 師 ノ 法 門 ハ ナ ニ ト モ ナ キ 事 ヲ、 只 ロ ニ カ ラ ス ア タ ル ニ 任 テ 云 也 、 雀 ノ シ ウ シ ウ、 烏 ノ カ ウ カ ウ 、 人 ノ ト カ ハ ム ナ ム ト 云 程 ノ 詞 也 ト 云 ヤ カ ラ ン カ シ ナ カ ラ ヲ 族 多 歟 、 是 併 不 レ 聞 二 正 嫡 ノ 仏 法 一 不 レ ( 二 〇 三 a ) 遇 二 正 師・ 之 時 ノ 事 也 、 所 詮 仏 祖 ハ 只 法 ノ 至 極 ヲ 能 能 明 ラ ム ル ユ ヘ ニ 、 如 レ 此 談 ス ル ス テ ヲ 筋 ヲ ツ ヤ ツ ヤ 不 二 存 知 「 之 時、 カ ク ノ コ ト ク 云 也 、 不 便 不 便、 抑 仏 性 ノ 右 様 イ カ ナ ル ヘ キ 物 ソ ト、 能 能 功 夫 参 学 ス ヘ シ、 仏 性 二 漿 水 銭 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) の で あ っ て 、 そ れ は 〕 、牛
が牛
に吽
え る の と 同 じ こ と で あ る と い う意
味
あ い で あ る 。 ま た 、 〔 「 か く の ご と く 道取
す る は 道 取 な り 。道
取 す る 宗旨
、 さ ら に 又 道 取 な る 道 取 、 こ こ ろ み て道
取 し て み る べ し 」 と 〕 「道
取
」 の こ と ば が 多 く重
な っ て い る よ う に 思 わ れ る け れ ど も 、 た だ 結局
、 慌 て ず に 、 繰 り 返 し繰
り 返 し 十 分 に こ の 「 宗旨
」 を 参 学 す べ き で あ る と い う意
味
で あ る 。 A 「 両 三 輛 ( 二 、 三 足 ) 」 と は、 ど の よ う に も 言 う こ と が で き よ う と い う 意 味 で あ る。 〉 へ 「 南泉
い は く 、漿
水 銭 且 致 、草
鞋
銭教
二什
麼
人還
一 ( 漿 水 銭 は 且 く 致 く 、 草 鞋 銭 は 什 麼 人 を し て か 還 さ し め ん ) 」 と あ る 。 こ の こ と ば は 大 い に驚
か さ れ る に違
い な い 。 た だ 、法
性 だ 、実
相
だ 、 仏性
だ と 言 え ば 、 こ れ は 仏 法 〔 に 関 す る こ と で あ る 〕 と 思 わ れ る 。 〔 と こ ろ が 〕今
の 「漿
水銭
」 「草
鞋
銭 」 と 聞 く と 、 堅 固 世間
の 調度
で あ っ て 、何
と も な い 詰 ま ら な い こ と の よ う に 聞 こ え る 。従
っ て 、 「 祖師
の 法門
は 、 何 と も な い こ と を 、 た だ 口 に 出 る に 任 せ て言
う の で あ る 。 雀 が チ ュ ン チ ュ ン 、鳥
が カ ー カ ー 、 人 が 説 く な ら 「 ム 」 ( 無 ) な ど と 言 う ほ ど の こ と ば で あ る L と言
う族
が多
い こ と よ 。 し か し な が ら 、 こ れ は 正 嫡 の 仏法
を聞
か ず 、 正 師 に遇
わ な い と き の こ と で あ る 。 結局
、 仏 祖 は た だ 法 の 至 り極
ま る と こ ろ を 十 分 明 ら め る の で あ る か ら 、 こ の よ う に 説 く 道 理 を 全然
知 っ て い な い と き 、 〔 そ の よ う な族
は 〕 こ の よ う に言
う の で あ る 。気
の 毒 な こ と だ 。 一体
、 仏性
と は ど の よ う な も の か と 、 十 分 に 功夫
参
学 す べ き で あ る 。 仏 性 に 「漿
水
銭
」 「 草 鞋 銭 」 は 肯 く も の か 、 別 個 の も 一 四 一Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ク ワ イ カ ク 草 鞋 銭 ハ 可一・ 乖 角 一 物 力 、 別 ニ ト リ ハ ナ タ ル ソ ム ク ぬ ヘ キ 物 カ ト ヨ ク ヨ ク 心 得 レ ハ、 都 無 二 不 審 一 事 也 、 ナ ニ ト シ テ カ 漿 水 銭 草 鞋 銭 仏 性 ノ 道 理 ヲ シ ハ ラ ク ヲ ハ ナ ル ヘ キ、 鏨 以二 漿 水 銭 一 顕 二 仏 性 → 以 二 草 鞋 ヲ ヲ 銭噌 表一 一 仏 性 「 卜 先 可 ゴ 心 得・ 也、 又 イ ハ ユ ル コ ム ツ ノ ア タ ヒ ハ シ ハ ラ ク ( 二 〇 三
b
) ヲ ク、 草 鞋 銭 ノ ア タ ヒ バ 誰 ヲ シ テ カ カ ヘ サ シ メ ム ト ナ リ、 是 ハ シ ハ ラ ク ヲ ク ハ 、 漿 水 銭 ハ 漿 水 銭 ニ テ ヲ ク 、 草 鞋 銭 ハ 又 草 鞋 銭 ナ レ ハ、 誰 人 ニ カ カ ヘ サ シ メ ム ト ハ 、 漿 水 銭 ニ テ 仏 性 ツ ク シ、 草 鞋 銭 ノ 究 尽 ス ル 道 理 力 、 誰 人 ヲ シ テ カ カ ヘ サ シ メ ム ト 云 道 理 ニ テ ア ル ナ リ、 置 ト 云 ヘ ハ ト テ、 別 二 取 放 テ 物 ヲ 置 タ ル 儀 ニ テ ハ 不 レ 可 レ 有 、 又 誰 人 ニ カ カ ヘ サ ム ト 云 ヘ ハ ト テ、 銭 ヲ モ チ テ カ ヘ ス ヘ キ 人 ヲ 思 惟 シ タ ル 儀 ニ テ モ ナ シ 、 定 慧 等 覚 ハ シ ハ ラ ク 置 、 ( 二 〇 四 a ) 明 見 仏 性 ヲ ハ 誰 人 ヲ シ テ カ 見 セ シ メ ム ト 云 ハ ム 程 ノ 道 理 ナ リ ト 可 氏 心 得一 ナ リ、 丶 ( 30 ) 定 慧 等 覚 、 明 見 仏 性 、 此 理 如 何 ノ 詞、 建 立、 由 茲 発 現 二 心 得 合 ヘ シ、 皆 依 ヒ 此 問 二 付 テ 答 詞 イ ピ カ タ シ、 其 故 ハ 明 見 仏 性 此 理 如 何 ト モ ア ラ ハ 、 定 慧 等 覚 ス ル ソ ト モ 答 ヘ キ 処 二 、 遮 テ 定 慧 等 覚 明 見 仏 性 ト ア ル ト キ 一 四 二 の と し て 扱 う べ き も の か と、 よ く よ く 理解
す る と 、 全 く わ か ら な い こ と が な い の で あ る 。 ど う し て 「漿
水銭
」 「 草 鞋銭
」 は 仏性
の道
理 を離
れ る こ と が で き よ う か 。 仮 に 「漿
水 銭 」 で 仏性
を 顕 し、 「 草鞋
銭
」 で 仏性
を 表 す と 理 解 す べ き で あ る 。 ま た 「 い は ゆ る 、 こ む つ の あ た ひ は し ば ら く を く 、 草 鞋銭
の あ た ひ は た れ を し て か か へ さ し め む と な り 」 。 こ れ は 「 し ば ら く を く 」 は 、 「漿
水
銭
」 は 「漿
水銭
」 に お く 。 「草
鞋銭
」 は ま た 「草
鞋
銭 」 で あ る か ら 、 〔 そ れ を 〕 誰 に還
さ せ る の か と い う の は 、 「 漿水
銭
」 で 仏 性 を尽
く し 、 「草
鞋
銭
」 の 究 尽 す る道
理 が 、 「 た れ を し て か か へ さ し め む 」 と い う 道 理 で あ る の で あ る 。 「 を く 」 と あ る か ら と い っ て 別 に 引 き 離 し て置
い て あ る こ と で あ る は ず が な い 。 誰 に還
そ う か と あ る か ら と い っ て、 ヘ ヘ ヤ へ 銭 を持
っ て 還 す べ き 人 を 考 え て い る こ と で も な い 。 〔 「 こ む つ の あ た ひ は し ば ら く へ も ヘ へ も も ヘ ヘ ヘ へ も へ も も を く 、草
鞋
銭 の あ た ひ は た れ を し て か か へ さ し め む 」 と は 、 〕 「 定 慧等
学
は し ば ら ヘ ヘ ヘ ヘ ヘ へ も ヘ ヘ ヘ ヘ へ く お く 、 明見
仏 性 を ば 、 た れ ひ と を し て か 見 せ し め む 」 と い う く ら い の 道 理 で あ る と 理解
す べ き で あ る 。 へ 「 定 慧等
学
、 明 見 仏性
、 此 理 如 何 」 の こ と ば は 、 発 現 L に引
き 合 わ せ 理解
す べ き で あ る 。 〔第
三段
の 〕 「皆
依 建 立 、 由 茲 へ こ の問
い に 関 連 し て答
え の こ と ば を 言 う こ と は難
し い 。 そ の わ け は 、 「明
見
仏 性 、此
理 如何
」 と も あ る な ら 、 「定
慧等
学
す る の だ 」 と も 答 え る べ き と こ ろ に 、 遮 っ て コ定
慧等
学
、 明 見 仏 性 一 と あ る と き に 、 答 え が な い の に 同 じ で あ る 。 但 し二 答 ナ キ ニ 似 タ リ、 但 其 理 如 何 ト ア ル カ 、 ヤ カ テ 明 見 仏 性 ノ 道 理 ナ ル ヘ キ 也、 先 先 モ 如 何 ト 云 詞 、 問 二 似 テ 答 ト ( 二 〇 四
b
) ナ ル 条 已 事 ブ リ ヌ、 其 理 如 何 ト ア ル 詞 ニ テ 尤 仏 性 ハ ア ラ ハ ル ル ナ リ 、ま
此 理 如 何 ト ハ 、 定 慧 等 学 ト 明 見 仏 性 ト ヲ 、 此 理 如 何 ト ハ イ ハ ル ル ナ リ、 又 諸 悪 莫 作 ト イ フ 詞 ニ モ 心 得 合 ヘ シ、 へ 一 切 衆 生 明 見 仏 性、 此 理 如 何 ト イ ハ ム カ コ ト シ 、 定 慧 等 覚 悉 有 仏 性 ト イ ハ ム カ 如 シ、 有 無 等 学 明 見 仏 性 ト モ イ ヒ ツ ヘ シ 、 定 仏 性、 慧 仏 セ ヨ 性 ト ナ ル ヘ シ、 此 定 慧 ハ 見 仏 性 ノ 助 法 ト キ コ ツ ユ 、 シ カ ニ ハ ア ラ ス 、 常 途 ノ 義 ニ ハ 違 ス ル ナ リ 、 ( 二 〇 五 a ) ヤ カ テ 此 理 如 何 ト 云 力、 教 ニ ハ ス テ ニ カ ハ リ タ ル 心 ノ ア ラ ハ ル ル ナ リ 、仏 性 明 見 ノ 所 二 定 慧 等 学 ハ ア ラ ハ ル ル 也 、 シ カ リ ト 云 ヘ ト モ 、 コ レ モ ナ ヲ ニ ナ ル 様 二 心 得 ラ レ ヌ ヘ キ 所 二 、 タ レ カ 所 作 ナ ル ヘ キ ソ ト 道 取 セ ム モ ヲ ナ シ カ ル ヘ シ ト 云 也、 仏 性 ヲ ア ラ ハ ス ハ 衆 生、 衆 生 ヲ ア ラ ハ ス ハ 仏 性 ナ ル ヘ シ 、 ま 定 慧 等 学 卜 談 ス ル 学 ハ 、 学 二 取 テ 証 ス ル 所 ヲ ア ラ ハ ス 学 也 、 世 間 二 人 ノ 心 得 ル 所 ノ 学 ハ、 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) コ 此 理 如 何 L と あ る の が 、 そ の ま ま 「 明 見 仏 性 」 の 道 理 で あ る は ず で あ る 。 以 前 に も 「
如
何 」 と い う こ と ば が 、 問 い の よ う で あ っ て 、 〔 そ れ が そ の ま ま 〕答
え と な る 道 理 は 、 既 に 言 い古
さ れ た 。 「 此 理如
何 」 と あ る こ と ば に よ っ て 、特
に仏
性
は 表 れ る の で あ る。 へ 「 此 理如
何 」 と は 、 「 定慧
等
学 」 と 「 明見
仏性
」 と を 「 此 理 如 何 」 と は言
わ れ る の で あ る 。 ま た 「諸
悪
莫
作
」 ( 諸 悪 は 莫 作 な り ) と い う こ と ば に も引
き合
わ せ て 理 解 す べ き で あ る。A
「 一 切衆
生 、 明 見仏
性
、 此 理 如何
」 と い う よ う な も の で あ る 。 「定
慧等
学 、悉
有
仏 性 」 と い う よ う な も の で あ る 。 コ 有無
等
学
、 明 見 仏性
L と も言
え る で あ ろ う。 定 仏 性 ・慧
仏 性 と な る は ず で あ る 。 こ の 「 定 慧 」 は 、見
仏 性 の 助 道法
と 受 け 取 ら れ る 。 そ う で は な い 。通
常
の 意味
と は 違 う の で あ る 。 そ の ま ま 「 此 理 如 何 」 と言
う の か 。教
に は 既 に 〔通
常
の 意味
と は 〕 か わ っ た 意味
が あ ら わ れ る の で あ る 。 へ 「 仏性
明
見 」 の と こ ろ に 「 定 慧等
学
」 は あ ら わ れ る の で あ る 。 そ う で あ る と い っ て も、 こ れ も ま だ 二 で あ る よ う に 理解
さ れ る で あ ろ う と き 、 「 た れ か所
作
な る ぞ と 道取
せ む も を な じ か る べ し 」 と言
う の で あ る 。 仏性
を あ ら わ す は 衆 生 、 衆 生 を あ ら わ す は 仏 性 で あ る は ず で あ る 。 へ 「 定慧
等
学 」 と 説 く 「学
」 は 、学
び取
っ て 証 す る と こ ろ を あ ら わ す 「 学 」 で あ る 。 世間
で 人 が 理 解 す る と こ ろ の コ学
L は 、 初 入 の 「 学 」 ば か り を知
っ て 、 全 く 一 四 三Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Unlverslty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) シ ヨ 初 入 ノ 学 許 ヲ シ リ テ 、 ヤ カ テ 証 道 ノ 学 ヲ ハ ( 二 〇 五
b
) シ ラ サ ル カ 如 シ、 コ レ ニ ョ リ テ 明 見 仏 性 ノ 所 二 、 定 慧 等 学 ノ 学 ア ル 也 ト イ フ 詞 ニ マ ト ヒ テ、 ウ タ カ ヒ ヲ イ タ ス ナ リ 、 ヒ 定 慧 等 学 ニ テ 明 見 仏 性 ス ル カ 、 明 見 仏 性 ノ 所 二 定 慧 等 学 ノ 学 ハ ア ル 也 ト チ カ フ ル コ ト ハ 、 ト ウ チ 断 惑 登 地 登 地 断 惑 ト 心 得 程 ノ キ 也 、 へ 仏 性 等 学 明 見 仏 性 此 理 如 何 卜 云 ハ 、 仏 性 与 二 定 慧 一 ヒ ト シ ク シ テ、 コ ト ナ ル 事 ナ キ 道 理 ヲ ア ラ ハ ス 心 也 、 へ 抑 定 慧 ノ ニ ヲ 置 テ コ ソ 等 学 ト ハ イ フ ヘ ケ レ、 ( 二 〇 六 a ) 仏 性 ノ 上 二 置 テ 等 ノ 字 不 用 ニ ニ タ レ ト モ、 ス テ ニ 定 慧 等 覚 ヲ 仏 性 ト 云 ツ レ ハ 、 仏 性 ハ ヤ カ テ 等 学 ト ハ 云 ハ ル ル ナ リ 、 ヒ 明 見 仏 性 ノ 所 二 等 学 ノ 学 ア ル 也 ト 云 ヘ ハ ト テ、 必 学 ヲ 置 ニ ハ ア ラ ス 、 仏 性 コ ソ 学 ニ テ ハ ア レ ハ ヲ キ ヲ カ ヌ ノ 義 ニ モ 不 レ 及 ナ リ 、 凡 ハ 仏 性 等 学 明 見 仏 性 ト モ、 又 明 見 等 学 等 学 仏 性 ト モ 、 定 慧 仏 性 明 見 等 学 ト モ イ ハ ル ヘ シ 、 定 慧 等 学 明 見 仏 性 ノ 詞 、 皆 悉 有 ナ リ 、 不 レ 可−一 各 別一 之 故 也 、 ( 二 〇 六b
) な コ ウ メ ツ 凡 仏 道 二 戒 定 慧 三 学 ア リ 、 戒 ハ 業 道 ヲ 滅 ス レ ト モ 凡 悩 ヲ 不 レ 断 也、 但 仏 戒 卜 云 時 コ ソ 無一’ 残 一 四 四 証 道 の 「学
」 を 知 ら な い よ う な も の で あ る 。 こ れ ( 知 ら な い こ と ) に よ っ て 「 明 見 仏性
の と こ ろ に 、定
慧 等学
の 学 あ る な り 」 と い う こ と ば に混
乱 し て 、 〔 明 見 仏 性 の と こ ろ に 、 な お も 定 慧等
学 が あ る か と 〕 疑問
を 生 じ る の で あ る 。 へ 「定
慧 等学
」 に よ っ て 「 明 見 仏性
」 す る の か 、 「明
見
仏 性 の と こ ろ に 、 定 慧等
ハ み 学 の学
あ る な り 」 と違
え る こ と は 、断
惑 登 地 、登
地断
惑 と 理解
す る く ら い の意
味
で あ る。 ヘ ヘ ヘ ヘ へ 〔 「定
慧 等学
、 明 見 仏性
、 此 理 如何
」 を言
い 換 え て 〕 「 仏性
等 学 、 明 見 仏性
、 此 何 如 何 」 と い う の は 、 「仏
性 」 と 「 定 慧 」 が等
し く て 異 な る こ と が な い 道 理 を 表 す意
味
で あ る 。 へ そ も そ も 「 定 ・ 慧 」 の 二 つ を お い て 「 等 学 」 と は 言 う べ き で あ る 。 仏 性 の 上 に 置 い て は 、 等 の字
は 不 用 に 見 え る け れ ど も 、既
に 「 定 慧等
学
」 を 仏性
と言
っ た の で、 〔 「 仏性
等 学 」 と 〕 仏性
は そ の ま ま 「 等 学 」 と 言 わ れ る の で あ る 。 へ 「明
見 仏 性 の と こ ろ に 、 定 慧等
学 の 学 あ る な り 」 と い う か ら と い っ て 、 必 ず 学 を 置 く の で は な い 。 「 仏 性 」 が 「 学 」 で あ る の で 、置
く 、 置 か な い の意
味
に も 及 ぼ な い の で あ る 。 た い て い は 、 「 仏 性等
学
、 明見
仏性
」 と も 、 ま た 「 明 見等
学
、等
学仏
性
」 と も、 「 定 慧 仏 性 、 明 見 等 学 」 と も 言 わ れ る べ き で あ る 。 コ定
慧等
学
、 明 見仏
性
L の こ と ば は 、 皆 コ 悉有
L で あ る 。 そ れ ぞ れ 別 個 に す べ き で は な い か ら で あ る 。 へ お お よ そ 仏 道 に は 、戒
・定
・ 慧 の 三学
が あ る 。戒
は 業 道 ( 悪 い 行 い ) を 滅 す る け れ ど も 、 煩 悩 を 断 じ な い の で あ る。 も っ と も 、 仏戒
と い う と き 、 〔 煩悩
の 〕 残所一 道 理 ナ レ、 ユ ヘ ニ 菩 薩 戒 仏 戒 尤 可一一 心 得一 也、 定 ハ 凡 悩 ヲ 断 ス、 又 定 多 慧 少 ア ル ヘ シ 、 慧 多 定 小 ア ル ヘ シ 、 定 ハ サ キ 慧 ハ 後 ト イ フ コ ト ア リ、 今 ノ 定 慧 等 学 明 見 仏 性 ノ イ ハ レ ハ 、 コ レ ラ ニ ヒ ト シ カ ラ サ ル ナ リ、 へ 仏 性 等 学 ト 云 ハ 、 一 法 ヲ 等 学 ト 云 也、 又 一 等 ト 云 事 モ ア リ、 ヒ 十 二 時 中 タ ト ヒ 十 二 時 中 二 処 在 セ リ ト モ ( 二 〇 七 a ) 不 依 倚 一 物 ナ リ ト ト ク ハ 、 定 慧 等 学 明 見 仏 身 也 ト 云 程 ノ 詞 ナ リ、 十 二 時 ノ 中 ニ ハ ナ ニ ト 処 在 ス ヘ キ ソ、 処 在 ス ト ヤ ト ク ヘ キ 、 処 在 ス ヘ カ ラ ス ト ヤ ト ク ヘ キ 、 タ タ 不 依 倚 ナ リ ト 云 也 、 ヒ イ 人 間 界 ノ 十 二 時 ト 難 レ 云 事 ハ 、 不 依 倚 ト イ フ カ ユ ヘ ニ 、 人 間 界 ノ 時 ハ 依 倚 ナ リ 、 依一・ 日 月 ト ニ 行 度一 十 二 時 ヲ タ ツ ル ユ ヘ ニ 、 へ 十 二 時 ト ト ク ハ 仏 性 ニ ア タ ル 、 不 依 倚 「 物 ト ト ク ハ 明 見 ニ ア タ ル ヘ シ 、 〔 二 〇 七
b
) へ 此 十 二 時 ノ 時 、 我 等 力 心 得 ル 時 ニ テ ハ ナ シ、 タ タ 不 依 倚 ト ト カ ル ル 也 、 十 二 時 力 不 依 倚 ナ ル ユ ヘ ニ 、 不 依 倚 ト イ ヘ ハ 十 二 時 ト ハ イ ハ レ ヌ 也、 仏 性 明 見 ノ 所 二 誰 ナ キ カ 如 シ、 へ 十 二 時 中 不 依 倚 「 物 ト 云 ハ 、 十 二 時 中 ノ 全 面 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) る と こ ろ が な い 道 理 で あ る 。 だ か ら 、菩
薩
戒 ・仏
戒 は 特 に 理解
す べ き で あ る 。定
は 煩悩
を 断 じ る 。 ま た 、 定多
慧少
が あ る は ず で あ る 。 慧多
定
少 が あ る はず
で あ る 。 定 は先
、 慧 は後
と い う こ と が あ る。 こ こ の 「 定 慧等
学 、明
見仏
性 」 の 理 由 は 、 こ れ ら に等
し く な い の で あ る。 へ 「 仏性
等
学 」 と い う の は 、 一 法 を 「等
学
」 と い う の で あ る 。 ま た 一等
と い う こ と も あ る 。 へ 「 十 二時
中 た と ひ 十 二時
中 に 処 在 せ り と も 不依
倚
な り 」 と 説 く の は 、 「 定慧
等
学、 明見
仏 身 」 で あ る と い う く ら い の こ と ば で あ る 。 「 十 二時
の 中 」 に は 、何
と 「処
在
」 す べ き か 。 「 処在
」 す と説
く べ き か 、 「 処 在 一 す べ き で は な い と 説 く べ き か 。 た だ 「 不 依倚
な り 」 と 言 う の で あ る 。 へ 「 人間
」 界 の 「 十 二時
」 と言
い が た い の は 、 「 不 依倚
」 と言
う か ら で あ る 。 人間
界 の時
は 「 依倚
」 で あ る。 日 月 の 運行
に 依 っ て 「 十 二時
」 を た て る の で あ る か ら 。 へ 「 十 二時
」 と説
く の は 「 仏 性 」 に 当 た る 。 「不
依倚
一 物 」 と 説 く の は 「明
見 」 に当
た る は ず で あ る 。 へ こ の 「十
二時
」 の 「時
」 は 、我
々 が 理 解 す る 「 時 」 で は な い 。 た だ 「不
依
倚
」 と 説 か れ る の で あ る 。 「 十 二 時 」 が 「 不 依 倚 」 で あ る か ら 、 「 不 依倚
」 と 言 え ば 「 十 二時
」 と は言
わ れ な い の で あ る 。 「 仏性
明 見 」 の と こ ろ に誰
も い な い よ う な も の で あ る 。 へ 「 十 二時
中 不 依倚
「物
」 と い う の は 、 「 十 二 時中
」 の全
面 を も っ て 「 不依
倚
」 一 四 五Komazawa University Kom 三1z三1w三1 Umversrty 『 正 法 眼 蔵 抄 』 口 語 訳 の 試 み ( 伊 藤 ) ヲ 以 テ 不 依 倚 ト イ ハ ハ 、 時 中 十 ニ ヲ モ テ 依 倚 卜 云 ヘ シ、 十 二 時 中 依 倚 不 依 倚、 時 中 十 二 依 倚 不 依 倚 卜 打 チ カ ヘ タ ル ヤ ウ ナ レ ト モ 、 コ レ ハ 一 物 ノ 上 二 置 テ 心 得 ヘ シ、 タ ト ヘ ハ 火 ハ ア タ ダ カ ナ リ 、 水 ハ ス サ マ シ ト 云 程 ノ 事 也、 ( 二 〇 八 a ) な ト ウ ナ リ ヤ 十 二 時 中 ハ 何 事 ノ 答 哉 、 コ レ 定 慧 等 学 明 見 仏 コ ト ル 性 ヲ 答 也 、 諸 悪 莫 作 程 ノ 詞 ナ リ 、 十 二 時 中 ハ マ ク サ 不 依 倚 一 物 也、 莫 作 ノ 心 ナ リ 、 へ 処 在 卜 云 ハ 、 不 依 倚 ノ 処 在 也 ト 可 二 心 得「 也、 セ ウ セ キ 去 来 ノ 蹤 跡 ニ カ カ ハ レ ヌ ユ ヘ ニ 、 不 依 倚 ト ト カ ル、 又 不 ノ 字 ヲ 不 レ 加 依 倚 ト ト ケ ト モ 、 ヨ ラ ス ト 心 得 也、 如 葛 藤 倚 樹 ト ハ イ へ ト モ、 只 葛 藤 葛 藤 ヲ マ ツ フ ト 心 得 コ ト ク ナ リ、 ヘ シ テ ベ ツ ギ 不 依 倚 一 物 始 得 卜 云 ハ 、 無一
別
儀 → イ ヒ ハ ツ ル ( 二 〇 八b
) コ ト ハ ナ リ、 へ 長 老 見 処 麼 卜 道 取 ス ト モ 、 自 己 ナ ル ヘ シ ト ク ワ イ テ ウ 回 頭 ス ヘ カ ラ ス ト 云 ハ 、 我 ト 思 ヘ カ ラ ス ト ニ ム 云 也 、 長 老 見 処 麼 ハ 、 一 切 祖 師 ノ 頂 顯 眼 睛 ト イ ヒ シ 程 ノ 詞 ナ リ 、 長 老 見 処 歴 卜 云 ハ ム ト キ 自 己 ナ ル ヘ カ ラ ス 、 汝 得 吾 皮 肉 骨 髄 ナ ル ユ ヘ ニ 、 長 老 見 処 ナ ル コ ト ナ シ ヤ ト イ フ、 タ ト ヘ ハ 定 慧 等 学 明 見 仏 性 ヲ 、 黄 蘗 ノ 見 処 ナ リ ト イ 一 四 六 と い う な ら ば 、 「時
中 十 二 」 を も っ て 「 依倚
」 と い う べ き で あ る 。 「十
二 時 中 依倚
不 依 倚 」 「 時 中十
二 依 倚 不 依倚
」 と 打 ち 返 っ た よ う で あ る け れ ど も 、 こ れ は 一 物 の 上 に お い て 理解
す べ き で あ る。例
え ば 、 火 は暖
か で あ り、 水 は冷
た い と い う く ら い の こ と で あ る 。 へ 「 十 二時
中 」 は ど の よ う な こ と の答
え な の か 。 こ れ は 「 定 慧等
学
、明
見 仏 性 」 を 答 え た の で あ る 。 「諸
悪 莫作
」 く ら い の こ と ば で あ る 。 「 十 二時
中 」 は 「 不 依倚
一 物 」 で あ る 。 「莫
作
」 の 意味
で あ る 。 へ 「 処在
」 と い う の は 「不
依 倚 」 の 「 処 在 」 で あ る と 理解
す べ き で あ る 。 去 来 の 蹤 跡 に係
わ ら な い か ら 「不
依 倚 」 と説
か れ る。 ま た 「不
」 の字
を 加 え な い で 「 依 倚 」 と 説 く け れ ど も、 「 依 ら ず 」 と 理 解 す る の で あ る。 「 如 葛藤
倚
樹
」 と は言
う け れ ど も 、 た だ 「葛
藤 」 が 「 葛 藤 」 に巻
き つ く と 理解
す る ご と く で あ る。 へ 「 不 依 倚 一物
始 得 」 〔 の 「始
得
」 〕 と い う の は 、特
別
の 意 味 は な い 。 言 い 切 っ た こ と ば で あ る 。 へ 「 長 老 見 処麼
と 道 取 す と も 、 自 己 な る べ し と 回 頭 す べ か ら ず 」 と い う の は 、自
分 と 思 う べ き で は な い と い う の で あ る 。 「長
老
見
処麼
」 は 、コ
切祖
師 の 頂 額眼
睛 」 と い っ た ほ ど の こ と ば で あ る 。 「 長 老 見 処麼
」 と 言 う と き 、 「自
己 」 で あ る は ず が な い 。 「汝
得 吾皮
肉
骨 髄 」 で あ る か ら 、 「 長老
見 処 」 で あ る こ と は な い の か と い う 。 例 え ば 「定
慧等
学
、 明見
仏 性 」 を 、 「 黄 蘗 」 の 「 見処
」 で あ る と い う 意味
あ い で あ る 。 「 見 処 」 と は 「明
見 仏 性 」 の こ と で あ る 。 「 黄蘗
」 を 「 長老
」 と 言 う 。 但 し 、 「長
老 」 が 必 ず し も 「黄
蘗
」 で は な い 。フ 心 地 ナ リ、 見 処 ト ハ 明 見 仏 性 ノ コ ト ナ リ、 黄 蘗 ヲ 以 テ 長 老 ト イ フ、 但 長 老 カ ナ ( 二 〇 九 a ) ラ ス 黄 蘗 ニ ア ラ ス、