<業界レポート> 韓国の肥料産業
(2017 年 6 月 24 日作成) 韓国(大韓民国)は第 2 次世界大戦後に誕生した朝鮮半島の南部にある分断国家で、朝 鮮半島の北部を支配する北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)と対立している。1980 年代半ばま で軍事独裁体制を続いていたが、1987 年の民主化運動により民主主義体制を取り、民主国 家入りを実現した。 1950 年代初期に起きた朝鮮戦争の関係で、国土が破壊され、資金と技術もなし、1960 年代前半まで世界最貧国の一つと言われた。その後、ベトナム戦争に参戦で獲得したドル 資金と1965 年日韓国交樹立後から始まった 25 年間にわたる多額の円借款と日本からの技 術支援や合弁・出資により経済が急速に発展し、2015 年には国内総生産(GDP)が世界 11 位となり、先進国入りを果たした。しかし、急速な産業化に伴い、労働力が工業とサー ビス業に流入し、農業人口が減り続き、2016 年では農業世帯数 106.8 万世帯、249.6 万人、 総人口の4.9%まで低下した。その中に世帯主 70 歳以上が 42.1 万世帯もあり、高齢化が進 んでいる。 韓国の国土面積は狭く、山地が多く平野部は少なく、元々耕作に適する土地面積が少な い。1970 年代から始まった産業化に伴っても耕地面積がそれほど減少せず、1961 年の 211 万ヘクタールに比べ2014 年は 175 万ヘクタールもあり、減少面積が約 36 万ヘクタールし かなかった(図1)。ただし、2000 年以降、農業生産はコメなどの穀物から野菜や果物に 転換され、カロリーベースの食料自給率が 40~50%前後で緩やかに低下して、2015 年は 41%である。 図1. 1961~2014 年韓国の耕地面積と肥料総使用量の推移 (データ出所:FAO 統計)一、韓国肥料産業の歩み 戦前日本統治時代に朝鮮の産業構造については資源豊富な北部は工業、気候温暖の南部 は農業というすみ分け構想であった。それに伴い、1931 年から半島北部の咸鏡南道興南、 永安、本宮に大規模な化学肥料工場を建設された。特に日窒コンツェルンが興南には朝鮮 窒素肥料など10 社を超える子会社、関連会社を設立し、工場敷地面積 1980 万 m2、従業員 4 万 5 千人、家族を含めた総人口 18 万人に達していた大きな工業団地を建設し、設備能力 では硫安だけをとっても年間生産能力50 万トンで世界第 3 位であった。一方、半島南部に は三陟開発株式会社の三陟工場、朝鮮化学工業株式会社の順天工場、仁川工場、王子製紙 の木浦工場が建設され、4 工場合わせの硫安と過りん酸石灰の生産能力が年間約 30 万トン の規模であった。それでも需要を満たさず、不足分は北部と本土からの移入に依存してい た。資料によれば、1925 年の化学肥料移入量が 1,4945 トンであったが、1936 年には 308,405 トンまで膨らんだ。 しかし,第 2 次世界大戦の終戦直後に韓国では朝鮮化学肥料と王子製紙の肥料工場の一 部生産ラインしか残されず、生産能力はわずかに62,500 トンにすぎなかった。残された生 産設備もその後の朝鮮戦争により完全に破壊された。 1953 年朝鮮戦争停戦後、韓国政府は国民に十分な食料を供給することが課せられる最重 要な課題として、海外からの援助を基に農業振興を図った。化学肥料については1959 年ま で全量を輸入に依存して、莫大な外貨が支出された。1960 年から肥料政策を改め、自給自 足を目指すように政府主導で外国の資金と技術を導入して、大規模な化学肥料工場の建設 を行った。その功を奏し、1970 年代に化学肥料の自給を達成した。その後も 1990 年代後 半まで化学肥料産業を拡張し続け、遂に自給率が200%を超え、生産量の半分を輸出するほ どの化学肥料生産大国の地位を確実にした。表1 は 1960~70 年代集中的に建設された化学 肥料工場のリストである。 表1. 1960~1970 年代に建設された韓国の化学肥料工場 工場名 所在地 完成年 製品種類 生産能力 (トン/年) 備 考 忠州肥料工場 忠州 1961 尿素 85,000 1980 年代廃棄 羅州肥料工場 羅州 1963 化成肥料 不明 1980 年代廃棄 京畿化学熔りん工場 蔚山 1966 熔りん 50,000 現KG ケミカル 第3 肥料工場 (嶺南化学肥料工場) 蔚山 1967 尿素 化成肥料 84,100 180,600 現ファーム韓農 第5 肥料工場 (三星精密化学肥料工場) 蔚山 1967 尿素 330,000 2012 年廃棄 朝鮮肥料蔚山工場 蔚山 1968 化成肥料 192,900 現朝肥 豊農肥料工場 長項 1968 熔りん 108,000
京 畿 化 学 り ん 酸 肥 料 工 場 富川 1973 過リン酸石灰 化成肥料 75,000 120,000 現KG ケミカル 南海肥料麗水工場 麗水 1974 尿素 化成肥料 260,000 700,000 韓国総合化学 蔚山 1974 副産硫安 142,000 現Capro 協和化学肥料工場 浦項 1974 けい酸質肥料 700,000 現協和 嶺南化学第2 工場 蔚山 1976 化成肥料 177,400 現ファーム韓農 豊農肥料第2 工場 長項 1979 化成肥料 200,000 化学肥料の増産に伴い、肥料使用量が急速に増加し、1974 年に N、P2O5、K2O 換算では 85 万トンに達した。その後も 2007 年まで大体 80~100 万トンで推移し、2008 年リーマン ショック以降は韓国政府と韓国農協中央会による施肥抑制の呼び掛けと休耕地の増加で減 少に転じた(図1)。一方、単位面積耕地の肥料使用量も同じ傾向がみられる。1965 年の 147.7kg/Ha から急速に増加し、1974~2008 年の間に 300~500 kg/Ha に推移し、2005 年 に562kg/Ha と最大値に達した。その後は緩やかに減少し、2014 年には 337.6kg/Ha に低 下した。その推移は図2 に示す。 図2. 1961~2014 年韓国単位面積耕地の肥料使用量(N, P2O5, K2O 換算、kg/ヘクタール) (データ出所:FAO 統計)
二、韓国の化学肥料産業の現状 1995 年韓国が WTO に加盟してから農産物の市場開放を受けいれ、農業政策には持続可 能な農業の概念が導入され、農業の社会的、経済的な側面だけでなく、環境保全的な側面 も強調されている。韓国の肥料産業についても、肥料販売が自由化され、韓国農協に出荷 する肥料製品の入札制を導入して国内外の全面的な競争体制に転換される。特に1997 年韓 国経済を襲った通貨危機以降、2 回の産業合理化措置による業界が再編され、肥料の製造販 売に関与するメーカーが8 社(現在は 7 社)しか残されず、収益性が最重要視され、生産 能力の拡大一辺倒から量より質を強調することになった。高品質化を推進して、環境に優 しい緩効性肥料と土壌診断に基づく処方肥料、有機入り肥料、機能性肥料などの高付加価 値肥料の開発と普及に力を入れる。その努力もあり、一般化学肥料の販売量は減少される が、高付加価値肥料の販売が増えていった。 韓国の化学肥料生産能力が約520 万トンではあるものの、2000 年以降は実生産量が 300 ~400 万トン、稼働率が 55~65%で推移していた。2015 年以降は 300 万トンを割ってし まった。2009~2016 年韓国の化学肥料生産量は表 2 に示す。注意すべき点は韓国では尿素、 硫安、硫酸加里がすべて肥料として統計されるが、その一部が工業原料として使用される こともある。2013 年以降、工業用数量が急減したのは 2012 年三星精密化学が所有のアン モニアと尿素プラントを廃棄し、肥料産業から完全に撤退したことで、工業用に供した国 内産尿素がなくなったためである。 表2. 2009~2016 年韓国の肥料生産量(トン) 年 度 農業用 原料用* 輸出用 工業用 合 計 2009 年 1,174,475 348,287 1,402,905 188,119 3,113,786 2010 年 1,139,662 435,206 1,528,892 199,727 3,303,487 2011 年 1,126,887 459,858 1,561,569 166,803 3,315,117 2012 年 1,265,010 535,500 1,360,501 100,136 3,261,147 2013 年 1,273,523 643,266 1,278,773 55,315 3,250,877 2014 年 1,200,989 784,979 1,001,846 60,130 3,047,944 2015 年 1,183,573 725,427 692,729 51,129 2,652,858 2016 年 1,003,287 791,104 864,736 51,234 2,710,361 *:原料用とは配合肥料、BB 肥料として使用されるもので、生産された製品は農業用に再度計 上される。(データ出所:韓国肥料年鑑) 韓国の肥料消費特徴は日本と同様に単肥の使用が少なく、化成肥料が主流である。但し、 日本と違って、韓国農協は専属のBB 配合肥料工場がなく、すべて肥料メーカーに任せるた め、BB 肥料の使用量が少ない。また、窒素、りん酸、加里のバランスがよく、大体 1:0.7:
0.7 を保っている。これは野菜など園芸作物の栽培が盛んで、りん酸と加里の需要が多いわ けである。 韓国は肥料資源がなく、すべて外国からの輸入に依存している。元々三星精密化学(2015 年にロッテグループに買収された)はアンモニアと尿素工場を所有し、天然ガスを原料に してアンモニアと尿素を生産していたが、天然ガスの国際価格上昇により採算が取れない ため、2012 年にアンモニアと尿素の生産ラインを完全に停止した。現在、韓国は粗りん酸 と過りん酸石灰、熔りん、硫酸加里、硫安、化成肥料だけを生産し、尿素、りん安、塩化 加里はすべて輸入に依存する。2009~2016 年の韓国化学肥料輸入量は表 3 に示す。 表3. 2009~2016 年韓国主な肥料原料と化学肥料輸入量(トン) アンモニア 尿素 りん鉱石 りん酸 りん安 塩化加里 2009 年 1,062,006 498,257 426,861 92,251 49,396 345,255 2010 年 1,239,992 540,261 896,147 99,975 45,721 541,576 2011 年 1,222,014 598,597 844,436 83,575 34,026 593,797 2012 年 1,236,844 737,895 602,940 73,957 55,281 496,404 2013 年 1,225,682 740,838 448,657 86,103 67,610 488,210 2014 年 1,163,064 709,297 527,708 93,586 137,288 567,706 2015 年 1,023,369 708,644 560,769 94,524 102,737 535,131 2016 年 1,163,110 819,077 601,087 84,086 91,124 543,172 データ出所:韓国税関の通関統計 2016 年現在、化学肥料と原料の主な輸入元は、アンモニアがサウジアラビア、インドネ シアとオーストラリア、尿素が中東と中国、りん鉱石が中国、モロッコとトーゴ、りん酸 が中国、塩化加里がカナダとベラルーシである。なお、輸入されたものは全量肥料用では なく、アンモニアの半分、尿素、りん酸と塩化加里の約1/3 が工業原料として使われている。 一方、少品種大量生産で生じたコスト競争力と高品質を生かして、1980 年代から化学肥 料の輸出を始めた。最盛期には生産量の45~50%が輸出向けのものである。主な輸出品目 は化成肥料と硫安で、主な輸出先はオーストラリアと東南アジア諸国である。但し、中国 という強力なライバルの出現で化成肥料の輸出量が急減した。また、鉄鋼産業と化学繊維 産業も中国の競争で稼働率が落ちたため、副産硫安の産出量と輸出量も大幅に減少した。 これからは化学肥料の輸出を通して国内設備の稼働率を維持する目論見が外される可能性 が高い。2010~2016 年の化成肥料と硫安の輸出量は表 4 に示す。 長い目で見ると、韓国の肥料メーカーは農産物の市場開放と国内産業構造の変化に柔軟 に対応し、うまく転換され、農業分野以外の高付加価値産業分野への進出を加速する一方、 国内需要の萎縮をカバーするため、大規模生産と低コストの利点を生かして、積極的に輸 出を拡大し、新たな市場需要を創出していくことに成功したともいえる。
表4. 2010~2016 年韓国の硫安と化成肥料輸出数量(トン) 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 硫安 727,134 742,105 711,012 732,693 367,258 149,748 326,711 化成肥料 323,871 288,730 228,962 144,056 259,201 230,238 175,276 データ出所:韓国税関の通関統計 三、韓国化学肥料産業の特徴 韓国化学肥料産業は1960 年代から始まったものの、すでに日本を追い付き、追い越した。 日本農業法人協会が2016 年 8 月に発表した調査報告によれば、日本と韓国で販売されてい る9 種類の肥料(配合が同等もしくは近い肥料を選定)の末端販売価格の比較を行ったと ころ、韓国の価格は、平均で日本の半分程度であったという衝撃的な内容である。韓国肥 料産業は高品質低コストで化学肥料を生産・販売することができるのは次の特徴がある。 1. 大規模工場 1960 年代、韓国は食糧の安定供給を国策として、国主導で大規模な化学肥料工場を建設 し、当時の最新技術と最新鋭設備を導入した。その後、大体1 企業 1 工場の形で専門の肥 料メーカー7 社(現在 6 社)に集約され、各工場の生産能力が 20 万トン以上の規模を有す る。従って、生産効率が極めて高い。 2. 工場立地の良さ 化学肥料工場を建設する際に、原料の輸入を前提にすべて海辺に立地する。また、大型 専用バースを持つ工場も少なくない。陸送がほとんどないため、原料輸入コストと国内輸 送コストが最小限に抑えられる。また、化学肥料の輸出にもその恩恵を受け、価格競争に 有利の地位を確保する。図3 は韓国主力肥料工場の所在地を示す地図である。 図3. 韓国肥料メーカーの主力工場立地図
3. ケミカル造粒法の採用 韓国の化成肥料は主にケミカル造粒法を採用する。すなわち、日本メーカーがよく採用 している各種粉状の肥料原料を単純に混合して造粒する方法と異なり、まず、アンモニア、 硝酸、硫酸、粗りん酸のような液体原料に塩化加里などを加え、化学反応を起こして、硫 酸加里、硫安、硝安、りん安を含むスラリーを生成してからそのスラリーを原料にして化 成肥料に造粒する方法である。ケミカル造粒法は概して原料コストが安く、生産効率が良 く、大量生産に適する。 4. 少品目大量生産 韓国における肥料登録銘柄数が約5,700 あるが、有機質肥料と堆肥を除き、化成肥料に 限って登録銘柄数が約350 しかない。日本のような地域の独自銘柄はなかった。また、各 メーカーの化成肥料登録銘柄数は数10~100 ぐらいがあるものの、実際に 10~20 銘柄し か製造しないメーカーがほとんどである。銘柄ごとの生産量が数100~数 1,000 トンで、少 数品目の大量生産を実施するなど、製造ラインの切り替えで発生した無駄な時間が省き、 生産効率が極めて高い。 5. 販売ルートの 1 本化と入札制度 韓国の肥料販売は韓国農協に集約され、化学肥料の国内消費量の 90%以上が農協ルート で販売されている。メーカーごとの卸・特約店がなく、多段階輸送も少なく、流通構造が 極めてシンプルである。通常、各地農協が農家から肥料の予約注文を取りまとめ、農協中 央会がその銘柄と数量を公表して、公開入札を行い、応札価格の順でメーカーに発注する。 従って、競争原理が働いて、メーカーにとって受注できるために製造方法の改良と生産効 率の向上を通して生産コストの削減が最重要な課題である。 6. 肥料保証成分制度の緩さ 韓国の肥料取締法律では、化成肥料の保証成分の一部が保証値を若干下回っていても、 NPK 三成分の合計値が保証値を超えていれば、法律違反ではないとされている。従って、 化成肥料の処方を設計する際にすべての保証成分を余分に入れる必要がなく、原料コスト が抑えられ、保証成分未達により返品される恐れもなくなる。 四、 主な肥料メーカーとその生産能力 2017 年現在、韓国の化学肥料メーカーが 6 社で、カプロラクタム副産硫安メーカー1 社 を加えて7 社しかない。この 7 社は韓国化学肥料の 100%、有機肥料を含む肥料全体の 90% 以上を生産している。ほかに農畜産廃棄物などを原料にして堆肥など有機肥料を製造する 零細業者が10 数社あるものの、主に近隣の農家に供給して、農協販売ルートに入っていな
い。表5 はこの 7 社メーカーの生産能力、表 6 は 2009~2016 年各メーカーの国内出荷量、 図3 は 2016 年各社の国内出荷量と市場シェアを示す。 表5. 韓国主要化学肥料メーカーの生産能力(万トン/年) メーカー名 南 海 化 学 東 部 韓 農 KG ケ ミ カル 豊農 朝肥 協和 カプロ 化成肥料 136 48 25 41 19.3 20 配合肥料 20 BB 肥料 10 10 8 硫安 74 熔りん 10.8 硫酸加里 4.5 けい酸質肥料 25 70 有機質肥料 5 5 5 りん酸 34 12 硝酸 13 硫酸 129 40 データ出所:各メーカーのHP 表6. 2009~2016 年各肥料メーカーの国内出荷量(トン) 年度 南海化 学 ファー ム韓農 KG ケミ カル 豊農 朝肥 協和 カプロ 三星精 密化学* 2009 382,906 264,361 138,496 215,693 71,510 50,521 12,486 38,502 2010 462,028 208,764 118,693 206,277 61,426 49,625 10,870 21,979 2011 474,667 112,941 126,916 218,815 50,515 108,701 10,871 23,461 2012 516,591 204,024 123,110 186,849 55,756 102,359 10,724 65,588 2013 551,577 265,326 99,808 216,287 64,147 66,425 9,953 2014 451,321 264,345 98,888 227,583 68,690 80,975 9,187 2015 429,090 263,514 93,640 224,106 72,688 92,981 7,554 2016 465,906 175,643 101,905 225,256 59,918 69,397 7,167 *三星精密化学は2012 年肥料事業から撤退した。 データ出所:韓国農協中央会 以下は韓国化学肥料メーカーを簡単に紹介する。 1. 南海化学株式会社(Namhae Chemical Corporation)
南海化学は韓国政府の重化学工業育成方針に従って、1974 年に設立された肥料と農薬の 専業メーカーである。本社と工場所在地は全羅南道麗水市(Yeosu-si, Jeollanam-do, Korea)、 上場会社であるが、韓国農協中央会が56%の株式を所有する。 図4. 2016 年各メーカーの国内出荷量とシェア (データ出所:韓国農協中央会) 所有の麗水工場はアメリカの資金と技術を導入して、1974 年に完成したもので、敷地面 積163 ヘクタール、敷地には化成肥料 2 工場、粗りん酸 1 工場、硫酸 1 工場が設けられ、 化成肥料生産能力136 万トン、10 万トン規模の船舶を接岸できる専用ふ頭を有し、単一工 場としてはアジア最大規模の化成肥料工場である。 韓国最大の化学肥料メーカーで、国内シェア45~50%、年間 50~60 万トン肥料を輸出 する。図5 は麗水工場外観、図 6 は麗水工場専用バースの写真である。 図5. 南海化学麗水工場 図 6. 南海化学麗水工場の専用バース
2. 株式会社豊農(Pungnong Corporation) 1962 年豊農肥料工業株式会社として設立され、輸入肥料の販売を始めた。1968 年に長 項熔りん工場が完成し、肥料製造に参入した。1970 年代後半から化成肥料事業にも手掛け、 1979 年化成肥料工場、1989 年化成肥料第 2 工場、1999 年化成肥料第 3 工場を長項工場内 に建設した。その後、さらに事業内容を広げ、高炉スラグを原料とするけい酸質肥料、BB 肥料、有機質肥料なども製造することになり、専業肥料メーカーとして南海化学に次ぐ地 位を得た。 本社はソウル市、工場は忠清南道舒川郡長項邑にある。工場敷地面積19.8 ヘクタール、敷 地には熔りん工場とけい酸質肥料工場、化成肥料工場、BB 配合設備を設けている。生産能 力は熔りん10.8 万トン、化成肥料 41 万トン、有機質肥料 5 万トン、けい酸質肥料 25 万ト ン、BB 肥料 10 万トンである。図 7 は長項工場の写真である。 図7. 豊農長項工場
3. ファーム韓農株式会社(Farm Hannong Corporation)
1964 年韓国政府は国内肥料の需要を自給できる大型複合肥料工場を蔚山に建設すること を決定し、選定した忠州(チュンジュ)肥料(株)と米国のSwift Company および Skelly Oil Company から構成された投資団との連携により嶺南化学を設立した。
1967 年 3 月に年間 264,700 トン(尿素 84,100 トン、化成肥料 180,600 トン)規模の 当時では韓国最大の肥料工場を完成した。1976 年、化成肥料生産能力 177,400 トン/年の 新工場を竣工し、総生産能力化成肥料48 万トン、りん酸 12 万トン、硝酸 13 万トン、硫酸 40 万トンの大手化学肥料工場に成長した。
1997 年、国内最大の農薬製造販売会社である東部韓農化学と合併し、ゼネコンの東部グ ループに入り、肥料、農薬、種子等主要営農資材を生産・販売する韓国最大の総合営農資 材の生産販売会社に変身し、2010 年 6 月に社名を東部韓農に変更した。その後、化学肥 料の不振とグループ事業の再編で、2016 年 3 月に LG 化学に売却され、その名もファーム 韓農株式会社に変更した。 本社はソウル市、化学肥料工場は蔚山広域市にあり、工場敷地面積215 ヘクタール。工 場敷地内に化成肥料2 工場、粗りん酸 1 工場、硝酸 1 工場、硫酸 1 工場が設けられる。済 州島には有機質肥料専門の工場がある。ほかに農薬工場 3 ヶ所、育種センターなども所有 している。 4. KG ケミカル株式会社(KG Chemical Corporation) 1965 年熔りんを製造するために日本の ODA 援助により京畿化学を設立した。1966 年熔 りん生産能力5 万トンの富川工場を完成した。1973 年三菱商事の資本を受け入れ、富川市 に生産能力7.5 万トンの過りん酸石灰工場と造粒能力 12 万トンの化成肥料造粒工場を増設 した。 1985 年蔚山に化成肥料工場を建設した。また、1990 年代に富川工場、蔚山工場内に配合 肥料生産ラインの増設、済州と瑞山に配合肥料工場を建設するなど規模を拡大した。2003 年社名をKG ケミカルに変更した。 本社は京畿道富川市にあり、5 工場を有する。京畿道富川市にある富川工場は敷地面積 21.8 ヘクタール、化成肥料 15 万トン、配合肥料 5 万トン、水酸化マグネシウム 2 万トンの 生産能力を有する。蔚山工場は蔚山広域市の蔚山工業団地にあり、化成肥料10 万トン、配 合肥料5 万トン、硫酸加里 4.5 万トンの生産能力を有する。仁川工場、済州工場と瑞山工場 はそれぞれ配合肥料5 万トンの生産能力を有する。図 8 は富川工場、図 9 は蔚山工場の写 真である。 図8. KG ケミカル富川工場 図 9. KG ケミカル蔚山工場 5. 株式会社朝肥(Chobi Corporation)
ほかの肥料メーカーと異なり、朝肥は1955 年朝鮮肥料工業として設立され、有機質肥料 の製造販売から始まった民間会社である。1968 年蔚山肥料工場を完成し、化成肥料の生産 も手掛けする。1990 年社名を朝肥に変更した。また、1991 年忠清北道永同郡に有機質肥料 工場、1999 年慶尚北道安東市にBB 肥料工場を完成した。 本社はソウル市、主力工場は蔚山広域市の蔚山工業団地にある。工場敷地面積7.4 ヘクタ ール、化成肥料生産能力19.3 万トンである。安東工場の BB 肥料生産能力 10 万トンであ る。 6. 株式会社協和(Hyuphwa Corporation) 1972 年韓国協和化学工業として設立された民間会社で、大手化学肥料メーカーの最後発 である。1974 年けい酸質肥料工場を完成し、浦項総合製鉄(現ポスコ)の高炉スラグを原 料として 70 万トンけい酸質肥料の生産能力を有する。また、2001 年に化成肥料工場を竣 工し、BB 肥料設備も導入して、化学肥料メーカー入りを果たした。 本社はソウル市、工場は慶尚北道浦項市にあり、工場敷地面積6.9 ヘクタール、年間生産 能力けい酸質肥料70 万トン、化成肥料 20 万トン、有機質肥料 5 万トン、BB 肥料 8 万ト ンである。 7. 株式会社 Capro(Capro Corporation) Capro 社は韓国政府の第 2 次経済開発 5 か年計画に選定されたカプロラクタム事業の受 皿会社として、1969 年に韓国総合化学工業株式会社の全額出資により設立された。1974 年蔚山石油化学団地内にカプロラクタム3.3 万トン、副産硫安 14.2 万トンの工場を竣工し た。その後、1989 年に第 2 生産ライン、2004 年に第 3 生産ラインを完成し、現在カプロ ラクタム生産能力27 万トン、副産硫安 74 万トンのメーカーに成長した。但し、近年、中 国産カプロラクタムの低価格攻勢を受け、第1 工場と第 2 工場は生産ラインの停止が続き、 硫安の生産量が30 万トン台まで低下した。 本社はソウル市、工場は蔚山広域市にある。工場敷地面積27.4 ヘクタール、生産された 硫安の90%以上が輸出される。 上記の7 社のほか、旧三星精密化学株式会社も併せて紹介する。 韓国政府の第1 次経済開発 5 か年計画の一環として、1964 年韓国肥料株式会社が設立さ れ、1967 年蔚山にアンモニア生産能力 19.5 万トン、尿素 33 万トンの工場を完成した。製 品は肥料のほか化学工業にも供給する。その後サムソングループに買収され、三星精密化 学株式会社に改名され、精密化学薬品の製造にも進出して、総合化学メーカーに成長した。 しかし、原料天然ガスの価格高騰により競争力が失い、中東、東南アジア産廉価尿素の大 量輸入もあり、2012 年にアンモニアと尿素生産ラインを完全に停止し、設備も廃棄された。 これにより韓国国内のアンモニアと尿素生産が完全になくなった。
2015 年末サムソンのケミカル部門と一緒にロッテグループに売却され、ロッテ精密化学 に改名された。