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密教研究 Vol. 1940 No. 72 002竹内 道説「現代に於ける宗教教育の動向 P31-47」

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Academic year: 2021

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相 當 大 き な 問 題 で あ り ま す か ら 、 先 づ 現 代 と い ふ 範 園 を 昭 和 以 後 に 限 定 い た し ま す 。 そ し て 宗 教 々 育 と い ふ こ と も 學 者 や 實 際 家 又 は 宗 教 家 や 教 育 者 に 依 つ て 色 々 な 意 味 が 含 ま せ ら れ て 居 ま す が 、 そ う い ふ こ と を 一 々 申 上 げ て は 居 ら れ ま せ ぬ か ら 、 こ 瓦 に は 、 私 自 身 が 色 々 段 階 的 に 試 み ま し た も の ゝ 結 論 的 な も の 丈 を 一 寸 申 上 げ て 置 き ま す 。 私 は 宗 教 々 育 は 眞 實 に 生 き る こ と で あ る と 考 へ た り 味 は つ た り し て 居 ま す 。 そ れ は 又 私 自 身 宗 教 と い ふ も の を 眞 實 に 生 き る こ と で あ る と 考 へ て 居 る か ら で あ り ま す 。 宗 教 も 眞 實 に 生 き る こ と 、 宗 教 汝 育 も 眞 實 に 生 き る こ と 、 と 申 し ま す と 甚 だ 妙 に お 考 へ の 方 も あ る か も 知 れ ま せ ぬ が 、 教 育 と い ふ こ と を 一 の 手 段 的 に 考 へ ま し た な ら ば 、 樹 機 を し て 眞 實 に 生 き さ せ る こ と で あ り ま す が 、 目 的 の 大 地 に 立 ち ま す と 、 結 局 や は り 教 育 を す る と い ふ こ と は 生 き る こ と に な る の で あ り ま す 。 ペ ス タ 質 ッ チ ー の ﹁ 生 活 が 陶 冶 す る ﹂ と い ふ 考 方 以 上 の 趣 が あ る と 私 自 身 は 味 は つ て 居 り ま す 。 そ れ か ら も う 二 つ 私 達 が 注 意 を 梯 は ね ば な り ま せ ぬ こ と は 宗 教 汝 育 と 宗 教 的 情 操 の 陶 冶 と を 混 同 し な い こ と で あ り ま ず 。 宗 教 學 は 宗 教 々 育 だ と い ひ 、 教 育 家 は 宗 教 的 情 操 の 陶 冶 だ と い ひ ま す 。 そ れ は そ れ で よ い の で す が 、 往 々 宗 教 家 の 側 に 於 て 、 學 校 に 於 け る 宗 教 的 情 操 の 陶 冶 を 自 分 達 の 考 へ て 居 る 即 ち 宗 派 的 な 宗 教 々 育 と 同 一 観 す る 傾 向 が あ り ま す 。 こ れ は い け な い 事 で あ り ま す 。 勿 論 私 の 主 張 し ま す 宗 教 々 育 の 中 に は 二 者 が 共 に 含 ま れ て 居 ま す け れ ど も 、 宗 教 と .教 育 と を 相 封 的 に 見 る 限 り 、 學 校 に 於 け る 宗 教 的 情 操 の 陶 冶 が 即 宗 教 々 育 で あ る と 思 つ て は な り ま せ ぬ 。 そ の 理 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 二

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 二 由 は お 話 し て 居 ま す 内 に 段 々 明 瞭 に な つ て 來 る と 思 ぴ ま す 。 さ て こ 鼠 に い ふ 現 代 と は 昭 和 以 後 を さ す の で あ り ま す 。 二 、 昭 和 以 後 に 於 け る 宗 教 女 育 の 動 向 昭 和 三 年 六 月 日 本 宗 教 大 會 が 開 催 さ れ ま し て そ の 教 育 部 會 に 於 て 左 の 各 項 が 議 決 さ れ ま し た 。 1 丈 部 省 訓 令 第 十 二 號 の 適 用 を 左 記 の 精 神 に 改 正 せ ら れ ん こ と 。 ー 一 般 の 教 育 者 を し て 特 定 宗 教 の 信 仰 に あ ら し め ざ る は 、 學 政 上 必 要 と す 。 依 て 官 公 立 學 校 及 び 學 科 の 課 程 に 關 し 法 令 の 規 定 あ る 畢 校 に 於 て は 宗 教 上 の 儀 式 を 行 は ん と す る 時 は 、 丈 部 大 臣 の 許 可 を 受 く べ し 。 理 由-文 部 省 訓 令 第 十 二 號 は 宗 教 を 拒 否 し 、 又 は 之 を 敵 覗 す る も の に あ ら す し て 、 た 貸 軍 に 浩 極 的 に 弊 害 の 獲 生 を 恐 る よ が 故 に 獲 令 し た る も の な り 。 宗 教 々 育 が 如 何 に 全 人 教 育 上 緊 要 な る か は 論 を 倹 た す 。 宜 し く 教 育 全 罷 を 通 じ て 宗 教 の 教 養 に 努 む べ き な り 。 然 る に 丈 部 省 訓 令 第 十 二 號 は 往 々 に し て 前 述 の 如 き 誤 解 を 生 じ 、 宗 教 々 育 上 多 大 の 支 障 を 來 す 。 故 に 其 の 適 用 に 於 て 十 分 な る 改 正 を 計 る こ と を 必 要 と す 。 2 師 範 教 育 に 於 て 宗 教 課 を 特 設 す る こ と 。-教 育 の 深 淺 は 、 實 に 教 師 其 入 の 如 何 に あ る は 言 を 侯 た ざ る 所 な ゆ 。 況 や 宗 教 々 育 の 如 き 特 に 微 妙 深 遠 な る 精 神 丈 化 に 於 て お や 。 故 に 師 範 學 校 に 於 て 、 人 格 教 育 上 の 最 も 根 本 に し て 中 心 た る べ き {示 教 に 關 す る 理 解 を 得 し め 、 更 に 信 念 を 培 養 す る の 要 あ り 。 3 教 育 者 の 宗 教 的 信 念 養 成 の 爲 め 、 講 習 會 開 催 漿 働 の 件 。 ( 説 明 省 略 ) 4 各 教 科 書 に 、 宗 教 汝 材 を 塘 加 す る こ と 。 ( 読 明 省 略 ) 5 國 定 教 科 書 編 纂 委 員 に 、 宗 教 家 を 加 ふ る こ と 。 ( 説 明 省 略 ) 6 丈 部 省 に 、 宗 教 々 育 調 査 會 を 設 置 す る こ と 。-我 が 國 に 於 け る 宗 教 々 育 に 關 す る 研 究 及 び 調 査 の 不 備 な る は 、

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實 に 朝 野 共 に 遺 憾 と す る 所 な り 。 故 に 文 教 の 府 た る 丈 部 省 に 於 て 、 先 づ 宗 教 汝 育 に 關 す る 調 査 會 を 設 置 し 、 大 に 奨 働 研 究 促 進 の 實 を 墨 ぐ る の 要 あ り 。 云 汝 。 そ し て こ の 決 議 は そ の ま 玉 文 部 省 へ 建 議 さ れ ま し た 。 こ の 建 議 の 直 接 の 結 果 か ど う か は わ か り ま せ ぬ が 、 こ の 頃 か ら 、 勿 論 こ の 年 に 開 か れ た 全 國 の 學 務 部 長 會 議 の 決 果 か ら で も あ り ま せ う が 、 學 校 に 於 け る 宗 教 々 育 物 問 題 が 非 常 に 眞 剣 に 考 へ ら れ る や う に な り 、 例 の 訓 令 十 二 號 の 蓮 用 も 絵 程 融 通 性 を 帯 び て 來 た や う に 思 ひ ま す 。 し か し 右 の 建 議 は お 讃 み に な れ ば 解 る や う に 至 極 穏 健 な も の で あ り ま す が 、 こ れ が 決 定 さ れ ま す 迄 は 相 當 激 論 が 職 は さ れ ま し た 。 學 校 教 育 か ら 宗 教 を 除 外 す る な ど 玉 い ふ こ と は 丈 明 國 の 恥 辱 で あ る と い ふ 読 や 、 宗 教 的 に 成 立 つ て 居 る 我 が 國 の 國 民 教 育 に 宗 教 を 禁 す る な ど 呉 い ふ こ と は 徒 ら に フ ラ ン ス の 眞 似 を し た も の で あ る 。 最 早 模 倣 の 時 代 で は な い か ら 、 よ ろ し く 徹 騒 す べ し だ 、 な ど と い ふ 論 が 出 ま し た 。 從 つ て 大 鷺 の 室 氣 は 文 部 省 に 封 し て 、 訓 令 十 二 號 の 改 正 、 若 く は 徹 塵 を 迫 る と い つ た や う な も の で あ り ま し た が 、 種 々 談 じ 合 ひ 調 べ 合 つ て 居 り ま す 内 に 、 訓 令 十 二 號 を 獲 す る 時 の 精 神 が よ く 判 つ て 來 ま し た の で す 。 其 は つ ま り 明 治 三 十 二 年 頃 は 今 か ら い へ ば 基 督 教 の 人 々 に は お 氣 の 毒 で す が 、 基 督 教 が 西 洋 丈 明 を 背 景 と し て 、 時 に は 政 治 的 な 意 味 を も つ て 居 る の で は な い か と 思 は れ る 程 に 、 我 が 國 の 教 育 上 に 於 て 反 國 家 的 又 は 非 國 家 的 な 行 動 を と つ た も の で す か ら 、 之 を 防 止 せ ん が 爲 に 、 と い つ て 特 に 基 督 教 を 指 す 事 も で き な い か ら 、 一 般 的 に 宗 教 々 育 と い つ て た の で あ つ て 、 眞 實 は 宗 派 教 育 を 禁 じ た も の で あ つ た の だ そ う で あ り ま す 。 そ こ で 硬 論 も 柔 ら い で 自 然 に 右 の や う な も の に 決 定 さ れ た の で あ り ま す 。 私 自 身 は そ の 最 初 か ら 訓 令 十 二 號 が あ る が 故 に 我 が 國 の 教 育 は 手 安 に 行 は れ て 行 く の だ と 考 へ て 居 り ま し た か ら 、 ど う か し て そ の ま N で あ つ て 欲 し い と 希 つ て 居 ま し た 。 非 常 に 一 方 に 偏 し た 狡 い 考 へ 方 で あ り ま す け れ ど も 、 佛 教 の 立 場 か ら 考 へ て 見 ま す と 、 ど う 考 へ ま し 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 三

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 四 て も 、 教 育 的 な 施 設 に 於 て も 経 瞼 に 於 て も 、 技 禰 に 於 て も 、 教 材 に 於 て も 、 基 督 教 に は 一 歩 も 二 歩 も 後 れ て 居 る や う に 思 は れ ま す の で も し あ の 訓 令 が 徹 塵 さ れ で も し た ら 、 や は り 直 に 数 果 を 墨 げ る も の は 基 督 教 で あ つ て 、 佛 教 は 以 前 よ り も 一 暦 後 れ て 終 ふ と 心 配 で な り ま せ ん で し た 。 斯 う い ふ 消 極 的 な ヒ ス テ リ ッ ク な 考 は 、 少 く と も 教 育 に 携 は る 者 は も つ て は な ら な い の で あ り ま す が 、 事 實 さ う 考 へ ま し た こ と を 繊 一悔 す る つ も り で こ 玉 に 申 上 げ 、ま し た 次 第 で あ り ま す 。 横 道 に 入 つ て 恐 縮 に 堪 へ ま せ ぬ 。 そ れ か ら 、 昭 和 四 年 の 六 月 に は 、 全 國 高 等 女 學 校 長 會 議 が 開 か れ ま し た が 、 こ の 會 議 に 於 て 、 思 想 善 導 宗 教 心 啓 獲 に 關 す る 丈 部 省 の 諮 問 案 に 封 す る 答 申 中 、 宗 教 心 啓 獲 に 就 て 次 の や う に 決 議 さ れ ま し た 。 一 、 宗 教 心 啓 護 の 妨 害 と な る も の を 取 除 く こ と 。 一 、 宗 教 的 信 仰 に 入 ら ん と す る も の に 親 切 な る 指 導 を 與 ふ る こ と 。 一 、 偉 人 の 心 境 に 隅 れ し む る こ と 。 一 、 人 道 主 義 の 宗 教 に 基 き 適 當 の 指 導 を 與 ふ る こ と 。 一 、 誹 令 十 二 號 に 饗 す る 態 度 -宗 一 涙 に 偏 せ ざ る 宗 教 の 講 演 は 、 宗 教 々 育 と 見 倣 さ ゆ る こ と 。 (筆 者 註-こ ゝ に い ふ 宗 教 々 育 と は 訓 令 十 二 號 に 禁 ぜ ら れ て 居 る も の を い ふ ) 術 ぼ 昭 和 七 年 に は 日 本 宗 教 協 會 の 幹 部 十 籔 名 は 丈 部 省 首 脳 部 ( 大 臣 、 爾 次 官 、 各 局 長 及 督 塵 官 ) と 宗 教 々 育 に 關 す る 懇 談 會 を 開 い て 宗 教 々 育 の 具 膿 案 を 獲 表 し ま し た 。 し か し こ の 具 禮 案 の 紹 介 は こ N に は 略 し ま す 。 む と こ ろ が 、 昭 和 七 年 五 月 に 開 か れ ま し た 全 國 中 學 校 長 會 議 に 於 て ﹁ 訓 育 の 徹 底 を 期 せ ん が 爲 め 、 宗 教 的 惰 操 の 洒 養 を 必 要 な り と 認 む 。 ﹂ と い ふ 決 議 を い た し ま し た 、 こ 鼠 で 一 寸 後 を 振 り 返 つ て 見 ま す 乏 、 小 學 校 も 男 女 の 中 等 學 校 も 皆 宗 教 々 育 の 必 要 を 認 め る や う に な つ た と い ふ こ と が わ か り ま す で せ う 。 と こ ろ が 、 斯 う い ふ 風 に な つ て 來 ま す と 、 宗 教 家 の 方 が 積 極 的 に な り 勝 で あ り ま す 爲 に 、 學 校 の 方 へ 進 出 し す ぎ て

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所 々 で 種 々 な 問 題 が 起 き た や う に 風 聞 し て 居 ま す 。 つ ま り 學 校 側 に 於 て 訓 令 十 二 號 を ど の 程 度 に 運 用 し て よ い の か 不 明 で あ つ た り 、 何 と い つ て も あ の 訓 令 十 二 號 が 嚴 然 と し て 存 す る 以 上 は そ の 通 り に や つ て 行 く べ き だ と い ふ 考 の 人 も あ る 繹 で あ り ま す か ら 、 仲 々 容 易 で は あ り ま せ ぬ 。 斯 う い ふ 黙 に 樹 し て 有 力 な 示 唆 は 昭 和 八 年 一 月 十 二 日 付 丈 部 省 宗 教 局 と 普 通 學 務 局 長 の 蓮 名 に 依 つ て 三 重 縣 知 事 宛 に 獲 せ ら れ た 左 の 申 達 で あ り ま す 。 小 學 校 の 設 備 使 用 に 關 し 、 通 牒 を 獲 し た る 件 に 付 、 十 一 月 二 十 二 日 付 教 第 三 五 七 號 を 以 て 御 回 答 相 成 た る 慮 、 明 治 三 十 二 年 文 部 省 訓 令 第 十 二 號 は 當 該 學 に 於 て 、 特 定 の 教 派 宗 派 教 會 等 の 教 義 を 教 へ 、 叉 は 儀 式 を 行 ふ を 禁 止 す る の 趣 旨 に し て 、 通 宗 教 的 情 操 を 陶 冶 す る こ と は 毫 も 拘 束 す る 所 に 無 之 、 右 に 付 て は 昭 和 三 年 本 省 に 於 て 學 務 部 長 會 議 の 際 、 諸 學 校 に 於 け る 道 徳 教 育 の 徹 底 を 期 す る に は 、 宗 教 的 の 信 念 又 は 情 操 の 洒 養 を 計 る の 必 要 な る こ と に 關 し 、 指 示 の 次 第 も 有 之 候 に 付 、 右 御 了 知 の 上 特 定 の 教 派 宗 派 教 會 等 の 教 義 を 教 へ 、 又 は 儀 式 を 執 行 す る も の に あ ら ざ る 限 り 、 訓 令 の 解 繹 は 可 成 嚴 格 に 亘 ら ざ る 檬 致 度 、 爾 小 學 校 令 註 第 三 十 條 但 書 に 依 り 、 校 地 校 舎 等 を 使 用 せ し む る 場 合 は 、 公 釜 上 の 必 要 に 基 く に 於 て は 、 當 該 學 校 の 教 育 上 支 障 な き 限 り 、 宗 教 に 關 す る 會 合 に 使 用 す る も 差 支 無 之 儀 に 付 、 御 了 知 相 成 度 、 爲 念 此 段 申 達 す 。 註 、 (小 學 校 令 第 二 十 條 、 校 舎 、 校 地 、 校 具 、 及 禮 操 場 ハ 非 常 攣 災 ノ 場 合 ヲ 除 ク ノ 外 小 學 校 ノ 目 的 以 外 二 之 ヲ 使 用 ス ル コ ト ヲ 得 ス 。 但 シ 教 育 、 兵 事 、 琵 業 、 衛 生 、 慈 善 等 ノ 目 的 ノ 爲 特 別 ノ 必 要 ア ル ト キ ハ 此 ノ 限 二 在 ラ ス 。 ) こ の 申 達 が 獲 せ ら れ ま し て か ら は 宗 教 家 も 一 宗 派 に 偏 し な い 限 り 當 該 學 校 の 都 合 に よ つ て 公 然 と 校 舎 や 校 庭 を 使 用 す る こ と が で き る や う に な つ た 課 で す 。 そ れ で も 宗 教 家 の 進 出 を 感 情 的 に 好 ま な い 人 々 や 、 や は り 訓 令 等 を 丈 字 通 り に 解 縄 し な く て は 氣 の す ま な い 人 汝 は 、 あ の 申 達 は 直 接 三 重 縣 知 事 へ 宛 て ら れ た も の で あ る か ら 、 そ の 他 の 縣 に は 關 現 代 に 於 け る 奉 教 々 育 の 動 向 三 五

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 六 係 が な い な ど 主 張 し ま し た の で 、 仲 々 面 倒 で あ り ま し た が 、 し か し 私 共 の 方 で は た と へ 三 重 縣 知 事 へ 宛 て ら れ た も の で あ つ て も 其 が 公 の も の で あ る 以 上 は 全 國 的 な も の と 考 ふ べ き で あ る と い ふ 見 解 か ら 、 そ の 地 方 の 事 情 の 許 す か ぎ り に 於 て 佛 教 一 般 と い ふ 立 場 か ら 佛 教 の 年 中 行 事 を 學 校 に 於 て 行 ふ 機 會 を 多 く も つ や う に 努 力 し た も の で あ り ま す 。 小 學 校 長 な ど 鼠 懇 談 を し ま す と 、 ﹃ 常 に や つ て 頂 き た い と は 思 ひ ま す け れ ど も 、 佛 教 の 方 丈 に や つ て 頂 き ま す と ま た 他 の 方 か ら 文 句 が 出 ま す の で 、 私 達 も 實 は 困 つ て 居 る や う な 次 第 で す ﹄ な ど 玉 聞 か さ れ た も の で あ り ま す 。 中 に は 、 ﹃ 教 室 な り 講 堂 な り は 御 使 用 下 さ い 、 し か し 私 自 身 は ほ ん と う は 出 席 し `た い の で す が 、 遠 慮 さ せ て 頂 き ま す ﹄ な ど 玉 い ふ 校 長 先 生 も あ つ た と い ふ や う な 歌 態 が 相 當 長 く 綾 き ま し た 。 `種 々 な 困 難 は あ り ま し た け れ ど も 、 學 校 に 於 て 宗 教 々 育 を 行 ふ べ き で あ る 。 否 行 つ て 欲 し い 。 と い ふ 主 張 や 願 望 は 途 に 丈 部 省 に 於 け る 宗 教 々 育 審 議 會 の 答 申 と な り 、 途 に 昭 和 十 年 十 一 月 二 十 八 日 付 丈 部 次 官 依 命 通 牒 と な つ た の で あ り ま す 。 左 に こ の 通 牒 の 全 丈 を 掲 げ ま せ う 。 ︹護 普 二 六 〇 號 ︺ 昭 和 十 年 十 一 月 二 十 八 日 殿 文 部 次 官 學 校 二 於 ケ ル 宗 教 的 情 操 ノ 酒 養 二 關 ス ル 件 二 就 キ 今 般 地 方 長 官 二 甥 シ 別 紙 ノ 通 リ 依 命 通 牒 ヲ 護 シ タ ル ニ 付 御 了 知 相 成 度 候 (別 紙 ) 明 治 三 十 二 年 文 部 省 訓 令 ハ 當 該 學 校 二 於 三ノ 特 定 ノ 教 派 宗 派 教 會 等 ノ 教 義 ヲ 教 へ 叉 ハ 儀 式 ヲ 行 フ ヲ 禁 止 ス ル ノ 趣 皆 二 有 之 、 宗 教 的 情 操 ヲ 酒 養 シ 、 以 テ 人 格 ノ 陶 冶 二 資 ス ル ハ 固 ヨ リ 之 ヲ 妨 ク ル モ ノ ニ ア ラ ズ 、 然 ル ニ 從 來 之 ガ 蓮 用 二 關 シ 往 々 其 ノ 適 正 ヲ 歓 キ

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爲 二 教 育 上 遺 憾 ノ 貼 無 シ ト セ ザ ル ヲ 以 テ 、 今 般 此 等 學 校 二 於 ケ ル 宗 教 的 情 操 ノ 酒 養 二 關 シ 留 意 ス ベ (キ 要 領 ヲ 左 ノ 通 リ 定 メ タ リ 。 依 テ 學 校 當 六畢 者 二 凱到 シ 篤 ト 其 ノ 趣 ヒ属 ヲ 示 達 シ ー以 テ 潰 憾 鉦 恥キ ヲ 期 セ ラ レ 度 此 段 依 命 通 牒 ス 記 一 、 宗 派 的 教 育 ハ 家 庭 二 於 ヶ ル 宗 教 上 ノ 信 仰 二 基 キ テ 自 然 ノ 間 三 行 ハ ル ト 共 二 宗 教 團 禮 ノ 活 動 ニ ヨ リ 教 化 二 侯 ッ モ ノ ニ シ テ 學 校 教 育 ハ 一 切 ノ 教 派 宗 派 教 會 等 二 封 シ テ 中 立 不 偏 ノ 態 度 ヲ 保 持 ス ベ キ モ ノ ト ス 一 、 學 校 一 於 テ ハ 家 庭 及 冠 會 二 於 ケ ル 宗 派 的 教 育 二 饗 シ 左 ノ 態 度 ヲ 保 持 ス ベ キ モ ノ ト ス 碍 -、 家 庭 及 杜 會 二 於 テ 養 成 セ ラ レ タ ル 宗 教 心 ヲ 損 フ コ ト ナ ク 生 徒 ノ 内 心 ヨ リ 護 現 ス ル 宗 教 的 欲 求 二 留 意 シ 、 筍 モ 之 ヲ 輕 覗 γ 叉 ハ 輕 蔑 ス ル ガ 如 キ コ ト ナ カ ラ ソ ヲ 要 ス 2 、 正 シ キ 信 仰 ハ 之 ヲ 奪 重 ス ル ト 共 二 筍 モ 公 序 良 俗 ヲ 害 フ ガ 如 キ 迷 信 ハ 之 ヲ 打 破 ス ル ニ 九 ム ベ シ 三 、 學 校 二 於 テ 宗 派 的 教 育 ヲ 施 ス コ 手 ハ 絶 封 二 許 サ ・ ル モ 、 人 格 ノ 陶 冶 二 資 ス ル 爲 、 學 校 教 育 ヲ 通 ジ テ 宗 教 的 情 操 ノ 酒 養 ヲ 圖 ル ハ 極 メ テ 必 要 ナ リ 、 但 シ 學 校 激 育 ハ 固 ヨ リ 教 育 勅 語 ヲ 中 心 ト シ テ 行 ハ ル ベ キ モ ノ ナ ル ガ 故 二 之 二 矛 盾 ス ル ガ 如 キ 内 容 及 方 法 ヲ ロ以 テ 心び 教 二的 情 操 ヲ 酒 一蕎 ︻ス ル ガ 如 キ コ ト ア ル ベ カ ラ ズ 宗 教 的 情 操 ノ 酒 養 二 關 シ 學 校 教 育 上 特 二 留 意 ス ベ キ 事 項 大 凡 左 ノ 如 シ ー 、 修 身 、 公 民 科 ノ 教 授 二 於 テ 一 層 宗 教 的 方 面 二 留 意 λ ベ シ 2 、 哲 學 ノ 教 授 二 於 テ ハ 一 層 宗 教 二 關 ス ル 理 解 ヲ 深 メ 宗 教 的 情 操 ノ 酒 養 二 意 ヲ 用 フ ベ シ 3 、 國 史 二 於 テ ハ 宗 教 ノ 國 民 文 化 二 及 ボ シ タ ル 影 響 、 偉 人 ノ 受 ケ タ ル 宗 教 的 感 化 、 偉 大 ナ ル 宗 教 家 ノ 傳 記 等 ノ 取 扱 二 留 意 ス ベ シ 4 、 其 ノ 他 ノ 教 科 二 於 テ モ 其 ノ 教 材 ノ 性 質 二 懸 ジ 適 宜 宗 教 的 方 面 二 留 意 ス ポヘ シ 5 、 宗 教 二 關 ス ル 適 當 ナ ル 参 考 圖 書 ヲ 備 へ 生 徒 ノ 修 養 二 資 セ シ ム ル モ 亦 一 方 法 ナ ル ベ シ 6 、 追 弔 會 、 理 科 祭 、 遠 足 、 旅 行 等 二 際 シ テ ハ 之 ヲ 利 用 シ テ 宗 教 的 情 操 ノ 酒 養 二 資 ス ベ シ 7 、 授 業 二 差 支 ナ キ 限 リ 適 當 ナ ル 機 會 二 於 テ 、 高 徳 ナ ル 宗 教 家 等 ノ 修 養 談 ヲ 馳 カ シ ム ル モ 亦 ] 方 法 ナ ル ベ シ 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 七

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 八 8 、 校 内 又 ハ 校 外 二 於 ケ ル 教 員 及 ビ 生 徒 ノ 宗 教 二 關 ス ル 研 究 、 叉 ハ 修 養 ノ 機 關 二 封 シ 適 當 ナ ル 指 導 ヲ 加 へ 、 寛 容 ノ 態 度 ラ 保 持 セ シ ム ベ シ 9 、 以 上 各 項 ノ 實 施 二 際 シ テ ハ 、 一 宗 一 派 三 偏 セ サ ル ヤ ウ 特 二 注 意 ス ベ シ こ の 通 牒 が 獲 せ ら れ ま し た 爲 に 我 が 國 の 學 校 に 於 け る 宗 教 々 育 の 性 質 や 範 園 な ど が 明 瞭 に な つ た 課 で あ り ま す 。 今 迄 宗 教 々 育 な ど 玉 い ふ こ と を 口 に し な か つ た 宗 教 家 達 で さ へ 、 こ の 通 牒 を 見 て 鬼 の 首 で も 取 つ た や う に 有 頂 天 に な つ た 程 、 宗 教 家 の 側 で は 喜 ん だ も の で す 。 も う 是 で 大 丈 夫 だ 。 誰 で も 學 校 教 育 に 進 出 す る こ と か で ぎ る と 思 つ た 入 も あ り ま し た し 、 又 は つ き り と h 宗 h 派 に 偏 し て は な ら ぬ と 定 め て あ る の に 、 宗 派 を 離 れ て 宗 教 が あ る か な ど 玉 意 氣 ま い て 、 嫌 は れ た 人 達 も あ る 位 で あ り ま し た 。 し か し 私 達 は 若 し 眞 實 な 意 味 に 於 け る 宗 教 々 育 を 行 は う と 思 ひ ま す な ら ば 何 回 も く こ の 通 牒 を 讃 ん で 見 な け れ ば な り ま せ ぬ 。 お よ み に な れ ば 自 然 に お 解 り の 事 と は 思 ぴ ま す が 、 御 参 考 の 爲 に 一 通 り 私 の 見 解 を 述 べ ま せ う 。 こ の 通 牒 の 趣 旨 を 要 約 い た し ま す と 、 そ の 第 一 項 は 宗 教 團 髄 に 樹 す る 要 望 と 態 度 を 示 す も の で あ り ま す し 、 其 の 第 , 二 項 は 家 庭 及 耐 會 に 於 け る 宗 派 教 育 に 封 す る 態 度 を 示 す も の で あ り ま す し 、 其 の 第 三 項 は 學 校 に 於 け る 宗 教 的 情 操 の 洒 養 方 法 と 其 に 就 て の 注 意 と で あ り ま す 。 從 つ て 之 を 概 括 い た し ま す と 、 國 民 教 育 の 爲 に 宗 教 々 育 は 極 め て 重 要 .で あ る け れ ど も 、 學 校 に 於 て 之 を 行 ふ こ と は 困 難 で あ る か ら 、 宗 派 に よ る 宗 教 々 育 は 、 宗 教 團 髄 の 活 動 に 依 て 、 家 庭 や 肚 會 に 於 て 行 つ て 貰 ひ 、 學 校 で は そ の 根 元 で あ る 宗 教 的 情 操 の 瀕 養 に 努 め る 。 し か し 學 校 で の 其 は 一 宗 一 派 に 偏 し て は な ら な い 。 と い ふ や う な こ と で あ ら う と 思 ひ ま す 。 さ て 斯 う 考 へ て 参 り ま す と 、 藪 に ま た 三 つ の 問 題 が 起 つ て 來 ま す 。 印 ち 1 宗 派 で な い 宗 教 と は 何 か 。

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2 宗 派 教 育 に 依 ら な い で 果 し て 宗 教 々 育 が は れ 得 る か 。 3 宗 派 的 信 仰 を も つ 教 師 は 、 如 何 に し て 宗 派 的 で な い 宗 教 汝 育 を な し 得 る か 。 等 で あ り ま す 。 し か し よ く 考 へ て 見 ま す と 、 こ の 中 、 1 と 2 と は 宗 派 を 生 み 出 す 宗 教 の 聞 明 に 依 つ て 解 決 さ れ ま す し 、 3 は 超 宗 派 的 境 界 の 禮 得 に 依 て 解 決 さ れ る と 思 ぴ ま す 。 宗 教 を 生 み 出 す 宗 教 と は 所 謂 聖 h 般 印 ち 諸 宗 派 の 母 胎 若 く は 地 盤 的 な も の で あ り ま す 。 こ れ あ る が 故 に 諸 の 宗 派 が 生 れ る の で あ り 、 其 故 に 諸 宗 派 相 互 間 に 共 通 性 が あ る の で あ り ま す 。 其 故 、 宗 派 教 育 に 依 ら な い で 宗 教 々 育 を 行 ふ と い ふ こ と は 、 つ ま り 宗 教 的 情 操 の 洒 養 と い ふ こ と に な る の で あ り ま し て 、 個 人 に 於 け る 宗 派 を 生 み 出 す 母 胎 若 し く は 地 盤 を 培 ふ と い ふ こ と で あ り ま す 。 換 言 す れ ば 時 至 つ て 宗 教 と な る 力 を 培 養 す る こ と で あ り ま す 。 3 の 問 題 は 宗 派 に 偏 し な い と い ふ こ と ゝ 、 宗 派 色 を 無 く す る と い ふ こ と 曳 の 混 同 や 、 宗 派 を 超 越 す る と い ふ こ と 玉 宗 派 を 離 れ て 終 ふ と い ふ こ と 玉 の 混 同 か ら 誤 解 さ れ 易 い の で あ り ま す 。 例 へ ば あ る 宗 派 の 信 仰 を も つ 教 師 が 、 そ の 受 持 の 生 徒 に 封 し て 宗 派 的 信 仰 に 依 ら な い で 宗 教 的 情 操 の 洒 養 に 努 力 せ ね ば な ら ぬ 場 合 に 於 て 、 自 分 の 宗 教 生 活 を 離 れ て 宗 教 々 育 的 影 響 を 起 さ ね ば な ら ぬ と い ふ の で 、 若 し そ う し た な ら ば ど う で あ り ま せ う 。 私 は 是 程 非 教 育 的 な こ と は な い と 思 ぴ ま す 。 何 故 か と 申 し ま す と 、 斯 う し て 起 さ れ た 宗 教 々 育 的 影 響 に は 已 に そ の 生 命 が 失 は れ て 居 る か ら で あ り ま す 。 信 仰 は そ の 人 の 全 生 活 の 動 力 で あ り 、 而 も 統 一 力 で あ つ て 、 是 あ る が 爲 に そ の 入 の 生 活 は 人 間 の 生 活 で あ り 、 其 の 入 の 生 活 で あ り 、 教 師 の 生 活 で あ る か ら で あ り ま す 。 要 は 教 師 た る 人 は 宗 派 的 篤 信 者 で あ つ て 、 而 も 必 要 に 鷹 じ て 宗 派 を 自 由 に 超 越 し 他 宗 派 の 信 仰 者 と 心 地 よ く 相 提 携 す る こ と の で き る 人 で な く て は な ら い と い ふ こ と に な る の で あ り ま す 。 術 ほ 前 掲 の 通 牒 に 關 し ま し て 注 意 を し な け れ ば な り ま せ ぬ こ と は 、 學 校 に 於 て 宗 教 的 情 操 を 洒 養 す る こ と に な り ま 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 三 九

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 〇 し た け れ ど も 、 こ の 事 に 直 接 携 は り ま す の は や は り 學 校 の 先 生 で あ り ま し て 、 宗 教 家 で は あ り ま せ ぬ 。 宗 教 家 が 直 接 に 之 に 關 係 し 得 る の は 第 三 項 の (7) に 於 て 示 さ れ て 居 る 限 に 於 て 丈 で あ り ま す 。 而 も そ れ と て 宗 教 家 で あ れ ば 誰 で も と い ふ の で は あ り ま せ ぬ 。 ち や ん と ﹁ 高 徳 な る ﹂ と 限 定 し て あ り ま す 。 高 徳 で な い も の は 宗 教 家 で あ つ て も 直 接 こ の 事 に 與 る こ と は で き な い の で あ り ま す 。 こ の 難 は 特 に 私 共 宗 教 家 が 注 意 し な け れ ば な ら な い こ と で あ り ま し て 、 こ の 際 若 し 私 共 宗 教 家 が 不 注 意 か ら 厚 顔 し く 自 分 知 ら す の 行 動 を と り ま す と 或 は 近 き 將 來 に 於 て 折 角 開 放 さ れ た 門 が 再 び 閉 さ れ て 絡 ふ か も 知 れ ま せ ぬ 。 若 し 再 び 閉 さ れ ま し た な ら ば 今 度 こ そ は 容 易 に 開 か れ な い こ と ゝ 思 ひ ま す 。 要 す る と こ ろ 、 私 共 宗 教 家 は 機 會 が あ れ ば 學 校 に 進 出 し て そ の つ と め を 果 す べ き で は あ り ま す が 、 そ れ よ り も 先 づ 私 共 の 寺 院 に 於 て 宗 教 々 育 を 行 ふ や う に 努 力 し な け れ ば な り ま せ ぬ 。 し か し 寺 院 に 於 て 行 ひ ま す 場 合 で も 封 機 は い ふ 迄 も な く 我 國 民 で あ り ま す か ら 、 國 民 指 導 の 原 理 に 反 す る や う な こ と を 行 つ て は な り ま せ ぬ 。 そ れ 故 に 私 共 は 二 、 思 想 上 の 動 向 を 知 ら な け れ ば な り ま せ ぬ 。 つ ま り 現 在 に 於 け る 我 國 民 教 育 の 原 理 を 建 設 せ ん と す る 蓮 動 の 性 格 を よ く 知 ら ね ば な り ま せ ぬ 。 し か し 之 に 就 い て 詳 論 す る こ と は 連 も 時 間 の 都 合 上 で き ま せ ぬ か ら 、 ほ ん の 概 要 丈 を 申 上 げ る こ と に い た し ま す 。 即 ち 現 在 我 が 國 に 於 き ま し て は ( 一 ) 佛 教 等 外 來 の 思 想 信 仰 を 排 除 し て 我 が 國 昔 な が ら の も の 鼠 中 に 獲 見 せ ん と す る 傾 向 。 ( 二 ) 内 外 を 問 は す す べ て の よ き も の を 絞 り と つ て そ の 上 に う ち 建 て ん す る 傾 向 。 ( 三 ) そ の す 。へ て の よ き も の ゝ 中 の 佛 教 の 思 想 的 若 く は 行 的 方 面 に 日 本 的 性 格 を 與 へ て そ れ に 依 て 原 理 を 構 成 せ ん と す る 傾 向 。

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と が あ り ま す 。 こ の う ち ( 二 ) は 日 本 精 神 聞 明 と い ふ こ と 瓦 共 に 、 そ し て す べ て 古 代 の 生 活 の 中 に 最 も よ き も の を 見 る と い ふ 意 味 か ら 、 飴 程 根 強 く 延 滞 し て 居 る 傾 向 で あ り ま す 。 . 先 年 丈 部 省 で 日 本 諸 學 振 興 委 員 會 の 研 究 獲 表 會 の 時 に 獲 表 さ れ ま し た も の や 、 そ の 後 の 討 論 會 の 席 上 に 於 て の 所 論 か ら 察 し ま す と 、 若 い 地 方 の 郡 .硯 學 さ ん や 小 學 校 の 先 生 方 の 中 に は 信 念 的 に 斯 う い ふ 行 き 方 を し て 居 る 人 女 が 可 な り 多 い や う で あ り ま す 。 勿 論 の こ の 傾 向 は 今 度 の 事 攣 が 綾 い て 居 り ま す 爲 に 種 々 な 理 由 で 二 寸 下 火 の や う に も 思 は れ ま す が 、 そ う い ふ 學 的 根 擦 を 確 實 に し よ う と 努 力 し て 居 る 入 々 が あ り ま す か ら 絵 程 注 意 を す べ き こ と だ と 思 ひ ま す 。 ( 二 ) は 非 常 な 大 き な 立 場 か ら 印 ち 八 紘 一 宇 の 實 現 と い ふ こ と に 心 す る 者 の 當 然 と る べ き 態 度 だ と 思 ひ ま す が 、 そ の よ き も の x 中 に 佛 教 も 、 勿 論 そ の よ い 方 面 丈 で す が 、 取 り 入 れ ら れ て 居 る 繹 で あ り ま す 。 ( 三 ) は そ の 取 り 入 れ を 佛 教 の 中 で 無 我 的 な 捨 我 的 な 志 操 や 、 大 宇 宙 観 的 思 想 や 、 行 的 な 方 面 を 奪 重 し て 居 る の で あ り ま し て 、 そ の 信 仰 の 方 面 は あ ま り 考 へ ら れ て 居 な い や う で あ り ま す 。 何 れ に し ま し て も 、 大 禮 の 傾 向 は 日 本 的 性 格 の 特 殊 性 の 上 に 國 民 指 導 の 原 理 を 建 立 せ ん と し つ 玉 あ り ま す 。 勿 論 斯 う い ふ 傾 向 は 我 が 日 本 丈 の こ と で は あ り ま せ ぬ が 、 我 が 國 は 我 が 國 と い ふ 猫 自 な 立 場 に 立 つ て 二 切 の も の を 考 へ 、 そ の 贋 値 を 再 認 識 し よ う と 努 力 し て 居 る の で あ り ま す 。 從 つ て 佛 教 に 關 し ま し て は 、 か の 本 地 垂 述 説 も 、 佛 本 神 述 で は な く 、 神 本 佛 述 な る こ と が 要 求 さ れ て 居 り ま す 。 つ ま り 佛 教 信 仰 と 國 禮 の 三 致 と い ふ よ り も 、 我 が 國 髄 に 依 つ て 佛 教 信 仰 が 生 き る の で あ る か ら 、 佛 教 は 當 然 そ の 信 仰 を 以 て 皇 蓮 を 扶 翼 し 奉 る こ と を そ の つ と め と す る 國 民 を 養 成 す る こ と に 專 心 す べ き で あ る と い ふ や う に 考 へ ら れ て 居 る や う で あ り ま す 。 次 に は 三 、 實 際 上 の 動 向 で あ り ま す が 、 是 は 少 く と も 學 校 本 位 に 考 へ ま す と 、 や は り 學 制 に 依 る 繹 で あ り ま す か ら 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 一

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 め 動 向 四 二 1 教 構 本 位 に で は な く 人 印 ち 日 本 國 民 本 位 と い ふ ご と に 統 制 さ れ て 居 り ま す 。 從 つ て 2 宗 派 教 育 で は な く て 宗 教 的 情 操 の 洒 養 と い ふ こ と に 限 定 さ れ て 居 り ま す 。 そ れ 故 た と へ 3 ﹁ 行 ﹂ を 取 入 れ る 。 と 申 し ま し て も 前 に 申 し ま し た 通 り 、 信 仰 と は 別 で あ り ま し て 、 鍛 練 の 手 段 、 つ ま り ﹁ 行 ﹂ を 以 て 教 育 目 的 達 成 の 一 方 法 と 考 へ ら れ て 居 る の で あ り ま す 。 四 、 將 來 へ の 示 唆 以 上 の や う な 實 歌 で あ り ま す が 故 に 、 誠 に 厚 顔 の 至 で あ り ま す が 將 來 に 樹 す る 二 三 の 意 見 を 述 べ さ せ て 頂 き ま す 。 一 、 た と へ 宗 派 維 螢 の 學 校 で も 、 そ れ が 児 童 を 封 象 と す る も の で あ る 以 上 は 、 宗 派 的 色 彩 を あ ま り に 濃 厚 に 出 さ な い こ と 。 斯 う 申 し ま す と 、 或 は 宗 門 當 局 や 、 叉 は 地 方 の 大 山 の 老 宿 あ た り か ら 、 宗 派 で 経 螢 し な が ら 、 宗 派 の 色 を 出 し て い け な い 筈 は な い 。 結 局 宗 派 の 爲 に な ら な い 事 な ら 宗 費 を 投 じ て 行 ふ 必 要 は な い 。 と い つ て 叱 ら れ る か も 知 れ ま せ ぬ が 、 し か し 封 機 説 法 は 佛 教 の 特 色 で あ つ た 筈 で あ り ま す 。 何 ど い つ て も 樹 機 は 子 供 で あ り ま す 。 小 國 民 で あ り ま す 。 教 育 の 数 果 は 急 い で は な り ま せ ぬ 。 日 曜 學 校 で も 螢 め ば 直 ち に 荒 塵 し た 寺 院 が 復 興 す る な ど N 考 へ る こ と は 一 寸 待 つ て 頂 か ね ば な り ま せ ぬ 。 そ う い ふ 意 味 に 考 へ る こ と は 、 結 局 教 育 の 数 果 を 物 に 依 つ て 計 る ご と で あ り ま す 。 唯 物 論 に 堕 す る こ と は 私 共 の 特 に 警 戒 せ ね ば な ら な い ヒ と で は な い で せ う か 。 数 果 は 必 す あ り ま す が 、 し か し 其 が 具 罷 化 す る に は 時 間 を 要 し ま す 。 急 い で は な り ま せ ぬ 。 最 も 純 眞 な 動 機 か ら 行 つ て 居 れ ば 必 す 寺 院 は 復 興 し ま す 。 さ う い ふ 例 は 澤 山 あ り ま す 。

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二 、 根 の 教 育 、 土 毫 の 教 育 、 影 の 教 育 、 縁 の 下 の 力 も ち 的 な 教 育 に 満 足 す る こ と 。 . つ ピ め 是 が 私 共 宗 教 家 の 行 持 で あ り ま す 。 多 く の 世 間 の 教 師 は 次 第 に 名 を 慕 ひ 、 物 を 追 ふ て 、 我 を 争 つ て 表 面 に 出 た が り ま す 。 出 世 間 人 た る 私 共 な り と 裏 の 世 界 、 う す ぐ ら ひ 舞 毫 裏 の 教 育 に 任 じ な か つ た な ら ば ど う し て 世 を 救 ひ 人 を 悟 ら せ る こ と が で き ま せ う 。 殊 に 我 が 國 が 今 日 の 明 る さ と 彊 さ と を も つ て 居 ま す の は 、 そ れ は 皆 今 迄 の 教 育 者 が 多 く 舞 毫 裏 の 教 育 に 満 足 を 感 じ て 居 た か ら で あ り ま す 。 つ ま り 、 そ う し た 教 育 家 達 に よ つ て 我 が 國 の 礎 と い ひ ま す か 、 我 が 日 本 精 紳 の 根 が 培 は れ て 來 た の で あ り ま す 。 然 る に こ の 度 の 事 攣 に 遭 遇 し ま し て 、 ど う も 荒 い 入 達 の 心 の 奥 に 、 日 清 、 旦 露 の 職 後 の 時 と は 違 つ て 、 何 物 か を 自 も 分 達 の 行 爲 の 代 償 と し て 求 め て 居 る の で は な い か と い ふ や う な 趣 が 時 々 よ み 取 ら れ る の で あ り ま す 。 私 は 是 れ 程 國 家 の 爲 に 悲 し む べ き こ と は な い と 思 ひ ま す 。 國 の 礎 に シ ミ が 喰 入 つ た と 思 ふ の は ま だ 早 す ぎ る か も 知 れ ま せ ぬ が 、 私 共 は 相 協 力 し ま し て や 玉 と も す れ ば 見 の が さ れ 勝 な こ う い ふ 方 面 に 注 意 を し て ど こ 迄 も 國 礎 を 堅 め る 爲 の 教 育 を 働 ま ね ば な り ま せ ぬ 。 卒 常 は 全 ぐ 何 事 も な い や う に 各 自 の 仕 事 に 從 事 し な が ら 、 時 節 到 來 の 時 に 眞 先 に 身 を 投 げ 出 し 、 國 家 の 爲 に 唯 鰍 つ て 喜 ん で 死 ん 行 で く こ と の で き る 人 間 を 養 成 し な け れ ば な り ま せ ぬ 。 そ う い ふ 素 地 を 培 ふ こ と に 精 進 し な け れ ば な り ま せ ぬ 。 斯 う 考 へ て 來 ま す と 、 こ 曳 に 私 共 に 大 き な 示 唆 を 與 へ て 臭 れ る も の が あ り ま す 。 そ れ は 脚 ち 支 那 に 於 け る 國 民 政 府 の と つ た 抗 日 教 育 の 数 果 の こ と で あ り ま す 。 敵 と し て 職 つ て 居 る 者 か ら 示 唆 を 受 け る な ど 玉 い ふ こ と は け し か ら ぬ と 思 ふ 方 が あ る か も 知 れ ま せ ぬ が 第 三 の 地 鮎 か ら 即 ち 批 判 的 な 立 場 か ら 見 ま す と 、 學 ぶ べ き も の は や は り 學 ぶ べ き も の で あ り ま す 。 私 共 は 事 攣 の 最 初 か ら 、 支 那 の 軍 人 は 弱 い 、 す ぐ 逃 げ て 絡 ふ そ れ だ か ら 上 官 が 部 下 の 足 を 鐵 の 鎖 で 縛 り 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 三

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 四 つ け て 抗 職 さ せ る そ う だ 。 こ れ ほ ど 不 道 徳 な こ と が あ ち う か な ど 玉 思 は せ ら れ た の で あ り ま し た が 、 事 實 は 必 す し も そ う で は な い そ う で あ り ま す 。 あ る 凱 旋 將 軍 の 講 演 で 聞 い た こ と で あ り ま す が 、 ○ ○ 陣 地 を 攻 略 す る 時 、 も う 敵 は 一 人 も 居 な い と い ふ こ と が 判 つ た の で 突 進 し て 行 く と 、 ど こ か ら か 猛 烈 な 射 撃 を 受 け て 何 回 陣 螢 を 改 め た か 判 ら な い 。 最 後 に 乗 り 込 ん で 見 る と 、 ト ー チ カ の 中 に 機 關 銃 射 手 が 重 傷 を 負 ふ て 苦 し ん で 居 る 。 見 る と 足 が 鎖 で 縛 ら れ て 居 る 。 そ こ で 種 々 聞 い て 見 る と 、 そ れ 決 し て 上 官 に く 曳 ら れ た の で は な く 、 そ の 射 手 が 自 獲 的 に 自 分 で 縛 つ た の だ と い ふ こ と が 判 り ま し た 。 師 ち 敵 の 大 軍 が 後 方 陣 地 迄 退 却 す る に つ い て 、 一 同 が 無 事 退 却 を 終 る 迄 こ の 陣 地 を 死 守 せ ね ば な ら な い 。 そ こ で 隊 長 が 決 死 隊 を 募 つ た 時 そ の } 人 と し て こ の 射 手 が 志 願 し ま し た が 、 除 長 か ら お 前 は 本 當 に そ の 任 を 完 う す る こ と が で き る か と 、 問 は れ た 時 に 、 こ の 射 手 は こ れ を 御 覧 下 さ い と い つ て 自 分 で 自 分 の 足 を 縛 つ た の で あ つ た の で す 。 何 と い ふ 勇 ま し い こ と で せ う 。 こ の 射 手 の 如 き は 全 く 我 が 將 士 に も 劣 ら な い 精 神 の 持 主 で は あ り ま せ ぬ か 。 そ れ は 勿 論 支 那 兵 の 中 に は だ ら し の な い 者 も 居 り ま す け れ ど も 、 僅 々 二 十 年 に し て 青 年 の 魂 に こ れ 丈 の 彊 さ と 眞 純 さ を 植 え 付 け た も の は 二 罐 何 で あ つ た で せ う 。 其 は 即 ち 抗 日 教 育 で あ つ た の で あ り ま す 。 而 も こ の 抗 日 教 育 の 仕 方 は 我 が 國 の 教 育 の 仕 方 と は 全 く 異 つ て 居 ま し て 、 其 の 最 初 か ら 支 那 國 民 の 歓 黙 を 満 す こ と に 先 づ そ の 重 黙 を 置 い た の で あ り ま す 。 例 へ ば 斯 う い ふ や り 方 で す 。 國 民 よ 、 お 前 達 は 何 と い ふ ざ ま だ 、 お 前 達 は 全 く 豚 に も 劣 つ た 生 活 を し て 居 る 。 そ ん な こ と で ど う し て 中 華 民 國 が 建 設 で き る か 。 お 前 達 は 先 づ 豚 の 生 活 か ら 人 間 の 生 活 に ま で 向 上 せ ね ば な ら な い 。 五 十 年 前 の 日 本 を 見 よ 、 今 日 の 日 本 を 見 よ 。 そ の 差 が 如 何 に 大 き い か 、 中 華 民 國 を 永 遠 の 安 き に 建 國 す る 爲 に は 少 く と も 先 づ 日 本 と 同 じ 線 に ま で 向 上 せ ね ば な ら ぬ 。 而 し て 後 日 本 を 喧 し て 中 華 民 國 の 優 位 を 誇 る の だ 。 と い ふ や う な 導 き 方 で あ つ た さ う で あ り ま す 鴫 自 國 の 國 民 を 豚 以 下 と な し そ の 向 上 を 働 ま す 一 き 方 に は ま こ と に 學

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ぶ べ き と こ ろ が あ る と 思 ぴ ま す 。 嵌 黙 を 満 さ ん と す る 過 程 は 常 に 緊 張 し て 居 る 者 で あ り ま す 。 勿 論 長 所 を 賞 め て 指 導 す る の も 一 の 方 法 で は あ り ま す が 、 ﹁ こ れ で は い か ぬ ﹂ と 誰 に も 自 畳 さ せ る と い ふ や り 方 は 一 層 よ い 方 法 だ と 思 ひ ま す 。 職 勝 を 見 聞 し 経 瞼 し て 我 が 民 族 の 長 所 を 賞 め た 玉 へ る の も 必 要 な こ と で は あ り ま す が 、 畢 國 n的 に さ う し て 居 る 時 私 共 宗 教 家 は 叉 一 面 に そ の 鋏 黙 に 着 目 し て 、 例 へ ば 忠 君 愛 國 の 行 爲 を 唯 物 主 義 的 に 計 度 す る や う な 心 根 を 、 思 ぴ 切 つ て 抜 き 取 る 方 面 に 力 を 入 れ ね ば な ら な い と 思 ひ ま す 。 抗 日 教 育 が 二 十 年 に し て 豫 想 以 上 の 数 果 を も た ら し た と い ふ と と を 知 り ま す 私 共 は 教 育 と い ふ も の は 、 特 に 國 の 魂 を 畳 ら せ る 、 叉 は 吹 き 込 む と い ふ や う な 教 育 は 兄 童 期 に 於 て 最 も 多 く 数 果 を 奏 す る と い ふ こ と に 想 到 せ ね ば な り ま せ ぬ 。 こ 玉 に 兄 童 を 封 象 と す る 私 共 の 教 育 運 動 の 意 義 が あ る 課 で あ り ま す 。 今 日 青 肚 年 者 の 見 童 期 に 於 け る 教 育 が そ の 當 を 得 な か つ た 爲 に 日 本 精 神 を 物 質 覗 す る や う に な つ た と 考 へ て も よ い の な ら ば 、 私 共 は そ う い ふ こ と が 再 び な い や う に 今 日 の 児 童 に 樹 し て 充 分 な 教 育 を 施 さ ね ば な ら な い 課 で あ り ま す 。 入 信 以 前 の 兇 童 に 樹 し て は 超 宗 派 的 な 宗 教 々 の 育 を 行 ひ 入 信 以 後 の 者 に 封 し て は 徹 底 し た 宗 派 教 育 を 行 つ て 、 我 が 國 の 礎 を 堅 め る こ と に 卒 先 す べ き で あ り ま す 。 大 分 長 く な り ま し た が も う 少 し 附 け 加 へ さ せ て 頂 き ま す 。 さ て 、 右 の 様 に 考 へ て 來 ま す と 、 宗 教 女 育 の 問 題 は 結 局 人 の 問 題 に な り ま す 。 そ れ は 教 育 を す る と い ふ こ と は 結 局 教 育 的 に 活 き る と い ふ こ と で あ る か ら で あ り ま す 。 自 ら 求 め な い で 人 に 求 め さ せ る こ と は で き ま せ ぬ 。 人 に 親 心 子 心 を も て と い ふ 前 に 先 づ 自 ら 親 心 子 心 を も た ね ば な り ま せ ぬ 。 親 心 と は 佛 心 即 ち 慈 悲 心 で あ り ま す 。 子 心 と は 身 を も 心 を も 佛 心 の 中 に 投 げ 入 れ て 安 心 立 命 す る 心 で あ り ま す 。 子 心 の 特 質 は 謙 遜 で あ り ま す 。 心 境 が 進 め ば 進 む ぼ ど 、 経 験 の 積 重 が 高 ま れ ば 高 ま る 程 自 分 の 低 さ 、 小 さ 玉 、 弱 さ 、 至 ら な さ を 覧 り 、 親 心 の 高 さ 、 偉 大 さ 、 彊 さ 、 温 か さ 、 圓 満 さ を 慕 ひ 、 永 遠 な る 求 道 の 族 を つ f け て 倦 ま な い 心 で あ 現 代 沢 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 五

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現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 六 り ま す 。 私 共 は こ の よ き 例 と し て か の 善 財 童 子 を 仰 ぐ べ き で あ ひ ま す 。 幅 島 政 雄 博 士 は 善 財 童 子 の 求 道 の 歴 程 は 繹 尊 の 永 遠 な る 童 魂 の は た ら ぎ だ と 言 つ て 居 ら れ ま す が 、 誠 に そ う で あ り ま す 。 永 遠 な る 童 魂 を 以 て 求 道 を 怠 ら ぬ 生 活 が 印 ち 宗 教 々 育 で あ り ま す 。 教 育 活 動 は 、 教 へ 育 て よ う と す る 作 用 と 、 教 へ 育 て ら れ よ う と す る 作 用 と の 結 合 に よ つ て 生 れ る の も で は あ り ま す が 、 し か し 唯 こ の 二 の 作 用 丈 で は 眞 實 な 結 合 は 不 可 能 で あ 、り ま す 。 そ れ は 必 す 今 一 の 作 用 印 ち 二 の 作 用 を し て 超 個 人 的 な ら し む る 一 種 の 地 盤 的 な 作 用 を 要 す る の で あ か ま す 。 長 田 薪 博 士 は 、 フ レ ー ベ ル は 之 を 第 三 の あ る も の 印 ち 最 善 な る も の 或 は 正 義 で あ る と い つ て 居 る が 、 自 分 は 之 を 文 化 へ の 思 慕 だ と 思 ふ 。 と い ふ 意 味 の こ と を 言 つ て 居 ら れ ま す が 、 こ 9 説 に 從 つ て 宗 教 々 育 に 考 へ 及 び ま す と 、 /其 は 即 ち 二 心 欲 見 物 不 自 惜 身 命 の 熟 火 の 如 き 求 道 の 精 神 で あ る と 思 ひ ま す 。 勿 論 兇 童 の 場 合 に は 又 見 童 ら し い 心 構 と な り ま す が 、 教 育 す る 者 と 教 育 さ れ る 者 と が こ の 心 を も つ 時 に 眞 實 な る 宗 教 々 育 活 動 が 生 れ 、 永 久 に 成 育 し て 止 ま な い の で あ り ま す 。 斯 や う に 考 へ ま す と 、 教 へ 育 て よ う と す る 作 用 と 、 教 へ ら れ 育 て ら れ よ う と す る 作 用 は 結 局 五 分 五 分 と な り ま す か ら 、 教 師 と し て の 作 用 の 特 殊 性 は な い や う に 思 は れ る か も 知 れ ま せ ぬ が 、 教 師 の 教 師 た る 所 以 は 、 自 ら 身 を 下 く し て 五 分 五 分 の 線 に 進 化 し な が ら も 為 常 に 被 教 育 者 を 促 し て 、 そ の 五 分 五 分 の 作 用 を 誘 起 す る と こ ろ に あ る の で あ り ま す 。 而 し て 教 師 の 教 育 力 、 教 化 力 、 叉 は 陶 冶 力 と い ふ も の が 彼 教 育 者 の 被 教 育 力 、 一被 陶 冶 力 を 誘 獲 す る と い ふ こ と は 勿 論 で あ の ま す 。 其 故 教 師 の 問 題 即 ち 入 の 問 題 が 教 育 に 於 て も 宗 教 々 育 に 於 て も 重 要 な 課 で あ り ま す 。 特 に 後 者 に 於 て そ の 性 質 上 三 暦 然 り で あ り ま す 。 倫 ほ 最 近 に 於 て 國 n家 が 宗 教 汝 育 に 封 し て 如 何 な る 態 度 を 持 し て 居 る か と い ふ こ と を お 傳 へ す る 爲 に 、 最 近 東 京 の 中

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央 杜 か ら 刊 行 さ れ ま し た 、 宗 教 團 罷 法 解 読 中 に 輯 録 し て あ り ま す も の を 御 紹 介 い た し ま し て 欄 筆 い た し ま す 。 宗 教 助 長 三 關 ス ル 具 禮 的 方 策 ( 荒 木 丈 部 大 臣 、 松 尾 宗 教 局 長 読 明 ﹀ 右 は 三 項 か ら 成 つ て 居 ま す が そ の 中 の 第 二 項 (7) に 斯 う あ り ま す 。 ﹃ 宗 教 々 育 の 勲 に 付 て も 、 丈 部 省 と し て は 十 分 の 關 心 を 佛 つ て 居 り 、 昭 和 十 年 杢 國 に 依 命 通 牒 を 獲 し て 、 宗 教 汝 育 の 重 要 性 を 説 た や う な 次 第 で あ る 。 ﹄ 次 は 第 三 項 、 學 校 、 砒 會 、 家 庭 二 於 ケ ル 宗 教 々 育 は 次 の 三 目 か ら 成 つ て 居 ま す 。 (1) 學 校 に 於 け る 宗 教 々 育 に 就 て は 、 明 治 三 十 二 年 丈 部 省 訓 令 第 十 二 號 が 出 て 居 り 、 之 が 三 時 誤 解 さ れ て 宗 教 と 學 校 教 育 と は 別 離 さ れ た や う な 嫌 が あ つ た の で 、 昭 和 十 年 更 に 文 部 次 官 の 依 命 通 牒 を 獲 し 、 宗 教 的 情 操 洒 養 の 必 要 な る こ と が 各 地 方 長 官 に 傳 へ ら れ 、 更 に 學 校 長 に 傳 へ ら れ て 居 る の で あ る 。 爾 來 其 の 方 針 の 下 に 宗 教 々 育 に 十 分 の 留 意 が 佛 は れ て 居 る も の と 思 ふ 。 (2) 杜 會 教 育 の 方 面 に 於 て は 、 明 治 三 十 二 年 丈 部 省 訓 令 の 適 用 が な く 、 杜 會 的 宗 教 々 育 の 緊 要 な る 黙 に 着 眼 し て 、 一 宗 一 派 に 偏 す る こ と も 敢 て 差 支 な 嚢 も の と 看 て 、 各 宗 の 名 曾 知 識 を 膀 し 講 話 を 嘉 か せ 、 人 格 に 接 せ し め 、 或 は 寺 院 内 に 宿 泊 せ し め 、 或 は 會 期 中 其 寺 を 道 場 と す る な ど 、 肚 會 教 育 的 施 設 に 努 め て 居 る 。 (3) 併 し 宗 教 的 情 操 の 酒 養 、 或 は 宗 教 心 の 確 立 は 矢 は り 眞 の 家 庭 教 育 に 倹 つ べ き こ と に も 考 を 及 ぼ し て 、 家 庭 教 育 の 指 導 者 の 講 習 會 等 に は 特 に 其 の 黙 に 留 意 す る や う 指 導 を 加 へ て 居 る の で あ る 。 と い ふ の で あ り ま す 。 學 校 教 育 と 砒 會 教 育 と 家 庭 教 育 と の 匿 別 、 從 つ て 叉 、 見 童 、 青 年 、 成 人 等 へ の 指 導 案 に も 當 然 麗 別 が あ る べ き で あ り ま す か ら 、 こ の 黙 に 注 意 し て 一 意 專 心 皆 共 成 佛 道 の 過 程 を 辿 り た い も の で あ り ま す 。 現 代 に 於 け る 宗 教 々 育 の 動 向 四 七

参照

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