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A case of a boy who required a repeated Donath-Landsteiner test to reach the diagnosis of paroxysmal cold hemoglobinuria

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Academic year: 2021

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(1)

緒   言

自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia: AIHA)とは,赤血球膜上の抗原と反応す る自己抗体により赤血球が障害を受け,赤血球寿命 が短縮する疾患である.AIHA は抗原抗体反応の至 適温度,抗体クラス,補体活性化の程度,溶血の場 などから温式 AIHA,寒冷凝集素症,発作性寒冷ヘ モグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:

PCH)の3型に分類され,AIHA の年間発症数は成 人も含めて100万対15人であり,PCH はそのうち の1%程度である.小児においては,AIHA の登録 は3病型合わせて年間20例前後である.今回我々は

臨床的に PCH に合致しながらも初回の DL 試験が 陰性で再検により診断を確定できた一例を経験した ので報告する.

症   例

5歳男児.2018年2月某日より発熱,嘔吐,およ び暗赤色尿を認め休日夜間応急診療所を受診した.

感冒の診断にて経過観察されていたが,翌日も高熱 を認め,近医小児科を受診となった.黄疸と頚部リ ンパ節腫脹が認められ,T.Bil 2.9 mg/dL, AST 54 U/L, ALT 168 U/L, Hb 6.1 g/dL であった.肝庇護 剤にて経過観察されたが,翌日著しい活気不良を呈 し黄疸の増悪を認めたことから当科に紹介され入院 診断に Donath-Landsteiner 試験の再検を要した発作性寒冷ヘモグロビン尿症の一男児例 95 近畿大医誌(Med J Kindai Univ)第44巻1・2号 95~98 2019

診断に Donath-Landsteiner 試験の再検を要した 発作性寒冷ヘモグロビン尿症の一男児例

有 馬 智 之  一 木 美 穂  井 上 智 弘  近 藤 宏 樹  虫明 聡太郎

近畿大学医学部奈良病院 小児科

A case of a boy who required a repeated Donath-Landsteiner test to reach the diagnosis of paroxysmal cold hemoglobinuria

Tomoyuki Arima, Miho Ichiki, Tomohiro Inoue, Hiroki Kondo, Sotaro Mushiake

Department of Pediatrics Kindai University Nara Hospital

抄   録

 自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia: AIHA)とは,赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体 により赤血球が障害を受け,赤血球寿命が短縮する疾患である.AIHA は抗原抗体反応の至適温度,抗体クラス,

補体活性化の程度, 溶血の場などから温式 AIHA ,寒冷凝集素症,発作性寒冷ヘモグロビン尿症( paroxysmal cold hemoglobinuria: PCH)の3型に分類されている.AIHA の年間発症数は100万対15人であり,そのほとん どは温式 AIHA である.PCH は AIHA 全体の1%程度と報告は少ない.PCH の診断には Donath-Landsteiner

(DL)試験が行われるが,PCH における抗原抗体反応の至適温度は症例によって幅が大きく,DL 試験の判定には 反応温度の設定を幅広くとる必要がある.また,発症急性期では著しい抗原抗体反応によって抗体が消費されてい るために偽陰性となる場合もある.そのため,臨床的に PCH が疑われる場合は異なる病期において複数の温度設 定での DL 試験を行う必要がある. 臨床的に PCH に合致しながらも初回の DL 試験が陰性で再検により診断を確 定できた一例を経験したので報告する.

Key words:自己免疫性溶血性貧血,発作性寒冷ヘモグロビン尿症,貧血,輸血,Donath-Landsteiner 試験

大阪府大阪狭山市大野東3772(〒5898511)

受付 平成31年2月13日,受理 平成31年4月10日

(2)

となった.

既往歴・家族歴に特記事項なし.

当科初診時,体温38℃,脈拍130回/分,SpO2 98%,

皮膚黄染,眼瞼結膜蒼白,眼球結膜黄染,心音・呼 吸音に異常なく,肝臓, 脾臓触知しなかった.

胸腹部レントゲンでは明らかな異常所見を認めず,

血液検査では T.Bil 2.7 mg/dL, D.Bil 1.0 mg/dL, Hb 4.4 g/dL, 網赤血球391‰,LDH 526 U/L と溶血性

貧血に合致する所見を認めた.入院時検査所見を示 す(表1).

 直接・間接 coombs 試験陽性,ハプトグロビン低 値,尿中ウロビリノーゲン陽性であった.寒冷凝集 素は陰性,C3,C4,CH50 など補体の低下は認めら れなかった.感染症検査では,マイコプラズマ,EB ウィルス感染は陰性であった.問診では出血のエピ ソードはなく,便潜血反応は陰性.腹部エコー検査 では,脾臓は4cm×10 cm で脾腫は認めなかった.

血液塗抹標本にて赤血球凝集像が認められ,自己免 疫性溶血性貧血の所見に合致した(図1).

発症当時の気候は強い寒気に覆われており,患児 の受診日前後の気温は最高0℃,最低-5.9℃を記録 していた.出血や脾腫がないこと,血液検査データ,

さらに寒冷な気象条件で発症していることから臨床

的に冷式 AIHA の可能性を考え,直ちに温罨療法,

およびプレドニゾロン 1.6 mg/kg/day の投与を開 始した.急激な貧血の進行を認めたが,血圧低下や 心不全兆候などは認めていなかったため,輸血の施 有 馬 智 之他

96

図1 血液塗抹検査(ギムザ染色 10×100倍)

溶血による赤血球の大小不同と凝集像を認めており,

自己免疫性溶血性貧血の血液塗抹像と一致する.

〈血清学的検査〉

〈生化学検査〉

〈血球血算〉

直接 cooms (+)

CRP 0.16 mg/dl WBC 11,200/ l

間接 coombs (+)

Na 136 mEq/L

stab 3%

不規則抗体 (+)

K 4.2 mEq/L

seg 66%

C3 161 mg/dl Cl 101 mEq/L

lympho 16%

C4 35.1 mg/dl Ca 9.1 mg/dl

mono 3%

CH50 (-)

P 5.2 mg/dl

eosino 10%

IgG 1,680 mg/dl BUN 14.1 mg/dl

baso 1%

IgA 90 mg/dl Cre 0.23 mg/dl

RBC 1.31×10/ l

IgM 142 mg/dl Glu 99 mg/dl

Hb 4.4 g/dl

IgE 371 IU/ml

TP 7.4 g/dl

Ht 12%

寒冷凝集素 64倍

Alb 4.1 g/dl Plt 30.9×10/ l

ハプトグロビン 2 mg/dl T.Bil 2.7 mg/dl

〈凝固検査〉

ASO <10

D.Bil 1.0 mg/dl

PT 85.50%

ASK <10

LDH 526 IU/L APTT 26.2 sec

HBsAg (-)

AST 35 IU/L Fib 219 mg/dl

HCVAb (-)

ALT 111 IU/L FDP 2.0 g/dl

CMVIgM <10 ALP 1,133 IU/L

Ddimer 0.8 g/dl

EBVIgM <10 γGTP 111 IU/L

ATⅢ 111%

EBVIgG <10

CK 35 IU/L

〈尿検査〉

マイコプラズマ抗体 <40 BNP 16.9 pg/ml

色調 黄色

パルボウィルスIgM (-)

〈便検査〉

潜血 (-)

便潜血 (-)

蛋白 (-)

GLU (-)

ビリルビン (-)

ウロビリノーゲン (+)

表1 入院時検査

(3)

行は見合わせとした.翌日には Hb 4.2 g/dL と下が り止まっており,輸血をしない方針を継続とし,温 罨療法とステロイドによる治療を継続した.

入院3日目に施行した Donath-Landsteiner 試験

(DL 試験)では,0 

℃,37℃ともに溶血所見は認め ておらず結果は陰性であった.一方,直接 coombs 試験を4℃と37℃と温度域を変えて施行したところ,

4 

℃では64倍,37℃では16倍と低温環境下でより強 い凝集反応を示した(表2).入院22日目に再度0℃,

15℃,25℃,37℃の4条件で DL 試験を施行したと ころ,25℃以下の低温域での溶血所見が認められ PCH

の確定診断に至った(図2).

治療開始後,Hb は順調に改善し,入院後19日目 には Hb 11.5 g/dL となったため, 3 

日間の外泊に よる日常的環境での寒冷刺激負荷を施行し,再発の ない事が確認されたため26日目に退院となった.最 終経過を示す(図3).

考   察

PCH は DL 試験によって確定診断がなされるが, 本症例のように DL 試験が陰性であっても PCH を 否定することは出来ない.夏季に発症した温度域の 広い PCH の報告もあり,DL 試験が判定困難であっ た報告も散見される.本症例において初回 DL 試験 陰性となり,入院22日目の再検で陽性所見が得られ た原因としては,発症時点では急激な貧血の進行と ともに DL 抗体が体内で急激に消費されていたこと が原因と考えられる. 臨床的に PCH が疑われる場 合,DL 試験については複数回の評価が必要である と考えられる.また,本症例は温式抗体と冷式抗体 の混合型 AIHA の可能性も考えられるが,寒冷凝集 素陰性,DL 試験陽性, 血管内溶血, 発症時の環境 を考慮すると PCH の可能性の方が高いものと考え る.治療においても,通常温式 AIHA はステロイド が著効し,PCH はステロイド抵抗性であることが多 診断に Donath-Landsteiner 試験の再検を要した発作性寒冷ヘモグロビン尿症の一男児例 97

図3 Hb, LDH の推移 図2 Donath-Landsteiner 試験の結果(2回目)

患者血清5ml(抗凝固剤未添加)2本採血し,そ れぞれ0℃,37℃に30分静置後,2本とも37℃30 分静置し,1,000 g で5分間遠心する.冷却分のみ 溶血が認められれば,DL 抗体陽性とする.

左から0℃,15℃,25℃,37℃.

0℃,15℃,25℃において溶血所見が認められた.

512倍 256倍

128倍 64倍

32倍 16倍

8倍 4倍

2倍 希釈 原倍

倍率

0 0

weak+

1+

1+

2+

2+

3+

3+

3+

4℃

0 0

0 0

0 1+

2+

3+

3+

3+

37℃

表2 温度域を変えての直接 coombs 試験(生理食塩水にて希釈)

4℃で64倍,37℃で16倍.寒冷環境下でより強い凝集反応を示した.

(4)

いため診断的治療となることも多い.本症例では受 診時に Hb 4.4 g/dL であり,本来は輸血の適応とな る数値ではあったが,血管内溶血所見が推定され,

また,心不全症状などの全身状態不良を認めなかっ たため,可能な限り輸血を避け,治療は温罨療法と ステロイド療法を同時に行なった.ステロイドも有 効に作用した可能性も考えられるが,本症例におい ては温庵療法が主に奏効したものと考える.

また,PCH を含む AIHA の治療では,輸血時に 溶血発作を起こし急性腎不全,死亡に至った報告も あり,輸血は禁忌とされてきたが,近年では赤血球 の加温や洗浄など行い輸血を施行する事が可能とさ れている.一般的に各 AIHA の輸血に際しては,凝 集反応しない赤血球選択が理想であるが,発症初 期に AIHA の病型分類を行うことや表現型の一致し た血液の確保は容易ではない.実際には,溶血発作 を起こしにくい環境下での投与であれば輸血は可能 であると言われている.輸血を要する場合は赤血 球の加温・洗浄を行い,状況により透析療法が行え る環境を用意した上での施行が望まれると考えられ るが,PCH であれば可能な限り輸血を避け,温菴療 法やステロイド療法を選択すべきと考える.

文   献

1. “自己免疫性貧血 診療の参照ガイド(平成26年度改訂版) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発

性造血障害に関する調査研究. http:/ /zoketsushogaihan.

com/file/guideline_H26/AIHA.pdf(参照26)

2. 小児疾患診療のための病態生理;216.vol48:8 3. Hayashi H, Yasutomi M, Hatashi T, et al.  Parox- ysmal cold hemoglobin caused by an IgM-class Donath- Landsteiner antibody. Pediatrics International 23; 55:

666.

4. 森田慶紀,久保美保,齋藤公幸,他.発作性寒冷ヘモグ ロビン尿症の1例.小児科臨床 25;58:13-10.

5. 中山彰,池田順次,枝松清隆,他.急性期に診断に難渋 した発作性寒冷血色素尿症.横浜医学 26;67:55.

6. 小松文夫,岡村経一,大導寺裕子,他.日本輸血学会雑 誌 192;28:51.

7. 広田保蔵,斎藤秀明,山田耕一郎,他.急激な溶血発作 によって発症した発作性寒冷血色素尿症の1女児例.臨床 血液 1989;30:40.

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Annals of Hematol 208; PP1

0. 山口瞳,杉本達哉,前沢由美,他.赤血球自己抗体陽性 患者への赤血球輸血の解析. 日本輸血細胞治療学会誌 207;

63:94.

11. 上田恭典.自己免疫性溶血性貧血に対する輸血療法 28;

59:235 有 馬 智 之他

98

参照

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