論文要旨
Ⅰ 目的
周産期の喪失のケアは両親主導で行われることが原則であるが、父親に焦点を当てたケ アの実態を報告した研究は少ない。また、父親に対する死産のケアに看護職者が困難感を 抱いていると推測されるが、困難感の詳細は分析されていない。そこで、看護職者が抱く 父親に対する死産のケアの困難感とケアの実態、看護職者側の関連要因を探索することを 目的とし、看護職者に対する教育支援と父親に対するケアをより良いものに改善すること への示唆を得る。
Ⅱ 方法
関東圏内の総合・地域周産期母子医療センター、総合病院 39 施設において、産科病棟 に1年以上勤務し、死産のケアの経験のある看護職者529名を対象に自記式質問紙調査を 行った。分析は、有効回答 451 名(85.3%)のデータを用いて、概念枠組みに沿って各変数 間の関連や差の分析を行った。なお、研究の全ての過程は倫理原則を遵守して実施した。
Ⅲ 結果
1.父親に対する死産のケアの困難感の平均点は54.0±9.2(範囲; 18‐72)点であった。
父親に対する死産のケアの困難感は4つの因子で特徴づけられ、【父親の反応に対す る近づきにくさ】が最も高く、【父親の希望を引き出すこと】、【拒否を示す父親への対 応】、【父親に関わる自分自身の感情への対応】から成っていた。なかでも、〈医療者に 不信を抱く〉、〈怒りを表出する〉、逆に〈感情を表現しない〉、〈平静を装う〉父親への 接近に最も困難感を抱いていた。
2. 父親に対する死産のケアの実施の平均点は55.4±8.3(範囲; 33‐72)点であり、「いつ も実施している」「時々実施している」割合が7割を超えた項目が多く、父親に対す る死産のケアは看護職者により実施されていることが示された。〈子どもとの面会時 の配慮〉や〈子どもの存在を尊重するケア〉は実施率が高かったが、〈父親と2人で 話す機会を持つ〉、〈子どもの死因について疑問がないかの確認〉、〈カウンセラーやサ ポートグループの情報提供〉は実施率が低かった。
3. 父親に対する死産のケアの困難感とケアの実施に共通していた看護職者側の関連要 因は、両親の悲嘆に関する知識、父親、母親それぞれの体験を見聞きした経験の有無、
死産のケアの経験例数、プライマリナースとして死産のケアに関わった経験の有無の 4項目であった。
4. 父親に対する死産のケアの困難感は、両親の悲嘆に関する知識との間に弱い負の相 関があり(r=-.38, p=.000)、一方、父親に対する死産のケアの改善意欲との間に弱い 正の相関があった(r=.27, p=.000)。
Ⅳ 結論
父親に対する死産のケアの困難感は、【父親の反応に対する近づきにくさ】が最も高か ったが、両親の悲嘆に関する知識、ケアの改善意欲と関連があった。今後は、看護職者向 けの現任教育における教育プログラムを開発する必要がある。