小学校高学年児童の「心の居場所」を保障する授業構成に関する研究
学校教育専攻 授業開発コース 岡 本 英 孝
1 問題
子どもたちは,学校生活において,人間関係 の側面でストレスを受けているO その表れが,
いじめ,不登校,学級崩壊,凶悪犯罪等の反社 会的行動や非社会的行動であるO 非社会的行動 や反社会的行動には含まれないが,自分の主張 だけをする子,すぐにかっとなる子,他とコミ ュニケーションをとることに負担を感じる子等 の存在もその表れである。これら,子どもたち の心を和ませ,安心基地,すなわち「心の居場 戸庁」を保障することが心の問題の解決につなが ると考える。一人一人の子どもにとって,学級 が,学級での授業が,
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自己の存在感を実感で き,精神的に安心できる場所J,すなわち「心 の居場所」となるなら,子どもたちは基本的信 頼感や基本的安心感を心の中に築き,生き生き とした学校生活を過ごせるであろうO 学校生活 以外においても,波及効果があると考える。本研究は,心の課題をもっ子どもたちばかり でなく,心の課題をもたない子どもたちの心を も和らげることができ,心の問題の軽減につな がることを期待し,行うものである。
2 研究の目的
① 教師と小学校高学年児童の捉える「心の居 場所」を調査・分析し
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心の居場所」とは,何かを明らかにするO
② 小学校高学年児童に「心の居場所」を保障 する方策を明らかにするO
指導教官 小 野 瀬 雅 人
③「心の居場所」を保障する方策を実践し,子 どもたちの心に及ぼす影響を検証する。
3 研究の方法
(1)教師の捉える「心の居場所」に関する調査 (調査 1) 教師の捉える「心の居場所」を明らかにする ために,筆者が勤務する地域の公立小学校4校 24名の教師と現職の大学院生 11名の計 35名 を対象に,質問紙による調査を行った。その結 果,次のことが明らかになった。
①教師がイメージする「心の居場所」
教師は「そこにある人間関係,空間,時間に
『リラックスdl IF存在感dl IF自己表現dlIF自己実 現dl IF他者受容』の要件が存在する時, IF心の 居場所』となる」と考えていることが窺えた。
②教師の捉える小学校高学年児童の学校生活に おける「心の居場所」
教師は「小学校高学年児童の学校生活での『心 の居場所』は, IF授業中』や『休み時間』の『友 だちdl IF先生dl IFクラス』との人間関係の中に
「リラックスdl IF存在感dlIF自己表現dlIF自己実 現』の要件が存在する時にある」と捉えていた。
③教師の捉える小学校高学年児童の「心の居場 所」を保障するための教師の役割
教師は,
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児童理解を大切にし,相互受容で きる集団づくり・児童個々の友だちづくりの支 援・援助を行うことが, IF心の居場所』を保障 する教師の役割である」と捉えていた。︒ ︒
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(2)小学校高学年児童を対象にした「心の居場 所」に関する予備調査(調査2)
公立小学校 6年生 2組より 12名を抽出し,
構造化面接により
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心の居場所」の傾向を明 らかにした。その結果,r
心の居場所」感のあ る授業とは,r
問題解決的な学習展開で,学習 内容が理解できること,肯定的に他に認知され ること」と捉えることができた。また,授業中 以外では,r
互いを思い合い,助け合う雰囲気 の中で,自分のペースで何かを成し遂げられる 時,心の居場所がある」と捉えることができた。(3)小学校高学年児童を対象にした「心の居場 所」に関する本調査(調査3)
「心の居場所」の有無を探るために, (2)で 明らかになった具体的要件を質問紙にし,公立 小学校6年生2組43名を対象に調査を行った。
その結果,両組ともほぼ全ての質問項目にわた り,学級全体として「心の居場所意識がある」
傾向を示した。しかし,やや「心の居場所意識」
のない児童の存在が認められた。
(4)小学校高学年児童の学級適応感に関する調 査(調査 4)
「心の居場所」と「学級適応感」は,関連が あると捉え,高島(1998)を参考に質問紙を作成 し,公立小学校6年生 2組43名を対象に調査 を行った。その結果,両組とも学級全体として
「学級適応感がある」傾向を示した。やや「学 級適応感」のない児童の存在も認められたが,
この児童は「心の居場所」に関する調査でもや や低い数値を示した。従って,
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学級適応感の 低い児童は,心の居場所意識も低し'1Jことが窺えた。
(5)
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高学年児童から見た教師の指導行動」と「教師自身の指導行動に対する意識」に関 する調査(調査5)ふ
「心の居場所」と「教師の指導行動」とは,
関連があると捉え,高島(1998)を参考に質問紙 を作成し,公立小学校 6年生2組 43名を対象 に調査を行い
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教師の指導行動」に対する教 師と児童の意識の相違を検討した。その結果,両組ともほとんどの質問項目において「教師自 身の意識」よりも「高学年児童から見た教師」
の意識の方が高い数値を示し,教師と児童の関 係が良好であることが窺えた。また, (3)(4)の 両調査においてやや低い数値を示した児童も高 い数値を示しており
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心の居場所」のなさや「学級適応感」のなさは,この児童の場合
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教 師の指導行動」とは無関係であると捉えた。(6)小学校高学年児童の「心の居場所」を保障 する授業構成とその実践
小学校6年生1組を対象に「心の居場所」を 保障する授業を実践し,子どもたちの心に及ぼ す影響を検討した。「問題解決的な学習展開,
受容的・肯定的な交流の場Jの授業である。授 業前後に実施した質問項目の平均値で変容を検 討したところ,全ての項目で数値が高まった。
また,性差による比較では
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他者からの激励」等の項目で男子よりも女子に有意に多く働きか けていた。 (3)(4)の両調査で,やや低い数値を 示した児童も授業後に向上傾向を示した。
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今後の課題今後の課題としては,次の5点が考えられる。
①「心の居場所」感の持続期間,また,実践の 頻度を検討する。
② 受容的で肯定的な雰囲気が根底にある学級 づくりの方策を検討する。
③ 一人一人の思いを大切にしつつ,基礎・基 本の定着を図る教師の支援,援助を検討する。
④ 」人一人の心の中にある悩み,課題,よさ を見つめる姿勢とその方策を検討する。
⑤「心の居場所」を保障する教師の実際の言動,
考え方を検討するO
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