高齢者・障害者における居住環境と障害構造・QOL に関する文献調査報告
著者 小澤 純一, 桜井 康宏
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 51
号 1
ページ 73‑80
発行年 2003‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/3123
Mcm.Fac.Eng.Fukui Univ。,Vo1.51,No.1(March2003)
高齢者・障害者における居住環境と障害構造・QOLに関する文献調査報告
小澤純一*
桜井康宏*
A Report om Doc皿memt Researc110m Residemtia1Envimmments a皿d Disabi肚y Stmc伽爬.QOLror E1derly and Disabled Peop1e
J㎜ichi OZAWA㌦md Yas山ro SAKURAI‡
(ReceivedFebruary19.2003)
This study aims,by researching documents,at comprehending thc rea1ity and issucs con㏄ming thc re1ationship between residentia1environments and disabi1ity structure the qua1ity of1ife(00L)
fore1der1yanddi・ab1edpeop1e.
Thc rcsidentia1environment is takcn from thc enviT0nmenta1factors in this paper.It is c1assified as①the resid㎝tia1en・ironment itse1ζ②the disabi1ity structure(impaim㎝t・disabi1itゾ handi・・p)・00L,③ther・1ati㎝shipoftber・・id・nti・1㎝vimnment・nddisabi1itystruct・r・・QOL and taken into examination.
It is considercd based on the eva1uation of the residcntia1environment for c1der1y and disab1ed
pcop1ethrough themethod ofenvironmenta1psycho1ogy.
The fo11owing conc1usions weエe dmwn as a resu1t;thc eva1uation ofthe rcsidcntia1cnviエ。nment for the e1der1y and disab1ed cannot be adequate1y measuエed from functiona1aspects such as hea1th,
convenience,safety and conformabi1ity.It shou1d a1so be measured by a comprehensive standard thatinc1udespsycho1・gica1asp・ctssuch・sprivacy
Keツ〃。〃∫:Rcsidentia1Environment,Disabi1ity Structurc,Q()L,E1der1y and Disab1ed Pcop1c
1.はじめに
65歳以上の高齢者人口及び高齢化率は,平均寿命 の伸長や低い出生率を反映し,上昇を続けている〔1〕.
それに伴い,要介護老人や痴呆老人が増加,障害高 齢者への対応策への社会的二一ズはますます拡大し ている.従来の施設中心であった医療,保健,福祉 等の各種サービスは,地域における在宅中心方式へ の移行が進められ,多様化,個別化する社会的二一 ズに対応しようとしている.このような状況の中,
高齢者や障害者の身体機能に対応した住環境等の整 備の重要性が増している.
ここでは,住環境の中の居住環境を取り上げ,障 害構造・QOLとの関連性について,その概念と評価 手法を既往研究でそれぞれ調査し,合わせて現状と 問題点について考察する.
2.高齢者・障害者と環境の関係篠念
大学院工学研究科ファイバーアメニナイエ学専攻 Graduate Schoo1ofFiber Amenity Engin㏄ring
2.1ICF(WH0国際障害分類改訂版)モデル 1980年にまとめられたWHO国際障害分類初版
(以下,ICIDH)は,障害の構造をr機能障害一能 力障害一社会的不利」という3つの階層性を持つモ デルとして提示し,障害概念に大きな影響を与えた
(図1)〔2〕.しかし,その後,いくつかの問題点も 指摘されている.
74
①障害の階層構造が一方向的であり,運命論
的なモデルである.②主観的障害という概念が含まれていない.
③環境因子の重要性が欠落している.
その後.カナダのケベックグループから環境因子 と機能障害・能力障害との相互関係により社会的不 利状況が起こるという「カナダモデル」も提唱され
た(図2)〔3〕.
健際状懸
(r柚itトー。ondi他n)
活動 o加
11舳雌HH
Aotiv1汐 Pa〔lo1関τbn冒。dy fL■nct■on&
歴虜囚子 個人囚}
(Env■ronmenta1 Fado用) (P色r冒。n31 fado用)
劇SEASE or DlSORDER (疾患・変調)
lMPA1R「)1ENT
(欄能1形態障害〕
∴青
し_、血___、 _、、__…__…____…一___.___巾
図1.WHO国際障害分類初版(lClDH)の障害構造
㍗1
図3.lCFによる障害構造
特に,背景因子として環境因子が加えられたことは,
環境面と障害構造の関連の重要性を示している(表
1).
表1.lCFにおける環境因子
身体系
咬司… 司・
環境因子向
図2.カナダモデルによる障害構造 このような関越、点を踏まえて.WHOはi990年よ
り改定作業を1榊台し.2001年1ハに最終案がまとめ られ,5月のt螂二外保健会議にて最終決定された。正 式なタイトルは,lnternationa1ClassincationOf Functioning.Disabi1ityand Health(以下,lCF)であ る〔4〕(図3).
改訂版の特徴として以下が挙げられる.
①機能障害や能力障害などの否定的な用語が,
より肯定的,中立的な名称に変更された(疾 病→健康状態,機能・形態障害→心身構造,
能力障害→活動、社会的不利→参加).
②背景因子としそ.個人因子や環境因子の2
項目が加えられ,障害の各階層レベルに相 互作用することが概念モデルの中に明記さ れた.①生産物と機器(ProductsandTechno10gy)
②自然環境と,環境に対して人間がもたらした 変化(Natural and Human−mode Changes to Enviromment)
③支持と関係(SupportandRelationships)
④態度(Attitudes)
⑤サービス・制度・政策(Services,Systems and
Policies)
2.2工学分野におけるモデル
建築学や人間工学の分野では,人間と環境とを対 立的.独立的なものとしてではなく,両者の関連性 を・一体的な分析単位として捉える人問一環境系の研 究が行われている〔5〕.人問と環境の関連性を初め て概念化したKu吋Lewinは,B:F(P,E)という方 程式により,行動(Behavior)は人問(Person)と環 境(EnVironment)の両方の函数であると述べ,人問 と環境との関係の重要性を示した.障害者や高齢者 においても,人問一環境系の研究の重要性が,老年 社会学者のLowtonにより指摘されている.図4は、
高齢者の能力と環境圧力に関する生態学的モデルで あるが、このモデルでは,高齢者の生物学的な健康,
感覚運動機能,認知能力,自我強度の各能力が環境 から様々な影響を受けることを示唆している〔6〕.
ネナコテ
ィプな 思拍
不道応 行就
い
↑高 音 の 窪
↓ブ〕
低
し1
、/
震 笑、/大錺 雲
行 2/ の 行 動 女 効 伽 の 楽! 軍 の
限 〆 ガー 1 界 ! /
/ 」ポジアrラ /な聯
ノ酢舳
ネガティプな層1情 不1西懸テ動
量…い← 環境圧力 →強い
図4.高齢者の能力と環境圧力
表2.「住居」関連類似語の概念比較
また、高齢者や障害者を対象とした研究では1バ リアフリーデザイン〔7〕やユニバーサルデザイン〔8二 をキーワードに、研究が進められている.ユニバー サルデザインは,「全ての年齢や能力の人々に対し,
可能な限り最大限に使いやすい製品や環境のデザイ ン」と定義され,高齢者や障害者のみでなく,健常 者も含めた全ての人に対しての.安全性・快適性を 追求したものである。ノースカロライナ大学ユニバ ーサルデザインセンターでは,ユニバーサルデザイ ンの基本原理として.図5の7項目を挙げている〔6二.
用語 英語 概念定義
集合住宅の単位を構成する
住戸 dwelling unit 個々の住宅
ひとつの世帯が独立して家庭生 活を営むことができる建築物ま たは完全に区画された建築物 住宅 housin dwellin house の一部
宅地 building lot 建築物の敷地として供される土
住宅を取り巻く諸条件からなる 生活環境、自然環境、施設条 住環境 residentia1environment 件、地域社会条件を含む
人の居住する場.住まい.住宅・
住居 housin residence 宅地のほか住環境を含む総称
住生活.住むといっ行為.物とし ての住居と生活する人との相互
居住 dwellin life 関係を示す語
公平性 柔軟性
萎葦/ス服」/1鱗鱗灘灘111
撫
効率性 簸. 広さと利用しゃすさ
図5.ユニバーサルデザインの7つの原理 3.居住環境と障害構造・Q0Lに関する既往研究 3.1居住環境に関する概念と評価手法
住環境(residential environme11t)とは,住宅や生 活の場を取り巻く生活環境の相対であり.狭義には 物的な住宅まわりの環境,広義には祉会的.経済的、
文化的な環境も含むものと捉えられる(表2)1また,
居住環境(dwelling liFe)とはr住生活.住むという 行為.物としての住居と生活する人との相互関係」
と定義される〔9〕1
居住環境と近似する住宅の機能に関しては,WHO による ①安全性 ②健康性 ③利便性 ④快適性 が基本的な指標として挙げられるが,その他の概念 として表3を示す〔1o〕.また,大原は,高齢者の居 住空間の条件として,物的拠点としての性能である 機能的側面と心理的拠点としての性能である帰属的 側面があることを指摘している〔11〕.
西山夘三
「質規定の諸条件」
岡田光正
「住宅の機能」
塘 一二節…一一一.…■一一.一一…
「住生活合理化の概念」
齋藤外二
「住居計画の総合基準」
惇亜否公衆蒲至院一■一一一 一
「健康住居の基本原則」
安全性 建築的合理性 保健性
生活に対する適合性 便益性
快適性 表現性 構造性 保全化 保健化 能率化 経済化 倫理化 快美化
環境機能構成における 安全性1保健性.快適性 空間機能構成における
安全性.能率性.快適性 審美機能構成における
審美性.調和性.快適性 災害防止条件の満足 生理的人間と環境条件の満足 生活心理的要求の満足
疾病の発生・感染の防止の条件の満足 精神的感覚の満足
生活経済の満足
表3. 住宅の機能に関する諸指標
居住環境の具体的な評価法として,居住環境の物 理的な構造を直接測定して評価する手法.居住者の 心理状態を測定して評価する環境心理学的手法に大 別できる.児玉の研究を例に取れば,高齢者施設の 調査において,建築環境を観察・実測して,その物 理的な環境を客観的に捉える建築環境チェックリス ト(表4),施設サービスチェックリストと,心理的
76
な側面を捉える建築クレームチェックリスト(表5)
を用いている〔I2〕.建築環境チェックリストは9次 元,合計159項目より構成される. 「建物の快適性」
の次元は、建物の快適性や利便性を増すような空 間・設備の有無をとらえている、 「社交・レクリエ ーション施設の充実度」の次元では,社会的接触と 促す施設や日本の施設でよく行われているレクリエ ーション活動の空間や施設の有無に関する項目より 構成される. r身体機能低下への建築的配慮」の次 元は.車椅子使用者や歩行困難者等への設計上の配 慮項目とともに,身体機能の低下を幅広くとらえて リハビリテーション訓練や医療施設の有無に関する 項目を含んでいる. 「建物内の情報の適切さ」の次 元は.建物内のわかりやすさや各種情報の提示の有 無や適切さに関する項目より構成される. 「建物の 安全性」の次元は、建物内での事故や火災に対する 項目からなる.「空間・施設の個別性」の次元は,
私的行為を行う空間や施設がどの程度個別に設けら れているかをとらえている. r規模の適切さ」の次 元は1各種公的・私的空間の面積と各種設備の設置 数の適切さに関する項目からなる. 「管理・運営設 備の充実度」の次元は,職員や事務用の空間・施設 の有無や適切さをとらえている. 「近隣地域施設の 利便性」の次元は,徒歩圏内に存在する各種生活施 設の有無をとらえて,老人居住施設の地域への統合
をみている.
それに対し,建築クレームチェックリストは、居 住者のとらえた建築環境の心理量を表しており、建 築環境チェックリストの管理・施設運営設備の充実 度の次元を除いた8次元と対応し,居住者の不満や不 便の訴えをとらえる63項目からなる.このような,
居住環境の質を心理学的側面から評価する視点は,
Q0L評価の観点からも重要と考える.
3.2障害構造・QOしに関する既往研究
障害構造に関する研究は,lClDH及びiCFの概念の 普及に伴い、それぞれの障害レベルごとに,その関 連性の研究が進められている.
能力障害は, r人問にとって正常と考えられるや り方または範囲において行う能力の何らかの制限ま たは欠如」と定義される〔13〕。能力障害が含む概念 としては,日常生活動作(以下.ADL)や日常生活 関連動作(以下,lADL)が挙げられる.ADLに関し ては.日本リハビリテーション医学会評価基準委員 会が1976年,評価におけるADLの概念を作成し,活 動範囲を規定した.そのなかで「ADLは.ひとりの 人問が独立して生活するために行う基本的な,しか も各人ともに共通して毎日繰り返される一連の身体
動作群をいう」と定義した〔1・〕。具体的に含まれる 項目としては,食事,歩行,移乗,トイレ動作,整 容,車椅子,階段昇降,コミュニケーション,排尿 排便コントロールなどが含まれる.ADLの評価法に
としては,PULSES.KatsindexofADL,Kenny Self
−Care Eva1uationなどがある.そのなかでも,国際 的に広く用いられる代表的なものにはBaれhe1index やFuncti㎝al Independence Measure(以下,FIM)
〔15〕(表6)がある.lADLは,ADL以外の応用動作 群を指す.個人としての生活と社会人としての生活 の中問に位置しているものであり,家や家族という 機能を維持するために必要なものである.項目とし ては,食事の支度,電話の使用,家事、金銭管理,
交通手段の使用,服薬の管理.買物などが含まれる.
評価法としては,lnstrumental ADL.Extended ADL,
Frenchay Activities lndex(FAl)〔16〕(表7).
老研式活動能力指標などが報告されている.
社会的不利は, 「その個人の属する社会において 普通に果たすべき役割が妨げられ1当該社会の期待 や基準に適合できないことから生ずる不利益であ る」とされる.1C1DHでは,定義にあたり, 「オリ エンテーション」. 「身体的自立」, 「移動性」,
r作業」, r社会的統合」, r経済的自立」を挙げ ている.この概念に対応した評価法として,Craig Handicap Assessment and Reporting Technique(以 下,CHART)〔17〕(表8)がある.
Qualityofli危(生命・生活の質;以下.QOL)は,
医療・福祉分野に限らず,様々な分野で重要なキー ワードとして挙げられる.QOLの基本的構成要素は,
主観的幸福感や生活の充足感,心身機能などの生活 機能,社会や人との接触・交流,身体の快・不快感
という4つに集約できる.このQOL構想のどこに着目 するかにより,既存の評価尺度は2つに大別できる.
1つは,主観的Q0L指標と呼ばれるものであり、主観 的辛福感や主観的健康感に焦点を当てたPGFモラー ルスケールや手活満足度尺度A,Visua1Ana1ogue Scale(以下,VAS;視覚評価法)などである.
もう一方が,包括的Q0L指標とされ,基本的構成要 素をバランスよく配置したものであり,EuroQol,SF
−36,SlPなどが挙げられる.S卜36〔18〕は,健康 関連QOしとして国際的に広く使用されているもので,
表9に示す8領域36項目で構成される.健康関連QOL としては,さらに疾患特異的評価尺度が挙げられ.が ん患者のQ0L評価尺度であるEORTCQualityofLi胎 Core30、脳卒中患者を対象としたStrokeSpecific Q0L(ss−Q0L),脊髄損傷者向けのLi危situation Questionnaire(LsQ)などがある。
表4建築王境チェッククリストを育成する9次元と項目の概要 建築環境の次兀 項目数 項 目 の 内 容
建物の快適性 各室の日照・通風・照明の程度、適切な冷暖房の有無、
内装の老朽程度、清潔さ、居室に付設する施設の程度な 33 ど利便性や快適性をもたらす空間・施設について 社交・レクリエーション施設の充実度 各種集会室、各種娯楽施設、屋外運動施設等居住者の
社交やレクリエーション活動に必要な空間・施設の設置 24 状況について
身体機能低下への建築的配慮 建物内外の段差、手すり、車椅子への配慮の程度、機能 回復訓練・治療・入院のための諸室設置状況など老化に
.37 伴う心身機能低下や病気に対する空間・設備上の配慮 建物内の情報の適切さ 放送設備、掲示板、受付の設置状況、職員名、居住者名
の表示状況、建物・プランのわかりやすさなど居住者に対
9 する建物内の情報のわかりやすさについて
建物の安全性 避難・火災のための各種施設、ナースコール等の緊急通 報装置の設置状況、床の滑りやすさ等、高齢者に多い建 14 物内での事故や災害時の通報・避難設備への配慮の状 空間・設備の個別性 便所・洗面所・浴室・調理設備1冷蔵庫・電話・郵便受け・
その他設備の個人専用程度、居室の個室率など空間・
9 設備の個人専用の程度
規模の適切さ ラウンジ・浴室・便所・洗面所・食堂・集会室・居室・の50 人あたり部屋敷、同各室及ぴ建物延床の1人あたり面積 13 や設備の設置数について
管理・運営設備の充実度 所長室・一暁事務室・寮母室・看護婦室・面会室・会議 室・宿直室の設置状況について
7
近隣地域施設の利便性 商店・医療施設・公薬施設が居住者の徒歩圏内にある か、駅までの交通機関等近隣地域施設の利用のしやす 13 さについて
合計
159
表4建築王境チェッククリストを育成する9次元と項目の概要
次 兀
建築クレーム項目
建物の快適性 (居室)通風の悪さ、暑苦しさ、日照の悪さ、室外の騒音、部屋の内装等の悪さ
(便所)換気の悪さ、排水の音、夜間室温の低さ
(洗面)給湯設備無し
(浴室)部屋の内装等の悪さ
(食堂)部屋全体の内装等の悪さ
(屋外)緑の不足
社父・レクリェーンヨノ設 (集会)クフブ室の不足、大集会室の不足、娯楽設備の不足 蒲の充実度 (屋外)園芸用場所の不足、運動設備の不足
(通路)ラウンジの不足
身体的機能低下への建 (居室)、b・とんの収納困難、ベッドの使用制限
築的配慮 (便所)手すり不足・位置不便・腰掛便器不足
(食堂)居室との距離
(通路)階段の昇降困難、階段蹴上げ高い、歩きにくい床の段差
(その他)畳上の動作困難
建築内の情報の適切さ 各階の区別のわかりにくさ、建物内のわかり1こくさ、放送の聞きつbさ、事務室 への連絡不便、掲示板の読みにくさ
建物の安全性 (居室)緊急連絡設備の不備、屋外への避難の不備、緊急避難への不安
(浴室)床面の滑りやすさ
(通路)歩きにくい床の段差
空間・設備の個別性 (居室)家具の持ち込み制限、室内装飾への制限
(便所)便所の共有
(食事)食卓人数の多さ、個人用冷蔵庫不備、個人用台所不備
(浴室)浴室の共用
(その他)個人空間の不足、個人用郵便受けの不備、公衆電話の配置が不適 当、個別電話設置の制限
規模の適切さ (居室)部屋の狭さ、収納の狭さ
(便所)便所の混雑
(浴室)浴室の狭さ、浴室の混雑
(食堂)食堂の狭さ、食卓の狭さ
(集会室)集会室の不足
近隣地域施設の利便性
父通の便商店への便医療施設への便散歩道の不足
表5.建築クレームチェックリスト各次元を構成する項目の概要
78
表6.FlM評価項目および評価内容
評価項目 評価内容(要点のみ抜 干)
セルブケア
食事 咀囑,嚥下を含めた食事動作
整容 口腔ケア,整髪,手洗い,洗顔など
清拭 風呂,シャワー,などから首から下(背中以外)を洗う 更衣・上半身 腰より上の更衣および義肢装具の装着
更衣・下半身 腰より下の更衣および義肢装具の装着 トイレ動作 衣服の着脱、排泄後の清潔,生理用具の使用
排泄管理
排尿管理
排尿の管理、器具や薬剤の使用を含む排便管理
排便の管理,器具や薬剤の使用を含む移乗
ベッド・椅子・車椅子
それぞれの間の移乗1起立動作を含む
トイレ 便器へ(から)の移乗
浴槽・シャワー 浴槽,シャワー室へ(から)の移乗 移動
歩行、車椅子 屋内での歩行、または車椅子移動 階段
12−14段の階段昇降
コミュニケーション
理解 聴覚または視覚によるコミュニケーションの理解
表出 言語的または非言語的表現
社会的認知
社会的交流
他患、スタッフなどとの交流,社会的状況への順応 問題解決 日常生活上での問題解決,適切な決断能力記憶 日常生活に必要な情報の記憶
表7.FA1評価項目
表9.S上36の評価項目
①食事の用意
②食事の後片付け
③洗濯
④掃除や整頓
⑤力仕事貢物
⑥外出
⑦屋外歩行:
⑧趣味:交通手段の利用
⑨旅行
⑩庭仕事家や車の手入れ
⑪読書
⑫仕事
表8.CHART評価項目
①身体的自立
②移動
③移動(交通手段)
④時間のすごし方
⑤社会的統合
⑥経済的自給
①身体機能(10項目)
physical functioning;PF
②心の健康(5項目)
menta1hea1th:MH
③日常役割機能〔身体〕 (4項目)
ro1e−PhysicaI:RP
④日常役割機能〔精神〕(3項目)
role−emotiona1:RE
⑤体の痛み(2項目)
bodiIypain:BP
⑥全体的健康感(5項目)
generalhealthperception:GH
⑦活力(4項目)
vita1ity:VT
⑧社会生活機能(2項目)
social functioning:SF
3.3居住環境と障害構造・QOLとの関連性に関する 既往研究
居住環境と障害構造の関連性に関する研究は,在 宅障害者のフォローアップ研究や,住宅改修効果の 研究の中に散見される.また.近年,環境心理学的 手法を用いた研究も報告されている.
山本は.在宅の脳血管障害患者を対象に,基本動 作能力,生活意欲,手活空間,介護者の状況を評価し,
それらの関連性について考察している〔19〕.田宮は,
在宅脳血管障害患者のADL改善に影響を及ぼす要因 についての研究で,医療機関を退院後、ADLが低下し た群の要因として,住宅環境を挙げ,特に浴室改造 が他の要因と独立してADL改善に有意な正の影饗を 有することを明らかにしている〔20〕.
また,住宅改修による障害構造等の変化を報告し たものとして黒田〔21〕.荒木〔22〕がある.黒田は,
江戸川区の「すこやか住い助成事業」により住居改 善を行ったものを対象に,その効果を①日常の活動 性の向上 ②介護負担の軽減 ③入院・入所の必要 性の減少の3つの側面から調べている.その結果,3 つの側面は相互に関連しており,特に日常の活動性 の向上と介護負担の軽減の関連性が強かったと報告 している.荒木は.兵庫県伊丹市の住環境整備モデ ル事業を受けた高齢者を対象とした調査で,住宅改 善が齢者の行動圏域の拡大や日常牛活動作の自立を 高めるのに有効であったことを報告している.しか し,入浴や排泄動作に関しては物的支援のみでは不 十分であり,完全な自立や完全社会参加を果たした
とは言い難いとしている、
環境心理学的手法を用いた研究では,施設入所の 高齢者と在宅生活をする高齢者及び障害者の調査研 究に分類される.
施設高齢者に関する研究では.疾病率の高さや情 緒活動の低下や身体的訴えの増加など,施設環境が 高齢者の健康面・心理面に与えるネガティブな影響 の指摘が報告されている.また,近年の研究では,
十分に高齢者に配慮された居住環境下では,居住者 の住宅への満足感が長期にわたって保たれ,健康や 寿命も改善されるとの報告もある.児玉らは.高齢 者居住施設の建築条件と居住者の環境適応に関して 調査し,報告している〔23〕〔24〕.入内島は,施設利 用の高齢者が,施設の生活環境をどのように認知し、
主観的QOLにどのような影響を与えているかを調
査している〔25〕.
また,在宅高齢者に関するもので.児玉ら〔26〕は,
65歳以上の在宅高齢者を対象に,前述の建築クレー ムチェックリストを使用した居住環境評価を行い、
居住環境条件,自覚的健康状態.生活全般への適応
性を報告している.斉藤は〔27〕,在宅高齢者・施設 居住高齢者・リハビリテーション病院通院高齢者及 び非高齢者の各集団の生活環境と住環境に関する主 観的な評価を基に,各集団の生活環境と住環境の評 価の実態調査を行い,評価の違いが生じる要因の分 析と、生活環境評価と住環境評価の関連性について 考察している、城は,高齢者の居住状況及びプライ バシーの欲求度,達成度がストレス反応の生起に及 ぼす影響を在宅高齢者と施設高齢者を対象に行った.
その結果,施設高齢者は在宅高齢者よりプライバシ ー達成度が低く,心理的ストレス反応が高いことを 明らかにしている〔28〕.
4.考察
高齢者・障害者の自立した生活の支援,または介 護の軽減を考えた場合,その居住環境から受ける影 響は大きい.環境因子である居住環境の評価手法及 び障害構造・Q(1)Lの評価手法は,既往研究からその 試みが読み取れるが,両者の関連性についての検討 は,十分になされているとは言い難い、今後は,よ
り総合的に1高齢者・障害者の居住環境を捕らえる 居住環境評価尺度の開発,及び各障害レベルやQOL
との関連性について,より詳細な研究が必要と考え
る.
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