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損害保険会社の海外事業展開

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損害保険会社の海外事業展開

野 村 秀 明

■アブストラクト

損害保険会社の海外進出の目的は,1980年代頃迄は,海外進出した日系企 業の現地でのリスクを引受けることであった。その後アジア等新興国の経済 成長に伴って,ローカル市場も魅力的になってきたことから,1990年代頃か ら損保各社は,現地企業及び個人のリスク引受も行うようになってきた。更 に2000年代以降は,M & Aも活用してより本格的にローカル市場に参入す るようになってきている。

こうした海外事業展開は,成長市場への布石,収入保険料及び利益への寄 与,収益性の向上等を目指したものであり,ポートフォリオ分散による安定 化といった効果も現れてきている。一方,現地の規制・文化に合わせた商品 開発やマーケティング,リスク管理・ガバナンス態勢の強化,国内外の人材 の有効活用といった課題も生じてきている。

日本の損保市場拡大が見込みにくい一方,新興国等では市場拡大及び収益 性が見込めることから,損保会社は様々な課題に取り組みながら,今後益々 活発に海外展開を進めていくのではないかと考えられる。

■キーワード

新興国の経済成長,M & A,ローカル市場

5

*平成23年10月22日の日本保険学会大会(神戸学院大学)報告による。

/平成24年1月20日原稿受領。

1 . D& Oにする

2全集 15.7

11.,‑ “”

和文のやり方 昭和

欧文のやり方 Laws,.-欧文の中の数字

(2)

1.はじめに

近年,日本の保険会社の海外進出やM & Aが活発化しており,海外事業 の重要性が高まってきている。本稿では,損害保険会社の海外事業の状況や 海外展開の歴史について概観するとともに,その背景について考察する。

2.損害保険会社の海外展開の状況

⑴ 海外事業の現状

近年,損害保険会社の海外事業は拡大しており,東京海上日動火災保険株 式会社(以下 東京海上日動社 という),三井住友海上火災保険株式会社

(以下 三井住友海上社 という),株式会社損害保険ジャパン(以下 損保 ジャパン社 という)の2012年3月期の海外での収入保険料予想(2011年7 月12日時点)の合計は7,421億円と5年前に比べて8割増になる見込みであ る(図1)。なお,2009年3月期と2011年3月期は前年度に比べて若干減少 しているが,円高の影響によるものであり,現地通貨ベースでは毎年着実に 増加している。また,図2の通り,3社の収入保険料に占める海外の割合は 2007年3月期の8.3%から2012年3月期は14.6%に増える見込みである。

図1 損保3社の海外での収入保険料推移

出典:2011年7月12日付日本経済新聞

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⑵ 地域・事業別割合

東京海上ホールディングス株式会社(以下 東京海上ホールディングス 社 という),NKSJホールディングス株式会社(以下 NKSJホールディ ングス社 という),MS& ADインシュアランスグループホールディング ス株式会社(以下 MS& ADホールディングス社 という)の保険持株会 社3社の2011年3月期の海外事業正味収入保険料の地域・事業別割合は図3 の通りである。

国内事業に関しては,収入保険料の内訳を見ただけで損保各社の戦略の違 いを理解するのは難しいものの,海外事業においては収入保険料の内訳だけ でも三社三様となっており,戦略の違いを伺い知ることができる。

東京海上ホールディングス社は,米国のフィラデルフィア社の買収により,

北米が36%と一番大きく,英国のキルン社を買収したことで,再保険事業が 24%と二番目に大きくなっており,米国及び再保険事業の比率が高くなって いる。続いて中南米15%,アジア12%,生保10%となっている。NKSJホー ルディングス社は南米が41%と一番大きく,次にアジア27%,アメリカ17%

と続き,トルコも8%を占めており,新興国に注力している様子が伺える。

図2 3社収入保険料のうち,海外の占める割合

出典:2011年7月12日付日本経済新聞

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MS& ADホールディングス社はアジアに注力していることから,同地域が

52%と過半を占めており,続いて欧州25%,米州16%となっている。

⑶ 海外事業進出の歴史

日本の損害保険会社の海外進出は,1879年(明治12年),東京海上社(現 東京海上日動社)が創業時に釜山浦,上海,香港の3ヶ所に代理店を設置し たのが始まりである。

戦後になってからは1956年,東京海上社が米国,欧州で,住友海上社(現 三井住友海上社)が香港で,それぞれ元受営業を開始した。以降,日本企業 の海外進出に合わせて,損害保険会社も海外展開を進め,主に日系企業のリ スク引受けを行ってきた。

90年代になると,アジア等新興国の経済力が高まってきたことに伴い,日 本企業にとっての同地域の位置付けが,単なる 生産拠点 から 生産拠

図3 海外事業正味収入保険料の地域・事業別割合(2011年3月期)

出典:各社

IR

資料より算出

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点+販売市場 へと変化してきた。損害保険会社にとっても同様で, 日系 企業のリスク引受け から 日系企業のリスク引受け+現地企業及び個人の リスク引受け に事業を拡大する動きが出てきた。

2000年代に入ると,M & Aも本格的に活用するようになり,海外の現地企 業向け保険分野及び現地の個人向け保険分野での取り組みを積極化している。

⑷ 各社の最近のM &A

3社の最近のM & Aの実績は以下のとおりである。

東京海上ホールディングス社

NKSJ

ホールディングス社

MS&AD

ホールディングス社

マレーシアの ベルジャヤ・ソンポ社 株式を約133億円で30%から70

%まで買い増し,子会社化

インドネシアの

PT. Asuransi Permata Nipponkoa Indonesia

の 株式を49%から80%まで買い増し,子会社化

シンガポール損保 テネット社 の株式100%を約64億円で買収 トルコ損保 フィバ社 の99.07%の株式を約274億円で買収

ブラジル保険会社 マリチマ社 の普通株50%,無議決権優先株70%を 約155億円で取得

2011年 2011年 2010年 2010年 2009年

インドネシアのシナールマス生命に672億円で50

%出資

マレーシアのホンレオン・グループの損保事業を統合し,同グループが

MSIG

マレーシア社の30%株主に

併せて,同グループの生保事業に三井住友海上が約254億円で30%出資 中国の信泰人寿社に約24億円で7%出資

台湾損保の明台社を約288億円で買収

英アビバ社のアジア損保事業を約500億円で買収 2011年

2010年 2010年 2005年 2004年

米国生損保兼営 デルファイ・ファイナンシャル・グループ社 を約 2,050億円にて買収する手続きを開始する旨合意

米損保 フィラデルフィア・コンソリデイティッド社 を約4,987億円で 買収し,完全子会社化

英ロイズ キルン社 を約950億円で買収し,完全子会社化

シンガポール,マレーシアで生損保事業を展開する アジアジェネラル ホールディングス社 を買収

ブラジル損保 レアルセグロス社 の100%株式,同生保 レアルヴィ ダ社 の50%株式を約451億円で買収。

2011年 2008年 2008年 2007年 2005年

出典:各社ニュースリリース及びディスクロージャー資料

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最近の三社のM & A実績で共通しているのは,アジアでのM & Aを積極 的に行っているという点である。

東京海上ホールディングス社とNKSJホールディングス社に共通してい るのは,アジアのみならず,ブラジルやトルコといった新興国でもM & A を行い,成長市場に積極的に進出していることである。

また,東京海上ホールディングス社とMS& ADホールディングス社の共 通項は,損保のみならず,生保のM & Aも実施し,事業分野も拡大してい る点である。

そのほか,東京海上ホールディングス社独自の動きとして,アジアや新興 国ばかりでなく,いわゆる成熟国と言われている欧米においても大型の M & Aを実施している点が挙げられる。これは,アジア等新興国でのM &

Aによって将来の成長を取り込むばかりでなく,成熟国でのM & Aにより 足下の利益の積み上げも図っているものと考えられる。

⑸ 海外進出の背景

日本の損害保険元受保険料は図4のとおり,1996年以降減少傾向にある。

少子高齢化の進展とも相俟って,新車販売台数の減少傾向が続いており,そ れが自動車保険,自賠責保険の収入保険料の伸び悩みにつながっている。

また,図5のとおり日本経済が低成長ないしマイナス成長に陥っていると

出典: インシュアランス 損害保険統計号,日本自動車販売協会連合会資料 図4 自動車販売台数(新車)と損害保険元受保険料(全社ベース)の推移

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いう状況もあり,企業の経済活動や家計の消費が鈍化していることも,建物 や家財を対象とする火災,新種,海上保険等の収入保険料にマイナスの影響 を及ぼしている。一方,アジアをはじめとする新興国は図6のとおり近年急 成長を続け,世界経済における存在感も日増しに高まってきている。

図5 日本の名目 GDP と対前年成長率の推移

図6 実質 GDP 実績及び予測 出典:内閣府

HP

出典:国際金融情報センター及び内閣府のデータに基づき作成。2011年以降は国 際金融情報センターの予測。

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図7のとおり,経済が成長し,国民一人当たりGDPが増えるにつれ,国 民一人当たり損害保険料も増える傾向にあるため,現在は図7の左下に位置 している新興国も,経済成長に伴って将来的には右上にシフトしていき,損 害保険市場も拡大するものと見込まれる。

このように,国内損害保険市場は成長が見込みにくい一方,アジア等新興 国の損害保険市場は今後とも成長が見込めるため,各社とも海外展開を積極 化しているものと考えられる。

⑹ 海外事業展開によるポートフォリオ分散化

損害保険会社の海外事業展開に伴い,ポートフォリオの分散化も,以下の 三つの観点で進んできている。

第一に,海外事業の進展による,引受リスクの地域的な分散化である。地 域分散化は再保険引受によって図るという方法もあるが,海外で元受事業を 拡大することで,再保険引受に比べて,引受リスクを能動的にコントロール できるという利点がある。

第二に,顧客層の分散化である。海外顧客層が,日系企業中心から,ロー カル企業やローカル個人に拡大してきている。

図7 1人当り GDP と1人当り損害保険料(2010年)

出典:Swiss Re Sigma Reportのデータを基に作成。

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第三に,海外損保事業に加え,海外生保事業にも進出することで,事業ポ ートフォリオの分散化も進んできている。

このように分散化が進むことで,ポートフォリオの安定化を図れるという 利点も生じてきている。

3.三井住友海上社のアジア事業展開

損害保険会社の海外展開の一例として,以下,三井住友海上社のアジア展 開を概観する。

⑴ 三井住友海上社のアジア進出の歴史

①損保事業の歴史

三井住友海上社は戦前の1934年にタイに進出し,戦後は1956年香港,1958 年シンガポール,1962年マレーシア,1969年インドネシア,1977年フィリピ ンに進出し,1970年代までに今日のアジア事業の基礎を築いている。同社の 方針として,先発者優位性(First Mover Advantage)を得るために,こ れまで各国において,できるだけ早い時期のライセンス取得を目指してきた。

実際,各国の保険当局や保険業界に技術支援を実施することで,業界の健全 な発展に貢献していることが認められ,各国損保市場発展の初期段階におい て,ライセンスを得て市場参入することができている。アジアにおいて早期 に拠点展開したことで,1985年のプラザ合意以降の円高進展により日系企業 のアジア進出が加速した局面においても,アジア各国で積極的に日系企業の リスク引受けを行うことができ,業容を拡大することができた。

②M&Aの活用

その後,アジアでは経済成長に伴って富裕層,中間層が増え,ローカル市 場も損保事業にとって魅力的になってきたことから,現地の企業及び個人の リスク引受も開始した。しかしながら,ローカル市場で本格的に事業展開す るには販売網,損害サービスネットワーク,ローカル人材,現地市場の知見

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等が必要不可欠であり,それらを自前で構築していくには時間も手間もかか るという課題に直面していた。そうした課題を乗り越える意味もあり,2004 年に英国アビバ社のアジア損保事業,2005年に台湾大手損保会社である明台 産物保険社を買収した。併せて各国,地域で,三井住友海上社の現地法人等 の拠点と買収した会社を統合することで,コスト削減等のシナジーも実現し てきた。また,2006年にはアセアン事業を統括するアジア持株会社をシンガ ポールに設立し,権限と責任をアジア持株会社に委譲することで,現地にお ける迅速な意思決定と事業執行を実現できる体制を構築した。なお,同じ時 期に欧州及び米州でも地域持株会社体制に移行し,海外三極持株会社体制と している。

このように,M & Aによる戦略的成長(Strategic Growth)と,自力で の有機的成長(Organic Growth)により,図8のようにアジア各国・地域

図8 三井住友海上(MSIG)の損保事業の主要国・地域での収入保険料順位

濃い網掛部分が三井住友海上社,薄い網掛部分が日系他社。

出典:各国・地域のデータを参考に作成

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においてプレゼンスを高めてきた。

シンガポール,マレーシア,タイ,フィリピン,台湾においては収入保険 料でトップ5に入っており,インドネシア,香港においてもトップ10に入っ ている。

③生保事業への進出

近年,アジアにおいて生保事業にも進出しており,2010年4月には中国の 中堅生保である信泰人寿保険社に7%出資を行い,これまでの累計投資額は 約31億円となっている。

2010年10月にはマレーシアの大手財閥であるホンレオン・グループと資本 提携を行った。三井住友海上社のマレーシア現地法人(MSIGマレーシア 社)にホンレオン・グループの損保事業を統合し,現在ホンレオン・グルー プはMSIGマレーシア社の30%株主になっている。また同グループの生保 事業であるホンレオン・アシュアランス社に三井住友海上社が約254億円で 30%の出資を行ったほか,2011年4月には,同グループのイスラム金融にお ける保険類似事業であるタカフル社に約9億円で35%の出資を行い,社名も ホンレオンMSIGタカフルに変更した。

2011年11月にはインドネシアの大手財閥であるシナールマス・グループ傘 下のシナールマス生命に約672億円で50%出資を行い,社名もシナールマス MSIG生命に変更している。

アジア生保事業進出の理由は,主に三つある。第一は,損保のみならず生 保市場もアジアにおいては大きな成長が見込めるため,同市場に参入するこ とで,新たな収益ベースを獲得できるということである。第二に,グループ の三井住友海上あいおい生命社と三井住友海上プライマリー生命社のノウハ ウを活かすことで,出資したアジア生保の更なる成長を見込むことができる。

第三に,三井住友海上社の損保現地法人との間で顧客紹介,クロスセルとい ったシナジーや,アジア各国で出資した生保の地域間のシナジーも見込むこ とができるということである。

(12)

生保進出形態に関しては,現地パートナーとのジョイントベンチャーを基 本とし,株式の過半数取得には拘らない方針である。これは,収入保険料の 一定割合を企業向け保険が占める損保事業においては,経営権を執ることが 重要であると考えているものの,個人向け保険が中心である生保事業におい ては,当該国のリテール市場に精通した,信頼できる現地有力パートナーと 組むことが何よりも重要であると判断しているからである。但し,株式の過 半数は取得しないものの,意味のある水準にして,経営には積極的に関与し ていく方針である。また,日本と同様にアジアにおいても銀行チャネルの成 長性が高いことから,現地パートナー傘下の銀行等での販売も拡大していく 計画である。

このように,損保事業に加えて生保事業にも参入することで,アジアを面 として捉えた,アジアにおけるドミナント戦略を展望している。

⑵ MSIG ブランドの展開

日系企業中心の事業を行っている頃は,各国の現地法人の社名も,三井住 友海上シンガポール(Mitsui Sumitomo Insurance Singapore)や三井住 友海上マレー シ ア(Mitsui Sumitomo Insurance Malaysia)で,全 く 問 題なかった。しかしながら,ローカル市場,特に個人市場に本格的に参入す るにあたっては, 三井住友海上(Mitsui Sumitomo Insurance) では知 名度が低い上, ミツイスミトモ という社名では現地の人々に覚えてもら いにくいという問題 が あ っ た。そ の た め, 三 井 住 友 海 上 で は な く,

Mitsui Sumitomo Insurance Groupの頭文字を用いて MSIG というブ ランドを構築し,社名もブランドに合わせてMSIGシンガポール(MSIG Insurance Singapore),MSIGマレーシア(MSIG  Insurance Malaysia  )

等に変更し,一般消費者への浸透を図っている。具体的には,テレビ・コマ ーシャルや,新聞・雑誌・公共バスの車体等への広告,繁華街や空港のサイ ンボード等を活用して,地域横断的にブランド展開及び広報活動を推進して いる。こうしたブランド戦略により,MSIGの知名度も上がってきており,

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現在では日本の保険会社というより,外資系保険会社というイメージが,一 般消費者の間にも浸透してきている。

なお,2010年4月に三井住友海上社,あいおい損保社,ニッセイ同和損保 社が統合したことで,日本国内のロゴはMS& ADで統一しているが,アジ アを含めて海外ではMSIGブランドがようやく浸透してきた段階にあるこ とから,変更はせず,引続きMSIGブランドを育てていく方針である。

⑶ 三井住友海上社のアジア損保事業の現状

①収入保険料

2003年迄は日系ビジネスがアジア損保事業の中心で,収入保険料の7割を 占めていた。しかしながら,英国アビバ社のアジア損保事業や台湾の明台産 物保険社を買収し,その後もローカル事業に注力してきたことから,現在で は日系ビジネスとローカルビジネスの比率が逆転し,図9のとおり顧客別収 入保険料はローカル72%,日系28%となっている。

販売チャネル別収入保険料は図10のように,自動車ディーラー,ブローカ ー,代理店,直接販売,銀行と,バランスの良い構成になっている。

販売チャネルを多様化することで,人種,民族,宗教,年齢,職業,所得 水準,性別,家族構成といった属性毎の様々な顧客層にアクセスすることが できる。そして,そうした属性毎の特性を把握して,それぞれのニーズに応 える商品,サービスを提供することで,良質な契約者層を囲い込むことが可 図9 顧客別収入保険料割合(2010年度のアジア地域合計の元受収入保険料)

出典:MS&ADホールディングス社

IR

資料

日系 28%

ローカル 72%

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能になっている。また,販売チャネルが多様化していることから,環境変化 に応じて,注力チャネルや注力商品を変える等の調整ができるという利点も ある。

種目別収入保険料割合は図11のとおりである。自動車保険の割合が高くな っているものの,アジアの同業他社に比べると低い水準にある。一方,火災 保険,貨物保険等収益性の高い種目の割合は同業他社よりも高くなっている。

図10 販売チャネル別収入保険料割合(2010年度のアジア地域合計の元受収 入保険料)

図11 種目別収入保険料割合(2010年度のアジア地域合計の元受収入保険料) 出典:MS&ADホールディングス社

IR

資料

出典:MS&ADホールディングス社

IR

資料

(15)

全般的にバランスのとれた種目構成になっていることから,種目毎の料率変 動サイクルが異なっても,ポートフォリオ全体では平準化するという効果も ある。また,景気動向によって好調な種目,不調な種目があるが,種目のバ ランスがとれていることで,収入保険料水準を安定化させる効果もある。例 えば,金融危機の際物流が滞ったことで,貨物保険の保険料が落ち込んだが,

種目のバランスがとれていたことから,他の種目でそれをカバーすることが できたといった効果も表れている。

②収益性

前述のとおり,バランスのよい販売チャネルにより良質の契約者層を囲い 込むことができ,バランスのよい種目構成が収益水準とその安定化に寄与し ていることから,アジアでのコンバインドレシオは図12のとおり90%前後で 推移している。三井住友海上社単体のコンバインドレシオ(除く自賠責保 険)が,2007年 度97.4%,2008年 度100.8%,2009年 度101.5%,2010年 度 98.7%と推移しているのに比べて低く,アジア損保事業の収益性は高い水準 にある。なお,アジア事業にはオセアニア事業も含まれており,ニュージー ランドの地震の影響があったため,2010年度のコンバインドレシオは97.0%

と他年度より高くなっている。

図12 アジア損保事業のコンバインドレシオ推移

出典:MS&ADホールディングス社

IR

資料

(16)

図13はアジアの主要拠点毎のコンバインドレシオ等の推移である。各国,

地域ともほぼ良好に推移しているが,インドおよび中国のみ100%を超えて いる状況にある。これは,他の拠点に比べると両拠点の歴史がまだ浅く,発 展途上にあり,十分な事業規模に達していないためである。しかしながら,

両拠点の増収率は他拠点よりも高く,両市場共に損保市場自体の今後の拡大 も期待できることから,事業規模の拡大に伴ってコンバインドレシオも改善 していくものと見込んでいる。

4.損害保険会社の海外事業展開における今後の課題

東京海上ホールディングス社,NKSJホールディングス社,MS& ADホ ールディングス社共,将来の成長を見込んで海外事業を積極的に拡大してい るが,一方で課題も生じてきている。

⑴ 現地事情に合わせた商品開発,マーケティング

海外展開が進むにつれ,海外事業の中心が日系ビジネスからローカルビジ ネスに移ってきている。そうした中,シナジー効果追求のため,商品開発,

マーケティング等の面で日本のノウハウ活用を図っているが,日本で行って いることを現地でそのまま行ってもうまくいかないケースも多い。現地の規

図13 アジア主要拠点の増収率,コンバインドレシオ,ROE

出典:MS&ADホールディングス社

IR

資料

(17)

制,慣習,文化等を踏まえて現地流にアレンジする,もしくは場合によって は日本のやり方にこだわらず,ゼロから作り上げることも必要になってきて いる。

⑵ リスク管理・ガバナンス態勢の強化

法制度や販売慣習等も日本とは違う状況下,リスク管理やガバナンス態勢 をどのように強化していくのかという課題もある。特に過半数を出資してい ない場合は,出資先のみならず,パートナー株主との目的意識や管理手法の 共有も重要になってくる。

⑶ 人材活用

人材をいかに有効活用していくかも大きな課題である。日本人スタッフを 海外展開に合わせてグローバル人材に育成していくことは勿論重要である。

しかしながら,それ以上に現地スタッフとの間で,経営理念,ビジョン,戦 略をいかに共有し,いかに現地スタッフの力を引き出し,最大限活用できる ような仕組みを構築していくかが非常に重要である。

かつての日系ビジネス中心の時代であれば,現地法人社長を含めて重要な ポジションに日本人駐在員を派遣して,現地スタッフを管理するという経営 スタイルで特段問題はなかった。しかしながら,ローカルビジネスが中心に なってくると,やはり現地のことを一番よく知っている現地スタッフに重要 な役割を任せた方が,様々な面でうまくいくものと思われる。そのためにも,

現地スタッフの能力を最大限発揮できるような報酬制度,組織体系を構築し,

権限委譲を行うと同時に責任と義務の明確化を図っていく必要があるものと 考えられる。

日本市場とは異なる環境下,様々な課題があり,また今後とも新たな課題 が生じてくるものと予想されるが,損害保険会社各社はそうした課題に積極 的に取り組みながら,成長市場である海外での展開を,今後益々活発化して

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いくのではないかと考えられる。

(筆者は三井住友海上火災保険株式会社勤務)

参照

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