巨大災害・巨大リスクと保険:はじめに
平成24年度大会シンポジウム
総合司会 福 田 弥 夫
1.本シンポジウムは,2011年3月11日に発生した東日本大震災や同年のタ イの大洪水が提示した 巨大災害・巨大リスク への対応の現状の問題点を 確認すると同時に,かなりの確率で将来発生することが予測されている巨大 な災害(南海トラフ地震など)につき,巨大災害の被害予測と対応に向けて の課題を検討するものである。東日本を中心に甚大な被害をもたらした東日 本大震災については,すでに関東,関西そして九州の各部会においてシンポ ジウムや公開フォーラムなどの形で取り上げられており,そこでは多くの問 題点が指摘されている 。本シンポジウムは,東日本大震災を念頭に置きな がら,対象を広く 巨大災害・巨大リスク とすることとした。各シンポジ ストの報告については,総論的課題と各論的課題に分け,各自の視点から
巨大災害・巨大リスク について考えることとした。
各シンポジストの報告内容は次のとおりである。
堀田 一吉氏:巨大災害・巨大リスクに対する保険制度の総論的な課題 山本 哲生氏:地震保険制度のあり方についての総論的な課題
黒木 松男氏:東日本大震災を通じて明らかとなった現行地震保険制度の 各論的課題
篠目 貴大氏:BCPを中心とした企業の巨大災害・巨大リスク管理 松尾 繁氏:損害保険会社の巨大リスク引き受けについての取組み
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*平成24年10月21日の日本保険学会大会(日本大学)報告による。
/平成25年1月29日原稿受領。
1) 保険学雑誌619号
【平成24年度日本保険学会大会】シンポジウム 巨大災害・巨大リスクと保険
明田 裕氏:東日本大震災における生命保険業界の対応と,今後発生が 予想される巨大災害に対する展望
江利口耕治氏:巨大災害・巨大リスクに対する再保険の役割と異常災害に 対する引き受け
2.東日本大震災は東日本の太平洋沿岸を中心に未曽有の被害をもたらした が,大規模自然災害による損害発生の頻度および損害額は,1980年代後半か ら現在に至るまで上昇傾向にあり,この傾向は今後も続くものと思われる。
2011年に発生した東日本大震災,台風,そしてタイの大洪水による損害は,
国や地方公共団体などの官のみならず,製造業などの民間企業はもとより,
保険会社や再保険会社なども深刻な影響を与えている。
東日本大震災においては,生命保険会社,損害保険会社,そして協同組合 のいずれもが,速やかな対応をしたが,その中でいくつかの問題点が浮かび 上がったことも事実であろう。
このシンポジウムでは,巨大災害・巨大リスクに対する保険の役割に始ま り,大規模災害に対する補償,リスクの管理,巨大災害の引き受け可能性,
付保可能性に加えて,再保険などの選択的なリスク移転の方法などについて も検討を加えてきた。そして,総論的な課題において,現行の官民役割分担 を維持すべきなのか,それとも純粋に民間の役割とするのか,逆に社会保障 的なものとして考えるかについて,考え方の違いが明確に提示されている。
将来に予想される巨大災害の発生とその損害額に関しては,現行のシステ ムで保険会社や再保険会社が十分な対応をすることが可能かについても議論 があった。この場合,金融市場が代替的な危険の引き受け能力を提供するこ とになると思われるが,巨大災害の金融市場へのリスク移転はそれほど進ん でいないのではないか。地震保険の在り方の検討を中心に,速やかな対応が 必要であるが,次の巨大災害が発生する前に,制度的な手当を済ませておか なければならない。そして,与えられている期間はそれほど長くはないこと を自覚しなければならない。
(筆者は,日本大学法学部教授) 巨大災害・巨大リスクと保険:はじめに
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