フ ォ ー ク ナ ー 「八 月 の 光 」 の 時 間 空 間 に っ い て t1)
フ ォ ー ク ナ ー 「入 月 の 光 」の
時 間 室 間 に つ い て
速 川 浩
一11)iSi8theworldandtime‑(P .385)
暦制命円間
と時宿と空と線と
計と霊と間
説時時亡点時
序12345
「八 月 の 光 」(LighthlAugust)はXVi11iamFaulkner(1897‑)の 主
要 小説 としては 第五 作,僅 か の期 間 に傑 作 が 続 々 と泉 の如 く湧 き出 した ・か の
「驚嘆 す べ き四 ケ年 」(1929年 一32年)の 最 後 を飾 る二 作で あ り,多 くの批 評 家 に よ り彼 の最 高 作 と うた われ てい る。 しか し この作 に は難 解 なス タイル を別 と して殊 に我 々 日本 人の理 解鑑 賞 の ハ ンデ キャ。プ とな る二点 が あ る。 そ の一 つ は主 人 公 ジ戸 一 ・ク リス マ ス(JoeChristmas)の 体 に 四分 の一 の黒 い血 が 混 つ て居 るだ けで彼 の受 けね ば な らぬ精 神 的 肉体 的 の迫害,そ れ に毅 然 と耐 えて行 く高 い 誇,又 そ の誇 故 に か えつ て 自 ら進 ん で 身 を汚 し,つ い に破 滅 して行 く悲 劇 で あ る。 この様 な誇高 い黒 人 或 は半黒 人 の苦悩 は フ ォー クナー の他 の作 品 ・
た と えば 「アブサ ロム ・アブ サ ロム」 の チ ヤ ール 家 ・ボ ン,及 び そ の遺児V・
ボ ン,又 は 「墓へ の闘 入者 」 の ルー カス等 に常 に現 われ る重 要 テ ー マ で あ る が,日 本 文学 には僅 か に藤 村 の 「新 生 」 の丑 松位 しかそ れ に対 抗 す る苦悩 は描 れ て い ない 。・今 一 つ の もつ ≧大 きな障害 は全 篇 を貫 く偏 狭 なキ リス ト教 的正 義 観 へ の作 者 の批 判 で あ る。 カテキズ ムを記憶 させ る為 に卒倒 す るまで食 も与 え ず鞭 打 つ養父,神 の道 にそ むい て生 れ た不義 の 子 な るが故 に現 実 の 自分 の孫 を リンチせ よ と喚 く祖 父,神 の 白人 に下 した呪 と贈 罪 で あ る と黒 人 を見 る夫 人 ・
〈2ウ 人 文 研 究 第 十三輯
ノ ロ マ ン ズ ラ ン ド
こ れ 等 は 宗 教 的 無 人 地 帯 に 住 む現 代 日本 人 に とつ て は風 変 りな 変 人 と しか 考 え られ な くな り,作 者 が 自分 の説 の 正 し さ を証 明 す る為 に で つ ち あ げ て や が て 打 砕 くべ き もろ き城 壁 で は な い か と さ え疑 う。 勿 論 これ 等 の 疑 は アメ リカ の南 部 の土 地 風 習 を知 り・ フ ォー ク ナ ー の 他 作 品 に親 しむ 事 に よ り薄 ら ぐ疑 で は あ るが,我 々 は や は り頭 で 理 解 して もそ れ を胸 打 つ 怒 りや 悲 しみ と して 味 うに充 分 な風 土 土 壌 に 育 つ て 居 な い 事 を 感 じ るの で あ る。
だ が これ 等 の ハ ン デ キャ。プ を 打 越 え て ・ この 作 に 盛 られ た 人 間 の 心 の悩 み, 弱 き,醜 く き,残 酷 さ等 の 深 さ に触 れ る時 に 我 々 の 心 は 打 震 え ない で は 居 られ
な い 。 し か もそ れ 等 を写 す 筆 の 冴 え は正 に脂 の 乗 り切 つ た フ ォー ク ナ ー の ス タ イ ル の絶 頂 で あ る と思 わ れ る。
こ の小 論 の 目的 は この傑 作 「八 月 の 光 」 に表 現 さ れ た フ ォー ク ナ ー的 時 間 ・ 空 間 の 世 界 観 の 様 式 を説 明 す る事 に あ るが,論 を 進 め る前 に 一 は この小 説 を ま だ 読 ん で い な い 人 の 為 に,又 一 は 今 後 の 推 論 の 必 要 の 為,こ の 物 語 の全 体 的 構 造 を な るべ く簡 略 に整 頓 した形 で 説 明 し た い と思 う。 フ ォ ー ク ナ ー作 品 の 常 と
し て テ ー マ は 決 し て単 一 簡 明 で は あ り得 ず,こ の 作 も主 な三 つ の 申 心 を 持 つ て 居 る。 一 つ の サ イ クル は分 娩 近 い 体 で,逃 げ た男 を 追 つ て 来 た リナ ・グ ロ ー ブ (LenaGrove)を 廻 る物,第 二 の サ イ ク ル は 教 会 を追 わ れ た 孤 独 の説 教 師 ハ イ タ ワ ー(Hlghtower)を 廻 る物,第 三 の 最 も重 要 な サ イ クル は 半 黒 人 ジ 。一 ・ ク リス マ ス の 放 浪,犯 罪,リ ン チ 等 を廻 る物 で あ る。 そ して そ の 三 つ の サ イ ク ル を接 続 す る形 で 副 次 的 な人 物 が 配 置 され る。 そ の 関 係 を図 示 す る と次 の 様 に な る。
バ イ ロ ン ・バ ンチ(ByroiiBunch)は リナ に 一 目惚 れ して 色 々 親 切 を尽 した が 報 い られ な い恋 人 と して はAサ イ クル に属 し,又 ハ ィ タ ワ ー の 唯 一 の 友 人 と
してBサ イ クル に 接 す る。 彼 は 又 ク リス マ ス と同 じ仕 事 場 に 勤 め て い る点Cと 結 付 くが,ク リス マ ス の 情 事,犯 罪,処 刑 等 に は 噂 程 度 の 関 接 関 与 し か し な い 。 ブ ラ ゥ ン の 本 名 は ル ー カ ス ・バ ー チ(Lu()asBurch)で あ るが 今 後 一般 に 通 用 して い る偽 の 名 ブ ラ ウ ン で 呼 ぶ 事 に して,彼 は リナ に妊 娠 させ て 逃 出 して 来 た 不 実 な男 と してAに 結 付 き,同 時 に ジ.一 と同 居 して 酒 の 密 造 の 仕 事 の相
フォー クナー丁八月の光1の 時間空間 にっいて(3)
棒 と な り・ 彼 を売 るユ ダ の役 を務 め てCサ イ クル に結 付 く。 ハ イネ夫 妻 は ジ 、,
一 の 祖 父 母 と してCと 関 聯 し,リ ナ の 分 娩 に ハ ィ タ ワ ー と共 に立 会 つ た り して A。B両 グル ー プ に 関 係 す る。 こ の三 つ の 中 点 の 連 絡 役 同 志 は互 に 若 干 の 関 聯 を もつ が,そ の 関 係 は 余 り細 か ぐな るの で 省 略 す る事 と し て,一 つ 注 目す べ き 点 は これ ら三 つ の サ イ クル は 殆 ど連 絡 役 を通 じて の み 交 渉 し ・ 直 接 に 相 交 る事
慰 極 め て稀 な事 で あ る。 即 ち リナ とジ 。一 は 直 接 に は全 然 関 聯 の な い 離 れ た所 を 廻 つ て い る二 つ の 円 で あ る。 二 人 は一 度 も会 い もせ ず ・ 互 の 話 題 に 上 る事 も
な い 。 又 ハ イ タ ワ ー は バ イ ロ ン を 通 じ て 常 に ジ 。ヨ ーの 事 件 の経 過 を 聞 い て い る。 そ し て ジ 。一 の 為 に ア リバ イ の 偽 誓 を し て 呉 れ と頼 まれ る事 は 折 角 勝 ち得 た 孤 独 の 平 静 を根 本 か ら揺 が す 物 と して 彼 を 苦 し め る。 この様 に して ハ ィ タ ワ ー は ジ .一 の事 は 常 に念 頭 に あ るが 実 際 に こ の 両 者 が 顔 を合 せ るの は,追 手 に 追 わ れ た ジ.一 が 最 後 に 牧 師 の 家 に 転 げ 込 む 一 瞬 だ け で し か も 次 の 瞬 間 に は 残 酷 な リン チ を受 け て し ま う。 もつ と もこの 一 瞬 の 接 触 は,陰 陽 の 異 っ た電 気 を 含 ん だ 雷 雲 が 充 分 に帯 電 して 遂 に 一 道 の 稲 妻 を発 して 連 な つ た様 に そ の 印 象 は
(4)人 文 研 究 第十三鰻
強 烈 で あ る。 又 リナは分娩 の時だ け牧 師 に産婆 役 を勤 めて も ら う直 接 の接 触 を・
持 つ に 過 ぎない 。
以上 が大 体三 つ の サ イ クル を三 角形 の三 頂 点 と見立 て 〜,そ の頂 点 を線分 で 結ん で見 た この小説 の全 体 の幾 何 学 的 構図 で あ る。
か な り異 つ た この三 つ の世 界が 一 貫す る如 何 な る理 念 に よ り統 一 され るか 膿 今後 の問 題 と な る。
1.時 計 と 暦
(T}】eWatchandtheCalendar)
フ 才一 クナ ーの時間 意 識 に は常 に感性 的 な 時間 と機 械 的 な時 間の別 が 問題 と な る。 自然 人 に とつ て は時 の流 れ は唯 自分 の感 性 の まに まに意 識 され た実 体 で『
あつ た。 しか るに人 間 は次第 に時 を計 る道具,時 計 と か暦 とか年 代表 の如 き物 を考 えて,こ れ 等 に よ り機 械的 に時 を統 一 し規制 す る事 を学ん だ 。 そ してつ い ・ に現 代 で は本来 は時 を計 る手 段 で しか なかつ たそれ 等 の道 具 が 逆 に真 の 時 間 を 押 の けて第 一 義 の位 置 に 坐っ て しまつ た感 が あ る。 我 々は丁 度 湯舟 の申 に入 れ た温度 計 の赤 い線 を眺 めて ・ この湯 は 自分 に は熱 く感 じ るが熱 い 筈 は ない と我 慢 す る男 の様 な愚 を毎 日の 生 活 で 行 つて い ないだ ろ うか 。 機 械的 な時 間 によ り 我 々は或 は昔 と云 い,今 と名 付 け,或 は昨 日 と今 日を分 け,記 憶 と現 実 の別 を つ け る。 然 し胸 中 に生 々 と躍 動 して居 る過 去 もあれば,身 は現 在 の ま 〜で心 を 未来 に飛 ばせ る事 も出来 る。 フ.一 クナ ーの小説 家 の眼 は勿論 この感 性的 な時 間 に よ り事 柄 を見 て行 こ うとす る。 だ か ら我 々が彼 の好 ん で選 ぶ手 法 を時 の逆 行 とか,現 在過 去 の混 在 とか名付 けて も彼 の観 方 か らす れ ば それ が唯一 の 自然
な時 の 流れ 方 なので あろ う。
と もあれ,彼 の 作品 で は機 械的 時 間 を代表 す る物 と して,時 計 のイ メヂ は頻 繁 に持 出 されて何 等 かの シム ボル となつて 居 る事 が 多い。 既 に前 作 「サ ン クチ ヤ リー」 で は テム プル の 目覚 めた淫 売 窟 の華 美 な一 室 で は,支 那 の四人 の天 女 に支 え られ た置 時計 の針 が唯 一本 しか な く十 時 と十 一 時 の間 を指 した ま 、止 っ て居 り,こ の観 楽 境 の狂 つ た感覚 と虚飾 を象 徴 して居 た。 又 ポ パ イの持 つ て い
フ ォー クナー 「八 月の光 」の時 間空 間にっいて(5)
る時 計 は 一 弗 時 計 の 安 物 に太 い プ ラチ ナ の鎖 が つ い て 居 り彼 の 均 衡 を 逸 し た生 活 態 度 を物 語 る如 くで あ る。 「響 き と怒 り」 申 の 時 計 の シ ム ボ ル は 猶 有 名 で あ
る。 即 ち ク エ ン テ ンは父 か ら 「お 前 に 総 て の 希 望 と絶 望 の 墳 墓 を や ろ う」 と云 つ て 譲 られ た 時 計 の 針 をね ぢ 切 つ て し ま うが 時 計 の機 械 は そ の ま 〜 内 部 で 動 い て い る 。 之 は 自殺 を前 に した ク エ ン テ ンの 時 へ の 挑 戦 と 敗 北 を 象 徴 す る と 見 ら 1れ る。 又 ジ エ ー ソ ンの 家 の 時 計 は 常 に 二 つ 数 を誤 つ て 時 を 打 つ 。 これ は コム プ
ソ ン 家 の 頽 廃 と衰 退 を表 わ す に 外 な らな い 。
そ うして 次 に こ の作 に 目 を転 ず る と 作 申 の 主 要 人 物 は 殆 ど何 等 か の 時 計 との 欄 聯 を 作 者 に よ り与 え られ て い る事 に 気 付 く。 そ し て そ れ は 何 を シ ムボ ラ イ ズ す る物 で あ るか を 考 え て 見 よ う。
ジ 。一 を孤 児 院 か ら引 取 つ た 養i父のMcEachemは 頑 固 な プ レ ス ビ テ リ ア ン の 信 奉 者 で あ る。 彼 は 一 定 の基 準 に従 つ て 己 を律 し・ 他 人 に も之 を求 め て 一 点
カ テ キ ズ ム
ー 劃 を も容 赦 しな い。 彼 は 少 年 の ジ.一 に 厳 格 に 宗 教 問 答 集 の 暗 諦 を命 じ ジ.
一 が 失 敗 す る と一 時 間 の 余 裕 を 与 えて 云 う。 ・ 9
̀̀Thentryagain .1,11giveyouanotherhour。"FromhisP㏄ketMc・
Eacllerntookathicksilverwatchalldlaiditface・uponthetable.… … ExactlyonthedotofthehourMcEachernraisedhis}1ead.̀̀Doyou
knowiガnow?・,hesaid.
Theboydidnotmo▽e.̀̀No,"hesaid.McEachernrose,deliberately, withouthaste.Hetookupthewatchandcloseditandreturneditto hispocket,100pingthcchainagaint}】roughhissuspender.̀̀Come,,,he said.(pp.129‑)
そ れ か ら 彼 は 正 確 に 一 時 間 毎 に ジ.一 を 問 責 し,ま だ 暗 記 が 出 来 て 居 な い と '知 る と 鞭 で か つ き り 十 度 だ け 打 つ 。 そ の 折 艦 を 何 度 か 繰 り 返 す 養 父 の 顔 に は 怒
り の 如 き 人 間 的 感 情 は な い し ・ ジ ・ 一 も 又 う め き 声 も 発 せ ず こ の 打 郵 に 失 心 す る ま で 耐 え る 。 マ ック イ ー チ ャン に 取 つ て 娃 信 仰 と は 既 に 個 人 の 魂 の 憧 れ 等 で は な い 。 人 の 定 め た 約 束,掟,即 ち 教 会 教 義 教 式(そ の 代 表 的 な 物 は カ テ キ ズ ム)に 合 一 す る 事 に 外 な ら な い 。 同 様 に 彼 は 生 活 の 秤 に 狂 い や す い 個 人 の 感 情
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(6)人 文 研 魂 第十 三輯
や 意 志 を用 い る事 な く,最 も客 観 的 な 基 準 を求 め よ うと す る。 古 風 だ が 頑 丈 で 狂 い そ う もな い彼 の厚 い 銀 時 計 は 完 全 に彼 の要 求 を み たす で あ ろ う。
マックィ ー チャン と 同様 に 自分 の 生 活 行 動 を時 計 の如 き 外 的 基 準 に 合 せ る所 に 正 義 を見 出 して 居 た 今 一 人 の男 に リ ナ に恋 す る前 の バ イ ロ ン が 居 る。
彼 は木 材 工 場 に 七 年 間 営 々 と 休 む事 な く製 材 機 械 に 木 を食 わ し続 け て 来 た男 で あ る。 普 通 の 日 は 彼 は工 場 の汽 笛 の 指 図 通 り行 動 す る。 然 し土 曜 日の 午 後 も 彼 だ け は居 残 つ て 仕 事 をす るが,汽 笛 の 代 りに 愛 用 の 銀 の大 時 計 を食 事 を す る 時 に も傍 離 さず 置 いて 一 時 に な れ ば誰 一 人 轡 め る者 もな い の に 一 秒 も誤 らず 仕 事 に か \ る。 夕 方 に は 又 空 想 の 汽 笛 に合 せ て 正 確 に 仕 事 を や め,そ れ か ら何 所 へ 行 くの か 知 つ て 居 るの は 唯 一 人 の 友 人 ハ イ タ ワ ーだ けで あ る。
Thismanalonekn・ws、vhereBunchgoeseachSaturdayevelling whenthcimaginarywh{stleblows(orw}1e11]Bunch'shugesilverwatch saysthatithasblONvn.)(PP.41‑一)
この様 な 彼 の判 で押 した単 調 な生 活 に一 大 変 調 が 来 た 。 そ れ は 妊 娠 し て居 る リナ に こ の中 年 男 が 一 目惚 れ を し て し ま つ た 事 で あ る。 始 め て リ ナ に人 を たず ね られ た 時,彼 と して は 何 年 来 に始 め て の 事 だ が 五 分 だ け休 の 延 長 を己 に 許 し
た 。
Hetakesfromh{spocketthesilverwatchandlooksatiちthenlie toosits,attheotherendofthestockoflumber.̀̀Ireckonfive minuteswillbeaboutright.,,(P.45)
これ は 彼 に と つ て は一 大 飛 躍 だ が リ ナ は 逆 に 驚 い て 「貴 方 つ て,い つ も少 し休 む 時 で も,勘 定 を して 居 るん で す か 」と 反 問 す る。 こ の作 申 の 重 要 人 物 中 時 計 に つ い て 何 等 の 言 及 が な い の は彼 女 だ け で あ る。 後 で 述 べ る様 に彼 女 こそ は大 地 の 営 み の如 くtimeleSSな 存 在 だ か らで あ る。 バ イ ロ ン の 恋 が 強 くな る と 共 に彼 の 時 計 ば か りで な い,も つ と大 き く 日程 ま で も狂 つ て し ま う。 か くて 読 者 は 日曜 日の 安 息 を も敢 て 冒 して 牧 師 を 宅 に訪 問 す る彼 の姿 を見 る。 そ の 足 取 りか らして 既 に牧 師 を して 「彼 は 誇 と反 抗 を学 ん だ 」(P・272)と 叫 ば し め る程 確 乎 た る蛎 に み ち て い る。 牧 師 の 安 息 日 を破 る事 す ら彼 は 言 う。 「日曜 とて 人
噛
フ ォ ー ク ナ …一・「八 月 の 光 」 の 時 間 空 間 に っ い て(7>
の 考 え つ い た 物 だ 。 日 曜 が 今 に 牧 師 に 仕 返 し を し た が る ぞ 。 」 ButthenIreckonSundaywouldwanttotakerevengeonhimtoo.、
beingasSundaywasinventedbyfoLks.(p.317)
と 人 の 作 つ た 機 械 的 時 間 を 完 全 に 無 視 す る 態 度 に 出 る 。 之 は 全 く 恋 の 行 つ た 蒔 タ モ フ ォ ー ゼ で あ る 。
ジ.一 が 養 父 の 目 を 盗 ん で 仔 牛 を 売 飛 ば し た 金 で 最 初 に 買 つ た 物 は 女 に 会 い に 行 く 服 と 一 ド ル 時 計 で あ つ た 。
Hetookfromhispocketadollarwatch.Hehadboughtitthree daysago,withsomeofthemoney.Buthehadneverownedawatch
beforeandsohehadforgottow沁dit.Buthed{dnotneedthewatch totellhimthathewasalreadylate.(p.149)
時 計 を 買 つ た 事 は 彼 も又 世 間 並 の 生 活 に 合 流 し よ う と す る 意 志 を 示 す 。 然 し
ノ ロ ム
畢 寛 彼 は 自 然 児 で あ る 。 カ テ キ ズ ム を 暗 記 出 来 な か つ た 様 に 外 的 な 基 準 に 束 縛 さ れ た 生 活 に 耐 え 切 れ ぬ 事 は 折 角 買 つ た 時 計 も巻 忘 れ た 事 に よ り シ ム ボ ラ ィ ズ さ れ る 。
時 計 を 持 っ て 居 な い 事 を 言 及 さ れ た 人 物 が 二 人 居 る 。 一 人 は ハ イ タ ワ ー で あ る 。 彼 は 暗 い 窓 辺 に 坐 っ て 水 曜 と 日 曜 の 夜 は 彼 が 追 わ れ た 教 会 の 音 楽 の 始 る の を 待 ち 受 け て 居 る が も う 二 十 五 年 間 も時 計 と 縁 の な い 生 活 を 送 つ て い る 。
Heknowsalmosttothesecond、vhen1ユeshouldbegilltohearit(=
tLemusic),withoutrecoursetowatchorclock.Heusesneither,has Ileededneitherfortwentyfiveyearsnow.Helivesdissociαtedfrom:
mechanicaltime・(イ タ リ ツ ク 筆 者)(p.320)
彼 は 華 々 し い 祖 父 の 武 功 を の み 夢 に 見 て い る 男 で あ る 。 自 ら も 言 う様 に 彼 の 生 活 は 誕 生 の 三 十 年 前,祖 父 が 南 北 戦 争 の 際 に 走 る 馬 上 か ら射 落 さ れ た 時 に 終 つ て 居 た の だ 。 そ れ 以 来,時 は 進 行 を や め,生 殖 は 止 り,彼 に は 無 為 の 時 が 続 く 。 そ う し た 彼 は 「機 械 的 時 問 と 縁 が な い 」 ば か り で な く 総 て の 時 間 に そ む い て 居 る の で あ る 。 ・.愈
今 一 人 時 計 を 持 テこぬ 男 は ブ ラ ウ ン で あ る 。 彼 の 根 無 し 草 の 如 く,風 の ま に ま
●
(8)人 文 研 究 第 十 三 輯
に 動 く 完 全 な オ ポ チ ユ ニ ス ト振 り は 時 計 を 持 た ぬ 事 に よ り 象 徴 さ れ る 。 殺 人 の 夜 の 時 間 証 言 が 支 離 滅 裂 な の を シ エ リ フ に 責 め ら れ る と 「俺 み た い に 製 材 工 場 で く ろ ん ぼ 仕 事 を や つ て い る 者 が 時 計 を も つ て い る と 思 う か 」 と 食 つ て か 〜 る が シ エ リ フ か ら逆 襲 さ れ る 。
̀̀AndamanthatcaIlaffordtoridearoundalldaylollginaIlew carcllllaffordtopassthecourthouseoftenenoughtoseetheclockand keepupwiththetim.e."(P.84)
然 し そ れ が 出 来 な い 男,全 く 行 動 に 信 念 の な い 男 が ブ ラ ウ ン な の で あ る 。 時 計 よ り少 し 長 い 時 間 の 尺 度 は 一 週 間 の 七 曜 で あ る 。 フ 舜 一 ク ナ ー の 諸 作 に は 曜 日 が 極 め て 正 確 に 指 定 し て あ る物 が 多 い 。(最 近 作 の 「寓 話 」AFableで
は 各 章 の 名 が 曜 日 に な つ て い る 。)こ の 作 で も ジ.一 が 殺 人 を 犯 す の が 金 曜 の 深 夜(或 は 土 曜 の 早 朝),そ れ か ら 追 手 を 逃 れ て の 逃 避 行 は 一 週 間,刻 明 に 曜
1日を 刻 ん で 行 く
。 然 し 飲 ま ず 食 わ ず に 逃 廻 る ジ.一 の 意 識 に は 曜 日 の 意 識 は 霞 .ん で 行 く 。 平 常 は 一 日 一 日 は 柵 の 杭 の 様 に 順 序 良 く 番 号 が 打 た れ て 並 ん で 居 た の に,殺 人 の 夜 以 来 彼 は 時 の 将 外 に 放 り 出 さ れ て 居 る 事 に 気 付 く 。
Whellhethinksabouttime,itseelnstohimnowthatforthirty .yearshehadlived.insideanorderlyparadeofnamedandnumbered .dayslikefencep典ckets,andthatonenighthewenttosleepandwhen
hewakeduphewasoutsideofthem.(1)P.289‑290)
気 の 遠 く な る 様 な 空 腹 感,そ れ よ り も 強 い の は 今 日 は 何 曜 日 か 知 り た い 慾 望 で あ る 。
… …thenameof‑thedayoftheweek∈eemedmoreimportantthan thefood.(1).290)
そ れ は 彼 の 時 の 歩 謂 に 合 せ よ う と す る 必 死 の 空 し い 努 力 で あ る 。 追 わ れ る 身 の 危 険 も 忘 れ て 幾 度 か 人 を 捕 え て 「今 日 は 何 曜 日 か 」 と 聞 い つ め て 恐 怖 の 叫 び を あ げ させ る 。 「彼 は 曜 日 を 勘 定 し て 居 る 自 分 に 気 付 く 。 生 れ て 始 め て 彼 は 完 成 し た 日 を ・ 何 か 確 乎 た る 目 的 か 行 動 に ・ し か も 過 不 足 な ≦ 使 い た い 要 求 に 駆
ら れ るの で あ る 。」
フ ォー クナ ー 「八 月の光 」の 時間空間にっい て(9)
耳 ・f・u・ ・dth・th・w・ ・t・yingt・c・1・u1・t・th・d・y・fth・week・lt
rwasasthoughnowatlasthehadanactualneedtostrikeoffthe accomplishoddaystowardsomepurpose,somedefinitedayoract, withouteitherfallingshortorovershooting.(P.293)
今 迄 一 生 を 賭 け て 時 と云 わ ず 総 て の尋 常 の 流 れ に さ か らつ て 肩 を讐 かせ 胸 を 張 り生 きて 来 た反 抗 児 ジ 。一 の 最 期 の 迫 つ た今 そ れ は悲 しい 心 の 弱 ま りで あ つ
た 。 ・
この様 に 時 計 や カ レ ンダ ー は こ の 作 で は 良 い 意 味 で は 社 会 の尋 常 な習 慣 約 束 規 律 等 を 現 わ す 。 だ か ら此 等 を無 視 す る事 は社 会 か ら追 放 され る事 と な る。 だ が 悪 い 意 味 で そ れ 等 は 化 石 化 し た 社 会 の 因 襲 ・ 作 つ た 人 間 を 自縄 自縛 にす る絆 を 意 味 す るの で あ る。 「響 き と怒 り」 で クエ ン テ ン の父 が 彼 に教 え た言 葉 一 一 時 計 は 時 を殺 す 。 時 が 歯 車 の カ チ カ チ で 刻 ま れ て い る間 は 時 は 死 ん で い る。
時 計 が 止 つ た時 に 始 め て 時 は 生 き るの だ 。 ・ 一は 又 この 作 の 内 面 に 動 い て い る 。
2時 と 時 制
(TimeandTenSe)
我 々 は 余 りふ だ ん 気 が 付 か ない で 読 ん で い るが 普 通 の 小 説 は 過 去 の テ ンス で 書 か れ て い る物 で あ る。 フ 才一 ク ナ ー とて も勿 論 大 概 は そ の 例 外 で は な い 。 た
と え ば 「響 き と怒 り」 の 冒頭 の 数 行 を挙 げ よ う。
Throughthefence,betweenthecu・lingf1・we・spaces,lcouldsee themhitting.Theywerecomingt・wardwheretheflagwasandlwent alongthefence.
この 過 去 時 制 は 一 体 何 を 意 味 す るの だ ろ うか 。 どの 文 法 書 を 見 て も過 去 時制 縁 「過 去 の動 作,状 態 を現 在 と関 係 な く述 べ る。 これ に対 し現 在 に何 等 か の 結 果,影 響 を もつ もの と して 述 べ る場 合 に は 完 了 時 制 を 用 い る。」 と し か 説 明 し て な い 。 文 法 で は 之 で 良 い か も知 れ な い が 小 説 で は 変 な 事 に な る。 た と え ば 上 例 の一 文 が 「現 在 に 関 係 ない 」 過 ぎ去 つ た 事 件 だ と し た ら・ そ れ を 過 去 と見 る
(10)人 文 研 究 第 十 三 輯
に の 場 合 は 白 痴 の ベ ン ジ ー)の 眼 は 現 在 何 所 に 立 つ て 振 返 つ て 居 る の か 。 勿 論 そ ん な 行 動 す る ベ ン ジ ー と 観 察 す る ベ ン ジ ー と,し か も 時 間 を 異 に し た 二 つ の 人 間 は 居 な い の で あ る 。 「現 在 と 関 係 な い 」 ど こ ろ で は な い,現 在 生 々 躍 動 し て 居 る 刻 々 の 姿 そ の 物 な の で あ る 。 こ の 過 去 時 制 はOnceuponatimethere
wasaqueel1.式 の 過 去 と は 全 然 別 な 物 だ 。 だ か ら フ ォ ー ク ナ ー は 過 去 時 制 の ま
〜平 気 で 現 在 の 時 の 副 詞 を 使 う 。 此 所 で も 普 通 文 法 に 違 反 し て い る わ け だ が 極 め て 心 理 的 に は 自 然 で あ る 。
Whenheheardelevenstriketonighthewassittii】gwithhisback .・g・instat・ee・ … …H・w・ ・n・tthinki・gn・w・(P・103)
… …evenfromherehecouldheartheparitinganddesl'eratebreath ofthemar)whoevennow、vasnotfree.(]P.4ρ4)
tonight,here,110w等 は 文 法 的 な らthatnight,there,thenと で も 修 す 筈 の 所 で あ る 。 過 去 の 事 件 を 生 々 と 現 在 に も つ て 来 る た め に 現 在 時 制 で 書 く
ヒ ス セ リカ ル プ レゼ ン ト のテ ン ス
歴 史 的 現 在 時 制 な る物 が あ る事 は文 法書 は教 えて呉 れ るが,生 々 と した現 在 を書 く過 去 時制 の事 を 私 見 の限 りで は どん な文 法 も扱 つ てい ない のは ど うい
うわ けか いつ も不 審 に思つ てい る。
所 で何 故現 在 の事 を描 くの にわ ざわ ざ過 去 時制 に訴 えな けれ ば な ら な い の か。現 代 英 語 で は現在 時制 は習慣 とか真理 とかい わs"時 を超 越 し たtimelessな 物 を主 として現 す様 に なつ て しまつ た。 元 来 テン スは行動 や状 態 の始 動,継 続 ・ 終 了 等 の観 念 を無 視 した物 で(そ の働 は アスペ ク トの領 域 で あ る)perfective
く め
な物 で は ない が,現 在時制 は殊 にそ の完結 力 が弱 い 。 眼前 を とび去 つ て行 く事 物 は捕 えが た く,若 平 の距 離 を置い て見 た時始 め て像 を結 ぶ と有 名 なサル トル
く ヨ
の フ.ク ナ ー の 時 間 論 で 云 う。 「若 干 の 距 離 」 そ れ が 過 去 時 制 を 選 ば せ た 。 そ う し て 始 め て 読 者 は 結 ん だ 像(即 ち 起 つ た 事)を 理 解 出 来 る 。 フ ォ ー ク ナ ー ば か り で な い,大 概 の 小 説 が 過 去 時 制 で 書 か れ る の は こ の 為 で あ ろ う。
所 が 「八 月 の 光 」 は 冒 頭 か ら
Sittingbesidetheroad,watchingthewagonmountingthehilltoward her,Lenathinks,̀IhavecomefromAlabama:afurpiece.
0
フ ォー クナー 「八 月の光」 の時間空 間にっい て(11)
と現 在 時 制 で 始 るの で あ る。 そ して や が て 過 去 時 制 に切 替 え られ,以 下 多 く の 章 は 頻 繁 に テ ン ス 間 の切 替 えが 行 わ れ る。 「響 き と怒 り⊥ は 前 述 の理 由 で 全 '
部 過 去 時 制 で 書 か れ た 。 次 作 「わ れ 死 に横 わ りて 」 は 逆 に 全 篇現 在 時 制 で 語 ら れ る。 こ れ は 細 分 き れ た各 章 の代 表 者 が 話 しか け る形 式 と し て理 解 が 行 くが, そ れ で は こ の作 の テ ジ ス の 交替 は 果 して 何 の意 味 が あ る の だ ろ う。 仮 に この 八 月 の あ る土 曜 日,リ ナ が長 旅 を続 け て ジ エ フ ア ソ ン の 町 に 辿 りつ き,バ ー デ ン 夫 人 邸 の 燃 え上 る煙 を 見 た 時 を現 在 と し て,そ れ か ら事 件 が 順 に先 へ 動 い て 行 く時 は 現 在 時 制 で 追 い,話 が フ ォー ク ナ ー 流 に そ れ よ り遡 る時 は 過 去 時 制 を 使 うと云 うな ら当 然 で あ る。(尤 も こ の場 合 も普 通 な ら過 去 で ス タ ー トし て大 過 去 で 逆 行 を示 す だ ろ う。)勿 論 この 小 説 で もそ の 説 明 で 片 付 く場 合 が 多 い の だ が,そ れ で ど うし て も片 付 か な い 場 合 も同 様 に 多 い 。
第 一一に は先 程 の 眼 前 を 飛 び去 る姿 を 完 全 な 像 を結 ば な い ま 、に捕 え る道 で あ る。 作 者 が そ の 人 物 と完 全 に合 一 して,客 観 的 に 物 を見 る距 離 もな く,彼 の意 識 の 流 れ に シ ン ク ロ ナ イズ し て行 く。 所 謂 意 識 の流 れ と か 内 的 独 白 の 手 法 で,
この 様 に行 動 を 描 くよ り意 識 を 追 うに は現 在 時 制 の方 が 適 当 で あ る。 次 の 引 用 は バ イ ロ ン が ブ ラ ウ ン と 格 闘 して 敗 れ 敵 の遠 去 か る足 音 を 草 叢 に倒 れ て きい て 居 る所 で あ る。
ThellByronwaslyingquietlyamollgthebrokenandtrample轟 undergrowth,bleedingquietlyabouttheface,hearingtheunderbrush
crashhngon,ceasing,fadingintosilence.Thenheisalone.HefeelsIlo I)articularpainno、v,butbetterthanthat,hefeelsIlohaste,nourgency, todoanythingorgoanywhere・(P・385)
行 動 を写 し た前 半 は 過 去 時 制 で,申 程 の彼 が 一 人 残 さ れ た 辺(Thenheis
alone.)か ら彼 一 人 の 感 情,感 慨 に沈 潜 す る と共 に 現 在 時 制 に変 りそ の 動 き を 追 い か け て行 く。 この 様 な切 替 は所 々 に 見 当 る。
全 体 を通 じ て 見 る とハ イ タ ワ ー一,バ イ ロ ン,リ ナ の順 に現 在 時 制 の 部 分 が 多 い 。 所 が 一 番 重 要 な ジ 。一 に な る と殆 ど過 去 で 書 か れ て 居 る。(唯 一 ケ 所 の 例 外 は ジ.ヨ ー の 意 識 が 空 腹 に混 濁 し て来 た14章 の終 りの 所 だ け で あ る。)フ ォー
奪
(12)人 文 研 究 第十三 輯
ク ナ ー は ジ ヨ ー に 充 分 の 同 情 を 加 え て書 い て居 るが,半 黒 人 で あ る彼 とは 完 全 に 合 一 す る事 な く,あ る距 離 を 保 つ て 客 観 的 に 描 い て い る。 そ れ は 他 の作 品 中 の黒 人,半 黒 人 に対 して も同様 で あ る。1.C.Edmundsは 言 う。
Heusuallyapproached・hisnegrocharacterizatiollsfronltheoutside and8eldomworkedfromtheinsideou右wards.Tliushewritesmore
く の aboutthemthauthroughthem.
「彼 は 普 通 彼 の 黒 人 の 性 格 描 写 に は 外 側 か ら近 付 き,滅 多 に 内 側 か ら外 へ 向 つ て 働 きか け ない 。 か くて彼 は 黒 人 を 通 して 書 くよ り黒 人 に つ い て書 く方 が 多 い 。」
ジ.一 に の み 過 去 時 制 で 書 か れ た部 分 が 圧 倒 的 に 多 い の も そ の 距 離 の なせ る 業 か と思 わ れ る。
次 に 又,同 じ事 柄 を最 初 は 現 在 で 書 き,次 に 過 去 で 書 い て 居 る場 合 が あ る 。 た と え ば ハ イ タ ワ ーが バ イ ロ ンの 変 心 に 心 を動 か され 「彼 も又,彼 も又 」 とつ ぶ や きつ 〜歩 い て く る場 面 か ら引 用 し よ う。
㈲̀Him,too.Him,too.'hethinks.Itishot.(P.269)
《B)Hewenton,thinking.Andhimtoo.Andhimtoo.(p.271)
最 初 買 物 籠 を下 げ た彼 が 日盛 りの 道 を つ ぶ や き な が ら歩 くあ た りば 現 在 時 制
㈲,そ れ か ら話 は逆 行 して 食 料 品 店 で 心 の 惑 乱 し た彼 が 勘 定 を無 意 識 に 二 度 払 つ て 注 意 され る件 に至 る と過 去 時 制 と な る。 そ し て話 は 今 一 度 元 の 道 を つ ぶ や きつ'〉歩 く彼 の 姿 に ま で 戻 つ て 来 る(B)。 だ か ら上 の 引 例 の 二 交 は ど ち ら も同 一 の 件 な ので あ るが 前 者 は 現 在,後 者 は 過 去 時 制 で あ る。 前 者 は 過 去 と 関 係 な い 現 在,後 者 は 現 在 を 過 去 か ら一 聯 のand…and…thenの 並 び の最 後 の 点 と見 た の で あ る。 フ 才 一 ク ナ ー の現 在 を この様 に 見 る事 を 教 え た の もサ ル トル で あ る 。 又 第 一 章 の リナ ー の 遍 歴 ・ 逃 げ た男 を 探 し て,通 りが \ りの 馬 車 に リレ ー 式 に 拾 い 上 げ て貰 い,ジ エ フ ア ソ ン の町 に 着 くま で の 行 程 の 部 分 は主 と して 現 在 時 制 で 語 られ る。 後 章 で 述 べ る様 に彼 女 の 遍 歴 は 終 る所 の な い 円 周 で あ る。 遅 々 と し て 進 む 馬 車 の 持 主 と御 者 こそ 変 れ 乗 る人 は 同 じ リナ,し か も会 う人 ご と に恥 もな く焦 り もな く夫 に 会 い に行 く と同 じ話 を く りか え す 。 こ の無 限 の 感 じ
フォー クナ ー 「八 月の光 」の時 間空 間 にっい て はtimelessな テ ン ス で あ る現 在 時 制 が 受 持 つ て い るわ け で あ る。
(13》
3.亡 霊 と 宿 命
(GhostandDoom)
こ の様 に考 え て来 る と我 々 の狭 い 文 法 知 識 で は 何 が 過 去 な の か ・ 現 在 な の か 混 乱 して 来 る。 だ が この 時 の観 念 の錯 綜 は 読 者 の頭 の 申 に だ け あ るの で は な く 登 場 人 物 の 行 為 思 想 の中 に も見 出 き れ る。
或 者 は 過 去 と現 在 を混 合 し て い る。 フ ォー ク ナ ー の 作 申 の人 物 は い ず れ も何 等 か の 過 去 の影,彼 の 好 ん で 使 う言 葉 に よ れ ば 「亡 霊 」を 脊 負 つ て居 な い 者 は な い が,屡 々 亡 霊 が 真 実 と混 同 す る。 た とえ ば リ ナ の 生 ん だ 赤 子 を ・三 十 数 年 前 自 分 の手 に 抱 こ う と レ て果 せ な か つ た 孫 ・ 幼 少 の ジ 。一 ・ と錯 覚 して 子 守 唄 を うた うハ イ ネ の老 妻 が 居 る。 ハ イ タ ワ ー も又 生 れ る二 十 年 前 に死 ん だ 祖 父 の幻 を 追 つ て 籠 居 す る男 で あ る。 彼 が 次 第 に色 裾 せ て 行 く空 を 眺 め な が ら・ 孤 独 の 窓 辺 に タ 方 近 くな れ ば 必 ず 「今 こ そ,や が て 」Now,800n;soon,now.(p.52,
410,426)と 待 ち 受 け る「今 」は,つ い に終 末 に近 く気 の狂 つ た 彼 の 眼 前 に近 付 く。
itcanbenowNOW.(P.43箕)
其 所 で は もは や 「今 」 は 過 去 か ら未 来 へ 渡 る橋 渡 し の幅 の な い 一 点 で は な い ・ 待 ち 佗 び た 客 の様 な 具 体 を以 て 彼 は 感 じ る の で あ る。 だ が っ い に 現 れ た
「今 」 は 剣 を ひ らめ か し,喚 声 を あ げ て 突 撃 す る過 去 の幻 の 軍 兵 の一 隊 で あ る。
か くて彼 の 「今 」 は 「過 去 」 と,フ ォー ク ナ ー・・…流 に 云 え ばIsはWasと 完 全 に 一 致 す る,同 時 に ハ ィ タ ワー の死 は 訪 れ る の で あ る。
こ れ らが 過 去 の方 向 へ の 混 乱 で あ るの に対 し,未 来 の方 向 へ の混 乱 も あ る。
そ の 最 も簡 単 な の は 予 感(Premonition)で あ る。 フt・一ク ナ ・・一・作 中 の人 物 は 或 種 の 動 物 が 近 付 く嵐 を 予 知 す る様 な 動 物 的 敏 感 さ を 具 え て 居 る。
バ イ ロ ン は リ ナ を 一 眼 見 た 時 ・ 折 角 人 の 働 か な い 土 曜 日 ま で 仕 事 場 に 籠 つ て ひ たす ら事 勿 れ主 義 を 守 つ て居 た 従 来 の生 活 を根 本 か ら揺 ぶ る何 か 取 返 しの つ か な い 事 を し た と感 じ て あ わ てL目 を外 す 。
NVhenheraiseshisfaceIlow}ユefindsthathehaslookeddownagain
(14)人 文 研 究 第 十 三 輯 heforeheevenmethereyes.Heseemedtohavealreadyaforeknowledge ofsomethingnowirrevocable,nottoberecalled.(P.48)
娘 の 不 義 を 怒 つ て 相 手 の 男 を 追 い 求 め 漆 黒 の 闇 の 申 で,一 見 も し な い 男 を そ れ と 見 分 け て 射 殺 す る ハ イ ネ(p・329),養 子 の ジ 。 一一..が酒 場 の 女 と 快 楽 に 耽 つ て 居 る 野 外 ダ ン ス 場 を 迷 い も せ ず 探 し 当 て る マ ッ ク ィ ー チ ャ ン(P.177)等 木 の 皮 に ひ そ む 虫 の 脳 天 に 誤 た ず 毒 針 を 射 す 或 種 の 蜂 の 如 き 不 気 味 な 知 識 を も つ
こ う
て い る 。 予 感 は 更 に 進 む と 業(doom)宿 命 観(fatality)と な る 。 こ れ は 「起 る か も知 れ ぬ 事 」Whatmayhappenを 「起 る に ち が い な い 事 」Whatmust happenの 確 実 性 で 捕 え る 事 で あ る 。 し か も 起 る と 常 に 思 つ て 居 る 事 は 実 際 に
起 る 。WhattheyprobablyknewallthetimewasgoingtohapPendid happen(P.220)
■
ジ ヨ ー は 最 も こ の 観 念 の 儀 牲 者 で,彼 は バ ー デ ン 夫 人 と の 交 渉 に 早 く も 終 末 の 殺 害 を 予 期 し て
SomethingisgoingtohapPentome.Iamgoingtodosomethin9.
(P.91) と 感 ず る 。 そ の 脅 迫 観 念 は や が て 進 ん で 犯 行 前 に 既 に 殺 人 を 完 了 し た 様 に 錯 覚 す る 。
̀MaybeIhavealreadydoneit
,,hethought.̀MaybeitisIlolollger nowwaitingtobedone.,(1).97)
Hewassayingtohimselflhadtodoitalreadyinthepasttense.
(P.245) 彼 は 宿 命 を 信 じ な い と 云 い な が ら 宿 命 の 立 て た 筋 書 通 り に 無 意 識 に 動 い て し ま う 。 幼 時 の 頃,孤 児 院 で 保 娚 の 練 歯 磨 を 盗 ん で 食 べ て し ま つ た 時(そ の チ, 一 ブ を 見 付 け た の も 彼 女 が 何 か そ ん な 性 質 の 物 を 持 つ て 居 る 予 感 に 従 つ た の だ が)保 娚 に 轡 め ら れ る 前 に 身 に 振 り か \ る 罰 を 予 期 し て
waitingwithastonishedfatalismforwhatwasabouttohappeuto him.(p.107)
fitt所 に 居 ま す 」HereIam.と 名 乗 り 出 て し ま う 。 養 父 を 殴 り殺 し た 時 も 彼
フォ'一クナー 「八 月の光」 の時 間空 間 につい て(15) の 予 告 通 りに なつ た 。
IsaidIwouldkillhimsomedaylItoldhimso!(p.179)
彼 は この 「つ い に 来 た るべ き物 」finalityが 来 るま で は心 が 安 ま らず,之 を 渠 して 始 め て 自 由 に な つ た と感 じ る 。
しか も一 度 行 為 を 完 了 す る と今 度 は まだ 行 つ て い ない 様 な錯 覚 を 抱 く。 バ ー デ ン夫 人 と肉 体 関 係 を結 ん だ 後 彼 の つ ぶ や く事 は 「この 事 は 起 つ た 筈 は な い 。 夫 人 の 引 剥 い だ 着 物 の 下 に は何 もな か つ たの だ 。(P.210)」 と云 う無 気 味 な 言 葉 で あ る。 或 は 又 そ の 事 は 先 の 世 に 起 つ た 事 とす ら思 え て 来 る。
Butthatwasillaiiothertime,allotherlife.(1).246)
サ ル トル は フ 、一 ク ナ ー の 作 に は 未 来 が な い,未 来 を誠 首 して しま つ た と云 うが,こ の様 な予 言 的 な 未 来 は 常 に前 途 に 暗 示 され て い る。 然 しそ の 未 来 は 無 限 の 可 能 性 を 持 つ 流 動 す る未 来 で は な く,既 に筋 書 は 定 り繰 り出 さ れ るの を待 っ て い るだ け の 未 来 で あ る。 又,先 に 予 感 や 運 命 観 を 未 来 へ 向 つ て の 混 乱 と云 っ たが,そ の 様 な観 念 を持 つ に至 つ た原 因 は 多分 に彼 が 過 去 に,或 は 生 れ る前 に 負 つ た 「亡 霊 」 に あ る。 もつ と も最 近 は フ ォー ク ナ ー も この 動 か しが た い 未 来 と云 う観 念 を 変 え て 来 た よ うだ 。
現 実 の 我 の 外 に 自分 の 意 志 以 外 の 何 物 か に操 られ て い る我 の 存 在 を 自覚 す る 所 か ら屡 々彼 の 人 物 は 自己 分 裂 を起 し,ウ ィ リア ム,ウ ィル ソ シ の 様 な 別 な 自分 を 意 識 す る。 この 第 二 の 自分 が 屡 々 現 在 よ り 一 歩 先 に 自 分 を 追 抜 い た くoutstriplredhimself)異 つ た 時 限 に想 像 さ れ る所 が フ ォー ク ナ ー的 で あ る。 バ イ ロン が 一 度 は リナ との 関 係 を あ き らめ て 放 浪 の 旅 に 出 た が,ブ ラ ウ ンが リナ の 元 を逃 出 し た の を知 り再 び 戻 る事 を決 意 し た 時 ・ 自分 を 追 い 越 して 現 に リナ の 小 屋 に彼 が 追 付 いて 入 る迄 待 つ て 居 る第 二 の 自分 を 感 じ る。
Itisasthoughheha8alreadyandlongsinceoutstrippedhimself, alreadywaitingatt}ecabilluntilhecancatchupalldenter.(1).387)
リ ナ も又 岡 の 向 うに仲 々姿 は 見 せ ぬ が その 車 の き し る音 は 早 くか ら耳 に あ る
ら
車 を待 ち受 け て居 る時既 に車 に乗 つ て動 いて居 る 自分 を感 じて言 う。 「あの車 が 私 の待 つ て い た所 へ 来 て,私 が車 に乗 り込 む前 に,私 は も う半 マ イル も車 に
(16)人 文 研 究 第 十 三 輯
乗 つ て 居 る の だ 。 そ し て 私 を 下 し て も,私 を 中 に 乗 せ た ま 〜 で 半 マ イ ル あ の 車 は 進 む だ ろ う。」
… …thenitwillbeasifIwereridingforahalf ,milebeforeIeven gotintot}1ewagon,beforethewagonevengottOwhereIwa8wa浦ng,
andthatwheiithewagonisemptyofmeagainitwillgoonfora halfmileWithme8tillinit.(p.7)
フ ・ 一 ク ナ ー 的 人 物 は 自 分 を 唯 独 立 し た 一 箇 の 存 在 と 思 わ な い 。 共 在 意 識 が 横 に 拡 つ て 自 分 と 同 じ 様 な 無 数 の 点 の 一 つ と し 自 分 を 感 じ る 時 は 階 級 意 識 と な
る の で あ ろ うが,彼 の 場 合 は 縦 に 我 々 の 祖 先 か ら続 い て 与 孫 に 延 び て 行 く 時 間 的 系 列 上 の 一 つ の 輪 と 考 え る 事 の 方 が 多 い 。 彼 の 作 に 多 い 「父 と 子 の 問 題 」 や
「血 の 悲 劇 」 は こ う し た 基 盤 か ら 発 肇 す る 。
4.点 と 線 と 円
今 迄 は主 として 時 間 の問 題 を考 えて来 たが今 度 は この小 説 の世 界 の平面 図 を 考 えて見 る。 時 間 は縦 断面 で あ るな らば空 間 は横 断面 で,そ の 断面 上 に点 とし て現 れ る物,線 として現 れ る物,円 として現 れ る物 の三者 が あ る。三 つ の サ イ クル の中 心 人物 を以 て 云 えば ハ イタ ワーは点,ジ 。一は線,リ ナは円 で あ る。
ハ イ タ ワ コ
ハ イ タ ワ ー は 名 の 如 く高 い 塔 に 籠 つ て エ ゴ の 殻 か ら 一 歩 も ふ み 出 ず,誰 に も, 冒 き れ る 事 の な い 長 年 の 平 安 を ぬ す ん で い る 。 彼 と の 夫 婦 生 活 に 満 足 を 与 え ら れ な か つ た 彼 の 妻 が メ ム フ ィス の ホ テ ル で 不 名 誉 の 死 を と げ,彼 は 町 中 か ら 教 会 の 職 は 奪 わ れ,KKK団 に 森 に 引 出 さ れ て 鞭 打 た れ て も 猶 町 か ら立 去 ろ う と し な い で,つ い に は 町 の 方 で 根 気 負 け を し て 沈 黙 の 形 に な つ て い る 。 彼 を し て そ れ 程 迄 に こ の 町 に 執 着 さ せ る 物 は 何 か 。 リ ナ に 恋 す る ま で は 之 も 又 動 か ぬ 点.
で あ つ た バ イ ロ ン は 自 分 の 目 の 鱗 が 落 ち る に つ れ て そ の 原 因 を 明 察 し て 云 う。
Itisbecauseafellowismoreafraidofthetroublehemighthave thanheeverisofthetrouble}le,8alreadygot.He,11clingtotrouble he,susedtobefore}le,11riskachange.(P.65)
「人 間 は 既 得 の 紛 糾 よ り も 未 知 の 紛 糾 を 怖 れ る 。 変 化 を 敢 え て 冒 す よ り は ・
フ ォ■一・・クナー 「八 月の光1の 時間空 間 につ いて(17>
従 来 の 紛 糾 に 獅 噛 み つ く。」
こ の楡 安 の城 塞 か ら彼 を 追 立 て 様 とす る物 は バ イ ロ ン が ジ.・ 一の 為 に 犯 行 当 時 の ア リバ イ を彼 に 請 うた 事 で あ る。 彼 が 必 死 に 「俺 は 免 疫 を購 つ た の だ 。 」 1'veboughtimmunity(P.270)と 抵 抗 す る の も 当 然 で あ る。 し か も 最 後 に ジ.一 が 追 わ れ る窮 鳥 の 如 く彼 の懐 に と び 込 ん だ 時 「皆,聞 け 。 あ の 晩 この 男 は 俺 の 所 に 居 た ん だ 。 」 と叫 ん だ 時 は 厩 に遅 い 。 暴 徒 に な ぐ られ,眼 前 で ジ.
ヨ ー を虐 殺 き れ て 気 の 狂 つ た 彼 は か え つ て 不 思議 に も死 を前 に して 己 の エ ゴ の 姿 を 明 か に 見 極 め た。 町 中 の 迫 害 を十 字 架 の殉 教 者 気 取 り で 「主 よ 。 何 時 ま で 。」 と忍 ん だ 裏 に,家 に 籠 り戸 に 鍵 を さ して 「も うす ん だ 。 購 い は 終 つ た の だ 」 ノlh.That'εdo〃e〃OW.That'3.Past"0ω ・That'Sboughtand
Paid∫ornow.(P.429)と 仮 面 を外 して 秘 に ほ くそ 笑 ん だ 己 で は な い か と 怖 しい 反 省 が 彼 を汗 も し と 団 とす る。
ぐ の
ジ 。 一 に 線 の,リ ナ に 曲 線 の ・fメ ヂ の 多 い 事 は 既 にRichardChaεeの 指 摘 す る 所 だ が,イ メ ヂ ば か り で な く 構 造 上 に そ れ を 延 長 し て 行 け る 。 リ ナ の 運 動 は 無 限 の 円 周 で,始 る 所 に 又 戻 る 事 は こ の 小 説 の 冒 頭 の 一 句 も ㈲,第 一 章 め 最 後 の 句 も(β),最 終 の 一 句 も ⑨ も 同 じ 様 な リ ナ の 嘆 声 で あ る 事 に も 明 示 さ れ る 。
㈲RavecomeefromAlaharr.a;afurpiece.AllthewayfromAJabama a・walkip9.AfurPiece.
(B)̀̀My,my,"shesays;̀̀hereIaih,tkeenontheroadbutfourweek息, andnowIaminJeffersonalready.My,my.Abodydoesget
around。,,
⑨̀̀My,my.AbOdydeesgetaround.Hereweaiガtbeencomi1】gfrom
Alabamabuttwomonths .,alndnowit's:iIred'dyTelmessee.,,
ア ラ バ マ を 出 て か ら の 日 数 は 四 週 間 が 二 月 に な り,旅 程 は ジ エ フ ァ ソ ン (ミ シ シ ピ ー 州)か ら テ ネ シ ー に 迄 延 び,一 人 で 来 た 彼 女 は 今 度 は 自 分 の 生 ん だ 赤 子 を 抱 い て 居 る け れ ど 全 く 同 じ 男 を 追 つ て の 遍 歴 は 今 後 無 限 に 続 き そ うで あ る 。 ゆ る ゆ る と 運 行 を 続 け て 休 ま ず,し か も 同 じ サ イ ク ル を 無 限 に 反 復 す る 代 表 的 な 物 は 大 地 で あ る 。 正 し く 総 て を 広 く 受 入 れ て,生 殖 し て 行 く リ ナ こ そ
(18)人 文 研 究 第 十 三 輯
iま大 地 の 女 神 で,彼 女 に 大 地(theearth)の イ メ ヂ の 多 い の も 意 識 的 で あ る 。 彼 女 は(四 季 の 巡 り の 如 ぐ 忙 が ず 患 わ さ れ ず 」withtheuntroubledunhaste
ofachangeofseason.(P.46)旅 行 し,赤 子 の 胎 動 を 「執 拗 な 太 古 よ り の 大 地 を 聞 き 感 ず る 如 く 」hearingandfeelingtheimplacableaiidimmemorialearth.
〈P.25)感 じ る 。 ハ イ タ ワ ー は 彼 女 の 分 娩 を 助 け た 時 に 「も つ と 多 く,も つ と 多 く 。 そ れ が 彼 女 の 運 命 だ 。 良 き 種 は 静 か に 忠 実 に 大 地 を み た す で あ ろ う 。 」 Moreofthem.Manymore.Thatwillbeherlife,herdestiny.Thegood
stockpeoplingiptrar)quilobediencetoitthegoodearth・ と 祝 福 す る 。 し か る に ハ イ タ ワ ー も ジ 。 一 も 自 然 の も つ 生 殖 能 力 と 包 擁 を 全 く欠 い て 居 る 。 ジ.
一 の 自 然 に そ む い 生 活 は 絶 食 を 続 け る 彼 の 部 屋 の 窓 外 の 春 と 大 地 の 香 と 対 照 さ :れ る 。'
Frombeyondthewindowhecouldsmell,feel,darkness,sprillg,the earth.(P.136)
・ハ ィ タ ワ ー の 宗 教 は 地 に ふ れ る 事 の な い 旋 風 に た と え ら れ る 。 asortofcyelonethatdidnotevenneedtotouchtheactualearth.
(P.53) ジ ヨ ー は 常 に 止 る 事 な く 一 直 線 に 逃 亡 を 続 け る 。 養 父 を 椅 子 で 打 倒 し て 以 来,「 幾 千 の 通 り も 唯 一 つ の 通 り の 如 く 」(P.195)彷 往 を 続 け る 彼,殊 に パ ー タ ン 夫 人 を 殺 害 し て か ら一 週 間 は 地 図 の 上 を 「測 量 士 の 引 い た 線 の 様 に 」
・(Iiketle9・Urveyor'Sline)直 一 文 字 に 逃 れ た 筈 な の に,皮 肉 に も 犯 行 の 現 場 か ち 余 り 距 ら な いMottstownに 着 い て 捕 わ れ る 。 蛮 人 の 太 鼓 の タ ム タ ム に 惑 わ さ れ て 密 林 の 申 を 逃 廻 り,元 の 地 点 に 舞 戻 る オ ニ ー ル の 「皇 帝 ジ.一 ン ズ 」 の 錯 覚 と 同 じ だ 。 リ ナ が 描 く ゆ る や か な 回 転 運 動 の 申 を 横 切 つ て 引 か れ た 直 線 は 知 ら ず し て 入 口 に 出 て 来 る 筈 で あ る 。 彼 は 淋 し さ か ら或 は 空 間 か ら 逃 れ て 居 る
と 思 つ アこの に 実 は 己 自 身 か ら ・ 己 の 肉 体 か ら逃 れ て 居 る 事 で あ つ て み れ ば,こ の 逃 亡 は 死 を 以 て よ り 終 る 事 は な い の で あ る 。
HedidIlotthenkIlqwthat,liketheeagle,hisownfleshaswellas spacewasstillacage.(P.140)
ミ
フ ォー クナー 「八 月の光1の 時 間空 間 にっい て(19)
し か も彼 とて も心 の奥 底 に は 平 和 と安 静 を願 う心 は強 い 。 トラ ン プ を 遊 ぶ 女 達 の 白 い 腕 に(P.100),或 は 鳥 の 平 和 な 鳴 声,春 の 水 の 如 き 爽 か な 空 気 に くP.289),バ ー デ ン夫 人 の 安 定 な生 活 の 誘 い に(12章)That'sallIwanted・
Thatdon'tseemIikeawholelottoask.(俺 の 望 は そ れ だ け だ 。 大 し た 高 望 み で もあ るま い に 。)と 思 い なが ら運 命 に 駆 られ て休 む 事 な く走 り 続 け な け れ ば な らな い 。
点 と線 と円 の 三 つ の 内,こ の 劇 の 終 るま で に点 は 狂 い,線 は 切 れ た。 唯 円 ば か りは 永 久 に 変 らない ア ンダ ン テ の 回 転 を続 け て居 る。 リ ナの サ イ クル だ け は 他 の サ イ クル に比 べ て調 子 も明 る く田 園 調 で,ス タ イル も伸 々 して 居 る。 他 の 二 つ が 悲 劇 な ら,之 ば か りは 喜 劇 で あ る。 だ が 単 に調 子 外 れ の 間 奏 曲,コ ミ ッ
ク,レ リ ー フ の役 目で 存 在 し て い る の で は な い 。 む し ろ 総 て の 狂 燥 曲 が 終 つ た 後 に残 る,悠 々 た る天 地 自然 の 曲(屡 々 そ れ は 叢 に永 久 に 鳴 続 け る虫 の 声 で 表 現 さ れ る)こ そ 大 切 な本 篇 の テ ー マ な の で あ ろ う。
5.時 間 と 空 間
所 で 点 と 線 と 円 の 平 面 上 に 現 れ た 三 つ の 模 様 は 実 は 時 そ の 物 で あ る 事 を 最 後 に 述 べ た い 。
ハ イ タ ワ ー が 凝 然 た る 一 点 と な つ た 時 彼 の 時 は 完 全 に 進 行 を 止 め た 。 そ れ は 彼 が 時 計 を 持 た ぬ 事 に よ つ て も 象 徴 き れ る し 又
Time}1adstoppedthereandthenfortheseedaiidllQthilighad hapPenedintimesince,1}otevellhim.(P.55)
(時 は そ の 時 そ の 場 か ら 子 族 の 為 に 停 止 し ・ そ れ 以 来 時 に も彼 の 身 に も何 事 も 起 ら な い 。)
恋 を 知 る 前 の バ イ ロ ン も 又 動 か ぬ 点 で あ つ た 。 然 し 恋 を 知 る や 彼 は リ ナ の 為 に し き り に 奔 走 し,又 恋 を あ き ら め て 広 い 世 界 に 出 よ う と す る 。 世 界 が 広 ま る
と 同 時 に 時 も 動 き 出 す 。 汽 車 を 見 て 彼 は こ う 叫 ぶ 。
Thisistheworldandtime‑・ ・itistimeI)owewithdistmice, moving,init.(p.385)
(20)人 文 研 究 第十 三輯 (之 が 世 界 で 時 だ 。 時 と距 離 が そ の 申 に動 い て い る。) It(=t正leworld,orthetrain)istoohugeandfastfordistanceandtime,
(P.387) (之 は 距 離 に も時 間 に も大 き過 ぎ早 過 ぎ る。)
彼 は 再 び リナ の所 へ 結 局 は 戻 つ て彼 女 を廻 る小 衛 星 と なつ た が ・ こ の短 い 旅 の 間 だ け彼 の 真 の 時 計(あ の片 身 離 さず 持 つ て い る銀 の 時 計 とは ち が う)は 動 い て居 た一一 一丁 度 ボ ー ル が イ ン プ レ イ の 間 だ け 針 の動 い て居 る競 技 場 の 時 計 の 様 に 。
ジ 。一 の三+三 年 の生 涯 は 一 週 間 の逃 亡 行 に 縮 圧 さ れ,リ ナ の無 限 の 時 は永 遠 に 続 く旅 行 に,も つ と具 体 的 に は 麻 酔 に か 〜つ て 中 空 に浮 ん で 居 る様 な馬 車 の 「時 も忙 ぎ も超 越 し た」beyondalltimeandallhaste(P.24)歩 み に 象 徴 さ れ る 。 車 の 動 い て居 る限 り,時 も動 い て居 る。
TLewagonhashotstoPped;tinlehasnotstopPed.(P.25)
ス ベ し シヤ ル
こ の 外 に も 常 に 時 は 空 間 的 な イ メ ヂ を 伴 つ て 現 れ る 。 ハ ィ タ ワ ー の 狂 つ た 頭 に は
Progressllowisstillprogress,yetitisnow加distihguish訊blefrom thereeentI)astlike舐ealreadytraversedinchesofsalldwhiehcl沁g totheturningwheel.(P.429)
(ま だ 進 行 は し て 居 て も,廻 る 車 に 付 く 既 に 過 越 し た 旅 路 の 砂 の 如 く 最 近 の 過 去 と 見 分 け が つ か な く な つ て い る 。)
バ ー デ ン 夫 人 は 情 慾 に 飢 え た 過 去 の 歳 月 を 薄 暗 い ト ン ネ ル の 申 か ら の ぞ く 様 に 振 返 え る 。
Sheseemedtoseeherwholepastlife,thestarvedyears,1ikeagray 古unneL(P.231)
ま た ジ 白 。 一 は 一 日 又 一 日 と 過 去 に も 未 来 に も 続 く 時 の 系 列 を 一 枚 の 平 面 図 の 如 く に 感 じ 取 り,闇 に 幾 百 万 の 声 を 聴 く 。
Thedarkwasfi11edwiththevoices,myriad,outofalltimethathee hadknown,asthoughallthepastwasaflatI}attern.Andgoingon;
フ ォー ク ナ ー 「八 月 の 光 」 の 時 間 空 間 に っ い て(21) tomorrownight,allthetomorrows,tobeapartoftheflatpattern,
goingon.(p.246)1
従 来 の 小 説 が 縦 に 割 つ て 時 代 的 な 流 れ を 見 せ る か,横 に 切 つ て 社 会 の 連 関 を 見 せ た に 対 し,フ ォ ー ク ナ ー の 手 法 は 斜 に 切 つ て 時 空 を 同 一 平 面 に 表 わ し ・ 縦 蜥 面 と 横 断 面 を 同 時 に 見 せ よ う と す る 野 心 的 な 物 と 言 え る 。
(註)
引 用 文 のA・ 一.ジ 数 は 総 てTheModernLibrary版 に よ る 。.
'註1 ‑B ,M.Charleston:AReconsiderαtiono!thθProblemofTimθ,
Tense,andAspectinMo4ernEnglish.(EnglishStudies=Oct.1955)
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冒註2 ‑Jean‑PaulSartre=TimeTnFaulkner二TheSoundandTheFury .
(TwoDecadesofCriticism)
註3‑IreneC・Edmunds:FaulknerandthθBlackShαdow(TheSou‑
thernRenascence)
'凄主4 ‑RichardChase=TheStoneαndTゐeCruci∫ixion=Faulkner,s
LIGHTINAUGUST.,,(TwoDecades)
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