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複 式 簿 記 と デ ー タ ・コ ン ト ロ ー ル
藤 田 芳 夫
会 計 的利 潤 計 算 の根極 に あ る ア プ ローチ は 資 本 の価 値 増 殖 をG‑W‑(ン と メ
言 う資 本 運 動 の 時 間 的 経 過 に 即 して,直 線 的 に 把 え る こ と で あ る。W.A.
Patonは 次 の よ うに 言 っ で い る 。 「会 計 人 の 仕 事 の 精 髄 は 一 定 期 間 ご と に 貸 借 対 照 表 を 作 成 す る こ とで あ る。Spragueが 彼 の 古 典 的 著 書PhilosoPhy(ゾ Accountsで 述 べ て い る よ うに,貸 借 対 照 表 は 『会 計 活 動 の 基 盤 で あ り,… …
ア カ ウ ンタ ン シ ロ
あ らゆ る勘 定 の起 源 と終 着 点 で あ る』 。 換 言 すれ ば,会 計 人 の課 題 は,精 密 さの点 で 差 が あ る もの の,貸 借 対 照表 を 定期 的 に勘 定 と記 録 か らな る体 系 に 展 開 し,ま た,こ の体 系 を定 期 的 に貸 借 対 照 表 に集 約 す る こ とであ る,と 考
の え る ことが 出来 る」,と 。
即 ち,こ こで は次 図に 示す よ うに,貸 借 対 照 表 は勿 論 損 益 計 算 書 も,直 線 的 な時 間 の経 過 にそ くして把 握 され て い る。
B・・,一 く1>一 一 く1>一 ・/$一一・・
第 図
利 潤 計 算,殊 に 期 間 利 潤 の 測 定 と 言 う観 点 か らす れ ば,勿 論 か く見 る他 な い が,計 算 さ れ た 利 潤 を 支 え て い る ア カ ウ ソ タ ビ リ テ ィの 見 地 か らす れ ぽ 観 点 は 自ず か ら異 っ て くる 。
ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ ・ア カ ウ ンテ ィ ン グ の 見 地 に 立 て ぽ,会 計 の 基 本 構 造
(1)W.A.Pa七 〇n,EssentialsofAccounting,1sted.,1938.p.30.
は,そ れ が 如 何 に忠 実 に 資 本 の循 環 運 動 を反 映す るか と言 う点 か ら眺 め られ ね ば な らな い。 即 ち,資 本 の 循 環 運動 そ の もの の持 つ反 覆性 を反 映 した勘 定
・のClosedLooP(又 はClosedCircuit)と して把 えね ば な らない 。 何 故 な ら, ア カ ウ ソタ ピ リテ ィの面 か ら見 る と言 うこ とは,勘 定 の 背後 に 人 を 見 る と言
う こ とで あ り,勘 定 体 系 を そ の 背後 に あ る人 的組 織 との対 応 関 係 で 見 る こと だ か らで あ る。勘 定 と物,物 と人,人 と勘 定 の 関係 を 利 潤 計 算 と同 じ時 間 の 直 線 的 距離 で測 る こ とは 出来 ない 。
そ こで,G‑W‑Gノ と言 う資本 の循 環 運 動 は,次 図 の如 く円形 の 循環 運 動 と して把 え られ る。即 ち,資 本 の循 環 運 動 は 貨 幣 と商 品 の二 勘 定 の左 右 両側 に 累積 的 に記 録 さ れ るの で あ る。
勘 定 が 資本 の循 環 運 動 の 個 々 の 局面 につ い て,累 積 的 な記 録 を作 成 す る ことに よ り,記 録 即 ち勘 定 は物 と人 の両 者 に対 して 緊 密 な 関 係 を 保持 す る。記 録(勘 定)と 物 の間 で は,'記 録 の 第 二 図 示 す ゾル ・ベ ス タ ソ トと物 が 示 す イ ス ト ・ベ ス タ ソ トの間 に 照合 関 係 が 成 立 し,物 と人 の関 係は 記 録(勘 定)に よ ってそ の
く ラ
ア カ ウ ソ タ ピ リテ ィを 明 らか に す る の で あ る。
〆 商 品 \
ll
貨 幣
\
この 関 係 は信 用 関 係 が 介在 して も変 らない(第 三 図参 照)。 唯,資 本 の循
(2)PatonとLittleton両 教 授 は,「 原 価 の 付 着 性 」(CostAttach)と 言 う基 礎 概 念 を 説 明 さ れ る さ い,勘 定 に よ る 資 本 循 環 過 程 の 追 跡 に 言 及 して,次 の よ うに 言 わ れ て い る 。 「勘 定 は 企 業 と外 部 の 絶 え ず 変 化 す る 関 係 を 記 録 す る と と もに,企 業 内 部 で 継 続 的 に 発 生 し て い る 移 動 や 変 換 を 追 跡 す る こ とに よ り,経 済 過 程 に と
り有 用 な 手 段 で あ る 」,と 。(Paton&Littleton・AnlutroductiontoCorporate AccountingStandards,1940,p.13.)
しか し,両 教 授 の 場 合,目 的 が 財 務 会 計 に あ る た め,こ の 点 の 立 入 っ た 分 析 は 与 え られ な か っ た 。
複 式 簿 記 と デ ー タ ・ コ ン トロ ー ル(藤 田) 一65一
環 過 程 が複 雑 に なれ ぽ,ゾ ル ・ベ ス タ ソ トとイ ス ト ・ベ ス タ ソ トの 照合 は個 々の 資本 循 環 局 面 で行 われ る他,関 係 の あ る局面 相 互 間 の 関 係 と して検 査 さ ,れ る。
現 金 とか 商 品 と言 う 個 々の循 環 局面 で 行 わ れ る ゾル ・ベ ス タ ソ ト と イ ス ト ・ベ ス タ ソ トの 照合 を簿 記 の一 次 的 照合 関 係 ど言 うな らば,二 つ の 資本 循 環 局面,た とえば 現金 と買掛 金 の 間 で行 わ れ る照合(即 ち,仕 訳)や 試 算 表 に よ り,資 本 の循 環 局 面 全 体 につ い て行 わ れ る照合 は 簿 記 の二 次 的 照合 関 係 と言 うことが 出 来 る。 複 式 簿 記 は,実 は この記 録 と記 録 の 間 の 二 次 的 照合 関 孫 に よ って発 生 した もの で あ る。
商品 実際在高
「 隔 一 一 一 輩
掛債権実際在高 冗掛金 つロロ
r
帽幣}
蜀
一 ρ
一 「
]﹁
嘲 ﹂
﹂一 掛債務実際在高
第 ご 図
簿 記 の勘 定 構造 の根 本 にあ る ものを 記 録 と物 と人 間 の関 係 に 求 め よ うとす るな らぽ,名 目勘 定 の性 格 を 明 らか に して お く必 要 が あ る。
複 式 簿 記 に お い て,名 目勘 定 を成 立 させ る 必 然性 は商 品 の 記 録 の 中 に あ る。G‑W‑Gノ は 本 来G‑W…W,‑G,で あ る。 しか し,未 実 現 利 益 の計 上 を排 除す る限 り,仕 入勘 定 と売 上勘 定 は 分裂 せ ざ るを得 ない 。
売 上勘 定 を物 の勘 定 と見 る こ とは 出来 な いか ら,売 上勘 定 は 収 益勘 定 と考 え る以外 に ない 。 また これ に 伴 って,売 上勘 定 に対 応 す る費 用勘 定 と して の 売 上原 価 勘 定 も出現 せ ざ るを え ない 。 周 知 の よ うに,商 品 の勘 定 処理 法 に は 幾 つか の方 法 が あ る。実 体勘 定 と して の商 品勘 定 を想 定 す る最 も有 力 な 方 法 は,販 売 毎 に売 上 損 益 を 分け て計 上 す る所 謂 分記 法 で あ る。 しか し,こ の場 合 も,収 益 勘定 と して の 売上 勘 定 と費 用勘 定 と して の売 上 原 価 勘 定 は 外形 的 に存 在 しない だ け で,計 算 過 程 の 内 部 では売 上高 か ら売 上 原 価 を減 算 す る段.
階 が存 在 して い る。即 ち,
現 金
と言 う仕 訳 は,次 の
現 金
売 上 原価 とい う仕訳 に お い て,
x× 商 品 × ×
販 売 益 × ×
× × 売 上 ×x
×x商 品 × ×
売 上 と売 上原 価 を 相 殺 した もの に す ぎな いか らで あ る。 換 言す れ ば,商 品 の記 録 は そ れ が どの よ うな簿 記 的 方 法 を 使用 す るに せ よ,収 益勘 定 と費 用 勘 定 を 含 ま ざ るを え ない の で あ る。
そ こで,記 録 に よ る商 品 の管 理 は実 体勘 定 と しての 商 品 の勘 定 と,名 目勘 定 と しての商 品 の勘 定 とい う二 つ の勘 定又 は勘 定 群 か らな る二 重 構 造 を 持 だ
ざ るを えな い 。
通 常,こ の二 重 構 造は 繰 越 商 品勘 定 と仕 入 勘 定 を費 用勘 定 と し,唯 期 末 整 理 に よって,期 末 決 算 時 点 に お け る実 体勘定 と して繰越 商 品 勘 定 を設 定 す る
ことに よ り解 決 す るの で あ る。従 っ て,そ こで は実 物 と して の商 品 に対 す る・
複 式 簿 記 と デ ー タ ・コ ン トロ ー ル(藤 田) 一67‑・
照参図四第( 売掛金実際在高PL
争実体勘定 売掛金 ⁝㎜
めるいてれら譲に帳高有品商は能職理管な的続継 実体勘定{津〜
輔
買掛金実際在高 定勘目
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第 四 図
従 って,簿 記 に よ る資本 循環 運 動 の追 跡 と把 握 は,本 質 的 に二 つ の要 素 か ら成 るこ とに な る。 一 つ は実 物 と して の資 本 を把 え る要 素 であ り,も う二 つ は売 上勘 定 ・仕 入勘 定 の如 く,貨 幣 的 資産 の 増減 原 因 を示 す もの,即 ち実 物 の変 動 原 因を 把 握 す る要素 で あ る。
名 目勘 定 が 存 在 せ ざ るを えな い と言 う事 が 簿 記 の アカ ウ ソタ ビ リテ ィ ・ア カ ウ ソテ ィソグ と しての性 格 を 弱 め る こ とに な るで あ ろ うか 。 答 は 否 で あ る。 名 目勘 定 が 存 在 す ると言 うこ とは,試 算 表 の 構 造 を生 け る資本運 動 と死 せ る資本 運 動,生 け る資本 源 泉 と死 せ る資本 源泉 に 分類 して把 握 す る筆者 の 立 場 では,む しろ当 然 の事 で あ っ て,簿 記 の ア カ ウ ソタ ビ リテ ィ ・ア カ ウ ゾ テ ィソグの性 格 を強 め こそ す れ,何 ら弱 化す る如 き影 響 を及 ぼす もの で は な い 。 何 故 な ら,名 目勘 定 は実 体勘 定 の 附属 物 で あ り,更 に ア カ ウ ンタ ビ リテ ィ ・ア カ ウ ンテ ィソグ の 本 質 は 企 業 内 に創 り出 され た 人 間 関係 に あ るか ら で あ る。
実 体 勘 定 と名 目勘 定 に よ り勘 定 のClosedLoOPが 形 成 され る と 言 うこ と は ジ 資本 の循環 運 動 それ 自体 が 勘 定 の上 に反 映 され るか らに 他 な らない 。 し か し,資 本 の循 環 運 動 は勘 定 に 反 映 され るだ け で な く,循 環運 動 を 支 え る人 間 的 側 面,即 ち 企業 の 機能 的 分 業 組 織 を も決 定 す る。 資本 の循 環 運動 は 自然 現 象 で はな いか ら,経 営 者 の 意 志 に よ り影 響 され る。 経営 者 の意 志,即 ち 資 本 の循 環 運 動 を 如 何 に 組織 し,管 理 す れ ば 最 も 合 理 的 で あ るか と 言 う 判 断 は,資 本 の 循環 運 動 に影 響 を 与 え,そ れ に応 じて企 業 内の 人 間 の 組織 も多 様 な形 態 を採 る こ とは 言 う迄 もない 。 しか し,基 本 的 に は,資 本 の 循環 運 動 は,そ こに投 下 され た 資本 の 運 動 とい う面 か ら見 れ ば,勘 定 のClosedLoop
と して把 え られ,循 環 運 動 の担 い 手 た る人 間 の面 か ら見れ ば,分 業 に よ り専 門 化 され た機 能 別組 織 のClosedLoopと して把 え られ る。(第 五 図参 照 の こ
と)
い ま,資 料 処 理(DataProcessing)と い うことを 極 め て一 般 的 に 考 えれ ば1そ の 目的 は,第 一 に,個 々の取 引な い し経 営 活 動 に つ い て事 実 を詳 細 に 記 録 し,第 二 に,ル ーチ ソ的 活 動 の 証 愚 を作 成 し,第 三 に,一 ・定 の取 引又 は 経 営 活 動 を要 約 した報 告書 を 作 成 し,第 四 に経 営 上 の問題 点 を 分 析す る こ と
ラ
で あ る。 しか し,こ の よ うに考 え る と,簿 記 の 本 質 た る会 計 的 資料 処理 とそ の 他 の非 会計 的 な 資料 の処 理 の 相 違 及 び両者 の密 接 な関 係 を 明 らか にす る こ
とが 出来 な い 。そ こで,資 本 の 循 環運 動 に立 ちか え って,考 察 す る こ とか ら 始 め なけ れ ば な らな い 。
上 述 の ご と く,勘 定 組 織 は 資 本 循環 運 動 の 会計 的反 映 で あ り,機 能 別組 織 は そ の人 間労 働へ の反 映で あ る とす る立場 か ら資料 処理 を 見 る と,企 業 内 の ClosedLoopを 構 成 す る各単 位 組 織 は,そ こに おけ る生産 的労 働 の 結果 と し
く3)Gregory&VanHorn,AutomaticDataProcessingSystems,1s七ed・,1960,
p・3・ 但 し,両 氏 は 資 料 の 記 録 に つ い て は 明 確 に し て お ら れ な い 。
複 式 簿 記 と デ ー タ ・ コ ン ト ロ ー ル(藤 田) 一69一
●
第 五'図
て 作 業 資 料(OperationData),会 計 資 料(AccountingData),及 び コ ミ;一 ニ ィケ イ シ ョ ン資 料(CommunicationData)と 言 う主 種 類 の 資 料 を 産 み 出 す 。
作 業 資 料(OPerationData)は 各 単 位 組 織 の 担 当 す る 資 本 循 環 過 程 の 特 定 の 局 面 を 価 値 又 は 投 下 原 価 数 量(lnvestedCostFigure)と 言 う 抽 象 的 な 量.
と して で は な く,特 定 の 単 位 組 織 の 作 業 の 特 性 に 従 っ て 把 え,そ こに 惹 き起 こ され た 変 化 ・移 動 を 示 す 記 録 で あ る。
会 計 資 料(AccountingData)は 作 業 資 料 に 示 され る記 録 を 投 下 され た 原 価 数 量 又 は 何 らか の 規 範 性 を 持 つ 資 本 量(Capi七alFundFigure)で 把 え る 資 料 で あ る 。
コ ミ ュ ニ ィケ イ シ ョ ソ ・デ ー タ(CommunicationData)は,分 業 に よ り 専 門 化 した 各 単 位 組 織 が 全 体 と して 一 つ のClosedLOOPを 作 る と言 う特 質 か
ら直 接 産 み 出 され る資 料 で あ る。 各 単 位 組 織 が 行 う作 業 は,通 常 そ れ 自 体 孤
コミ昌ニイケィシ.
単 位 組 織A
嬰 罎紘̲第 六.
立 で き な い 。 そ れ は 関 連 す る他 の 単 位 組 織 との 通 信 を 必 要 と し,コ ミ ュニ ィ
リ
ケ イ シ ョ ン ・ デ ー タ を 産 み 出 す 。
但 し,コ ミ ュ ニ ィ ケ イ シ 。 ン に は 水 平 的 コ ミ ュ ニ ィ ケ イ シ 。 ン と 垂 直 的 コ ミ ュ ニ ィ ケ イ シ 。 ソ の 二 種 類 が あ る 。 水 平 的 コ ミ ュ ニ ィ ケ イ シ ョ ソ の う ち,
く
くa)一 つ は ル ーチ ソ的 仕事 の 引 継 ぎ とそ の 完 了 を 通知 す る もの で あ り,(b) も う一 つ は ル ーチ ソ的 仕事 を 遂行 す るた め必 要 な調 整 の 為 の 通 信 で あ る。前 者 は,資 本 の循 環 運 動 の流 れ の 方 向 に沿 うもの で,次 の 局 面 を 担当 す る単 位 組 織 に対 して指 令(Order)す る機 能 を もつ もの(水 平的 ・ルーチソ的指令機i能)
と,資 本 の循 環運 動 の 流 れ を遡 上 して,前 の 局 面 を担 当す る 単 位 組 織 に 対 L,単 純 な通 報 を行 う機能 を もつ もの(水 平的 ・ルーチン的通報又は連絡機能)か
(4)こ の 点 に つ い て,RaymondVillersは,次 の よ うに 言 っ て お られ る。 「企 業 組 織 と 経 営 の 問 題 が 複 雑 で あ る こ と は,そ う し た 相 互 依 存 関 係 の 結 果 で あ る。 組 織 の 如 何 な る部 分 も分 離 し え な い 。 そ れ は 全 体 の 部 分 と して は じめ て 十 分 な 意 義 を も ち う る の で あ る 」,と 。(RVillers,DγnamicManagementinlndustry,
1960,p.106.)
魯
、
複 式 簿 記 と デ ー タ 。コ ソ トロ ー ル(藤 田) 一71一
ち な っ て い る 。 後 者 は,顧 客 か らの 註 文 品 に つ い て,現 物 の 有 無 を 倉 庫 に 問 合 せ る よ うに,各 単 位 組 織 は そ の ル ー チ ン的 仕 事 を 遂 行 す るた め,調 整 の た め の イ ソフ オ ー メ ィシ ョ ソが 必 要 で あ る 。 こ の た め 行 わ れ る問 合 せ と 回 答 が 調 整 の た め の コ ミ ュニ ィケ イ シ ・ ンで あ る。
垂 直 的 コ ミ ュニ ィケ イ シ ョ ンに は 下
"意 懸 部 組 織 へ の垂 直 的指 令 機 能(デ シ ジ ョ
書 聾 的指令 ン'デ ー タの伝 達)と 上 糊 織 へ の垂
'袈 直 的報 告機 能(オ ペ レーシ ョ ン ・デ ー
な け れ ぽ な ら な い 。
'一 Σ
上 述 し た 点 に つ い て,C.Gillespie
第 七 図
一 教 授 の 見 解 を 検 討 して み よ う。 教 授 は
一会 計 書 類(AccountingFgrmsandPapers)と 会 計 書 類 か ら作 成 され る報 告
・書 の 機 能 と して 次 の 四 点 を 挙 げ て お られ る 。
第 一 の 機 能 は,作 業(Operation)の 結 果 を 決 定 す る こ と で あ る。 これ は 経
・営 資 料(BusinessPapers)か ら数 量 的 情 報(QuantityInformation)と 金 額
・酌 情 報(DollarInformation)を 引 き 出 す 所 謂distribution機 能 と,経 営 者 の 為 に 報 告 書 を 作 成 す る二 点 を 含 む 。
第 二 の 機 能 は,資 産 ・負 債 の 変 動 を 跡 づ け る こ と,即 ち 様 々 な勘 定 記 録 を 維 持 す る会 計 機 能 で あ る。
第 三 は,企 業 内 の 各 単 位 組 織 を 活 動 せ し め る指 令 機 能 で あ る ◎ そ し て, 第 四 は,経 営 活 動 の 計 画 樹 立,業 績 の フ ォ ロ ー ・ア ップ,計 画 の 修 正 を 容
くヨラ
易 な ら しめ る点 に あ る,と して い る。
こ のGillespie教 授 の 見 解 は,ま つ,資 料 処 理 の 立 場 に 立 て ば,各 単 位 組
ノ
鍛 の活動 は,す べ て三 重 の性 格 を 持 つ と言 う 特 質 を 何 ら 明 らか に して い な
、(ζ5)C・Gillespie,Accoun彦ingSγs彦 β%ε,ProceduresandMethods,2nded・,1961, 幽PP・1〜2・
い 。 また,会 計 の 追 跡 記 録 す べ き 対 象 と して 名 目勘 定 の 占 め る位 置 が 明 ら・
か で な い こ と を 度 外 視 し て も,会 計 書 類(AccountingPaPers)と 経 営 資 料1‑
(BusinessPapers)の 区 別 が あ い ま い で あ る。 更 に,コ ミ ュ ニ ィ ケ イ シ ョ ン ・デ ー タ の 機 能 の うち,水 平 的 指 令 ・報 告 機 能 と垂 直 的 指 令 ・報 告 機 能 が ・ 明 確 に され て い な い 。 そ して 最 後 に,計 画 の 樹 立 ・フ ォ ロ ー ア ップ ・修 正 等 一 は 会 計 書 類 又 はBusinessPapersそ の もの の 機 能 で は な く,デ ー タ の 担 い 手 た る書 類 か ら作 成 又 は 誘 導 され る イ ソ フ オ ー メ イ シ ・ ンの 利 用 上 の 問 題 で'
あ る 。 両 者 は 明 確 に 区 別 す べ き も の で あ る 。 以 上 がGillespie教 授 の 見 解 に 一 対 す る批 判 で あ る。
四
い か な る 企 業 に つ い て も,前 述 した 勘 定 ル ー プ,組 織 ル ー プ,コ ミ ュ ニ ィ ケ ー ジ ョ ン ・ル ー プ の 三 重 構 造 を 考 え る こ とが 出 来 る。 分 業 の 程 度 が 低 い 場' 合 に は,会 計 資 料 を 処 理 す る人 間 は,経 営 者 自身 で あ るか,又 は 少 数 の 人 間 が 直 接 的 営 業 活 動 か ら離 れ て ス タ ッ フ と して 会 計 資 料 の 処 理 を 行 う。 三 重 構 造 の 存 在 は 組 織 の 規 模 と は 無 関 係 で あ る 。 会 計 活 動 は 本 来 ス タ ッ フ活 動 で あ ・
(6) る。
ス タ ッフ 部 門 と して の 会 計 部 門 が ラ イ ソ部 門 と して の 営 業 部 門 と戴 然 と 区 別 され る こ とは,会 計 に お け る ア カ ウ ソ タ ビ リテ ィ ・プ リ ン シ プ ル の 貫 徹 を 図 るた め の 根 本 的 前 提 条 件 で あ る。 即 ち,AccountabilityAccountingを 基 一 盤 と し,そ の 上 に 財 務 会 計 と管 理 会 計 の 全 体 系 が 構 築 され う る根 本 条 件 で あ ・
る。
会 計 部 門 が 独 自 の ス タ ッ フ部 門 と して 機 能 す る こ との 意 義 は,次 の 二 点 に ・ あ る。 第 一 は,こ れ に よ り企 業 会 計 は 必 然 的 に 複 式 簿 記 を 採 用 せ ざ る を え な
(6)R・Villersは 会 計 部 門 の ス タ ッ フ 性 を 明 確 に 認 め て,次 の よ う に 言 わ れ て い る 。 「企 業 に お い て,…(ス タ ッ フ と い う)言 葉 は 執 行 補 助 者(Executive Assistant)だ け で な く,技 術,会 計,人 事 等 の 如 く,す べ て の 専 門 部 門 に 適 合 す' る 」,と 。(R・Villers,op.oit・,P・78)
複 式 簿 記 と デ ー タ ・ コ ン ト ロ ー ル(藤 田) 一73一
くな る,と 言 う事 で あ り,第 二 は,複 式 簿 記 と 内部 統 制 シ ス テ ム(InternaI Contro1Sys七em)が 不 可 分 の 緊 密 な 関 係 を 有 す る もの に な る,と 言 う こ とで
あ る。
ま つ,第 一 の 複 式 簿 記 採 用 の 必 然 性 と 言 う点 か ら考 察 し よ う。 前 述 した よ うに,勘 定 体 系 は 原 理 的 に 一 つ の 独 立 したClosedLoopを 形 成 す る 。 仕 訳, 帳 ・元 帳 ・試 算 表 の 如 き複 式 簿 記 の 独 得 の 装 置 が 会 計 活 動 の 具 体 的 な 表 現 と
し て 現 わ れ るに は,Accoun七sLoopが 独 立 のClosedLooPと して 存 在 し う
ノ
る と言 う論 理 的 な可 能 性 で け で な く,こ の可 能性 が現 実 の必 然 性 に転 ず る契 機 が 必 要 で あ る。 私 見 で は,所 有 経 営 者 が 会 計 係 で あ る場 合 には 可 能 性 にす ぎな い が,そ の権 限 の程 度 や 組 織 の規 模 は と もか く,会 計 部 門が 独 自の職 能 を 担 う独 立 の単 位 組 織 と して 出現 す る こ とが,こ の契 機 で あ る。
何 故 な ら,AccountsLooPの 本 質 は,実 は 諸勘 定 が バ ラバ ラで は な く.
順 次 に関 連 しなが ら一 つ の 有意 義 なAccoun七sLoopを 形 成 す る,と い う点 に あ る。若 し,会 計 部 門 が独 立せ ず,資 本 の循環 過 程 の追 跡 が 個 々の機 能 別 単 位 組 織 に一 任 され て い る と した ら,会 計 資料 を仕 訳 帳,就 中 普 通仕 訳 帳 と 言 う特 別 の手 段 に よ り分 解す る必 要 は ない 。 そ の場 合,会 計 処 理 は 当該 部 門 の み の為 に行 わ れ るの で あ って,他 部 門 の為 に記 録 され るので は な い 。 この 目的 の た めに は,一 つ の取 引 を相 異 な る二 つ 以上 の勘 定 に記 入 す るた め 分 解 す る必 要 は ない 。所 謂単 式 簿 記 で よい ことに な る。(例 えば,所 謂単 式 簿 記 の現 金 出納 帳 そ の他 を見 よ。)単 式 簿 記か ら複式 簿 記 え,或 い は,簿 記 そ の もの が 複式 簿 記 と な らざ るを え ない 必 然性 は,営 業 部 門か ら切 断 され た ス タ ッフ と して の会 計 部 門 の 出現 で あ り,複 式 簿 記 の二 次 的 照 合 機 能 の担 い 手 は 仕 訳 帳 と試 算 表 で あ る。
ス タ ッフ と して の会計 部 門 が 出現 した場 合,仕 訳 と試 算 表 の意義 は 次 の よ うに考 え る こ とが 出来 る。
会 計 部 門 は 会計 資 料 を 自か ら産 出す るので は な く,ラ イ ン部 門 で 作成 され た 資料 に よ り会 計 記 録 を作 成 す る。従 って,会 計 部 門 の作成 す る記 録 は,期
末 財 務 諸 表 や 総勘 定 元 帖 の勘 定 の如 く抽 象 度 の高 い ものか ら,原 価 計算 上 の 記 録 の如 く,相 対 的 に 抽 象 度 の低 い ものに 至 る まで,す べ て他 部 門 の作 成 し た 会 計 資 料 を 媒 介 とす る間接 的 記 録 で あ る。
す べ て が 間接 的 記録 に な らざ るを えな い 会計 記 録 に おい て は,記 録 ・計算 の正 確 性 を如 何 に して 保証 す るか と言 う問題 の 外 に,ラ イ ン部 門 か ら来 る会 計 資料 そ の もの の 直実 性 を如 何 に して確 実 な ら しめ るか,と 言 う問 題 が 生れ る。 この二 つ の問 題 は ア カ ウ ンテ ィソグ ・シ ス テ ムに と り,決 して別 個 の二 つ の問 題 では な く,会 計 記録 の 真実 性 を如 何 に して確 保す るか と言 う一一つ の 問題 の二 つ の側 面 に 外 な らな い 。
単 式 簿 記 に おい て,記 録 の真 実 性 を保 証 す る手 段 は,拙 稿 「単 式 簿 記 と複 式 簿 記 」(近 く発 表 予 定)で 示 した よ うに 記録 と実 際 の 照合,即 ち ゾル ・ベ ス タ ソ トとイ ス ト ・ベ ス タ ソ トの 照合 で あ った 。 この こ とは 各 ライ ソ部 門独 自の記 録 につ い て も妥 当す る。 会 計 部 門が 独 自の ス タ ッフ部 門 と して 出現 し て も個 々の勘 定 又 は 記 録 につ い て,こ の 記 録 と実 際 の 照合 が 持 つ 意 義 が 薄れ る訳 では ない 。 しか し,こ こでは,間 接 的 記録 で あ る会計 記 録 は,個 々の勘 定 や 記 録 を作成 す る外 に,二 つ の勘 定 間 に おけ る資本 の流 れ を 記録 計算 す る
と言 う独 自の使 命 を担 ってい る。換 言す れ ぽ,記 録 と実 際 の 個 別 的 照 合 の 外 に,二 つ の勘 定,従 って また二 つ の勘 定 の背後 に あ る二 つ の部 門 に つ い て記 録 と記 録 を 照 合 しなけ れ ぽ な らない ので あ る。
個 々の取 引毎 に行 われ る個 別 仕 訳 で あ れ,同 一 範 疇 に属 す る一 群 の取 引 を 集 約 した 合 計 仕 訳 で あれ,仕 訳 が 必 ず 等 額 二面 計 算 と して行 わ れ る と言 う事 は,間 接 的 記 録 体 系 とな った 会 計 記 録 に お い て,二 つ の勘 定 の 個 々の記 録 の 間 に照 合 性 を持 た せ るこ と,従 っ て勘 定 の 背後 に あ る部 門 相互 間 に記 録 上 の 照 合 性 を 持 た せ るこ とを 目的 とす るので あ って,こ れ 以 外 の要 因 が 支配 的 で あ る と考 え る こ とは 出来 ない 。
この 点 は,会 計 が 機械 化 され る と 極 め て 明 白に な る。C.Gillespie教 授 は 次 の よ うに 指 摘 して お られ る。 簿 記 が 機 械 化 され ると,「 …通 常,証 愚
複 式 簿 記 と デ ー タ ・ コ ン トロ ー ル(藤 田) 一75一
〈media)は 勘 定 に 直 接 転 記 さ れ るの で あ っ て,普 通 の手 記 簿 記 の 場 合,ま つ 仕 訳 帳 に 記 入 され,次 い で 勘 定 に 転 記 さ れ る方 法 とは 反 対 で あ る 。 … 手 記 簿 記 の 場 合 の仕 訳 帳 は 無 くて も よい 。(例 え ぽ イ ソボ イ ス の 如 き)転 記 媒 体 の フ ァ イル を 取 引 発 生 順 の 記 録(ChronologicalRecordofTransaction)と す る こ とが 出 来 る。 また 場 合 に よ り,転 記 作 業 の 副 産 物 と して 作 成 され る検 算
く ラ
…表(ProofShee七)が 正 規 の仕 訳 帳 と して利 用 され る」,と 。
も っ と も この場 合,会 計 伝 票 に記 載 す る こ と自体 仕 訳 作 業 で あ る と考 え る こ と も出来 る。 しか し,IBMカ ー ドそ の 他 の如 く,一 枚 の カ ー・一・一ドに十 幾 つ もの項 目が 記 載 され ると き,こ れ を簿 記 的 な意 味 で仕 訳 を行 った もの と見 る こ とは 出来 な い。 丁 度,日 記 帳,仕 訳 帳,元 帳 か らな る古 い 帳 簿 体 系 に お い て,日 記帳 に 記 入す る こ とが 仕 訳 で なか った の と同 様 で あ る。仕 訳 は,そ れ が 元 帳 え の転 記 の前 に行 われ るか,そ れ と も転 記 作業 の 副産 物 と して 産 出 さ 1れるか は と もか く,勘 定 間 の 記 録 の照 合 性 を証 明す るた め に借 方 項 目貸 方 項 目を 明 示 した記 録 で なけ れ ば な らな 。即 ち,本 質 的 な 要 素 と して残 る ものは 勘 定間 に お け る記 録 と記 録 の照 合性 の維 持 で あ る。
勘 定 の個 々の記 入 を 照 合す るだ け で な く,す べ て の勘 定 記 録 を 全体 と して 魚 合 し,一 ・定 期 間 に おけ る資本 の循環 運動 の 全記 録 をす べ ての 部 門 につ い て
『照 合 す る方 法 が 合計 試 算 表 で あ る
。合 計 試 算表 は複 式 簿 記 に お け る等額 二面 計 算 の論 理 の必 然 的 結果 で あ り,極 め て重 要 な意 義 を持 ってい る。 それ は現 金 出納 帳 が 記 帳 され る単 式簿 記 で作成 され る収 支計 算 書 よ りも遙 か に高 い綜 令 性 を持 ってい る。 また,こ の記 録 と記 録 の照 合 と言 う試 算 表 本 来 の使 命 か ら見れ ば,残 高 試 算 表 よ りも合計 試 算 表 の方 が 重 視 され ね ぽ な らない ことは 当 然 で あ る。
以 上,資 本 の循 環 運 動 を追 跡 把握 す る合 計 記 録 に おい て,ス タ ッフ と して の 合 計 部 門 の 出現 と複 式 簿 記 の関 係 を考 察 した 。そ れ は 第 一 に,記 録 の真 実 性 を保 証 す る手段 と して の仕 訳 と合 計試 算 表 の意 義 を 問 うことで あ った 。記
(7)C.Gillespie,op.cit.,p.143.
録 と実 際 の照 合 を 簿記 の一 次 的 照 合 機 能 と言 うな らば,仕 訳 と合 計 試 算 表 に おけ る記 録 と記 録 の 照 合 は 簿 記 の二 次 的 照 合 機 能 と言 うことが 出来 る。 この・
簿 記 の二 次 的 照 合 機能 こそ,単 式簿 記 と複 式 簿 記 を 区別す る もの で あ り,こ の二 重 の照 合 構 造 こそ 複 式簿 記 の基 本 構 造 を な し,ま た 会計 活 動 を担 う人 間 、 の企 業 内で の特殊 な位 置 に原 因す るも ので あ る。
五
会 計 部 門 の出現 が持 つ 第 二 の意 義 は,会 計 記 録 の真 実 性 を保 証 す るた め,・
複 式 簿 記 は 内部統 制 シス テ ム と必 然 的 に 結 合す る と言 う点 で あ る。
記録 と実 際 の照 合 と言 う簿 記 の一 次 的 照 合機 能 及 び記 録 と記 録 の照 合 と言 う簿 記 の二 次 的 照合 機 能 に よっ て も,尚 会 計 の 真実 性 を 保証 す るに 足 らな い 。 何 故 な ら,A部 門か らB部 門 へ の資本 の移 動 にお い て,A部 門 か ら流 出 す る財 貨 ・用 役 とB部 門 へ の流 入 が 同 一 人 の管 理 下 に あ れ ば,財 貨用 役 の真 実 の流 量 とそ の流 れ を 証 明す るた めA部 門 が 発 行す る コ ミュニ ィケイ シ ョ
ソ ・デ ー タが 喰 違 う可 能性 が あ る。そ こで は,過 失 や 誤謬 が存 在 し うるだ け で な く,よ り重 要 な ことは 不 正 を 防止 発 見 す る要 因 が ない こ とで あ る。 また.
個 々の部 門 に関 す る記 録 と実 際 の照 合 につ い て も,記 録 の作 成 と物 の保管 が 個 々の部 門 に 委 され て おれ ば,個 々の部 門 の 内部 で 不 正 が あ って も,記 録 を 操 作 す る ことが 出来 る。従 って,記 録 の 真実 性 を 保証 す る為 には,ま つ 第 一
に,営 業 と保 管 と会 計 職 能 を 明確 に 区別 し,そ れ ぞれ 別 個 の組 織 に担 当 させ ー
(8)
なけ れ ば な らない 。
倉 庫 部 門 を典 型 とす る保 管 部 門 の 出現 は,単 に物 が 数 量 的 に 増 大 した の で 作 られ るので は な い 。倉 庫 部 門 の独 立 に よ り,保 管 の 為 の場 所 的 ・空 間 的 経 済性 を 増 し,保 管労 働 の 生産 性 を高 め る他 に,内 部 統制 の機 能 を発 揮 させ る
(8)CommitteeonAuditingProcedureofAICPA,JutemalCoutrol,1949,
P・7・ 及 び 岩 田 巌 教 授 稿 「内 部 統 制 と は 何 ぞ や 」.1951(同 教 授 著 「会 計 士 監 査 」 1954,p.355)
複 式 簿 記 と デ ー タ ・ コ ン トロ ・一 ル(藤 田) 一77一
之 とが 根 本 的 要 因 と して存 在 す るので あ る。 この点 を 見 失 えば,財 務 部 門 に お い て,何 故 貨 幣 保管 職 能 が 分 岐 独 立 す るか を理 解 す る こ とは 出来 ない 。
会 計 の 真実 性 を 保 証 す るた め 営業 と保管 と会 計 の分 離 独 立 と言 う基礎 条件 が 充 た され るな らば,次 は企 業 内のす べ て の組 織 の中 間 に,即 ち本 来 の ライ ソ諸 部 門 の 中 間だ け で な く,分 離 され た 保 管 部 門 との 間 に も,ま た会 計 部 門 との間 に も検 証 装 置(VerifyingDevice)を 組 み 込 ん で,物 の流 れ と コ ミ ュ ニ ィケイ シ ・ン ・デ ー タの流 れ をた えず 自働 的 に 照合 し,記 録 の真実 性 を確 '保 しなけ れ ば な らな い 。即 ち会 計 に お け る記 録 と記 録 の照 合関 係 が 部 門 間 の 物 の流 れ の上 で の 照 合 関 係 に よ り補 強 され るの で あ る。 この関 係 は第 八 図 の
"如 く示す ことが 出来 る
。
企業 内のす べ て の組 織 の中 間 に検 証 装置 を組 込 ん で,記 録 の真 実 性 を確 保 しよ うとす る努 力 は 古 くか ら 内 部牽 制 々度(InternalCheckSystem)と し 'て知 られ て来 た もので あ る
。AICPAの 監 査手 続 委 員 会 はそ の原 理 を 「何 人 とい え ど も,取 引を 処 理す るに 当 り,す べ て の権限 を持 って は な らな い 。 必 ず 誰か が 介在 し,そ の人物 に よ り照 合 され ね ぽ な らな い」 と言 う命題 で 示 し
蕪→[勘 定]一{!}→[垂]一[!1‑→[嗣 ←
門 工 工 工
しのロ
1… 部一 ≠P
儒 臥\ 購
第 八 ・図 、
の
て い る。
こ こで 注 意す べ きは,内 部牽 制 更 に 広 く内 部統 制 一 般 は,故 岩 田巌 教 授 も
(10)
指 摘 され た よ うに,会 計個 有 の問 題 では ない と言 う点で あ る。 言 うな らば, そ れ は 経 営活 動 の 遂行 に当 り,人 間 の労 働 を如 何 に組 織 す るか と言 う組 織 原 則 の一 つ で あ る。そ こで,会 計 の立 場 か ら見れ ば,内 部 牽 制 そ れ 自体 で は な く,会 計 活動 と内 部牽 制 の 係 わ り方 こそ が 問 題 と され ね ば な らな い の で あ る。
営業 と保管 と会 計 が 分 離 され るので あ るか ら,営 業 活 動 は 他 の営業 部 門 の・
み な らず,保 管 部 門 ・会計 部 門 に も コ ミ ュニ ィケイ シ ・ ン ・デ ー タに よ り伝 達 され ね ぽ な らない 。
会 計 デ ー タ ・コ ン トロール活 動 の一 部 分 で あ る と と もに そ の基礎 で あ る会 計 デ ー タの検 証 活 動 は この コ ミュニ ィケ ー シ ョ ン ・デ ー タの流 れ の内 に 内部 牽 制 原 理 に基 づ く検 証 活 動(VerifyingOperation)を 組 み 込 む ことに よ り行 い うる。例 えば下 図 のAで は 内部 牽制 原理 は 働 か ない 。B図 に お い て も内部 牽 制 原 理 は 働 か な い 。'しか し,C図 で は売 上代 金 収 納 報 告 が販 売 部 門か らで は な く,現 金 保 管 部 門か ら来 る ことに よ り,売 上 報 告 と売 上代 金 収納 報 告 の・
売上報告轟
{塾 コ
販 売 部 門
駆争一第 九一A図
冗,{至亟 玉}艦
上' 、金
報 、 マ 収
欝 、
欝 第 九 一一一Bpa 一
(g)CommitteeonAuditingProcedureofAICPA,ibld・,p・8・ 尚,原 文 は
次 の 通 り で あ る 。"・ …thatnoonepersonshouldcon七rolallphasesofa transactionwithouttheinterventionofsomeotherpersonorpersonswh(ン
affordacross‑check."
(10)岩 田 巌 教 授 「会 計 士 監 査 」p・349・f
複 式 簿 記 と デ ー タ ・コ ン ト ロ ー ル(藤 田)
照合が行われ 内部牽制原理は初 め て有効に作用 しうる。従 って検 証 装置を各単位組織 の中間に組 み込
一79一
上帆 亜 司気
響
む と言 うことは・会郷 門の立場 顧 ← 聾 ≧ ・ 薩 部pr
し営 業 活 動 を 処 理 す る仕 事 を 二 つ 以 上 の 単 純 な 作 業 に 分 解 し,そ れ ぞ れ の 作 業 か らCommunication DataFlowを 起 こ させ,こ の 二
つ の 流 れ を 特 定 の 点 で 交 叉 させ る
か ら見 るか ぎ り・一 つ の取 引 ない 客 一 翻""
1蟹 現 渡 1=金 し
麟 暑引靴/
部 門
第九一C図
一
代金収納報告
こ とで あ る。 ま た 営 業,保 管 部 門 か ら見 れ ば,財 貨 用 役 の 流 れ に 伴 い,必 ず 実 際 と記 録 の 突 合 せ を 行 わ せ る こ とで あ る。 重 要 な 事 は,検 証 さ れ る もの が 単 に 会 計 資 料 に 限 らな い と 言 う点 で あ る。 作 業 資 料 が 同 時 に 検 証 され る こ と に よ っ て,は じめ て 会 計 資 料 と 作 業 資 料 は そ の 真 実 性 に お い て 同 質 的 (Homogeneous)に な り う るの で あ る 。 か く して,本 稿 で 言 う検 証 装 置 の 本 質 はCommunicationDataFlowの 起 点,経 過 点,終 点 を 決 定 し,そ の 中 間 の ど こに 検 証 作 業(VerifyingOperation)を 組 込 れ るか を 規 定 す る手 続 (Peocedure)に 外 な らな い の で あ る 。
勿 論,一 つ のCommunicationDataFlowの 内 に 一 つ 以 上 の検 証 作 業 を 組 み 入 れ る こ と も可 能 で あ る 。(第 一一〇 図 の 出 庫 指 図 書(ShiPPin90rder)
の 流 れ 参 照 。)ま たCommunicationDataFlowの 距 離 が 長 い 場 合 に は,複 数 の検 証 作 業 を 組 み 入 れ る必 要 が あ る場 合 もあ る。(例 え ば,第 一 〇 図 に 示 す
よ うに 受 註 → 発 送 → イ ンボ イ ス作 成 手 続 で は,内 部 の 交 叉 検 証 だ け で もA, B,Cの 三 ヵ 所 で 行 い,更 に 顧 容 が 行 うで あ ろ うDま で を 含 め た 場 合 が 示 し て あ る 。)た だ し,資 料 を 記 載 す る書 式 や 枚 数 を 工 夫 し て,検 証 作 業 の 数 を 最 少 限 に 止 め る こ とが 望 ま しい の は 言 う まで もな い 。 これ ら の 点 を 具 体 的 に
ど うす るか と い う事 は 個 々 の 企 業 のAccountabilityAccountingPolicyの
瞭
澗 題 で あ る。
六
企 業 の経 営活 動 は 外 部取 引 ・内部 取 引 を 含め,そ の種 類 は か な り多数 に 上 るで あ ろ うし,ま たそ の 量は 極 め て彪 大 な もの に な り うる。 い ま若 し,す べ て のCommunicationDataFlowの 中 間に 検証 作業 を組 み入 れ る とす る と, そ れ は 当 然 ル ーチ ソ的 な もの に な る。何 故 な ら検 証 作 業 を規 定 す る手 続 の根 本 を なす ものは 個 々の検 証 作 業 担 当 者 に 委譲 され た責 任 と権 限 に 外 な らない
か らで あ る。従 業 員 の多 数 が 受持 つ 責 任 と権 限 は 当 然 ル ーチ ソに属 す る。 嚇 この事 は 複 式簿 記 に よる企 業 会 計 に と り,極 め て 重 大 な 意 義 を 持 ってい
る。CommunicationDataFlowの 中間 に組 込 まれ る検 証 作業 のす べ て を会 計 部 門 が担 当 す る訳 で は ない が,そ の 内一一つは 必 ず 会 計 部 門 で行 われ るか ら で あ る。 会 計 部門 は極 め て単 純 な且 つ彪 大 な量 の検 証 作業 と記 録 ・計 算 作 業 を 行 わ ね ぽ な らな い 。換 言す れ ば,会 計 部 門 で行 わ れ る作 業 の大 部 分 は単 純 な 事 務労 働 に 分解 され ざ るを 得 な い 。 か く して此 処 に,会 計 を機 械 化 し,更 に 所 謂 事 務 と会 計 の ナ ー トメ ー シ 。 ン を 惹 き起 こす 基 盤 が 成 立す るの で あ
る。
この事 は 同時 に,標 準 原 価 計 算 や 予 算 統 制 の如 き管 理 会 計 技 術 を会 計 の 中 に 取 り入 れ,会 計 を 質 的 に発 展 させ るた め の基 盤 で もあ った 点 に 注 意 しなけ .れぽ な らない 。 何 故 な ら,J.EMageeに よれ ば,管 理 の本 質 は,第 一 に,
実 績 が 計 画 通 り遂行 され た程 度,又 は 条 件 の変 化 の ため,実 績 が計 画 か らず れ ざ るを えなか った 程 度 を 記 録 して お くことで あ り,第 二 に,計 画 と実 績 の ず れ を考 慮 して,将 来 の計 画 を 系 統 的 に調 整す る手 順 か らな っ てい る。 した が って,良 い管 理 とは,管 理 上 の決 定 が 日常 作業 と して 自働 的 に行 わ れ,例 外 が殆 ん ど生 じない こ とで あ り,管 理 シス テ ムは物 理 的 な過 程 を機 械 的 又 は 電 気 的 に 制御 す る と き と同様,す ぐれ た 自働制 御 シス テ ムの設 計 方 法 を支 配
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し て い る法 則 に 従 わ な け れ ば な らな い,と 言 っ て い る。
した が っ て,標 準 原 価 や 予 算 が 会 計 シ ス テ ム と して 実 行 され るた め に は, 標 準 原 価 や 予 算 が ル ーチ ン ・デ ー タ と し てAccountingDataFlowを 構 成 す
る一 分 子 と な ら な け れ ぽ な らな い 。 標 準 原 価 や 予 算 の 中 核 を な す 規 範 性 を も つc「iterionは,CommunicationDataFlowの 中 に 組 み 込 まれ た 検 証 作 業
の 具 体 的 内 容 を なす 基 準 に 他 な らな い 。 こ の 基 準 か らの 逸 脱 は,誤 謬 や 不 正 が 発 見 され た 場 合 と 同 様,発 見 され た 場 所 か ら始 ま る新 しいCommunication Da七aFlowに よ っ て 処 理 され る。 管 理 会 計 技 術 が 精 緻 に な れ ぽ な るほ ど, 例 外 原 理 が 働 か ね ぽ な らな い が,例 外 原 理 を 実 現 す る 条 件 と し て 個 々の 管 理
会 計 技 術 は 益 々 ル ー チ ソ化 され,又 そ の 事 に よ っ て の み,既 に ル ー チ ソ化 さ れ て い る会 計 活 動 の 体 系 の 内 に 円 滑 に 包 含 され う るの で あ る。
した が っ て,AccountabilityAccountingの 水 準 で と らえ て も,ま た 管 理 会 計 の視 点 か らみ て も,会 計 の 機 械 化 を 推 進 す る必 要 と可 能 性 が 存 在 して い る の で あ る 。 また 同 時 に,会 計 の 機 械 化 そ れ 自 身 が 会 計 と 内 部 統 制 の諸 技 術 を 一 体 化 す る方 向 に 作 用 す るの で あ る 。 会 計 の 機 械 化 と 内 部 統 制 技 術 の 問 に 臆 相 互 に そ の 発 展 を 促 進 し合 う関 係 が あ る 。 「記 録 手 続 の デ ザ イ ン と計 画 の 分 野 で 行 わ れ た進 歩 発 展 の うち,大 部 分 は 最 近 の成 果 で あ る。 しか も機 械 化 の 最 も新 しい 方 法 を 如 何 に 利 用 す るか と言 う観 点 か ら行 わ れ た も の で あ る」,
ロわ
と言 う指 摘 は正 に上 述 した 点 を 言 った もの と考 え るべ きで あ ろ う。
営 業 と保 管 と会 計 を 分離 した基 本 的 な狙 い は,営 業 と 保 管 部 門 か ら 会 計 機 能 を 分離 す る点 に あ った の で あ るが,す べ て のCommunicationData
Tlowが 一 度 は 会計 部 門 を 経 由す るな らば,会 計 資 料 も 営 業 資 料 も と もに
℃ommunicationDataと して 部 門 間 を流 し(第 一 〇 図参 照),会 計 部門 で会 計 記 録 と非 会 計 的営 業 記 録 を 作成 す る こ と も合理 的 に な る。
会 計 部 門 で 非 会 計 的 な 資料 の整 理,解 釈,報 告 を も行 うよ うに な れ ば,会
(12)J.EMagee,Pro4uetionPlαunin8andlnveutorycontrol,1958,P・12・
松 田,千 住 訳 『生 産 計 画 と 在 庫 管 理 』1961,PP・16〜17・
,(13)Commit七eeonAudi七ingProcedureofAICPA,op・cit・,P・11・
一82一 商 学 討 究 第15巻 第4号
計 部 門 は最 早 古 い 会 計専 門 の部 門 で は あ りえ な い 。1920年 代 か らア メ リカで一 旧来 の会 計 部 門 が そ の 装 い を コ ソ トロ ー ラー部門 に 改 めた 原 因は,ア メ リカ の企 業 会 計 に お け る内 部 統制 シス テ ムの発 展 に あ るが,そ れ は また 上述 した 内部 統制 技 術 と会 計 機 械 化 の相 互 促進 作用 の論 理 に もとつ くア メ リカに おけ る会 計 機械 化 の進 展 と言 う現 実 に 立 脚 して い る事 を も見 落 す べ きで は な い 。 電 子 計 算 機 の使 用 が よ り高 度 化 す れ ば,近 い将 来 コ ン トロ ー ラー部 門 の一・層
(14)
の変 貌 が 実 現す る と見 なけ れ ば な らな い だ ろ う。
(14)事 務 と 会 計 の 革 命 が 進 行 し つ つ あ る と い う 認 識 は,何 も 電 子 工 学 の 専 門 家 に 限 ら な い 。 た と え ば,F・M・Knoxは 「今 日,ア メ リ カ の 企 業 で は 事 務 の 革 命 が お こ っ て い る 」,と 言 っ て い る 。(of.F・M・Knox.IutegratedCostControlin'・
theOffice,NOMASeriesinOfficeManagement,1958,p.1.)