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高橋 清・山口健次 (昭和47年9月29日受理)

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(1)

高橋 清・山口健次

(昭和47年9月29日受理)

Palynological study of the Oya Formation of the Kuchinotsu Group (preliminary note)

Kiyoshi TAKAHASHI and Kenji YAMAGUCHI

abstract

1) The pollen assemblage obtained from the Upper Oya Formation consists predominantly of Quercus and subsequently Alnus and Betula. Quercus is composed of a mixture of evergreen and deciduous type. Liquidambar appears very rarely.

2) The pollen group from the Lower Oya Formation consists mainly of Pinus, Tsuga, and Zelkova or Ulmus, and subsequently Taxodiaceae, Larix?, Picea, and Quercus. Fagus is only a few. Liquidambar and Tilia are very rare.

3) The pollen grains of Tsuga from the Lower Oya Formation are mostly smaller size than that of T. Sieboldii and partly T. Sieboldii.

4) Between or upward and downward the horizons of two pollen groups examined in this paper, there is a possibility to be in extence of some different pollen groups.

I まえがき

山口は昭和45年度長崎大学教育学部地学専攻(小学校課程)の卒論として,高橋の指導によ り,表題の大屋層の花粉学的研究にあたったが,何分,僅か1ケ年間に基礎的知識を修得し, 実際に研究に従事することは困難なことであり,研究結果としては,十分な成果を挙げ得なか

った。高橋はその後採集試料および薄片を再検討した結果,若干の新知見を得たので予報とし て報告する。

ロノ津層群大屋層の花粉・胞子については大塚(1966)のデrクーが示されているが,十分 でなく㌦再検討する必要を感じていた)大屋層隼で車て㌣各ルートで十分層序を立てた上で層 準の明確な試料を研究に用いたかったが,山口の卒論としては無理があり,これは今後の課題

として残した。

*長崎大学教養部地学教室

**桐古小学校(長崎県南松浦郡若松町桐古里郷)

(2)

4地点において試料を採集したが報告出来るものは2地点のデ‑メ‑である。この様に大屋 層のデ‑メ‑は大屋層を十分下位から上位まで亘るも.のではない。より綿密な試料採集は今後 行わなければならない。

この小論をまとめるに際し,図の浄書をして下さった山崎文子嬢にお礼申し上げる。

Ⅱロノ津層群における問題点

従来,ロノ津層群から噛乳動物化石の産出が知られ,また,近年加津佐層から多数の脊椎動 物化石が報告され,その時代論も当然のことながら論ぜられて来た。しかし,他の地域との関 連において必ずしもすっきりとした時代論が展開されず,問題が残きれていた。筆者の一人高 檎(1968, 1969)は第四紀の植生の変化が気候の変化にどの様な対応を示しているかに注目

し,島原半島の第四系の花粉学的研究に着手した。細かい試料採集により花粉層序を立てるこ とが主な目的であるが,すでにA, B, C, Dの各花粉群の区別を行ない,とくに寒‑暖の 気候変化にともない,主要花粉の組合せの変化を追跡して来た。とくに寒冷期にはFagusを チェックすることが重要であることを認めた。 A, B, C, Dの各花粉群は上位の地層から下 位に向って設定されたものであり, D花粉群以下のものはロノ津層群に求められるものであ

第1図試料採集位置図

×印:試料採集地点

A :原城跡の海岸‑試料01‑1‑01‑ 9, 02‑l‑02‑6 B :与茂作用‑試料06‑l‑06‑5

C :東大屋の駅付近‑試料10‑1, 10‑2

D :西大屋野牛島堤の北, ‑試料11‑1‑ll‑3

(3)

る.ロノi封百群大屋層の花粉群の内容は必ずしも明かにされていないO細かい層序を立て,そ れに基づいた分相が必要である。それによって大屋層での鼓も古い寒冷期がどの層準に来るか を明らかにせねばならない。

Ⅲ試料および花粉群集

上部大屋層の試料は原城跡の海岸の崖に露出する淡緑灰色シルト層から得た。*

試料01‑1から01‑9までの9試料は上下約2.5mの問でほぼ等間隔に下から上に順次採集 した。試料02‑から02‑6の6試料は上下約6mの問でほぼ等間隔に下から上に順次採集し た。

これら15試料から薄 片を作製したが,検出 した花粉・胞子は比較 的少く,とくに01‑

3, 01‑4, 01‑5,

01‑6の4試料からは 極く稀にしか検出し得 ず,データーとして用 いることが出来なかっ た。一応データーとし て示した他の11試料に ついても検出個体数は 少く, 50個体検出した もの100個体検出し

たものがあるに過ぎな 第2図上部大屋層から得られた主要花粉の頻度図 い(第1表参照)。

50個体検出したもの:

試料:01‑1, 01‑2, 01‑7, 01‑ 01‑9, 02‑1, 02‑2, 02‑6。

100個体検出したもの:

試料:02‑3, 02‑4, 02‑5。

下部大屋層の試料は東大屋の与茂作用,東大屋の駅付近,西大屋野牛島堤の北の3地点から 採集した。

与茂作用では06‑1から06‑5の5試料を採集した。前2者はやや藁味を昔びたシルトであ り,後3着は淡緑灰色シルトであるが,いずれも花粉・胞子の検出個体数は極めて少く,デ‑

*現在進行中の研究では,大屋層を上下に分ける暗灰色含軽石凝灰岩が従来から新期阿蘇溶結凝灰岩

とされている原城跡海岸の崖で観察されるものと区別出来ないことが判明しており,両者が同時の

ものとすれば,原城跡海岸にみられるシルト層は下部大屋層の可能性が出てくる。

(4)

クーとならなかった。

東大屋の駅の北東方の厚い礫層の下のシルトから10‑1, 10‑2の2試料を採集した。前者

30 V.

第3図下部大屋層か得らられた主要花粉の頻度図

は淡緑灰色シルト で,後者は淡黄灰 色シルトである が,いずれも花粉

・胞子の検出個体 数が極めて少く, データーにならな かった。

西大屋野牛島堤の北の切割から得た11‑1から11‑の3試料はいずれも暗灰色シルトであ る。試料11‑と試料11‑2は30cmの間隔で,試料11‑2と試料11‑3は60cmの間隔で採集し た。試料11‑1と試料11‑2からは花粉・胞子の十分な個体数を検出した.試料11‑3は極く 稀にしか検出出来なかった。したがって下部大屋層のデータ‑としては試料11‑1と試料11‑

2の2試料から得られたものだけであり,今後,さらに多くの試料を採集し,検討が望まれる。

下部大屋層は比較的礫層が厚く,また凝灰質岩が多く,シルト層が比較的少いため,徴化石 研究の試料としては層準が限定されるきらいがある。

上部大屋層の花粉群は11試料からみられる様に(第1表および第2図参照)> Quercusが最 も優勢で,次いでAlnus, Betulaが優勢である。 Quercusは常緑型と落莫型が混在している。

なおLiquidambarは僅かながら検出されている。この試料は上部大屋層の下位から上位まで すべての層準を包括するものではない。したがって,北有馬層で示した花粉群(高橋・浜田, 1972)と本花粉群との問に別の特徴をもつ花粉群の存在する可能性もある。また次に述べる下 部大屋層の花粉群との問にも別の花粉群が存在する可能性もある。

下部大屋層では2試料から花粉・胞子が検出されたが,その花粉群の特徴は,松柏類として はPinus, Tsuga, Taxodiaceae, Larix?, Piceaなどがみられる.中でもPinus, Tsugaが優 勢で, Lanx}が見られるのが特徴的である.

Tsugaに関しては大きさの頻

皮曲線を求めてみると(第4図

参照),最頻度値が55!▲‑60βの

間にあり,もう1つ70〝のとこ

ろで頻度がやや高くなってい

る。現生種のTsuga Sieboldii

Carr. (ツガ)の最頻度値は72p

であり, T. diversifolia Mast. (コメツガ)の最頻度値は86/xであるので, 55/^‑60yuに最頻

度値をもつTsugaはT. Sieboldiiより小型のTsugaとなる.また70/uのところにやや高い

(5)

第1表胞子・花粉出現数表 体体体 掴個個

000005 21

0

印印印

*

Lycopodium Schizaeaceae Gleichema Gleicheniaceae Polypodiaceae spore (indet.) Monocolpate pollen Podocarpus Picea Pinus Tsuga Taxodiaceae Lanx?

Sa ltY Carya Juglandaceae Ca rpinus Corylus Betula

Betulaceae Alnus Fagus 囲trr#/*fH Castanea

Zelkova or Ulmus Ulmaceae Chenopodiaceae Liquidambar Ilex Tilia Ericaceae

Polygonum ( ‑Periscaria) Hemitrapa?

Gramineae Tricolpate pollen Tricolporate pollen

t H L O O O ( M i

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29

2351434

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2 361327

> ‑ H C M ( M C M 12

3412 541

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n o i d i n o i 2 2 1 o h m n b T ‑ H O O <

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51

114

N N N

! D I N 1

45

3

50I 50I 50j 50I 50 50i 50 1001100ilOOI 50 200!200

頻度値をもつものはT. Sieboldiiである可能性がある。この様に下部大屋層ではTsugaは

T. Sieboldiiの花粉より小型の花粉をもつTsugaが主体であり,一部T. Sieboldiiが混在す

るものと見撤される。これは高橋ら(1968)が述べたロノ津層群より上位の地層に見られる

(6)

Tsuga Sieboldiiが主体で一部T. diversifoliaが混るものと異なる構成となっているO被子植 物としては, Zelkova or Ulntusが優勢で,次いでQueγcusがみられるが, Fagusが若干現 われている.これは上部大屋層には見られなかったものである。 Liquidambar, Tiliaは稀にみ

られる。

以上のべたどとく,上部大屋層,下部大屋層から得られた特微の異なる2つの花粉群の特微 は加津佐層の花粉群と異なるが,下部大屋層の花粉群は加津佐層のそれに似ている。これらは 今後の重要な課題の1つになると思われる。

Ⅳまとめ

上に述べたことを要約すれば次のどとくである。

1)上部大屋層にみられる花粉群の特徴はQuercusが最も優勢で,次いでAlnus, Betula が優勢である。 Quercusは常緑型と落葉型が混在し, Liquidambarは僅かにみられる。

2)下部大屋層にみられる花粉群の特徴は松柏類としてはPinus, Tsugaが優勢で,その他 Taxodiaceac, Lartxl, PiceaがみられるTsugaはTsuga Sieboldiiの花粉より小型の ものが優勢で,一部T. Sieboldiiが混在していると見倣される。被子植物としてはZelkova or Ulmusが優勢でQueγcusが次いでみられFagusが若干見られる。 Liquidambar,

Tiliaが稀にみられる。

3)前述の上部大屋層,下部大屋層の花粉群として示されたものの問に特徴の異なる花粉群 の入る可能性もある。また同様に,これらの上下にも異なる特徴をもつ花粉群の入る可能 性が残されている。これは今後解決せねばならぬ重要な課題である。

文献

大塚裕之(1966) :ロノ津層群の層序および堆積物‑ロノ津層群の地史学的研究1,地質経, 72, 8,

371‑384.

(1966) :ロノ津層群の地質構造,化石および対比‑ロノ津層群の地史学的研究2,地質経,

72, 10, 491‑501.

(1971) :津波見脊椎動物化石群の産状および津披見植物遺体群集について,鹿児島大学理学 部紀要, 4, 31‑41.

Takahashi, K. (1954): Zur fossilen Flora aus der Oya‑Formation von Kiushiu, Japan, Mem.

Fac. Sci., Kyushu Univ., Ser. D, geol., 5, 1, 47‑67. pi. 1‑

高橋清・川崎敏・古川博恭(1968) :有明海海底の第四系と花粉学.長崎大学教養部紀要,自然科 学, 9, 33‑43,図版1.

(1969) :有明海域の第四系の花粉層序学的研究.長崎大学教養部紀要,自然科学,10,49‑66.

Takahashi, K. (1971): Micro fossils from the Pleistocene sediments of the Ariake Sea area,

West Kyushu. Tγam. Proc. Palaeont. Soc. Japan, N, S. 81, ll‑26, Pis. 2‑5.

高橋清・浜田ちづ(1972) :島原半島南部の北有馬層および加津佐層の花粉学的研究(予報).長崎

大学教養部紀要, 13. (印刷中).

参照

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