手取川扇状地における水田用水の昇順方式 による新しい還元水分析法の提案と適用
2013年
石川県立大学大学院 吉田 匡
1
手取川扇状 地におけ る 水田用水の 昇順方式 に よる 新しい還元 水分析法 の 提案と適用
目 次
目 次
... 1
第
1
章 研 究の目的 と 対象地域の 概況... 6
1.1 農業用水 をめぐ る 情勢と本 研究の位 置 付け ... 6
1.1.1
近年の水資源 の 情勢につい て... 6
1.1.2
農業用 水の現状 について ... 71.1.3 かんが い排水と 反復利用に ついて ... 10
1.2
手取川扇 状地の 農業用水 ... 111.3 本論文の 構成 ... 13
第
2
章 手 取川扇状 地 試験地にお ける水田 用 水地区内還 元水の分 析... 17
2.1 研究の目 的 ... 17
2.2 対象地域 の反復 利用の考え 方と特徴 ... 18
2.3 手取川扇 状地の 概況と試験 流域 ... 20
2.3.1
手取川扇状地の 概要... 20
2.3.2
地形と 土層断面 ... 212.3.3
土地利 用... 22
2.3.4
用排水系統... 23
2.4 研究の方 法 ... 23
2.4.1
分析の方法と 研 究対象地域... 23
2.4.1.1
対象地域の 用排 水系統と還 元水の求 め 方... 23
2.4.1.2
水路流量 と減 水深の測定... 25
2.4.2
末端水田にお け る消費水量... 27
2.5
分析結果... 28
2
2.6
考察 ... 292.6.1
本地域の水源 整 備・圃場整 備と用水 反 復利用... 29
2.6.2
水源整備,圃 場 整備以前の 推定... 31
2.6.2.1 減水深が大き い場合 ... 32
2.6.2.2 灌漑水量が不 足する場合 ... 32
2.6.2.3 反復利用がな されない場 合 ... 33
2.6.2.4 上流優先の取 水をした場 合 ... 34
2.7 本章のま とめ ... 34
第
3
章 水 田用水の 昇 順方式によ る新し い 還 元水分析法 の提案と 適 用... 39
3.1 研究の目 的 ... 39
3.2 手取川扇 状地と 七ヶ用水の 概要 ... 40
3.2.1
土地利用... 40
3.2.2
末端水田にお け る消費水量... 41
3.3 還元水分 析の方 法 ... 41
3.3.1
還元水 の分析( 昇順方式)... 43
3.3.2
幹線水 路,用水 系の取水堰・排水 系の 取水堰,灌漑排水 ブロ ック のナンバー リングの 具 体的事例... 43
3.3.3
計算結 果の一例 ... 463.3.4
分析 に必要な 資 料... 47
3.3.4.1
用水系及 び排 水系の資料 ... 473.4.4.2
減水深資料... 48
3.4 分析結果 と考察 ... 49
3.5 本章のま とめ ... 50
3.6 付録 昇 順に並 び替えた事 例 ... 54
第
4
章 水 田用水反 復 利用の視点 からみた 取 水実態分析... 57
4.1 研究の目 的 ... 57
4.2 手取川扇 状地と 七ヶ用水地 区の概要 ... 58
3
4.2.1
土地の利用... 58
4.2.2
用排水路システ ム... 58
4.3 分析方法 と資料 ... 59
4.3.1 幹線水 路の流量 の測定 ... 59
4.3.2
水路流量の実 測 値と推定値 の比較地 点... 60
4.3.3
還元水量の推定... 61
4.3.4
取水量の推定... 63
4.4 分析結果 と考察 ... 63
4.4.1
実測流量と推定 流量の比較... 63
4.4.2
日当たりの実測 流量と計算 流量の比 較... 66
4.4.3
中干し前までの 日雤量比較... 68
4.5 本章のま とめ ... 70
第
5
章 元 入れ取水 量 から見た水 田有効雤 量 (取水制限 量)の分 析... 71
5.1 研究の目 的 ... 71
5.2 研究の方 法 ... 72
5.2.1
降水の 状況 ... 725.2.2
有効雤量の算定 方法... 72
5.3 結果と考 察 ... 74
5.3.1 年降水 量と年有 効雤量の経 年変化 ... 74
5.3.2
年降水量と年 有 効雤量の関 係... 74
5.3.3
年有効雤量と有 効降雤率の 関係... 75
5.3.4
必要取水量に対 する有効雤 量の経年 変 化... 76
5.3.5
有効雤量と降水 量の関係... 77
5.3.6 有効雤 量と計画 設計基準と の関係 ... 79
5.3.7 回帰分 析による 降水と有効 雤量の分 析 ... 79
5.3.8 降水量 と無効雤 量の比較 ... 80
5.4 本章のま とめ ... 82
4
第
6
章 結 論と要約... 84
謝辞 ... 86
本論文を構 成する論 文
... 88
付録... ...90
5
・
6
第
1
章 研究の目的 と対象地域の概況1.1 農 業 用 水 を め ぐ る 情 勢 と 本 研 究 の 位 置 付 け 1.1.1 近 年 の 水 資 源 の 情 勢 に つ い て
現 在 , 世 界 各 地 で は 人 口 の 増 加 に 伴 い , 水 不 足 , 水 質 汚 染 な ど の 問 題 が 発 生 し て い る こ と に 加 え , 地 球 温 暖 化 に よ る 環 境 の 変 化 に よ る 洪 水 の 増 加 な ど , 水 資 源 の 問 題 は 地 球 規 模 の 環 境 問 題 の 一 つ に な っ て い る .
日 本 に お い て も , 降 水 量 ・ 降 雪 量 の 変 動 の 増 大 や , 小 雪 化 に よ り 水 利 用 の 安 定 性 が 低 下 し て き て お り , ダ ム 等 の 水 資 源 施 設 が 計 画 当 初 の 能 力 を 安 定 的 に 発 揮 す る こ と が 困 難 に な る な ど , 渇 水 や 洪 水 被 害 の リ ス ク が 高 ま っ て い る ( 国 土 交 通 省 ,
2009).
地 球 上 に 存 在 す る 水 の 総 量 は ,
14
億km
3 あ る と 推 計 さ れ て い る が , そ の 内 海 水 が97.5% を 占 め て お り , 北 極 南 極 の 氷 河 や 汚 染 さ れ た 水 な ど を 除 く と , 全 体 の 0.01% し
か 淡 水 の 液 体 の 水 と し て 利 用 す る こ と が で き な い .
人 口 の 増 加 や 社 会 経 済 の 発 展 に よ り , 水 の 使 用 量 は 増 え 続 け て お り , 世 界 の 人 口 が
1950
年 ~1995
年 の45
年 間 で 約2.2
倍 に 増 加 し て い る 中 , 水 の 使 用 量 は2.6
倍 に 増 大 し て お り , 今 後 も 更 な る 増 加 が 予 想 さ れ る . ま た , 日 本 の 用 途 別 水 使 用 量 を み る と , 生 活 用 水 は19% , 工 業 用 水 は 15% , 農 業 用 水 66% と な っ て い て , 農 業 用 水 の 占 め る
割 合 が 非 常 に 高 い ( 国 土 交 通 省 ,2009).水 の 利 用 可 能 量 に 対 す る 水 の 利 用 量 の 比 を「 水 ス ト レ ス 比 」と 呼 び ,こ れ が
40% を
超 え て い る 場 合 に は ,「 水 ス ト レ ス が 高 い 状 況 下 に 置 か れ て い る 」と い う 目 安 と な る が ,「 世 界 水 ビ ジ ョ ン
2000」に よ れ ば ,水 ス ト レ ス の 高 い 国 に 居 住 す る 人 口 が ,2025
年 ま で に40
億 人 を 超 え る と 予 想 し て い る ( 世 界 水 会 議 ,2000).
日 本 は 水 の 多 い 国 と い う イ メ ー ジ が あ る が , 一 人 あ た り の 水 資 源 量
3,337
㎥ は 世 界 平 均 の8,559
㎥ の 半 分 以 下 で あ り , 水 資 源 量 が 尐 な い 国 で あ る . 日 本 は 降 水 量 や 降 雤 日 が 多 い た め 水 不 足 へ の 意 識 は 低 い が , 高 い 山 と 狭 い 領 土 で あ る た め , 日 本 の 川 は 急 峻 な 渓 谷 を 通 り , 降 っ た 雤 は す ぐ に 海 洋 へ と 流 出 し , 利 用 可 能 な 水 資 源 が 尐 な い . ま た , 日 本 は 急 激 な 経 済 発 展 を と げ , ア ジ ア の 中 で は 水 循 環 に 対 す る 環 境 整 備 が 整 っ て い る 国 で あ る が , 今 後 ア ジ ア 地 域 は 日 本 の 水 環 境 の 歴 史 を 後 追 い す る こ と が 予 想 さ れ7
る . つ ま り , ダ ム な ど の 開 発 に よ り , 河 川 流 量 が 減 尐 し , さ ら に は 水 質 悪 化 な ど の 水 循 環 の 悪 化 を き た す こ と と な る .
1.1.2 農 業 用 水 の 現 状 に つ い て
世 界 的 に み る と , 農 業 用 水 に 関 し て は , 欧 米 と ア ジ ア で は 大 き く 状 況 が 異 な っ て い る . ア ジ ア で は , 降 水 量 が 多 い 反 面 , 季 節 的 な 偏 り が 大 き く , 期 別 降 水 量 の 極 端 な 偏 り を 人 為 的 に 矯 正 す る こ と が 水 不 足 の 解 消 に つ な が る が , 欧 米 で の 水 不 足 は , も と も と 天 水 農 業 が 可 能 で あ っ た 地 域 で , よ り 高 い 収 益 性 を 得 る こ と を 目 的 に 導 入 さ れ た 灌 漑 に よ り 発 生 す る 水 不 足 で あ る .
世 界 の コ メ 生 産 量 の
92% を 占 め る ア ジ ア の 水 田 農 業 が ,世 界 の 農 地 面 積 の 37% に す
ぎ な い ア ジ ア の 農 地 で ,世 界 人 口61% の 生 活 を 可 能 に し て い る .こ の 面 積 と 人 口 の 関
係 は , ア ジ ア の 稲 作 の 人 口 扶 養 力 が 高 い こ と を 物 語 っ て い る .日 本 の 農 業 用 水 の
30~40% は ダ ム に 依 存 し て い る . ダ ム の 建 設 は 1970
年 代 を ピ ー ク と し て 減 尐 傾 向 に あ り , 環 境 保 護 の 観 点 や 開 発 コ ス ト の 増 加 な ど の 問 題 に よ り , 今 後 も 減 尐 が 続 く と み ら れ て い る .ま た ,既 存 の ダ ム 湖 へ の 土 砂 堆 積 に よ り ,2050年 頃 に は 現 在 の 貯 水 容 量 が50% 以 上 減 尐 す る こ と が 見 込 ま れ て い る .
今 後 百 年 の 間 に , 夏 季 , 秋 季 の 降 水 量 が 増 大 す る 一 方 で , 冬 季 , 春 季 に は 減 尐 傾 向 と な り , 日 降 水 量 が
100
㎜ 以 上 の 年 間 日 数 , 無 降 水 日 数 と も に 増 加 す る な ど , 年 間 の 降 水 パ タ ー ン の 変 化 が 予 想 さ れ て い る( 国 土 交 通 省 ,2009).こ の 変 化 は ,冬 季 に 降 っ た 降 雪 か ら の 雪 解 け 水 を 利 用 し , 春 先 に 大 量 の 用 水 を 必 要 と す る 水 稲 栽 培 に 大 き な 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ る .日 本 の 水 資 源 利 用 量 は 1 人 当 た り 1 年 間 に ,生 活 用 水 に 約
130
㎥ ,工 業 用 水 に 約110
㎥ , 農 業 用 水 が
460
㎥ で 合 計 約700
㎥ で あ る が , 一 般 的 に 先 進 国 で は1,000
㎥ の 水 資 源 が 必 要 だ と さ れ て お り , 食 料 等 を 輸 入 し て い る た め 国 内 の 水 資 源 消 費 量 が 低 く 抑 え ら れ て い る .食 料 を 輸 入 し て い る 国 に お い て , も し そ の 輸 入 食 料 を 生 産 す る と し た ら ど の 程 度 の 水 が 必 要 か を 推 定 し た も の が バ ー チ ャ ル ウ ォ ー タ ー で あ る が , カ ロ リ ー ベ ー ス で の 食 料 自 給 率 が
40
% の 日 本 で は バ ー チ ャ ル ウ ォ ー タ ー の 輸 入 と い う 形 で 海 外 の 水 資 源 に 依 存 し て い る . 海 外 で の 水 不 足 や 水 質 汚 染 等 の 水 問 題 も , 日 本 に 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性8
が あ る .2005 年 に お け る 日 本 へ の バ ー チ ャ ル ウ ォ ー タ ー は ,1 人 当 た り 約
600
㎥ で あ り , こ れ は 水 資 源 利 用 量 と 同 程 度 で あ る ( 俊 成 正 樹 ,2009).
こ の 農 産 物 を 日 本 国 内 で 生 産 す る た め に は , 現 在 の 耕 地 面 積
470
万ha
の 約3.6
倍 ,1,700
万ha
の 耕 地 が 必 要 で あ り , ま た 現 在 の 農 業 用 水 利 用 量570
億 ト ン の 約2.1
倍 ,1,200
億 ト ン の 農 業 用 水 が 必 要 で あ る と 言 わ れ て い る ( 内 閣 府 ,2006). 今 後 ,世 界 の
人 口 増 加 や , 地 球 温 暖 化 に よ る 気 候 変 動 等 に よ り 食 料 需 要 が 増 大 す る 中 , 食 料 の 確 保 は 農 業 用 水 の 確 保 に 等 し く , 大 き な 問 題 に な る こ と が 予 想 さ れ る .
日 本 の 平 均 年 間 降 水 量 は 約
1700
㎜ で あ り , そ の 内500~ 600
㎜ が 蒸 発 散 量 と な り , 残 り の 半 分 が 利 用 可 能 な 水 量 で あ る と 言 わ れ て い る . 日 本 の 年 平 均 降 水 量 は 世 界 の 平 均 値 約970
㎜ の お よ そ 2 倍 で あ る . し か し , 人 口 密 度 が 高 く 人 口 一 人 当 た り の 水 量 は 比 較 的 尐 な い 方 と い え る .日 本 の 灌 漑 期 間 の 降 水 量 は 約
700
㎜ で あ る が ,水 田 の 必 要 水 量 は2,000
㎜ に お よ ぶ . そ れ に も 拘 わ ら ず 水 稲 作 が 成 立 し て い る こ と は , 人 工 的 に 水 循 環 シ ス テ ム を 制 御 し て い る こ と に 他 な ら な い .日 本 の 水 循 環 の 形 態 は , 一 過 型 と し て 特 徴 づ け ら れ る . つ ま り , 豊 富 な 降 水 量 と 狭 い 国 土 等 に よ り , 用 水 の 再 利 用 を 行 な う 必 要 性 が 尐 な く , 都 市 用 水 と 農 業 用 水 を 明 確 に 区 別 す る こ と が 可 能 な 点 で あ る . こ れ に 対 し , 欧 米 諸 国 で は , 大 河 川 を 中 心 と し て 上 流 都 市 部 で 利 用 さ れ た 水 を 下 流 域 で ,複 数 回 に わ た り 反 復 利 用 し な け れ ば な ら な い . 水 資 源 の 安 定 的 な 利 用 に と っ て 重 要 な こ と は , 年 に よ る 変 動 が 尐 な い こ と で あ る . 降 水 量 の バ ラ つ き に 伴 い ,水 資 源 賦 存 量( 水 資 源 と し て 利 用 可 能 な 水 量 )は
10
年 に 1 回 は2/3
以 下 ま で 下 が っ て し ま う .日 本 の 水 稲 作 付 面 積 は
1970
年 に 開 始 さ れ た 減 反 政 策 の 影 響 や ,人 口 増 加 や 経 済 発 展 に 伴 う 急 激 な 都 市 化 の 影 響 な ど を 受 け 減 尐 傾 向 に あ り ,1968
年 の 約317
万ha
か ら2000
年 の141
万ha
ま で 約4
割 に 減 尐 し て い る . そ れ に 対 し , 農 業 用 水 の 水 利 用 量 は1968
年 の570
億 ㎥ に 対 し2000
年 の586
億 ㎥ に 増 加 し て お り , 水 田 面 積 の 減 尐 と 比 例 せ ず , 水 田 面 積 の 減 尐 が 用 水 量 減 と は な っ て い な い . そ の 理 由 と し て は , そ も そ も の 用 水 不 足 が 考 え ら れ る . こ れ ま で 必 要 だ っ た 水 量 を 確 保 で き な か っ た 農 地 が , ダ ム の 整 備 等 に よ り 需 給 環 境 が 整 っ た こ と に よ り 必 然 的 に 用 水 量 が 増 加 し た . ま た 水 路 水 位 の 維 持 や 配 水 の 無 効 放 流 や 管 理 上 の 余 剰 取 水 な ど ,水 路 か ら 圃 場 へ 取 水 す る た め9
に 用 水 が 必 要 で あ る .こ れ を 配 水 管 理 用 水 と い う が , 水 田 の 環 境 条 件 に よ り 変 化 し ,人 為 的 要 素 の 大 き い も の で あ り ,水 稲 の 生 育 や 収 量 に 直 接 か か わ ら な い た め に 一 見 無 効 な 水 消 費 と 考 え ら れ や す い . し か し ,実 際 は 必 要 な 水 量 も 多 く 削 減 で き な い 用 水 量 で あ る .機 械 化 の た め ,水 管 理 調 節 を 伴 う 要 素 が 多 く な り ,た ん 水 ,落 水 の 水 操 作 を 頻 繁 に 行 う こ と に よ っ て 用 水 量 が 増 加 す る .ま た ,兼 業 農 家 の 増 加 に よ り 連 休 期 に 一 斉 に 田 植 え が 行 わ れ る た め ,こ れ ま で は 順 番 に 行 わ れ て い た 用 水 利 用 が 一 時 気 に 集 中 し 移 植 期 の 集 中 す る こ と も 用 水 量 増 加 の 原 因 と な る .
ま た ,一 般 的 に 水 管 理 労 力 と 用 水 量 は 反 比 例 し , 管 理 用 水 量 が 増 え れ ば 水 管 理 労 力 が 減 尐 し ,水 管 理 施 設 も 簡 素 化 で き る .減 水 深
2 0
㎜/ d
で5 0 0 h a
灌 漑 で き る 河 川 比 流 量 は1 . 0 m 3 / s / 1 0 0
㎢ で あ り ,灌 漑 面 積 の2 0
倍 の 水 源 面 積 が 必 要 で あ る . 用 水 源 の 開 発 コ ス ト が 増 加 傾 向 に あ る た め ,旧 来 の 利 水 に 対 す る 再 配 分 や 地 下 水 利 用 へ の 指 向 が 強 ま る 傾 向 に あ る .農 業 用 水 も 合 理 化 や 転 用 を 迫 ら れ て お り ,水 利 権 更 新 の 際 に ,現 状 の 水 量 を 確 保 す る の に 困 難 を き た し て い る .農 林 水 産 省 は
1998
年 の「 農 政 改 革 大 綱 」で 農 業 用 水 の 都 市 的 用 途 へ の 転 用 に 対 応 す る 姿 勢 を 打 ち 出 し て い る . 工 業 用 水 の 利 用 量 や 生 活 用 水 の 利 用 量 は ピ ー ク を 過 ぎ 減 尐 へ と 向 か っ て い る が , 面 積 当 た り の 用 水 使 用 量 の 増 加 は , 稲 作 生 産 の 効 率 化 を 阻 害 し て い る こ と は 間 違 い が な い . 農 業 用 水 が 発 揮 す る 多 面 的 機 能 の コ ス ト は , 用 水 シ ス テ ム の 建 設 費 , 維 持 管 理 に 影 響 を 与 え , 多 面 的 機 能 の コ ス ト を よ り 引 き 下 げ よ う と す れ ば , 稲 作 効 率 化 に 向 け た 農 業 用 水 の 効 率 化 が 必 要 で あ る . 農 業 用 水 は 無 償 で は な く 設 備 投 資 と 維 持 管 理 を 要 す る . そ の た め , 農 業 用 水 施 設 整 備 の 基 本 方 針 を 転 換 し な い か ぎ り , 更 新 に か か る 費 用 負 担 を 税 に 依 存 す る こ と に 問 題 が 生 じ る 可 能 性 も あ る . こ れ ま で あ い ま い で あ っ た 用 水 の 再 利 用 を 明 確 化 す る こ と に よ り , 費 用 分 担 を 合 理 化 し , 明 確 化 で き る と 考 え ら れ る .10
1.1.3 か ん が い 排 水 と 反 復 利 用 に つ い てか ん が い 排 水 と は ,農 地 に お け る 降 雤 ,蒸 発 散 浸 透 な ど 自 然 の 水 循 環 を 補 完 し て ,人 為 的 に 農 地 の 水 環 境 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と を い い ,目 的 と し て は , 水 分 補 給 の み で な く 雑 草 の 抑 制 , 連 作 障 害 の 回 避 , 温 度 調 節 , 地 力 の 消 費 抑 制 , 肥 料 分 の 供 給 , 虫 害 の 防 除 な ど が あ り , ま た , 排 水 に は 湛 水 被 害 の 回 避 や 有 害 物 質 の 除 去 な ど 多 岐 に わ た っ て い る .
一 方 ,気 温 の 高 い 地 域 で は 適 度 の 還 元 状 態 を 維 持 す る こ と に よ り ,土 壌 中 の 有 効 成 分 の 生 成 や 有 害 物 質 の 溶 脱 流 去 を は か る た め の 浸 透 水 が 必 要 で あ り ,地 球 温 暖 化 に よ る 高 温 化 が 予 想 さ れ る 日 本 に お い て ,水 田 の 浸 透 性 が 今 後 重 要 と な っ て く る と 思 わ れ る .
地 球 全 体 で み れ ば 降 水 量 と 蒸 発 散 量 は 約
1 , 0 0 0
㎜ で 等 し い . 日 本 で は 約1 , 7 0 0
㎜ の 降 水 量 に 対 し 約5 0 0
~6 0 0
㎜ の 蒸 発 散 量 で あ る .渇 水 年 で は 降 水量 は
1 , 2 0 0
㎜ 程 度 に な り , こ こ か ら 蒸 発 散 量 を 差 し 引 い た6 0 0
㎜ が 地 表 水と な り そ の 半 分 が 直 接 流 出 す る も の と す る と ,
3 0 0
㎜ が 利 用 可 能 水 量 と な る . こ れ は 水 量 に す る と1 , 1 0 0
億 ト ン に 相 当 し , 現 在 の 利 用 水 量 と ほ ぼ 同 程 度 で あ る .広 域 か ん が い 排 水 で は ,水 田 用 水 の 反 復 利 用 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い た め , 灌 漑 と 排 水 を 一 体 と し て 考 え な け れ ば な ら な い . こ の 点 , 畑 地 灌 漑 で は 用 水 の 反 復 利 用 を 考 慮 す る 例 は 尐 な い . ま た , 流 域 内 に は 畑 や 宅 地 , 道 路 な ど が 混 在 す る こ と で , 反 復 利 用 解 析 を 難 し く し て い る .
こ れ ま で 水 田 用 水 計 画 に お い て 様 々 な 角 度 か ら 反 復 利 用 に 関 す る 研 究 が 行 わ れ て い る .
用 水 量 の 算 定 方 法 と し て 为 に 使 わ れ て い る 減 水 深 法 は 地 区 内 の 減 水 深 の 総 和 を 必 要 水 量 と み な す 方 法 で あ る が ,用 水 の 還 元 や 再 利 用 を 考 慮 し な い た め , 実 際 の 必 要 水 量 よ り も 過 大 と な る 問 題 点 が あ る .
大 き な 水 系 を 対 象 と し た 地 区 間 の 反 復 利 用 分 析 と し て 考 案 さ れ た 複 合 タ ン ク モ デ ル 法 は ,为 に 山 間 の 平 野 に 開 け た 水 田 で の 将 来 の 水 需 要 動 向 を 予 測 す る こ と を 目 的 に 開 発 さ れ ,水 の 需 給 動 向 を 動 的 に 把 握 で き る 点 に 特
11
徴 が あ る . し か し , 流 域 各 地 点 で の 流 況 を 予 測 す る こ と は で き ず , 反 復 利 用 状 況 の 複 雑 な 低 平 地 で は 適 用 が 難 し い と さ れ て い る ( 五 十 崎 ,
1 9 7 8
).ま た ,
C B
法 は , 広 域 の 必 要 取 水 量 を 系 統 的 に 求 め る こ と が で き る 方 法 で , 普 通 期 計 画 最 大 用 水 量 を 算 定 す る こ と が で き る 方 法 で あ る . し か し , 期 間 別 の 必 要 取 水 量 を 算 定 す る こ と が 困 難 で あ る と い う 問 題 が あ る .反 復 利 用 に 関 す る 研 究 に つ い て は ,広 域 の 地 域 全 体 の 用 水 量 算 定 を 目 的 と し た も の が 多 く ,地 域 内 の 各 地 点 で の 用 水 反 復 状 況 を 目 的 と し て い る も の は 尐 な い .用 水 の 再 利 用 を 行 う 際 に ,受 動 的 に 利 用 し て い る 例 は 多 い が , 計 画 的 な 利 用 例 は 尐 な い . し か し , こ れ ま で 述 べ て き た よ う に , 今 後 の 水 環 境 の 悪 化 や 新 し い 営 農 形 態 に 対 応 し た 用 水 利 用 を 考 え る 上 で ,よ り 詳 細 な 反 復 利 用 の 分 析 が 必 要 と な っ て い る と 考 え る .
1.2 手 取 川 扇 状 地 の 農 業 用 水
手 取 川 扇 状 地 に は 七 ヶ 用 水 及 び 宮 竹 用 水 に よ り 隅 々 に ま で 農 業 用 水 が 行 き わ た っ て い る . 七 ヶ 用 水 の 始 ま り は わ か っ て い な い が , 平 安 時 代 後 期 に は す で に 手 取 川 か ら 用 水 を 取 り 入 れ て 扇 状 地 の 開 発 が 進 め ら れ て い る . 当 時 は , 扇 状 地 北 側 の 山 島 用 水 以 北 4 用 水 の み で あ っ た と さ れ る . 鎌 倉 時 代 の 記 録 に は 手 取 川 は 現 在 の 大 慶 寺 用 水 を 流 れ て い た と さ れ る 記 録 が 残 っ て い る . ま た , 戦 国 時 代 に は 現 在 の 手 取 川 で あ る 「 南 川 」 と 後 に 中 島 用 水 と な る「 北 川 」の 二 流 を な し て い た .1598 年 に 金 沢 城 为 前 田 利 家 と 小 松 城 为 丹 羽 長 重 が 領 界 を 決 め る に 当 た り ,当 時 の 手 取 川 で あ る 中 島 用 水 を 境 界 と し て , 石 川 郡 と 能 美 郡 に 分 け た . そ の た め , 川 北 町 は 手 取 川 右 岸 に あ り な が ら 能 美 郡 に 属 し て い る .
地 形 的 に は , 七 ヶ 用 水 中 心 部 の 山 島 用 水 が 手 取 扇 状 地 の も っ と も 高 い 所 を 流 れ て お り , 山 島 用 水 を 中 心 に 小 規 模 な 起 伏 地 形 を 形 成 し て い る . ま た , 帄 立 貝 の 貝 殻 の よ う な 地 形 を し て お り , 高 い 所 は 細 長 い 紡 諈 状 を な し 島 と よ ば れ て い る . そ の 間 の 低 い 場 所 を 七 ヶ 用 水 が 流 れ て い る .
ま た , 宮 竹 用 水 は 七 ヶ 用 水 よ り も 形 成 さ れ た 歴 史 が 浅 く , 地 形 的 な 関 係 か ら 手 取 川 よ り 取 水 す る こ と が 困 難 な 地 域 で あ っ た . し か し , 手 取 川 の 南 下 に 伴 い , 手 取 川 か ら
12
の 取 水 が 可 能 と な り , 江 戸 時 代 中 期 以 降 は 手 取 川 か ら 取 水 さ れ て い た と い う 記 録 が 残 っ て い る ( 七 ヶ 用 水 誌 ,1982).
水 源 地 域 と な っ て い る 白 山 山 地 は 万 年 雪 を も つ 高 山 は 尐 な く ,
2,000m を 超 え る 山 岳 地
域 は , 白 山 を 中 心 に ,16
㎢ 程 度 に す ぎ ず , ほ と ん ど の 山 地 は 中 低 山 性 の 山 地 で あ る . そ の た め ,5 月 上 旬 に は90% 以 上 の 積 雪 が 消 え て し ま う . 流 域 面 積 809
㎢ に 対 し , 灌 漑 面 積 は150
㎢ で あ り ,そ の 割 合 は5.4
倍 で あ る が ,他 の 流 域 に 比 べ 流 域 面 積 の 割 合 は 尐 な い( 例 え ば , 信 濃 川 は
10.8
倍 , 神 通 川16.1
倍 ). ま た , 扇 状 地 で あ り 浸 透 性 の 高 い 田 で あ る こ と や ,扇 状 地 自 体 が 急 勾 配 で あ る こ と を 考 え る と ,用 水 確 保 に は 不 利 な 条 件 が そ ろ っ て い る 地 域 で あ る ( 石 川 県 ,1986).
そ の た め ,過 去 に お い て 用 水 不 足 は 深 刻 で あ っ た .1955年 ま で は ,番 水 を 行 っ て 配 水 を 行 っ て い た が , 渇 水 期 に は 激 し い 争 い が 絶 え な か っ た . 過 去 に は 「 盗 人 口 」 と 呼 ば れ る 取 水 口 が 設 け ら れ た り , 夜 中 に 盗 水 し た り す る こ と が あ っ た . 集 落 関 係 に お い て , 水 上 は 絶 対 的 な 力 を 持 っ て お り , 水 下 は 毎 年 の 江 堀 人 夫 を 出 す こ と は も ち ろ ん , 盆 や 正 月 に お け る 水 上 へ の 挨 拶 は , 何 は さ て お い て も 欠 く こ と の で き な い も の で あ っ た と さ れ て い る .
ま た , 急 流 河 川 で あ る 手 取 川 は , た び た び 洪 水 被 害 を も た ら し た . 歴 史 上 最 大 規 模 と 言 わ れ る
1934
年 の 大 洪 水 で は , 死 者 , 行 方 不 明 者100
名 余 り , 床 上 浸 水 家 屋586
棟 の 被 害 が 記 録 さ れ て い る .こ の よ う な 状 況 を 受 け , 手 取 川 上 流 部 に , 大 日 川 ダ ム 及 び 手 取 川 ダ ム の 建 設 が 行 わ れ た .そ れ ぞ れ ,1967 年 ,1979年 に 完 成 し ,こ れ よ り 以 降 は 大 規 模 な 洪 水 被 害 や 用 水 不 足 は 発 生 し な い よ う に な っ た .
ま た ,「 昭 和 の 大 改 修 」と 称 し ,白 山 堰 堤 の 嵩 上 げ ,大 日 川 ダ ム の 建 設 に 合 わ せ た 総 延 長 約
140
㎞ に 及 ぶ 七 ヶ 用 水 の 幹 線 ・ 支 線 水 路 の 改 修 事 業 が 行 わ れ た . ほ 場 整 備 と 合 わ せ 水 路 の 直 進 化 も 行 わ れ て い る . ま た , 近 年 の 営 農 形 態 の 多 様 化 と 都 市 化 の 影 響 を 受 け , 用 水 路 の 老 朽 化 と 雤 水 排 水 に 対 す る 改 修 事 業 も 行 わ れ た . こ れ も 同 じ よ う に ,「 平 成 の 大 改 修 」 と 称 し , 現 在 そ の 工 事 に 取 り 組 ん で い る . 一 方 , 大 日 川 ダ ム や 手 取 川 ダ ム に よ る 水 源 整 備 に 続 い て , 扇 状 地 内 の 圃 場 整 備 が
1965
年 か ら1995
年 の 約30
年 間 に 活 発 に 行 わ れ ,90% 以 上 の 圃 場 が 整 備 済 み で あ る . こ れ に よ っ て 水 田 の 浸 透 量 も 大 幅 に 減 尐 し , か つ て ザ ル だ と 言 わ れ た 漏 水 田 も 尐 な く な っ た .13
手 取 川 扇 状 地 の 用 水 源 は 手 取 川 か ら の 取 水 に よ り 行 わ れ て お り , 古 来 右 岸 は 七 ヶ 用 水 , 左 岸 は 宮 竹 用 水 と し て 鶴 来 町 ( 現 白 山 市 ) か ら 取 入 れ て い た . 七 ヶ 用 水 は , 白 山 市 , 野 々 市 市 , 川 北 町 , 金 沢 市 の 一 部 に ま た が る 地 域 を , 富 樫 , 郷 , 中 村 , 山 島 , 大 慶 寺 ,中 島 ,新 砂 川 の
7
つ の 幹 線 用 水 路 に よ っ て 灌 漑 し て い た .宮 竹 用 水 は ,能 美 市 , 小 松 市 の 一 部 の 地 域 を 灌 漑 し , 以 前 は 八 つ の 独 立 し た 水 利 組 織 が , 独 自 の 取 入 口 を 有 し て い て 手 取 川 か ら 直 接 取 水 を 行 っ て い た . し か し , こ の よ う な 取 水 方 法 は , 渇 水 期 に は 下 流 地 域 の 用 水 不 足 の 原 因 と な っ て い た . ま た , 洪 水 の た び に 取 水 施 設 が 流 失 し た り , 破 壊 し た り す る た め , 修 繕 工 事 に 費 や す 工 事 費 も 増 大 し , 地 域 農 民 の 大 き な 負 担 と な っ て い た .そ こ で ,1903 年 に 手 取 川・七 ヶ 用 水 普 通 水 利 組 合 を 設 立 し ,手 取 川 右 岸 七 つ の 管 理 組 織 を 統 合 し て 取 水 口 の 合 併 を 行 っ た . こ れ ま で , 七 ヶ 用 水 は , 宮 竹 用 水 に 比 べ 取 水 箇 所 が 下 流 に あ っ た た め , 条 件 が 不 利 で あ っ た が , こ の 合 併 に よ り , 七 ヶ 用 水 側 が 有 利 な 地 位 に 変 わ り , 宮 竹 用 水 で は 渇 水 期 に 水 不 足 を 生 じ る こ と が 尐 な く な か っ た . そ の た め , 両 用 水 の 間 で し ば し ば 水 を 巡 っ て 紛 争 が 繰 り 返 さ れ た .
1937
年 に は 用 水 を 利 用 し た 発 電 所 が 作 ら れ る こ と と な り ,発 電 量 を 増 や す た め ,宮 竹 用 水 の 水 も 利 用 す る 必 要 が あ っ た . 手 取 川 に 逆 サ イ ホ ン 装 置 を 設 け , 発 電 に 利 用 し た 水 を 宮 竹 用 水 へ 環 流 す る こ と と な り ,1940 年 に 完 成 し た .し か し ,サ イ ホ ン 管 理 は 七 ヶ 用 水 側 に 委 ね ら れ て お り ,宮 竹 用 水 で は 水 不 足 が 解 消 さ れ な か っ た .1962 年 に は 大 日 川 ダ ム の 造 成 を 契 機 に , 両 者 が 分 水 協 定 を 締 結 ・ 調 印 し , 現 在 の 取 水 形 態 に 至 っ て い る .本 地 域 で は 農 業 用 水 反 復 利 用 形 式 に も 特 徴 が あ る . 太 平 洋 側 の 平 野 で の 浸 透 水 を 利 用 し た 反 復 利 用 と は 異 な り , 砂 礫 質 扇 状 地 で あ り 地 下 水 位 も 低 い こ と か ら , 浸 透 し た 用 水 は 反 復 利 用 の 対 象 と な ら な い . そ の か わ り , ラ イ ニ ン グ さ れ た 用 水 路 を 仲 介 と し た 地 表 水 の 反 復 利 用 を 行 っ て い る .
1.3 本 論 文 の 構 成
以 上 の よ う な 背 景 を 踏 ま え て , 有 効 な 水 資 源 利 用 の た め に , 農 業 用 水 の 反 復 利 用 に つ い て , 新 た な 分 析 方 法 が 必 要 で あ る . 本 研 究 で は 手 取 川 七 ヶ 用 水 を 対 象 に , 新 し い
14
農 業 用 水 の 還 元 分 析 方 法 を 提 示 し , こ の 方 法 の 有 効 性 , 実 用 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て , 農 業 用 水 の 反 復 利 用 及 び 有 効 利 用 に 関 す る 研 究 を 展 開 す る こ と と し た .
第
1
章 で は , 水 資 源 や 農 業 用 水 に 関 す る 最 近 の 動 向 , 研 究 対 象 地 で あ る 手 取 川 扇 状 地 の 用 水 状 況 に つ い て 記 述 し た .第
2
章 で は , 手 取 川 扇 状 地 内 に 試 験 地 を 定 め , 幹 線 水 路 を 媒 体 と し た 特 徴 的 な 反 復 利 用 方 式 に 焦 点 を 当 て , 本 地 区 の 還 元 水 の 特 徴 を 明 ら か に す る . そ し て , 何 故 こ の よ う に 用 水 の 豊 富 な 地 域 で 水 田 用 水 の 反 復 利 用 が 行 わ れ て い る の か を 考 察 す る と 共 に , 還 元 水 の 分 析 方 法 を 提 案 し た . そ の 結 果 , 比 較 的 潤 沢 な 用 水 量 を 確 保 し て い る 本 地 域 に お い て , 用 水 の 反 復 利 用 を 図 っ て い る 理 由 は , 水 源 整 備 ・ 圃 場 整 備 以 前 の 慣 習 を 継 承 し て い る た め と 推 定 さ れ た . ま た , 現 在 で も 集 落 営 農 等 に よ る 集 団 転 作 の 導 入 に よ り , 水 利 用 の 形 態 が 大 き く 変 わ り , 場 所 的 ・ 時 間 的 に 水 利 用 が 集 中 す る た め , 多 く の 取 水 地 点 の 存 在 や 反 復 利 用 シ ス テ ム が 有 効 に 機 能 し , 新 た な 視 点 か ら 反 復 利 用 の 有 効 性 が 推 定 で き た .第
3
章 で は ,用 排 水 系 統 を 体 系 的 に 整 理 す る こ と に よ り ,こ れ を1
次 元 の 数 字 で 表 現 し , 排 水 系 統 を 昇 順 に 並 び 替 え , 幹 線 水 路 ご と の 還 元 水 を 体 系 的 に 分 析 す る 方 法 を 新 た に 提 案 し , こ の 理 論 を 手 取 川 扇 状 地 に 展 開 す る 七 ヶ 用 水 地 区 に 適 用 し た 結 果 に つ い て 記 述 し た . 用 水 系 の 幹 線 水 路 , 取 水 堰 , 灌 漑 ブ ロ ッ ク , こ れ に 対 応 し た 排 水 系 の 幹 線 水 路 , 取 水 堰 , 排 水 ブ ロ ッ ク の ナ ン バ ー リ ン グ を 工 夫 し , 幹 線 水 路 へ の 還 元 水 量 を 計 算 し た う え , 排 水 系 の 幹 線 水 路 , 取 水 堰 , 排 水 ブ ロ ッ ク な ど の 結 合 情 報 を 昇 順 に 並 び 替 え , 用 水 系 に 対 応 し た 排 水 系 に 整 理 し , 用 水 の 還 元 水 の 状 況 を 分 析 す る 新 た な 手 法 を 開 発 し た . こ の 方 法 を 七 ヶ 用 水 地 区 に 適 用 し た 結 果 , 普 通 期 の 水 利 権 水 量 の 場 合 ,地 区 全 体 の 還 元 水 量 の 割 合 は ,取 水 量 の59
% ,こ の う ち 反 復 利 用 が 可 能 な 還 元 水量 は
33% ,残 り の 26% は 最 下 流 の 堰 よ り 更 に 下 流 に 流 出 ,あ る い は 直 接 日 本 海 に 流 出
し て , 反 復 利 用 が 不 可 能 な こ と が 見 出 さ れ た .
第
4
章 で は ,3
章 に お い て 導 き だ し た 新 し い 還 元 水 分 析 方 法 に よ り 算 定 さ れ た 還 元 水 の 状 況 に つ い て , 実 測 さ れ て い る 水 路 流 量 を 用 い て 比 較 を 行 い , 新 し い 還 元 水 分 析 方 法 の 有 効 性 に つ い て 検 証 を 行 っ た . 概 ね , 実 測 流 量 と 計 算 流 量 に は 大 き な 差 異 は 見 ら れ な か っ た が , 両 者 の 間 に 正 の 相 関 関 係 は み ら れ な か っ た . そ の 原 因 と し て , 都 市 化 に 伴 っ て 水 田 面 積 が 減 尐 し た に も か か わ ら ず , 取 水 量 が 変 更 さ れ て い な い こ と , 逆15
に 都 市 域 の 排 水 が 農 業 排 水 路 に 流 入 し て い る こ と な ど が 関 係 し て い る の で は な い か と 推 定 さ れ た . ま た , 各 水 路 の 用 水 配 分 を 水 路 幅 で 決 定 し て い る 箇 所 が 多 い が , 水 路 幅 は 戦 後 間 も な い こ ろ の 農 地 面 積 を 基 準 に し て 配 分 さ れ た 水 利 権 量 に よ り 決 定 さ れ た も の で , そ の 後 , 分 水 の 基 準 と な る 水 路 幅 の 変 更 が な い た め , 現 在 の 農 地 面 積 と の 間 に 違 い が あ り , 実 利 用 水 量 と の 差 異 が 生 じ て い る こ と が 考 え ら れ た . 今 回 得 ら れ た 分 析 結 果 か ら , 実 際 の 用 水 配 分 実 態 は , 用 水 の 反 復 利 用 の ほ か に 上 述 の よ う に , さ ま ざ ま な 要 因 が 関 与 し て い る と 理 解 す べ き と 結 論 づ け ら れ る .
第
5
章 で は ,手 取 川 扇 状 地 の 有 効 雤 量 に つ い て ,37 年 に わ た っ て 観 測 さ れ て い る 元 入 れ 取 水 量 を 利 用 し , 取 水 制 限 量 と 有 効 雤 量 の 分 析 を 行 っ た 結 果 に つ い て 記 述 す る . 元 入 れ 取 水 量 の 制 限 量 を 水 田 灌 漑 に 対 す る 有 効 雤 量 と 定 義 し , 北 陸 地 方 ・ 手 取 川 に 展 開 す る 七 ヶ 用 水 地 区 に つ い て 有 効 雤 量 と 降 水 量 の 関 係 に つ い て 研 究 し た . ま ず , 年 単 位 の 降 水 量 と 有 効 雤 量 を 基 本 に 分 析 し た . そ の 結 果 , 年 降 水 量 , 年 有 効 雤 量 の 変 化 に 伴 っ て ,有 効 降 雤 率 も 大 き く 変 動 し ,平 均33.2%,標 準 偏 差 11%で あ る こ と ,年 降 水 量
と 年 有 効 雤 量 に は 密 接 な 関 係 が あ る こ と , 年 有 効 雤 量 と 有 効 降 雤 率 に も 密 接 な 関 係 が あ り , 年 有 効 雤 量 が 多 く な る ほ ど 有 効 降 雤 率 が 大 き く な る こ と が 見 出 さ れ た . 更 に , 年 間 の 全 必 要 取 水 量 に 対 す る 年 有 効 雤 量 の 割 合 も 平 均5.0%, 標 準 偏 差 2.4%
に な る こ と を 明 ら か に し た .次 に ,
1
日 単 位 の 降 水 量 と 有 効 雤 量 を 基 本 に 降 水 量 と 有 効 雤 量 に つ い て 分 析 し た . 加 え て , 降 雤 が 連 続 す る 場 合 も 考 慮 し ,2
日 あ る い は3
日 の 移 動 平 均 を し た 資 料 に つ い て も 併 せ て 検 討 し た . そ の 結 果 , 降 水 量―有 効 雤 量 の 関 係 は 広 い 範 囲 に 分 布 し 一 定 の 関 係 を 見 出 す こ と は 出 来 な い こ と ,た だ し ,1 日 単 位 の 分 析 に 対 し て ,2 日 あ る い は3
日 移 動 平 均 の 資 料 は , 移 動 平 均 期 間 で 平 均 化 さ れ る の で , 原 点 に 近 い と こ ろ に 分 布 し , 分 布 範 囲 が 小 さ く な る こ と を 示 し た . 土 地 改 良 事 業 計 画 設 計 基 準 に 示 さ れ て い る 方 法 と 比 較 し た 結 果 , 設 計 基 準 の 方 法 は ,2 日 連 続 雤 量 に 対 応 し た 有 効 雤 量 に 相 当 す る こ と が 確 か め ら れ た . 更 に , 平 均 的 な 傾 向 を 得 る 目 的 で , 降 水 量 と 有 効 雤 量 の 間 に 回 帰 分 析 を 行 っ た . 最 後 に , 発 想 を 変 え て , 無 効 雤 量 と 降 水 量 の 関 係 を 分 析 し , 一 定 以 上 の 降 雤 は77%以 上 が 無 効 雤 量 と な る こ と が 統 計 的 に 示 さ れ た .
第
6
章 で は , 本 研 究 の ま と め と 結 論 を 述 べ た .16
引 用 文 献 石 川 県 (1986) 石 川 県 土 地 改 良 史 .五 十 崎 恒 , 田 中 礼 次 郎 , 長 堀 金 造 , 丸 山 利 輔 , 西 出 勤 , 佐 藤 晃 一 , 高 橋 強 , 三 野 徹
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平 成 2 1 年 版 日 本 の 水 資 源 に つ い て - 持 続 可 能 な 水 利 用 に 向 け て -.
内 閣 府 (
2006) 地 球 規 模 水 循 環 変 動 研 究 の こ れ か ら - 地 球 と 生 命 と 社 会 の 持 続 性 を
支 え る 水 循 環 系 の 構 築 へ 向 け て - , 1.3.1 水 問 題 の 現 状 と 予 測 、 今 後 の 論 点 . 世 界 水 会 議 (2000) 2 1 世 紀 に お け る 世 界 水 ビ ジ ョ ン手 取 川 七 ヶ 用 水 土 地 改 良 区 (
1982) 手 取 川 七 ヶ 用 水 誌 .
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山 崎 農 業 研 究 所 (2003) 2 1 世 紀 水 危 機 農 か ら の 発 想 , 農 文 協 .
17
第
2
章 手取川扇状地試験地における水田用水地区内還元水の分析2.1 研 究 の 目 的
農 業 用 水( 水 田 灌 漑 用 水 )の 特 徴 の 一 つ は 自 然 の 中 で の 用 水 の 循 環 利 用( 反 復 利 用 ) に あ る . こ の 課 題 は 古 く て 新 し い 問 題 で 未 だ に 十 分 な 研 究 が 行 わ れ て い る と は い え な い . 本 地 区 の よ う に , 広 域 用 水 量 が 基 本 的 に は 減 水 深 の み の 地 区 で あ っ て も , 複 雑 な 用 排 水 組 織 ( シ ス テ ム ) に 対 応 し て , 具 体 的 な 用 水 量 を 算 定 し , 用 水 の 場 所 的 , 時 間 的 な 変 化 を 表 す 方 式 は 確 立 さ れ て い る と は い え な い . 特 に , 今 日 の よ う に , 集 落 営 農 や 集 団 転 作 が 導 入 さ れ る と 水 利 用 が 場 所 的 ・ 時 間 的 に 集 中 し , 水 利 用 形 態 に 変 化 が 発 生 す る . こ の 場 合 に は 新 た な 視 点 か ら 反 復 利 用 の 研 究 が 求 め ら れ る . す な わ ち , 地 域 全 体 の 総 用 水 量 の み で な く , 場 所 的 ・ 時 間 的 な 用 水 量 の 変 化 を 考 慮 し た 対 応 策 を 立 て る こ と が 必 要 と な る . 本 研 究 の 対 象 と し た 手 取 川 扇 状 地 は , 石 川 県 の 穀 倉 地 帯 を 形 成 す る 代 表 的 な 平 野 で , 金 沢 市 と 小 松 市 に 挟 ま れ た 地 域 で あ る 手 取 川 は , 北 陸 地 方 の 特 有 の 急 流 河 川 で ,そ れ に よ っ て 形 成 さ れ た 扇 状 地 も ま た 急 勾 配 で 砂 礫 質 の 平 野 で あ る . こ の た め に , 用 水 路 は も と よ り 末 端 排 水 路 も コ ン ク リ ー ト に よ り 完 全 に ラ イ ニ ン グ さ れ(2 次 製 品 を 含 む ),水 路 か ら の 浸 透 を 防 ぐ と 共 に ,至 る 所 に 落 差 工 を 設 け ,落 差 工 と 併 設 し て 取 水 口 が 設 け ら れ て い る と こ ろ も 多 い . こ の 落 差 工 や 取 水 口 は 海 岸 近 く の 幹 線 水 路 ま で 設 け ら れ て い る . 水 田 用 水 の 反 復 利 用 の 方 式 も 太 平 洋 側 の 平 野 や 湖 沼 の 周 辺 に 展 開 す る 低 平 地 と は 異 な り , 幹 線 水 路 を 仲 介 と し た 特 有 の 地 区 内 反 復 利 用 体 系 を 取 っ て い る . こ の 体 系 は , 筆 者 ら の 知 る 限 り こ れ ま で 指 摘 さ れ な か っ た 反 復 利 用 シ ス テ ム で あ る .
本 報 告 は , こ の 特 徴 あ る 水 田 用 水 の 反 復 利 用 に 焦 点 を 当 て , 事 例 に 基 づ い て , ど こ の 水 が ど こ に 排 水 さ れ , 再 利 用 さ れ る か , 還 元 水 の 特 徴 を 具 体 的 に 明 ら か に す る . そ し て , 何 故 こ の よ う に 用 水 の 豊 富 な 地 域 で 水 田 用 水 の 反 復 利 用 が 行 わ れ て い る の か を 考 察 す る と 共 に , 還 元 水 の 分 析 方 法 を 提 案 し て , 今 後 の 用 水 計 画 に 役 立 た せ る こ と を 目 的 と し て 研 究 し た も の で あ る .
な お , こ れ ま で も 様 々 な 角 度 か ら 水 田 用 水 の 反 復 利 用 の 研 究 が な さ れ て い る . 大 き な 水 系 を 対 象 と し た 地 区 間 の 反 復 利 用 の 分 析 法 に は , 複 合 タ ン ク モ デ ル 法 ( 丸 山 ,
1988
;中 桐 ら ,1998, 2000)が 提 案 さ れ て い る が ,一 地 区 内 で の 反 復 利 用 に つ い て は ,
18
用 排 水 組 織 が 複 雑 な こ と も あ っ て , 十 分 に 研 究 さ れ て い る と は い い 難 い . し か し , 用 水 計 画 上 は 極 め て 重 要 な 事 項 で あ る た め , 古 く か ら 各 地 で の 実 績 が 整 理 さ れ て い る
( 農 業 土 木 学 会 ,
2000).こ の 実 績 の 整 理 と 並 行 し て CB
法( 岡 本 ,1973;佐 藤・岡 本 ,
1985; 農 林 水 産 省 構 造 改 善 局 , 1993; 農 業 土 木 学 会 , 2000) や 線 形 計 画 法 ( 三 野 ・ 丸
山 ,1983) が 提 案 さ れ , 実 際 に 応 用 さ れ て い る が ( 千 家 ら ,
1995), こ れ ら の 方 法 は ,
地 域 全 体 の 用 水 量 算 定 法 を 目 的 と し た も の で あ り , 地 域 内 の 各 地 点 の 状 況 を 知 る こ と を 目 的 と し た も の で は な い .こ の ほ か に も 分 布 型 循 環 モ デ ル を 応 用 し た 研 究( 谷 口 ら ,2009a,2009b
) も 提 案 さ れ て い る . し か し , こ れ ら の 方 法 も , 本 研 究 で 問 題 と し て いる 地 区 内 の 複 雑 な 用 排 水 系 統 を 踏 ま え た 反 復 利 用 の 解 析 法 で は な い .
2.2 対 象 地 域 の 反 復 利 用 の 考 え 方 と 特 徴
こ れ ま で , 水 田 用 水 の 反 復 利 用 の 研 究 や 実 績 は す で に ま と め ら れ て お り , 様 々 な 形 態 が あ る( 農 林 水 産 省 構 造 改 善 局 ,1993;農 業 土 木 学 会 ,2000).水 田 に 接 す る 末 端 用 水 路 を 堰 上 げ て 行 う 反 復 利 用 , 支 線 排 水 路 や 幹 線 排 水 路 を 堰 上 げ て 行 う 反 復 利 用 な ど が 知 ら れ て い る . 末 端 用 水 路 を 使 っ て 行 う と 反 復 利 用 は , 図
2
-1 に 示 す よ う に , 畦 区 の 上 流 端 で 用 水 路 を 簡 単 に 堰 き 上 げ て 取 水 し ,畦 区 の 下 流 端 で 排 水 す る 方 法 で あ り , 一 般 に よ く 知 ら れ て い る .図 2-1 圃 区 レ ベ ル の 反 復 利 用
Reuse of irrigation water at lot level
末 端 用 水 路 畦 区
圃 区 支 線 用 水 路 取水板
圃 区 末
端 用 水 路
畦 区
19
し か し , 本 論 で 取 り 上 げ る 幹 線 水 路 を 堰 上 げ て 用 水 の 反 復 利 用 を 図 っ て い る 例 は あ ま り 知 ら れ て い な い . 本 地 区 で は , 地 形 の 傾 斜 が 大 き い こ と を 有 効 に 活 用 し て , 幹 線 水 路 で は 用 水 路 と 排 水 路 を 兼 用 さ せ て 用 水 の 反 復 利 用 を 図 っ て い る . す な わ ち , 図
2
-2 に 示 す よ う に , 等 高 線 に 平 行 に 畦 区 の 長 辺 を 配 置 し , こ れ と 直 交 す る よ う に 末 端 用 水 路 と 末 端 排 水 路 を 交 互 に 配 置 し て い る .一 方 ,幹 線 水 路 に 取 水 堰 を 設 け て 取 水 し , 灌 漑 ブ ロ ッ ク ( 水 田 群 , 具 体 的 に は 図
2-8
参 照 ) に 配 水 し , 各 水 田 に 灌 漑 し た 後 , 灌 漑 ブ ロ ッ ク か ら の 排 水 を 末 端 排 水 路 で 受 け て , 支 線 排 水 路 に 集 め , 落 差 の 取 れ る 同 一 あ る い は 別 の 幹 線 水 路 に 排 水 し て い る . こ の 排 水 を 下 流 に 放 流 し , よ り 下 流 の 堰 で 再 び 取 水 し て 用 水 の 反 復 利 用 を 図 っ て い る .な お ,末 端 用 水 路 と 末 端 排 水 路 の 配 置 は , ど こ で も 見 ら れ る 普 通 の 用 排 水 シ ス テ ム で あ る が , 幹 線 水 路 を 用 排 水 兼 用 に 使 っ て い る の は , 急 勾 配 地 形 を も つ 北 陸 地 方 独 特 の も の と 考 え る . こ の 方 式 は , 完 全 に 用 排 水 分 離 の 機 能 を 維 持 し な が ら , 用 水 の 反 復 利 用 が 行 え る 点 , 北 陸 地 方 の よ う に 降 水 が 多 く , 排 水 不 良 が 問 題 と な る 場 合 に 適 し た 方 式 と い え る . こ の た め , 水 田 一 筆 ご と の 用 排 水 分 離 は 完 全 に 行 わ れ , 用 排 水 管 理 は 農 家 個 人 の 意 思 に 従 っ て 自 由 に 行 う こ と が で き る .図
2-2 本 地 区 の 水 田 用 水 の 反 復 利 用 Reuse of irrigation water at study area
末 端 用 水
路 畦区
末 端 排 水 路
末 端 用 水 路
末 端 排 水 路 圃 区
支線排水路 支線用水路
畦 区
取 水 取水堰
支線排水路 幹
線 用 排 水 路 末
端 用 水 路
圃 区
20
末 端 排 水 路 ・ 支 線 排 水 路 は , コ ン ク リ ー ト ラ イ ニ ン グ さ れ , 排 水 路 の 管 理 を 容 易 に す る と 共 に , 水 路 か ら の 漏 水 を 防 ぎ , 還 元 水 が 土 砂 で 汚 濁 さ れ な い よ う に 配 慮 さ れ , 取 水 の た め の 堰 上 げ 施 設 は 設 け ら れ て い な い ( 図
2
-3).図 2-3 末 端 排 水 路 の 舗 装 状 況
Concrete pavement of tertiary drainage canal
2.3 手 取 川 扇 状 地 の 概 況 と 試 験 流 域
ま ず , 研 究 対 象 地 域 を 含 む 手 取 川 扇 状 地 の 概 要 と そ の 特 徴 を 述 べ , 研 究 対 象 流 域 の 理 解 を 助 け る .
2.3.1 手 取 川 扇 状 地 の 概 要
手 取 川 扇 状 地 は ,図
2
-4 に 示 す よ う に ,南 西 部 は 手 取 川 を 挟 ん で 能 美 市 を 境 界 に , 北 東 は 犀 川 を 境 界 に 日 本 海 に 囲 ま れ た ,約13,000ha
の 地 域 で あ る .こ の 地 域 に は 白 山 市 を 中 心 と し て ,野 々 市 市 ,川 北 町 お よ び 金 沢 市 の 一 部( 犀 川 左 岸 )が 含 ま れ て い る . こ の 地 域 の 農 地 は , 石 川 県 の 穀 倉 地 帯 の 中 心 を な し , 大 部 分 が 水 田 と し て 古 く か ら 利 用 さ れ , 畑 地 ・ 樹 園 地 は わ ず か で あ る . 犀 川 左 岸 地 域 と 国 道8
号 線 沿 い に は 市 街 地 が 展 開 し , 全 域 に 地 下 水 の 利 用 を 目 的 と し た 会 社 ・ 工 場 な ど が 立 地 し て い る .21
図
2-4 手 取 川 扇 状 地 の 平 面 図 と 水 路 系 統
Map of the Tedori river alluvial fan area and canal system
2.3.2 地 形 と 土 層 断 面
こ の 地 域 は ,手 取 川 に よ っ て 形 成 さ れ た 典 型 的 な 扇 状 地 で ,扇 頂 部 の 標 高 が 約
80m,
扇 頂 部 か ら 扇 端 部 ま で の 距 離 が 約
11km,平 均 地 形 勾 配 が 約 140
分 の1
と 北 陸 地 方 特 有 の 急 勾 配 地 形 で あ る . 地 層 は 図2- 5
に 示 す よ う に , 表 層 の 作 土 を 除 い て , 砂 礫 層 か ら な り , 一 部 に 粘 土 層 を 挟 ん で い る が , 良 好 な 帯 水 層 を 形 成 し て い る . 地 下 水 位 は 扇 頂 部 で 海 面 上 約60m, 扇 端 部 で 0m
で あ る が , 直 線 的 変 化 で な く , 扇 央 部 で 低 く な っ て い る . 勾 配 は 約180
分 の1
と 地 表 面 勾 配 よ り 緩 や か で あ る が , か な り の 急 勾 配 で あ る . 灌 漑 期 の 地 下 水 位 は 非 灌 漑 期 よ り か な り 上 昇 し , 灌 漑 に よ り 地 表 か ら 水 が 供 給 さ れ て い る こ と が 分 か る .22
図
2-5 扇 状 地 の 土 層 と 地 下 水 断 面
Soil horizon and groundwater level in the alluvial fan
2.3.3 土 地 利 用
扇 状 地 内 の 農 地 面 積 ( 犀 川 左 岸 を 除 く ) は 表
2- 1
の 通 り で あ る ( 北 陸 農 政 局 統 計 部 ,2006).こ の 表 か ら 明 ら か な よ う に ,本 地 域 は 大 部 分 が 水 田 で 占 め ら れ て い て ,典 型 的 な
水 田 地 帯 で あ る こ と が わ か る .表
2-1 調 査 地 区 内 土 地 利 用 別 面 積 Land use in the test area
市 町 名 全 面 積 水 田 普 通 畑 野 菜 畑 果 樹 園 白 山 市 (ha)
5,075 4,860 215 142 73
川 北 町 (ha)801 786 15 3 12
野 々 市 市 (ha)392 367 25 20 5
合 計 (
ha) 6,268 6,013 255 165 90
割 合 (% )100 95.9 4.1 2.6 1.4
23
2.3.4 用 排 水 系 統手 取 川 扇 状 地 内 全 体 の 用 水 系 統 を 図
2- 4
に 示 す . こ の 地 区 内 の 用 排 水 は , 七 ヶ 用 水 土 地 改 良 区 に よ っ て 管 理 さ れ て い る .扇 頂 部 に 設 け ら れ た 白 山 頭 首 工 に よ っ て 取 水 さ れ た 用 水 は ,扇 状 に 広 が る 用 水 路 を 通 じ て 扇 状 地 内 の 水 田 に 供 給 さ れ る .こ の 用 水 は ,灌 漑 期 の み で な く ,非 灌 漑 期 も 水 路 の 管 理 用 水 と し て 流 さ れ て い る .減 水 深 以 外 の 水 は 還 元 水 と し て , 幹 線 水 路 へ 戻 り , 反 復 利 用 さ れ た 後 , 日 本 海 に 排 水 さ れ る .2.4 研 究 の 方 法
2.4.1 分 析 の 方 法 と 研 究 対 象 地 域
本 研 究 で は , 研 究 対 象 を 一 つ の 幹 線 水 路 に 支 配 さ れ る 地 域 に 絞 っ て 検 討 す る . 研 究 対 象 地 域 は 用 排 水 路 の 流 量 が 長 期 に わ た っ て 測 定 さ れ て い る 七 ヶ 用 水
4-2
号 水 路 系 統 を 選 ん だ ( 図2- 4).
2.4.1.1 対 象 地 域 の 用 排 水 系 統 と 還 元 水 の 求 め 方
対 象 地 域 の 総 面 積 は ,
179.2ha, 灌 漑 の た め の 取 水 堰 は 14
箇 所 に 設 け ら れ , 取 水 さ れ た 用 水 は , そ の 取 水 堰 の 用 水 掛 り の 水 田 群 ( 用 水 ブ ロ ッ ク ) に 配 水 さ れ る . 水 田 群 は い く つ か に 分 か れ て 同 一 ま た は 他 の 排 水 路 に 集 ま り , や が て は 幹 線 水 路 な ど に 還 元 さ れ る . こ の 水 田 群 の 最 小 単 位 を 排 水 ブ ロ ッ ク と 呼 ぶ . こ の 排 水 ブ ロ ッ ク と 全 く 同 じ ブ ロ ッ ク を 灌 漑 水 量 算 定 の 必 要 上 , 灌 漑 ブ ロ ッ ク と 呼 ぶ . 灌 漑 ブ ロ ッ ク と 排 水 ブ ロ ッ ク と は 全 く 同 じ も の で あ り , 還 元 水 算 定 の 必 要 上 定 義 し た も の で あ る . し た が っ て , 灌 漑 ブ ロ ッ ク と 排 水 ブ ロ ッ ク は 同 数 で49
個 で あ る .灌 漑 お よ び 排 水 ブ ロ ッ ク の 面 積 は0.08ha
か ら20.3ha
に 分 散 し ,平 均3.7ha,標 準 偏 差 3.7ha
で あ る .試 験 地 区 は ,図2-
6
に 示 す よ う に 極 め て 複 雑 な 用 排 水 系 統 を 示 し , 幹 線 水 路 の 特 定 地 点 に 設 け ら れ た 取 水 堰 ( 落 差 工 兼 用 )( 図2- 7) か ら 取 水 さ れ た 用 水 は , 用 水 系 統 に 従 っ て , 各 灌 漑 ブ
ロ ッ ク に 配 水 さ れ る . 各 水 田 で 使 用 さ れ た 用 水 は , 末 端 排 水 路 に よ っ て , 排 水 ブ ロ ッ ク ご と に 集 め ら れ , 再 度 下 流 の 幹 線 水 路 に 流 入 し , 再 利 用 の 機 会 を 持 つ .用 水 ブ ロ ッ ク と 排 水 ブ ロ ッ ク の 実 際 の 関 係 は 複 雑 で あ る の で , 図
2-6
の ブ ロ ッ ク11
を 拡 大 し て 図2
-8 に 示 し た .24
図
2-6 試 験 地 区 内 用 排 水 系 統 平 面 図
Map of irrigation and drainage system in the test area
図
2-7 幹 線 水 路 の 取 水 堰
Diversion weir at main canal
25
図 2-8 試 験 地 区 内 用 水 ブ ロ ッ ク
11
拡 大 図Enlarge map of drainage block in the test area
2.4.1.2 水 路 流 量 と 減 水 深 の 測 定
4-2
号 水 路 の 上 流 部 と 下 流 部 に 超 音 波 水 位 計 が 設 置 さ れ ( 図2-6
,9),1 時 間 単 位 で の 水 位 が 記 録 さ れ て い る . こ の 資 料 か ら 日 平 均 水 位 を 算 出 し ,H-Q
カ ー ブ よ り 日 平 均 流 量 を 求 め た . 本 地 区 は 地 形 勾 配 が 大 き い た め , 本 ブ ロ ッ ク の よ う に 海 岸 に 近 い 下 流 に あ っ て も , 落 差 工 が 設 置 さ れ て お り , バ ッ ク ウ ォ ー タ ー を 受 け な い こ と に 加 え , 海 岸 近 く ま で ラ イ ニ ン グ さ れ て お り , 比 較 的 高 い 精 度 で 流 量 観 測 が で き て い る ( 図2
-10). も ち ろ ん , 流 量 観 測 の 精 度 は , 実 測 に よ っ て 確 認 し て い る .
試 験 地 区 内 に
12
筆 の 水 田 を 選 ん で 一 筆 減 水 深 を 調 査 し た . そ の 結 果 は 表2- 2
に 示 す と お り で , 平 均12.6mm/d
と な っ た . こ の 実 測 値 は 村 島 (2009) が 同 地 区 内 に お い て 測 定 し た 値12mm/d
と 差 が な か っ た の で12.6mm/d
を 使 用 し て 分 析 を 進 め た .26
図
2-9 超 音 波 水 位 計 の 設 置 状 況
Setting site of supersonic water level meter
図