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判例研究

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠 調べとその裁量

最高裁判所第三小法廷平成二〇年七月一一日決定︵平成二〇年︵し︶第一四七号︑強

盗致傷保護事件に関し保護処分に付さない決定に対する抗告の決定に対する再抗告事

件︶刑集六二巻七号一二五頁︑判タ一二八〇号=三二頁︑判時二〇二一号一五七頁

柴 田   守

︹事案の概要︺       の年輩のサラリーマンから金員を強取しようと企て︑平成一六

1 本件送致事実の要旨      年二月一六日午後八時三五分ころ︑大阪市住吉区内の路上にお

 少年︵当時一四歳︶は︑A︵当時二六歳︶︑B︵当時二九歳︶︑ いて︑徒歩で帰宅途中のE︵当時六一歳︑以下﹁被害者﹂とい        ︑ C︵当時一六歳︶及びD︵当時=二歳︶と共謀の上︑帰宅途中  う︶に対し︑Dが被害者の後方から体当たりして被害者を路上

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四〇五

(2)

四〇六

に転倒させる暴行を加え︑さらに︑少年︑B︑D及びCが︑こ  時保護し︑翌二七日にSとUを逮捕し︑Cについては在宅扱い

もこも被害者の周りを取り囲んで︑﹁金出せ︒殺すそ︒﹂などと  として任意の取調べをすることとし︑それぞれ別件と並行して

脅迫して︑その反抗を抑圧し︑被害者から現金約六万三〇〇〇  本件の取調べを始めた︒

円を強取し︑その際︑上記暴行により被害者に対し︑入院加療   そして︑同年五月一六日にGから本件に関する自供を得ると

五一日間︑その後通院加療約三か月間を要する骨盤骨折の傷害  ともに︑本件現場へ同行するなどして実況見分を実施し︑同月

を負わせた︑というものである︒       一九日にCを取り調べて自供書等を作成するとともに︑本件現

      場を案内させて指示説明させ︑翌二〇日に少年を取り調べて自

2 本件についての捜査経過等       供書を作成し︑翌二一日にLを取り調べ︑バレンタインデーの

 本件発生にともない︑まず付近の聞き込み捜査がなされ︑そ  後︑A︑B︑G︑M︑D︑C︑少年︑Jらが帝塚山の方でおや

れにより本件直前の︑いわゆる﹁おやじ狩り﹂の前兆と見られ  じ狩りをし︑自分が見張りをしていた旨の供述を得たため︑そ

る恐喝未遂事案を含む複数の情報︵抗告裁判所のいう﹁前兆事  の自供書を作成し︑翌二二日には少年を本件現場に伴い引き当

案﹂︶を得るとともに︑本件現場付近の民家に設置された防犯  たり捜査を行った後︑少年を逮捕し︑更に同月二五日及び同年

ビデオカメラに本件犯行グループと見られる男四名が撮影され  六月二日にはHを取り調べ︑本件に関与したことを認める供述

ていたことから︑そのハードディスクデジタルレコーダーの任  をしたため︑それぞれその自供書を作成した︒A及びBについ

意提出を受け︑また︑そのDVDIRを入手した捜査側は︑入  ては同月一四日に逮捕したが︑同人らは︑捜査中︑一貫して否

手したレコーダーの映像︵以下﹁本件映像﹂という︒︶及びそ  認を続けた︵その後︑強盗致傷罪で公訴を提起されたが︑大阪

の画像を鮮明化した写真並びに入手したDVDlRの画像を鮮  地方裁判所は︑両名に対して無罪の判決を言い渡し︑大阪高等

明化した写真から判明する男四名の身体的特徴や服装等を手掛  裁判所は︑平成二十年四月一七日︑検察官の控訴を棄却し︑両

かりとして︑更に犯人の割り出しに努めた結果︑D︑G︑C︑  名の無罪が確定した︶︒

S︑U︑J︑K︑L︑その親分格のA︑更に同人の格上の者と   少年は︑任意同行された後︑取調段階の早い時期から本件犯

思われる男を把握し︑別件︵抗告裁判所のいう﹁V事件﹂︶で︑ 行への関与を認める内容の供述をし︑その後本件犯行について

平成一六年四月二六日にDを児童相談所に身柄付き通告して一  具体的かつ詳細な供述をしていたものであるが︑検察官の事件

(3)

送致により審判手続が始まってからは︑一貫して本件送致事実  供述及び審判証言︵以下﹁Dの自白﹂という︶に信用性を認め︑

を否認している︒       送致事実と同旨の事実を認定して︑平成一八年三月二三日︑少

      年を中等少年院送致︵一般短期処遇︶とする決定をした︵大阪

3 本件再抗告に至る経緯       家決平成一八・三・二三刑集六二巻七号一九四九頁︒以下︑

︵1︶ 平成一六年六月一一日に本件の送致を受けた大阪家庭  ﹁第一次家裁決定﹂という︒なお︑同決定の執行は即日停止さ

裁判所︵少年第一部︶は︑合議決定の上︑検察官関与決定をし  れている︶︒第一次家裁決定に対して︑少年の付添人が抗告し

て審理した︵以下﹁第一次審判﹂という︶︒付添人弁護士およ  た︒

び少年は︑本件において︑検察官は︑少年の共犯者とされるC  ︵2︶ だが︑大阪高等裁判所︵第一刑事部︶は︑検察官関与

の自白調書︑Dの自白調書および審判証言︑少年の自白調書等  決定をし︑事実の取調べを行った上︑送致事実に沿う少年の自

を非行事実認定の主たる根拠としているが︑これらの供述︑証  白︑Cの自白およびDの自白のいずれの信用性にも疑問があり︑

言はいずれも信用性に乏しいものばかりであって︑少年が﹁非  第一次家裁決定には重大な事実の誤認の疑いがあるとして︑平

行事実﹂記載の非行︵以下単に﹁本件非行﹂という︒︶を犯し  成一九年五月一四日︑同決定を取り消し︑本件を大阪家庭裁判

た事実を何ら証明するものではない︑むしろ︑少年には︑非行  所に差し戻すとの決定をした︵大阪高決一九・五・一四刑集六

事実と同一時刻に︑Cを含めた家族らと自宅にいたというアリ  ニ巻七号二〇二二頁︒以下﹁第一次抗告審決定﹂という︶︒同

バイが存し︑他の共犯者にもそれぞれにつき確固たるアリバイ  決定は︑その理由として︑本件犯行現場付近の民家に設置され

が存する︑現場付近の防犯ビデオの画像鑑定の結果︑共犯者と  た防犯ビデオカメラの映像に撮影された四名の人物は︑本件の

されるB及びCが︑犯人でないことは明らかであり︑少年が本  実行犯と考えられるが︑同映像は︑画質等の条件が良好でなく︑

件非行を犯したとは到底認められず︑非行なし不処分とされる  これを基礎資料とする鑑定結果の証明力には限界があるとした

べきであると主張した︒だが︑大阪家庭裁判所︵少年第一部︶  上で︑同映像を注視しても︑撮影された四名の身長や体格に顕

は︑いずれも自白を内容とする少年の捜査段階供述︵以下﹁少  著な較差があるとみることは難しく︑捜査官も同映像をそのよ

年の自白﹂という︶︑Cの捜査段階供述および自己の審判にお  うに認識していたとうかがわれること︑被害者も︑自分より非

ける供述︵以下﹁Cの自白﹂という︶︑ならびにDの捜査段階  常に大きな犯人がいたという印象がない旨述べていることから︑

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四〇七

(4)

四〇八

同映像に撮影された人物の中に︑Bのように明らかに大柄な人  見出すこともできないから︑受差戻審である当裁判所は︑抗告

物がいるとみることには合理的な疑いが残ることを指摘するほ  裁判所の原決定に対する前記消極的・否定的判断に拘束され︑

か︑Dと女友達との間で交わされた電子メールの内容や女友達  これに反する判断はできない︒﹂したがって︑﹁少年が共犯者ら

の供述等によれば︑本件の犯行時間帯にDが女友達と話し込ん  と共に本件非行に及んだことを認めるに足りる証拠がなく︑少

でいて︑本件現場にいなかった可能性があること︑いずれの自  年に対する本件送致事実については︑その証明が不十分であっ

白にも重大な供述の変遷があり︑警察官による誘導︐示唆︐暗  て︑非行の証明がないことに帰着するから︑本件について少年

示等に影響された疑いを払しょくできないこと︑各自白の間に  を保護処分に付することはできない︒﹂として︑検察官が申し

は重要な点でそこがあることなどを指摘した︒         出た証拠調べはいずれも必要性がないとして全く証拠調べを行

︵3︶ 同決定を受けた大阪家庭裁判所︵少年第二部︶の受差  わず︑平成一九年一二月一七日︑少年を保護処分に付さないと

戻審は︑合議決定の上︑検察官関与決定をした︒検察官は︑  の決定をした︵大阪家決一九・一二.一七刑集六二巻七号二〇

﹁本件現場付近で撮影された防犯ビデオカメラに撮影された人  七四頁︒以下﹁第二次家裁決定﹂という︶︒この決定に対して︑

物については︑実際には身長︑体格に大きな差があっても︑位  検察官が抗告受理の申立てを行った︒

置関係による遠近等から︑画像上︑一見すると︑身長︑体格に  ︵4︶ 大阪高等裁判所︵第三刑事部︶はこれを受理したが︑

ほとんど差がないように見えること﹂を明らかにする趣旨で︑  検察官関与の申出については︑職権を発動しなかった︒そして︑

B︑C︑D及び少年と身長体重の類似する警察官四名に本件現  同裁判所は︑本件DVDを取り調べることによって上記趣旨の

場付近を実際に走らせた姿を上記防犯ビデオカメラで撮影した  とおりの事実が認められた場合には︑第一次抗告審決定の重要

映像を収録したDVD︵以下﹁本件DVD﹂という︶の取調べ  な論拠の一つである本件非行の実行犯の中にBが含まれている

の申出をし︑さらに︑少年らの取調べ状況を明らかにする趣旨  ことについて合理的な疑いが残るという判断が変更を迫られる

で︑取調べに当たった警察官五名の証人尋問の申出をした︒だ  蓋然性が高く︑そうすると︑必要に応じて少年らの取調べを担

が︑同裁判所は︑﹁検察官の証拠調べの申出は︑いずれもその  当した警察官の証人尋問を行うなどして︑Cや少年らの自白の

必要性が乏しく︑また︑一件記録を精査しても︑当裁判所にお  任意性︑信用性を詳細に再検討することにより︑第一次抗告審

いて職権で証拠調べをしなければならないほどの新たな証拠を  決定の結論が覆る蓋然性があることは否定することができず︑

(5)

受差戻審の審判手続には︑決定に影響を及ぼす法令違反がある  して︑これを取り消したものであり︑受差戻審に更なる証拠調

として︑事実誤認の論旨に対する判断を省略し︑平成二〇年三  べを求めたものではない︒そして︑第一次抗告審決定は︑被害

月二五日︑第二次家裁決定を取り消し︑本件を大阪家庭裁判所  者の供述をも根拠として︑実行犯の中にBのように明らかに大

に差し戻すとの決定をした︵大阪高決二〇・三・二五刑集六二  柄な人物がいるとみることには合理的な疑いが残るとしたもの

巻七号二〇八三頁︒原決定︐以下﹁第二次抗告審決定﹂ともい  であること︑同決定は︑このほかにも︑Dにアリバイが成立す

う︶︒この決定に対して︑少年側が再抗告した︒        る可能性が高いことなど種々の点を指摘して上記各自白の信用

︹判旨︺         性に疑問があるとしたものである.﹂と︑第一次審判において︑       少年の取調べ警察官の証人尋問が行われ︑同警察官及びCの取

 原決定を取り消す︒       調べ警察官の証人尋問調書︵A及びBの一審公判におけるも

 本件について大阪家庭裁判所がした不処分決定に対する検察  の︶も取調べ済みであったこと︑第〜次抗告審においては︑検

官の抗告を棄却する︒      察官が本件DVDの取調べを申し出たのと同一の趣旨で提出し

      た本件DVDの映像を写真化した証拠及びこれを説明した鑑識

 最高裁判所第三小法廷は︑﹁少年の再抗告事件において︑原  課警察官の供述調書が取り調べられていたことなどにかんがみ

決定に少年法三五条一項所定の事由が認められない場合でも︑  ると︑第二次抗告審決定がいうように︑本件DVD等を取り調

同法三二条所定の事由があって︑これを取り消さなければ著し  べることによって︑第一次抗告審決定の結論が覆る蓋然性があ

く正義に反すると認められるときは︑職権により原決定を取り  ったとも認められない︒以上に加え︑本件の審理経過や早期︑

消すことができると解される︵最高裁昭和五八年︵し︶第三〇  迅速な処理が要請される少年保護事件の特質をも考慮すると︑

号同年九月五日第三小法廷決定・刑集三七巻七号九〇一頁参  第一次抗告審決定を受けた受差戻審が︑検察官が取調べを申し

照︶︒﹂としたうえで︑以下のような判断を示した︒       出た本件DVD等を取り調べなかった措置は︑合理的な裁量の

 ﹁第一次抗告審決定は︑第一次家裁決定が非行事実認定の主  範囲内のものと認められる︵最高裁昭和五八年︵し︶第七七号

たる証拠とした少年の自白︑Cの自白及びDの自白の信用性を  同年一〇月二六日第一小法廷決定・刑集三七巻八号一二六〇頁

いずれも否定し︑同決定には重大な事実の誤認の疑いがあると  参照︶︒そして︑受差戻審は︑新たな証拠調べを行わない以上︑

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四〇九

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四一〇

第一次抗告審決定が示した消極的否定的判断に拘束されること       ︹評  釈︺ となるから︵最高裁昭和四十一年︵あ︶第一〇八号同四三年一

〇月二五日第二小法廷判決・刑集二二巻一一号九六一頁参照︶︑  1 問題の所在

その旨判示し︑非行なしとして少年を保護処分に付さなかった   本件は︑強盗致傷の非行事実を認定して少年を中等少年院送

第二次家裁決定に法令違反は認められず︑また︑記録を調べて  致とした家庭裁判所の決定が︑抗告審で事実誤認を理由に取り

も︑同決定に事実誤認も認められない︒同決定に︑決定に影響  消されて差し戻された場合において︑検察官の申し出た証拠を

を及ぼす法令違反があるとしてこれを取り消した原決定には重  取り調べずに︑非行なしとして少年を保護処分に付さなかった       ︵1︶ 大な法令違反があり︑これを取り消さなければ著しく正義に反  受差戻審の決定に法令違反はないとされた事例である︒

するものと認められる︒﹂       ところで︑少年法では︑抗告制度は次のように定められてい

 なお︑田原睦夫裁判官は︑証拠の評価に関して重要な問題点  る︒少年︑その法定代理人または付添人は︑家庭裁判所のした

を含んでいるとして︑本件の記録に基づき事案に即して補足意  保護処分の決定に対して︑決定に影響を及ぼす法令の違反︑重

見を述べているが︑最後︑補論のなかで次のように述べている︒  大な事実の誤認︑または処分の著しい不当を理由として︑抗告

﹁本件は︑事件関係者が︑客観的証拠と明らかに矛盾する事実  することができる︵三二条︶︒保護処分決定に対して少年側に

について︑捜査機関の意向に迎合して︑比較的安易に自白する  のみ抗告が認められているが︑検察官関与決定︵二二条の二第

ことがあり︑殊に少年事件においては︑そのような危険性が高   一項︶がされた場合においては︑検察官は︑保護処分に付さな

いことを如実に示す一事例であり︵本件では︑送致事実には全  い決定または保護処分の決定に対して︑検察官関与決定があっ

く関与していないことが後に明らかとなった少年も︑一旦自白  た事件の非行事実の認定に関して︑決定に影響を及ぼす法令の

している︒︶︑刑事事件︑少年事件に関与する者には︑証拠の評  違反または重大な事実の誤認があることを理由として︑高等裁

価︑殊に自白と客観的証拠との関連性につき慎重な判断が求め  判所に対して︑抗告受理の申立てをすることができる︵三二条

られることを示す一事例として︑実務に警鐘を鳴らすものと言  の四︶︒抗告受理の申立制度は︑検察官に権利としての抗告権

えよう︒﹂      を認めるものではないが︑高等裁判所において︑適切にその申

      立ての適否を判断し︑相当であると認めた場合に抗告を受理す

(7)

ることを決定するものであり︑これにより︑重大な事実誤認等   少年法三五条は︑﹁抗告裁判所のした第三三条の決定に対し

による誤った審判について上級審における見直しの⁝機会を確保  ては︑憲法に違反し︑若しくは憲法の解釈に誤りがあること︑

しようとするものである︒抗告の手続がその規定に違反してい  又は最高裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例と

るときは︑決定をもって︑抗告を棄却しなければならない︵三 相反する判断をしたことを理由とする場合に限り﹂と規定して

三条一項︶︒だが︑抗告が理由のあるときは︑決定をもって︑  おり︑本件は︑形式上︑その抗告理由にはあたらない︒だが︑

原決定を取り消して︑事件を原裁判所に差し戻し︑または他の  本決定は︑原決定の当否を判断するにあたり︑少年法三五条の

家庭裁判所に移送しなければならない︵三三条二項︶︒抗告裁  抗告理由にあたらないとしながらも︑手続上︑﹁少年法三五条

判所のした決定に対しては︑憲法に違反し︑もしくは憲法の解  所定の事由が認められない場合であっても原決定に同法三二条

釈に誤りがあること︑または最高裁判所もしくは控訴裁判所で  所定の事由があってこれを取り消さなければ著しく正義に反す

ある高等裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由とする  ると認められるときは︑最高裁判所は︑最終審裁判所としての

場合に限り︑少年︑その法定代理人または付添人から︑最高裁  責務にかんがみ︑少年法及び少年審判規則の前記一連の規定に

判所に対し︑特に抗告することができる︵三五条一項︶︒     基づき︑職権により原決定を取り消すことができる﹂としたい

 本決定は︑このような制度に対して︑次のような点に関する  わゆる柏の少女殺し事件の最高裁決定︵最決昭和五八・九・五

重要な判断を示している.まず第一に︑少年法三五条の所定の 刑集三七巻七号九竺亘︶の立場を踏襲して・職権にょり判断

事由が認められない場合における再抗告裁判所の職権判断につ するとしてい露・

いてである︒第二に︑抗告裁判所決定の受差戻裁判所に対する   このような職権判断の可否について︑学説には︑少年法にお

拘束力についてである︒第三に︑受差戻審である家庭裁判所の  ける抗告理由が狭く限定されているから︑再抗告理由が憲法違

新たな証拠調べとその裁量についてである︒以下では︑これら  反︑判例違反に限定されるのは当然であるとして︑このような

を中心に本決定の意義について考えていきたい︒        再抗告裁判所の職権判断を認めないとする見解もあ︵か︶・だが・

      刑事訴訟における特別抗告について上告審に関する刑事訴訟法

2 少年法三五条の所定の事由が認められない場合における再  四二条を準用し︑法令違反︑事実誤認等についても職権調査

 抗告裁判所の職権判断      を認めているように︑少年保護事件についても︑原決定に少年

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四二

(8)

四一二

法三二条の事由があり︑取り消さなければ著しく正義に反する  判所の裁判における判断は︑その事件について下級審の裁判所

と認めるときは︑最終審裁判所としての是正の権限を認めるの  を拘束する︒﹂と規定しており︑受差戻審は抗告審決定に拘束        ら  が相当であるとして︑上記決定に賛同する見解が有力である︒  される︒

このように︑いわゆる柏の少女殺し事件の最高裁決定について   この拘束力について︑判例は︑﹁破棄判決の拘束力は︑破棄

学説も賛同する傾向にあり︑本決定が当該決定を踏襲して職権  の直接の理由︑すなわち原判決に対する消極的否定的判断につ

判断を行ったことは︑手続上正当だと解される︒なお︑再抗告  いてのみ生ずるものであり︑その消極的否定的判断を裏付ける

制度は︑最高裁判所の違憲立法審査権︵憲法八一条︶を行使さ  積極的肯定的事由についての判断は︑破棄の理由に対しては縁

せるため︑また︑最高裁判所による判例統一の機能を果たさせ  由的な関係に立つにとどまりなんらの拘束力を生ずるものでは

る機会をあたえるため︑憲法違反および判例違反に限って最高  ない﹂︵最判昭和四三・一〇・二五刑集二二巻=号九六一頁︑

       ︵6︶       ︵8︶

裁判所の判断を求める道を開いたものである︒だが︑判例違  八海事件第三次上告審判決︶とされており︑本決定でも︑この

反が︑控訴裁判所である高等裁判所の判例に限定されており︑  判決を参照して︑﹁新たな証拠調べを行わない以上︑第一次抗

抗告裁判所の判例統一機能がない︒この点︑少年保護事件につ  告審決定が示した消極的否定的判断に拘束されることとなる﹂

いての抗告裁判所の判例を統一することこそ重要であるから︑  という判断を示した︒﹁新たな証拠調べを行わない﹂という点        シ これがふくまれていない点は立法の不備であるという指摘には  に関しては︑次に扱うゆえ︑ここではいったん判断を保留して

留意しておく必要がある︒       おくが︑﹁第一次抗告審決定が示した消極的否定的判断に拘束

      されることとなる﹂という理解については︑少年保護事件の抗         3 抗告審決定の受差戻審に対する拘束力       告審においても一般的だとされており︑本決定の判断は妥当で

 抗告審である高等裁判所の抗告に対する裁判について︑少年  あると解される︒

法三三条二項は︑﹁抗告が理由のあるときは︑決定をもって︑   ただ︑今回のような事案とは逆の事案もありうることは念頭        り  原決定を取り消して︑事件を原裁判所に差し戻し︑又は他の家  に置かなければならない︒すなわち︑抗告審において︑不処分

庭裁判所に移送しなければならない︒﹂と規定する︒また︑上  とされた決定が取り消されて差し戻されたような事案であり︑

級審の裁判の拘束力について︑裁判所法四条は︑﹁上級審の裁  司法的機能と福祉的機能が対立する可能性が生ずるような場合

(9)

     

である︒ただ︑この点については︑﹁少年保護事件における非  4 受差戻裁判所の新たな証拠調べとその裁量

行事実の認定に関する証拠調べの範囲︑限度︑方法の決定は︑   家庭裁判所は︑非行事実と要保護性の存否を認定するにあた

家庭裁判所の完全な自由裁量に属するものではなく︑合理的な  り︑必要がある場合には証拠調べを行うことができる︒少年法

裁量にゆだねられたものであるところ︵最高裁昭和五八年  一四条一項は︑﹁家庭裁判所は︑証人を尋問し︑又は鑑定︑通

︵し︶第七七号同年一〇月二六日第一小法廷決定・刑集三七巻  訳若しくは翻訳を命ずることができる︒﹂とし︑また︑同一五

八号一二六〇頁︶︑その抗告審決定による事実の取調べも︑少  条一項は︑﹁家庭裁判所は︑検証︑押収又は捜索をすることが

年保護事件の抗告審としての性質を踏まえ︑合理的な裁量によ  できる︒﹂と規定している︒このような証拠調べについてはい

り行われるべきものと解される︵少年法三二条の六参照︶︒﹂と  ずれも︑少年保護事件の特質に反しない限り︑刑事訴訟法の規

した最高裁判所平成一七年三月三〇日第一小法廷決定︵刑集五  定が準用される︵少年法一四条二項︑一五条二項︶︒このよう

       ロ 

九巻二号七九頁︶において示されているように︑抗告裁判所の  に︑少年審判手続では職権主義的構造が採られ︑原則として検

事実の取調べ︵少年法三二条の三第一項︶も︑合理的な裁量に  察官は存在せず︑付添人も必要不可欠とはされていないことか

よってなされるものであって︑この決定についても同様に︑  ら︑家庭裁判所に多くが委ねられている︒しかしながら︑それ

︵積極的・肯定的な事由についての判断には拘束力は及ばない  は︑本決定が﹁非行事実の認定に関する証拠調べの範囲︑限度︑

が︑︶消極的・否定的な判断までは拘束力が及ぶのであるから︑  方法の決定も︑家庭裁判所の完全な自由裁量に属するものでは

受差戻審は︑その拘束を受けつつ︑少年保護事件の特質を念頭  なく︑少年法および少年審判規則は︑これを家庭裁判所の合理

に置いたうえで︑︵新たな証拠調べをするかどうかを含め︶証  的な裁量に委ねた趣旨と解すべき﹂と判示した最高裁判所昭和

拠関係を検討して独自の判断することになるであろう︒もっと  五八年一〇月二六日第一小法廷決定︵流山中央高校放火未遂事

も︑このような場合にはおそらく︑少年側の観点からすれば︑  件︶を引用するように︑家庭裁判所の﹁合理的な裁量︵合目的

最高裁判所昭和五八年一〇月二六日第一小法廷決定︵刑集三七  的な裁量︶﹂に委ねられている︒本件においては︑受差戻審で         ロ 巻八号一二六〇頁︶の事案のように︑再抗告することが想定さ  ある大阪家庭裁判所︵少年第二部︶で︑少年審判規則三〇条の

れる︒       七にもとづき検察官が申し出た本件DVDを証拠調べしなかっ

      たことが︑﹁合理的な裁量﹂の範囲内といえるのかどうかが焦

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四一三

(10)

四一四

点となる︒この点︑本決定においては︑第一に︑﹁第一次抗告  かった措置が︑﹁合理的な裁量﹂の範囲内のものだと判断して

審決定は︑第一次家裁決定が非行事実認定の主たる証拠とした  いる︒第一次抗告審決定における︵消極的・否定的な判断を裏

少年の自白︑Cの自白及びDの自白の信用性をいずれも否定し︑ づける︶積極的・肯定的な判断は︑何ら拘束力を有するもので

同決定には重大な事実の誤認の疑いがあるとして︑これを取り  はないと考えられていることから︑その判断は受差戻審である

消したものであり︑受差戻審に更なる証拠調べを求めたもので  家庭裁判所に委ねられる︒ただ︑問題は︑新たな証拠調べをし

はない﹂ということ︑第二に︑﹁第一次抗告審決定は︑被害者  なかったことが︑表面かつ外形上︑積極的・肯定的な判断につ

の供述をも根拠として︑実行犯の中にBのように明らかに大柄  いてまで拘束力が及んでいたと見られなくはないということで

な人物がいるとみることには合理的な疑いが残るとしたもので  ある︒しかしながら︑この点については︑第一次抗告審の審理

あること︑同決定は︑このほかにも︑Dにアリバイが成立する  経過から判断すると︑一つには︑本件DVDを取り調べたとし

可能性が高いことなど種々の点を指摘して上記各自白の信用性  ても第一次抗告審決定の結論が覆る蓋然性が低かったのであろ

に疑問があるとしたものであること︑第一次審判において︑少年  うし︑証拠の新規性も乏しかったと思われること︑加えて︑二

の取調べ警察官の証人尋問が行われ︑同警察官及びCの取調べ  つには︑自白を裏づける客観的証拠が提出されていないことな

警察官の証人尋問調書︵A及びBの一審公判におけるもの︶も  どから︑本決定が判断したとおり︑受差戻審が新たな証拠調べ

取調べ済みであったこと︑第一次抗告審においては︑検察官が  をしなかったことは妥当な判断だったと推察される︒また︑司

本件DVDの取調べを申し出たのと同一の趣旨で提出した本件  法的側面からだけではなく︑﹁早期︑迅速な処理﹂といった少

DVDの映像を写真化した証拠及びこれを説明した鑑識課警察  年保護事件の特質からもそれが裏づけられていることは︑きわ

官の供述調書が取り調べられていたこと﹂などの審理経過にか  めて重要な判断である︒学説では︑受差戻審は﹁ただちに審判

んがみると︑﹁第二次抗告審決定がいうように︑本件DVD等  を開き︑非行事実なし不処分を決定しなければならない︒それ

を取り調べることによって︑第一次抗告審決定の結論が覆る蓋  が不安定な地位から少年を早期に開放する途である﹂との主張        ロ  然性があったとも認められない﹂ということ︑そして︑これら  もなされている︒これは︑このような少年保護事件の特質︑す

に加え︑第三に︑﹁早期︑迅速な処理が要請される少年保護事  なわち︑少年司法における福祉的機能を中心的根拠とした見解

件の特質﹂を考慮して︑受差戻審が本件DVD等を取り調べな  と位置づけられる︒たしかに︑平成一二年の少年法改正以前の

(11)

少年法の抗告制度からすれば︑このような主張にも一定の合理  だが︑共犯者Aらの公判手続中に新たな証拠が明らかになり︑

性があるようにも思われる︒だが︑改正後は検察官の抗告受理  また︑その結果が本件審判手続に明らかにされたことで︑少年

の申立︵少年法三二条の四︶によって主張が認められれば︑家  らの自白の信用性が根本的に疑われるに至った事案である︒こ

庭裁判所に差し戻されることもありえ︑受差戻審は︑︵消極  のような事情があるものの︑田原睦夫裁判官が︑補足意見の補

的.否定的な判断の拘束力を受けつつも︶積極的・肯定的な判  論で﹁本件は︑事件関係者が︑客観的証拠と明らかに矛盾する

断についてまで拘束力が及ばないとの前提から︑少年保護事件  事実について︑捜査機関の意向に迎合して︑比較的安易に自白

の特質への配慮や︑︵新たな証拠調べをするかどうかを含め︶  することがあり︑殊に少年事件においては︑そのような危険性

証拠関係を検討して独自の判断することが要求されるのである  が高いことを如実に示す一事例であり︵本件では︑送致事実に

から︑この見解は手続上妥当ではな︵㌦.・このように理解する は全く関与していないことが後に明らかとなった少年も・亘

と︑︵上述したとおり︶第一次抗告審決定の結論が覆る蓋然性︑ 自白している︒︶︑刑事事件︑少年事件に関与する者には︑証拠

証拠の新規性︑および少年保護事件の特質を総合的に考慮した  の評価︑殊に自白と客観的証拠との関連性につき慎重な判断が

第二次家裁決定は妥当だと考えられ︑受差戻審が新たな証拠調  求められることを示す一事例として︑実務に警鐘を鳴らすも

べをしなかったことは︑演繹的に﹁合理的な裁量﹂の範囲内と  の﹂と述べているように︑自白と客観的証拠との関連性につい

断定され︑そこに法令違反がなかったものと解される︒     ては︑すべての事件において慎重な判断がなされなければなら

      ない︒本決定により︑このようなことが︑いままで以上に意識

5 まとめ      されることが期待される︒

 本決定は︑これまでの判例理論を踏襲したものであり︑また

少年保護事件の特質をも配慮した妥当な判断であったと総括さ  註

れる︒それゆえ︑少年保護事件における先例として高い価値を   ︵−︶本件の評釈として︑正木祐史﹁少年事件における受差戻審たる

有する︒田原睦夫裁判官の補足意見にもあるように︑一連の経     家裁の事実取調べ﹂法学セ︑︑︑ナー六四五号︵二〇〇八年︶一三 過は複雑なものであり当初は.少年らの犯人性に疑いを差し にほ誘竃の.雑霞軽戴籠誘羅諸

挟む余地はほとんどないとも言える案件﹂であったと思われる︒

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四一五

(12)

四一六

  て差し戻された場合において︑検察官の申し出た証拠を取り調べ     年の保護処分取消を求める申立に対してなされた不取消決定に

 ずに︑非行なしとして少年を保護処分に付さなかった受差戻審     対する抗告を認め︑且つ少年の再抗告事件において再抗告事由

  の決定に法令違反はないとされた事例﹂法律時報八一巻一号     以外の事由により原決定を職権で取消すとした事例﹂法学新報

  ︵二〇〇八年︶一一五頁以下︑家令和典﹁強盗致傷の非行事実を     九二巻一11二号︵一九八五年︶一六九頁以下︑椎橋隆幸﹁保護

  認定して少年を中等少年院送致とした家庭裁判所の決定が︑抗告審     処分不取消決定に対する抗告の可否−柏の少女殺し事件﹂少年

  で事実誤認を理由に取り消されて差し戻された場合において︑     法判例百選︵一九九八年︶一六二頁以下︑荒木伸恰﹁少年事件

 検察官の申し出た証拠を取り調べずに︑非行なしとして少年を     のいわゆる再審−柏の少女殺し事件﹂少年法判例百選︵一九九

  保護処分に付さなかった受差戻審の決定に法令違反はないとさ     八年︶一八六頁以下︑福田雅章﹁少年保護事件における再審

  れた事例﹂ジュリスト一三七一号︵二〇〇九年︶一〇四頁以下︑    1柏の少女殺し事件﹂昭和五八年重要判例解説︵一九八四年︶

 廣瀬健二﹁少年保護事件の受差戻審である家庭裁判所における     一九三頁以下︑筑間正泰﹁少年審判と再抗告﹂別冊ジュリスト

 非行事実認定に関する事実の取調べとその裁量﹂刑事法ジャー     八九号︵一九八六年︶二七二頁以下︑木谷明﹁判解﹂最高裁判

  ナル恥.16︵二〇〇九年︶一〇七頁以下などがある︒      所判例解説刑事篇昭和五十八年度︵一九八三年︶二一八頁以下︑

︵2︶本件の評釈として︑荒木伸恰﹁少年審判と誤判救済について﹂      ﹁判紹﹂法律時報五五巻=一号︵一九八三年︶二〇六頁以下︑肥

  ジュリスト八〇三号二九八三年︶四一頁以下︑木谷明﹁柏の少女     留田健一・土屋信﹁保護処分の取消しをめぐる諸問題﹂判例タ

 殺し事件の保護処分取消事件再抗告審決定について﹂ジュリス     イムズ九九六号︵一九九九年︶三七六頁以下などがある︒

  ト八〇三号︵一九八三年︶四八頁以下︑柳俊夫﹁柏市の少女刺    ︵3︶最決昭和六二・三・二四集刑二四五号一二一一頁もこの立場を

 殺事件の少年に対する保護処分取消し事件﹂法律のひろば三六     踏襲している︒

 巻二一号︵一九八三年︶四四頁以下︑門馬良夫・向井千杉﹁少   ︵4︶土本武司﹁少年の保護処分に対する再審﹂法時五五巻二号六

 年法二七条の二第一項による保護処分の取消しをしない旨の決     八頁参照︒

 定に対する抗告の可否等﹂家庭裁判月報三五巻二号︵一九八三   ︵5︶近藤和義﹁少年保護事件における抗告﹂家裁月報三〇巻四号八

 年︶一四〇頁以下︑木村裕三﹁少年の保護事件に対する再審﹂名     六頁︑平場安治﹃少年法︵新版ご︵有斐閣︑一九八七年︶一.一六七

 城法学三三巻三号︵一九八四年︶一四二頁以下︑木谷明﹁判     頁︑澤登俊雄﹃少年法入門﹄︵有斐閣︑一九九四年︶一八六頁︑田

 解﹂法曹時報三六巻五号︵一九八四年︶一六二頁以下︑牧田有     宮裕・廣瀬健二編﹃注釈少年法︹第三版︺﹄︵有斐閣︑二〇〇九

 信﹁少年法二七条の二第一項にいう﹃審判権がなかったこと﹄      年︶四一〇頁など参照︒

  の中には︑非行事実の不存在の場合を含むとの前提に立ち︑少   ︵6︶平場・前掲註︵5︶三六六頁︑澤登・前掲註︵5︶二〇五頁参照︒

(13)

︵7︶近藤.前掲註︵5︶八五頁︑平場・前掲註︵5︶三六六頁参照︒      調べ﹂法学セミナー六〇六号︵二〇〇五年︶一二二頁︑﹁判紹﹂法

︵8︶本件の評釈として︑田宮裕﹁破棄判決の拘束力・証明力を争う     律時報七七巻一三号︵二〇〇五年︶三四三頁以下︑藤井敏明

  証拠−八海事件ー﹂警察研究四四巻五号︵一九七三︶ 一〇二頁      ﹁判解﹂ジュリスト一三〇四号︵二〇〇六年︶一七五頁以下︑〃藤

  以下︑青柳文雄・藤井一道﹁破棄判決の拘束カー八海事件1﹂     井敏明﹁判解﹂法曹時報五九巻一号︵二〇〇七年︶三三六頁以

  法学研究四四巻九号︵一九七一年︶一三七頁以下︑光藤景鮫     下︑廣瀬健二﹁少年保護事件抗告審における非行事実の認定に

  ﹁八海事件﹂昭和四十三年重要判例解説︵一九六九年︶﹈四八頁     関する事実の取調べ﹂平成十七年度重要判例解説︵二〇〇六

  以下︑臼井滋夫﹁破棄判決の拘束力−八海事件ー﹂刑事訴訟法     年︶二一四頁以下などがある︒

  判例百選︹新版︺︵一九七一年︶一二八頁以下︑同﹁破棄判決の   ︵13︶本件の評釈として︑木谷明﹁非行事実の認定に関する証拠調べ

  拘束力−八海事件1﹂刑事訴訟法判例百選︹第三版︺︵一九七六     の範囲︑限度︑方法の決定と家庭裁判所の裁量﹂ジュリスト八

  年︶二二四頁以下︑小田中聰樹﹁破棄判決の拘束カー八海事     〇七号︵一九八四年︶七二頁以下︑米澤慶治﹁少年保護事件に

  件﹂刑事訴訟法判例百選︹第四版︺︵一九八一年︶二一四頁以下︑    おける非行事実の認定に関する証拠調の範囲︑限度︑方法﹂研

  同﹁破棄判決の拘束力−八海事件﹂刑事訴訟法判例百選︹第五     修四二八号︵一九八四年︶ 頁以下︑内園盛久・西岡清一郎﹁少

  版︺︵一九八六年︶二三〇頁以下︑木梨節夫・船田三雄﹁判解﹂     年保護事件における非行事実の認定に関する職権証拠調べの範

  最高裁判所判例解説刑事篇昭和四十三年度︵一九六八年︶二九     囲︑限度及び方法﹂家庭裁判月報三六巻二号︵一九八四年︶一

  八頁以下などがある︒      四三頁以下︑朝倉京一﹁非行事実の認定に関する証拠調べの範

︵9︶植村立郎﹁﹃処分の著しい不当﹄に関する一考察﹂家月三五巻     囲︑限度︑方法の決定と家庭裁判所の裁量﹂判例時報一一〇八

  一二号︵一九八三年︶八〜九頁参照︒﹁取消・差戻決定の拘束力     号︵一九八四年︶二一五頁以下︑木村裕三﹁非行事実の認定と

  は︑原決定取消の直接の理由すなわち原決定に対する消極的判  .   家庭裁判所の裁量﹂名城法学三四巻一号︵一九八四年︶一九一

  断についてのみ生じ︑右判断を裏付ける積極的肯定理由につい     頁以下︑木谷明﹁非行事実の認定に関する証拠調べの範囲︑限

  ての判断は何らの拘束力を有するものではない﹂と指摘する︒      度︑方法と家庭裁判所の裁量﹂法曹時報三六巻一一号︵一九八

︵10︶正木・前掲註︵1︶一三二頁参照︒       四年︶二七四頁以下︑多田周弘﹁非行事実の認定に関する証拠

︵11︶正木・前掲註︵1︶二二二頁は︑﹁二〇〇〇年改正で関与検察官     調べの範囲︑限度︑方法の決定と家庭裁判所の裁量﹂法学新報

  による抗告受理申立の制度が導入され︑抗告審で少年側に不利     九二巻五H六号三九八六年︶二五一頁以下︑廣瀬健二﹁少年

  益な判断がなされること﹂を挙げている︒       審判における事実の取調べ1流山中央高校放火未遂事件﹂刑事

︵12︶本件の評釈として︑正木祐史﹁少年事件抗告審における事実取     訴訟法判例百選︹第六版︺︵一九九二年︶二二〇頁以下︑田宮裕

少年保護事件における受差戻審である家庭裁判所の証拠調べとその裁量        ︵都法五十−二︶ 四一七

(14)

四一八

﹁少年保護事件と適正手続き1流山事件﹂少年法判例百選︵一   ︵14︶葛野尋之﹁少年審判制度への挑戦﹂法学セミナー四七七号二

九九八年︶六頁以下︑木谷明・家令和典﹁証拠調べの範囲・限     .九九四年︶七頁参照︒

度・方法−流山事件﹂少年法判例百選︵一九九八年︶九四頁以    ︵15︶植村立郎﹁司法改革期における少年法に関する若干の考察︵そ

下︑斉藤豊治﹁少年保護事件における非行事実の認定﹂昭和五     の二︶ー裁判例に見る少年法三二条の四所定の抗告受理の申し

八年重要判例解説︵一九八四年︶一九〇頁以下︑八束和廣﹁少     立てについてー﹂判タ一二﹈七号︵二〇〇六年︶一七頁参照︒

年審判における事実の取調べ﹂刑事訴訟法判例百選︹第五版︺     もっとも︑関与検察官の抗告受理制度それ自体の妥当性に批判

(一

續ェ六年︶二七〇頁以下︑木谷明﹁非行事実の認定に関する     を向ける立場もある︒正木・前掲註︵1︶二二二頁は︑抗告審決     ︐

証拠調べの範囲︑限度︑方法の決定と家庭裁判所の裁量﹂最高     定の受差戻審に対する拘束力に関して触れた︑不処分とされた

裁判所判例解説刑事篇昭和五十八年度︵一九八三年︶三五六頁     決定が抗告審で取り消されて差し戻されたような事案であり︑

以下︑﹁非行事実の認定に関する証拠調べの範囲︑限度︑方法の     司法的機能と少年保護事件の特質とが対立する可能性が出てく

決定と家庭裁判所の裁量﹂法律時報五六巻三号︵一九八四年︶     る場合において︑﹁抗告受理申立によって少年の早期解放が妨げ

=三二頁︑野田愛子ほか﹁最近の主要裁判例を通じてみた少年     られた面もあるのであって︑少年法の理念に照らした場合の同

司法の諸問題︵七ご判例タイムズ九九六号二九九九年︶三五三     制度の妥当性自体についても批判が向けられなければなるま

頁以下などがある︒      い︒﹂と指摘する︵正木・前掲註︵1︶二二二頁︶︒

参照

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