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氾濫原水域におけるウチダザリガニの分布拡大要因の解明

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2018 年 1 月 31 日,2 月 8 日

氾濫原水域におけるウチダザリガニの分布拡大要因の解明

-侵入先の環境要因と形態変化に着目して-

環境資源学専攻 森林・緑地管理学講座 森林生態系管理学 大上 慧太

1.はじめに

近年,侵略的外来種(以下,外来種)の分布拡大は世界各地で進行しており,外来種の分布拡大 要因を解明しリスク評価を行うことは,生物多様性を保全する上で喫緊の課題である。外来種の分 布拡大の成功には,「侵入先の環境要因」と「外来種自身の形態変化」が関係しており,分布拡大 リスクを正しく評価するためにはこれら 2 つの理解が不可欠である。

氾濫原とは河川の洪水が及ぶ範囲にある平野のことで,止水域から流水域まで多様な環境が広が っている。このような氾濫原水域は河川本流との連結性が高いため,本流に生息する外来種が侵入 しやすい場所である。しかしながら,多くの研究は氾濫原水域の環境要因のみに着目して外来種の 分布拡大リスクを評価してきた。こうした状況は,外来種の形態変化が生む隠れた分布拡大リスク を見落とすことにつながるかもしれない。そこで,本研究では氾濫原水域の生物多様性を脅かして いるウチダザリガニ(Pacifastacus leniusculus)を対象とし,環境要因と形態変化の双方から同種の 分布拡大要因を明らかにした。

2.方法

本研究では,河川本流から 2 つの水域タイプ(流水域:小支流,止水域:湖沼)への分布拡大に 着目して,水域タイプごとにウチダザリガニの生息環境と形態を調査した。

環境要因:小支流では「水温,水質,川幅,流速,水深,粒径,倒流木,川岸のえぐれ」,湖沼 では「水温,水質,水深,水生植物,面積,本流との連絡水路,本流との距離」とした。決定木分 析を用い,どの環境要因が分布拡大に強く影響しているかを調べた。

形態変化:測定部位は「ハサミの長さ・幅,頭長,胸幅,尾の長さ・幅」とした。判別分析と共 分散分析を用い,水域タイプ間での形態の違いを調べた。

3.結果と考察

小支流では,水温が高い環境や倒流木が多い環境にウチダザリガニが分布拡大しやすいことが分 かった。これは,水温や倒流木が同種の生存・移動能力向上に強く貢献しているためだと考えられ る。一方,湖沼では,本流と連絡する水路があり DO(溶存酸素)が多い環境に拡大しやすいこと が分かった。本流に生息するウチダザリガニは連絡水路を通じて,生存に必要な酸素が十分にある 湖沼へ侵入しているのかもしれない。

形態変化に関して,雄については,湖沼の個体が小支流の個体より胸幅が大きくなっていた。湖 沼のDOは小支流に比べて著しく低く,湖沼の個体は効率的に酸素を取り込むために鰓を発達させ た結果,胸幅が大きくなったのだろう。一方,雌については,小支流の個体は湖沼の個体よりハサ ミの幅が大きくなっていた。小支流の個体は,流水の抵抗を軽減するために,ハサミの幅を大きく して扁平にしたと考えられる。こうした形態変化は,ウチダザリガニの分布拡大速度の加速や多様 な環境への適応を促しており,同種の分布拡大リスクを正しく評価する上で不可欠な情報である。

今後,ザリガニ類以外の分類群においても環境要因と形態変化の双方を考慮した検証を進めるこ とで,氾濫原水域における生物多様性保全につながると考えられる。

参照

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