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わが国における自動車リコールと原価企画の関係

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(1)

経営 と経済 第

8 7

巻 第

3

2 0 0 7

年1

2

1 3 1 7

わが国における自動車リコールと原価企画の関係

Abs t r act

I nt hee xa mi na t i o no ft heMi ni s t r yo fLa nd,I nf r a s t r uc t ur ea ndTr a ns ‑ po r t , ado me s t i ca ut o mo t i ver e c a l ls ho wst het e nd e nc yt oi nc r e a s ee ve r y ye a r .Al s o,t hee xa mi na t i o ns ho wst ha tt hede f e c twhi c hde ve l o psi nt o t her e c a l l ha ppe nsf r e q ue nt l ymo r et ha nma nuf ac t ur i ngbyde s i gnpha s e.

Thi spa pe rpr o vi e dsac r i t i c a lr e vi e wo ft a r ge tc o s tma na gme nt( TCM) f o ra ns we r l ngt heque s t i o n,t ha ti s ,do s eTCM pr o mo t et hea ut o mo t i ve r c a

l

l ?o rc a nTCM pr e ve nti tbe f o r e ha nd?TCM i sc o s tma na ge me nts ys ‑ t e mf orane wpr o duc tde ve l o p‑ me nt .I nt heJ a pa ne s ea ut o mo t i vei ndus ‑ t

ry

, TCM i soneo ft hemo s tpo pul a rma na ge me ntt e c hni q uea tapr od uc t de ve l o pme ntphe s e.I nt hi spa pe rwee mpha s i z ear e l a t i o ns hi pbe t we e n t hea ut o mo t i ver e c a l la ndTCM a nddi s c us sanumbe ro fr e s e a r c hi s s ue s t obee xpl o r e di nf ut ur er e s e a r c h.

keyword:Aut o mo t i veRe c a l l ;Aut o mo t i veRe c a l lSys t e m o fJ a pa n;

Ta r ‑ ge tCo s tMa na ge me nt ; Ta r ge tCo s t ;Cr o s s ‑ Func t i o na lOr ga ni z a t i o n;

Suppl i e rRe l a t i o ns hi p;Co s tTa bl e;To t a lCo s t

1 は じ め に

品質の高 さで世界を リー ドして きた 日本の 自動車 メーカーの もの作 りが危 ない

。2 0 0 0

年の三菱ふそ う ・三菱 自動車の リコール隠 しは,われわれの生活

(2)

を脅 かす社会問題であ った とともに

,

壊れないのが当た り前」 として信 じ られてきた 日本車の晶質に疑問を抱かせる切 っ掛け となった。 また, トヨタ 自動車は

,2 0 01

年か ら

2 0 0 2

年 にかけて リコール台数が急増 し

,2 0 0 4

年 には過 去最悪の

1 8 9

万台の リコール を記録 した。 さ らに国土交通省が公表 している 自動車 リコール届出情報 によると,国内での リコールは年 々増加傾向にある ことが示 されている。

国内の 自動車 リコールの現状に対する素朴な疑問 として,近年 リコールが 多発 しているのはなぜか, 自動車 メーカーの もの作 りの どこに問題があるの か, リコールに発展するような欠陥,不具合を未然 に防止はで きないか,な どがあげ られる。本稿では, これ らに対 して,管理会計研究の中で もとくに 原価企画 に着 目し,批判的な考察を通 じてアプローチ したい。原価企画 とは,

日本の 自動車業界では広 く浸透 した製品開発 コス トマネジメン トである。原 価企画は,製品開発において,コス トだけでな く機能,性能,品質,納期 と いった 目標の同時達成のための活動である。原価企画による新製品開発の成 功例は数多 く報告 されている。 しかしなが ら,本稿では,原価企画のその よ

うなポジティブな側面ではな く, リコール と原価企画 との関係 を指摘するこ とによって原価企画の再検討 を試みる。

本稿の構成は次の通 りである。

2

節,

3

節では,国内の 自動車 リコール制 度および国土交通省の 自動車 リコール届出情報をもとに リコール状況を概観 する。4節では 自動車 リコールの原因について,製品開発の視点か ら考察す るために リコール関連の既存研究をい くつかレビューする。

5

節では,以上 をふまえなが ら,リコールを切 り口にして原価企画 (とくに,組織,ツール ・ システム,管理会計の3つの側面 か ら)の再検討を試みる。最後 に今後の課 題を提示する。

(3)

わが国におけ る 自動車 リコール と原価企画 の関係

1 . L a g

2 自動車 リコールの概要 と実状

2 . 1

リコール制度 とは

国土交通省が定める自動車 リコール制度 (リコール届 出に関する制度) と は,欠陥車による事故の未然防止を主な 目的にしている。具体的には, 自動 車について,その構造 ・装置または性能が安全確保および環境保全上の基準 である 「道路運送車両の保安基準 (国土交通省令)」に適合 していないか, 適合 しな くなる恐れがある状態であ り,かつその原因が設計 または製造段階 にある と認め られ る場合に, 自動車 メーカーにその旨を国土交通省 に届けさ せ,保安基準 に適合させ るために自動車な どを回収 しユーザーに対 し無料で 必要な改善措置を行 うこ とを義務づけた制度である1。 リコール制度の創立 は昭和4

4

年であるが, とくに近年,制度の整備 ・強化が図 られている。た と えば,平成

7

年 か らは道路運送車両法 において リコール制度の勧告制度,罰 則の適用な どの規制が整備 された。 さらに,メーカーによる リコール隠 しな どを受け,平成

1 4

年 には道路運送車両法が改正 され, リコール命令,罰則強 化がなされている

2

実は 自動車 リコール制度の他 にも

,

「改善対策」 と 「サー ビスキ ャンペー ン」 といった頬似の届出制度がある。改善対策 とは, リコール と異な り道路 運送車両の保安基準には不適合でない ものの,不具合が発生 した場合に安全 確保 および環境保全上看過で きない状況の場合に適用 される制度である。一 方,サービスキ ャンペーン とは,リコールや改善対策 には該当 しないが,メー カーが改善措置の必要性を判断 した場合に適用 される制度である。 これ らい ずれの制度 も,国土交通省に不具合の旨を届けさせた り,ユーザーに改善措

1国土交通省のホームページ

( h t t p: / / www. ml i t . go. j p / j i d o s ha / c a r i nf / r c l / i nd e x. h t m

l)を参照。

2

この他に も,平成

1 6

年 には, 自動車だけでな く,後付装置 もリコール対象 とする新制度 が導入され, リコールの適用範囲が拡大 された。 リコール対象の後付装置 としては, タ イヤ とチ ャイル ドシー トが該当している (平成

1 8

8

月現在)0

(4)

置を無償で提供するのは リコール と同様である。

しかしながら,以上の説明だけではこれ ら

3

つの制度の違いがはっきりし ない。なぜ類似 した制度が三つも存在 しているのか疑問が残 る。なぜな らリ コールであろうと,改善措置またはサービスキャンペーンであろうと,メー カーが欠陥車を回収 し無償で改善措置 を とることには変わ りないか らであ る。ユーザーにしてみれば,これ ら3つの制度に大差はない とも言える。 し かしメーカーでは, リコールはこれ ら類似制度の中で最 も厳 しい制度 として 位置づけ られている。それは, リコールだけが届 出た後の手続 きに対 して メーカー側に相当の負担が強いるか らである。具体的には, リコール届けの 級,自動車 メーカーは当該欠陥車の

90%

まで回収 ・修理を した ことを国土交 通省に届 出なければな らず,それまでは四半期に一度の報告義務がある一方 で,他の制度ではそれ らの義務は発生 しない (塚本

( 2 005

)

)

。 さらに,同じ 不具合の届 出制度で も, リコールだけがマス コミか ら注 目され るの もメー カーが リコールを危倶する要因である。

1

自動車リコール状況の推移

8, 0 0 0, 0 0 0 7 , 0 0 0, 0 0 0 6 , 0 0 0, 0 0 0 5 , 0 0 0, 0 0 0

E詰

a 4

.000 ,

0 0 0

3. 0 0 0, 0 0 0 2, 0 0 0, 0 0 0 1 , 0 0 0, 0 0 0 0

9 1 0 1 1 1 2 1 3 1 4 1 5 1 6 1 7 1 8

平成 (年度)

出典 :国土交通省の リコール届 出情報 をもとに作成

(5)

わが国における自動車リコールと原価企画の関係

1 4 1 2, 2

近年の リコール届出傾向

図 1は,国土交通省 自動車交通局が収集 した リコール届出情報

3

を もとに, 国内における過去

1 0

年間 (平成

9

年度か ら平成

1 8

年度まで)の リコール届 出 件数 と対象台数の推移をグラフ化 した ものである。届出件数,対象台数 とも に増加傾向 といえる。 この傾 向は,2

0 0 0

年の三菱 リコール隠 しの社会的イン パ ク トが大 きかった ことにも起因 しているが,それだけが原因ではない。た とえば,平成

1 6

年は,三菱の過去の欠陥車の問題が表面化 した年で,同社 か らリコール届 けが増加 している。 しかし,国土交通省 『リコール届 出内容の 分析結果 (平成

1 6

年度版

)4 』

によると,三菱の リコール届けを除外 した場合 で も,他の メーカーによる リコール届 出も,昨年度に比べて

1 7 0 %

も増 して いるという。図 2は,三菱以外の主要 自動車 メーカー別の過去 5年間 (平成

1 3

年度 か ら平成

1 7

年度まで)の リコール対象台数の推移 について

,

『リコー ル届 出内容の分析結果 (平成

1 7

年度版

)

』の掲載 デー タを もとにグラフ化 し た ものである。 トヨタ自動車 とスズキ 自動車の増加が顕著である。 この こと か らも近年の リコール増加は三菱ふそ う ・三菱 自動車だけにあるのではない のがわかるであろう。

ただ しこの ような リコール増加の原因は,近年 における積極的な制度運用 とも無関係ではない。た とえば, リコール と改善措置 との根本的な違いであ る道路運送車両の保安基準 (国土交通省令)をク リア しているか否かは,専 門的で技術的な判断を要 す ることか らグ レーゾーンにな る場合が多かった (五代

( 2 0 0 5)

,塚本

( 2 0 05

))。 この ような事態 を改善すべ く,国土交通省の リコール対策室は,このグレーゾーンをな くす よう努力 しているという (

( 2 0 05

))。 さ らに2

0 0 6

5

月に,交通安全環境研究所 (国土交通省の元管 轄下,2

0 01

年独立行政法人化)は,事故 ・不具合情報の検証や メーカーへの

3

同省のホームページを参照。

4

同省 自動車交通局では リコール届 出情報 を もとに作成 した 『リコール届出内容の分析結 果』をホームページで平成

9

年 か ら毎年公開 している。

(6)

聞 き取 り調査 を主な業務 とする 「リコール技術検証部」 を設置 した

5

。 この ように リコール に関わ る保安基準適用の厳格化や技術検証能 力の強化 も リ コール増加に影響 しているもの と思われる。

2

自動 車 メー カ ー別 の リコー ル状 況 の推 移

佃も‑ トヨタ自動車 日産 自動車

マツダ 本田技研工某 富士重工業

ダイハ ツ工 業 スズキ 自動 車

平成13 平成14 平成15 平成16 平成17 年度

出典 :国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成

1 7

年度版)』をもとに作成

1

不 具 合 の発 生 原 因別 (設 計 ・製 造 ) の推 移 (1)

単位 :件数 (括弧内は比率) 年度

H8 H9 HI O Hl l H1 2 H1 3 H1 4 H1 5 H1 6 H1 7

設 計

7 3 0 2 5 3 7 6 6 4 3 61 8 2 2 6 5 2 0 2

( 4 4 ) ( 5 6 ) ( 5

1)

( 6 2 ) ( 5 5 ) ( 4 3 ) ( 5 5 ) ( 6 0 ) ( 6 9 ) ( 7 3 )

製 造

9 2 4 2 4 2 3 5 5 5 8 4 9 5 5 1 1 8 7 5

( 5 6 ) ( 4 4 ) ( 4 9 ) ( 3 8) ( 4 5 ) ( 5 7 ) ( 4 5 ) ( 4 0 ) ( 3 9 ) ( 2 7 )

合 計

1 6 5 4 4 9 6 0 1 21 1 01 1 1 0 1 3 7 3 8 3 2 7 7

( 1 0

0 )

( 1

00) (100 )

( 1

00 )

( 1 0

0)

( 1

00)

( 1 0 0 ) ( 1 0

0) (

1

00 )

( 1

00 ) 出典 :国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成

9

年度版 か ら

1 7

年度版)』をもとに作成

5 『日経 ものづ くり』 日本経済新 聞社

,2 0 0 6

8

,p. 2 3

0

(7)

わが国における自動車 リコール と原価企画の関係

1 4 3

3

自動車 リコールにおける原因別 ・装置別の不具合発生の状況

3 . 1

不具合はもの作 りのどの段階で発生 しているか

自動車 リコール といって も,その不具合の発生はもの作 りプロセスの どの 段階にあるのか。表 1は,国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成

9

年度版か ら

1 7

年度版)』 を もとに,過去

1 0

年間の国産車の不具合の発生原 因別の推移を示 している。 この表 によると,ほ とんどの年度で設計の方が発 生比率が高 く, とくに平成

1 6 ,1 7

年度の設計段階における不具合発生の高 さ は際立 っている。

表 2は,平成

1 7

年度における国産車の不具合発生原因別の詳細を示 してい る。設計では設計 自体が

11 3

( 41 %)

で最 も多 く,次いで耐久性の

61

( 2 2 %)

となっている。 とくに設計 自体 に属する評価基準の甘 さが

9 8

件で,不具合全 体の

3 6 %

と際立 って高いのが特徴である。 また,耐久性 に属する開発評価の

2 リコール届出の不具合発生原因別件数 ・割合 (平成17年度)

不具合発生原因 設計 性能 量産 品の品質の見込 み違 い

2

件 (

1%)

総件数

( 1 0 0 %) 2 7 7

2 0 2

( 7 3 %) 2 8

( l o 財)

部品,材料 の特性の不十分使用環境条件の甘 さ

1 9 7

(3%) (6%)

耐久性

6 1

( 2 2 %)

開発評価の不備実車相当テス トの不十分

4 1 5 6

( (6%) 1 6 %)

設計 自体

1 1 3

( 4 1 %)

評価基準の甘 さ図面等の不備

9 1 8 2

( (4%) 3 6 %)

プログラム ミス

3

件 (

1%)

7 5

( 2 7 %)

作業工程

5 5

( 2 0 %)

作業員の ミスマニ ュアルの不備

1 2 8

件 (

(6%) 1%)

製造工程不適切

2 2

(8%)

作業管理不適切

1 3

(5%)

機械設備

9

(3%)

保守管理の不備

9

(3%)

工具 .治具

8

(3%)

保守管理の不備

8

(3%)

出典 :国土交通省 『リコール届 出内容の分析結果 (平成

1 7

年度版)

,p. 7

,一部省略

(8)

不備

( 4 5

件)も不具合全体に占める割合

( 1 6 %)

は決 して看過で きない。製造 に 関 しては,作業工程が

5 5

( 2 0 %)

と最多であった。その中で作業工程不適切

2 0

件を越 え最 も多 く,次いで作業員の ミス,作業管理不適切 と続 く。 さ ら に以上あげた項 目に不具合の原因が集中する傾 向は,表3によると平成 11 か ら現れている。とくに平成

1 5,1 6

年では

8 0 %

を越 え顕著な値 となっている。

その中で も設計 に属する評価基準の甘 さは,不具合の原因を占める割合は高

い。

3 . 2

装置別にみる不具合の状況

次 に,不具合の装置別の発生状況について調べてみ よう。なお,本稿では, 不具合を より多 く発生 させている設計 に注 目することにし,製造については 別稿 にて議論 したい。表

4

は,平成

1 7

年度 における国産車の装置別の不具合 発生の件数 (お よびその比率)の他,該装置の不具合原因が設計にあるのか 製造 にあ るのかの比率 も示 している

6

。装置別の不具合発生の原因が設計か 製造かについては,概ね表

1

を反映 してお り,緩衝装置以外の全ての項 目で 設計 に偏 っていた。上位にランクされた装置 について確認 しておこう。表 4 の装置分類 について国土交通省は とくに説明 していないが,動力伝達装置 に は, トランスミッシ ョン, ドライブシ ャフ ト,プロペラシ ャフ ト,デ ィファ レンシャルギアな どが,原動機 にはエンジン本体や過給器な どの周辺装置な ど,そして制動装置はブレーキ系統全般が含 まれている と思われる。 これ ら 装置は どれ も自動車の基本走行に直に関係 した ものばか りで,最悪の場合, 不具合が甚大な事故につながることもあ り得 る。

さ らに国土交通省の 自動車 リコール検索 システム

7

を使 って メーカー別の

6

国土交通省 『リコール届 出内容の分析結果 (平成

1 7

年度版

)

』 には,灯火装置以下の項 目 には設計 か製造 かの比率 については掲載 されていなかった。

7

国土交通省 『自動車 リコール等検索

』( ht t p: / / www. ml i t . go. j p/ j i do s ha / c a r i nf / r c l ノ r e c a l l . ht m

l) では,会社名,型式,届 日

( 1 9 9 3

4

1 5

日) か らリコール届 出情報 (改善措置届 も含 む)が検索可能。

(9)

わが国における自動車 リコール と原価企画の関係

145

3

不具合の発生原因別 (設計 ・製造)の推移

( 2)

単位 :件数 (括弧内は当該年度における不具合件数全体に占める比率)

HI O Hll H1 2 H1 3 H1 4 H1 5 H1 6 H1 7

設計 (開発評価の不備)

6 7 3 7 1 3 7 28 45

( 1 2 ) ( 1 2 )

(1) (7)

( 1 2) ( 5) ( 7 ) ( 1 6 )

設計 (評価基準の甘さ)

1 0 1 8 41 2 3 3 4 66 1 9 4

(

1 0 )

( 3 0) ( 3 4) ( 2 3) ( 3

1)

( 48 ) ( 5

1)

製造 (作業員の ミス)

8 5 11 2 0 9 1 2 1 6 ( 1 6) ( 8) ( 9 ) nl へ 7 07 ‑ ′ 1rJn過 、1 . 9( 〜) 4・̲\ p 肌u

製造 (製造工程不適切)

6 21

( 5) ( 1 0 ) ( 1 2) (

15)

37 2 2 (

10)

( 8 )

製造 (作業管理不適切)

1 0 6 6 1 37 1 3

( 8) ( 6) ( 1

)

( 7) ( 1 0) ( 5 )

( 計)

( 38 ) ( 5 0) ( 57 ) ( 66 ) ( 6 4) ( 8 4) ( 82 )

(71) 出典 :国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成

1 0

年度版から

1 7

年度版

)

』をもとに作成

4

装置別の不具合状況 (平成

17

年度)

装置別 件数 (件) 比率 (%) 設計 (%) 製造 (%) 動力伝達装置

原動機 制動装置 電気装置 燃料装置

かじ取装置 緩衝装置 灯火装置 走行装置 車枠 ・草体 乗車装置

50 1 8 66

40 1 5 70

35 1 3 66

26 9 85

23 8 78

20 7 85

17 6 52

34 30 34 15 22 15 48

1 6 6

1 2 4

11 4

9 3

排ガス発散防止装置

1 1

その他

1 7 6

合 計

277 100

出典 :国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成

1 7

年度版

)

』をもとに作成

(10)

不具合の状況を調べてみた。国内 自動車 メーカ‑ 3社 を選択 した。近年 リコー ル増加が著 しい トヨタ自動車 とスズキ 自動車, リコールを低い水準で維持 し ているダイハツ工業である (

2

)。結果を表

5

に示 してお く。 この表 では, 過去

5

年間の各社の不具合の届 出状況が示 されている。届 出総件数 とは,検 索 で該当 した件数である

8 。

リコール届 出総件数 とは, リコール制度 に基づ いた届 出の数である

9

。 リコール届 出不具合件数 とは, リコール届 出対象 と なった不具合その ものの数である

1 0 。

次に,表

5

の リコール届 出不具合件数 に該 当する リコール届 出を,設計段 階での装置別 に分類 した

1 1

。結果 を表

6

に示 した。結果を概観 してお こう まず,設計段階での不具合は, トヨタ自動車,スズキ 自動車 ともに

3 6

件で製 造段階 よ りも多かった。逆 にダイハツ工業は設計 (

7

件)よ りも製造

( 1 2

件)の 方が多かった。設計 における装置別で不具合 について,装置の大分類で

5

以上不具合が発生 したのは, トヨタ自動車では制動装置,駆動伝達装置,灯

8

執筆時点では2007年 8月29日までの情報が検索可能であった0

9

国土交通省の 自動車 リコール検索 システムでは, リコール届 出の他 に,改善措置 に関す る届 出 も混在 して検索結果が出力され る。本稿では厳密な意味での リコールの届 出事例 に考察対象を限定 した。

1 0

リコール件数が不具合その ものの件数を意味 しているわけではない。 リコール件数 とは, た とえば不具合部品をそれが

1 0

車種 で利用 していた とした ら, リコール件数 も

1 0

件 とカ ウン トされ る。 したが って,不具合その ものの件数 (リコール届 出不具合件数)をカウ ン トするために,複数車種 にわたる同一の リコール届出の件数は度外視 した。

1 1

リコール届出には設計 か製造か といった不具合の発生段階 について記載 されていない。

ちなみに,不具合出資料 に掲載 されている項 目は,不具合車種情報 (メーカー名,型式, 通称名,製作期間,車台番号),対象台数,不具合装置 (不具合の部位の特定 とその状況 説 明,お よび説 明図),対策 (対策の説 明 と対策個所説明図)である。本稿では,届出に 記載 されている不具合状況の記述 を手がか りに筆者 が識別 で きる範囲で分類 した。部品 の性能,耐久性,設計 自体に関する記述があ った場合に不具合の発生段階を設計 とした。

製造 についての詳細は割愛 した。一方,装置別の不具合 に関 しては,具体的に発生個所 が記載 されお り,で きるだけそのままの表記 を採用 した。 ただ しこれ らの分類は,筆者

自身によるもので,それに関 した誤 りな どは全て筆者に帰するものである。

(11)

わが国における自動車リコールと原価企画の関係

5 3

社の不具合の届出の状況 (平成1

5

年から平成1

9

年)

単位 :件数 トヨタ自 スズキ 自 ダイハツ工 届 出総件数 (改善措置届 け も含む)

2 4 7 8 0 3 3

リコール届 出総件数

2 0 6 7 4 31

リコール届 出不具合件数

5 7 51 1 9

1 4 7

出典 :国土交通省の リコール届出情報 を もとに作成

火装置,スズキ 自動車では駆動伝達装置,シフ トレバー ・ペダル,電気装置, 灯火装置であった。ダイハツ工業では,大分類で

5

以上発生 した項 目はな く, 駆動伝達装置 (無段変速機)が

2

件で最 も不具合の多い個所であった。装置

の小分類で,2回以上の複数回発生 している項 目は,トヨタ自動車で

7

項 目, スズキ 自動車で

9

項 目,ダイハ ツ工業は

1

項 目であった。また,最 も不具合 の発生頻度の高か った項 目は, トヨタ自動車では圧 力制動伝達部 と制動灯 (ともに4件),スズキ 自動車ではシフ トレバー と配線 (ともに 4件)であ った。

3. 3

自動車 メーカーにとって リコールは不可避か :本稿の問題意識に代えて

5

の リコール届 出不具合件数や表

6

の設計段階における装置毎の不具合 発生の件数は, 自動車 メーカーが最大限の努力 しているか らこそこの程度の 水準に とどまっているのか否か,改善余地がまだ残 されているのか否か,実 際の ところは不 明である。本稿の問題意謡銅こ置 き換 える と, (上で取 り上 げ

3

社 に限 らず)国内の 自動車 メーカーを中心に実施 されている原価企画は,

リコール発生 を助長 して しまうのか,それ とも未然に防 ぐことがで きるのか, である。 もしかする と, メーカー側か らすれば,ある程度 リコールが発生 し た り,同じ装置か ら繰 り返 して不具合が発生するのは不可避的な結果で,制 度に従い適切 に不具合を届 出さえしていれば とくに問題ない ことか もしれな い。 しか し,大量 の欠陥車の回収,修理 に要す る リコール コス ト (長谷川

(12)

( 2 0 0 1

))

1 2

によ り,地道 に積 み重 ねて きた コス ト低減努力が無駄 になるか も しれない。 この ように考 えると,不具合は出さない,発生 した として も二度 と同 じような不具合は出さないのがメーカーに とって,そ してなによりユー ザー (または社会全体)に とって最善であろう。実際, トヨタ自動車専務取 締役で品質保証本部長の佐 々木虞‑氏は 「リコールを

3

割減 らそ うなんて 目 標 を立てて も意味がない。 目標 に掲げ るな らゼ ロだ

1 3 」

と高い 目標 を掲げて いる。

本稿の 目的は, トヨタ自動車の品質書証本部長が掲げる目標 にもあるよう に,不具合の出さない設計をどの ように実現するか,また不具合を繰 り返 さ ないためにはどの ようにすればいいのか, これ らの問いに原価企画の視点か らアプローチを試み ることである。次節では, リコールに関す る既存研究の レビューを通 じて,その ような課題への手がか りを探 ってみたい。

4

リコール不具合の背後にあるもの :既存研究の レビュー

4 . 1

原価企画能力を揺 るがす要因

先にも示 した通 り,国土交通省 『リコール届 出内容の分析結果』か ら不具 合の発生原因は,多 くの場合,製造 よ りも設計にあ り, とくに設計における 評価基準の甘さが不具合の発生原因全体のなかで最 も高い割合を示 している ことが明 らかになった。 この ことに対 して,吉田

( 2 0 0

7)は原価企画能力 (

( 2 0 0 3 ) )

の低下を懸念 している。 ここで原価企画 とは,製品の開発 におい て,バ リューエンジニア リング(VE)

1 4

な どの手法 を活用 しなが らコス ト,

1 2

長谷川

( 2 0 01 )

は, リコール コス トを 「メーカーサ イ ドの製品保証範囲を超えて,道路 運送車両法 (運輸省)の安全基準がメーカーに課す安全保障費

( p. 4 4 )

」 と定義 している。

1 3

『日経ビジネス』 日本経済新聞社

,2 0 0 6

1 1

1 3

日号

,p. 3 7

0

1 4

最低のコス トで必要な機能を確実に達成させ価値 (‑機能 ÷コス ト)を最大にするため の機能分析手法である。

(13)

わが国における自動車 リコール と原価企画の関係

1 4 9

6

3

社の設計における装置別の不具合発生傾向 (平成

1 5

年か ら平成

1 9

年) 単位 :件数 (括弧 内は比率) 装置大分類 装置小分類 トヨタ 自 スズ ハツ

原動機 エン′ジン′

過給器 始動装置 冷却装置 排 気管

2 0 1

0 0 0

0 2 0

0 1 0

1 1 0

制動装置 圧 力制御伝達部 4 0 0

その他 1 0 0

緩衝装置 アーム/ロ ッ ド 1 0 0

その他 1 0 0

駆動伝達装置 無段変速機

( CVT)

クラ ッチ

ア クスルシ ャフ ト プロペ ラシ ャフ ト ドライブシ ャフ ト デ ィフ ァレンシ ャルギア

O

2 0 0

1 0 0

2 1 0

0 2 0

0 1 0

か じ取 装置 リンク機構 2 0 0

パ ワーステア リング 1 0 0

その他 1 0 0

シフ トレバー ・ペダル シフ トレバー 0 4 0

ア クセル 0 1 0

燃料装置 ポンプ

ホース/パ イプ タン ク

その他

1 1 0

1 0 0

0 1 1

0 1 0

電気装置 コンピュー タ 1 1 0

配線 3 4 0

ボデ ィ 車体 1 0 0

辛枠 1 0 0

灯 火装置 前照灯

後過灯 制動灯 方 向指示器 保 安灯火

1 3 0

0 1 1

Ll 1 1

O 1 O

1 2 0

走行装置 ホ イルハ ブ 0 2 0

その他 0 0 0

その他 ドア

エアバ ック ワイパー

排 ガス発散 防止装置

1 0 0

0 1 0

1 0 1

1 1 0

36

36 7

出典 :国土交通省の リコール届 出情報を も とに作成

(14)

機能,性能,品質,納期な どの要求事項や 目標の同時達成 を図ろうとする活 動である。原価企画能力 とはこの ような原価企画活動を支 える組織的な能力 の ことである (吉 田

( 2 0 0 3 ) ) 。

ちなみに原価企画の起源は

1 9 6 2

年の トヨタ自 動車でのVE導入に遡 る。その後 自動車業界を中心 に多 くのメーカーに浸透

していったこともあ り,管理会計研究者の中で も原価企画は自動車業界に深 く根付いたコス トマネジメン ト手法でるとの認識が強い。

吉 田

( 2 0 0

7)は,多発するリコールの原因を考察す るにあたって,原価企画 能力の低下 と密接 に関わっている評価基準の甘さに着 目した。以下,詳細 に みてお くことにしよう まず吉 田

( 2 0 0 7 )

は,国土交通省 『リコール届出内容 の分析結果 (平成

1 6

年度版

)

』 に掲載 されている リコールの具体事例を精査 し,評価基準の甘 さが引 き起 こした部品間の干渉問題の多 さを指摘 した。そ して,その部品間干渉の問題は 「開発期間の短縮化」 と 「担当者の業務過多 による疲弊」によるもの と指摘 している。 この指摘 について要約すると,開 発期間の短縮化 については, (1) (欧米企業 に比べ) 日本の 自動車 メーカー のエンジニアの専門化度の低 さ と広い職務範囲に加 え,ひ とつの新車開発プ ロジ ェク トに携 わる人数が少ない こと

,( 2 )

次節で後述す るゲス トエンジニ ア制度での何 らかのほ ころびが部品問q)調整 を困難 にしていること

, ( 3)3

次元CADによ り試作 回数が減少 した こと, さ らに担 当者 の業務過多 による 疲弊 については,(

4)

(1)とも関係 しているが,主に人員不足が もた らす作業 負担の増加 より部品間干渉基準の設定 ・測定 ・評価 に十分な時間を割けない こと,これ らの現象が評価基準の甘 さをまね き,部品間干渉の問題 として顕 在化 しているのではないか と述べている。

4. 2

原価企画の逆機能

加登

( 1 9 9 4 )

は,原価企画の逆機能,問題点を指摘 している。 リコール との 関係について直接議論 していないが,吉田

( 2 0 0 7 )

と合わせて, リコールの原 因を考察する上で示唆に富む。加登

( 1 9 9 4 )

が指摘す る逆機能は,以下の

5

(15)

わが国における自動車リコール と原価企画の関係

1 51

であ る。つま り, (1)サプライヤーの疲弊 と安定 したサプライヤー関係 の喪 失, (

2)

設計担 当エンジニアの疲弊 と燃 え尽 き症候群

, ( 3)

行 き過 ぎた顧客志

,( 4 )

組織 内コンフ リク ト,そ して

( 5 )

品質重視の思想の逆機能,であ る。

以下,リコール ととくに関係が深い と思われ る内容を中心 に説 明を加 えよう0 (1)については, メー カー との共 同開発活動 であるデザ イン インでは,そ の費用負担 がサプライヤーに重 くの しかか るこ と,メーカーか らの強い コス ト引 き下げの圧力,そ して安定 したサプライヤー関係の喪失な どが指摘 され てい る。 (

2)

については,顧客要求 をは じめ コス ト,品質 ,納期の厳 しい開 発環境下での設計業務 に よって,過度のス トレスがエンジニアを支配 した り,

その こ とが燃 え尽 き症候群 に発展す ることが示 されている

。 ( 3)

は,原価企 画の誤 った理解 か ら,顧客満足 が誤 って定義 され 過度の多品種少量生産へ のシフ ト,不必要 なまでの魅力品質 ・機能の追加,それに ともな う過剰投資, 開発費 の浪費な どに関 してであ る

。 ( 4)

は, 自動車業界な どで一般的 にみ ら れ る重量級のプロジ ェク トマネジ ャー率いる開発 プロジ ェク トでは,開発 を 進めてい く上 で調整すべ き事項 が多 く

,( 2)

と同様 にプロジ ェク トマネジ ャー に多大 な精神負担 を もた らす。 その他, 目標原価 の割 り付けや達成状況 をめ ぐって,部門間だけでな く開発段階でさえ前期 と後期 で対立 が生 じることも 示 されてい る。最後 の

( 5)

は,原価企画の もとで コス トと品質 を トレー ドオ フする際,部品 レベルでの品質基準 をク リアで きて も,製品全体 としての品 質が脆弱にな る危険性があること,品質を重視す るあま り過剰品質 にな るこ と,さ らに,製品それ 自体の品質を満たす ことだけに専念 しがちにな り,全 体 ライフサ イクルや

PL

問題 な どへの対応 を念頭 に入れた トー タル コス トの 視点が欠落 しやす くなること,が指摘 されている。

4 . 3

リコールの範囲を拡大 させる部品の共通化 ・共有化

吉 田

( 2 0 0 7 )

は,不具合 (とくに設計が原因 となった部品問干渉の問題) を 発生 させ る要因その もの とは別 に, 自動車 リコールを拡大 させ る要 因 として

(16)

部品の共有化 ・共通化を指摘 している。部品の共通化 ・共有化は, より多 く の生産量が確保でき開発効率が高め られるということで,コス ト低減にも貢 献 し,開発上のメリットは大 きい。 しかしなが ら,共通化 ・共有化されてい る部品に不具合が発生 してしまうと,当該部品が使われている全ての車種で リコールが発生することになる。た とえば, トヨタ自動車の

2005

1 0

月届出 の リコール (届 出番号 :リコール国

‑1 5 42‑

1)は,それが顕著に現れた典型 例である。 この リコールの場合,前照灯スイッチ内部の接点の形状に不具合 があった。そして当該部品を多 くの車種 (カローラ,アレックス,ヴ ィッツ, プラッツ

,b

B,イス ト,ファンカーゴ,

W i LL,RAV4

9

車種

,1 4

形式) に使 っていたために,最終的には

1 2 7

万台もの リコールに発展 した。表

5

で, 他の 2社 に比べて トヨタ自動車の リコール届 出総件数 とリコール届出不具合 件数の差が大 きいのは,部品の共通化 ・共通化する車種の多さを反映 してい

るのだろう。

また,部品の共通化 ・共有化は, リコールをメーカー横断的に発生させる こともある。スズキ 自動車の

2 005

11

月届出の リコール (届出番号 :リコー ル国

‑1 56ト0)

は,減速ギヤ用シ ャフ トに組み付け られたベア リングの潤滑 方法の不具合が原因であった。 この部品は,同社の車種 (アル ト,ラパン,

Ke

i,ワゴンR,MRワゴン)だけの共通部品ではな く,同型プラットフォー ムの供給先である日産 (モ コ) とマツダ (キ ャロル,AZワゴン,スピア‑

ノ,ラビュタ)で も使用されていたため, リコールが

3 6

万台まで拡大 した。

もちろん部品の共通化 ・共有化のような開発手法があるからそこ,コス ト を抑えなが らの複数の新車開発が可能になる。 しかしなが ら,部品の共通化 や共有化の範囲を拡大 させるほど,その分だけ当該部品の不具合発生による

リコールが増加する。

4. 4

国土交通省による リコール原因の調査 ・分析

近年の リコール多発について,国土交通省は,平成

1 3

年度に, リコールの

(17)

わ が 国 にお け る 自動 車 リコール と原価 企 画 の関係

1 5 3

原因調査 ・分析委員会

1 5

(以下,リコール委員会)を発足 させ,自動車 リコー ルの原因について詳細に調査,分析を実施 した。その結果が国土交通省委託 調査報告書 『リコールの原因調査 ・分析検討 (平成

1 3

年度

)

』に とりま とめ

られている。本節では, この報告書について概観することにしよう。

リコール委員会が注 目したのが 「失敗の階層性 (畑村

( 2 0 0 0) ) 」

の概念であ る。 自動車の不具合を失敗 と捉 え,その失敗は,(1)ヒューマンフ ァクター に属する要因

, ( 2)

組織 ・プロセスに属する要因

, ( 3)

社会環境の変化への対 応などに属する要因,の

3

つの どれかに起因 してると仮定 してる (

3)

。 こ のように失敗の階層性は,失敗である不具合を工学的 ・技術的な問題 として 捉えるのではな く,不具合の原因に対 して3つの要因から包括的にアプロー チできること,そ してその ことにより不具合発生の真の原因を究明できるこ

と,に特徴がある。

失敗を構成する3つの要因を具体的に観察するために 6つの事例が調査対 象 となった (

7

)。表

8

は,調査で明 らか となった リコールの原因の要約

3

不具合発生の分析のための

3

つの要因

・ 一 言‑ ≒ こ

出典 :国道交通省委託調査報告書 『リコールの原因調査 ・分析検討 (平成1

3

年度)

,p. 1 5

1 5

畑村洋太郎 ・工学院大学機械工学科教授 (当時) を委貞長 とす る学識経験者 を中心 に構 成 された。

(18)

7

リコール調査 ・分析対象の事例一覧

事例 問題の所在 工程 不具合装置 車種

A 製造工程 B リコール対応

C

設計工程 D 設計工程 E 設計工程 F 情報伝達

製造 (部品メーカー) 製造 (部品メーカー)

設計 (部品メーカー ・ソフ トウェア) 設計

設計 製造

緩衝装置 緩衝装置 動力伝達装置 緩衝装置 動力伝達装置 制動装置

乗用車 乗用車

貨物車 (バン) 貨物車 (バン) 貨物車 (バン) 貨物車 (トラック) 出典 :国土交通省委託調査報告書 『リコールの原因調査 ・分析検討 (平成

1 3

年度)

,p. 20

を示 している。 リコール委員会は,これ ら事例か ら,

4

つの不具合発生のメ カニズムを抽 出 した。 4つの不具合発生のメカニズム とは, (1)樹木構造組 織の中で起 こる不具合発生

, ( 2)

未然防止の不備 による不具合の成長, (

3)

境変化への対応不備 による不具合発生

,( 4)

技術のブラックボ ックス化 によ

る不具合発生,である。

リコール委員会は,

4

つのメカニズムを次の ように定義 している。 まず, 樹木構造組織の中で起 こる不具合発生 とは,複数部門間または作業員間での 連携が不十分 さが原因 となって起 こる不具合である。た とえば,仕様や設計 変更またはイレギ ュラーな作業が発生 して もそれ ら情報を必要 とする他の部 門や作業員に十分に情報が伝達 されていなかった場合な どが典型例である。

次 に,未然防止の不備 による不具合の成長 とは,個 々の作業員の思い込み, 誤解,未確認な どのヒューマンフ ァクターに属する小さな ミスが積み重なっ て起 こる不具合発生の ことである。第 3の環境変化への対応不備 による不具 合発生 とは,未然防止の不備 といった個 々のルーチン作業の中で発生する不 具合ではな く,ユーザーの使用環境の変化 といった これまでのルーチン作業 その ものを覆す ような大 きな変化 に対応で きなかったことによるより高度な 不具合発生であ る。最後 に,技術のブラックボ ックス化による不具合発生 と

は,部品の開発や組み立てを外部の組織 に委託 したために,それが とくに新 しい技術である場合 には社内に技術蓄積がなされないため検査や予防策が と れずに発生 した不具合である。

(19)

わが国における自動車 リコール と原価企画の関係

8 自動車 リコールの事例

1 5 5

不具合発生の階層

事例 ヒューマンファクター 組織 ・プロセス 社会環境変化 A 従業員の思い込み

作業員の報告漏れ 管理者の記録漏れ 管理者の記録の見落 とし

作業支持の不完全

非定常作業時の注意喚起不足 異常時報告の不徹底

管理職の時間管理不完全 チ ェックシステムの不完全

B

現場の想像力不足 設備異常検知システムの不完全

部品検査方法の不完全

メーカー とサプライヤ間の連絡体 制不完全

リコール対象者の条件が不十分

C

設計者の想像力不足 発注仕様の不備

部品検査方法の不備

D 使用環境把握のシステム未整備 使用環境変化に未対応

E 設計者の想像力不足 部品検査方法の不完全

使用環境把握のシステム未整備

使用環境変化 に未対応

F

複数部門の思い込み 工程設計者の注意不足

システムチ ェックの不完全 法規の変化への不十分

出典 :国土交通省委託調査報告書 『リコールの原因調査 ・分析検討 (平成

1 3 年度)

,p. 3 7

,一部省略

5 原価企画の批判的考察 :自動車 リコールとの関係から

原価企画の既存研究の中で, リコールが直接扱われることはなかった。原 価企画で主に注 目されるのは,開発 ・設計段階における大幅なコス ト低減の 実現 や

QCD

同時達成 とい った成功事例 における原価企画のポジテ ィブな側 面であった。その中で先 に取 り上げた吉田

( 2 0 0 7)

は,なぜ 自動車 リコールが 多発す るのかを問題の出発点に,その不具合の発生原因を考察 しなが ら原価 企画のネガテ ィブな側面 にスポ ッ トを当てた数少ない研究のひ とつである。

加登

( 1 9 9 4 )

は, 自動車 リコール について直接的に議論 してはいないが,原価 企画の逆機能,問題点が網羅 されお り,多 くの点が リコール発生に密接 に関 連 している。さらに,リコール委員会による自動車 リコールの調査 ・分析は,

(20)

原価企画を直接扱 っていないが,不具合発生の

4

つメカニズムは,原価企画 を再検討するうえで示唆に富む。

以下, これ ら既存研究を参考 に しなが ら, 自動車 リコールを切 り口に原価 企画の再検討を試みる。その際,原価企画を組織,ツール ・システム,そ し

て管理会計の

3

つの側面 (日本会計研究学会

( 1 9 9 6 )

,谷

( 1 9 9 6

))に分けて論 じたい。そうす ることで原価企画を網羅的に捉 えることができる。

5. 1

組織の側面

5 . 1 . 1

クロスフ ァンクショナルな開発組織 :不具合発生の予防に脆弱な組織 原価企画の組織の側面には,まず,クロスファンクシ ョナルな製品開発が あげ られ る。 クロスフ ァンクシ ョナルな製品開発では, コス トレビューやデ ザ イン レビュー,

VE

ミーテ ィングな どの各種会議体 において,開発の各段 階 に複数の職能が関与 し,プロダク トマネジ ャーな どが中心に調整をしなが ら, とくに後前の段階の活動がオーバーラ ップする開発スタイルである (日 本会計研究学会

( 1 9 96 ) )

。従 って, この ような開発 スタイルの もとでは,製 品企画の段階か ら設計担当者が参加 した り,製造や購買の担当者が,基本設 計や詳細設計 といった設計完了の前段階か ら関与 した りす る。 この開発スタ イルの狙 いは 「源流管理」にある。 とくに設計 と製造の関係でいえば, これ によって,品質基準値 をク リア しなが らもより安価な素材 を選択で きた り, 組.み立て しやすい設計が措けた り,結果的に開発 リー ドタイムの短縮 とい う

メ リットがある。

批判的な考察を試みたい。まず, 自動車 メーカーにおける開発期間の短縮 化 が迫 られた開発環境では,クロスフ ァンクシ ョナルな開発スタイルが不可 欠 となる。 しか しなが ら,開発期間の短縮化 がさらに要求 され,そこに業務 過多による担当者の疲弊が合わさることで, この ような開発組織が有効に機 能するとは考えに くい。 さらに,加登

( 1 9 9 4 )

で示 されていた組織内コンフ リ

ク トは,職能横断的な開発活動を困難 にする。高い レベルで組織内コソフ リ

(21)

わが国における自動車 リコール と原価企画の関係

9

国産車の生産開始か ら初報 までの平均期間の推移 単位 :月 年度

H1 3 H1 4 H1 5 H1 6 H1 7

平均 平均期間

2 4. 4 2 7. 2 3 2. 6 3 2. 7 3 7. 1 3 0. 8

出典 :国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成1

7

年度版)

,p. 3 2

1 0

国産車の初報入手 か ら リコール届出までの平均期間の推移 単位 :月 年度

H1 3 H1 4 H1 5 H1 6 H1 7

平均 平均期間

8. 8 9. 2 1 0. 3 3 3. 3 2 4. 5 1 7. 2

出典 :国土交通省 『リコール届出内容の分析結果 (平成1

7

年度版)

,p. 3 3

1 5 7

ク トが発生 しているとすれば,組付けや加工の ミスな ど,一見,製造が原因 で起 きた とされる不具合のケースで も,実際は,設計の段階で製造 との調整 が適切 に行われていなかったために発生 した不具合か もしれない。 クロスフ ァンクシ ョナルな製品開発が有効に機能 していれば, リコール委員会の不具 合発生 メカニズムの (1

)( 3 )

の発生を極力抑 えれることは十分 に考 え られる。

2に,業績評価 に関 してである。 クロスフ ァンクシ ョナルな製品開発の メリッ トのひ とつは,単一部門では不可能な問題解決やアイデアの創発であ る。ただ しその反面,開発の各段階に複数部門が関与するため部門や担当者 毎の貢献度を明確 にしに くく, とくに個人 レベルの業績評価 に管理可能性基 準を適用するのは難 しい。 この ようにクロスフ ァンクシ ョナルな製品開発の 組織では,不具合が発生 した として も,その直接的な原因の責任所在を明確 にするのは困難か もしれない。 これでは,せ っか くの不具合 に関す る情報が 有効なフィー ドバ ッグ情報 として機能 しに くい。 これは開発 に携わ る部門や チーム,プロジ ェク トマネジャーな どの業績評価 とも関係するが,原価企画 の既存研究において十分 には明 らかにされていない。

さらに, リコールに至 る不具合の原因究明を困難にす る要因は組織だけで はない。 これには,生産終了か らリコール届までのタイムラグ も影響を及ぼ

(22)

す と思われる。 リコール対象 となる不具合の発見は,基本的にユーザーか ら の情報 に依存 している。そのため,生産後か ら不具合の情報が報告 され,さ らに リコール届 出に至 るまでに数年を要することもある (

9,1 0 )

。リコー ル届けまでに長いタイムラグが生 じさせる原因 としては,た とえば,ユーザー か ら寄せ らた不具合情報が研究所な どに届 くまでに組織内で時間を要 してい た り,報告された不具合がメーカー側で再現で きず部位の特定や原因究明に 時間がかかっていた りすることが考 え られる。自動車に不具合が生 じた場合,

リコール届出までのタイムラグが長 くなればなるほ ど,不具合情報が本来 も っているフィー ドバ ック情報 としての価値 は薄れ,先に示 した リコール委員 会が提示する不具合発生の原因の究明は困難 になるだろう。

5 . 1 . 2

不安定なサプライヤー関係による技術のブラ、ソクボ ックス化の促進 サプライヤー関係 について も触れておこう これ もクロスフ ァンクシ ョナ ルな製品開発 と並んで原価企画の組織 を構成する重要な要素である。一般的 に, 自動車業界では,メーカーがサプライヤーに設計や製造 を委託する部品 の比率が多い。原価企画では,先 にも述べたサプライヤー との共同開発であ るデザ インインに依存 している。 もし,サプライヤー との開発 において,デ ザ インインが適切に実施 されてる とすれば, リコール委員会の第4の不具合 発生 メカニズムであ る 「技術のブラックボ ックス化」は発生 しに くいように 思われる。 しか し, この よう事実が報告 されている以上,デザ インインが う ま く機能 していない と考 えた方 が原価企画の批判的考察 には建設的であろ

う。

デザ イン インが うま く機 能 しない理 由 として,考 え られ るのは,加登

( 1 9 9 4)

で も指摘 されていたサプライヤーの疲弊 と不安定なサプライヤー関係 な どである。た とえば,サプライヤーである部品の供給側か らすれば,メー カー との不安定な取引関係の もとで 自らの技術をメーカーに全面的に開示す るのは, 自社の技術的な強みの低下につながるはか,競合他社 に対 して も競

表 7 リコール調査 ・分析対象の事例一覧 事例 問題の所在 工程 不具合装置 車種 A 製造工程 B リコール対応 C 設計工程 D 設計工程 E 設計工程 F 情報伝達 製造 ( 部品メーカー)製造 (部品メーカー)設計 ( 部品メーカー ・ソフ トウェア)設計設計 製造 緩衝装置緩衝装置 動力伝達装置緩衝装置動力伝達装置制動装置 乗用車乗用車 貨物車 ( バン)貨物車 (バン)貨物車 (バン) 貨物車 (トラック) 出典 :国土交通省委託調査報告書 『リコールの原因調査 ・分析検討 ( 平成 1 3

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