奈良教育大学学術リポジトリNEAR
言語条件づけにおよぽす実験者への注意の効果
著者 玉瀬 耕治, 西川 満
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 18
号 1
ページ 175‑184
発行年 1969‑11‑29
その他のタイトル THE EFFECT OF THE SUBJECT'S ATTENTION TO THE
EXPERIMENTER'S ATTITUDE ON VERBAL CONDITIONING
URL http://hdl.handle.net/10105/3117
175
言語条件づけにおよぽす実験者への注意の効果
玉 瀬 耕 治 ・ 西 川 満 (心理学教室) (奈良県三宅小学校)
1950年代の初めから言語条件づけの研究に多くの注意がはらわれてきた(Krasner, 1958; Sal‑
linger, 1959; Greenspoon, 1962; Williams, 1964),これらの研究は、本来、 1対1場面に おける言語的な相互作用をとおして行動修正が行なわれる過程を組織的に研究しようとするもの である。このような研究は、 1つには、心理療法の過程を解明する実験的証拠を提供するものと
・みなされている(Krasner, 1965),また、これらの研究の発展は、どのような治療者と患者の 周の相互作用が、よりすみやかに、そしてより効果的に治療を進展させうるかという問題につな がっている。ところで、ここ数年間言語条件づけ実験における研究者の関心は、被験者の意識 (awareness)の問題にかなり集中されてきた。このことは心理療法における洞察の問題、つま り行動の変容とそれについての意識の問題とも関連している。ここでいう意識とは規準反応とそ れに続く強化との関係(response‑reinforcement contingency)に被験者が気づいているかど うかということである。これに関しては、意識がおこってから条件づけが成立する、すなわち、
意識が条件づけの媒介者であるという認知主義的な考え方(たとえばSpielberger & DeNike, 1966)と、意識とは関係なく強化によって自動的に条件づけが成立するという行動主義的な考え 方(たとえばOakes, 1967)が対立しており、いまだ結論的な証拠は出されていない(Krasner,
:1967),
しかし、これまで意識と言語条件づけとの関係を問題にしたほとんどすべての研究は、言語的 水準での意識のみを問題にし、しかもそれを実験後の面接質問にたよって測定してきた。このよ
うな接近では、質問の仕方によって測定された意識の水準や質がちがい、また、かならずLも実 .験後の意識水準が実験中のそれとは対応していないということもありうるであろう。一方、最近 学習の決定者として言語的媒介よりもむしろ知覚的媒介、すなわち定位反射(Orienting Re‑
flex, OR)を仮定する考え方があらわれている。このORという概念を導入することによって、
言語条件づけと意識の問題に関する論争に新しい経験的資料を提供できるかもしれないo
ORとは新奇な刺激によって生じ同じ刺激の反復呈示によって習慣化する生理学的反応で、そ
れは手がかり‑の"注意Hをひきおこす喚起成分(arousal component)であるとみなされてい
ら(Jeffrey, 1968)。 ORを言語条件づけ事態に導入することはすでにMaltzman (1966)に
よって示唆され、条件づけと意識はともにORの関数であると仮定された Smith (1966)がこ
れをたしかめる実験を行なったところ、 ORは意識(言語化)と関数関係にあるけれども言語条
一件づけとは関係がないという結果が得られた Maltzmanに従って、もしORが言語条件づけと
正の関係にあるとすれば、 ORを高める努力によって、言語条件づけの成績を上昇させることが
できるかもしれない。つまり、反応と強化の関係についての直接的な情報(たとえば Simkins,
ユ963)を与えるのではなく、あいまいな実験場面での不適切な手がかりの数を減らすという意味
で実験者‑の注意を喚起する情報を与えれば、強化へのORが高められ、その結果、条件づけの
176
言語条件づけにおよぼす実験者への注意の効果(玉瀬・西川)
成績が上昇するかもしれない。また、そのような情報は反応と強化の関係についての意識水準を も高めるかもしれない。本研究の第1の目的は、実験者への注意を喚起する情報が言語条件づけ の成績をよくし、同時に反応と強化の関係についての意識水準を高めるであろうという仮説を検‑
討することである。
ところで、心理療法においてはどのような患者が他の愚者よりもより容易に治模されうるかと いう治療可能性の問題が考慮されるべきである。この間題は言語条件づけにおける被験者の要圏 として扱われてきたo たとえば、条件づけられやすさと不安の高さ(Taffel, 1955 ; Spielber‑
ger, DeNike, & Stein, 1965)、ダ捕ト内向(Eysenck, 1959 ; Goodstein, 1967)、虻門一口 唇性格(Noblin, 1966)、社会的承認の要求の強さ(Crowne & Marlowe, 1964)などとの関係u
が検討されている。不安と言語条件づけとの関係を最初に問題にしたのはTaffel (1955)であ った。彼は刺激カードにタイプきれた6つの人称代名詞のうちの1つと過去の動詞を用いて文章一 をつくる課題を使用したO 被験者をティラ‑顕在性不安尺度の得点によって3つの下位群にわ・
げ、第1人称代名詞を実験群には̀̀good"またはIightで強化し、統制群には強化しなかっ たoその結果、 "good"で強化した高不安群と申不安群のみが条件づけを確立したO このこと は不安の高い者の万がより容易に条件づけられ、また、条件づけられやすさは強化の仕方によっ てもことなることを示唆している。
Sarason (1958)やSarason and Campbell (1962)も不安を変数にして同様の結果を得た。
しかし、 Buss and Gerjuoy (1958)やSpielberger, DeNike, and Stein (1965), Moore・
and Heap (1968)などはこれとは逆の結果を報告している。つまり、不安の低い者の万がより 容易に条件づけられたのである。このような結果について、 Spielbergerらは不安よりも意識が 重要であると解釈し、 Moore らはまた分裂病や神経症というような性格変数が言語条件づけに 影響しているのではないかと述べているo このように、不安と言語条件づけに関して一貫した結 栄は得られていないが、本研究では、先に述べた実験者への注意の惜掛こ加えて、不安水準が言 語条件づけにいかなる効果を及ぼすかを検討する。
方 法
実験計画 3〉く2の要因計画が用いられた。それは、実験者(E)への注意を喚起する情報を 与えて強化する、強化のみ、および強化なしの3つの処理条件と、不安に蹄する2つの水準を含 んでいるO
被験者(Ss)奈良教育大学における教育心理学の受講生230名がMAS不安検査を受けた。そ の中で、不安得点の分布のはしから、男女別に不安の高い者および低い者が頓に選ばれ、 3つの・・
実験条件へランダムに割りあてられた GSRの記録が不完全な者7名と、代名詞の位置偏好が 認められた者1名を除き、各下位群が男女5名ずつになるまでSsを追加した。不安の高いSs 30ヨ 名の平均MAS得点は30.13,範囲25‑39で、不安の低いSs 30名ではそれぞれ9.07, 3‑12であ Hサ
材料 B4版の画用紙を4つ折りにした大ききのカ‑ド80枚が使用されたo それぞれのカード
には4つの代名詞、 「わたしは」 「あなたは」 「かれは」 「かのじょは」が2列2行でランダム
な噸序に配置されているo その下には製菓と石原(1962)より選んだ3音節動詞が1つずつかかJ
れているO これらの動詞のT連想価は56‑64である GSRの記録のため、 T.K.K. RP‑4型精神
言語条件づけにおよぼす実験者‑の注意の効果(玉瀬・西川)
177反射電流測定器が使用されたO また、 Sの反応と強化の関係についての意識水準をしらペるため 表1 意識に関する質問項目
1.あなたは、カ‑ド上の代名詞をいつもどのようにして選びましたかo (a】すぐ頭に浮んだものを選んだ。
(b)文章にあうものを選んだ。
回 一定のもの( )を選んだ。
2.あなたは、実験中に何か気付いたことがありますか。
(1,0) (2,1,0)
3.あなたは、 4つの代名詞のうち、あるものを他のものよりも多く使ったと思いますか。
(a)思う (b)思わない
4. (3.で思うと答えた人に)それはなぜですか。
(a)使いやすかったから。
(b)正しい答だと患ったから。
(C)その他( )0
5.実験の途中からあなたはある代名詞を多く使ったと思いますか。
回 はい (ち)いいえ
6. (5.ではいと答えた人に)それはなぜですか。
(1,0)
7.あなたの答えと私が"フムフム''といったこととの間に何か関係があったと思いますか0 回 思う (b)思わない (1,0) 8. (7.で思うと答えた人に)それはどんな関係ですか (1, 0) 9.私の態度があなたの反応を左右しましたか。
(a)はいかなり (bl 少し くcj いいえ
10.あなたは、私により多く"フムフム''といわせようと努力しましたか。
(a)はいかなり (b)少し 回 いいえ
ll.私が=フムフム"といったのは、あなたがどの代名詞を使った時だと患いますか(2,1,0) (注) 各項目の後の数字は可能な得点範囲を示す。
に、 1枚につき1問ずつかかれた11枚の質問カードが使用された。表1はこれらの質問項目を示 したものである。ここで可能な得点分布は0‑15であるが、実際には0‑12まで分布した。
手続き 実験は心理学実験室で個別に行なわれた。実験室は2・つの部屋からなり、一万には机 とその両側に2つの椅子が置いてある。机の横にはGSR測定用電極板がとりつけてある。この 部屋の実験期間中の室温は13‑Cへ′25‑Cであった.もう一万の部屋は記録室で、 GSRの記録装置 が置いてある。 2つの部屋は厚い壁でしきられているのでGSRの記録の音はまったく聞こえな い. 2つの部屋の間の連絡はSには見えない豆電球によってなされた. EはSと向いあってすわ り、 2、 3の日常的会話の後、 「これから簡単な実験をしてもらいますが、その間のあなたのか らだの調子を調べたいと思いますので,これをつけてくださいD絶対に何ともありませんから安 心してください。」とつけた. Sが右手の第2指と第3指にGSRの電極板をとりつけると、 「でき るだけ体を楽にして、手を動かさないようにしてください。」という指示が与えられた。それから 隣室‑合図が送られ、ただちにGSRの記録が開始された。
つづいてSは次のカードを呈示されるo 「ここにたくさんのカードが用意してあります.上の 方には4つの代名詞(わたしは、あなたは、かれは、かのじょは)がかいてあり、その下に動詞 がかいてあります。 4つの代名詞のうちの1つを主語にし、下の動詞とくみあわせて、できるだ け短かい文革を作って声を出して言ってください。実験中はいっさい質問を受けつけませんので 質問があれば今言ってください。」質問があった場合には教示の要点をくり返した。次に、 「それ では、準備ができ次第カードをめくりますから始めてください。」といって、約1分間待たせ、第
1番目のカードを呈示した。次のカードからほざの反応の10秒後に呈示した。
ユ78 言語条件づけにおよぼす実験者‑の注意の効果(玉瀬・西川)
全体の80試行は20試行ごとの4つのブロックに分けられ、第1ブロックは全群強化なしのオペ ラント・ブロック、第2ブロックから第4ブロックまでは強化ブロックときれた。オペラント・
ブロックで4つの代名詞のうち、出現頻度のもっとも高いものともっとも低いものを除き、 2位 および3位の2つをそれぞれのSの規準代名詞と定めた。全Ssの与はオペラント・ブロック終了 優、情報カードを呈示され、第2ブロックからうなづきながら"フムフム''で強化された(lR
群)O 情報カードは次のようなものである。 「ひき続いて同じ実験を行なってもらいますが、以 優あなたは、私の態度に注意して実験を受けてください。 よろしいですかo」他の与のSsに は情報力‑ドは里示されず、規準代名詞がうなづきながら̀̀フムフム''で強化された(R群)0 残る与のSsは全期間中強化を与えられなかった(C群)。 80試行終了後、ひき続いて意識に関す
る質問カードが呈示きれたo実験期間は昭和43年5月21日〜6月4日であったo
GSRの測定法 全試行のすべての山を基線から頂点までの高さによって得点化し、 1試行中の 一合計点を算出して、ブロックごとにその平均の対数値を求めた。なお、この1つの山の高さの得 点範囲は1‑8であった。 1試行中の反応前と反応後の波を分けて考えるため、刺激呈示から反 応または強化までの間の波を前波、反応または強化後10秒間の波を後波とした。
紘 I==J
EOS
実験者への注意、不安および言語条件づけ 表2は各下位群の言語条件づけにおける規準反応 の平均値を示したものであり、図1はこれをプロットしたものであるO まず、各群間の等質性を
表2 各群の規準代名詞反応の平均 群 不安人数 20試行ごとのブロック
1 2 3 4
情報と酎ヒ高い10 9.5 10.4 9.4 9.3 (IR) 低い10 8.7 10.3 10.6 10.i 強 化 高い10 8.8 9.3 9.4 9.1
(R) 低い10 8.3 8.9 9.5 9.3 無 強化高い10 8.7 8.2 8‑0 7.2 (C) 低い10 8.9 8.2 9.0 7.8
しらべるため、オペラント・ブロックの6つ の平均値について、処理と不安を含む3 × 2
・の分散分析を行なったO その結果、 2つの主 効果(ともにFく1)とその交互作用(F‑l.
34, df‑2/54, p>.Qh)はいずれも有意で
・はなかった。それゆえ、各群は一応等質であ
○ 高不安
● 低不安
‑ L R(情報と強化)群 R (強化)群
‥‑ C (無強化)料
1 2 3 4
20試行ごとのブロック
図1 各群の規準代名詞反応の平均
るとみなされるOそこで、強化の効果を調べるため、その効果がもっともよくあらわれると予想
される第4ブロックで、ふたたび3X2の分散分析を行なったoその結果、処理の主効果と、処
言語条件づけにおよぼす実験者への注意の効果(玉瀬・西川) 179
理×不安の交互作用がそれぞれF (2/54)=‑‑3.ユ P<.05 ; F (2/54)‑3.80, P<.05で有意で あった。まず、有意な主効果をさらに分析すると、 lR群とC群の問でt (54)‑2.52, 」<.05のr 有意差が認められた。次に、有意な交互作用について吟味するため単純効果の検定を行なったと
ころ、 lR群とC群における低不安Ssの間の差が有意でありit‑2.05, df‑54, P<.Q5)、他 のくみあわせはすべて有意ではなかったo また, IR群の低不安Ssの成績はオペラント・ブロッ
クから第4ブロックへ有意に上昇している(*‑2.08, rf/‑9, P<.05,片側検定)O従って、本̲
実験では不安の低いSsにE‑の注意を喚起する情報を与えて、うなづきながら̀̀フムフム''で 強化した場合に、特に、条件づけの成横がよかったといえよう。
言語条件づけと実験後の意識報告 表3はlR群とR群の意識得点、および言語条件づけ(第4 表3 実験群の意識得点、および言語条件づけ(最終ブロックから
オペラント・ブロックを引いた値)と意識得点との相関 群 不安 意識 条件づけと意識の相関
情報と強化 強 化
ヽ ヽ ヽ ヽ I L
︑
̲
̲ V
.
′
̲ V I
̲ V
高 低 高 低
t‑ i‑1 <﹂> tD
CO Tjl T* fO
.189 (サ‑20)
.042 (n‑20)
ブロックからオペラント・ブロックを引いた値)と意識得点との相関係数を示したものである。
意識得点について処理と不安を含む2 × 2の分散分析を行なった結果、 2つの主効果とその交互 作用はいずれもF<1で有意ではなかったO また、表で明らかなように、条件づけと意識との間 に有意な相関は認められない。
実験者への注意、不安およびGSR 図2は規準反応をしたときと、その他の反応をしたとき
伝道音質化(a l対数の差
1 2 3 4
20試行ことのプ=ック
国2 規準反応をしたときと、その他の反応をし たときのGSR前波の差の平均
のGSR前波(伝導度変化の対数)の差の 平均値をプロットしたものである。これら の値について、処理、不安,および期間を含 む3 ×2×4の分散分析を行なった結果、
3つの主効果はいずれも有意ではなかった が、不安×期間の交互作用がF (3/162)‑
3.24,やく.05)で有意であった。これをさ らに分析したところ、 3つの条件をこみに̲
して、第4ブロックで低不安SsのGSRが 高不安Ssのそれよりも有意に高くなって いることがわかった U‑2.89, df‑216, や<.Ol),また、処理×不安×期間の交互̀
作用がダ(6/162) ‑ 2.69, P<.05で有意
となった。この交互作用は、 IR群の低不
安Ssでは試行がすすむにつれてGSRが上
昇し、 C群の高不安Ssでは逆に下降して
いることを示唆するものである。
180
言語条件づけにおよぼす実験者への注意の効果(玉瀬・西川)
図3は規準反応をしたときと、その他の 反応をしたときのGSR後波の差の平均値 をプロットしたものである。これらの値に ついて前波と同様の検定を行なったとこ
・ろ、処理の主効果がF (2/54)‑5.28, p<
01,期間の主効果がF (3/ユ62)‑2.84, p
<.05,処理×期間の交互作用がダ(6/162)
・4.56, pく.01でそれぞれ有意であった。
まず処理の有意な主効果について調べたと ころ、 IR群とC群の間でt(54)‑2.60, i><.05, R群とC群の間でt (54)‑3.06,
♪<.Olの値が得られた。これは2つの実 巌群が統制群よりもより高いGSRを示し たことを意味するものである。また、有意 Jj:期間の主効果はオペラント・ブロックか ら第2ブロックに移行した際、 GSRが有 意に上昇したことを意味している、 t(162)
20試行ごとのブロック
図3 規準反応をしたときと、その他の反応を したときのGSR後波の差の平均
‑2.70, PK.Qlc 処理×期間の主効果は、
・単純効果の検定によって次のことを意味することがわかった。オペラント・ブロックではR群と C群のGSRがIR群よりも有意に高い(R群とlR群の間で*‑2.27, df‑216, P<.05、 C群と lR群の間でt‑2.Q4, df‑216, p<.05)のに、逆に、第2ブロックではIR群がC群よりも有意 に高くなっている 0‑2.48, df‑216, P<.01)< その傾向は第3ブロックでも維持され(lR 群とC群の間で2‑4.50, df‑216, P<.01、 R群とC群の間でt‑2.87, df‑216, ♪<.Ol)、
農4ブロックでは3群の間に差がなくなっている。これらの結果から、上R群のGSR後波の著し い変化が情報と強化の影響によるものであることが推察されようo
言語条件づけとOR 衰4は言語条件づけとORとの栢関係数を示したものであるo条件づけの 衰4 言語条件づけ(強化ブロックからオペラント・
ブロックを引いた値)とORとの相関
20試行ご と の ブ ロ ック
2 3 4
群 人 数
情報 と 強化 20 .094 ‑.208 ‑.257 強 化 20 .336 .381 .309
成績はそれぞれの強化ブロックの規準反応からオペラント・ブロックのそれを引いた値により、
また、 ORはMaltzman and Raskin (1965)やSmith (1966)にならってはじめて強化を与
えた試行でのGSR後波によって測定された。この表から、言語条件づけとORの間に有意な相関
はみとめられないことがわかる。最後に、 ORと意識との関係を調べるため、 lR群とR群をこみ
にして意識得点とORとの柏関係数を求めたところ、 r‑.073で有意ではなかった。
言語条件づけにおよぼす実験者への注意の効果(玉親・西川)
読 請
vm
本研究で得られた主な結果は次のとおりである。 q)有志な条件づけの効果は不安の低いSSに 情報を与えて強化した場合にのみ得られた。 ②条件づけと実験後の意識との間には一定の関係が なかった。 ③GSR前波は最終ブロックで不安の低いSsの万が不安の高いSsよりも大きかったO
①GSR後肢は情報と強化を与えた場合に第2ブロックで急激に上昇した。
条件づけの成績と比較的くわしく測定された実験後の意識水準とは何ら関係がなかった。それ にもかかわらず、 Eへの注意を喚起した場合に不安の低いSsで条件づけが成立しているo このこ
とは反応と強化の関係についての意識がなくても条件づけができることを示唆しているように思 われる.しかし,条件づけぼ情報を与えて強化した場合に限って成立し、強化のみでは成立して いないことを考えあわせると、予想したように、 Eへの注意を喚起する情報が条件づけに促進的 効果をおよはしたものと考えられるO我々はE‑の注意を喚起する情報が、実験場面における不 適切な手がかりの数を減じる。のに役立つと仮定した。そのことが正しければ、ここで得られた結 果はEへの注意によって、不適切な手がかりの数が減じ、その結果、強化‑のORが高められ て、条件づけの成績が上昇したと解釈されるかもしれないDただ、 Eへの注意の効果が不安の低 いSsにのみあらわれ、不安の高いSsにあらわれていないことは問題である。一般に、動因とし ての不安には最適の水準があると予想きれるので、本実験の場合、強化が高不安Ssには一種の ストレスとして妨害的に作用し、低不安Ssにはそれが適度に動因を高めるはたらきをしたとも 考えられよう。
ここで、各下位群の言語条件づけの成績とGSRとを対応させて考えることは興味深い。まず、
前波についてみると、標本値の上から、第3および第4ブロックで条件づけの成績とかなりの対 応がみられる(第4ブロックからオペラント・ブロックを引いた両者の6つの平均値の噸位相鰐
がnr‑.733,.05<P<.10であった)O特に、 IR群の不安の低いSSは第4ブロックで前波がもっ とも高くなり、条件づけの成績と対応している。しかし、第2ブロックでは前波は条件づけの成 績とあまり対応していない。次に、後肢についてみると、後波は条件づけ初期の成績とかなり対 応している(第2ブロックからオペラント・ブロックを引いた両者の6つの平均値の順位相関は rK‑.&66, p<.02であった)o特に、 lR群の第2ブロックでの急上昇と条件づけの成績の上昇 とがよく一致しているO しかし、第4ブロックにいたってはその対応がみられない.従って、条 件づけが成立したIR群の不安の低いSsは条件づけの初期ではGSR後波が高まり、後期では前波 が高まっているといえる。このことから、部分的に、 GSR前波は被験者が次の反応の仕方につ いていろいろな仮説を立てる場合の意識的水準を反映し、後波は強化‑のORを反映していると 考えられる。
しかし、 Maltzman らにならって,最初の強化に対するGSRにもとづいてORを瓢定した場
合には、言語条件づけとORの間に正の有意な相関はなく、むしろ、 IR群ではわずかに負の栖鳳
が示唆された。また、このようにして測定されたORと実験後の意識との間にも有意な相関はな
かった。それゆえ、本研究での条件づけの効果をただちにORに帰することは危険であるかもし
れない。また、 ORの概念やORの操作的定義の妥当性についてもいまだ鳴らかにされていない
ところがあるので、これらの点は今後の研究にまたねばならないといえよう。ともあれ、本研究
は言語条件づけと意識に関する論争に新しい側面からの接近の可能性を示唆できたように思われ
る。結論的に、実験者への注意を喚起することによって条件づけの効果を高めることができ、そ
ユ82
言語条件づけにおよぽす実験者‑の注意の効果(玉瀬・西川)
の効果は不安の低い者に著しい傾向があるといえよう。
要 約
本研究は次の予想を検討するためになされた(a)実験者の態度に注意をうながす情報が言語 条件づけを促進し、また、反応と強化の関係についての意識の水準を高めるであろう(b)実験 者の態度に注意をうながす情報が言語条件づけにおよぼす効果は、 2つの不安水準でことなるで あろう。
被験者は60人の大学生で、 MAS得点によってわけられた30人の高不安者と、 30人の低不安者 であった Taffel型の手続きで、 80枚のカードが使用されたo おのおののカードには、 3音節 の動詞と4つの代名詞、 「わたしは」 「あなたは」 「かれは」 「かのじょは」がかかれている。
オペラントな20試行を終った後、与の被験者は実験者の態度に注意をうながす情報を与えられ、
その後の60試行では、規準反応を̀̀フムフム''とうなづきで強化された(lR群)O 規準反応は各 被験者のオペラント試行における出現頻度が2位と3位の代名詞とされた。他の与の被験者に対 しJTは情報が与えられないということを除いて、 lR群と同じ強化手続きがとられた(R群)o 残 る与の被験者は実験中全く強化を受けなかった(C群)。被験者の生理的状態を調べるために、
実験中GSRが記録された。実験後、意識に関する質問がなされた。
主な結果は次のとおりである(a)有意な条件づけは上R群の低不安の人に得られた(b)条件 づけと実験後に得られた意識得点の間に有意な関係はなかった。 (C)言語反応前のGSRは条件づ けの最後の20試行での成績と対応し、言語反応後のGSRは条件づけの最初の20試行での成績と かなり対応していた。
これらの結果は、実験者への態度に注意させることが定位反射を高め、条件づけを促進すると いう我々の予想を支持するものと解釈された。
<付記> 本研究を御指導くださった本学助教授、杉村 健先生に厚く感謝します。
引 用 文 献
Buss, A.H., & Gerjuoy, I.R. 1958 Verbal conditioning and anxiety. /. abnorm. soc.
Psychol., 57, 249‑250.
Crowne, D.P., & Marlowe, D. 1964 Three experiments in verbal conditioning. In I).P.
Crowne, & D.Marlowe (Eds.), The a♪proval motive. New York: John Wiley& Sons.
Eysenck, H. J. 1959 Personality and verbal conditioning. Psychol. Rep., 5, 570
Goodstein, M. A. 1967 Relationship between verbal operant conditioning and extraversion‑
introversion. Psychol. Repリ20, 1036.
Greenspoon, J. 1962 Verbal conditioning and clinical psychology. In A. J. Bachrach (Ed,), Experimental foundations of clinical psychology. New York: Basic Books.
Jeffrey, W. E. 1968 The orienting reflex and attention in cognitive development. Psychol.
Rev., 75, 323‑334.
賀集 寛・石原岩太郎1962 3音節動詞の連想価表(第3報)関西学院大学心理学研究室資料
Krasner, L. 1958 Studies of the conditioning of verbal behavior. Psychol. Bull., 55,
言語条件づけにおよぼす実験者への注意の効果(玉瀬・西川)
183148‑170‑
Krasner, L. 1965 Verbal conditioning and psychotherapy. In L. Krasner & L. P・ Ullmann (Eds.), Research in behavior modification. New York: Holt, Rinehart & Winston.
Krasner, L. 1967 Verbal operant conditioning and awareness. In K. Salzinger & S.
Salzinger (Eds.), Research in verbal vehavior and some neurophysiologicat implications. New York: Academic Press.
Maltzman, I., & Raskin, D. C. 1965 Effects of individual differences in the orienting reflex on conditioning and complex processes. J. e∬p. res. Person., 1, 1‑16.
Maltzman, I. 1966 Awareness: Cognitive psychology vs. behaviorism. J. exp. res. Person.,
1, 161‑165.
Moore, C. H., & Heap, R.F. 1968 Anxiety and the conditioning of verbal behavior: A replication. J. abnorm. Psychol., 73. 304‑305.
Noblin, C. D. 1966 Differential effects of positive and negative verbal reinforcement on psychoanalytic character types. J. consult. Psychol., 4, 224‑228.
Oakes, W. F. 1967 Verbal operant conditioning, intertrial activity, awareness, and the extended interview. J. person, soc. Psychol., 6, 198‑202.
Salzinger, K. 1959 Experimental manipulation of verbal behavior". A review. J. gener.
Psychol., 61, 65‑94.
Sarason, I. G. 1958 Interrelationships among individual difference variable, behavior in psychotherapy, and verbal conditioning. J. abnortn. soc. Psychol., 56, 339‑344.
Sarason, I. G., & Campbell, J. M. 1962 Anxiety and the verbal conditioning of mildly hostile verbs. J. consult. Psychol., 26, 213‑216.
Simkins, L. 1963 Instructions as discriminative stimuli in verbal conditioning and aware‑
ness J. abnorm. soc. Psychol., 66, 213‑219.
smith, M. J. 1966 Variables influencing the orienting reflex, reinforcement and verbaliza‑
tion in verbal conditioning. Unpublished doctoral dissertation, University of California.
Spielberger C. D., DeNike, L. D., & Stein, L. S. 1965 Anxiety and verbal conditioning.
J. person, soc. PsychoL, 1, 229‑239.
spielberger, C・ D., & DeNike, L. D. 1966 Descriptive behaviorism versus cognitive theory in verbal operant conditioning. Psychol. Rev・, 73, 306‑326.
Taffel, C. 1955 Anxiety and the conditioning of verbal behavior. J. abnorm. soc. Psy‑
chol., 51, 496‑501.
Williams, J. H. 1964 Conditioning of verbalization: A review. Psychol. Bull., 62, 383‑393.
(昭和44年5月20日受理)
184
THE EFFECT OF THE SUBJECT'S ATTENTION TO THE EXPERI- MENTER'S ATTITUDE ON VERBAL CONDITIONING
Koji Tamase
Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan
Mitsuru Nishikawa
Miyake Elementary School, Nara, Japan
The present study examined the following predictions; (a) An information of the S's attention to the E's attitude will facilitate the verbal conditioning and Taise the level of awareness of the response-reinforcement contingency, (b) The å effect of information to attend to the S's attitude on verbal conditioning will å differ under two levels of anxiety.
The ,Ss were 60 university students, 30 high-anxiety (MAS) scorers and 30
low-anxiety scorers, who were equated with sex. In a Teffel type procedure 80
index cards were used, each of which contained a three-syllable verb and four
person pronouns: I, YOU, HE, and SHE. Following 20 operant trials, 1/3 of the
Ss was given an information to attend to the E's attitude, and then reinforced by
"Mmm-hmm"and nodding to the critical response through the last 60 trials (IR
.group). The critical response was two medium-operant-level pronouns of each S.
The same reinforcement procedure was used to another 1/3 of the Ss without any information to attend to the E's attitude (R group). The rest of the 5s was not
reinforced throughout the experimental session at all (C group). GSR was recorded to see the S's physiological states during the experiment. After the last trial an awareness-questionnaire was administered.
The main results were summarized as follows ; (a) A significant conditioning
"wasobtained in the low-anxious (S's in IR group. (b) No relationship between verbal conditioning and awareness was found, (c) The degree of GSR deflections in the pre-verbal response period was related to the performance of the last 20 å conditioning trials and that in the post-verbal response period was related to the performance of the first 20 conditioning trials.
The significant conditioning effect in the low-anxious Ss in IR group was
interpreted in terms of the greater amount of the orienting reflex which is presu- med to facilitate the conditioning.