2012 年 2 月 29 日
2011 年度開発輸入企画実証事業実施報告書(要旨)
カンボジア「パームシュガー」(事業主:株式会社ファンケル)
第 1 章 事業概要 1.1 目的 近年日本では、生活習慣病の予防等健康志向が高まっており、糖分を抑えたドリンク用あるいは料 理用に低カロリー甘味料が人気を集めている。日本市場で大きなシェアを獲得しているのは人工甘 味料であるが、カンボジア王国には古来より広く食され、非常に安全性が高く、既存のグラニュー糖や 黒砂糖、メープルシロップなどの甘味料に比べても糖尿病や肥満予防効果が高いと言われている天 然の甘味料「パームシュガー」が存在する。一方で、パームシュガーは現在、日本の量販店、小売店 などでは全く販売されておらず、その健康機能性も広く認知されるに至っていないのが現状である。 本事業の目的は、カンボジア産パームシュガーの更なる付加価値化のために生産指導を行い、日 本の市場ニーズに合った健康機能甘味料の製造・日本市場参入を試みることである。 1.2 背景 健康機能甘味料のカテゴリーの一つである低カロリー甘味料市場は、ダイエット需要だけでなく糖 尿病などの生活習慣病を気にする顧客を取り込み、順調に拡大している。 パームシュガーは 100%天然の甘味料で、無化学処理・無漂白、しかもカンボジアをはじめとする東 南アジア地域では古来より広く食されていることから非常に安全性の高い甘味料である。既存の健康 機能甘味料と比べてミネラルなどが豊富で、グルタミン酸を主成分とするアミノ酸 18 種類を含み、しか も中 GI 値という健康機能を有するカンボジア産パームシュガーを使用した健康機能甘味料を製造し 販売することは、日本人の健康維持・増進に役立つだけでなく、アジアの最貧国の一つであるカンボ ジアへの経済支援、技術支援など、国際的な社会貢献にも繋がり、また、当該産品の砂糖・機能性甘 味料市場全体に与えるインパクトも非常に大きい。 1.3 自社について 株式会社ファンケルは、横浜市中区に本社を置く無添加化粧品・健康食品を製造・販売する会社 である。関連会社として同じく化粧品・健康食品などを扱う、株式会社アテニアなどがある。健康食品 がまだ高価だった 1994 年(平成 6 年)に、高品質・低価格なサプリメントを販売し、健康食品を一気に 身近なものにしたという実績を持つ。また、ツイントース®や HTC コラーゲン®などのオリジナル成分の 開発にも積極的に取り組んでいる。 1.4 ビジネスパートナーについて パルミラヤシの花房液を原料としてワインや酢、ジュース、砂糖を製造・販売している企業である。 プノンペン近郊の約 400 件の農家と直接契約、原料集荷を行っており、原料のトレースバックシステ ムも適切に行っている。この企業は、パームシュガーやワインをはじめとするパルミラヤシの花房液を使った食品や飲料の 製造・販売を行うことで、① 農民の生活向上をはかる、② 豊かなカンボジアの自然を守る、③ カン ボジアの文化や伝統を継承することを目指している。 1.5 該当分野・産品について パームシュガー(ヤシ花蜜糖)は、パルミラヤシ(Borassus flabellifer L.、和名:オウギヤシ)などのヤ シ科植物の花蕾より得られる花房液を煮詰めて作られた砂糖のことであり、カンボジアをはじめとする 東南アジア地域で広く利用されている。 このパームシュガーは植物の養分を煮詰めたものであるため、上白糖やグラニュー糖などの既存の 甘味料と比べて、ミネラルが豊富に含まれているのが特徴である。また、必須ビタミン(ビタミン A、B 群 8 種、C、D、E、K)やグルタミンをはじめとする 16 種類のアミノ酸もバランスよく含まれていることから健 康を維持するのに良いと言われているが、その科学的根拠を示すデータは存在しない。さらに、イン ターネット上などでは上白糖や黒糖、ハチミツなどと比べて GI(グリセミック インデックス)値が低く、パ ームシュガー摂取による血糖値の一過性の上昇が認められないことから、肥満症やⅡ型糖尿病の予 防・治療・改善に適しているとも言われているが、これに関しても科学的な根拠を示すデータは全く存 在しない。 一方、パームシュガーは上白糖や黒砂糖、メープルシロップなどとは違った独特の嫌みの無い上 品な風味であることから、煮込み料理やお菓子、デザート作りに最適であり、実際、世界三大スープの 一つであるタイ王国のトムヤンクンの味付けに使われている。 第 2 章 実証項目とスケジュール 2.1 実証項目(実証項目ごとの説明) 実証項目 1 現地生産状況を正確に把握し、品質面(食品衛生・品質保持等)及び生産面(工場の施設管理 等)の指導ポイントを明確にした上で、日本市場ニーズに合った健康機能を有する商品製造方法 を確立できるか実証する。 実証項目 2 サンプル輸入を通じて、日本への安定的な輸送経路を確立できるか実証する。 実証項目 3 日本市場において、カンボジア産パームシュガーが健康機能甘味料としてブランディングできるか 実証する。 実証項目 4 現地生産者の生活レベルの向上等、現地に寄与できるか実証する。 2.2 事業実施スケジュール (1)第 1 回海外出張、2011 年 7 月 11 日~2011 年 7 月 15 日、カンボジア (2)第 1 回サンプル輸入、2011 年 7 月 14 日
(3)第 1 回国内出張、2011 年 8 月 11 日 (4)第 2 回サンプル輸入、2011 年 8 月 15 日 (5)第 3 回サンプル輸入、2011 年 8 月 19 日 (6)実験動物を用いた GI 値の評価 (7)第 2 回国内出張、2011 年 9 月 14 日 (8)第 4 回サンプル輸入、2011 年 9 月 19 日 (9)第 2 回海外出張、2011 年 9 月 27 日~2011 年 10 月 1 日、カンボジア (10)第 3 回国内出張、2011 年 10 月 13 日 (11)第 5 回サンプル輸入、2011 年 10 月 18 日 (12)第 4 回国内出張、2011 年 11 月 9 日 (13)受容性調査の実施、2011 年 11 月 11 日~2011 年 11 月 16 日 (14)第 3 回海外出張、2011 年 11 月 14 日~2011 年 11 月 18 日、カンボジア (15)第 5 回国内出張、2011 年 12 月 7 日 (16)第 6 回サンプル輸入、2011 年 12 月 16 日 (17)第 4 回海外出張、2012 年 1 月 16 日~2012 年 1 月 21 日、カンボジア・タイ (18)品質・安全性試験の実施、2012 年 1 月 6 日~2012 年 1 月 23 日 (19)第 6 回国内出張、2012 年 1 月 26 日 第 3 章 実証項目ごとの検証方法と結果と考察(課題とそれらをクリアするための対策や提案) 3.1 実証項目の結果まとめ (一覧表) 実証項目 結果 課題 実証項目 1 現地生産状況を正確に把握 し、品質面(食品衛生・品質 保持等)及び生産面(工場 の施設管理等)の指導ポイ ントを明確にした上で、日本 市場ニーズに合った健康機 能を有する商品製造方法を 確立できるか実証する。 ・一般生菌数や大腸菌群など、微生物については食品 レベルであり、問題は無かった。 ・糖組成や還元糖量、水分など成分のロット間によるバ ラツキは小さく、問題は無かった。 ・葉や灰などの異物が含まれていた。 ・糖度が低く、還元糖量が高かった。 ・残留農薬やアフラトキシンなどは、検出されなかった。 ・生産現場を視察することにより、糖度が低く還元糖が 増加する 4 つの要因を見出した。 不溶性物質(異物)の含有量が非常に 多いことから、これを取り除くためには、 日本国内で再溶解した後、フィルター で取り除き、再結晶化させる必要があ る。今後の課題としては、日本国内で再 結晶化するための製法の確立と、実機 レベルでの再結晶化の検討である。 実証項目 2 サンプル輸入を通じて、日 本への安定的な輸送経路 を確立できるか実証する。 サンプル輸入を通じた実証は行えなかったが、打ち合 わせの中で、500kg 程度を輸入する場合は、航空便の 方が安く、輸送手続きも簡単であるとのことである。ま た、カンボジアから船便で輸送する場合は、シアヌーク ビル(カンボジア)からよりもホーチミン(ベトナム)より積 み出した方が安いとのことであった。 今後の課題としては、量産試作の際に 必要となるサンプルの輸入を通じて、輸 送経路の確立を行う。
実証項目 3 日本市場において、カンボ ジア産パームシュガーが 健康機能甘味料としてブラ ンディングできるか実証す る。 ・ミネラルの量は、グラニュー糖の約 620 倍であった。 ・アミノ酸の含有量は 0.3%(w/w)であった。 ・カフェインなどのような含窒素化合物の存在が示唆さ れた。
・GI 値(Glycemic Index)は約 62 であり、中 GI 食品に分 類された。 ・現地では、日本の黒糖と同様に、煮込み料理やお菓 子などに使われている。 パームシュガーの GI 値は、従来からネ ット上で言われている 35 ではなかった。 今後の課題としては、実験動物を用い た有効性評価を実施することである。ま た、パームシュガーの知名度が黒糖に 比べて全く無いことから、その知名度を 高めていく。 実証項目 4 現地生産者の生活レベル の向上等、現地に寄与で きるか実証する。 ・糖組成や還元糖量などの糖質成分やミネラルなどの 健康機能成分、GI 値などに関する科学的データを、ビ ジネスパートナーへ提供した。 ・パームシュガーの品質をグローバル・レベルにまで高 めるための製造方法を、ビジネスパートナー及び生産 者へ技術指導した。 ・パームシュガーの品質管理レベルを向上させるため に、製品仕様書の作成方法をビジネスパートナーへ指 導した。 今後の課題としては、日本で再結晶化 することを踏まえて、糖度が高く還元糖 量の低いパームシュガーを製造できる かどうか検討する。 3.2 実証項目 1 1)工場の施設管理等の改善指導について (1)検証方法、活動内容 ビジネスパートナーの工場を視察し、以下の 3 点について改善を要求した。 ① 加熱乾燥機の設置場所が工場側面の開放状態の場所であり、窓に網戸もなく外気が直 接触れる可能性があることから、加熱乾燥機の設置場所の変更・改善を要請した。 ② 工場全体の各箇所にある入口には扉があるが、簡単に開閉ができ、扉が開いた状態で 作業しているのが散見されたことから、改善を要請した。 ③作業員の着替えも不十分であり、また、靴もサンダルを履く作業員も見受けられたことから、 この点についても改善を要請した。 (2)結果 ① 工場側面に加熱乾燥室を増設、二重扉にして外界との接触を遮断、また、加熱乾燥機も 1 台だったものを 4 台に増やし、熱源も電気から水蒸気へと変更することで、不十分なインフラに よる突然の停電にも対処できるよう努めており、十分な改善が認められた。 ② 工場全体の密閉性を保つよう現工場を改修中であり、十分な改善が認められた。 ③ 作業員全員が同じ作業着に作業ズボン、作業帽を着用しており、ある程度の改善が認めら れた。しかしながら、未だに殆んどの作業員が靴ではなくサンダルを履いており、また、マスクを している作業員としていない作業員とが散見できる。サンダル履きはカンボジアの気候や習慣
ら、作業中は全員必ずマスクの着用を義務付けるよう、要請する。 (3)考察 上記以外でも、工場内にあるトイレの内壁及び外壁に、これまでには無かった手洗いの方法 を示すパネルが掲示されるなど、カンボジア国内の工場としては非常にレベルが高く、また、真 面目な企業姿勢が伺える。 2)パームシュガー中の不溶性物質(異物)について (1)検証方法、活動内容 パームシュガー中の不溶性物質の量を算出した。 (2)結果 パームシュガー6 ロット中には、かなり多くの不溶性物質が存在していた。ちなみに、サトウキビ 由来の黒糖の場合は、不溶性物質は全く存在しない。また、濾紙上の不溶性物質はこげ茶色の 色調で、10%溶液でも濾過にかなりの時間を要した。 そこで、パームシュガー中の不溶性物質を詳細に検討したところ、不溶性物質とは灰やホコリで あることが明らかとなった。これらが混入する原因としては、パームシュガーの製造が野外で行わ れているためで、風などによりホコリや薪火からの灰が混入したものと考えられる。 (3)考察 パームシュガー中に不溶性物質(異物)が多く存在したとしても、日本国内でパームシュガーを 水で再溶解した後にそのほとんどを取り除くことができることから、特に問題は無いと思われる。 3)パームシュガー中の微生物について (1)検証方法、活動内容 定法に従って、パームシュガー中に存在する一般生菌数、耐熱菌数、カビ、酵母及び大腸菌 群の数を測定した。 (2)結果 カンボジア産パームシュガー6 ロット中の一般生菌数、耐熱性菌の数、カビ、酵母、大腸菌群の 数値は、日本国内で販売されているサトウキビ由来の黒糖と同程度であり、食品としては十分に通 用する品質であった。また、ロット間によるバラツキも、ほとんど認められなかった。 (3)考察 カンボジア産パームシュガーに存在する微生物の数は僅かであり、これらの残存している微生 物は、日本国内での再結晶化の際の加熱工程でほぼ死滅させることができるので、特に問題は 無いと考えている。 4)パームシュガー中の還元糖量及び糖度、糖組成について (1)検証方法、活動内容 パームシュガー中の還元糖量、糖組成、糖度を測定した。 (2)結果
パームシュガー6 ロット中の還元糖量は、グラニュー糖(還元糖量:0.1%)や黒糖(還元糖量: 3.44%)と比べてもかなり多く含まれていた。 糖度、還元糖量、シュクロース含量、グルコース含量及びフルクトース含量はロット間で多尐の バラツキは認められるものの、品質に大きく影響するようなバラツキではなかった。 (3)考察 糖度や還元糖量、シュクロース含量などに関してはロット間による大きなバラツキは認められな かったが、契約農家が個々に伝統的な製法(家内工業的)で花房液を煮詰めて製造していること を考えると、品質は非常に優れていると思われる。 5)その他栄養成分について (1)検証方法、活動内容 パームシュガー中の水分・蛋白質・脂質・灰分・固形分・熱量を測定した。 (2)結果 ・ パームシュガー中の水分はやや高いことがわかった。 ・ パームシュガー6 ロット中の水分、固形分、蛋白質、炭水化物、灰分、熱量に、ロット間によ るバラツキは認められなかった。 ・ 含有する脂質自体がわずかであることから、脂質に関しては 5 ロットの分析を行っていない が、水分、固形分、蛋白質、炭水化物、灰分から算出しても、脂質含量にロット間による差 は認められなかった。 ・ 色価(甘味料を水に溶かした時、どれだけの濃さの溶液になるのかを示したもの)は、5 ロッ ト間でのバラツキは認められなかった。 ・ 何れのロットも腐敗は進行していないと判断できた。また、水溶液の pH のバラツキも、ほと んど認められなかった。 (3)考察 糖度、還元糖量、シュクロース含量などと同様、その他の栄養成分についてもロット間による大 きなバラツキは認められなかった。よって、契約農家が個々に伝統的な製法で花房液を煮詰めて 製造している割にはバラツキが小さく、品質は非常に安定していると思われる。 6)パームシュガー中の残留農薬、総アフラトキシン、フタル酸エステル類について (1)検証方法、活動内容 パームシュガー中の残留農薬(529 項目)の分析、総アフラトキシン(アフラトキシン B1、B2、G1、 G2)の分析、フタル酸エステル類の分析を行った。 (2)結果 カンボジア産パームシュガー3 ロットの何れにおいても、フタル酸エステル 6 種類、総アフラトキ シン及び残留農薬(529 項目)は検出されなかった。 (3)考察 今回の分析において環境ホルモンでの一種であるフタル酸エステル類、カビ毒の一種で発ガ
ン作用を有する総アフラトキシン及び残留農薬は検出されなかったことから、安全面においてカン ボジア産パームシュガーは、特に問題が無いことが示された。 7)パームシュガーの再結晶化について (1)検証方法、活動内容 カンボジア産パームシュガーを用いた健康機能を有する商品を、日本国内で工業的に製造す るための方法を確立する目的で、ラボレベル及び実機レベルでの再結晶化の検討を行った。 (2)結果 <ラボレベルでの試作> ・ 加熱したパームシュガーを横型攪拌機で一気に冷却する方法を用いて再結晶化を行ったと ころ、ネバツキ(飴を捏ねている感じ)が出て、上手く再結晶化ができなかった。 ・ そこで、方法を一部変更し、金属トレイ上でゆっくり冷却することによって、黒糖様のパームシ ュガーの塊を得ることができた。 ・ その得られた塊を用いて粒度調整を行うことで、こげ茶色のパームシュガー100%粉末を得る ことができた。 ・ 他の原料糖や固化剤としての石灰などを何も添加していないことから、黒糖のような「えぐみ」 が全くない。 ・ 再結晶化の際の加熱で還元糖量が増すことから、パームシュガー従来品に比べて味や香り が良くなり、色が濃くなった。 <実機レベルでの試作> ・ 実機レベルでパームシュガー100%粉末の試作を行ったところ、再結晶化されたパームシュガ ーの塊がソフトキャラメルのように非常に柔らかくネットリとしているため、カッターを用いて微 粉砕する際に、カッターの刃にパームシュガーが付着してしまい、粉砕が上手くできなかっ た。 ・ この原因は、1)パームシュガー100%粉末中の水分が非常に高い、2)糖度が減尐する、3)還 元糖量が増加する、である。 (3)考察 現状の品質のカンボジア産パームシュガーを用いて、日本国内で再結晶化させてパームシュ ガー粉末を再製造することは、非常に困難である。この最大の要因は、パームシュガーの糖度が 低いためである。 8)現地生産現場の視察及び改善指導について (1)検証方法、活動内容 パームシュガーの製造現場を視察し、パームシュガー製造における問題点を洗い出し、それら の改善を要請した。 (2)結果 パームシュガー製造における問題点とその改善事項
① 花房液を煮詰めた後に鍋を火から外す際の花房液の温度が低いことから、パームシュガー 中の水分含量が 5%以上と高くなり、また煮沸作業後の練りの時間も長くなることから、糖度 が低くなり還元糖の量が増え、色は褐変する。 ② 水道が整備されておらず雨水を溜めて使用しているため、花房液を集める採液筒の洗浄が 不十分であることから、採液筒の内壁にはヌルヌルした成分が付着していた。これは、採液筒内 に存在している微生物によるものであり、これがパームシュガーの糖度を減尐させる要因であ る。 また、採液現場視察中に、採液筒の中に小鳥が入り込むのが見られたが、昆虫や鳥などから のバクテリアの混入及び雨水の混入もまた、パームシュガーの糖度を低下させ還元糖を増やす 要因である。 ③ 同じ農家でも、ビジネスパートナーが求める規格のパームシュガーを製造できる時とできな い時があり、また、各農家間でも製造技術レベルに差がある。 (3)考察 ①花房液の煮沸温度を上げて、パームシュガーの水分を 2%以下にする、②各農家間での製造 技術レベルの差を無くす、③採液時に採液筒をハスの葉などで被い、鳥や昆虫、空間からの微生 物の混入と雨水の混入を防ぐ、④採液筒やナイフなど、製造に使用する道具は全て洗浄・煮沸殺 菌してから使用する。 上述のように改善することで、パームシュガーの糖度を高めることができ、また、国際的に競争 力のある品質にまで高めることが可能である。 3.3 実証項目 2 (1)検証方法、活動内容 パームシュガーをカンボジアから日本へ安定的に輸送するための経路についての情報交換を 行った。 (2)結果 サンプル輸入を通じた実証は行えなかったが、企業との打ち合わせの中で、500kg 程度を輸入 する場合は、航空便の方が安く、輸送手続きも簡単であるとのことである。また、カンボジアから船 便で輸送する場合は、カンボジアのシアヌクークビル港からよりも陸路でベトナムのホーチミンへ 運び、そこから積み出した方が安いとのことであった。 (3)考察 今後の課題としては、量産試作の際に必要となる大量のサンプルの輸入を通じて、輸送経路の 確立を行う予定である。 3.4 実証項目 3 1)パームシュガー中のミネラル含量について (1)検証方法、活動内容 カンボジア産パームシュガー中のミネラル含量の分析を行い、他の甘味料との比較を行った。
(2)結果 ・ パームシュガー中の総ミネラル含量は 621.6mg/100g で、グラニュー糖の約 620 倍であった。 巷で言われている「上白糖の約 40 倍のミネラル含量」よりも 10 倍以上多かった。 ・ パームシュガー中には、有害なミネラルであるヒ素、錫(スズ)、鉛は検出されなかった。 (3)考察 パームシュガー中のミネラル含量は、さとうきび粗糖やメープルシュガーに比べれば多いもの の、ココナッツシュガーや黒糖に比べれば、非常に尐なかった。また、ミネラルバランスが特に 優れているというわけでもなく、ナトリウム含量が多いということ以外は、これといった特徴は認め られなかった。 2)パームシュガーの実験動物を用いたGI値の評価 (1)検証方法、活動内容 日本市場においてカンボジア産パームシュガーを健康機能甘味料としてブランディングする ためには、パームシュガーの GI 値について評価をし、その力価を実証しておく必要がある。 そこで、実験動物を用いて、カンボジア産パームシュガーの GI 値に対する評価を行った。 (2)結果 ・ パームシュガーの経口投与は、ブドウ糖の経口投与と比べて、投与後 30 分での血糖値の一 過性の上昇を抑制した。 ・ カンボジア産パームシュガーの GI 値はおおよそ 62 であり、中 GI 食品に分類される。 ・ フィリピン産のココナッツシュガーよりは GI 値がやや低いもののグラニュー糖よりは高く、イン ターネット上で氾濫しているパームシュガーの GI 値が 35 であるという情報とは、大きく異なっ ていた。 (3)考察 カンボジア産パームシュガーの GI 値は 62 前後であることから、低 GI 甘味料として謳うには 非常に厳しく、その他の健康機能を模索する必要があるように思える。 第 4 章 現地への寄与 4.1 事業実施前と実施後の変化 事業実施前 事業実施後 技術移転 ・糖組成や還元糖量などの成分に関する 科学的データなし。 ・ミネラルなどの健康成分に関する科学的 データなし。
・GI 値(Glycemic Index)に関する科学的 データなし。 ・伝統的(非科学的)な製造方法が存在。 ・糖組成や還元糖量などの成分に関する科 学的データの提供。 ・ミネラルなどの健康成分に関する科学的デ ータの提供。 ・GI 値が約 62 であるという科学的データの 提供。 ・科学に基づいた国際基準な製造方法への 技術指導。
4.2 現地への寄与
糖組成や還元糖量などの成分やミネラルなどの健康成分、GI 値(Glycemic Index)などに関する 科学的データを、ビジネスパートナーへ提供した。また、カンボジア産パームシュガーの品質をグロ ーバル・レベルにまで高めるための製造方法を、ビジネスパートナー及び生産者へ技術指導した。 さらに、パームシュガーの品質管理レベルを向上させるために、Specification Sheet(製品仕様書)の 作成方法を、ビジネスパートナーへ指導した。 第 5 章 今後の事業展開と課題 5.1 今後の事業展開 (1)現地における活動 パームシュガーの糖度を高め還元糖量を増さないようにするために、採液筒や花房を切断する ナイフなど、使用する道具全ての洗浄・煮沸殺菌や、採液中にハスの葉などを被せて昆虫や鳥、 雨水などの混入の防止など、できるだけ採液中に微生物などの混入による加水分解を抑制するこ と、及び煮沸温度を上げることによるパームシュガー中の水分含量の低下、練りの時間の短縮な ど、現地で改善・指導した方法でパームシュガーの製造を試みる。 (2)日本国内での活動(販売促進活動等) ファンケルでは今後パームシュガーを、Business(企業)to Consumer(一般消費者)、すなわち B to C と、Business to Business、すなわち B to B の両面での販売を検討する。順調に開発が進め ば、2013 年に販売を開始したいと考えている。 5.2 今後の課題 ①新製法で製造されたパームシュガーの成分分析と再結晶化の検討 ②パームシュガーの健康機能の評価 参考文献 [1] 佐藤 孝 「東南アジアのヤシ」、東南アジア研究、5(2):230-275(1967) [2] 濱屋 悦次 「ヤシ酒の科学」、批評社 東京(2000)
[3] Inafuku, M., et. al., Effect of kokuto, a non-centrifugal cane sugar, on the development of experimental atherosclerosis in Japanese quail and apolipoprotein E deficient mice.,
Food Sci. Technol. Res., 13, 61-66 (2007)
[4] WATANABE, Y., et. al., Ingested Maple Syrup Evokes a Possible Liver‐Protect ― Physiologic and Genomic Investigations with Rats., Biosci. Biotechnol. Biochem., 75(12), 2408-2410 (2011)