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フライアッシュなどの無機粉体スラリーの流動性向上効果に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)フライアッシュなどの無機粉体スラリーの流動性向上効果に関する研究 −スラリー化に伴うゼータ電位の変化−. 松本 1. はじめに. 尚樹. ナロジーとして議論されることが多い。そこで本研究 では,フライアッシュなどの粉体をコロイド粒子とみ. 本研究室は,石炭火力発電所から発生するフライア. なし,スラリー化における粒子の分散状況を検討した。. ッシュをコンクリートに大量有効利用するため,単位. コロイドレベルでの固/液界面では,溶媒が水の場合,. セメント量を一定としてフライアッシュを混合する外. 原因は必ずしも明確ではないが,粒子はほとんどの場. 割調合方法を提案し,強度発現性状,フレッシュ性状, 1). 耐久性状の検討を行い,その有効性を確認してきた 。. 合水に対して負に帯電している 4)。図 1 に示すように,. また,フライアッシュは未燃カーボンや遊離 CaO 等の. 粒子近傍では電気二重層が形成され,粒子近傍の液相. 有害成分を含むため,大量混合にはこれら有害成分の. の電位は粒子表面から遠ざかるほど低下する。電位は,. 分離ならびに安定化処理が不可欠なため,その方法を. 粒子表面にごく近く(数オングストローム程度まで). 2). のいわゆる Helmholtz 層(固定層)では直線的に低下. 示した 。 これらの処理はフライアッシュを水と混合し,スラ. し,その外側の Gouy-Chapman 層(拡散層)では指数. リー化して行うが,その過程でフライアッシュは水中. 関数的に減少する。両層の境界付近,厳密には若干外. で継続的に撹拌されて分散するため,これをコンクリ. 側のすべり面の電位がゼータ電位 ! である。粒子間の. ートに混合する際,同一粉体を乾燥状態で混合する場. 斥力は式(1)4)に示すように ! の二乗に比例する。. 合と比較して,同じ高性能 AE 減水剤の添加量であれ 電位. ば流動性が向上する,または同じ流動性を実現するた めに必要な添加量を低減できる場合が多いことが確認. 数Å 数nm∼max1.2μm. されている 1)。 筆者らは,この原因として種々の要因が関連してい. ー ○ ○ +. − ○. + ○ ー 粒 ○ + ○ 子 ○ ζ − 表 − ○ 面 ○ − ○ +. ると考え,現在のところ,①粒子表面の電気化学的変 化,②粒子あるいは粒子表面の物理的変化,ならびに ③液相の化学的変化などを想定している。結果である 流動性の向上効果自体は評価ならびに管理が容易であ. + ○. − ○. − ○. るものの,前述の原因と結果との因果関係については, 各要因が互いに関連して現象を複雑にしていることも. − ○. + ○. − ○ ○ +. 液 相. − ○. + ○. ζ/e. + ○. 距離. D0=1/κ. あり,定量的な説明をするには至っていない。 拡散層. 固定層. 本研究室は,前述の要因のうち,①粒子表面の電気. 電気二重層. 化学的変化に関して,ゼータ電位が流動性に関与して いることを確認している 3)。. 図1. 本研究では,両者の関係を定量化するための第一段. 電気二重層とゼータ電位 4)5). VR = 1/4・ed!2exp(-"l). 階として,スラリー化に伴う,フライアッシュを中心. (1)4). ここに,. とした無機粉体粒子のゼータ電位の経時変化を含む諸. VR :静電反発力. 特性について測定ならびに検討を行った。. e :分散媒の誘電率 d :粒子の直径. 2. 電気二重層とゼータ電位. ! :ゼータ電位. セメントをはじめとする粒子の水中での分散は,コ ロイド粒子の分散における挙動と似たものを示すこと. " :Debye−Hückel のパラメータ. が確認されていることから,コロイド粒子の分散のア. l 49-1. :粒子間距離.

(2) 電位が ! の 1/e となる距離 D0 は電気二重層の厚さと. 10分攪拌後静置 1日攪拌後静置 3日攪拌後静置 5日攪拌後静置 連続攪拌. 0. 対応し,式(1)中の Debye−Hückel のパラメータ " と の間に D0=1/" の関係にある。D0 は液相中のイオン濃. -2 ゼータ電位 (mV). 度の影響を受け,イオン濃度が高いと小さくなり, DLVO 理論における極大値が大きく,すなわち粒子の 分散状態が安定する性質がある 4)。 本研究では,種々の粉体をスラリー化し,それぞれ のゼータ電位や電気伝導度などの特性を分析すること で,スラリー化に伴う流動性向上との関与を検討した。. -6. フライアッシュA. -8. 3. 実験概要 3.1. -4. 使用した粉体. 0. 1. 2. 3 4 5 経過時間( 日). 実験に供したフライアッシュは JIS A 6201「コンク リート用フライアッシュ」のⅠ種あるいはⅡ種に相当. 図2. 6. 7. 攪拌継続に伴うゼータ電位の経時変化. するもの 4 銘柄 5 種類,相当しないもの 2 銘柄 3 種類 1.5. (フライアッシュ D1,D2 および E)である。加えて. 1.4. ー化の際には再現性を重視して精製水を使用している。 測定項目. スラリー濃度は,既往の実験で濃度が高い場合に流 動性向上効果が顕著に見られたことから,混合可能な 範囲でできるだけ高濃度とした。結果,質量濃度で 60 ∼75%程度となった。混合および攪拌にはホバートミ. 電気伝導度 (mS/cm). 同 10µm 程度の石灰石粉についても検討した。スラリ 3.2. 10分攪拌後静置 1日攪拌後静置 3日攪拌後静置 5日攪拌後静置 連続攪拌. フライアッシュA. 比較のため,平均粒径 40µm 程度の砕石粉,ならびに. 1.3. 1.2. 1.1. キサを使用し,10 時間攪拌#12 時間停止#2 時間攪拌 #試料採取#(以下同じ)の要領で行った。. 1.0. ゼータ電位は,前述の粉体をスラリー化し測定を行. 0. 1. 2. 3 4 5 経過時間(日). った。測定装置は高濃度のスラリーにおけるゼータ電 図3. 位の測定が可能な電気音響法によるものとした。加え. 6. 7. 攪拌継続に伴う電気伝導度の経時変化. て,同装置では Debye−Hückel のパラメータ ",スラ リーの電気伝導度ならびに pH が同時に測定できる。 11.0. 試料の測定は,粉体と精製水を混合開始後 10 分,1,3,. フライアッシュA. 5 および 7 日を標準として行った。加えて 10 分,1,3. 10.5. および 5 日で攪拌を取りやめ,その後静置した試料に 関しても測定を行った。. 10分攪拌後静置 1日攪拌後静置 3日攪拌後静置 5日攪拌後静置 連続攪拌. 10.0. また,ゼータ電位の測定の際に,同一の試料におい pH. てスラリーを混合したモルタルおよびスラリー(濃度. 9.5. はスラリー化開始時と同じ濃度に調整)のフロー値を 測定し,ゼータ電位と流動性の関係を検討した。. 9.0. 4.. 8.5. 実験結果および考察. 4.1. ゼータ電位の経時変化(フライアッシュ A の場合) 8.0. 図 2 に攪拌継続に伴うゼータ電位の経時変化の一例. 0. を示す。また図 3,図 4 および図 5 に同じ試料で得ら れた電気伝導度,pH,1/"(=D0)の経時変化を示す。 49-2. 図4. 1. 2. 3 4 5 経過時間(日). 6. 攪拌継続に伴うpH の経時変化. 7.

(3) 2.8 2.7. いた同調合のモルタルの 0 打フローが 315mm という フライアッシュA. 10分攪拌後静置 1日攪拌後静置 3日攪拌後静置 5日攪拌後静置 連続攪拌. DO=1/κ (nm). 2.6. 結果が得られている。 図 3 に示した電気伝導度の攪拌継続に伴う低下は, スラリー中の塩基性イオン濃度の低下に対応している と考えられる。このことは図 4 に示すようにスラリー. 2.5. の pH が時間とともに中性側に低下していることから. 2.4. もわかる。すなわち,スラリー中のイオンのフライア 2.3. ッシュ表面への吸着や,他の物質反応による沈殿,ま. 2.2. たはスラリー中のイオン濃度の低下などから,スラリ ーの電気伝導度および pH が低下したものと考えられ. 2.1 2.0. 図5. る。また,フライアッシュのゼータ電位が負側に増大 0. 1. 2. 3 4 5 経過時間( 日). 6. するのは,粒子表面へのイオンの吸着と液相の pH に. 7. よるものと考えられる。同様に図 5 では,後出の図 8 ほど明瞭ではないが 2 節で述べたとおり,1/"(=D0). 攪拌継続に伴う1/κ(=D0)の経時変化. がスラリー中のイオン濃度の影響を受け,イオン濃度 図 2 からフライアッシュ A を用いたスラリーにお. 14. けるゼータ電位は,攪拌時間の経過とともに負側に増 大していることがわかる。図中の破線はそれぞれの時. 13 フライアッシュ. 期に攪拌を停止して静置した場合のゼータ電位を示す。 12. 10 分攪拌後静置した場合を除いて,攪拌停止とともに ゼータ電位の増大が停止し横這いとなっている。これ. 11. pH. は既往の研究におけるスラリーを用いたモルタルのフ. フライアッシュA フライアッシュB フライアッシュC フライアッシュD1 フライアッシュD2 フライアッシュE フライアッシュF1,F2 石灰石粉 砕石粉. 10. ローが,長時間攪拌したスラリーを用いた場合ほど大 きくなり,攪拌停止後に静置したスラリーを用いた場. 9. 合には静置時間が長くなってもフローは増大しない傾 向. 3). 8. と一致している。なお,このフライアッシュのス. ラリーを用いた場合の流動性に関しては,10 分攪拌後. 7 0.0. のスラリーを用いた水粉体比 25%のモルタル(コンク. 砕石粉 石灰石粉. 2.0. 3. リート換算で単位フライアッシュ量 455kg/m )の 0 打. 4.0. 6.0. pH と電気伝導度. 10.0. 40 30. フライアッシュA フライアッシュB フライアッシュC フライアッシュD1 フライアッシュD2 フライアッシュE フライアッシュF1,F2 石灰石粉 砕石粉. 石灰石粉. 8.0. フライアッシュ. DO=1/κ (nm). ゼータ電位(mV). 20 10 0. フライアッシュA フライアッシュB フライアッシュC フライアッシュD1 フライアッシュD2 フライアッシュE フライアッシュF1,F2 石灰石粉 砕石粉. -10. -30 -40 0.0. 10.0. 電気伝導度 (mS/cm). 図7. フロー148mm に対して,3 日間攪拌したスラリーを用. -20. 8.0. 石灰石粉. 砕石粉. 2.0. 4.0. 6.0. 8.0. 6.0 砕石粉. 4.0. 2.0. フライアッシュ. 0.0 0.0. 10.0. 2.0. 電気伝導度 (mS/cm). 図6. 4.0. 6.0. 8.0. 電気伝導度 (mS/cm). ゼータ電位と電気伝導度. 図8 49-3. 1/κ(=D0)と電気伝導度. 10.0.

(4) 450 フライアッシュA (濃度70%) フライアッシュF2(濃度60%). 300. フライアッシュA フライアッシュB フライアッシュD2 フライアッシュE フライアッシュF1,F2. 400 モルタルのフロー(mm). スラリーのフロー(mm). 350. 250 200 150. 350 300 250 200 150. 100. 100. 0. 2. 4. 6. 8. 10. 0. 12. 2. ゼータ電位の絶対値(mV). 図9. 図 10. ゼータ電位の絶対値とスラリーフローとの関係. 4 6 8 10 ゼータ電位の絶対値(mV). 12. 14. ゼータ電位の絶対値とモルタルフローとの関係. の低下とともに大きくなる傾向が確認できる。. 大きくなる傾向が確認できる。スラリーならびにモル. 4.2. タルの両方の流動性の向上が見られたのは,スラリー. 種々の粉体を用いたスラリーのゼータ電位. 図 6,図 7 および図 8 に 8 種類のフライアッシュ,. の攪拌継続に伴うゼータ電位の増大によって粒子間の. 砕石粉,石灰石粉をそれぞれ用いたスラリーのゼータ. 斥力(静電反発力)が大きくなり,粒子の分散が安定. 電位,pH,1/"(=D0 )を電気伝導度との関係として. したことに起因するものと推測できる。このことが粒. 示す。全体の傾向はフライアッシュ A と同様であった。. 子の親水化へとつながり,流動性が向上したものと考. ゼータ電位に関しては,コロイド粒子の場合と異なり,. えられる。すなわち,フライアッシュなどの無機粉体. 正の電荷を持つ場合も多く見られる。混合直後に負の. をスラリー化した場合,ゼータ電位の増大が流動性の. 電荷を持つ場合は攪拌時間の経過とともに電荷は負側. 向上につながることが確認された。. に増大した。一方,混合直後に正の電荷を持つ場合も, 5. まとめ. 正から負へ変動する場合が見られたが,例外的に正側 に電荷が増大する場合(フライアッシュ D)もあった。. 本研究は,フライアッシュなどの無機粉体のスラリ. いずれの場合もこれらの変化は電気伝導度の低下,す. ー化がコンクリートの流動性向上に影響を与えること. なわちスラリー中のイオン濃度の低下に対応して生じ. を定量的に評価するために,粉体のゼータ電位等の経. た。なお液相中のイオンはフライアッシュ自体から溶. 時変化を含む諸特性について測定ならびに検討を行っ. 2). 出. た。その結果,無機粉体スラリーの攪拌継続によって,. したものであり,砕石粉や石灰石粉では電気伝導. 度の値および変化は小さい。. スラリー中のイオンの濃度が低下し,このイオン濃度. 4.3. の低下に対応して粉体のゼータ電位が増大することが. 流動性とゼータ電位(フライアッシュ A,F2 の場合). 図 9 にフライアッシュ A および F2 を用いたスラリ. 流動性向上効果に関与していることが確認できた。. ーのゼータ電位の絶対値とスラリーのフロー値との関. 〈謝. 係を示す。ゼータ電位の絶対値の増大に伴い,フロー. 博士の助言を頂いた。ここに謝意を表す。. 値が大きくなるという結果が得られた。特にこれらの. 〈参考文献〉. 辞〉検討の過程で九州大学名誉教授磯部敏幸理学. 1)松藤泰典,小山智幸,船本憲治,伊藤是清:石炭灰を. スラリーは,ゼータ電位の絶対値が 8mV 付近より増. 外割大量使用するコンクリートの調合に関する研究,. 大したとき,フロー値は急激に大きくなることが確認. コンクリート工学論文集,第 12 巻第 2 号,2001 など. できる。図 10 に 6 種類のゼータ電位の絶対値と水粉体. 2)松藤泰典,磯部敏幸,小山智幸,重富光人:石炭灰を. 比 25,35%(コンクリート換算で単位フライアッシュ. コンクリートに大量使用するための安定化処理に関す. 3. 量 455,244kg/m )のモルタルのフロー値との関係を. る研究,コンクリート工学年次論文集,第 22 巻,第 2. 示す。モルタルの場合もスラリーの場合と同様にゼー. 号,pp.115-120,2000 など 3)文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書(平成 14∼. タ電位の負側への増大に伴い,フロー値が大きくなる. 15 年度,基盤研究(C)(2)・課題番号 14550571,研究代. ことが確認できた。これら 6 種類のフライアッシュの. 表者:小山智幸). スラリーの場合,ゼータ電位の増大が進み,絶対値が. 4)岩澤康裕他監修:界面ハンドブック,エヌ・ティー・エス,2001. 6mV 超えたあたりからモルタルのフロー値が急激に. 5)古澤邦夫:! 電位の測定,ぶんせき,2004.5,PP.247-254. 49-4.

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参照

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