難 消 化 性 デ キ ス トリンの耐 糖 能 に及 ぼ す 影 響
第I報:消
化 吸 収 試 験 お よ び 糖 負 荷 試 験 に よ る 検 討
松 谷化学 工業(株)研
究所 生理機 能 研究 室1)
兵庫 医科 大学 臨床 病理学(指 導:松 岡
瑛 教授)2)
若
林
茂1)2)
The Effects of Indigestible
Dextrin on Sugar Tolerance:
I. Studies on Digestion-Absorption
and Sugar Tolerance
Shigeru WAKABAYASHI1)2)
1)Matsutani
Chemical Industry CompanyLtd
.,
Research Institute,
5-3Kita-Itami, Itami, Hyogo
2)Department of
Clinical
Pathology , Hyogo College of Medicine,
(Director:
Professor
Akira Matsuoka)
1-1 Mukogawa-cho,
Nishinomiya, Hyogo
It is widely acknowledged that high viscosity water-soluble
dietary fibers such as
pectin and guar gum affect a lowering of blood glucose levels and a reducing of insulin
secretion following a sugar load. However, as dietary fibers vary in origin and in chemical
properties,
their physiological
functions
differ as well. In this study the effects of
Indigestible Dextrin (PF-C) , a low viscosity, water-soluble dietary fiber obtained through
acid and heat-treatment
of potato starch,
on various aspects of sugar tolerance were
examined.
First, the influence of PF-C on sucrose hydrolysis was examined in rat intestinal
mucosa cell homogenate confirming that PF-C did not inhibit sucrase activity. Then, in
order to investigate the influence of PF-C on sugar digestion-absorption,
an experiment
was performed by using the everted intestinal sac of the rat in vitro. PF-C did not have an
effect on glucose-transport
into the serosal medium, whereas PF-C did inhibit the transport
of hydrolyzed-glucose
from sucrose, with no change in the hydrolysis of sucrose.Recently,
Crane et al. reported that there is a specific route for hydrolyzed glucose from sucrose in
glucose-absorption
on the enteric surface (disaccharidase related transport system) . The
possibility exists that PF-C specifically affects this pathway.
Further,
total glucagon
released into the serosal medium stimulated by both glucose and sucrose were reduced by
PF-C.
On the basis of these results, an oral sugar tolerance test was conducted in both rats
and healthy human subjects.
In male Sprague-Dawley
rats (8 weeks old, 250-280g)
concurrent administration
of PF-C (0.6g/kg body weight) reduced an increase in plasma
insulin levels with no change in glucose levels following a glucose (1.5g/kg body weight)
624 シ ョ糖 に対 す る難 消 化性 デ キス トリンの 耐糖 能 改善 効 果(若 林)
load. Further noted were reductions in increases in both plasma glucose and insulin levels
following a sucrose (1.5g/kg body weight) plus PF-C (0.6g/kg body weight) load to that of
the sucrose (1.5g/kg body weight) single load. These findings reflect the above mentioned
in vitro results. Moreover, in healthy male subjects the increase in both plasma insulin and
glucagon-like
immunoreactivity
(Gut GLI) levels following a Trelan-G75
load were
significantly reduced by concurrent administration of PF-C.
From these observations it would appear that the effectiveness of reducing insulin
secretion
by PF-C results due to the decrease in sugar absorption by inhibiting the
disaccharidase - related transport system. As glucagon-like peptide 1 (GLP-1) , [an incretin
in the enteroinsular
axis] secreted with Gut GLI from intestinal L cells, is known to
enhance insulin secretion following a sugar load, the resulting effectiveness by PF-C to
reduce insulin secretion is thought to be attributed to the action on this enteroinsular axis
mechanism.
Key words: Indigestible dextrin, Dietary fiber, Everted intestinal sac, Sugar tolerance,
Enteroglucagon
緒 言 食 物 繊 維 の 糖 質 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て は,主 と して 食 物 繊 維 摂 取 時 の 耐 糖 性 の変 化 か ら論 じ られ て き た 。Jenkinsら は,食 後 の 血 糖 値 上 昇 な ら び に イ ン ス リ ン分 泌 が ペ ク チ ン や グア ー ガ ム 等 水 溶 性 食 物 繊 維 の 摂 取 に よ り抑 制 され る こ と(耐 糖 能 改 善 効 果)を 見 出 し,糖 尿 病 の予 防 と治療 に 高 食 物 繊 維 食 が 一 定 の 効 果 を 有 す る こ と を報 告 した1)2)。彼 ら は,そ の 機 序 と して,こ れ ら食 物 繊 維 が 高 い 粘 性 を 有 して お り,食 物 の 胃内 滞 留 時 間 を 延 長 し,栄 養 素 の吸収 を遅 延 させ る ことに よ り, 血 糖 値 上 昇 な ら び に イ ン ス リ ン 分 泌 を 緩 徐 に し た も の と 推 察 した が3)4),Mirandaら5)お よ び Morganら6)は,食 物 繊 維 がEnteroinsular axisに お け るincretin候 補 物 質 で あ るGIP等 消 化 管 ホ ル モ ン分 泌 を 抑 制 す る こ と に よ りイ ン ス リ ン分 泌 を 低 下 させ た 可 能 性 に つ い て 報 告 して い る 。 さら に,最 近 食 物 繊 維 が 消 化 酵 素 活 性 を 阻 害 あ るい は 賦 活 化 し栄 養 素 の 消 化 吸 収 に 影 響 を及 ぼ して い る 可 能 性 が 示 唆 され て お り7),食 物 繊 維 が 有 す る耐 糖 能 改 善 効 果 の機 序 に つ い て は 現 在 尚 統 一し た 見 解 が 得 られ て い な い 。 本 研 究 に お い て 著 者 は'馬 鈴 薯 澱 粉 を 熱 処 理 後,分 画 ・精 製 して調 製 した 低 粘 性 水 溶 性 食 物 繊 維 (一 般 名:難 消 化 性 デ キ ス ト リン)に つ い て,耐 糖 能 に及 ぼ す 影 響 を 詳 細 に検 討 した 。 先 ず,糖 質 の 消 化 吸 収 に 及 ぼ す 難 消 化 性 デ キ ス ト リン の 影 響 に つ い てin vitroで 検 討 した 。 次 い で 'ラ ッ トな らび に健 常 人 を対 象 に 糖 負 荷 試 験 を 実 施 し,耐 糖 能 に 及 ぼ す 難 消 化 性 デ キ ス ト リ ンの 影 響 に つ い て 観 察 した 。 材 料 お よ び 実 験 方 法 1.食 物 繊 維 水 溶 性 食 物 繊 維 と して 難 消 化 性 デ キ ス ト リ ン(以 下PF-C),プ ル ラ ン(分 子 量 約20万;以 下PUL,林 原 生 物 化 学 研 究 所)お よ び ペ ク チ ン(以 下PEC,レ モ ン 由 来:和 光 純 薬)を 使 用 した 。 PF-Cの 調 製 法 の概 略 は 以 下 の 通 りで あ る8)9)。即 ち,加 熱 処 理 した 馬 鈴 薯 澱 粉(焙 焼 デ キ ス ト リ ン)を,α-ア ミラ ー ゼ お よ び グ ル コア ミ ラー ゼ で 加 水 分 解 し,難 消 化 性 成 分 を ク ロ マ ト分 取 後, イ オ ン交 換 樹 脂 に よ り脱 塩,さ ら に活 性 炭 で 脱 色 して 粉 末 化 した 。PF-Cの 難 消 化 性 成 分 は グル コー ス 単 位 が α-1,4,α-1,6な らび に β-1,2,β-1,3お よ び β.-1,6グ ル コ シ ド結 合 し,還 元 末 端 の 一 部 は レ ボ グル コ サ ン(1,6-ア ン ヒ ドロ グ ル コ ー ス)で あ る分 枝 構 造 の 発 達 した デ キ ス ト リ ン と 推 定 され て い る(平 均 分 子 量:1600)。 高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー法 に よ る食 物 繊 維 含 有 量 は91.6%で あ っ た9)。
尚,PF-C,PULお よ びPEC水 溶 液(Brix4.0)の 粘 度 は,3.2,9.0お よ び702.0cps(30℃ に お い てB型 粘 度 計 を 用 い て 測 定 。 対 照 と した 同 濃 度 の シ ョ糖 溶 液 の 粘 度 は3.2cps)で あ っ た 。 2.試 薬 フ ロ リ ジ ン はSigma Chem.Co.,ペ ン トバ ル ビ タ ー ル は ダ イ ナ ボ ッ ト,ト レ ラ ンG75は 清 水 製 薬,ラ ッ ト ・イ ン ス リ ン はNovo Ind.,シ ョ糖,D-グ ル コ ー ス お よ び そ の 他 の試 薬 は 和 光 純 薬 の 製 品 を 使 用 した 。 3.ス ク ラ ー ゼ 活 性 に 及 ぼ す影 響 ス ク ラー ゼ 活 性 の 測 定 はDahlqvistの 方 法 に 準 じて 実 施 した10)。体 重250gの 生 後8週 齢 のSD系 雄 性 ラ ッ ト(Jcl:SD,日 本 ク レア)を24時 間 絶 食 後,ペ ン トバ ル ビ ター ル(50mg/Kg体 重)麻 酔 下 に 開 腹,Treitz靱 帯 よ り下 部10cmの 空 腸 部 分20cmを 単 離 し,付 着 す る 脂 肪 組 織 を 除 去 後,翻 転 し ス ラ イ ドグ ラ ス を 用 い て 粘 膜 を 剥 離 採 取 し た 。 採 取 した 粘 膜 標 品100mgに 対 しphosphate buffered saline(PBS,pH7.4)1mlを 加 え,テ フ ロ ン ホ モ ジ ナ イ ザ ー で 磨 砕 後,遠 心 分 離(1000 ×g,10分)し 上 清 画 分 を 粗 酵 素 液 と し た 。 調 製 した 粗 酵 素 液300μlに 基 質 溶 液 と して 種 々 濃 度 の PF-C,PULあ る い はPEC添 加 ・非 添 加 シ ョ糖 溶 液(342mg/dl;10mM)700μlを 加 え,37℃, 30分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト後,100℃ で5分 間 加 熱 し,生 成 した フ ラ ク トー ス 量 をFキ ッ ト ・ス ク ロ ー ス/グ ル コー ス/フ ラ ク トー ス(酵 素 法:Boehringer Mannheim Co.)を 用 い て 測 定 した 。 ス ク ラー ゼ活 性 は 粗 酵 素 液 の 蛋 白質1mgが60分 間 に 生 成 す る フ ラ ク トー ス量 に換 算 し,μmol単 位 で 表 し た 。 尚,粗 酵 素 液 の 蛋 白量 はLowry法11)に よ り測 定 した 。 4.翻 転 小 腸 に お け る 被 吸 収 性 試 験 体 重250∼280gの 生 後8週 齢 のSD系 雄 性 ラ ッ トを20∼24時 間 絶 食 後,ペ ン トバ ル ビ タ ー ル(50 mg/Kg体 重)麻 酔 下 に 開 腹,Treitz靱 帯 よ り下 部20cmの 空 腸 部 分5cmを 単 離 し,土 屋 らの 方 法 に 準 じて 翻 転 小 腸 を作 製 し た12)。こ れ を10mlシ リ ン ジ に 固 定 し,内 側 の 漿 膜 側 をPBS1.5mlで 満 た し,外 側 の 粘 膜 側 に はPF-C60mg/dl(シ ョ糖 に 対 して は120mg/dl)あ る い は フ ロ リ ジ ン 43.6mg/dl(1mM)添 加 ・非 添 加 条 件 下 に 被 験 物 質 と して グル コ ー ス150mg/dlあ る い は シ ョ糖300 mg/dlを 含 むPBS10mlを 入 れ,O2+CO2(95+5%)混 合 ガ ス の 送 気 下,37℃ で イ ン キ ュベ ー トし, 経 時 的 に 両 側 の 糖 濃 度 を 測 定 した 。 ま た,120分 後 に 漿 膜 側 のTotal glucagon immunoreactivity
(Total GLI)を グル カ ゴ ンN端 特 異 抗 体(免 疫 抗 原:des-Asn28,Thr29,Homoser27-glucagon) を用 い たRIA法 に よ り定 量 した 。
尚,本 研 究 で の グ ル コ ー ス 濃 度 は 後 述 し た グ ル コ ー ス 担 体 のin vitroで のKm値 が8∼9mM (144∼162mg/dl)と 報 告 さ れ て い る こ と か ら13),こ れ を基 準 に150mg/dlと 設 定 し,シ ョ糖 濃 度 に つ い て は 加 水 分 解 に よ り等 モ ル の グル コー ス を 生 ず る300mg/dlに 設 定 した 。
626 シ ョ糖 に対 す る難 消 化性 デ キス トリンの耐 糖 能 改善 効 果(若 林) 5.経 口糖 負 荷 試 験I(ラ ッ ト) 体 重250gに 達 した 生 後8週 齢 のSD系 雄 性 ラ ッ トを16時 間 絶 食 後,Kg体 重 当 た り グル コー ス1.5 g,グ ル コー ス1.5g+PF-C0.6g,グ ル コ ー ス1.5g+PEC50mgあ る い はPF-C0.6gを そ れ ぞ れ 水 溶 液 と して 経 口投 与 し,開 始 前,30,60お よ び120分 後 に 無 麻 酔 下 で 外 頸 静 脈 よ り採 血 し,血 糖 値 (mutarotase-GOD法:和 光 純 薬)な ら び に イ ン ス リ ン(RIA法:ダ イ ナ ボ ッ ト)を 測 定 した 。 ま た,シ ョ糖1.5gお よ び シ ョ糖1.5g+PF-C0.6g負 荷 に つ い て も同 様 に試 験 を 実 施 した 。 6.経 口糖 負 荷 試 験II(健 常 人) 健 常 成 人 男 子5名(年 齢30.0±1.5歳,身 長173.4±2.4cm,体 重60.2±1.4Kg,BMI20.0±1.0: 平 均 値 ± 標 準 誤 差)を 対 象 に グル コ ー ス モ ニ ター(GM1310,京 都 第 一 科 学)設 置 下 で トレ ラ ンG 75あ る い は ト レ ラ ンG75+PF-C30gを 経 口投 与 し,6分 毎 に 血 糖 値 お よ び イ ン ス リ ン を測 定 した 。
さ らに,30分 毎 にTotal GLI量 お よ び グ ル カ ゴ ンC端 特 異 抗 体(OAL 128)を 用 い たRIA法 に よ りglucagon immunoreactivity(GI)を 定 量 し,Total GLI量 か らGI量 を 差 し引 く こ と に よ り glucagon-like immunoreactivity(GutGLI)量 を 求 め た 。 尚,各 負 荷 試 験 の順 序 は ラ ン ダ ム に1週 間 間 隔 で ク ロ ス オ ー バ ー し て 実 施 した 。 ま た,本 試 験 は ヘ ル シ ン キ 宣 言 の 精 神 に 則 り計 画 ・実 施 さ れ た 。 7.統 計 学 的 処 理 実 験 成 績 は す べ て 平 均 値 ± 標 準 誤 差 で 表 し,群 間 の 有 意 差 検 定 はDuncanの マ ル チ プ ル レ ン ジ テ ス トに よ り行 い,5%以 下 の 危 険 率 を 有 意 と した 。 成 績 1.ス ク ラ ー ゼ 活 性 に 及 ぼ す 影 響 シ ョ糖 の加 水 分 解 に よ り生 じた フ ラ ク トー ス量 を指 標 と して ス ク ラ ー ゼ 活 性 に及 ぼ す 各 種 食 物 繊 維 の 影 響 を 検 討 し た(表1)。PULお よ びPECは,混 合 比10:1(シ ョ糖:食 物 繊 維)に お い て ス ク ラ ー ゼ 活 性 を シ ョ糖 単 独 の9.7お よ び11.5%に 抑 制 した 。 対 照 的 にPF-C存 在 下 で は フ ラ ク トー ス 生 成 量 の増 加 が み られ,混 合 比5:2∼10:1に お い て 有 意 差 を 認 め た 。
Table 1 Effect of various dietary fibers on sucrase activity.
PF-C:indigestible dextrin, PUL: pul1ulan, PEC: pectin. *: mixing ratio(sucrOse: dietary fiber).
Mean±SE: values not sharing a common superscript in a column are significantly different from each other(p<0.05).
2.翻 転 小 腸 に お け る 被 吸 収 性 試 験 (1)グ ル コ ー ス の 被 吸 収 性 図1に 粘 膜 側 を グル コ ー ス150mg/dlで 満 た し た と き の 粘 膜 側 お よ び 漿 膜 側 の グル コ ー ス濃 度 の 経 時 的 変 化 を 示 す 。 グ ル コ ー ス単 独 で は,粘 膜 側 の グル コー ス 濃 度 は 期 間 中 平 均 速 度0.71mg/min で 減 少 した 。 減 少 速 度 はPF-C60mg/dl添 加 に よ り0.55mg/minと 緩 徐 に な っ た が,各 時 点 に お け る グル コ ー ス濃 度 は 両 群 間 で 有 意 差 を認 め な か っ た 。 ま た,フ ロ リジ ン43.6mg/dl存 在 下 で は PF-C添 加 に 関 わ り な く有 意 な減 少 速 度 の 低 下 が み られ た(0.17∼0.22mg/min)。 尚,PF-C単 独 お よ び フ ロ リ ジ ン単 独 に お い て 粘 膜 側 の グ ル コ ー ス濃 度 の増 加 が み られ た が,そ の 程 度 は フ ロ リ ジ ン単 独 で よ り顕 著 で あ っ た 。 漿 膜 側 の グル コ ー ス濃 度 は グル コー ス 単 独 の 場 合,60分 ま で 急 速 に増 加 し,そ の 後120分 ま で 緩 徐 に増 加 した(平 均 速 度 は0∼60分:0.94mg/min,60∼120分:0.16mg/min,0∼120分:0.55mg/ min)。 増 加 速 度 はPF-C添 加 に よ る 影 響 を 受 け な か っ た 。 一 方,フ ロ リジ ン添 加 で は 有 意 な 速 度 低 下(0.33mg/min)が 観 察 され た が,PF-C添 加 に よ って もそ の 程 度 は 変 化 し な か っ た 。 尚,PF-C単 独 お よ び フ ロ リ ジ ン 単 独 に お い て 僅 か な が ら グ ル コー ス濃 度 の増 加 が み られ た 。 120分 間 の イ ン キ ュ ベ ー ト期 間 中 に 漿 膜 側 へ 放 出 さ れ たTotal GLI量 は グ ル コ ー ス 単 独 で は 339.5±12.6pg/mlで あ っ た が,PF-C添 加 に よ り63%,ま た,フ ロ リジ ン添 加 で は54%に そ れ ぞ れ 低 下 した 。 しか しな が ら,PF-C+フ ロ リ ジ ン に よ る相 加 効 果 は認 め られ な か った 。
Fig. 1 Time-course of glucose transport by rat intestinal everted sac. Everted sac was incubated with glucose solution supplemented with or without indigestible dextrin (PF-C).
Left panel shows the changes in glucose concentrations in the mucosal medium. Center and right show the changes in glucose concentrations and total glucagon release into the serosal medium, respectively. Values (Mean •} SEM) not sharing a common superscript on the same time are significantly different from each other (p<0.05).
[•œ150mg/dl glucose; n=6, •›150mg/dl glucose + 60mg/dl PF-C; n=6 ,•¡150mg/dl glucose + 43.6mg/dl phloridzin; n=6 ,• 150mg/dl glucose + 60mg/dl PF-C 43.6mg/dl phloridzin; n=6, •¢60mg/dl PF-C ; n= 6 ,•£43 . 6mg/dl phloridzin; n=3]
628 シ ョ糖 に対 す る難 消化 性 デ キ ス トリンの耐 糖 能改 善 効 果(若 林) (2)シ ョ糖 の 被 吸 収 性 シ ョ糖300mg/dlの 被 吸 収 性 に 及 ぼ すPF.Cお よび フ ロ リ ジ ン の 影 響 に つ い て 図2に 示 す 。 粘 膜 側 の シ ョ糖 濃 度 の 減 少 は,PF-C120mg/dlあ る い は フ ロ リ ジ ン43.6mg/dlの 添 加 に よ っ て 影 響 を 受 け な か っ た が,グ ル コ ー ス 濃 度 の 平 均 増 加 速 度 はPF.C存 在 下 で0.88mg/minと 高 値 で あ り, 20分 迄 の 初 期 段 階 で は シ ョ糖 単 独 と の 間 に 有 意 差 を認 め た 。 ま た,フ ロ リ ジ ン存 在 下 で は1.18mg/ minと シ ョ糖 単 独(0.65mg/min)に 比 して 全 期 間 中 有 意 な 高 値 を 示 した 。 しか し な が ら,PF-C と フ ロ リ ジ ン に よ る相 加 効 果 は み ら れ な か っ た 。
Fig. 2 Time-course of sucrose transport by rat intestinal everted sac. Everted sac was incubated with sucrose solution supplemented with or without indigestible dextrin (PF-C). Upper two panels show the changes in sucrose and glucose concentrations in the mucosal medium, respectively. Lower left panel shows the changes in glucose concentrations in the serosal medium. Right shows total glucagon release into the serosal medium.
Values (Mean •} SEM) not sharing a common superscript on the same time are significantly different from each
other (p<0.05).
[•œ300mg/dl sucrose; n=14 ,•›300mg/dl sucrose + 60mg/dl PF-C; n=13,•¡300mg/dl sucrose + 43.6mg/dl phloridzin; n=6 ,• 300mg/dl sucrose + 60mg/dl PF-C + 43.6mg/dl phloridzin ; n=6]
漿 膜 側 の グル コー ス 濃 度 は シ ョ糖 単 独 の 場 合,60分 ま で 急 速 に 増 加 し,そ の後120分 ま で は 緩 や か に 増 加 した(平 均 速 度 は0∼60分:1.00mg/min,60∼120分:0.24mg/min,0∼120分:0.62mg/ min)。 増 加 速 度 はPF-C存 在 下 で は シ ョ糖 単 独 の48∼72%(30∼120分)に 低 下 し た 。 ま た,フ ロ リ ジ ン に よ っ て 有 意 な速 度 低 下 が み られ た が,フ ロ リ ジ ン に よ る 抑 制 効 果 はPF-Cに よ っ て そ れ 以 上 増 強 さ れ な か っ た 。 120分 間 の イ ン キ ュ ベ ー ト期 間 中 に 漿 膜 側 へ 放 出 さ れ たTotalGLI量 は,シ ョ糖 単 独 で は337.5 ±11.0pg/mlで あ っ た が,PF-C添 加 に よ り64%に,ま た,フ ロ リジ ン添 加 で は47%に そ れ ぞ れ 低 下 した 。 しか し な が ら,PF-Cお よ び フ ロ リジ ン に よ る 相 加 効 果 は 認 め ら れ な か っ た 。 尚,PULな らび にPECはO2+CO2混 合 ガ ス の 送 気 下 で 粘 膜 側 に 大 量 の 気 泡 を 生 じた た め 本 実 験 系 で の 検 討 は 実 施 で きな か っ た 。
Fig. 3 Changes in plasma glucose and insulin levels after the administration of glucose (upper panels) , sucrose (lower panels) , and with indigestible dextrin (PF-C) in rats. Each point (Mean •} SEM) not sharing a common superscript on the same time are significantly different from each other (p<0.05).
[Upper panels: •œglucose 1.5g/kg body weight; n=6,•›glucose 1.5g + PF-C 0.6g/kg body weight; n=6,•£glucose 1.5g + pectin 50mg/kg body weight; n=6, --•›--PF-C 0.6g/kg body weight; n=4, Lower panels :•œsucrose 1.5g/kg body weight; n=18, •›sucrose 1.5g + PF-C 0.6g/kg body weight; n=18]
630 シ ョ糖 に対 す る難 消 化 性 デ キ ス トリンの 耐糖 能 改善 効 果(若 林) 3.経 口 糖 負 荷 試 験I(ラ ッ ト) グ ル コー ス お よ び シ ョ糖 経 口投 与 後 の 血 糖 な ら び に イ ン ス リ ン分 泌 曲 線 を 図3に 示 す 。 グ ル コー ス単 独 負 荷 後 の 血 糖 値 な ら び に イ ン ス リ ン分 泌 は,30分 後 に159.3±16.9mg/dlお よ び82.4±17.0 μU/mlに 達 す る頂 値 を 示 した 後 そ れ ぞ れ 減 少 し,120分 後 に ほ ぼ 前 値 に 回 復 した 。 こ れ と 比 較 し てPEC同 時 負 荷 後 の そ れ は い ず れ も 低 値 で 推 移 し た が,120分 後 の イ ン ス リ ン 分 泌 量 は50.5± 11.7μU/mlと 高 値 で あ っ た 。 一 方,PF-C同 時 負 荷 後 の 血 糖 曲 線 は グ ル コ ー ス単 独 と差 異 を認 め な か っ た が,イ ン ス リ ン分 泌 は30分 後 に お い て 有 意 に 低 値 で あ っ た 。 尚,PF-C単 独 で は 血 糖 値 な らび に イ ン ス リ ン分 泌 に影 響 を 及 ぼ さ な か っ た 。 下 段 は シ ョ糖 負 荷 後 の 耐 糖 能 曲 線 を示 す 。 本 実 験 系 で の シ ョ糖 負 荷 に よ る グ リセ ミ ッ ク ・イ ン デ ッ ク ス は86と や や 高 値 で あ っ た 。 シ ョ糖 負 荷 後 の 血 糖 レ ベ ル はPF-C同 時 負 荷 に よ り有 意 に 低 下 し た 。 ま た,イ ン ス リン 分 泌 に つ い て は 有 意 差 は な い が 低 下 傾 向 が み ら れ た 。
Fig. 4 Changes in glucose (upper panel:•\•\), insulin (upper panel:---), Gut GLI (glucagon-like immunoreactivity; lower panel:•\•\), and GI (glucagon immunoreactivity; lower panel:---) levels after the administration of Trelan-G75 alone (•œ) , and with indigestible dextrin
(PF-C:•›) in five male healthy subjects.
Each point is the Mean •} SEM. The statistical comparisons were made between groups (*: p<0.05 **: p<0.01).
4.経 口糖 負 荷 試 験II(健 常 人) 健 常 人 を 対 象 に実 施 した 糖 負 荷 試 験 の 結 果 を 図4に 示 す 。 ト レ ラ ンG75負 荷 後 の 血 糖 値 は48分 後 に前 値(76.5±3.6mg/dl)の175%に 達 す る 頂 値 を 示 した 後 漸 減 す る一 峰 性 パ ター ンを 示 した 。 一 方,PF-C同 時 投 与 で は36分 後 に 頂 値 に 達 し た後 一 旦 低 下 し,84分 後 に 第2の 頂 値 の 出 現 を み た 。 しか しな が ら,期 間 中 両 負 荷 間 の 血 糖 レベ ル に有 意 差 は な か っ た 。 イ ン ス リ ン 分 泌 はPF-C同 時 負 荷 に よ り30分 以 降 有 意 な低 下 が み られ た 。 さ ら に,PF-C同 時 投 与 で はGut GLIの 分 泌 応 答 は 低 下 し,負 荷 後30お よ び60分 に お い て ト レ ラ ンG75単 独 投 与 と の 間 に 有 意 差 を認 め た 。 尚,GI分 泌 は 両 群 間 で 差 異 は な か っ た 。 考 察 本 研 究 に お い て 著 者 は,低 粘 性 水 溶 性 食 物 繊 維 で あ る 難 消 化 性 デ キ ス ト リ ン(PF-C)に つ い て 耐 糖 能 に 及 ぼ す 影 響 をin vivo,in vitroの 両 実 験 系 に お い て 検 討 した 。
緒 言 に 述 べ た 如 く,従 来 水 溶 性 食 物 繊 維 に よ る耐 糖 能 改 善 効 果 は食 物 繊 維 が 有 す る粘 度 と 関 連 し て 論 ぜ ら れ て き た1)∼4)。事 実,ペ ク チ ン や グ ア ー ガ ム は 部 分 分 解 に よ っ て 粘 度 を 低 下 さ せ る と効 果 が 減 弱 す る こ と が 知 ら れ て い る14)。し か し な が ら,食 物 繊 維 の 種 類 は 多 く,起 源 や 製 造 法 に よ っ て 構成 分 子,構 造(化 学 結 合),ま た 水 溶 性 や 保 水 性 等 の 物 理 化 学 的 性 質 は 大 き く異 な るた め,消 化 管 を 介 して 発 現 す る 生 理 作 用 の種 類 や効 果 は 一 律 に 論 じ られ な い 。 最 近,日 地 らは 粘 度 と 関係 な く, プ ル ラ ン(PUL)等 α-1,6結 合 を 基 本 骨 格 に 有 す る 多 糖 類 が シ ョ糖 お よ び澱 粉 負 荷 後 の 血 糖 値 上 昇 を抑 制 す る こ と を 報 告 した15)16)。特 に,PULは グ ル コー ス 負 荷 後 の血 糖 値 に は 影 響 を 与 え な い こ と が 明 らか に され て お り,ス ク ラー ゼ 等 小 腸 粘 膜 酵 素 の 阻 害 剤 と して作 用 して い る可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 PF-Cは 澱 粉 起 源 で あ り,α-1,6結 合 が10∼20%(PULは 約30%)残 存 して い る もの と推 定 さ れ て い る こ と か ら8),本 研 究 で は 先 ずPF-Cの ス ク ラー ゼ 活 性 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 検 討 を 加 え た 。 そ の 結 果,PULな ら び に ペ ク チ ン に ス ク ラ ー ゼ 活 性 の抑 制 効 果 が 認 め られ た の と対 照 的 に, PF-Cに は微 弱 な が ら活 性 の 増 強 効 果 が 見 出 さ れ た 。 そ こで,ス ク ラ ー ゼ の 賦 活 化 効 果 が 最 も強 く認 め られ た 混 合 比5:2(シ ョ糖:PF-C)の 条 件 下 で,ラ ッ ト空 腸 よ り単 離 した 翻 転 小 腸 を用 い て グル コー ス お よ び シ ョ糖 の 消 化 吸 収 に及 ぼ すPF-C の 影 響 に つ い て 検 討 を 加 え た 。 結 果,グ ル コ ー ス を 被 験 物 質 と した と き,粘 膜 側 お よ び 漿 膜 側 の グル コー ス 濃 度 の 変 化 はPF-C存 在 下 に お い て 有 意 に 変 化 せ ず,遊 離 の グ ル コ ー ス の 吸 収 にPF-C は 影 響 を 与 え な い も の と推 察 さ れ た 。 しか し,シ ョ糖 を 被 験 物 質 と し た と き に は 粘 膜 側 の シ ョ糖 濃 度 の 減 少 はPF-Cの 影 響 を 受 け な か っ た が,同 じ く粘 膜 側 の グ ル コー ス 濃 度 はPF-C存 在 下 で 高 値 と な り,さ ら に 漿 膜 側 の グ ル コー ス 濃 度 の 上 昇 は 有 意 に 抑 制 さ れ た。 即 ち,PF-Cは シ ョ糖 の 消 化 に は 影 響 を 及 ぼ さ な い が,シ ョ糖 由来 の グル コ ー ス の輸 送 は 阻 害 して い る 可 能 性 が 見 出 され た 。 シ ョ糖 を 含 め 二 糖 類 ∼ 多 糖 類 は 小 腸 管 腔 で の 中 間 消 化 な らび に刷 子 縁 に お け る接 触 消 化 お よ び 膜 消 化 を 経 て 単 糖 に ま で 加 水 分 解 され た 後,小 腸 上 皮 細 胞 を 介 して 吸 収 され る と考 え られ て い る。 グ ル コー ス の 腸 管 吸 収 に はNa+依 存 性 グ ル コー ス 担 体 を 介 した 能 動 輸 送 路 と 細 胞 細 孔 を 通 して の 受 動 拡 散 に よ る輸 送 の 他 に,二 糖 類 分 解 酵 素(膜 消 化 酵 素)と 連 結 した 輸 送 路 が 関 与 して い る と報 告 され て い る13)17)∼20)。Na+依存 性 グ ル コ ー ス 担 体 に つ い て は 機 能,構 造 に 関 して 多 くの 報 告 が み ら れ13),競 合 阻 害 剤 と して フ ロ リ ジ ンが 知 られ て い る20)。Barryら21)お よ び 川 口 ら22)は1mMの フ ロ リ
632 シ ョ糖 に対 す る難 消 化 性 デ キ ス トリンの 耐糖 能 改 善効 果(若 林) ジ ンに よ り グル コ ー ス のNa+依 存 性 糖 輸 送 電 位 が 完 全 に 抑 制 さ れ る こ とか ら,1mMフ ロ リジ ン存 在 下 で の グ ル コ ー ス 吸 収 は 拡 散 輸 送 を 反 映 す る と報 告 して い る20)。また,Craneら に よ り報 告 さ れ た 二 糖 類 分 解 酵 素 と連 結 した 輸 送 路 は,酵 素 作 用 に よ り生 じた グル コー ス の 輸 送 担 体 と して の 機 能 を有 して お り,輸 送 能 は酵 素 活 性 と相 関 しな い こ と'Na+非 存 在 下 で は 膜 消 化 に よ り生 成 した グ ル コー ス を 遊 離 の グル コー ス と混 同 す る こ と な く直 接 輸 送 す る等 の 特 性 が 見 出 され て い る 。 同 様 の輸 送 経 路 は シ ョ糖 の 他,マ ル トー ス,イ ソマ ル トー ス お よ び ト レハ ロ ー ス に つ い て もみ られ,膜 消 化 に よ り生 じた グ ル コー ス の 輸 送 に お い て 機 能 して い る も の と考 え られ て い る17)∼19)。本 翻 転 小 腸 試 験 系 に お い て,フ ロ リ ジ ン は グ ル コー ス の漿 膜 側 へ の輸 送 を 非 添 加 の17∼59%(20∼120分)に 抑 制 し,さ ら に シ ョ糖 に つ い て も 同 程 度(14∼61%)に 抑 制 した 。 しか し,PF-Cに よ る グル コー ス の 輸 送 抑 制 は 上 述 した 如 く シ ョ糖 を被 験 物 質 と した と き に お い て の み 観 察 され,遊 離 の グ ル コ ー ス に つ い て は み ら れ な か っ た 。 加 え て,PF-Cを フ ロ リジ ン と併 用 して も フ ロ リ ジ ン の 効 果 は そ れ 以 上 増 強 され な か っ た 。 こ れ ら の 成 績 か ら,PF-Cの 作 用 点 はNa+依 存 性 グル コー ス 担 体 を 介 し た輸 送 路 お よ び 受 動 拡 散 に よ る輸 送 路 で は な く'Craneら が 見 出 した 二 糖 類 分 解 酵 素 と連 結 し た輸 送 路17) ∼19)にあ る 可 能 性 が推 察 され る 。 さ ら に,本 翻 転 小 腸 試 験 系 に お い てPF-Cは グル コ ー ス お よ び シ ョ糖 刺 激 に 対 す るTotal GLI 放 出 を 有 意 に抑 制 した 。 腸 管L細 胞 で プ レプ ロ エ ン テ ロ グル カ ゴ ン と して 生 合 成 され,分 泌 穎 粒 内 に お い て プ ロ セ ッシ ン グ を受 け た 後 開 口分 泌 に よ りTotal GLI(グ リセ ン チ ン,オ キ シ ン トモ デ ュ リ ン)と 同 時 に 放 出 さ れ る と考 え られ て い るglucagon-likepeptide1(GLP-1)はGIPと 共 に incretinと み な さ れ て い る 。Enteroinsular axisを 作 動 さ せ る 消 化 管 へ の 刺 激 に 関 し て Creutzfeldtら は,小 腸 管 腔 に グ ル コー ス 等 刺 激 物 質 が 存 在 す る の み で は 不 十 分 で あ り,能 動 輸 送 さ れ た 後 あ る程 度 代 謝 さ れ る 必 要 が あ る と報 告 して い る23)。し か し な が ら,PF-C存 在 下 で の Total GLI放 出抑 制 は輸 送 抑 制 の み られ な か っ た グル コー ス刺 激 条 件 下 に お い て も観 察 さ れ て お り , Creutzfeldtら の 成 績 と一 致 し な か っ た 。 一 方,島 らは エ ン テ ロ グ ル カ ゴ ン様 物 質 分 泌 は 消 化 管 か らの 刺 激 物 質 の 吸 収 を必 要 とせ ず,刺 激 を 認 識 す る こ と に よ り誘 起 さ れ る と報 告 して い る が24),粘 膜 側 の グ ル コー ス 濃 度 はPF-C存 在 下 で い ず れ も 高 値 で あ っ た 。 今 後 の 研 究 課 題 と して,腸 管L 細 胞 の 認 識 部 位 に お い てPF-Cが グル コ ー ス あ る い は シ ョ糖 と ど の 様 に 相 互 作 用 して い る か 解 析 す る と共 に,GLP-1さ ら に はGIPを 測 定 し,Enteroinsular axisの 作 動 に及 ぼ すPF-Cの 影 響 に
つ い て 詳 細 に検 討 を 加 え る必 要 が あ る。
以 上 のin vitroに お け る基 礎 的 検 討 の 成 績 に 基 づ き,in vivoに お い て 耐 糖 能 に 及 ぼ すPF-Cの 影 響 に つ い て 観 察 した 。 ラ ッ トに お い てPF-Cは シ ョ糖 負 荷 後 の 血 糖 値 上 昇 を 抑 制 した が,グ ル コー ス 負 荷 後 の 血 糖 レ ベ ル に は 影 響 を 与 え ず,翻 転 小 腸 試 験 系 に お い て 見 出 さ れ た 両 糖 質 の 被 吸 収 性 に 及 ぼ すPF-Cの 効 果 の 差 異 が 反 映 され た 成 績 で あ っ た 。 ま た,PF-Cは グ ル コ ー ス お よ び シ ョ糖 負 荷 の い ず れ に 対 して も イ ン ス リ ン分 泌 の 低 下 効 果 を示 した 。PF-Cの シ ョ糖 負 荷 時 に お け る イ ン ス リ ン分 泌 の 低 下 作 用 に つ い て は グ ル コ ー ス の 吸 収 量 の 低 下 か ら説 明 可 能 で あ るが,グ ル コ ー ス負 荷 時 に お け るPF-Cの イ ン ス リ ン分 泌 低 下 作 用 の 機 序 に つ い て は 不 明 で あ る。 一 方,健 常 人 に お い てPF-Cに よ り ト レ ラ ンG75負 荷 後42∼78分 の 血 糖 値 は 有 意 差 を み な い が 低 下 の 傾 向 を 示 し,イ ン ス リ ンな ら び にGut GLI分 泌 の 有 意 な 低 下 が 観 察 さ れ た 。 ト レ ラ ンG75 の 糖 組 成 は 生 体 浸 透 圧 と の 関 係 か ら グ ル コー ス35.5%,マ ル トー ス19.5%,マ ル ト トリオ ー ス12 .5
%お よ び オ リ ゴ糖+デ キ ス ト リ ン32.5%か ら構 成 され25),二 糖 類 以 上 が 全 体 の64.5%を 占 め て い る。 こ の こ と を考 慮 す る と,PF-Cは ヒ トに お い て も二 糖 類 分 解 酵 素 と連 結 した 輸 送 経 路 を 阻 害 す る こ と に よ り二 糖 類 ∼ 多 糖 類 由 来 の グ ル コ ー ス の 吸 収 を 抑 制 し,血 糖 値 低 下 な ら び に イ ン ス リ ンの 必 要 量 を 低 下 さ せ た 可 能 性 が 考 え られ る。 さ らに,Gut GLI分 泌 の 抑 制 が 同 時 に 分 泌 さ れ るGLP-1分 泌 の 抑 制 を 反 映 す る と考 え る な らば,上 述 し た翻 転 小 腸 試 験 系 の 成 績 を 併 せPF-Cの 効 果 の 一 端 はEnteroinsular axisの 作 動 を抑 制 す る こ と に よ り発 現 し た 可 能 性 が推 察 さ れ る。Enteroinsular axisが 摂 食 後 の 血 糖 値 上 昇 に 伴 うイ ン ス リ ン分 泌 を 増 強 す る機 構 で あ る こ と を 考 慮 す る と,ラ ッ トに お い てPF-Cが 単 独 で は 血 糖 値 お よ び イ ン ス リン 分 泌 に 影 響 を 与 え な か っ た こ と は,上 述 し た 可 能 性 を 支 持 す る も の と い え る 。 以 上,低 粘 性 水 溶 性 食 物 繊 維(PF-C)に つ い て 耐 糖 能 に 及 ぼ す 影 響 を 消 化 吸 収 お よ び 内 分 泌 の 面 か ら検 討 し考 察 を 加 え た 。 周 知 の 如 く,シ ョ糖 は各 種 成 人 病(特 に肥 満,糖 尿 病)の 増 悪 因 子 と み な され て い る 。 今 後,本 研 究 に お い て 見 出 され た シ ョ糖 摂 取 に 対 す るPF-Cの 耐 糖 能 改 善 効 果 に つ い て,さ らに 有 効 利 用 で き る条 件 を 確 立 した い。 結 語 馬 鈴 薯 澱 粉 由 来 の 低 粘 性 水 溶 性 食 物 繊 維 で あ る 難 消 化 性 デ キ ス ト リ ン(PF-C)に つ い て 耐 糖 能 に 及 ぼ す 影 響 を種 々検 討 し,以 下 の 成 績 を得 た 。 1)PF-Cは ス ク ラ ー ゼ 活 性 を 微 弱 な が ら増 強 した 。 2)翻 転 小 腸 を 用 い て の 糖 質 被 吸 収 性 試 験 に お い て,PF-Cは シ ョ糖 よ り生 じた グ ル コー ス の 輸 送 を抑 制 した 。 ま た,グ ル コー ス な ら び に シ ョ糖 刺 激 に 対 す る 総 グル カ ゴ ン放 出 はPF-Cに よ り有 意 に 抑 制 さ れ た 。 3)ラ ッ トを 対 象 と した グル コー ス お よ び シ ョ糖 経 口負 荷 試 験 に お い て,PF-Cは い ず れ も イ ン ス リ ン分 泌 を低 下 させ た 。 しか し な が ら,血 糖 値 は シ ョ糖 負 荷 時 に の み 抑 制 した 。 4)健 常 人 を 対 象 と した ト レ ラ ンG75負 荷 試 験 に お い て,PF-Cは イ ン ス リン分 泌 な らび に腸 管 グ ル カ ゴ ン分 泌 を抑 制 した 。 文 献
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