智 顕 の 観 法 と 華 厳 ( 多 田 ) 二 六 四
智
顎
の
観
法
と
華
厳
多
田
孝
正
天 台 智 顕 の 教 学 の 成 立 基 盤 を 語 る 上 で 最 も 重 要 な 点 は、 華 厳 と 法 華 の 関 係 に つ い て で あ ろ う。 こ の こ と は す で に 指 摘 さ れ て い る よ う に、 法 華 玄 義 の 妙 法 を 心 ・ 仏 ・ 衆 生 の 三 法 妙 の 方 向 か ら 追 求 す る 態 度 に よ つ て 明 瞭 に さ れ て い る。 こ の よ う な 智 顕 の 華 厳 に 対 す る 態 度 は ﹁南 岳 師 は 三 種 を 挙 ( 1) ぐ 謂 く 衆 生 法 と 仏 法 と 心 法 な り。 ﹂と 述 べ ら れ る ご と く、 師 慧 思 の 態 度 を 継 承 し て い る も の と も 考 え ら れ る の で あ る。 慧 思 の 華 厳 と 法 華 に 対 す る 基 本 的 態 度 は ﹁随 自 意 三 昧 ﹂の 法 界 海 の 解 説 に 見 ら れ る の で あ つ て、 ﹁法 界 海 と は 凡 天 と 仏 と の 一 切 を 具 足 し て い る こ と で あ り 法 華 で は 本 末 究 寛 等 と 名 づ け る の で あ り こ れ は ま た 法 身 蔵 で も あ り 唯 だ 仏 と 仏 と の み 能 く こ れ を 知 る の で あ る。 こ れ ら の こ と に 関 し て 法 華 経 に は 総 説 さ れ て い る が 理 解 す る こ と が む ず か し い し か し 華 厳 経 の 中 に お い て は 分 別 さ れ て い る の で 理 解 し 易 ( 2) い。 ﹂と い う 態 度 で あ る。 こ こ に 述 べ ら れ て い る 点 か ら の み 考 え る な ら ば、 法 華 で ﹁本 末 究 寛 等 ﹂と 説 か れ る 諸 法 実 相 の 理 論 の 中 心 的 課 題 の 理 解 は 華 厳 に よ つ て 分 別 さ れ て い る と こ ろ の も の に よ つ て 易 し く 理 解 出 来 る の で あ る、 と 考 え て も 差 し つ か え な い と 思 わ れ る。 こ の ﹁随 自 意 三 昧 ﹂に 見 ら れ る 慧 思 の 理 解 を 智 顕 も 基 本 的 に 継 承 し て い る の で あ つ て、 彼 の 前 期 よ り 円 熟 期 に 移 る 分 岐 点 に 当 る 時 代 の 著 作 で あ る ﹁六 妙 門 ﹂に 次 の よ う に 述 べ ら れ る。 ﹁初 心 の 菩 薩 が 已 に 般 若 を 得 て 如 来 蔵 を 聞 き 真 の 法 身 を 顕 わ し 首 樗 厳 を 具 し 明 ら か に 仏 性 を 見、 大 浬 繋 に 住 し 法 華 三 昧 不 思 議 一 実 の 境 界 に 入 る と い う 広 説 す れ ば 華 厳 経 の 中 に 明 さ れ る 所 の 状 況、 こ れ を 初 地 と し 不 可 思 議 真 実 六 妙 門 を 証 す と す る の で あ り。 後 心 の 菩 薩 が 茶 字 門 に 入 り 一 念 相 応 の 慧 を 得 て 妙 覚 が 現 前 し、 窮 く 法 界 を 照 す、 こ れ が 究 寛 円 満 六 妙 門 で あ り 修 行 教 導 か ら 云 え ば 法 華 経 で は 唯 仏 与 仏 乃 能 究 尽 諸 法 実 相 と い い 極 す る 所 の 理 を も つ て 論 ず れ ば 法 界 円 通 し 諸 仏 菩 薩 の 所 証 の 法 門 は 始 終 不 二 で あ る、 華 厳 で は 初 地 よ り 悉 く 一 切 諸 地 の 功 徳 を( 3) 果 す、 と い い、 法 華 で は 如 是 本 末 究 寛 等 と い う の で あ る。 ﹂ こ の よ う に、 華 厳 と 法 華 へ の 智 顕 の 態 度 は 明 ら か に 慧 思 の 立 場 を 引 き 継 い で い る こ と が 理 解 出 来 る の で あ る。 し か し、 こ の よ う な 態 度 と い う も の は 一 方 経 典 と し て 一 一 の 価 値 位 置 を 定 め る 教 相 判 釈 に お い て は 矛 盾 が 生 じ て 来 る 訳 で あ つ て、 実 に ﹁法 華 玄 義 ﹂巻 十 判 教 に お い て は、 こ れ を い か に 克 服 す る か に 力 が 尽 さ れ て い る か の よ う に 見 ら れ る。 天 台 の 五 時 は、 如 来 の 教 説 が い か に 衆 生 を し て 如 来 の 悟 り に ま で 導 ぴ い て い こ う と し て い る か と い う 化 導 の 本 意 を 明 確 に し た も の で あ る。 従 来 の 五 時 教 に お い て は、 三 種 の 教 に よ つ て、 華 厳 経 を 頓 教 と し、 そ れ 以 外 を 漸 教 を 扱 う こ と を 前 提 と し た 部 判 釈 が 主 題 で あ つ た も の を、 教 の 部 と 教 の 相 と を 明 確 に す る こ と に よ つ て、 初 頓 後 漸 の 教 説 の 次 第 を 主 張 し、 五 味 を 教 判 に 用 い る こ と は、 濃 淡 優 劣 を 比 較 す る た め の も の で な く、 次 第 相 生 と い う 時 間 的 経 過 の 一 点 に し ぼ つ て 用 い、 華 厳 経 の 立 場 を 明 確 に し、 天 台 の 教 判 の 基 本 的 骨 格 が 成 り 立 つ て い る 訳 で あ る が、 究 極 的 に は ﹁般 若 の 後 に 華 厳 海 空 を 明 ら か に す る と い う こ と は 是 れ は 円 頓 法 華 教 で あ る。 ﹂と か ﹁般 若 の 次 に 華 厳 海 空 を 説 く の は 法 華 と 斉 し い。 ﹂と 述 べ ら れ、 華 厳 と 法 華 に 関 す る 基 本 的 態 度 に は 何 等 の 変 化 も 示 さ ( 4) れ て い な い の で あ る。 以 上 の 点 は 主 と し て 教 相 門 と 云 わ れ る 教 理 面 か ら、 華 厳 と 法 華 に つ い て の 関 り の 大 綱 を 見 た 訳 で あ る が、 い わ ゆ る 観 心 門、 摩 詞 止 観 を 中 心 と し た 観 法 の 面 か ら、 智 顕 の 華 厳 へ の 態 度 は ど う で あ る か と い う こ と を 眺 め た い。 天 台 の 止 観 法 門 の 中 心 を な す も の は、 十 乗 観 法 で あ る。 こ の 十 乗 観 法 は、 観 不 思 議 境、 起 慈 悲 心、 巧 安 止 観、 破 法 遍、 識 通 塞、 道 品 調 適、 助 道 対 治、 知 次 位、 能 安 忍、 無 法 愛、 の 十 観 法 か ら 成 り 立 つ て お り、 天 台 己 心 中 法 門 と し て、 古 来 よ り 天 台 の 独 創 で あ り、 他 の 追 随 を 許 さ ぬ 法 門 と し て 尊 重 さ れ て 来 て お り、 そ れ が 形 成 さ れ る に 至 つ た 諸 背 景 に つ い て 検 討 を 加 え る と い う 試 み は ほ と ん ど な さ れ な か つ た。 天 台 が 教 を 立 て る 時 の 基 本 的 態 度 は、 自 内 証 の 法 が 必 ず 何 等 か の 経 論 に よ つ て 証 拠 付 け ら れ な け れ ば な ら な い と す る も ( 5) の で あ る 以 上、 当 然、 こ の 十 乗 観 法 に お い て も、 形 成 し て い つ た 背 景 に は 確 固 と し た 経 論 の 支 持 が あ つ た は ず で あ る。 し か し、 天 台 の 思 索 的 進 展 を 知 る 手 係 り と な る 次 第 禅 門 ・ 小 止 観 ・ 六 妙 門 等 の 観 法 の 著 作 の 中 か ら は、 そ の 資 料 と な り 得 る も の が ほ と ん ど な く、 一 般 的 に、 思 想 が 円 熟 す る に 従 つ て 次 ( 6) 第 に 十 乗 観 法 の 形 を と つ て 来 た も の で あ ろ う と 推 定 さ れ る に 止 る の み で あ つ て、 ま た、 こ の 十 乗 観 法 の 各 々 の 名 称 に 非 常 に 独 創 的 呼 称 が 与 え ら れ て い る た め に、 こ の 名 称 を 追 つ て 他 の 典 籍 を 当 る と い う 作 業 も な か な か 成 果 を 挙 げ 得 な い 所 で あ 智 顕 の 観 法 と 華 厳 ( 多 田 ) 二 六 五
智 顕 の 観 法 と 華 厳 (多 田 ) 二 六 六 つ た。 し か る に、 こ の 十 乗 観 法 の 記 述 を 詳 細 に 検 討 し て み る と、 特 に 大 智 度 論 の 菩 薩 に 関 す る 解 説 の 中 か ら の 引 用 が 多 く、 助 道 対 治 な ど は、 そ の 内、 阿 稗 蹟 致 菩 薩 に 関 す る 解 説 に よ つ て そ の 内 客 が 決 定 付 け ら れ て い る こ と が 明 ら か に な つ た。 こ れ を 手 掛 り と し て、 菩 薩 に 関 す る 文 献 を 調 査 す る と 意 外 に も、 十 乗 観 法 が 十 地 の 構 成 と 非 常 に 類 似 し て い る こ と が 明 ら か に な る の で あ る。 こ こ で は、 助 道 対 治 の 一 項 に つ い て、 そ の 重 要 な 点 を 指 摘 し、 智 顕 の 観 法 と 華 厳 と の 関 係 に つ い て 述 べ る こ と に す る。 十 乗 観 法 の 第 七 助 道 対 治 に お け る 記 述 を 詳 細 に 検 討 し て み る と、 大 智 度 論 の 引 用 文 と 対 治 助 道 の 名 称 に 類 似 を 認 め る こ と が 出 来 る。 ﹁第 七 助 道 対 治 者 釈 論 云 三 三 昧 為 一 切 三 昧 作 本 也 若 入 三 三 昧 能 成 四 種 三 味 根 利 無 遮 易 入 清 涼 池⋮⋮、 応 須 治 道 対 破 遮 障 ( 7) 則 得 安 隠 入 三 解 脱 門 大 論 称 諸 対 治 是 助 開 門 法。 ﹂ と 述 べ ら れ る 所 で あ る。 こ れ は 大 智 度 論 の ﹁何 以 故 次 三 十 七 品 後 説 八 種 法、 答 日 三 十 七 品 是 趣 浬 繋 道 行 是 道 已 得 到 浬 架 城 浬 契 城 有 三 門 所 謂 空 無 相 無 作 已 説 道 ( 8) 次 応 説 到 処 門 四 禅 等 是 助 開 門 法。 ﹂ に 当 る も の と 思 わ れ る。 こ こ に 見 ら れ る ﹁助 開 門 法 ﹂が 助 道 対 治 の 名 称 付 け の 根 拠 と な つ た も の で あ ろ う。 智 顕 は こ の 助 道 を 道 品 ・ 六 度 を も つ て あ て て お り、 助 道 対 治 と は 具 体 的 に は、 六 度 を 助 道 と し て、 三 解 脱 門 に 入 る こ と を 云 う の で あ る。 大 智 度 論 で は、 こ の 六 度 と 三 三 昧 と の 関 係 に つ い て、 次 の よ う に 云 は れ る。 ﹁間 日 云 何 為 頂 堕 答 日 如 須 菩 提 語 舎 利 弗 若 菩 薩 摩 詞 薩 無 方 便 心 行 六 波 羅 蜜 入 空 無 相 無 作 中 不 能 上 菩 薩 位 亦 不 堕 声 聞 辟 支 仏 地 愛 著 諸 功 徳 法 於 五 衆 無 常 苦 空 無 我 取 相 心 著 言 是 道 ( 9) 是 非 道 是 応 行 是 不 応 行 如 是 等 取 相 分 別 是 菩 薩 頂 堕。 ﹂ す な は ち、 菩 薩 が、 方 便 心 を 持 た ず に 六 波 羅 蜜 を 行 じ、 三 三 昧 に 入 る と、 菩 薩 位 に 上 る こ と も、 二 乗 地 に も 堕 す こ も な い。 こ れ を 頂 堕 と い う の で あ る。 こ の 説 は ﹁入 菩 薩 法 位 力 故 得 名 阿 碑 蹟 致 菩 薩 復 次 菩 薩 摩 詞 薩 入 是 法 位 中 不 復 堕 凡 夫 数 名 為 得 道 人 一 切 世 間 事 欲 壊 其 心 不 能 令 動 閉 三 悪 趣 門 堕 諸 菩 薩 数 中 初 生 菩 薩 家 智 慧 清 浄 成 熟 復 次 住 頂 不 堕 是 名 菩 薩 法 位 如 学 品 中 説 上 位 菩 薩 不 堕 悪 趣 不 ( 10) 生 下 賎 家 不 堕 声 聞 辟 支 仏 亦 不 従 頂 堕。 ﹂ と、 阿 韓 践 致 菩 薩 に 関 し て の 記 述 に 続 く も の で あ つ て、 阿 稗 践 致 菩 薩 は、 不 従 頂 堕 で あ る と い う に 対 し て、 そ の 頂 堕 の 内 容 を 示 し た の で あ る。 そ う す る と、 阿 韓 蹟 致 菩 薩 は 一 面、 方 便 心 を 持 ち、 六 波 羅 蜜 を 行 じ、 三 三 昧 に 入 る も の で あ る、 と 規 定 す る こ と も 出 来 る 訳 で あ る。 大 智 度 論 の こ の 阿 韓 蹟 致 菩 薩 の 解 説 の 部 分 に は、 こ の 項 堕
の 説 明 に 続 い て 頂 住 の 説 明 が な さ れ て お り、 そ こ で は、 ( 11) ﹁何 等 是 住 頂 如 上 所 説 諸 法 愛 断 於 愛 断 法 亦 復 不 取。 ﹂ と、 法 愛 断 に つ い て も 述 べ ら れ て お り、 十 乗 観 法 第 十 無 法 愛 を 暗 示 す る 非 常 に 興 味 深 い 記 述 も 見 ら れ る の で あ る、 般 若 経 典 に は、 四 種 菩 薩 の 階 位 と 共 の 十 地、 不 共 の 十 地 と が あ る と い わ れ る、 こ の 内、 四 種 の 菩 薩 は、 大 品 般 若 経 で は、 初 発 意 ・ 久 発 意 ・ 阿 惟 越 致 ( 阿 鞍 蹟 致 ) ・ 一 生 補 処 菩 薩 で あ り、 こ の 四 種 と 不 共 十 地 と の 融 合 が 試 み ら れ、 十 住 で 見 れ ば、 第 一 初 発 心 菩 薩 ・ 第 二 新 学 菩 薩 ・ 第 七 不 退 転 菩 薩 ・ 第 十 ( 12) 灌 頂 菩 薩 法 住 の 四 位 が、 四 種 菩 薩 に 相 当 す る と さ れ る。 ま た、 十 住 と 十 地 と の 間 に は 密 接 な 関 係 が あ る こ と は す で ( 13) に 指 摘 さ れ た 通 り で あ る。 こ の よ う に 見 ら れ る な ら ば、 十 乗 観 法 の 第 七 助 道 対 治 三 三 昧 ・ 六 度 I I 阿 稗 蹟 致 菩 薩 -十 住 の 第 七 住 -十 地 第 七 地、 と 一 連 の 関 連 を 以 て 検 討 す る 必 要 が 生 じ る の は 当 然 で あ ろ う。 天 台 当 時、 こ れ ら 十 住 十 地 に 関 し て 一 般 的 な 経 論 は、 仏 陀 蹟 陀 羅 訳 大 方 広 仏 華 厳 経 と、 地 論 宗 の 典 拠 と な つ た 菩 提 流 支 訳 十 地 経 論、 及 び 菩 薩 曖 路 本 業 経 で あ ろ う。 特 に 天 台 が 常 に 依 用 し た 華 厳 経 を 中 心 と し て 検 討 を 進 め た い。 華 厳 経 十 地 品 の 第 七 遠 行 地 は ﹁菩 薩 摩 詞 薩 已 具 足 第 六 地 欲 入 第 七 地 従 方 便 慧 起 十 妙 行 何 等 為 十 善 修 空 無 相 無 願 而 以 慈 悲 心 処 在 衆 生 随 諸 仏 平 等 法 而 不 捨 供 養 諸 仏⋮⋮ ( 14) 修 此 妙 行 如 是 方 便 慧 現 前 故 名 為 入 七 地 是 菩 薩 住 七 地。 ﹂ 方 便 慧 よ り 十 妙 行 を 起 す、 そ の 第 一 は 空、 無 相 無、 願 の 三 三 昧 を 修 し、 慈 悲 心 を 以 て 衆 生 に 処 在 し、 諸 仏 の 平 等 法 に 随 つ て 諸 仏 を 供 養 す る、 と 説 か れ、 そ の 行 の 第 一 に 空 ・ 無 相 ・ 無 願 の 三 三 昧 を 修 す る こ と が 基 本 的 行 と な つ て い る の で あ る。 ま た ﹁常 起 種 種 度 衆 生 道 無 有 障 畷 行 住 坐 臥 皆 悉 能 起 度 衆 生 法 離 諸 陰 蓋 住 諸 威 儀 常 不 遠 離 如 是 想 念 是 菩 薩 於 念 念 中 具 足 ( 15) 十 波 羅 蜜 及 十 地 行。 ﹂ と、 十 波 羅 蜜 の 行 が 強 調 さ れ る の で あ り、 ﹁是 菩 薩 具 足 十 波 羅 蜜 時 四 摂 法 三 十 七 品 三 解 脱 門 一 切 助 ( 16) 阿 褥 多 羅 三 貌 三 菩 提 法 於 念 念 中 皆 悉 具 足。 ﹂ と、 十 波 羅 蜜 が 具 足 さ れ る 時 に は、 一 切 の 菩 提 を 助 く る 法 が 皆 具 さ れ る と 説 か れ て い る。 こ の よ う に、 六 波 羅 蜜 の 相 違 こ そ あ れ、 遠 行 地 の 記 述 は、 助 道 対 治 と 共 通 し た 内 客 を も つ も の で あ る こ と は 否 定 出 来 な い で あ ろ う。 以 上 を 手 係 り と し て、 十 乗 観 法 の 一 一 を 華 厳 経 の 十 住 十 地 の 記 述 と 対 称 す る と 明 ら か に こ れ ら は 資 料 的 に 関 連 性 を 指 摘 す る こ と が 出 来 る の で あ る。 智 顕 の 観 法 と 華 厳 ( 多 田 ) 二 六 七
智 顎 の 観 法 と 華 厳 (多 田 ) 二 六 八 法 華 玄 義 門 十 妙 の 内 位 妙 の 項 に お い て 円 教 の 十 住 位 が 述 べ ら れ て い る。 ﹁明 十 住 位⋮⋮挙 要 言 之 一、 即 是 住 三 徳 一 切 仏 法 也。 二、 又 住 清 浄 円 満 菩 提 心 無 縁 慈 悲 無 作 誓 願 普 覆 法 界。 三、 又 住 一 念 中 成 就 一 切 万 行 諸 波 羅 蜜。 四、 又 住 一 切 種 智 円 断 法 界 見 思 無 明。 五、 又 住 得 仏 眼 円 見 十 法 界 三 諦 之 法。 六、 又 住 円 入 一 切 法 門 所 謂 二 十 五 三 昧 冥 益 衆 生。 七、 又 成 就 菩 薩 円 満 業 能 顕 一 切 神 通 謂 三 輪 不 思 議 化 弥 満 法 界 顕 益 衆 生。 八、 又 能 成 就 開 権 顕 実 入 一 乗 道。 九、 又 能 厳 浄 一 切 仏 土 能 起 三 業 供 養 一 切 十 方 仏 得 円 満 陀 羅 尼 受 持 一 切 仏 法 如 雲 持 雨。 十、 又 住 能 従 一 地 具 足 一 切 諸 地 功 徳 心 心 寂 滅 自 然 流 入 薩 婆 若 ( 17) 海。 ﹂ こ れ は 円 教 の 行 位 に 関 し て 述 べ ら れ て い る も の で あ る が、 荊 渓 湛 然 は こ れ の 一 か ら 十 ま で を 各 々 十 乗 観 法 の 一 か ら 十 ま で と 対 応 さ せ て 註 を 附 し て い る。 十 住 と 十 乗 観 法 の 関 連 に つ い て 指 摘 さ れ て い る 唯 一 の も の で あ る が、 た だ 単 に 指 摘 の み ( 18) で あ つ て、 そ れ 以 上 の 解 説 は な く、 以 後 の 学 者 は こ れ に 関 し て 言 及 し て い な い の で あ る。 し か し 例 え ば、 十 住 位 の 七 番 目 の 記 述 は、 華 厳 経 十 地 品 の 第 七 地 の 経 文 の 枢 要 を 挙 げ た も の で あ る こ と も 明 瞭 な の で あ る。 止 観 の 最 重 要 観 法 を な し て い る 十 乗 観 法 は 華 厳 十 地 の 構 造 を 充 分 に 活 用 し、 天 台 独 特 の 観 法 と し て 見 直 し た も の で あ り、 十 地 の 構 造 を そ の ま ま 観 法 に 移 し 変 え た も の が 十 乗 観 法 で あ る と い う こ と が 出 来 る の で あ り、 前 述 し た 慧 思 か ら の 継 承 が 観 門 に お い て も 続 い て い る と 云 う こ と が 出 来 る の で あ る。 1 法 華 玄 義 二 上、 大 正 33・693・a。 2 随 自 意 三 昧 卍 続 蔵 二 -三 -四、 三 五 三、 右 上。 3 六 妙 門 大 正 46・555・b-c。 4 天 台 の 教 判 に 扱 わ れ た 南 三 北 七 大 正 大 学 研 究 紀 要 六 十 三、 多 田 孝 文 稿 参 照。 5 法 華 玄 義 十 上、 大 正 33・800・a。 6 関 口 真 大 著 ﹁天 台 止 観 の 研 究 ﹂参 照。 7 摩 詞 止 観 七 上、 大 正 34 ・ 91 ・ a。 8 大 智 度 論 二 十 ・ 大 正 25・206・a。 9 大 智 度 論 二 七 ・ 大 正 25・262・b。 10 大 智 度 論 二 七 ・ 大 正 25・262・b。 11 同 二 七 ・ 大 正 25・262・b。 12 平 川 彰 著 ﹁初 期 大 乗 仏 教 の 成 立 ﹂285頁。 13 神 林 隆 浄 著 ﹁菩 薩 思 想 の 研 究 ﹂、 山 田 龍 城 著 ﹁大 乗 仏 教 成 立 史 論 序 説 ﹂。 14 大 方 広 仏 華 厳 経 ・ 仏 陀 蹟 陀 羅 訳 二 五、 大 正9・561・a。 15 同 二 五、 大 正9・561・b。 16 同 二 五、 大 正9・561・c。 17 法 華 玄 義 五 上 ﹁大 正 33・734・a-b ( 数 字 は 筆 者 挿 入 )。 18 法 華 玄 義 釈 籔 五 上 ・ 大 正 33・889・b-c。