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Vol.67 , No.2(2019)034小笠原 亜矢里「『観仏三昧海経』と華厳経類の関係について――「雑華」の文言を中心として――」

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Academic year: 2021

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全文

(1)

― 714 ― 印度學佛敎學硏究第六十七巻第二号   平成三十一年三月 一九四

﹃観仏三昧海経﹄

と華厳経類の関係について

﹁雑華﹂

の文言を中心として

はじめに

﹃観 仏 三 昧 海 経﹄ ︵以 下 本 経︶ は、 長 い 間、 五 世 紀 の 仏 駄 跋 陀羅訳として入蔵されてきた経典であるが、これまでの先行 研究等により、今日では、恐らくは疑経であろうとされてい る観仏経典の一つである。 本経の編纂に於いて大きな影響を及ぼしたとされる経典類 や 思 想 は、 禅 観 経 類 を 中 心 と し て 幾 つ か 挙 げ ら れ て い る が、 華厳経類についても、放光源としての白毫相の重視、五十六 相に顕される無量相好や蓮華蔵光明世界の教説から、その影 響と思われる箇所が随所にみられる。 そ こ で、 本 稿 に 於 い て は、 本 経 に 説 か れ る 三 箇 所 の﹁雑 華﹂の文言を中心として、華厳経類との具体的な関連性を考 察していくものとする。

  ﹁如雑華説﹂

について①

﹁雑華経﹂の文言は、 ﹃涅槃経﹄や本経などに特徴的な文言 となっており、本経が﹃涅槃経﹄の影響下にあったと思われ る 点 1 、 ま た、 法 蔵 も 本 経 を 引 い て﹁依 二 槃 經 及 觀 佛 三 昧 經 一 名、此經爲 二雜華 經 2 一。﹂ としている点で、 ﹁雑華﹂ は両経に共 通して ﹁華厳﹂ と見做すことが可能と思われる。 本 経 に 於 け る 最 初 の﹁如 雑 華 説﹂ は、 ﹁観 相 品﹂ 第 三 に 於 いて以下のように説かれる。 如 是種種雜色、名爲 二常光 一。名 二適意光。亦名隨諸衆生所樂見光。 亦 名 施 衆 生 眼 光。 此 光 一 尋 其 相 衆 多。 瞿 師 羅 觀 佛、 此 光 隨 小。 乃至他方諸大菩、觀 佛之時此光隨 大。如 二 雜華 説 3 一。 こ の 文 言 は 、 従 来 、 瞿 師 羅 長 者 の 譬 え か ら 、﹃ 涅 槃 経 ﹄ に 拠 る と い っ た 指 摘 4 を 受 け て い る が 、 後 代 の 澄 観 の 著 述 5 の よ う に ﹃ 華 厳 経 ﹄﹁ 十 定 品 ﹂ 系 に 於 い て も 、 関 連 性 の 指 摘 が 可 能 で あ る 。

(2)

― 715 ― 一九五 ﹃観仏三昧海経﹄と華厳経類の関係について︵小笠原︶ しかし本経の﹁如雑華説﹂はあくまで光明について説かれ たものであり、その点では両者に於いては直接的な引用らし き 形 は 認 め ら れ ず、 む し ろ﹁常 光﹂ 及 び、 幾 つ か の 亦 名 や ﹁此 光 一 尋﹂ な ど は﹃大 智 度 論﹄ の 光 明 釋 論 に 近 似 し た も の となってい る 6 。 ﹃大 智 度 論﹄ と﹃華 厳 経﹄ に 於 け る 光 明 釋 と の 関 係 性 に つ い て は 先 行 研 究 で 既 に 論 じ ら れ て お り 7 、﹁十 定 品﹂ 系 の 当 該 箇所に於ける解釈についても、この関係性でみていくことも 可能と考えられるが、その場合、どの﹁十定品﹂系が関与し ているかが問題となってくる。 年代的に、少なくとも漢訳﹃八十華厳﹄ではなく、竺法護 訳﹃等 目 菩 所 問 三 昧 経﹄ 、 ま た は 別 の﹁十 定 品﹂ 系 が 含 ま れ た 大 本 の 可 能 性 も 挙 げ ら れ る が、 ﹃華 厳 経﹄ の 成 立 史 の 問 題 上、 確 か な こ と は わ か ら な い。 し か し、 も し も こ の 教 説 が、 ﹁十 定 品﹂ 系 を 典 拠 と し て 説 か れ て い る の な ら ば、 所 依 となった華厳経類は少なくとも﹁十定品﹂が欠落した﹃六十 華厳﹄とは考えにくい為、複数の経録にある仏駄跋陀羅訳出 の信憑性は更に薄れることにもなる。

  ﹁如雑華説﹂

について②

次 の﹁如 雑 華 説﹂ で あ る が、 こ れ は 本 経﹁観 四 無 量 心 品﹂ 第五にある文言であり、慈悲喜捨の観察の後に以下のように 説かれる。 佛 心 者 是 六 念 心。 因 二 六 和 敬 一 得 二 此 法 一。 欲 二 佛 道 一 當 學 二 佛 心 一。 説 二 是 語 一 已、 如 來 身 光 倍 更 明 顯。 佛 身 化 佛 及 寶 蓮 華 數 不 可 知。 一一華光如 二雜華 説 8 一。 四 無 量 心 の 教 説 後 に﹁如 雑 華 説﹂ と あ り、 ① 同 様﹃華 厳 経﹄ か ら の 教 説 の 引 用 無 し に こ の 文 言 で 終 わ る 形 は、 ﹃涅 槃 経﹄ ﹁梵 行 品﹂ と 同 じ 形 と な っ て お り 9 、 ② に お い て も﹃涅 槃 経﹄ の 影 響 が 考 え ら れ る。 し か し、 本 経 と の 大 き な 違 い は、 ﹁六和敬﹂ の文言の有無である。 六念・六和敬は、本経に於いては﹁観四威儀品﹂第六にお いても再び説かれるが、この二つが同時に説かれる経典はあ ま り 多 く は な く、 同 じ 六 観 経 で、 本 経 と 近 い 関 係 と さ れ る ﹃觀薬王薬上二菩経﹄ の他は、 ﹃大方等大集経﹄ または、 ﹃維 摩詰所説経﹄等でみられ、肝心の﹃涅槃経﹄では説かれてお らず、年代的、内容的にも本経と直接関係する可能性が高い のは ﹃華厳経﹄ ﹁離世間品﹂ に於ける以下の教説とな る 10 。 自 然 成 二 就 佛 法 器 一故、 安 二 住 念 慧 一 捨 二 覺 一。 除 二 滅 亂 想 一、 修 習 二六念 一、行 二六和敬 求 二其報 一。是第三智 具 11 。 ﹁離世間品﹂は、普賢菩の一一の行を、 ﹁二千の法行﹂と し て 開 く も の で あ る が、 ﹁二 千 の 法 行﹂ 中、 四 無 量 心 が 説 か れた後に、 この教説が説かれる。

(3)

― 716 ― 一九六 ﹃観仏三昧海経﹄と華厳経類の関係について︵小笠原︶ 四無量心、六念・六和敬と説かれる②は、教説自体は﹁離 世間品﹂と共通し、また、ここでも①と同様、光明釋論によ る ﹁身光﹂ を通じて ﹁雑華﹂ を説く形となっている。

  ﹁於雑華経﹂

﹁十蓮華蔵世界海微塵数大人相﹂

最 後 の﹃本 行 品﹄ 第 八 の﹁於 雑 華 経﹂ の 文 言 で あ る が、 ﹃本 行 品﹄ は 本 経 の 後 半 に あ た り、 前 半 よ り も や や 遅 い 編 纂 とされてい る 12 。更に、①とは対照的に、 ﹁摩伽陀國寂滅道場﹂ とあるところから、 ﹃六十華厳﹄ との関連性が指摘できる。 諸 妙 相 好 佛 寶 相 好、 我 初成 -二 摩 伽 陀 國 寂 滅 道 場 一、 爲 二 賢 賢 首 等 諸大菩 一。於 二雜華經已廣分別。此尊法中所以 説 13 一。 ﹃六 十 華 厳﹄ の 寂 滅 道 場 会﹁世 間 浄 眼 品﹂ に 於 い て は、 相 好は﹁相好光明照十方﹂及び﹁不能思議佛功徳﹂とあ り 14 、本 経 で も 光 明 照 十 方 の 観 察 と 功 徳 の 不 可 説 は 繰 り 返 し 説 か れ る。 また、 ﹃六十華厳﹄の相好は、 ﹁如来相海品﹂に別立として 説 か れ る が、 こ こ で は 色 身 相 好 を 中 心 と す る 相 好 で は な い 為、観察の為の一一の色身相好を説く本経五十六相との直接 の関連性を見出すのは難しい。 しかし、 ﹁如来相海品﹂の結語、 ﹁佛身の中には是の如き等 十蓮華藏世界海微塵數佛大人相有り。諸支節に於いて種種の 妙寶を以て荘厳を為 す 15 ﹂は、本経③の雑華経中に於いて分別 さ れ る﹁諸 妙 相 好 佛 寶 相 好﹂ と 共 通 し、 更 に 本 経 に 於 い て は、 本 来 は﹁如 來 に 無 量 相 好 有 り 16 ﹂ と さ れ る と こ ろ か ら も、 両者に矛盾はみられないことがわかる。

おわりに

本 経 に お け る﹁如 雑 華 説﹂ は、 従 来 か ら の 指 摘 の よ う に ﹃涅 槃 経﹄ か ら の 影 響 も 否 定 は で き な い が、 教 説 の 内 容 自 体 は、 直 接 華 厳 経 類 に 準 ず る と 思 わ れ る 箇 所 も 存 在 し、 ﹃大 智 度論﹄にもとづく光明釋と共に説かれているといった可能性 がある。 追加分とされる後半﹁本行品﹂の﹁於雑華経﹂は、無量相 好として﹃六十華厳﹄の教説に従い華厳経類との近似的な関 連性を認めることができるが、これをもって前半の原形部分 も同じような関係性にあると見做すことは難しい。 こ の よ う に、 本 経 と 華 厳 経 類 と の 具 体 的 な 関 係 性 は、 ﹁雑 華﹂の文言だけでは、部分的な関係に留まる可能性が否定で きない。従って、両者のより具体的な関係性は、特に本経の 中心を為す前半に於ける内容的な面、及び光明釋の観点から の更なる検討の必要があるものと思われる。 1   Y amabe [ 1999: 245–257 ]。

(4)

― 717 ― 一九七 ﹃観仏三昧海経﹄と華厳経類の関係について︵小笠原︶  2大正 三五・一二一頁上。 3   大正 一五・六六〇頁上。 4   月輪 [一九七一] 七五頁他参照。 5   大正 三六・一八四頁下及び二一五頁。 6   大正 二五・一一四頁。 7   主 [一九六八]参照。 8   大正 一五・六七五頁上。 9   大正 一二・四九三頁中他。 10   ﹃ 大 集 経 ﹄ に 於 い て は 法 数 六 と し て の扱 い 、﹃ 維 摩 経 ﹄ に 於 い て は 相 好 観 察 や 光 明 重 視 と い っ た 本 経 の 教 説 と の 違 い が み ら れ る 。 11   大正九・六六二頁上、 ﹃八十華厳﹄ では ﹁六敬﹂ となっている。 12   色井 [一九六五] 二二七頁参照。 13   大正 一五・六八七頁中。 14   大正九・ 三九七頁中。 15   大正九・ 六〇五頁上。 16   大正 一五・六五五頁中。 ︿参考文献﹀ Y amabe Nob uy oshi . 1999 . The S

utra on the Ocean-Like S

amadhi of the V isualization of the Buddha: The Interfusion of the Chinese and Indian Cultures in Central Asia as Reflected in a Fifth Century Apocryphal Sutra. Ph .D . Dissertation, Y ale U niversity . 色 井 秀 譲﹁観 仏 三 昧 海 経 と 無 量 寿 経﹂ ﹃印 度 学 仏 教 学 研 究﹄ 第 一三巻第一号、一九六五 月輪賢隆﹃仏典の批判的研究﹄百華園、一九七一 主 良 敬﹁華 厳 に お け る 佛 の 光 明 に つ い て﹂ ︵上︶ ﹃仏 教 学 セ ミ ナー﹄第五号、一九六七 ︿キーワード﹀ 観仏三昧、雑華、華厳経、六観経 ︵武蔵野大学大学院︶

参照

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