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中国人学生の日本語学習における問題点について

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中国人学生の日本語学習における問題点について

ま え が き 一九八七年九月から八八年七月までの約一年聞における 上海外国語学院での中国人学生に対する日本語教育の経験 にもとづき、かれらの日本語学習において如何なる困難点 が存在するかを、初学段階の発音と作文、および中級段階 の 作 文 教 育 の 観 点 か ら 考 察 し た 。 て初学段階における発音上の困難性とその指導法にお いては、初めて日本語を学ぶ学生の発音が出身の省によっ て難易の差のあることに着目し、有効な練習法について述 べ る 。 二、初級学習者の作文における誤用の集約とその分析の 試み、では学習を始めて三ヵ月目に童聞かせた作文と五ヵ月 後の宿題の手紙のなかに見られる誤用を集約して、若干の 分 析 を 試 み た 。 三、中級学習者の作文に見られる用語の母国語による干 渉について、では学習歴八年程度の学生の課題作文ならび に自由日記のなかから探語を使用する中国語が母国語であ るが故に生じたと考えられる誤りを集約して、その原因に

つ い て の 考 察 を も 試 み た 。 四、むすびにおいては、初級学習者と中級学習者との、 学習状態の比較を試み、中国人に対する日本語教育が日本 人によっておこなわれる場合に見られる効果に触れる。 て初学段階における発音上の困難性とその指導法 ひらがなの五十音図の発音を﹁あ行﹂から練習させるさ い 、 ﹁ ら 行 ﹂ と ﹁ た 行 ﹂ ﹁ だ 行 ﹂ の 発 音 が う ま く で き な い 学 生 が 若 干 い た 。 ﹁ た ﹂ の 発 音 が ど う し て も ﹁ だ ﹂ と な っ て し まう。中国語で最も頻繁に使用される﹁的﹂による干渉と 当然考えられるが、出身の地域によって学生に発音の難易 度に差異があることも認められた。たとえば上海出身の学 生は、上海語の発音が日本語の発音に近いこともあるよう で 、 う ま く 発 音 で き る 。 ﹁ 謝 謝 忽 ﹂ と い う 双 語 に 対 し て 上 海 語での発音は﹁シャシャノン﹂で通用するが如くである。 担当した初級のクラスの学生の出身地は上海市 2 名、四 川 省 2 名、安徽省 2 名、漸江省 2 名、河南省、山東省、湖 北省、江蘇省、甘粛省各

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名の計日名︵女性 8 名、男性 5

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-14-名︶だった。とくに山東省出身の男子学生に発音の困難性 がみられた。かれの場合は﹁ら行﹂にも困難性があって ﹁あります﹂の﹁り﹂がうまくできなかった。ちなみにこ の学生だけが中学で英語を学ばずロシア語を学んできてい た。それとの関連はよくわからない。﹁た﹂を﹁だ﹂と発音 する誤りはとくに湖北省出身の女子学生の場合に著しく、 四ヵ月位かかってようやくできるようになった。﹁た行﹂ を﹁だ行﹂に発音する清濁の問題は、十分に長い期間日本 語を学習して、実際に講義などで使用している学者︵日本 語専門の教師を除き︶においても一般に広く見られるとこ ろで、たとえば﹁私ノダントウ︵担当︶ハ﹂とか﹁:::ニ ヅイテ︵についてどという例もある位である。 前記山東省出身の男子学生の場合、個人指導によって ﹁ ハ ラ ハ ラ ﹂ ﹁ ヒ ラ ヒ ラ ﹂ ﹁ フ ラ フ ラ ﹂ ﹁ へ ラ ヘ ラ ﹂ ﹁ ホ ラ ホ ラ﹂という発音を使用情況も説明しながら繰返し練習させ ることによって克服することができた。もう一つの方法は 教科書︵後述︶の会話文体で﹁本ガソコニアリマス﹂﹁コレ ハイクラデスカ﹂など具体的な使用例を使って練習させた。 これは湖北省出身の女子学生の場合にも当てはまる。 かの女の場合の﹁た﹂の﹁だ﹂への誤用は、教科書のな か の 単 語 ﹁ フ デ ﹂ ﹁ ダ ク オ ン ﹂ ﹁ ヒ キ ダ シ ﹂ ﹁ デ ン ワ ﹂ と 比 較 ・ 区 別 さ せ な が ら ﹁ タ チ ウ オ ﹂ ﹁ タ オ ル ﹂ ﹁ ハ タ キ ﹂ ﹁ ワ タ ﹂ など練習させた。とくに﹁ハタ﹂と﹁ハダ﹂、﹁タンゴ﹂と ﹁ダンゴ﹂というふうに対照区別することは効果があった。 このさい効果のあがるやり方として使用教科書︵上海外 国語学院日語教研室編﹃日本語︵にほんご︶﹄第一冊︶の ﹁ 清 旗 音 対 比 妹 升 ﹂ ︵

M

i

m

ペ l ジ︶に負うところ大であ る。あし︵脚︶||あじ︵味道︶くつ︵鮭︶||くず ︵砕決︶いと︵銭

ul

−−いど︵井︶おさけ︵酒︶|| おさげ︵支桝︶はし︵慎子︶ーーはじ︵恥辱︶おかず ︵ 菜 ︶ | | l おかす︵犯︶ガラス︵破璃︶ l i p からす︵島 菊︶しんしつ︵寝室︶||しんじつ︵真実︶かんじ ︵双字﹀||かんし︵沃詩︶よくしつ︵浴室︶||よく じつ︵次日﹀かぞく︵家属︶||かそく︵加速﹀こし ︵ 腰 ︶ | | こ じ ︵ 孤 ん ︶ な ど で あ る 。 次に同教科書の﹁長短音対比掠刃﹂︵鈎

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却 ペ l ジ ︶ が 発 音練習に大いに役立った。 くつ︵鮭︶||くつう︵痛苦︶おかし︵点心︶|!お かしい︵可笑的︶へや︵房間︶||へいや︵平原︶ご ぜん︵上午︶||ごうぜん︵衰然︶ベル︵を特︶|| ベ l ル︵面妙︶いえ︵一房子︶||いいえ︵不︶おばさ ん ︵ 阿 摸 ︶ l ||おばあさん︿何伯︶ピル︵大楼︶|| ビ l ル︵埠酒︶ちず︵地図︶||チ l ズ ︵ 干 酪 ︶ お じ さん︵叔叔︶||おじいさん︵谷労︶など。 先に述べた清音と濁音の誤用は、韓国・朝鮮人の日本 語使用のさいの特徴的なものとして通例あげられるところ であるが、中国人の日本語学習にも必ずついてまわる誤用 として認められる。この誤用は、作文の場合になると、右 二例の学生にとどまらず、他の学生においても全般的な誤 用の例として挙げなければならない。以下作文における誤 戸 h d 唱 E E 4

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用 誤 字 の 問 題 へ と 移 る 。 二、初級学習者の作文における誤用の集約 −清濁音の誤用の例︵[]内は訂正したもの︶ O 三 日 過 し で [ て ] い ま し た 。 0 私達は一一年の時まだ[また]松下先生に教わりたいと思 い ま す 。 O 彼はまだ[また]親切でおもしろいです。

o

電 車 で 家 へ 帰 つ で [ て ] ・ O ひまを利用しで[して]: 00 さ ん は 私 を 希 望 し で [ し て ] ・ O 後時先生を希望しで[して]:::︵この二例については 後 か ら も 述 べ る ︶ O い ろ い ろ な 物 を 食 べ で [ て ︺ O わたしは長い間考えで︹て]、どうしても考えてきませ ん ︹ 考 え る こ と が で き ま せ ん ] 。 0 い ま ち ょ う と [ ど ] 朝 の 九 時 で す 。 O 今日とても寒いでしょう[今日はとても寒いでしょう]。 O パ l J ア[パーティ] 2 助詞の誤用の例 ①﹁の﹂の誤用 O 歴史が古いの城[歴史の古い城] O 冬休みの中で[冬休み中に] O 毎週の月曜から土曜まで[毎週月曜から土曜まで] O いろいろの答え︹いろいろな答え] O 私も遠いの所||四川省から来ました門私も遠い所|| 四 川 省 か ら 来 ま し た ] 0 旧正月は毎年の一番祝日です[旧正月は毎年一番の祝日 で す ] 0 私たちのはじめの日本語先生です[私たちのはじめての 日 本 語 の 先 生 で す ] O 私の日本語の勉強のはじまった時[私の日本語の勉強が は じ ま っ た 時 ] O 時々夢の時に見て︹時々夢を見て] 0 日本語の習ってのは四ヵ月しかありません[日本語を 習って四ヵ月しかなりません︺ O もう九小月間の先生に教わるので[もう九ヵ月間も先生 に 教 わ る の で ] O 中の松下先生は日本人の先生です︹その中で松下先生は 日 本 人 の 先 生 で す ] O 私は書きたいのはたくさんあります[私は書きたいこと が た く さ ん あ り ま す ] ②その他の助詞

o

今日は今学期に最後の授業です[今日は今学期︵の︶最 後 の 授 業 で す ] 。 O 勉強して早くまで上手になりたいです[勉強して早く上 手 に な り た い で す ] 。 O 私はある日に日本で先生に訪ねる時[私はいつか日本で 先 生 を 訪 ね る 時 ︺ : O 先生私に笑わない方がいいと考えます[先生私を笑わな a u 唱E 4

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い 方 が い い と 思 い ま す ] 。 O 私は妹と二人はあまり疲れないでしたけれど[私と妹の 一 一 人 は あ ま り 疲 れ ま せ ん で し た け れ ど ︺ : : : O 物理先生の家を[物理の先生の家を]・ O 私はいい先生がいます︹私にはいい先生があります]。 O 夏のとき太湖の近くきっと楽しいです[夏には太湖の近 く は き っ と 楽 し い で す ] 。 0 たくさんな問題をききました[たくさんの問題をたずね ま し た ] 。 O バナナやお菓子や持って来ました[バナナやお菓子を 持 っ て 来 ま し た ] 。 O 私たちに食べました[私たちは食べました]。 0 ある日に先生が病気だ、私たち七人は先生のところにお 見 舞 い に 行 き ま し た 門 あ る 日 先 生 が 病 気 で 、 : : : ] 。 O 遠足に行ったこと話しました[遠足に行ったことを話し ま し た ] 。 0 一か所とこか所まちがえます[一か所か二か所まちがえ ま す ] 。 O 先生の最初の自分を紹介した時わたしはいろいろ先生を 知っていました[先生が最初に自己紹介した時わたしはい ろ い ろ 先 生 の こ と を す で に 知 っ て い ま し た ] 。 O 先生のわたしたちを見方は正確です[先生のわたしたち の 見 方 は 正 確 で す ] 。 O 早く先生を会いたいです[早く先生と会いたいです]。 O 私は日本語で中国語で手紙を一枚ずつ書きました[私は 日 本 語 と 中 国 語 で 手 紙 を 一 枚 、 ず つ 書 き ま し た ] 。 O 松下先生と季先生よく日本語で私たちと日本語の会話を 練習します[松下先生や季先生と私たちはよく日本語で会 話 の 練 習 を し ま す ︺ 。 O 松下先生は、私が、第一の日本人をあいました︹松下先 生 は 私 が は じ め で あ っ た 日 本 人 で す ] 。 O いい先生は私たちを教えます[いい先生が私たちを教え ま す ︺ 。 0 私たちは先生が二人あります[私たちには先生が二人い ま す ] 。 O 駅で父を会いました[駅で父と会いました]。 O 先生と友達を会った時[先生と友達に会った時]・ 0 私はとても嬉しかったで[私はとても嬉しかったの で ] ・ 0 私はよく忙しかったで︹私はとても︵大変︶忙しかった の で ] : O 勉強についてのことが言います[勉強についてのことを 言 い ま す ] 。 O 三年生からも先生を聞いていました︵三年生からも先生 の こ と を 聞 い て い ま し た ] 。 3 動調の誤用 ①音便︵主として促音便﹀ 0 日本語を始めて習いています[:::習っていますサ

OR

本 語 を 教 え て 下 さ い て い ま す [ : : : 下 さ っ て い ま す ] 。 O ひ と び と は 全 部 新 年 を 待 ち て [ : : : を 待 っ て ] ・ マ a 唱 E A

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0 映画院へ行くロシア映画をみました て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ] O 皆 様 に よ ろ し く お っ し ゃ て 下 さ い ︹ : : : お っ し ゃ っ て 下 さ い ] 。 ②活用の誤り

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日本語の習ってのは四ヵ月しかありません。 この例は前にも出したが、次のようにも訂正できる[日 本 語 を 習 っ た の は 四 ヵ 月 で し か あ り ま せ ん ] 。 O 来 な い ん で し た [ 来 ま せ ん で し た ] 。 O 家 に 着 い ま し た [ 家 に 着 き ま し た ] 。 0 簡 単 に 書 い ま し た [ : : : 書 き ま し た ] 。 0 つ立けて書いなければなりません[つづけて書かなけれ ば ・ ・ ・ ・ ・ ・ ] ③時制の混同 0 先生をはじめて見せる時︹先生とはじめて会った時]こ れ に は 他 動 調 と 自 動 詞 の 混 用 も あ る 。 O この手紙が先生に着いたのはたいてい私達の旧正月のと きです[この手紙が先生のところに着くのはおよそ私達の 旧 正 月 の と き で し ょ う ] 。 O 来学期に松下先生の授業はきっとおもしろいです[来学, 期 に は : : : お も し ろ い で し ょ う ] 。 O 先生は日本の者で中日友好に貢献をしてしまいました [ 先 生 は 日 本 の 方 で : : : よ く 貢 献 し て お ら れ ま す ] 。 O 私のはじめて知っている外国人です[私のはじめて知っ た 外 国 人 で す ] 。 [映画館へ行つ 0 こ れ で わ た し は も う 日 本 語 が だ い す き で し た [ : : : だ い す き に な り ま し た ] 。 O 今度離れるといつか会ったまで何年もかかるか知ります か[今度別れるといつかまた会うまで何年かかるかわかり ま せ ん ] 。 ④その他の動調の誤用︿内容上からのも︶ 0 じようだんをしたりして[じようだんを言ったりし て ] ・ 0 彼 女 は 冗 談 し て [ : : : 冗 談 を 言 っ て ] : O 私はほしいです、みんなほしいです[私は先生に習いた い で す 、 み ん な 先 生 に 習 い た い で す ] 。 O 教 え て 続 け て く だ さ い [ 続 け て 教 え て く だ さ い ] 。 。会話の練習して復習しています[会話の練習をして復習 を し て い ま す ] 。 O 家族全員にあいさつをしていただけませんか[家族の皆 様 に よ ろ し く お っ し ゃ っ て く だ さ い ま せ ん か ] 。 O 私は、家族全員と松下先生たちに無錫へいらっしゃい [ 私 と 家 族 全 員 は 松 下 先 生 た ち を 無 錫 へ 招 待 い た し ま す ] 。 O 私たちを手伝って会話の練習をします[私たちを助けて 会 話 の 練 習 を し て く だ さ い ま す ] 。 0 質 問 を 聞 き ま す [ 質 問 を し ま す ] 。 O 薬をもってくださいました︹薬をもって来てくださいま し た 可 O 先生は一人で外国へ行って、仕事をしています[:::外 国 へ 来 て 、 仕 事 を し て い ま す ] 。 -18ー

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O 私は先生がとった写真を持出ました[:::写真を出して 見 せ ま し た ] 。 O 彼女はよく私達と日本語の会話を練習します[彼女は私 達 に 日 本 語 の 会 話 を よ く 練 習 さ せ て く れ ま す ] 。 O 私は目がはれていました。先生は見えました[:::先生 は 気 づ き ま し た ] 。 00 さんは私を希望しで日本語の勉強をがんばます[ O さ んは私に教えてもらうことを希望して日本語の勉強をがん ば っ て い ま す ] 。 O 後時先生を希望しで日本語の勉強を手伝います[その後 も先生に日本語の勉強を手助けしてもらうことを希望しま す ] 。 0 私は今年の九月二十五日に日本語の授業を始めました [ : ・ ・ ・ ・ 日 本 語 の 授 業 を 受 け 始 め ま し た ] 。 O 私は一年一組で授業をしています︹:::授業を受けてい ま す ] 。 O 私たちはよく関心しています[私たちはとても感心して い ま す ] 。 4 、助動詞 o それは日本語の勉強にいいですと思います[:::いいと 思 い ま す ] 。 O 私は絵を書くのを習って、上手になるまで、先生を書き ますと思っています︹:::先生を書きたいと思っていま す ] 。 0 内 容 は お も し ろ い で し た [ : : : お も し ろ か っ た で す ] 。 0 時間はすごく速いわね ね ] 。 O 先生は日本に帰った時とてもうれしいと思います[::: 日 本 に 帰 っ た ら と て も う れ し く 思 う で し ょ う ] 。 O 私はとても疲れました、でも、楽しいでした[:::でも 楽 し か っ た で す ] 。 O 兄と姉はみんな嬉しいでした[兄と姉はみんな喜びまし た ] 。 O 毎課の最後にかんたんな試験があります。私たちは、あ まりわかるところを知っています[:::私たちは、よくわ か ら な い と こ ろ が わ か る よ う に な り ま す ] 。 O 私 は 嬉 し い で す ね [ 私 は 嬉 し か っ た で す よ ︺ 。 O 中 国 語 を 早 く 上 手 に な り た い で [ : : : な り た く て ] : : : 5 、名調の誤用 O 私に古里の景気を紹介しました[私に故郷の景気の情況 を 説 明 し て く れ ま し た ] 。 O 先生に多いものを習いました[先生に多くのもの を ・ ・ ・ ・ ・ ・ ] 。

o

子 貢 と 公 園 へ 行 っ て [ 子 供 と 公 園 へ : : : ] ・ O 時々小さく音で歌をうたいました[時々小さい声 で : : : ] 。 O もしようじつは先生の授業があればみんなうれしいです ︹もし一週間︵曜日︶つづけて先生の授業があればみんな う れ し い で す ] 。 O 毎日家族に気楽がじゅうまんしています[毎日家族には [時のたつのはすごく早いです n w u 噌E A

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楽 し い 気 持 が 一 杯 で す ] 。 や か で 楽 し い こ と 。 6 形容調、副詞の誤用 O 先生の引制川神子[先生のかわいい孫さん]

o

無 錫 よ り 熱 い で す ね [ 無 錫 よ り 暑 い : : : ] 。 0 日本語がもっともっと好きです︹日本語がとても大好き で す ] 。 O これからいつでも先生を忘れられないと思います︹これ か ら い つ ま で も : : : ] 。 O 整体にみんな先生が好きです[全体にみんな先生が好き です]整体とは中国語で集合体の全部を指す、全体のこと。

o

今までたいして一年もたちました[今まで大体一年たち ま し た ] 。 7 非日本語的発想による文体 O 来学期先生は私たちを教えましょう、それはいいですね。

o

私は日本語が好きではありませんでした。これはなぜで す か 。 右の用例は日本語で表現すれば、﹁来学期先生が私たち を教えてくださいますようお願いします﹂となるわけだが、 日本語的発想とはほど遠く、むしろ欧米語の表現法に近い ものが感じられる。第二の例も日本語で表現すれば、﹁な ぜだかわからないが、私は日本語が好きではありませんで した﹂ということになるが、この学生が高校でロシア語を 学んでいたことを考えると、﹁これはなぜですか

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g

銘 官三ごというロシア語の自問自答の文句をそのまま日本 気楽とは中国語で経松、 心が軽 語に移し入れたものと考えられる。 助詞の用法について若干コメントすれば、これらの作文 および手紙を書いた時点では、教科書で助調について学習 した事項は次の二項目でしかなかった。 ﹁日本語の品調﹂のなかで﹁︵ロ︶助詞﹂として﹁格助 調、提示助調、並列助調、副助調、連接助詞、終助調﹂の 例があげである︵一三九ページ﹀のと、﹁文節の種類﹂のな か で ﹁ は ﹂ ﹁ も ﹂ ﹁ が ﹂ ﹁ を ﹂ な ら び に 一 般 用 格 助 調 に よ る 文 例 ︵ 一 四 一

1

一 四 二 ペ ー ジ ︶ が あ げ ら れ て い る こ と で あ る 。 また格助詞﹁に﹂のまとめ、および格助調﹁で﹂のまとめ は、その時点以降説明がされることになっていた。 このように教科書による文法的説明によってよりは、実 際の会話的文例によって、反復練習、朗読暗諦しながら学 んでゆく方式がより多くとられたので、教科書の文法の進 度如何にかかわらず、学生は習得した日本語の語糞をフル に活用して十分に作文や手紙が書けたのである。 なお動調に例をとれば活用の練習は教科書ではまだされ ていないので、基本的な誤りは当然みられる。助調の使用 法の基本的な誤りがみられるのもいたじ方ないことであろ ﹀ 内 ノ n u q L それ故にここに拾い上げた各品調の誤りは、これが十三 名の学生の作文二回と手紙一回からの全部であるわけで、 他の部分はすべて正しく書かれた日本文ということになる。 例として学習開始後四ヵ月して書かれた一女子学生の手 紙︵春節休暇中一時帰国していた筆者への宿題としての︶

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を 次 に あ げ て み る 。 尊敬的松下先生 怨好明? まず、新年おめでとうございます。 私 は

OO

です。いま、先生に手紙を書いています。先 生はとてもいい教師で、私はだいすきです。 冬休みの中、私は毎日忙しいです。やることがたくさ んあります。いろいろな本を読んだり、家事の手伝いを したり、切手の収集をしたりしてすごしています。その ほかに、日本語と英語の勉強もします。新しいことばを 習って、朗読をして、カセットを聞きます。勉強はなま けではだめでしょう。また、私は静なところで一人書を 読 む の が 一 番 す き で す 。 時間はすごく速いわね。あしたは旧正月のついたちで す。私は一つ年上になります。私はもっともっと頑張ら な け れ ば な り ま せ ん 。 H

5EZ

す き こ そ 物 の 上 手 な れ 。 忽 説 究 、 先 生 ? 先生身体好喝?生活得快糸唱?小朴々一定彼かわ し杷? ご家族の皆様によろしくおっしゃて下さい。お大事に。 保 ω永走的学生

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︵ 注 、 傍 線 部 は 前 に 誤 用 と し て 示 し た 個 所 ︶ 二、中級学習者の作文に見られる用語の母国語による干渉 に つ い て 担当したクラス二十二名の日本語学習歴は、その内十人 名がすでに上海外語大付属の中・高校で六年、大学進学後 一一年の、計八年であり、他の四名は長春と武漢から受験し て入って来た者で、大学進学後二年ということになってい るが、これも何らかの形ですでに日本語を学んでいたと考 えられる。このような学習者の作文は内容と論理の展開に ついては申し分ないものであるが、やはり母国語でないだけ どうしても誤りをまぬかれない。例えば助詞の誤用、動調 の能動・受動の混同、時称︵過去と現在︶の誤用などがつ いてまわるが、特徴的なものとして見られるのが、中国語 からの直訳的表現、類似の中国語単語による誤用という母 国語による干渉に起因する誤用である。これは双方の文字 が漢字であること、そしてその意味が類似するものが多い ことから、逆に生じる誤用でもある。ここにその観点から の 実 例 を あ げ て み る 。 −中国語の﹁趣味﹂が﹁興味﹂という意味であることか ら の 誤 用 。 O わたしはだんだん日本民族に趣味をもってい[つ]た。 日本の政治経済についても趣味を持ってい[つ]た。 O 高等学校時代になって、私はだんだん経済貿易について 趣味があり[わいてき︺ました。 O その時、私は数学、物理などに趣味を持って、将来物理 学者になろうとしました。:::大学生になってから、色々 な学問に接触して、それに全部趣味をもって、全部やりた 1 ょ っ “

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い と 思 い ま す 。 この例は初級学習者においても、また既に日本語を使っ て活躍している研究者においても数多く見られるものであ る 。 ﹁ 養 成 ﹂ を ﹁ 育 成 ﹂ の 意 味 に 使 っ た 例 。 、。両親は皆内向的な人間のためですか、私も知らずに内向 的 な 性 格 を 養 成 し ま し た 。 O 人 と つ き 合 う の は い や で 活 発 な 性 格 を 養 成 し た 。 O 私 は な ん と か し て 強 い 意 志 を 養 成 し た い け れ ど ・ : : ・ 3 双 語 ︵ 中 国 語 ︶ の 文 字 を そ の ま ま 使 用 し た 例 。 O 私 が 今 ま で 小 学 校 時 代 の 友 達 と 朕 絡 [ 連 絡 ] し て : : :

o

き ま り が 悪 く て 一 一 わ な い 因 素 [ 要 素 ] も あ る し : : : 0 日本人民にもこの戦争で史難門災難]を受けさせました。

o

私の夢は将来日訳[口頭通訳の意味]になることです。 O 何 で も 模 傍 [ 模 倣 ] す る と 思 い ま す 。 O 教師はまるで劇矧[ろうそく]のように、人に光を与え る た め : ・ : ・ 4 熟語の中国語的表現 便 利 設 寵 [ 便 利 な 寵 設 ] 娯 楽 場 所 [ 歓 楽 街 ] 社 会 風 儀 ︹ 社 会 風 俗 ] 円 円 太 陽 [ ま る い 太 陽 ] 社 会 活 囲 [ 社 会 の 範 囲 ] 自 立 生 活 [ 自 立 し た 生 活 ︺ 部 屋 メ i ト [ ル l ム メ イ ト ] 2 友 好 関 係 [ こ の 場 合 、 友 人 関 係 ] 非 常 重 要 ︹ 非 常 に 重 要 ] 大 学 勉 強 [ 大 学 で の 勉 強 ] こ れ ら は 中 国 語 の 造 語 法 の 直 接 的 日 本 語 化 で あ る 。 5 能 動 的 表 現 と 受 動 的 表 現 の 混 向 。 O 金色の太阿[太陽]は月に遮られて欠陥があった[欠け た ] 。 そ の 欠 陥 [ 欠 け た 部 分 ] が だ ん だ ん 大 き く な っ て 、 太 悶は残月のように空にぶらさげて[かかって]いた。 O でも非常に値段が高くてなかなか買えられ[買え]な か っ た 。 O 今日から忙しいに[忙しく]なってしまう。午後一時四 十分から四時まで日本の[の﹂桜美林大学の教授の講座を 聞 か せ [ 聞 か さ れ ] ま し た 。 O 料理をつくることを習って[教えて]もらうこと。 O というのは、今まで習ったものは全部書物にのせた [ の っ た ︵ 書 か れ て い る ︶ ] も の で す 。 6 そ の 他

o

強 い 根 気 で 壮 挙 を 完 成 し た 。 これは必ずしも誤用とはいえないが、日本語では﹁根気 よ く ﹂ と な る で あ ろ う 。 ﹁ 根 気 ﹂ は 中 国 語 の ﹁ 耐 性 ﹂ ︵ 我 慢 強き︶にあたるので、こういう使用法になったと思われる。 初級の学生で子供のことを子貫と書いていたのは、同音の ために生じた誤りである。学生の場合ではないが、よく出 来る通訳が、﹁明日は大きな男になりますよ﹂としきりに 言 う の で 、 何 の こ と か と 思 っ て い た ら 、 ﹁ 大 丈 夫 で す よ ﹂ と

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-22-い う こ と だ っ た 。 ﹁ 丈 夫 ﹂ と は 中 国 語 で ﹁ 成 年 男 子 、 立 派 な 男子﹂のことである。これも両国語が共通の漢字を使用す る こ と か ら き て い る 。 次に極めて中国語的発想の文例をあげておく。 O 秋の野原はきれいである。いたる所まで成熟の楽しみに 満ちている。黄い稲は重い頭をぶらさげて、恥しいような 姿をしていて、果物の木は赤いりんごや黄ろい柿などを抱 いて、人人に収穫の嬉しさを話しかけているようである。 ︵ 原 文 の ま ま ︶ 四 、 む す び 日本人教師が担当した場合、教師が日本語で質問し、学 生に日本語で答えさせるのが学習の基本的形態であり、学 生が教師に質問する場合も日本語で尋ねて、教師が日本語 で答える。ところが中国人教師が担当したときは、ほとん どの場合教師は中国語で説明したり質問したりしたあと、 日本語で答えさせる。また学生が質問する場合も同様であ る。そのため日本人教師担当のクラスは、必然的に日本語 の語棄や文例にふれる機会がより多いため、他の中国人教 師ばかりのクラスより成績がよい結果が出た。 中級作文のクラス︵三年生﹀の学生は、初学段階で日本 人教師に教わっていない。このことから初級で日本人が担 当した一年生のクラスと比較してみる。三年のこのクラス は課題を与えて時間内に書かせた作文においては、誤用が 極 め て 少 な い と 一 一 一 一 口 う こ と が で き る 。 こ れ は 学 習 歴 に 比 例 し ているわけだが、他方日記や自由作文を宿題として提出さ せた場合、品調の誤用が依然として多数みられる。これは 一年生が四ヵ月ないし五ヵ月の学習歴において書いた作文 や手紙の場合よりも、むしろその誤りは少なくないように 思 わ れ る 。 そういうわけで、日本人教師による日本語教育の利点と して、初級クラスでは、日本語会話のテストのさいなど、 動じない態度がみられ、日本語を使うことに自信をもって いると感じられた。また中級作文のクラスでは、毎回作文 その他を訂正添削して清書させたことが、現在日本の大学 院に進学している学生の言うところでは、翻訳や文章表現 の上で大いに役立っているということである。 最後に、外国語の学習では、できるだけ母国語によらな いで学習指導をする方が、学習者の自発的努力を喚起する という点で、極めて有利であると言えよう。 。 a q L 参考文献 講 座 日 本 語 と 日 本 語 教 育 6 ・ 7 日 本 語 の 語 集 ・ 意 味 ︵ 上 ︶ ︵ 下 ︶ 玉 村 文 郎 編 ・ 明 治 書 院 辞海一九七九年版縮印本 中 ・ 中 日 辞 典 は 略 す 。 上 海 辞 典 出 版 社 そ の 他 日

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