他覚的聴覚検査に相当する検査について
1)遅延側音検査(delayed side tone test)
被験者に適当なことばを暗唱させ,それを録音しながら直ちに再生し,被験
者にフィードバックして聞かせる.その時再生を0.2秒おくらせると,声が大き
くなる,時間がかかる,発語が乱れるという 3 つの効果があらわれる.これを
遅延側音効果といい,耳がきこえているかどうかの判断に使うのである.暗唱
させる語は,例えば数字を50から逆順でいわせる,などがよく使われる.効果
は著名で,耳が聞こえれば上記の3つの効果を免れることはできない.
2)ロンバール テスト(Lombard test)
本を読ませるなど連続的に発語をさせていて,60dB以上程度の雑音(白色雑
音でも街頭雑音でも連続的なものならよい)を聴かせる.耳がきこえていれば
自然に声が大きくなる.これをロンバール現象(Lombard,1911)といって耳が
きこえるかどうかの判断に使う.
3)ステンゲル テスト(Stenger test)
Stenger(1900)の考案による.一側の耳がきこえないと訴える人について,
ある周波数の純音でまずきこえるという方の耳の閾値を測る.次にきこえない という方の耳に“きこえない”範囲でのなるべく大きい同じ周波数の純音を聴 かせながらもう一度きこえる方の耳の閾値をはかる.同じ音を両耳に同時に聴 かせると,強い方だけがきこえて弱い方はきこえなくなってしまうという現象
(両耳聴の現象)があるので,きこえるという耳で測った 2 回の閾値の間に大
きな相違があれば,それはきこえないという耳にきこえがあることを示してい ることになる.原法は音叉を用いるが,オージオメータを使って両耳にあたえ る音の強さを上手に加減すると,きこえないという耳の真の閾値のおよそのレ ベルを知ることができる.
(出典)南山堂 聴覚検査の実際 改訂3版 日本聴覚医学会編集