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獅子島の地域ケア −小規模離島における地域包括ケアのあり方一

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清水基金プロジェクト成果報告

獅子島の地域ケア

−小規模離島における地域包括ケアのあり方一

高橋信行*

はじめに

平成27(2015)年小規模多機能施設の建設時より運営推進会議の委員への要請がNPO法人「ふうしや」

よりあり,以来,獅子島の地域福祉推進に関わってきた。小規模多機能施設は,利用する人が可能な限り 地域での自立した日常生活を送ることができるよう,自己の選択に応じて「通い」と「泊まり」と「訪問」

を組みあわせた施設であり,利用の頻度も求めに応じて柔軟にサービス提供ができる仕組みをもち,小規 模な離島のような場所では,特に運営しやすいサービスのようにみえる。運営推進会議は2ケ月に一度地 域住民を交えて小規模多機能の運営について話し合う,地域密着な組織である。

NPO側とは,利用者との関係地域住民との関係,処遇レベルの向上等さまざまな施設運営の視点で の話し合いを行い,平成29(2017)年には住民全体に対する地域包括ケアの構築に向けたアンケート調査 と民生委員と老人会会長に対するインタビュー等も行った。その後中間報告を各世帯に配布し, 30年3月 には,最終報告会を計画していた。 しかしこの3月に,獅子島における地域包括ケアの中核を担ってきた 小規模多機能事業が廃止となった。

本稿では,獅子島での活動の一連の経過,住民調査の内容, これからの課題等について報告を行うもの である。 しかしまだ,獅子島での地域福祉推進活動は道半ばのところである。というよりは小規模多機能 施設の閉鎖によって危機的な状況になっていると言えるのかもしれない。

1 獅子島の概要

鹿児島県長島町獅子島は,鹿児島県の有人離島では最北に位置し, また県の最北端でもある。天草市や 水俣市とも近いが,行政区としては鹿児島県長島町に属している。就業者数においては,第1次産業その なかでも,水産業が大きな割合を占めている。鹿児島県離島振興計画(平成25年〜34年)によれば,人口 は757名(平成22年),高齢化率は37.5%と言われるが(鹿児島県: 11), これは長島町の高齢化率であり,

獅子島では41%程度と言われている。 (島内の民生委員からの情報)。

一一= 一1−一一

キーワード:地域ケア,地域包括ケア,地域福祉.小規模多機能施設

*本学福祉社会学部教授

(2)

長島地域(獅子島)の人口推移と高齢化率

1△400 40.0

35.0 300 25.0 200 150 100 50 00 1 200 ノー◆

1,000 800

600 400 200 0

'三:銀率匡二。総人ロー高齢化率 ゴロpn al [

昭¥防0年平嘩年平成7年平成12年平成17年平 2年

図1 獅子島の高齢化率(「鹿児島県離島振興計画」による(鹿児島県: 11))

産業分類就業者数では.第1次産業が最も多く.そのなかでも水産業が大きな割合を占めている。

表1 産業分類別就業者数

(単位;人%)

区分 就業者数

278 75 0 203 35 93 1 407

構成比 68.3 18.4 0.0 499 8.6 22.9 0.2 100.0 第1次産業

うち農業 うち林業 うち水産業 第2次産業

第3次産業 分類不能

※平成22年l R1勢調杏

長島町離島振興計画によると.獅子島は農林水産業や特色ある特産品等のほか多くの観光資源にも恵 まれているが.産業の集積が弱く、雇用機会の確保が十分ではない。若者の島外流出が続くなど.厳しい 雇用情勢にあるため.地域の特性を生かした新規雇用の創出が求められているとともに高齢者や女性等 の高い就業意欲や多様化する就労ニーズに応じた雇用環境の整備及び雇用機会の確保を促進する必要があ るとされている。 (鹿児島県 14‑15)

(交通)

長島町及び他の自治体への交通は. 3つの航路が利用されている長島本島に加え.熊本県の天草・水 俣地域とも定期航路がある。交通の便は比較的恵まれているが.島内人口の減少により利用者が減少して おり.航路事業の欠損に対して.県単独又は関係市llll.による補助が行われている航路もある。 (鹿児島県;

12)長島(諸浦)〜獅子島(片側)間のフェリーは1日5便(乗船時間は22分)である。

(医療・保健・福祉)

獅子島にはへき地診療所が整備され.長島本島にある町国保膳巣診療所から週2回、医師派遣が行わ れている。また地域住民は鹿児島県本土の医療機関や熊本県(水俣市天草市)の医療機関も多く利用し

ている。

健康管理体制については町に5人の保健師が常勤しており健康相談や健康づくり事業.保健所によ

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獅子烏の地域ケア

る訪問指導等を行っている。また.各種健診等は医師保健師が島内の集会場を使って実施されている。

本地域の65歳以上の要支援・要介護認定者は.平成24年4月現在で53人要介護認定率は173%(県平 均20.3%)となっている。これまで介護サービス事業所はなかったが島外の事業者による訪問介護サービ

スが提供されていた。 (鹿児島県: 16‑17)

図2獅子島の位置

2NPO法人による獅子島での在宅ケアサービス

(1)施設建設の直接的契機

これまで獅子島には福祉施設がなく,島外からの在宅サービスの利用のみであったが.長島町は鹿児 島県が実施した「特定離島サービス確保対策事業」における調査結果からの.獅子島には「小規模多機能 居宅介護」が地域の実情にあったサービスであるとの認識を受けて.介護保険事業について,具体的な需 要の程度を知るため.平成25 (2013)年に「介護保険サービス利用意向調査」を行っている。この調査の 対象者は40歳以上の住民268世帯(世帯主)であり. 回収数229世帯回収率(85.4%) となっている。こ の調査の中で, 「獅子島に小規模多機能型事業所ができた場合,訪問介護(ホームヘルプ) 通所介護(デ イサービス) 短期入所(泊まり)を利用したい(させたい) と思いますか。」と問い. 「利用したい(さ せたい)」116世帯(547%)、 「利用しない(させたくない)」16世帯(75%) . 「わからない」80世帯(377%) の回答を得ている。ただ利用が.訪問介護か.通所か.短期入所かはわからない。 (長島町保健衛生課介 護保険係平成25年調査資料)

この結果をもとに長島町は.一定の需要があると見込み小規模多機能施設の建設に向けて事業所の募 集を行い. NPO法人ふうしゃによって事業がはじまった。

(4)

U

一ム

ーラ室ニマ ヨ壷lJ

壇鍵

図3小規模多機能施設すいせん

(2)NPO法人ふうしゃの活動

特定非営利法人「ふうしや」は.平成24 (2012)年9月に①高齢者や障害者(児)等の在宅支援事業

②成年後見制度による支援事業③介護保険法による各種事業等を行うことを目的に設立された。平成25 (2013)年行政委託による地域支え合い体制づくり事業」の一環として、 「ふれあいいきいきサロン」を17 地区で行っているが 平成27(2015)年6月より小規模多機能施設すいせんを開設した。

このほか環境省が所管する獅子デイサービス(後の「離島等医療・福祉推進事業」)も運営していた。

(3)NPO法人によるふれあいサロン事業の展開と終了

「ふれあいサロン」は 住民参加型の地域活動で.鹿児島においては特に高齢者サロンが多く 高齢者 の孤立防止交流促進介護予防を目的に展開されており通常は社会福祉協議会や民生委員が支援して いる活動である。しかし長島町においては. NPO法人ふうしゃによって支援が行われているものも多 かった。これは平成25(2013)年度より行政の「地域支えあい体制づくり事業」によって行っているもの で, NPOが展開している事業は,獅子島を含む17地区で行われていた。その他長島町社会福祉協議会が

3カ所で実施している事業があるようであった。

平成27 (2015)年NPOふうしゃの行ったサロン調査を獅子島とそれ以外で区分すると以下のような調 査結果が見られた。サロンには男性が参加しないとよく言われるが,獅子島の男性参加は多い。また家族 形態では.一人暮らしの方がゼロであった(獅子島以外の地域では38.7%)。

表2地域と性別のクロス表

│生別 合計

男 '4 女''4 地域 長島獅子島外 蝉%

F

8.1%

57 91.9%

62 100.0%

獅子島 域%

5 35.7%

9 643%

14 100.0%

合言 度数

10 13.2%

66 868%

76 1000%

(5)

獅子島の地域ケア

I

1

1

1

澪ロ

L 墜嫡Z"

昌一〆

=4=

図4片側地区で行われたふれあいサロンーはじめに職員がバイタルチェックを行っている。平成27(2015)年 ただし, この事業は平成30年には,取りやめになっている。「ふうしや」は事業継続を求めていたが.

この事業は.事業立ち上げを促進するためのものであり.最終的には住民の自主的な活動として展開する。

その場合は社協が仲介となるとされた。

長島町社会福祉協議会に問い合わせたところ. 「サロン研修会などの機会に.上記のことを行政と社協 からお伝えし. ご理解をいただき活動して頂いています。現在私共は.サロン立上げ〜活動が軌道にの るまではできるだけ訪問し,徐々に住民の方々主体で活動に取組んでいただき自主運営できる形にもっ ていくようにしています。そして.支援者からの要望があった場合はレクリエーション等を用意して支援 に伺っています」とのことであった。そのことは獅子島の住民(議員公民館長老人クラブ会長)から も相談を受け説明を行い"獅子烏側から「いつも支援に来てもらえるのが条件」との返事がきたようで.

3カ所で行われていたサロン活動の再開に至っていないということのようである。

(4)獅子島の特殊事情一離島等医療・福祉推進事業

獅子島の医療・福祉を推進するにあたって考盧すべき事項があった。長島町保健衛生課介護保険係が作 成した意向調査結果の分析では.次のような文章が見られる。

調査結果から県の報告でもあったように「小規模多機能型居宅介護」と「訪問看護ステーション」

は獅子島地区にも受け入れられそうであるが離島等医療事業のデイサービスとマッサージ機器利用 (リハビリ) との関連もあり.保健手帳保持者と介護認定者との利用料のバランス.サービス内容な ど.介護保険事業との関連をどのようにすべきか今後の課題である。

それぞれの利用者は.保健手帳保持者は頭打ちであり増える見込みはないが.高齢化による身体の 衰え,認知症発症者など増えた場合.介護保険に頼らなければならないことが予想されるため認定 者は増えていくのではないかと予想される。また獅子島地区の方は.診療時整形外科の受診が多 く. リハビリは必要と思われる。離島等医療では. リハビリにも限度があり.作業療法士(理学療法 士)による専門的な治療が必要と感じる。

また.デイサービス利用者が比較的少ないことを考慮すると. それぞれの地区にあるリハビリ施設 が通い易いようであるので.その場所を介護予防のサロン的な場所として利用することも考えられ るのではないかと思う。

これらを踏まえると.小規模多機能型居宅介護事業所でデイサービス.訪問介誰入浴サービス 短期入所などサービスを提供し、訪問看護ステーションとの連携でリハビリを強化離島等医療につ

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いては,介護予防のサロン的な事業として展開することが理想と思われる。ただ,それぞれの制度の 違いがあるため難しい面も多々ある。施設については, 「入所したい(させたい)」が全体で29%であ るが61件あり,需要がないともいえないこともあり,今後の協議課題となる。 (前掲介護保険係資料)

医療と福祉の関係では,獅子島には他地域に見られない複雑な経緯がある。「離島等医療事業のデイサー ビスとマッサージ機器利用(リハビリ)」とは。離島等医療・福祉推進モデル事業」と言われるものの一 環として行われているサービスであった。そしてこのことは,水俣病発生地域でもある獅子島が持つ特性

と関係している。

環境省は平成18(2006)年度から「水俣病発生地域の環境福祉対策の推進に係る事業」を進めており,

このうちの一つが「離島等医療・福祉推進モデル事業」である。この事業は,市町への委託事業であり,

全額国費によりまかなわれる。事業の趣旨は「離島等に居住する水俣病被害者及び家族,地域住民が安心 して暮らしていけるように, 当該地域の医療・福祉レベルを向上させるため,神経症状の緩和,運動障害 等の改善・維持につながるリハビリテーション等をモデル事業として実施するもの」とされており,事業 は平成19 (2007)年度に開始され,対象地区は鹿児島県長島町獅子島と熊本県天草市御所浦町の2カ所と された。当初,事業期間はおおむね3年間とされたが,平成20 (2010)年度予算では事業が継続され, らに4カ所に拡充するとされていた。

獅子島での事業は、①離島デイサービス,②健康機器を利用したリハビリテーション,③介護予防研修 会からなる。このうち,①は御所ノ浦地区の高齢者コミュニティセンターに機器を設置して行われている (設置機器はメディカルチェア,全自動血圧計,車椅子ボードトレーナー,振動刺激トレーニング装置,

脳年齢計など)。 (除本・尾崎: 175)

(5)介護サービス利用の懸念事項と小規模多機能施設の運用

話を「介謹保険サービス利用意向調査」に戻すと, この①離島デイサースと②マッサージ機器利用(リ ハビリテーション)の事業に,調査対象世帯の104世帯46.6%が利用していると答えている。

長島町側が施設開所の中で危 │具していたのが. この国費で無料で提供される事業との兼ね合いである。

このモデル事業が継続される間は,無料でデイサービスやリハビリを利用できる住民が. 1¥l. 2割の負 担の介護保険サービスを利用するだろうかという点である。ただモデル事業として実施されている限り,

いずれこれらの医療サービスを提供できなくなる可能性もあるわけであり, (少なくともこの事業は国の 事業で町はそれを委託されているということなので), それを一部は介護保険に切り替える必要が出てく

ると認識していたのだろう◎

町は, こうした「離島等医療・福祉推進事業」を介護予防事業と位置づけ,実際に介護が必要になった 場合は,小規模多機能施設を利用していただくという方針のようであった。しかし,小規模多機能施設に よる介護保険事業は, 当初から十分な利用者を確保できていなかった。この小規模多機能事業は,島内の 雇用を高めるという意味も持っており,実際に9名の雇用を確保している。島民による島民のための事業 としては理想的とも言えるが,筆者もメンバーであった運営協議会での委員の発言から, まだ施設が十分 地域住民となじみの関係を確立していない様子がうかがわれた。

利用者は.開所当時2名であり, そうした少人数がしばらく続いた。小規模多機能施設の運営推進会議 では,委員から介護保険サービスとしてではなく,医療サービスとして実施できないのか等の質問も出て いた。介護保険としての小規模多機能施設の意味が十分理解されているとは言えない状態にあった。

もちろん施設の社会化,地域交流の場としての意味を持つようになれば,住民の施設に対する見方は変 わっていき, これまで潜在化していた需要の掘り起こしにもつながる可能性もあり,事実,利用者も徐々

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獅子烏の地域ケア

に増えてきていた。 しかし,平成30(2018)年3月,ついに小規模多機能介護居宅事業所すいせんは,廃 止に追い込まれた。

(6)地域包括ケアシステムをどのようにとらえるか

長島町において,地域包括ケアシステムは, どのように考えられるだろうか。地域包括ケアシステムと は, 「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で,生活上の安全.安心.健康を確保するた めに医療や介護のみならず,福祉サービスも含めた様々な生活サービスが日常生活の場(日常生活圏域)

で適切に提供できるような地域での体制」とされている。この日常生活圏域はおおむね30分でいききでき るような地域的ひろがりとして考えられている。 (平成25年3月地域包括ケア研究会報告書より)

人口10,431人(平成27年度推定値)の長島町は, 日常生活圏域を1つとしている。 しかし長島町本島だ けなら, この考え方でもいいかもしれないが,獅子島のような有人の島のことを考えるとき, どうだろう か。少なくともNPO側は1つの日常生活圏域という考えには疑問を持っていた。フェリーで島に渡るに は20分(諸浦〜片側間)ではあるが,実際上,獅子島の真ん中あたりから,役場あたりに行こうと思えば,

50分はかかるし, フェリーは常時乗れるわけではない。実際に小規模多機能の運営推進会議に役所から来 た職員には半日がかりの仕事だったろう。少なくとも,地域包括ケアを島内である程度完結すること,そ のための中核に小規模多機能があると考える必要があった。確かに, NPO法人「ふうしや」は,獅子島 の小規模多機能施設の運営以外にも,獅子デイサービスの運用やふれあいサロンの委託事業も受けてお

り,獅子島の地域包括ケアシステム構築の中心センターであったといっていい。

(7)小規模多機能施設への提案メモ

運営推進会議のメンバーとして活動する中で,筆者は小規模多機能施設の在り方について, この段階で 8項目にわたる提案書を作成し,NPO側に提出した。 (平成27年)若干記述を略したものを示す。

1 )小規模多機能施設の広報啓発

①定期的に小規模多機能便りを発行し, 島民に配布する。 「職員の中に広報担当者や企画等を考えてもらう」

②インターネットを使った広報啓発 2)地域住民の交流の場として

①施設を利用して,バザー等を開催する。

②施設内でミニデイサービスを展開する。 一ふれあいサロンとの棲み分け

③地域のお年寄りを招いた食事会

④各種イベントの開催

−これまでのデイやサロンでは満たされないニーズを中心にプログラムを考えていく。

3)福祉活動や介護等についての啓発・相談

①定期的講演会や研修会への開催(島民)

定期的に福祉の啓発を行う研修会を企画実施。 −例えば介護の仕方等について

②介護等についての相談体制(大学や専門職能団体からの講師派遣協力)

4)住民の支え合い活動の促進

小地域活動ふれあいサロン,在宅福祉アドバイザー事業など。

−島内で孤立している高齢者等も発掘施設利用を含めた在宅支援を行う。

5)専門職の研修

①小規模多機能施設で活朧をしている施設関係者の研修

②他の小規模多機能施設での職員研修

6)地域ネットワーク会議や町づくり協議会等との連携

医療.保健,社協民協等と支え合いネットワークの構築,民間NPO等一運営推進会議との関係 7)島内地域推進計画の策定

島内の地域福祉推進計画を1年かけて策定一運営推進会議との関係 8)地域の拠点として,小規模多機能の本筋を行く

高齢者支援に特化せず,地域ニーズに合わせて,子育て支援,障害者支援その他の生活支援に取り組む。これ こそが富山型デイサービスの伝統を引く小規模多機能の本来の在り方と言える。

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3.住民を対象にした地域福祉調査一地域包括ケアのあり方を求めて

(1)調査の概要

こうした中で.長島町獅子島を中心とした地域包括ケアのあり方を検討するため. 20歳以上の獅子島島 民を対・象にしたアンケート調査を実施した。この調査は.平成29年度鹿児島国際大学大学院福祉社会学研 究科清水基金プロジェクト.および福祉社会学部社会調査実習の一環として行ったものである。調査時期 は平成29(2017)年6月の1ヶ月間であり.調査方法は世帯別に自治公民館長による配票調査である。有 効回答数は216名である。ここではその結果のうち.医療・福祉についての調査結果を見てみる。なお集 計分析にはSPSS日本語版バージョン19ならびに24を使用した。

(2)おおまかな属性 1)性別

全体として「男性」は53.8%. 「女性」は46.2%で「男性」のほうがやや多い。平成22年のデータではあ るが.獅子島の20歳以上の男性は49.9%、女性は501%となっており.その意味でこのデータでは男性が やや多くなっているが大きな差ではない。今回は世帯調査の形をとっているために,世帯主として男性 が選ばれる可能性が高く、 このような結果になったと予想される

2)年齢構成

度数は195,最年少28歳,最高齢92歳平均年齢は63.9歳である。

ヒストグラム

40ー 平均麓=6389

種華彊憂画12957 優數=旧5

30=

度数

20戸

1ケ

F−

20 40 60

年齢

80 100

図5年齢ヒストグラム

3)家族構成一若者層の一人暮らしはゼロ。75歳以上の一人暮らしは4割を超える

年齢層でみると. 「一人暮らし」の若年層はゼロである。若年層の多くが夫婦と子の世帯であり. 3 世代世帯も若干ある。一人暮らしの若者が生活する基盤がないとも言えるのだろう。一人暮らしの多くを 占めるのは高齢者層であり.特に後期高齢者は410%となっている。

4)職業構成(地区別とのクロス集計)

合計をみると最も多いのが漁業であり43.5%である。ついで農業が217%無職17.9%となっている。漁 業が主産業であることは.先の表lからも明かであるが.調査からもそれが裏付けられる。ただし地区に

よってはやや配分が異なっている。

獅子島は,大きく片側地区.御所ノ浦地区.湯ノロ地区弊串地区に分けることができるが.片側地区 は農業が549%であり.漁業は11.8%に過ぎない。弊串地区は漁業が600%である。湯ノロ地区は漁業

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獅子島の地域ケア

76.2%である。また御所ノ浦は.漁業は38.3%であり.無職が33.3%となっている。つまり 片側は農業 中心、弊串と湯ノロは漁業中心,御所ノ浦も漁業中心と言えるが無職も多く.高齢者が多いことが示唆 される。確かに調査でも高齢者の比率が御所ノ浦は62.5%と最も高くなっている。そして.小規模多機 能施設も. この御所ノ浦地区に建てられた。

御所

湯ノi l 片側

辰蔦芳祠 弊串

図6各地区の位置

表3地区と職業のクロス表 地区 湯ノロ

片側 御所ノ浦 幣串 合計

職業 腱業 蝿%

28 54.9%

14 23.3%

2 2.7%

45 21.7%

1 4.8%

林業 蝿%

0 0.0%

0 00%

0 0.0%

0 00%

0 00%

畜産業 蝉%

0 0.0%

0 0.0%

0 0.0%

0 0.0%

0 0.0%

漁業 蝿%

23 383%

16 76.2%

45 6().()%

90 43.5%

6 11.8%

自営業

1 1.7%

3 1.0%

6 29%

2 3.9%

0 0.0%

事務職 職%

0 0.0%

0 0.0%

0 00%

0 0.0%

0 0.0%

販売・労務職 度数

0 0.0%

1 1.3%

3 1.4%

1 20%

1 1.7%

導門職 蝿%

3 5.9%

1 4.8%

5 6.7%

()

0()%

9 43%

聯業主婦 噸%

5 9.8%

2 3.3%

0 0.0%

4 5.3%

11 53%

パート ・内職 蝉%

3 59%

2 3.3%

1 48%

4 53%

10 1.8%

離職(学生を含む) 趣%

5 98%

20 33.3%

2 9.5%

10 13.3%

37 179%

その他 蝿%

3 5.0%

5 6.7%

4 78%

0 00%

12 5.8%

合計 蝿%

75 100.0%

51 100.0%

60 100.0%

21 100.0%

207 1000%

(3)医療機関の利用と医療体制への不安 1)医療機関への通院者は76.7%

年齢別に見ると, 中年層の頃から「通院している」人が76.1%と多くなっており前期高齢者は86.5%、

後期高齢者は80.6%となっている。ただし後期高齢者の場合は. 「往診のみ」が19.4%であり. 「通院して いない」はゼロである。つまり.後期高齢者は何らかの診療を受けているのである。これまでのいくつか

(10)

の調査でも通院しているかを聞いているが,他と比較しても医療機関にかかっている比率がとても高いこ とが獅子島の特徴といえると思う。鹿児島市伊敷団地の高齢者調査(2016)で通院しているは76.7%, 「通 院していない」23.3%であった。 「往診のみ」は聞いていない。この値と比較しても高いものである。概 して過疎地域ほど,通院率が高い傾向があるところもあり, その中でも獅子島の医療機関にかかっている 比率は高いと言え,常設されていないだけに.機会があれば受診するということが文化的土壌としてある のかもしれない。

表4年齢と医療機関への通院のクロス表

2)通院している医療機関一水俣市の利用が多く,獅子島(島内診療所)以外の長島町は少ない 利用する医療機関の違いは地域によって異なっており,片側地区は「島内診療所」が647%で最も多く,

ついで「水俣市」が35.3%である。 「その他」20.6%, 「長島町内」はll.8%である。御所ノ浦地区は, 「島 内診療所」47.3%であるが, 「天草市」も47.3%と同じ利用である。ついで「水俣市」12.7%, 「その他」7.3%,

「長島町内」は7.3%であった。湯ノロ地区では, 「水俣市」が867%と多く, 「島内診療所」がそれにつぐ がl3.3%である。他の利用は少ない。弊串地区も「水俣市」が75.4%, 「島内診療所」31.1%, 「その他」8.2%,

「長島町内」は68%である。その他の地域としては鹿児島市,阿久根市, 出水市, さつま町,霧島町なと.

である。つまり,島民で利用している医療機関はかなりならつきがあるということである。

表5地区と通院している医療機関のクロス表

3)医療体制への不安−8割以上は不安を訴える

島内に週2回の診療所しかないことが影響しているのだと思われるが, 島内の医療体制について,住民

医療機関への通院

通院している 通院していない 往診のみ 合計 年齢 若年層(20〜39歳)

中年層(40〜64歳)

前期高齢者(65〜74歳)

後期高齢者(75歳以上)

度数

度数

度数

度数

4 30.8%

67 76.1%

45 86.5%

29 80.6%

9 69.2%

18 20.5%

4 7.7%

0 .0%

0

、0%

3

3 5.8%

7 19.4%

13 100.0%

88 100.0%

52 100.0%

36 100.0%

合計 度数

145 76.7%

31 16.4%

B恥

189 100.0%

利用する診療機関の場所 島内診療所 獅子島以外の

長島町内 水俣市 天草市 その他 合計

片側

御所ノ浦

湯ノロ

幣串

合計

度数

度数

度数

庇数

度数

22 64.7%

26 47.3%

2 13.3%

19 31.1%

69 41.8%

4 11.8%

4

1 6.7%

4

B冊

12 35.3%

1 2.9%

7 12.7%

26 47.3%

13 86.7%

0 0.0%

46 75.4%

0

78 I 27

47.396 16.4%

7 20.6%

4 7.3%

1

5

17 10.3%

34 100.0%

55 100.0%

15 100.0%

61 100.0%

165 100.0%

(11)

獅子島の地域ケア

はかなり不安を持っている。 「とても不安である」38.6%, 「やや不安である」43.1%, 「あまり不安はない」

17.3%, 「全く不安はない」2.8%と,答えた人の8割以上が不安を訴えている。

4)不安の理由一緊急時の医療体制

不安の理由を聞いたところ。 「船が欠航した場合」など,交通機関への不安, そして「いつも医師が常 駐しておらず,週2回しか診療所が開かれないこと」など通常の医療体制への不安, これらのことから,

「子どもが熱を出したり,けがをしたとき,救急車で病院に行けない」など.緊急時の医療体制について の不安が大きいことが分かった。

(4)福祉サービスについて

現在,獅子島の福祉サービスとしては, 島外からの在宅ケアサービス(訪問介護や訪問看護)が提供さ れていることと,環境省を管轄とする「離島等医療・福祉推進事業」としての獅子デイサービスやリハビ リがある。

ここでは既存の福祉サービスについてたずねてみたが,利用希望としては, 「訪問介護や訪問看護」が 最もニーズが高く,ついで「デイサービス(レクリエーションやリハビリ)」である。他のサービスはむ しろ, 「わからない」と答えた者が多い。小規模多機能施設についても45.6%は「わからない」と答えて いる。

表6利用意向と在宅サービス

(5)住民の助けあい活動と生活上の要望

都市部との違いを感じさせるのが,隣近所との助けあい活動である。ここでは8つの助けあい活動を

「ない」 「たまにある」「よくある」と聞いているが, 「野菜や魚などの食材をあげる」, 「ちょっとした話し 合い手になる」, 「いろいろな情報を教える」の3つは地方都市でもある程度行っている比率はあるが,獅 子島のように「日用品の買い物をする」 「通院や買い物に連れて行く」に5割以上の人が, 「ある, たまに ある」と答え, 「家の補修をする」 「一時的にお金を借りたい,立て替えたりする」が3割以上に「よくあ る, たまにある」と答えているケースは稀である。 「掃除や洗濯をする」も2割半くらいは「ある」と答 えている。これを鹿児島市の大明丘の調査結果(2018) と比較するとその違いがよくわかるだろう。

現在利用してい 度数

利用してみたい と思う 度数

利用しないと恩

度数

わからない 度数 l. 自宅をホームヘルパーや看護師等が訪

問して自宅で支援を行う 6 40 51.3% 2 30 38.5%

2. 日中,施設に行き,入浴やレクリエー

ションやリハビリを行う 4 28 41.8% 10 14.9% 25 37.3%

3.短期間宿泊して施設で支援を受ける 4 23 35.4% 12 18.5% 26 40.0%

4. 自宅を拠点として,上記の3つのサー

ビスを混合的に受ける小規模多機能施設 4 24 353% 9 13.2% 31 45.6%

5.有料老人ホーム,安否確認や生活相談

なども行う施設 1 1.6% 19 30.2% 6 37 58.7%

6.介護老人福祉施設などの老人ホームへ

の入所 2 3.1% 22 34.4% 6 34 53.1%

(12)

表7住民の助けあい活動(獅子島)

表8住民の助けあい活動(鹿児島市大明丘)

※大明丘調在は鹿児島国際大学福祉社会学部社会調在実習として行ったものである。平成30年7月に実 施。郵送法で行い. 315名中146名から回収した。

獅子島2017 ない たまにある よくある

野菜や魚などの食材をあげる 度数 行のN%

16 9.3%

107 62.2%

49 28.5%

掃除や洗認をする 度数

行のN%

90 75.6%

21 17.6%

8

家の補修をする 度数

行のN%

82 67.8%

33 27.3%

6 5.0%

日用品の買い物をする 度数 行のN%

45 35.7%

65 51.6%

16 12.7%

ちょっとした話し相手になる 度数 行のN%

14

91 63.2%

39 27.1%

通院や買い物につれていく 度数 行のN%

51 40.2%

62 48.8%

14 11.0%

一時的にお金を貸したり,立て替度数

えたりする 行のN%

85 67.5%

41 32.5%

0 0.0%

いろいろ情報を教える 度数 行のN%

37 28.7%

75 58.1%

17 13.2%

鹿児島市大明丘2018 ない たまにある よくある

野菜や魚などの食材をあげる 度数 行のN%

49 41.5%

56 47.5%

13 11.0%

掃除や洗瀧をする 度数

行のN%

92 93.9%

5 5.1%

1 1.0%

家の補修をする 度数

行のN%

94 96.9%

3 3.1%

0

日用品の買い物をする 度数

行のN%

91 90.1%

1O

0

ちょっとした話し相手になる 度数 行のN%

48 42.1%

52 45.6%

14 12.3%

通院や買い物に連れて行く 度数 行のN%

93 93.9%

5 5.1%

1 1.0%

一時的にお金を貸したり建て替え度数

たりする 行のN%

94 95.9%

3 3.1%

1 1.0%

いろいろな情報を教える 度数 行のN%

55 51.4%

47 43.9%

5 4.7%

(13)

獅子島の地域ケア

表9やってほしいことの比較

陥一Ⅳ

表9は,ボランティア等にやってほしいこと,お手伝いしてほしいことを聞いた結果であるが,獅子島 と大明丘に共通に高いものとしては, 「家電の配線」, 「大掃除」, 「家の補修」などあるが, 「ゴミ出し」 「病 院からの薬の受け取りなどの連絡調整」「台風時の戸締まり」「外出支援」などは獅子島に多い要望である。

(6)高齢者の活動からみた特徴 1 )老人クラブ(老人会)活動

獅子島の老人会は, 70歳以上の高齢者によって構成されている。活動内容としては, グランドゴルフや 年2回の旅行, また講演の草むしりや公衆便所の管理を集落自治会から委託されていたりする。 (老人会 会長への面接からの情報)

ここでは70歳以上の方を対象に参加の程度を地区別に集計してみた。全体では「ほとんど参加している」

は34.0%, 「ある程度参加している」25.5%, 「参加していない」40.4%となる。

地区別にみると, 「ほとんど参加している」では片側が66.7%と最も高く,御所ノ浦23.5%,湯ノロ0.0%,

弊串16.7%となり,片側を除くと参加率が低い。特に湯ノロは「参加していない」 100.0%,御所ノ浦 52.9%,弊串50.0%である。

確かに面接の中でも,片側地区は, グランドゴルフのおりに食事会をするなど活動が活発とのことで あった。

やってほしいこと 獅子島2017

やってほしいこと 大明丘2018

1. ご近所の方のゴミ出しの手伝い 25.0% 9.1%

2.電球の取り替え 15.6% 20.0%

3. ご近所の方との会話 18.8% 12.7%

4. ご近所の買い物支援(車の相乗りや代理賊入等) 11.3% 9.1%

5.植木の散水や剪定や草取り 17.5% 34.5%

6.布団干し 13.8% 5.5%

7.郵便物の投函 5.0% 1.8%

8.病院からの薬の受け取りなど連絡調整 25.0%

9.散歩の手伝い 1.8%

10.廃品の回収 22.5% 23.6%

11.台風時の戸締まり 38.8% 16.4%

12.外出時の支援 15.0% 1.8%

13.ペットの世話(散歩など) 1.3%

14. ちょっとした家電の修理や配線の点検 21.3% 36.4%

15 大掃除 21.3% 23.6%

ちょっとした家の補修 35.0% 41.8%

ちょっとした水道の補修(パッキンの取I)替えなど) 18.8% 41.8%

18 ふれあいサロン(お達者クラブ)のお手伝い 1.3% 1.8%

19 小規模多機能施設でのボランティア

20 その他お手伝いできること

(14)

表10地区と老人クラブ活動への参加のクロス表

2)ふれあいサロン活動への参加

「ふれあいサロン」の活動への参加を地区別にみると, やはりここでも片側が「ほとんど参加している」

235%でもっとも多い。御所ノ浦8.2%、湯ノ「Iは0%,弊串45%となっており, 「参加していない」は弊

串81.8%・御所ノ浦75.0%となっている。

表11 地区とふれあいサロン活動への参加のクロス表

4.小規模多機能施設の閉鎖とこれからの獅子島の地域福祉

(1 )島内地域包括ケアシステムの危機

獅子島の地域包括ケアシステムの構築を考える上では, 中核的な存在と思われた小規模多機能施設が平 成30年3月で閉鎖した。施設経営に見合うだけの利用者の確保ができなかったことが原因であるが,利用

者そのものは増加しつつあった。

開設2年目での利用者は8名(そのほか障害者1名)であったが,平成29(2017)年12月では介護保険 登録者12名(そのほか障害者1名) までのびてきていた。当初通いと泊まりのみの実施であったが訪問も

41回に及んでいた。 (運営推進会議資料)

サービスそのものはのびてきていた。島民に小規模多機能が浸透する中で, 閉鎖を余儀なくされた感じ

である。

老人クラブ活動への参加(70歳以上)

ほとんと参加し ている

ある程度参加し

ている 参加していない

●トー壹凹

谷口

一一 片側 度数

御所ノ浦 度数

湯ノロ 度数

幣串 度数

10 66.7%

4 23.5%

0 0.0%

2 16.7%

4 26.7%

4 23.5%

0 0.0%

4 33.3%

1 6.7%

9 52.9%

3 100.0%

6 50.0%

15 100.0%

17 100.0%

3 100.0%

12 100.0%

合計 度数

16 34.0%

12 25.5%

19 40.4%

47 100.0%

ふれあいサロンへの参加(65歳以上集計)

ほとんど参加し

ている

ある程度参加し

ている 参加していない

言仰

谷口

地区 片側 度数

御所ノ浦 度数

湯ノロ 度数

幣串 度数

4 23.5%

2 7.7%

0

1

7 41.2%

4 15.4%

3 60.0%

3 13.6%

6 35.3%

20 76.9%

2 40.0%

18 81.8%

17 100.0%

26 100.0%

5 100.0%

22 100.0%

合計 度数

7 10.0%

17 24.3%

46 65.7%

70 100.0%

(15)

獅子島の地域ケア

その後施設運営はストップしたままである。ながしま議会便りをみると9月定例会の記載に次のような 文章が見られる。池田議員の「離島唯一の福祉施設として獅子島島民が長年要望し, 開設した施設が3年 足らずで閉鎖した。町としての今後の取組は。」との質問に, 町長は, 「現在,破産管財人による破産手続 中のため, その動向を見ながら施設の再利用等支援し,介護保険事業所にその施設を継続してもらう方向 で再利用等支援する」と答えている。

獅子島の地域包括ケアの在り方や地域福祉推進の方向性を考える上で,小規模多機能施設を失った痛手 は大きなものである。 しかもNPOふうしやは,獅子デイやふれあいサロンも委託事業を展開していた。

それらも現在ストップしているとすれば,現在,獅子島内で地域包括ケアシステムを展開する基盤はほぼ 失われたといってもいいだろう。

(2)小規模多機能施設経営の難しさ

一般的にいって,小規模多機能施設は経営が難しいサービスのように見える。小規模多機能施設は,利 用する人が可能な限り地域での自立した日常生活を送ることができるよう, 自己の選択に応じて「通い」

と「泊まり」と「訪問」を組みあわせた施設であり,利用の頻度も求めに応じて柔軟にサービス提供がで きる仕組みをもち,在宅ケアのコンビニのように利用者側には大変便利な仕組みと言える。特養入所待ち が何年も続いている現在,その間をカバーする仕組みとしても重宝かもしれない。また運営推進会議は地 域住民を交えて運営について話し合う,地域密着な組織である。

他方で経営者サイドからみると,安定的な経営をすることが難しい事業とも言える。 「泊まり」は便利 であるが,一人でも利用者がいれば職員配置が必要になるし,基本的に泊まりの日数の制限もない。連泊 は小規模多機能の理念に反するから,本人や家族に理解してもらうようにと言われるが,切羽詰まった利 用者ニーズに答えなければならないということもあるだろう。

地域福祉推進の視点からみても,ある意味で中心的な役割を担うべきであるが,十分に小規模多機能の 特性が住民に理解されていないという側面がある。例えば,包括(報酬)料金の仕組みが十分理解されて いないので,ある時は値段が高いと言われたりすることもある。小規模多機能サービスが入ることで,地 域の福祉力が低下する側面もある。

NPO法人は財政基盤も脆弱であり, いつまでも赤字の事業を続けられないという経営的側面もある。

事業者,行政,住民が一体となって解決をめざすべき事業という認識が必要だろう。

(3) これからの獅子島の地域福祉推進

現状の中で獅子島の地域福祉をどのように進めればよいのだろうか。参考になりそうな事例として,南 大隅町の辺塚地区での在宅ケアサービス事業があげられる。南大隅町では,平成30年からの地域福祉計画 策定を受けて社協が中心になり,地区社協づくりを行い,その中で,辺塚地区社協の取り組みとして, ニデイサービス「しらなみ」とヘルパーステーション「しらなみ」を元小学校に設立して,活動を展開し ている。地区社会福祉協議会について,南大隅町社協は,以下のように説明している。

「地域が抱えている様々な福祉課題をみんなで話し合い,協力して解決を図ることを目的とし, その活 動を通して,個人が尊厳をもって地域や家庭の中でその人らしい生活を送れるように支え,支えられる

「ふくしのまちづくり」を推進する地域組織」であると。 (南大隅町社会福祉協議会資料より)

獅子島に振り替えて考えると,獅子デイサービスをミニデイサービスとしてとらえながら,ふれあいサ ロンを住民参加型で復活させることが考えられる。ヘルパーステーションを小規模多機能施設の中に開所 するなどの方法も考えられるだろう。泊まり機能は当面難しいかもしれない。

ふれあいサロンは,住民参加型に展開していく必要もあろう。NPOが行ったふれあいサロン事業は,

(16)

職員が配置されたが, それ故に,住民の自主的活動というよりは住民をお客様にしてしまったところも あったかもしれない。ただヘルパーステーションについては. どこかの事業所が担わなければならないで あろう。また社会福祉協議会の役割も期待したいところである。社会福祉協議会は,社会福祉法にも明記

されているように,地域福祉を推進する団体である。

南大隅町の場合は,行政の地域福祉計画策定を受ける形で,南大隅町社会福祉協議会がアクションプラ ンとして,校区社協づくりを進め, その中で,辺塚の2つのサービスができた。

地域包括ケアセンターを含む行政と社会福祉法人である社協そして住民の主体的参加その中で,獅 子島の地域福祉推進を考えて行かねばならない。そのために行政は「地域福祉計画」,社協は「地域福祉 活動計画」の作成にのりだしてほしい。

謝辞

本研究は平成30年度鹿児島国際大学附置地域総合研究所清水基金プロジェクト研究の研究助成を受けて 実施したものである。

文献

鹿児島県『鹿児島県離島振興計画」平成25年4月

除本理史と尾崎寛直「水俣病特別措置法と環境・福祉対策の課題一水俣市および水俣・芦北地域の再生・振興

1 2

の観点から−」

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